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重さは鉄でも、仕上がりは絹か・・・ イペ その性質


さぁ、前回からの続き、超重硬材イペのお話。
頭の整理はできているでしょうか?!

先日、イペ材のサワリをお話しましたが重さとともに気がつくのはその名前。
木材マニアならば「おやっ?!」と思った方がいらっしゃったでしょうか?
イペは別名(国や港によって変わる)の中にグアヤカン、グリーンハートという名称をもっています。
これが引っかかるところ、いや面白いポイント。


今までも唐木である紫檀や黒檀などで、混同されやすいものや仲間のもの、いや、名前は確実に仲間に感じるけれども全く関係のないものまでつぶさに紹介してきましたが、そこでもわかる様に、木材は同じ樹種でも「様々な呼び名」を持っています。
通称名や港による名前、学名、英名、もちろん日本名もです。

そしてそこに、木材の底なし沼へはまるトラップがしかけられているのです・・ぎゃぁーーー・・・・・・

別にそんなに怖ろしいものではないのですが、とにかくハマる方は要注意。
私みたいになってしまいます(笑)。

このイペの場合、「グアヤカン」や「グリーンハート」がそのハマるポイントです。
グアヤカンというのは、かの有名な商業材中で世界で最も重いとされる材「リグナムバイタ」にも使用される呼び名で、しかも酷似している、とはいいませんが若干緑色を感じさせるところのある材面や、油気を感じさせるその仕上がり面は、リグナムバイタを知っている者からすれば納得ですし、知らない方からしても信じてしまいそうです。十分に重くて硬いですし・・・イペの方はT.guayacanと表記します。
一方のグリーンハートは、その耐久性で有名なクスノキ科の ocotea rodiei を指している場合が殆どで、海水中の材を荒らすフナクイムシに耐性があることから港湾材として賞用されてきた材で、海虫に弱いといわれるイペの仲間との違いだと思います。(グリーンハートも淡水のフナクイムシには荒らされるそう・・・その違いはどこにあるのか?これも沼の一種です・・・)

といったように、その名前一つとってもややこしく感じるところが多いのが輸入木材、特に熱帯産の木材の一つの特徴ですが、それがまた面白いところであり、それがあるからこそ一つの樹種だけではなく周辺の関連した樹種まで一度に知ることが出来るというおまけが付く良いところではないでしょうか?!

そんなイペの特徴はその重さと耐久性ですが、病・虫害、シロアリに抵抗性がある事でエクステリア用の木材として、薬剤の注入なく屋外に使用されていますから、木製の橋や重歩行用の床材、車体などというハードな用途に活躍しています。

重硬材 4





















熱帯産の樹種と言うと、同じ樹種でも色のバラつきが多かったり似通っている物が多く、識別するのが難しい場合が多いのですが、このイペは、若干黄緑色を帯びた茶褐色の色合いと、道管という組織の中にラパコールという黄色の物質が充填されている事が、他の樹種との大きな違いであり見分けるポイントになります。
ただ、加工中に皮膚炎を起こす場合もあるというので、注意が必要です。

重硬材 8





















その耐久性がリグナムバイタに似ていることから、代替材として試されていた時もあったそうですが、人間が期待するほどの結果は得られなかったのか、工業製品の方が調達できたからなのか、結果代替えはされてはいないようです。
材の質感も若干にていますが、リグナムバイタの耐摩耗性や強さには似た材とは言え、及ばなかったのかもしれません。
しかし、代用として試される位に堅牢な木材であることにはかわりありません。

重硬材 7





















また、熱帯産の樹種は加工表面がささくれたりケバだったりするものが見られるのに対し、イペ材は肌目がとてもよく滑らかなのも大きな特徴です。
しっかり仕上げると、少し油っぽい手触りをもったツルツル感が感じられ、さしずめ「絹=シルク」とまでは大袈裟にしても、気持ちのいい触感で、ササクレ立ちも少なく感じられます。

重硬材 9





















ただ、木の目が交錯しているところが多く、気をつけて仕上げても逆目のような部分が出てくるのは仕方のないところ。
それも特徴の一つですし、蛇の這ったようなその逆目の模様はイペが生き物である象徴とも感じます。

この「鉄の様」と評される木とは思えない木を使ってのデッキ材やエクステリアは、メンテナンスする事によって、それこそ木が育ってきた以上の年数を過ごすことが出来ると思います。
いくら耐久性の高い木材といえどもそのお世話は大切。
大切な住宅とともに永い時間を過ごせるように、木とともに過ごす時間を取ってあげてくださいね。

鉄とも絹とも評される熱帯産樹種の楽しさ、少しは実感できたでしょうか?!
しょうもないシャレだと一蹴せずに、お付き合いいただきありがとうございます。
これでイペの事は頭から離れなくなりましたね!?!
それこそ私の思惑通りです。へへへ・・・
木材底なし沼へご招〜待!


現実に戻ってさぁしかし、この木製鉄骨材の搬入をどうするか・・・
久しぶりに、昔その皮のむけるほどに鍛えられた私の「ゴールデンショルダー」の出番かもしれません。
材木屋は肩で木を感じるものです。
その重さや硬さ、水分量なども含めてずっしりと肩で担いで感じる事にしましょう。
搬入、そんなに遠くじゃないですよね・・・・・・・・・

熱帯材を使われる方は、その重量ゆえの搬入経路やそれに伴う運搬とサイズにも注意されることをお勧めします。




木ぃクンmuku_mokuzai  at 13:15コメント(0)トラックバック(0) この記事をクリップ! 

金具不使用リグナムバイタ木製名刺ケース(名刺入れ)


最近の年齢の若い材木屋さんでは、木材の貯木場といえばだだっ広い場所にたくさん丸太や製材品が積んであるところを想像するのかもしれません。
それくらい、木材丸太の港での貯木というのは減少してきているように思います。
ですので、もしかすると材木屋さんでも木は水に浮くか沈むかと聞かれると、一瞬困ってしまうかもしれません。
いや、港に浮かんだままの貯木を知っている方ならなおさら、木は水に浮くもんだ、と思ってらっしゃるかも知れません。

では答えはどうなのか・・・・
まずは動画をご覧になってください。






お分かりになるでしょうか。
二つの木を沈めてみる実験ですが、一方は浮き、もう一方は沈みましたね。
これらは、単純な重量は2倍違います。
大きい方が小さい方に比べて倍重たいわけです。
それなのに、小さい方がぽちゃんと沈んでしまいます。

どうしてかはこちらの解説編をご覧いただくとして、普通ではなかなか見ることのできない、沈む木材。
それも、必ず沈みます。
主要な木材中でもっとも重い(比重が大きい)木材、「リグナムバイタ」です。
因みに比重は1.2~1.35と言われています。
まぁ、わかる方にはわかると思いますが、1.2というのはめちゃくちゃな重さです。
目隠しして、角材なんかを持たされると、決して木材だとは思わないでしょう・・・
以前、木材のイベントにて「世界で一番重い木を持ちあげてみよう!」と題して子供さんから大人まで、1mのリグナムバイタの板材を持ちあげてもらいましたが、奥様方でも苦戦、子供さんなんて気張って気張って何とか上がるかどうか・・・というような状態でしたので、まぁ、その重さたるや・・・すごいものです。


今回はこの世界で一番重たい木材、リグナムバイタで製作した金具不使用木製名刺ケースのご紹介です。


金具不使用リグナムバイタ木製名刺ケース(名刺入れ)2
















先の動画で見ていただいたとおり、水に沈む木材として有名なリグナムバイタ。
世界で一番軽い(比重が小さい)木、「バルサ」とともに、よく対比して用いられますが、実はよく知られるその名前ほどどこでも見られるようなものではありません。

というのは、リグナムバイタ材は「ワシントン条約」にて厳しく輸出入を制限されていますので、そう簡単にお目にかかれるものではありません。
材木屋さんでも、名前は知っているけど見たことがないという方もしばしばです。
当然の如く植物的にも貴重な木材の為、輸出国の出荷記録をとってあります。

しかし、本当は全てに近い木材がきちんと流通できるように、特に熱帯の森林からの木材などは早くこういった証明のできる木材流通制度を確立したいものです。
日本の戦後の植林による森林は60歳程を迎え、そろそろ一人前になりつつあります。
その量は年々増え続けますので、こちらは伐ることで有効に利用することを考えないといけないので、有効活用の為のお客様に届ける証明制度。
世界の貴重な森林資源には、資源が枯渇・絶滅しないようにするための認証制度。

それぞれが必要です。
一日でも早く、有効に活用できる認証材を普及させなくてはいけません。


さて、そんな貴重なリグナムバイタ。ハマビシ科という聞いたことのないような科目に属する木材です。
大きくならない樹木で、せいぜい9mくらい、直径も大きくても45cmくらいと言われますので、なかなか材木としての利用は難しいものがあります。
しかし重い事ばかりが有名で、その用途までを知る方はほとんどいらっしゃらないと思います。

もともと、「リグナムバイタ」=lignum-vitae、「生命の木」=wood of lifeという意味を持つもので、その昔はこの種の木材の樹脂が難病の特効薬として大変よく知られていたことに由来します。
そして、その特性によって過剰伐採されたのは言うまでもないかと思います・・・
因みに日本名は「ユソウボク」といいます。


材のその他の特徴としては、その潤沢な油気が自己潤滑作用があるとして、回転による摩耗が激しい船のスクリューに用いられていることが知られています。
脂分が多く水質にも耐えますので、スクリュー材としては唯一の木材だったといわれます。
当然、これも合成樹脂などの代替材の普及により、今ではその需要も少ないと思われますが、材の持つ性質が十二分に発揮される用途に使われていたということですね。
似たような用途に、滑車やベアリング、それに摩耗せずに重量があるということでボーリングのボールにも使われていたようです!!


金具不使用リグナムバイタ木製名刺ケース(名刺入れ) 4金具不使用リグナムバイタ木製名刺ケース(名刺入れ) 木口










そして油気がすぐにわかるのが、手触りです。
材の20%!!近くが樹脂であるといわれるその材面に触れると、なんともいえない「こてこて」という大阪弁がしっくりとくるような、一種奇妙な手触りを感じることと思います。蝋を触るような感触というのが一般的にはちょうど想像しやすいかと思います。
通常、綺麗に加工した木材の表面はサラッとした印象があると思うのですが、まぁ正反対です。
大袈裟かも知れませんが、「これ、なんで湿気てるの?!」と聞いてきた方がいらっしゃるくらいだといえば、想像がつくでしょうか。
それくらいに「しっとりと」しています。
100℃以上の水(というか熱湯・・)で熱すると樹脂がでるといわれています。
私も確認はしていませんが、それくらいの樹脂分が含まれています。
そんな手触りは今の若いものではなく、古い天然の油の多いチークの材面と似たところがあるように思います。
チークも良質なものはその耐久性から、高級客船の甲板材や、家具内装材にまでしようされていますが、それらの需要はその油気がもたらす耐久性と寸法安定性に他なりません。

どちらもその油気による光沢の美しい木材ですので、チークは家具にリグナムバイタは彫刻に使用されたりという用途もあります。


リグナムバイタの材の外観はこげ茶っぽい色合いと、その中に緑の縞のようなものが混じる緑褐色の杢目は矢羽根のような模様や、独特の「ほむらたつ!」という印象がぴったりな火炎の様な杢目をかたちづくります。
また材面によっては、杢目が交錯し見る角度によってまるで絹のカーテンが風に揺れるような、広葉樹特有の杢を見ることができるのも特徴です。


金具不使用リグナムバイタ木製名刺ケース(名刺入れ) 5











今回も、稀少で且つ、リグナムバイタは年々大きな幅のとれるものが少ない中からの製作ですので、個数に限りがあります。
また、先に申し上げたように樹脂成分が多量に含まれているのが特徴ですので、本来はすこぶる接着性が悪いことで有名です。
そのため、本商品のような釘や金物での接着をしていないものには適していないのが本当のところです。


ですので、もしかすると収縮などでの開きや反りに耐えがたいかもしれません。

が、それをあえて製作しようと思ったのは、ただ稀少なだけではなく、稀少であるからこそ大切にし、また普段では触れることがないであろう材に触れてもらうことで、少しでもその材の事や、それを始めとして木材の事を考えてもらいたいがためです。
いつもながら、そういった事情の為、製作個数も少なくこの稀少材を大切にしていただける方にお求めいただければと思います。


この「生命の木」のなかに収納された名刺は、生命力に溢れ元気にあなたの分身として活躍してくれることとおもいます。

金具不使用リグナムバイタ木製名刺ケース(名刺入れ)










*ご注意

1.本文中にもありますように、リグナムバイタ材は木材としては最重量材です。そのため、小さい商品とはいえ重さを感じると思いますので、ご検討の際にはご注意ください。

重さの目安 青森ひば名刺ケース本体=25g
        上記に名刺最大収納時 =45g
        縞黒檀名刺ケース本体 =65g
        リグナムバイタケース本体 =90g   となります。

2.樹脂分の多さがこの材の特徴です。樹脂が多い為に沈むといっても過言ではありません。そのため、接着性に劣りますので、金具等を使用していない分、反りや伸縮の影響を受けやすいと思われますので、使用並びに保管環境にはご注意頂き、ご了承のうえお買い上げいただきますようにお願いいたします。



金具不使用リグナムバイタ木製名刺ケース(名刺入れ) 無塗装

素材:リグナムバイタ

価格:12600円(税込)  ありがとうございます。完売いたしました。

*ご検討の前に、名刺ケースの特徴とご注意をご覧ください。


お問い合わせはこちらから







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