空を見上げて

令和彩る紫の蝶 〜藤(フジ) 第六話 壮麗極まる九尺ふじ〜

意外にも第六話までつづくことととなったフジの物語。

最後を飾るのは、壮大なスケール、とでも形容したくなるようなフジをご紹介しておきましょう。
数々の巨樹を擁する丹波市。以前に紹介した木の根橋もここ丹波市です。
最近話題になった、お隣の丹波篠山市とは異なるので、近畿圏以外の方は要注意。

街を形成している部分もあれば山間部もあり、そして大阪や神戸から程よく山間部な為に、移住してくる方や古い物件を探しておられる方も多くあると聞きます。
確かに、とってもいいところ。
ドライブコースとしても、私はよく走らせてもらっています。

そんな丹波市に見事に咲くフジを見ることができます。

九尺ふじ 6

どうです!!
この見事な枝垂れ具合。

これが有名な白毫寺の九尺フジ!
開基は慶雲2年(705年!)という歴史ある寺で、石仏やお堂、太鼓橋など見どころも多く、このフジの花の季節には混雑するそうですが、いつものごとく、私は早朝一番訪れています。

九尺ふじ 5

それにしても、もちろんこんな見事に咲き誇るフジを見るのは初めて。
藤棚というものも各地で見ることはあるのですが、ここはスケールが違うのです。
それもそのはず、この藤棚の総延長距離(笑)はなんと120m!!
なんということでしょう!!

なので、全体を撮影しようとするとあまりにも遠景になりすぎて、紫一色の写真になってしまうのがもったいない。
これは、やはり人間の目で見るべき光景であると感じます。

九尺ふじ 2

これはL寺になった藤棚を奥側から撮影したアングルですが、一番奥はまだ後ろ。
あんまり離れると、本当に迫力がなくなる・・・
そのため、早朝にもかかわらず訪れる人も完全に2パターンに分かれていて、仰々しいカメラの重装備で固めておられる人は結構離れたアングルから・・・そしてご夫婦やコンパクトデジカメを片手の方は花に近づいたり、藤棚の下に入ったりして撮影をしています。

やっぱり、こういった圧倒的な迫力を撮影するには、きちんとしたカメラとウデが必要ですね。実感。

で、ちょっと悔しいのでスマホのパノラマ機能で対抗(?!)するとこんな感じ。

九尺ふじ 7


ちょっとおかしな感じですが、写真中央少し右の飛び出ているような部分が私の立っているところに一番近い藤棚。
こんなに長い距離で、どの部分も途切れることなく咲いているこのスケール、やはりパノラマでも伝えきれません。

寺のホームページによると、正式名称は「野田長ふじ」。
この枝垂れが今までで最長のものは、その長さが180cm!にもなったそうです。
完全に藤棚の暖簾をくぐる、的な長さだと思います(笑)。
しかし、実は私が期待していたのは180cmではありません。
このフジの通称はなんでしたっけ?

そう、「九尺フジ」です。
九尺、です。
つまり、簡単にいうと270cmです。
えぇ?!そんなに長く枝垂れてるの?!と期待してきたものの、上記の180cmもないような長さ。
仮に180cmだとしても六尺フジ、です。
これには訪れた老夫婦も、「こりゃ九尺は大袈裟やな・・・」とおっしゃってました。私だけではなかったのね。


九尺ふじ 4


いや、しかしそれでも十分な迫力であることには変わりありません。
嬉し恥ずかし、オッサンが一人早朝からカメラを抱えてフジの下にいる・・・私の事ですが、こんな年になって巨樹ではなく花に萌えるなんてちょっと意外。
このフジの下に入って見上げてみると、大瀑布の内側に潜り込んだような、フジのパープルシャワーを浴びているような感覚。
滝の豊かな水量の様に、多くの花を枝垂れ咲かせる九尺フジ。
本当に見事です。

九尺ふじ 1

昼間ならば、後ろに見える人工林との対比が何ともいえずいい感じ。
針葉樹の幹の通直さとフジのまっすぐな枝垂れ。
何とも言えない縦ラインです。

夜はライトアップもあるようなので、できることならナイトドライブででも訪れたいものです。

白毫寺自体は、ここともう一つ有名なのが奈良県。
そちらも名木「五色椿」を有する白毫寺。
同じ名前ですが、白毫自体が仏さまの眉間の上に渦を巻くように生えている白い毛を意味すると聞いていますから、お寺の名前にあってもおかしくないですものね。


山門脇には、毒蛇をも食べることから仏教の守り神とされているクジャクが参拝者を出迎えてくれます。

白毫寺の九尺フジ 15

その美しい羽根をみていると、何かの暗示にかかったかのように吸い込まれそうな感じがしますが、これも仏教の世界のうちの一つ?なのかもしれません。


ある部分では疎まれるフジをお伝えしてきたシリーズですが、このように人の目を楽しませてくれる存在でもある。
前回に提案した「森の藤棚」も悪い案ではないと思います。
山に人を呼び、関心を持ってもらう。
美しい景色も両立する。雇用も生まれる、満足感もある・・・
そんなこと実現できないでしょうか・・・・



令和の時代には、あらゆる動植物や環境が共生し発展する時代であってほしい、新紙幣のデザイン案にそんな思いを持って、フジを見つめなおしたシリーズになりました。


九尺ふじ 8


白毫寺の九尺ふじ所在地

兵庫県丹波市市島町白毫寺709

駐車場有


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令和彩る紫の蝶 〜藤(フジ) 第二話〜


日本人に親しみ深い樹木と「藤」という漢字の付く人名。
先日の藤浪くんもその一人ですが、他にも藤原、藤本、藤田、それから加藤や佐藤など多くおられます(敬称略)。

藤浪くん 1


もちろん、それぞれに由来があるんだと思いますが、樹木のフジの名の方には名前の由来とされるものがあって、「フ=増える・ふるえる」+「ジ=血・乳」がつながってフジと称されるというお話があります。
花を多くつけ、その花がふるえる様子と血・乳がほとばしる(沢山出る)様子からなっているそうです。

その様子から、繁栄を兆すものという考え方も生まれたようで、縁起のよいものとする地方もあるようです。

縁起というと、フジは縁起の良い木とされていますが、それにはちょっと複雑なお話があります。
野山においての藤は、高木に絡みついて自身の太い幹を形成することなく、空に近い光を受けられる場所を優先的に占領することができる樹種です。
つまりは、太い幹を形成している樹木をつたってその樹幹をフジが覆ってしまいます。
そうなることで、巻き付いた樹種の光合成が妨げられることと、巻き付いて登ってくることによって巻かれた樹木は樹幹が変形し、木材としての価値をなくし、場合によっては巻かれた樹木が枯れてしまうことがあります。
大きな木をよじ登り、ついには枯れさせてしまうことを天下取りにたとえることで、大きなものを乗り越え自身が成長するという縁起担ぎとされているといいます。

まきつくフジ

こんな大木の後ろから、どうやって位置を決めて巻き付いてくるのか不思議で仕方ありませんが、樹幹に上り詰めています。

ちょっと複雑な縁起物ではありますが、それだけ生命力や生き抜く力がある、ということですよね。

成長も早く、萌芽力も旺盛で刈り込みに耐え、大気汚染にも強い。
完全無欠のヒーローの様な気がしてきますが、この強すぎる性質が林業や山の環境に対してはいろいろな影響を及ぼす場合があるのです。


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令和彩る紫の蝶 〜藤(フジ) 第一話〜

ゴールデンを超越した、スーパーゴールデンウィークを作り出した平成から令和への改元の流れ。
それからすでに2か月が過ぎようとしていますが、すでに令和が浸透しているような気がするのは私だけでしょうか。

その改元と時を同じくして新しくなることが発表されたのが日本銀行券、通称(?)お札。
千円、五千円、一万円と三種類の紙幣が2024年頃に刷新されるとのこと。
デザインの詳細は別に譲るとして、そのデザインの中の一つに樹木が描かれているのに気が付かれたでしょうか。
発表からずっと気になってはいたものの他の業務の記事で遅くなりましたが、今回から少しの間、その新紙幣に描かれている樹木のお話をしていきたいと思います。
しかも、少し前がちょうどその樹木の花の時期・・・
とっても綺麗だけども、見方を変えればとっても難あり・・・

さて、その樹木がみられる紙幣はというと五千円札。

新紙幣 五千円 2


いきなり裏面ですが、表面はたくさん取り上げられているので皆さんご存知のはず。
この裏面に描かれているのが「藤(フジ)」。

おそらく、藤棚からしだれている情景なのだと思いますが、色合いもとても美しく出されていると思いますし、人目見てフジだとわかるデザインはなかなかいいのではと思います。
フジが採用された理由ははっきりとされていないのではないかと思うのですが、花の時期はとっても美しく各地に名所もありますし、野山を彩っている姿はとても華やかです。

フジは古くから日本人に親しまれていて、元号のもととなる日本の古典にも登場しその時代の人々にも、花をめでられていたものと想像します。
私のご贔屓のプロ野球チーム、阪神タイガースのエースと信じて疑わない藤浪晋太郎投手。
字は異なりますが、「藤波」というのは万葉人がフジの花をまとめてみたことによる呼称だというのですから、藤浪くんは本当に華のあるプレーヤーだと思います。
がんばれ、藤浪くん!!(ほんとに。)

そんな藤浪君をはじめ、日本人の名前の中にもフジは多く登場します。
やはり、それくらいなじみ深い樹木、ということになるのでしょうね。
次回以降にもう少し掘り下げていきましょう。


新紙幣 五千円 1



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