2022年12月06日
大当たりの始まりは、移入か自生か？ 〜元祖アテ〜
今までにも幾度か、アテのお話をしてきました。
それは、「陽疾」と表記する木材の性質を現す音でもあり、アテと通称される樹木の名称の場合があります。
前者は、弊社が不定期で発行している通信でも話題にしていますが、今回は後者のお話。
アテという樹木は、特に大阪では馴染みが無い名称です。
弊社の様なこだわりの材木屋では、幾度も扱う機会があるのですがヒノキに求められるような性質を備えるアテでは、知名度的にヒノキ以上に求められることが無いという現実もあり、関西では普及しないのだと思います。
アテは、主に石川県にて産出されるヒノキアスナロ（一般的な名称をひば）の事ですが、今回はその通称であるアテの元祖とされる巨樹にフォーカスしたいと思います。
「元祖」と称されるアテの巨樹が石川県の輪島市にあります。
道路沿いに「あすなろ公園」の案内図看板があるところを上がっていくと、民家のそばに大きな名称看板が見えていますので、間違うことはありません。
訪問時には確認してはいなかったのですが、アテの巨樹があるのは個人の敷地の奥。
写真の看板の奥は、美しく整備されている為に全く気にならないのですが、個人の所有地ということで驚いた記憶があります。
巨樹が個人の敷地内にある場合に、天然記念物などに指定されると保守費用などは負担しなくてもよいものの、整備し公開される状態にすることが条件のように聞いたことがあります。
おそらく、そういった理由で整備されたのではと思います。
現地の紹介での名称は「元祖アテ」。
しかし、先の表示看板には「あての元祖」となっています。
個人的には、後者の方が貴重な印象を受けるのですが、正式には前者が正しい登録名称だそうです。
アテは、石川県の県木であり香りも良く、非常に優れた耐久性を備え加工性の良い木材となります。
しかしその由来には永年、東北地方から苗を持ち帰って植えたことが始まり、とする説がありました。
持ち帰った苗を育てたところ、それが大当たりしたことからヒノキアスナロではなく「アテ」と称されるようになった、というお話は有名です。
しかし、現実には縄文時代の遺跡からもこの種が発見されたことから、移入されたものではなく自生していた種であることが確認されたとのこと。
この「証拠」をもとにするならば、当地の2本が元祖ではないことになるのですが、現実だけではなく夢を持って自然や樹木に接する気持ちは変わらず大切にしたいものです。
ん？！・・・2本？と思ってもらいましたか？
そうなんです。
2本あるのです、アテの巨樹。
公表されているデータでは、ともに樹高は30ｍ。
幹周りは、驚くほどではないものの一方は4mを超えるもので、数値以上の迫力があります。
天正年間に、当主が苗を持ち帰った説があったものの台風にて折損した枝などを調べたところ、樹齢は約400年ということ。
400年の樹齢でこのサイズということは、非常に生長が遅いように感じますから木材としてもよいものなのでは・・・・
なんて、巨樹の前ではしてはならない想像をしてしまいます。
いや、どうしてそう思うのかというとアテという樹種の持つ性質が理由です。
写真手前も奥も、その幹を大きくねじらせているのが見て取れるでしょうか。
樹木は、その生長に特徴を持っているとともに、環境によっても左右されるものですがアテで知られるのはやはり、「ネジレ」。
一般的な針葉樹のイメージである、まっすぐに天に向かって伸びていくイメージとは全く異なるもの。
材木屋として、その性質を理解しているからこそ余計に、先ほどの生長と樹齢の関係から木材としての質を想起してしまったということです。
しかしながら、そういった予備知識なく前にするその姿には、周囲の樹木の中でもひときわ大きく逞しく聳える様子に、巨樹としての威厳を感じることでしょう。
注連縄がかけられた幹は、アテであることが遠目でもわかる樹皮の様子と色合いを持っています。
それが、見る角度を変えると上部が白骨化や風化したような印象を受ける部分もあったり、保護として治療されたような跡が見受けられ、400年の年月を過ごしてきている証拠を見せているようです。
巨樹巡りとしては非常にアクセス良く辿りつけるために、この姿を前にしても大きなありがたみは無いのが無礼ではあるものの、写真だけで見ると山中の開けた場所の主、あるいは「能登アテの二柱」とでも称したくなるような、元祖を超越した能登あての神様の化身のようにもみえるのは、私だけでしょうか。
巨樹関連の書籍をみても、「元祖」が登場することは無いように思います。
アテ、という決して有名な樹種ではない上に、驚くような巨大さが無いからかもしれませんが、材木屋の巨樹好きにとっては紹介しておきたい巨樹であることに変わりないのです。
そんな想いからも、元祖ではなくともアテの神様としてそこにあることに意味がある、と思ってしまいます。
しかしながら、一つだけ不満をというか大きな残念ポイントは、写真撮影のアングルが全くないこと！
今までの写真も上の写真もそうですが、撮影できるポイントがほぼ決まってしまっている為に、どうやっても同じ写真にしかならない・・・
写真に際立つ見せ場が無いのです。
特に写真素人（早く上達したい・・・）にとっては、とにかくシャッターを切るばかりで、違いが出せない。
その理由は、アテからかなり離れた場所から保護柵がされている為に近づく事ができず、見上げるアングルを撮ることも、背後に回ることもこともできず、その存在感を伝えきる事ができません。
もちろん、立ち入ることはないのですがもっと近くで感じたいという想いは出てしまいます。
この場所からは、かろうじて開けているものの、それでも周囲の葉や枝がかぶさったようになり、並び立つ全体雄姿を同時に収めることはできませんでした。
もう少し、この位置からだけでも柵を近くに寄せて頂ければ、輪島市さん！
そう思ってしまうのです。
背後からはもちろん、隠れてしまうので歩き回ってみるのですがやはり無駄。
そういう事情から、同じアングルばかりの写真になってしまうのは、どうぞご了承ください。
そういった事情で、いつもの巨さ比較もできませんから、できるだけ柵に近づいて一枚撮影。
本当に来ました、の証明写真的な意味合いになってしまっていますが、やはり自宅の土台にも使い、屋外デッキをはじめ洗面や御手洗いへの使用を推奨している、「ひば・アテ・アスナロ」に想いを寄せる材木屋としては、「元祖」に挨拶しないわけにはいきません。
耐陰性の高い樹種であるアテにとって、この開けた環境は数百年の歳月で手に入れた楽園なのかもしれません。
このあと、さらに数百年にわたってその姿を維持してくれるのか、私は見届けることができませんが、元祖としてその存在を取り上げてもらえる機会が増える用、少しづつ生長を続け威厳ある姿を保ち続けてほしいと思います。
そう、この年末ジャンボ宝くじの時期、アテでお守りを作り売り場に向かうということも、一つの楽しみかもしれません。
どなたか、試してみませんか？！
元祖アテ所在地
石川県輪島市門前町浦上10-21近辺（map上の住所表記）
個人所有地ですが、整備公開されています。
駐車場あり
・弊社へのお問い合わせはこちらから
・その他の無垢フローリング・羽目板ラインナップはこちらの記事下段から
・無垢フローリング・羽目板の一覧はホームページからどうぞ
＊2019年以前のリンク表示をクリックしても過去リンク記事が見られない場合は、こちらの手順でお願いをいたします。
＊消費税10％への改定前、2019年9月以前の記事の価格は旧税込み価格となっています。お手数ですが、ご連絡の上正式なお見積の依頼をいただけますようにお願い致します。（ホームページ価格も改定が間に合っていない物もありますのであしからずご留意ください。）
木のビブリオが、それぞれの木が持つストーリーとともに、こだわりの木材をお届けするブログと、稀少木材・無垢フローリングのホームページです。
・樹種別無垢フローリングのブログ記事一覧
http://muku-mokuzai.livedoor.biz/archives/1611916.html
・戸田材木店・セルバのホームページ
http://selva-mukumokuzai.jp
それは、「陽疾」と表記する木材の性質を現す音でもあり、アテと通称される樹木の名称の場合があります。
前者は、弊社が不定期で発行している通信でも話題にしていますが、今回は後者のお話。
アテという樹木は、特に大阪では馴染みが無い名称です。
弊社の様なこだわりの材木屋では、幾度も扱う機会があるのですがヒノキに求められるような性質を備えるアテでは、知名度的にヒノキ以上に求められることが無いという現実もあり、関西では普及しないのだと思います。
アテは、主に石川県にて産出されるヒノキアスナロ（一般的な名称をひば）の事ですが、今回はその通称であるアテの元祖とされる巨樹にフォーカスしたいと思います。
「元祖」と称されるアテの巨樹が石川県の輪島市にあります。
道路沿いに「あすなろ公園」の案内図看板があるところを上がっていくと、民家のそばに大きな名称看板が見えていますので、間違うことはありません。
訪問時には確認してはいなかったのですが、アテの巨樹があるのは個人の敷地の奥。
写真の看板の奥は、美しく整備されている為に全く気にならないのですが、個人の所有地ということで驚いた記憶があります。
巨樹が個人の敷地内にある場合に、天然記念物などに指定されると保守費用などは負担しなくてもよいものの、整備し公開される状態にすることが条件のように聞いたことがあります。
おそらく、そういった理由で整備されたのではと思います。
現地の紹介での名称は「元祖アテ」。
しかし、先の表示看板には「あての元祖」となっています。
個人的には、後者の方が貴重な印象を受けるのですが、正式には前者が正しい登録名称だそうです。
アテは、石川県の県木であり香りも良く、非常に優れた耐久性を備え加工性の良い木材となります。
しかしその由来には永年、東北地方から苗を持ち帰って植えたことが始まり、とする説がありました。
持ち帰った苗を育てたところ、それが大当たりしたことからヒノキアスナロではなく「アテ」と称されるようになった、というお話は有名です。
しかし、現実には縄文時代の遺跡からもこの種が発見されたことから、移入されたものではなく自生していた種であることが確認されたとのこと。
この「証拠」をもとにするならば、当地の2本が元祖ではないことになるのですが、現実だけではなく夢を持って自然や樹木に接する気持ちは変わらず大切にしたいものです。
ん？！・・・2本？と思ってもらいましたか？
そうなんです。
2本あるのです、アテの巨樹。
公表されているデータでは、ともに樹高は30ｍ。
幹周りは、驚くほどではないものの一方は4mを超えるもので、数値以上の迫力があります。
天正年間に、当主が苗を持ち帰った説があったものの台風にて折損した枝などを調べたところ、樹齢は約400年ということ。
400年の樹齢でこのサイズということは、非常に生長が遅いように感じますから木材としてもよいものなのでは・・・・
なんて、巨樹の前ではしてはならない想像をしてしまいます。
いや、どうしてそう思うのかというとアテという樹種の持つ性質が理由です。
写真手前も奥も、その幹を大きくねじらせているのが見て取れるでしょうか。
樹木は、その生長に特徴を持っているとともに、環境によっても左右されるものですがアテで知られるのはやはり、「ネジレ」。
一般的な針葉樹のイメージである、まっすぐに天に向かって伸びていくイメージとは全く異なるもの。
材木屋として、その性質を理解しているからこそ余計に、先ほどの生長と樹齢の関係から木材としての質を想起してしまったということです。
しかしながら、そういった予備知識なく前にするその姿には、周囲の樹木の中でもひときわ大きく逞しく聳える様子に、巨樹としての威厳を感じることでしょう。
注連縄がかけられた幹は、アテであることが遠目でもわかる樹皮の様子と色合いを持っています。
それが、見る角度を変えると上部が白骨化や風化したような印象を受ける部分もあったり、保護として治療されたような跡が見受けられ、400年の年月を過ごしてきている証拠を見せているようです。
巨樹巡りとしては非常にアクセス良く辿りつけるために、この姿を前にしても大きなありがたみは無いのが無礼ではあるものの、写真だけで見ると山中の開けた場所の主、あるいは「能登アテの二柱」とでも称したくなるような、元祖を超越した能登あての神様の化身のようにもみえるのは、私だけでしょうか。
巨樹関連の書籍をみても、「元祖」が登場することは無いように思います。
アテ、という決して有名な樹種ではない上に、驚くような巨大さが無いからかもしれませんが、材木屋の巨樹好きにとっては紹介しておきたい巨樹であることに変わりないのです。
そんな想いからも、元祖ではなくともアテの神様としてそこにあることに意味がある、と思ってしまいます。
しかしながら、一つだけ不満をというか大きな残念ポイントは、写真撮影のアングルが全くないこと！
今までの写真も上の写真もそうですが、撮影できるポイントがほぼ決まってしまっている為に、どうやっても同じ写真にしかならない・・・
写真に際立つ見せ場が無いのです。
特に写真素人（早く上達したい・・・）にとっては、とにかくシャッターを切るばかりで、違いが出せない。
その理由は、アテからかなり離れた場所から保護柵がされている為に近づく事ができず、見上げるアングルを撮ることも、背後に回ることもこともできず、その存在感を伝えきる事ができません。
もちろん、立ち入ることはないのですがもっと近くで感じたいという想いは出てしまいます。
この場所からは、かろうじて開けているものの、それでも周囲の葉や枝がかぶさったようになり、並び立つ全体雄姿を同時に収めることはできませんでした。
もう少し、この位置からだけでも柵を近くに寄せて頂ければ、輪島市さん！
そう思ってしまうのです。
背後からはもちろん、隠れてしまうので歩き回ってみるのですがやはり無駄。
そういう事情から、同じアングルばかりの写真になってしまうのは、どうぞご了承ください。
そういった事情で、いつもの巨さ比較もできませんから、できるだけ柵に近づいて一枚撮影。
本当に来ました、の証明写真的な意味合いになってしまっていますが、やはり自宅の土台にも使い、屋外デッキをはじめ洗面や御手洗いへの使用を推奨している、「ひば・アテ・アスナロ」に想いを寄せる材木屋としては、「元祖」に挨拶しないわけにはいきません。
耐陰性の高い樹種であるアテにとって、この開けた環境は数百年の歳月で手に入れた楽園なのかもしれません。
このあと、さらに数百年にわたってその姿を維持してくれるのか、私は見届けることができませんが、元祖としてその存在を取り上げてもらえる機会が増える用、少しづつ生長を続け威厳ある姿を保ち続けてほしいと思います。
そう、この年末ジャンボ宝くじの時期、アテでお守りを作り売り場に向かうということも、一つの楽しみかもしれません。
どなたか、試してみませんか？！
元祖アテ所在地
石川県輪島市門前町浦上10-21近辺（map上の住所表記）
個人所有地ですが、整備公開されています。
駐車場あり
・弊社へのお問い合わせはこちらから
・その他の無垢フローリング・羽目板ラインナップはこちらの記事下段から
・無垢フローリング・羽目板の一覧はホームページからどうぞ
＊2019年以前のリンク表示をクリックしても過去リンク記事が見られない場合は、こちらの手順でお願いをいたします。
＊消費税10％への改定前、2019年9月以前の記事の価格は旧税込み価格となっています。お手数ですが、ご連絡の上正式なお見積の依頼をいただけますようにお願い致します。（ホームページ価格も改定が間に合っていない物もありますのであしからずご留意ください。）
木のビブリオが、それぞれの木が持つストーリーとともに、こだわりの木材をお届けするブログと、稀少木材・無垢フローリングのホームページです。
・樹種別無垢フローリングのブログ記事一覧
http://muku-mokuzai.livedoor.biz/archives/1611916.html
・戸田材木店・セルバのホームページ
http://selva-mukumokuzai.jp
muku_mokuzai
