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芦生天然林

材木屋、天然林に学ぶ!


いきなりですがみなさんの、材木屋さんへのイメージをお聞かせください。

丸太を製材している、材木のプロ。
いろんな材木のことを知っている。
山の木のことも当然わかっている。

そんなイメージありますか?!

もし上記に当てはまるのならば、若干お詫びせねばなりません。
現在の材木屋さんでは、上記に当てはまるお店はほんの一握り。
丸太を製材するのは製材所さんであること、そして昔ながらの製材所さんもどんどんなくなっていること。
いろんな材木のことを知っているお店、そんなのほとんどありません。
求められるものが画一化し、専門的知識が必要ないものばかりを扱うようになり、材木のことを知らずとも利益を得られる(少し悪い言い方をしますけど)形態になっていること。

山の木のことなど、知るほどに商売がしづらくなるから知る必要もない。
材木屋さんの現状は、このような感じ。

自身の業界なんだから、担当の思うように書いてもいいですよね!
もちろん、一部の熱心な方たちは除いて、の話の一般論ですが。

中に出たように、「専門的知識が必要ないものばかりを扱う」ということで、特殊な木材やましては山のことなど気にする必要がない木材業界。

そこに敢えて踏み込もうとしている、わずかなメンバーが大阪木材仲買協同組合の中にあるんです。

弊社も所属する団体の中の、小さなクラブ活動
その中でも、今回は「山の中に学びを得たい!」との志のあるほんの一握りの方たちと、100年手つかずの天然林をめぐることとなった様子をお届けします。


天然林ツアー


京都府北部。
滋賀県に接する芦生天然林。

ガイドさんなしでは立ち入ることのできないその場所に、ガイドツアーを申し込みのりこんだのは11月も中旬。
いつもならば、紅葉も終わりを迎えているはずの時期ながら、山々は美しい情景を見せてくれる異常気象のたまもの。

嬉しくはないものの、車窓から覗く景色にしばしうっとり。
山はいいですよねぇ・・・・


基、今回は業界の勉強もかねての天然林です。
芦生の森は、一度は見ておくべきと称される植生を持つところ。
標高差とその土地柄から、様々な植生を見ることのできる、近畿では稀有な場所なのです。


天然林ツアー1


材木屋さんが何故天然林に?!という理由は後述しますが、とにかく気持ちいい。

この枯葉を踏みしめる「カサカサ」という音。
そして、少し冷たい空気。

冷えるという冷たさではなく、心地いい冷涼感。
山中特有なんだと思います。
山の木々の発する空気と、肌で感じる気温や風、そして聞こえる音や陽光と香り。
すべてが季節を表現し、五感に伝わってくる。

これが森林の持つ力。

参加者の皆さんがどのように感じたかはわかりませんが、材木屋が扱う木材の始まりはこのような山であること・・・・


あ、すこし嘘でした。

こんな山から出てくる木材を扱うことは稀有。
一般的な材木屋さんで常時扱うのは、植林人工林のスギヒノキ。

なので、実は日常見る樹種とは全く異なるんです。
しかし、それが学びの原点。


天然林ツアー2


広葉樹を扱うことは少なくても、紅葉する広葉樹を見ることは日常。
その幹の表情や葉、そしてその特徴を見ながら進む森林は、非日常。

普通に見えるスギ林も、日常に森林へ行くことのないメンバーにとっては新鮮。
しかし、ここで見るべきは同じスギでもいつもとは違うスギ。

その名のもととなっている芦生の森。

アシウスギといわれる、特徴的なスギが茂る森林は紅葉以上の勉強の場。

当日は、そのアシウスギを担当が解説しながらの場面を想像していたものの、敏腕ガイドさんの流ちょうな説明に聞きほれている間に詳報できず(汗)。


天然林ツアー3


先頭を歩くガイドさん。

某アイドルグループの元センターを務めた方と、全くの同姓同名という、通称「日吉のあっちゃん」がみんなのペースを見ながらも、見どころを逃さず引き込んでいくガイド話術に皆感嘆。

のぼりがキツイ、と言われるコースでしたが年齢制限ギリギリの諸先輩がたも、なんなく登れるのはおそらく「あっちゃん」の話術とペース配分のおかげ。

今回の企画は、人工林ばかりに目が向きがちな木材利用の立場のメンバーに、天然林の様子を感じてもらうことが一つの目的で、一般の方の場合にはその区別はないのかもしれない場面でも、ところどころに見える特徴的な景色を見ながら進みます。

人工林の場合は、ことさら暗くなる林内や間伐ということにばかり集中してしまいますが、それが天然林ではどのような景色なのかを、改めて感じる場面です。


森のクマさん


クマの痕跡などを確認しながら、少なくとも100年ほどはほぼ人の影響を受けない(人為的介入がゼロではない)この特異な場所が、どのような植生でどのような木々が生息しているのか。

木材になるかならないか、ではなくて天然林の姿とはどのようなものかを学習するには絶好の場所だったと思います。

中には、一般的には自然の象徴というか、水資源をはぐくむ象徴とされるブナの林などもあります。
ブナ自体は極相化する場面であったり、比較的冷涼な地域の印象がある樹種ですが、京都府でありながらも標高差が大きく植生が豊かな場所では落葉により陽光を享受できるアシウスギとともに共生している姿を見ることができます。


ブナ1


材木屋さんの一部では、ブナも耳にすることですが日本のブナを木材として活用する場面は非常に稀。
そんなこともあり、立木のブナを見る機会も少ないメンバーは、非常に興味深そうにしていました。

戦後の植林で「山が使える」状況になったとか、二酸化炭素を吸収固定しながら肥大生長が早いエリートツリーなどとはことなり、人の思惑から一世紀ほど離れた存在である芦生天然林。

何もかも自然が一番、ではなく自然のなかで100年経過するということの現実を見ることのできる機会。

担当がどうして同業仲間に天然林を感じてほしかったのか。
それが凝縮している景色。
人工林を利用する、というような一辺倒な考えとは異なる考え方をもっている材木屋さんを増やしたい。そんな想い。


そんな天然林トレッキングの中でも一つの見どころがここ。


芦生の森の大カツラ2


林内で最大のカツラだそうです。

担当の中では巨樹というサイズには到達はしていないものの、立派なカツラ。
それに、お手本のように美しい沢のほとりにたたずんでいます。

これをもって、水の好きなカツラの生態も知ることができますし、この生育環境こそがこの樹体をはぐくんでいるのだということが、大きな学びになるんです。

まっすぐと育成されたスギではない、落ち葉の中の巨樹。

この空間の空気感が、果たして伝わっただろうか・・・

敢えて、そんなことまでは口にしませんが、きっとこの音や冷たさや明るさなどが、参加の皆さんの心に残ったはず。


芦生の森の大カツラ3


普段は目にすることのないカツラの巨木を目に残し、帰路に就くトレッキング。

早朝からの行程はあっという間。
皆さん、満足の秋の山行き。

材木屋さんが天然林に足を運ぶのは、人が支配したものが自然ではなく、人の手が入っているものが木々ではなく、また人がかかわるものだけが木材ではなく、そして人がかかわらないものだけが自然ではない。

関わらない場所がどのような姿を見せ、自身の木材としての人生にどのようにかかわるのかを考える。
関りがないと思うことも自由だし、何かを感じることがあるかもしれない。

人がかかわることがないということを、はっきりと認識できる場所をガイドさんと行くことができる経験は、日常では味わえないこと。

それが商売に生きるかではなく、知ることの意味を感じてもらうためのツアー。

針葉樹扱い中心の材木屋だからこそ、敢えて紅葉の広葉樹林を歩く。
そして天然林を学ぶ。

その意味を、少しは具現化できたツアーだったかと思います。
天然林に学ぶ材木屋。
そんな人が、少しづつ大阪にも増えているんですよ(^^♪


天然林ツアー5



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木ぃクンmuku_mokuzai  at 13:30コメント(0) この記事をクリップ!