神代木その他の旅立ちから・・・
先日ご紹介した神代桧の厚盤を、ついこの間お引き取りに見えました。

神代(かみよ)よりの贈り物、タイムカプセル、化石の一歩手前、というような神代木ですが、よく考えるとこの神代桧も数千年前の地球の炭素の固定されたものなんですね・・・
はるか昔の日本の空気中の二酸化炭素を光合成し、その体内に取り込みそのまま現在によみがえったもの。
今回の神代桧には数千年前の、およそ9.9kgの炭素が貯めこまれている事になります。
すごいですねぇ・・・・
そのサイダーの様な香りもさることながら、その木質部自体も数千年前にできたものである事に、当たり前ながらに驚いてしまいます。

削るまでわからなかった桧の油も出ています。どおりでいい香りがするはずだ。

また、柾目にはとても細かい木目が入っていたりして、良質の無垢天井板をおもわせます。
更にこの後、大工さんの手によって加工が加わり、正式に生まれ変わる事になるので、出来上がりがますます楽しみですが、その反面少し淋しくなるようなところもあります。
この神代桧厚盤以外にも、先日から真桜や木曽桧、杢木などなどが旅立っているので、材木屋としては喜ばしい事でありスタッフからすると、やっと売れたか・・・というような、弊社に来てから5〜10年以上経過した物が気に入っていただいてめでたく旅立ちがあるわけですが、私にしてみれば彼女(彼ら?!)は今まで可愛がって眺めてきた子どもたちの様なもの。
材木屋としてではない思考(嗜好?!!)も頭の片隅で働くわけです。
あぁ、この杢目がみられるのも今日までか・・・とか、超希少材になると、うーー、やっぱり惜しいなぁ・・とか言う風に思ってしまいます。
当然、木材に異常な熱を上げる弊社の様な変わった材木屋に問い合わせて下さるような方には、木材を無駄にするような方はいないのはわかっているのです。
でも、本当に「嫁入り」という言葉がぴったりとくるように、出荷の前日などにはとても淋しくなったりするのです。(といいながら、子どもには女の子はいないんですが・・・・・)
木材というのは、当然ながら元々は一本の樹(または樹林)です。
そこから、運命的に私の元にたどり着き、または出会った事によって弊社の倉庫に入るわけですが、全てがそのままの形で旅立っていくわけではありません。
生木の場合は割れもしますし反りもします。
買い付けてから知らない間にフトドキモノによって傷が付いている事も!!
そんなこんながありながら、一年一年乾燥させていくわけですがその間の時間が、「あー、この時一緒に入れてきた材はめっちゃねじれたなぁ・・・」とか「おぉ、君でついに最後の一本か・・・」と感慨深くなることもしばしば・・・
おっと、なんとアホな奴や、と思う方はもういらっしゃらないとおもいますが、結局はやはり、自分がそこまで思える材料かどうか?ということが、弊社の在庫材料の違いなのかもしれません。

こんなになったり・・・

こんなんなったり・・・
アホやなぁ、あんな材料こーとるわ、とか、こんなんどないしはるんですか?!ってなことはいつものこと。
想いのこもった材料に共感し、その材料に新たな命を吹き込む方がいてくれればそれでいいのです。
商売人はこんなんじゃアカンのでしょう。
もちろん、私もそればかりをしているわけではありません。
ですが、特別な材料を探しているお客様には、そんな特別変わった材木屋がいてもいいじゃありませんか。
いや、いるべきです。
これからの時代には、更に稀少材となるものが増えるでしょう。
それを少しでも永くお届けしたい。よろこんでもらえるようにしたい。
そのために、ちょっと変わった木を扱う材木屋が必要です。
もうこじつけだとしても構いません。自分の惚れた材料を扱い、割れや反りや曲がりのロスも抱え込みながら、求めてこられるお客様を待つ。木と対面した時のお客様の顔がパッと明るくなる瞬間が嬉しくて。
ただの規格のある「商品」となってしまった木材には、用途以外の魅力は薄いです。
商品は売れなければ不良在庫となります。早く売れないといけないスピード勝負。
しかし、「これしかない」というような想像力をかきたて、その物の香りを想像し削られた材面に興奮するような木材は、喜びの塊でありまさしく「木」であると思います。
物を売るのも商売、喜んでもらうのも商売。
アホでもえぇんです。アホしかもってない材料もあるんです。
有名でなくとも、偉い人とつながりはなくとも、大阪の茨木市でボチボチいきます。
ちょっと変わった材木屋が好きや、というかたは応援してもらえると嬉しいです。

それでも、折角の神代椿がこんななったらちょっとショック・・・(でも、なんか黒柿みたいな雰囲気になってきましたよ!!)