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他に類を見ない巨樹の一つ 〜下横場の大グミ〜

巨樹巨木の記事を書くとき、いつも気になるのは「見た目の迫力や存在感」があるかどうかと、「ストーリー」があるかどうかです。
単純に大きな木だというだけでは、私の稚拙な写真記事では魅力など伝わりませんし、記事にするわけだからそれなりの魅力的なお話もお伝えしたいところ。

そんなことを考えていると、やはり前者の巨木感が優先されてしまい(出逢った時の印象も大きいし)、ついついサイズの大きくない物は忘れがちになってしまいます。
スギやクスノキ、イチョウのように見た瞬間の驚きが無いのは、損をしているなぁ・・・とさえ思ってしまう。

そんな樹木のうちの一つを今回取り上げます。


下横場の大グミ2


広場の片隅に、しっかりとした柵を設けられている一本の?!樹木。
巨樹巨木を求めていると、視線は自然と空に向かっていくのが必至ですが、周囲を見ても大きな存在は全くない。
下調べ無しに向かったため、「これが巨樹?!」という印象になってしまいましたがそれもそのはず。
もともと巨樹という風体にはならない樹種が、数百年という年月を生き抜いた姿が眼前のそれなのです。

その名は、下横場の大グミ。


下横場の大グミ1


グミ、という植物の名を聞いたことがありますか?!
材木屋さんではもちろん扱わない樹種ですから、普通の材木屋さんは絶対しりません。
御存じなのは、植物好きな方かマニアックな大工さん位でしょうか・・・

どうしていきなり大工さんが出てくるかというと、グミは稀に大工さんの鑿や玄能という道具の柄として使われるからです。
今でも時々見かけます。
休日に山に出かける習慣のある人から譲ってもらったグミを使って玄能の柄を自作されている大工さん。

グミは比較的重硬で、手触りが良く粘り強いため、それらの用途に適していると言われます。
しかし、決して多く目に出来るものではない稀少性と、特有のクリームかかった色合いなどが所有欲を掻き立てるのかもしれません。

但し、グミは種類が多く上、それらの間において材質に差があるためにすべてが用材として称揚されるわけではないことに注意が必要です。

さて、今回のグミはどうかというと、解説板によるとナツグミに属するとあります。


下横場の大グミ9


植物図鑑によると、一般的な高さは3〜5m。
そしてよく枝分かれする、という特徴が記載されている通りに地上すぐから分岐しています。

巨樹のサイズではないと言ったこのグミですが実は、もしかするとグミの中では日本で三本の指に入るものかもしれないのです!
巨樹関連の書籍を見ていると、今回の下横場の大グミがある茨城県(弊社がある茨木市がよく勘違いされる・・・)には偶然?!日本一のグミがあるのです。
同じ県内に日本一、二を争う樹木があるというケースは非常に珍しい様に思います。


下横場の大グミ8


実はその茨城県。
巨樹にならない巨樹の宝庫?!の様なもので、このグミ以外にも、(シマ)サルスベリやヒサカキ、ハリエンジュというマイナー(失礼!)な樹種の巨樹を擁する稀有な県なのです!!

私の中での茨城県は、つくば市なのです。
ネタバレすると、もちろんこの大グミを訪れた日の主な目的も、つくば市にある森林総合研究所へ向かうため、でした。
弾丸旅でしたので、下調べも十分でなかったことが悔やまれる、日本一を近くにして訪問できないというミスを犯したわけですが、そんな珍しい土地に座する大グミ。


しかしながら、どうして公園の様になっているのか?!と不思議に思ったのが第一印象。


下横場の大グミ6


現地の解説によると、もともとここは個人所有の林の中に位置していたとのこと。
広い敷地をお持ちなものだ・・・と思っていましたが、このグミの樹齢はおよそ500年と伝承されているそうですから、もともと林として所有されていた方は相当な資産家では!!(驚)


もしかすると、相続で土地を分割される折に寄贈され公園になったのか?!、、、、
そんな失礼な邪推を巡らせてしまうのですが、おかげで普通に立ち入ることができ、このように枝に触れることもできるのですから、有難いということです。


解説板には「現在も樹勢は旺盛です」、とある(表記は平成元年!)ものの、私が訪問したのはあいにく冬。
そのため残念ながら、葉の無い状態では「枯れた」印象が否めませんでした。


下横場の大グミ4


目的とするグミ以外の緑が目に付くこともあるかと思いますが、地上付近で分岐し水平に伸びた大枝からさらに、細い枝が伸びるハープツリー的なところも見せているもののやはり、かろうじて天に手を伸ばしているという印象でした。

その印象はもしかすると、これが大きいのかもしれません。


下横場の大グミ3


まるで、SF映画の魔法界に生きている樹木が、言葉を発しようとしている瞬間の「くちびる」さながらに口を開けた分岐幹。

傷がついた部分を巻き込んだのか、それとも・・・

生き抜いてきた500年の間には様々な事があったでしょうから、何らかの外的要因かと思いますが、よくぞこの状態で幹を維持していると感心してしまいます。

この分岐幹もグミの特徴。
巨樹というサイズではないものの、この種としては非常に珍しいサイズですから古木ですね。


下横場の大グミ5


昔は、木材市場にも若干はグミの材がでていたものですが、近ごろでは殆ど見かけません。
今回思い出したのを機に、倉庫を探してみなければなりません。
どこかに眠っているはずなんだけど・・・

意外と見かけることのない樹種、グミの巨樹。
若い枝が風格を出すためにあと100年?以上、元気に生きてほしいものです。


下横場の大グミ7


下横場の大グミ所在地

茨城県つくば市高野台3-6-1

交通量は多くないものの路上駐車です。邪魔にならないように。


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木ぃクンmuku_mokuzai  at 13:30コメント(0) この記事をクリップ! 

無礼な想いもその躯ゆえ 〜伊丹のケヤキ〜

前回までのケヤキ特集を締めくくるのは、ケヤキ特有の大きさを主張するのではなく、少し失礼な想像を膨らませてしまうほどの特徴を持ったケヤキの巨樹、伊丹のケヤキです。

私がいる西日本では、ケヤキといってもそんなに巨樹のイメージは強くないと思われます。
もちろん、建築に精通している方は社寺においてのケヤキの用途を見ていると、大きな木であることは想像できるでしょうが、巨樹というイメージではありません。
もちろん、大阪府にはケヤキ巨樹の西の横綱である「野間の大けやき」が存在するんですけどもね。
訪れたことのある方は、その大きさを想像するかもしれませんが、それ以外ではそんなに大きい印象はないはずです。

そんな理由からも、ケヤキと聞いても巨大な印象をもって逢いに行くことはないのですが、この伊丹のケヤキはそんなサイズの事ではなく、材木屋としての視点で眺めてしまうケヤキでした。
その理由は一目瞭然。

伊丹のケヤキ2


見よ!この大きな瘤を!

前回の最後で、ケヤキの大きな特徴である「玉杢」を紹介しましたが、その玉杢がうまれるのは、こういったこぶの部分やそれに似た皮のふっくらと膨らんだ部分なのです。

そのため、もしやこのケヤキを製材して板や盤にしようものなら…というような想像をしてしまうのは、ケヤキの美しい杢を知っている方なら当然のこと・・・?!

もちろん、専門家から見ればこれくらい大きな瘤の場合は、前回の写真のような美しい杢は出ないかもしれないことを懸念されるでしょう。

伊丹のケヤキ3


板などの木材にした場合に、きれいな杢がでるものの多くは表面には大きな瘤はなくとも、皮の下側にひっそりと膨らみがあるものに、美しいものが多いと聞きます。

以前に自分で製材したものもそうでした。
ふくらみが大きすぎて大味な木目になったことと、外側、つまり木部のほうではなく皮の方が膨らんでいるために、板のほうにきれいな模様が出にくかったのだと思います。

必ずそんな法則ではくくれないでしょうから、一概には言えないでしょうがそんな目でも見てしまいますね・・・
罰があたるような気がします。
視点を変えましょう(汗)。


今回のケヤキシリーズでも触れた様に、現在のケヤキは街中に近いところで街路樹や公園木として見られる事が多いですが、元々は水辺に近いところを好む樹種。
そう考えると、この伊丹のケヤキは自分の生育環境にピッタリの場所に降り立った、稀有な巨樹なのかもしれません。
もちろん、その後の成長に関しては、さきほどの瘤が語るとおり、苦難があったのでしょう。

伊丹のケヤキ7


すくすくとまっすぐに育つというよりは、気候なのか虫害なのか、若しくは人の手によってもたらされた外傷によるものか?!
理由はわかりませんが、素直な通直なケヤキとは全く異なっているのは確かです。

ケヤキは建築材として優秀な理由のうち、幅広な木材を産出するという点もありますが、それに関してはスギクスノキなど他の樹種でも見られないことはありません。
しかし、それよりも広葉樹にとっては難しい条件となる「枝下が長く、通直な材がとれる」ということがとても優秀な点でしょう。
タモも同じく。
タモアッシュ)は神話で語られるほどの樹高の持ち主ですが、枝下が長いので昔から長尺用途の建築に使われる広葉樹としては、とても重宝されました。

またまた建築用途の木材としての見方に戻ってしまいますが、やはり木材として優秀であってこそ、樹種の中で冠たる扱いをうけるわけで、確固たる地位と名誉を得てきた理由となっているはずです。
旧家や日本家屋の民家などでは、300mmを超える様なケヤキの節なし大黒柱が6mを超える長さで家の中心にすわっている。
そんなところがまだ各所で見られるはず。

それが広葉樹の雄、ケヤキの姿です。

ですが、今回の伊丹のケヤキはそうではありません。

伊丹のケヤキ6


幹はボコボコ、枝葉旺盛に広がり、枝下はお世辞にも長いとは言えません。
訪問時は冬だったために、その葉を全て落としていたので姿がはっきりと見えていますが、もし葉がついていたらもう少し全体のボリューム感があり、余計と「低い傘」形状を感じたのではないかと思います。

当然、樹木は成長に余計なコストはかけないだろうし、余計なことはしないはずなので、写真の様に開けた場所で川もすぐそばであれば、上長成長は必要最小限で良かったのかもしれません。


伊丹のケヤキ8


そういえば、以前に紹介している独特な形?を持つ「木の根橋」も川べりでしたね。
同じ様な条件で成長出来たのかもしれません。
あちらも樹高はそれほどでもありません。
むしろ、その特異な根を維持するのに栄養を消費しているのかもしれません。
なにせ、土中ではなく川の上に「露出」しているんですものね。

この伊丹のケヤキの根は一体どうなっているのか。
そんな興味もわいてきます。

しかし、民家が近いとはいえ大枝や枝先が伐りとられているのは若干残念。
迫力も少し和らいでいる様に感じます。

そしてその影響かと思われる、新たな細い小枝が吹きだしています。

伊丹のケヤキ1


あぁ、そうか。
だから少し変な感じなんだ。
迫力を感じる幹にもかかわらず、どこか足りない様に感じるのは大枝が少なかったり、途中で失われていて若干不自然だから。

病木や枯れた影響かもしれませんが、全盛期?にはどの様な姿だったのか、想像してみると立派な姿も浮かんできます。
今後の成長がどの様になるものか、静かに見守れるような環境だといいのですが・・・


さて、ここでいつもの背比べ。

伊丹のケヤキ4

逆光、お許しくださいませ・・・(汗)。

やはり、こうして見ると葉っぱがほしい淋しさは否めませんが、独特の瘤をさすりさすりとしながらご満悦。
地表から湧き出そうになっているマグマだまりのような、エネルギーの塊の様なきがするその瘤に触れ、少し語り合った様な気になりました。


最後にここの地名、大阪に住むものとしてはとっても親しみを感じます。
それはお隣の兵庫県にも、その地名があるからです。
昔は大阪国際空港であった、通称「伊丹空港」のある伊丹市です。
どうしてもそれと重なり、関係の無い場所と思えないのは私だけでしょうかね・・・


伊丹のケヤキ9



伊丹のケヤキ所在地

茨城県つくばみらい市伊丹55近辺(小貝川対岸)

車通りの少ない道ですが、路上駐車になりますので邪魔にならない様に。



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