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神代木

神代博打にのるかそるか!?


男は度胸、女は愛嬌とはいいますが、材木屋も度胸が必要な時もあるけれども、私みたいなタイプにはあんまり度胸があるとエライ事になってしまうので、愛嬌程度で丁度いいんではないかと、自分に言い聞かせています。

いっつも市場に行く時は、踏ん張って買わないつもりで行きますし、いいものがあってもなるべく低ぅ〜く見積もっておくようにしています。
踏ん張って買わないつもりでなにしに行くねん、となりますが、私の場合はそれ位に自制しておかないと、あれもこれもと大変です。
たとえば仕事柄、そんなに必要ではないように見えるオシャレ着も、普段は殆ど買うことがないのですが、一度買うと決めたら貪り食うかのように買い漁ります。
この性格を自覚しているので、値段の張る木材などはよっぽどのことがないと買えません。

そのよっぽど、というのはこれのことでしょうか・・・?!

神代原木 1


このボロいけどデカい代物はっ・・・・
そう、神代木です。
私の大好きな・・・・

神代原木 2


私の背丈と比べてもまだ大きい。
普通の人だとその大きさだけ見て感心して、えらく汚れているなぁと思われることでしょう。
確かに他の丸太よりもくすんでいて埃をかぶっているようです。
それもそのはず、神代木は海や川、土の中に埋もれていたものですから、土や泥が付いていて当然なんです。
この原木は、鳥海山近辺で出土したものだそうです。
どうも最近出てきたところの様で、皮に近い部分は未だに水分を含んでいてズブズブでした。
どれくらいだろう昔、おそらく火山によって流されたのでしょう。いたるところに焼けた跡が残っています。

因みにこの神代木、幅は大きな原木に見えますが、実は丸太だと仮定すると半分以上が無い状態です。
それは埋もれているうちに分解されてしまったこともあるのでしょうけれど、溶岩で焼けたか裂けたかしたために、失われたのではないかと想像します。
まだ半分がのこっているのではないか?!と夢を持つ方もいるかもしれませんが、こんな状態で出てくるのも神代ならではです。


また、最初は樹種が何かと気になって近づいたのですが、よく見てみるとたくさん杢華が咲いているではありませんか!!

神代原木 5

表面のポコポコしたこれです。
これが製材すると玉杢とかいわれる、何とも言えない柄?!として現れるのです。
これが結構たくさんあるので、もしかするとすごくきれいな板や盤が取れるのかも!!と早くも購入した後の製材を想像してしまうのは取らぬ木の虫の皮算用。
ただ、こればっかりは製材してみないとわからないところで、こんなにたくさんポッコリしていても、中身は全然普通の木目だったりするので、これは博打です。
杢を期待して大金を積んで競り落としても、果たしてそれが杢に出るかは保証されていませんから、鋸を通すまでハラハラドキドキ・・・

さて、お金の話は別として神代木のもう一つの楽しみはその色合い。
もちろん、普通思い浮かべるのは少し黒っぽかったり茶褐色だったりだと思うのですが、神代も最初からそんな色ではないんです。
以前に神代椿を製材したのを思い出してください。

神代丸太製材 3


この色合いがみるみる間に変色。
神代は空気に触れることによって深みをもった色合いに変色していく、その過程もとても魅力的なところなんです。
この原木も同じ。
見てください。
ここ、皮をはぐ前はこんなですが・・・

神代原木 3

一皮むくとこうなります。

神代原木 4


わかりますか?!
中央の少し緑に見えるところ。
ここが空気に触れていなかったところ。
鮮やかな緑です。

こうしてみるとまるで蛙がいるかのように綺麗です。

神代原木 6


これが私の心を魅了する神代の魅力。
乾燥で暴れようが割れようが欲しくなる一因です。
あぁ、なんとも罪な存在。

今回、少し気張って材木屋サン仲間で共同購入しようかと、同じ船に乗ってくれる船員を募って挑んだ神代の争奪戦。
そんなに敵船はいないかと思いきや、原木の傍で有力そうな「得意先」さんに電話で購入を打診する人もいれば、あわよくばとチョロチョロと下見に来る(欲しい人間にはそう見える!!失礼。)人もいて、なかなか手ごわい船合戦・・・

どうなる事かと思っていましたが、結果私たちが考えていた上限金額という波を超えて船を進めた方(超強敵だったらしい・・・)が購入権を獲得されました。
私たちのつかの間の夢の船出も博打も実らずで終了。
少し大きな買い物になりそうだったのですが、これも縁のもの。
今回は神代に手をとってもらえなかったという事で諦め。
またの縁を待つことにしましょう。

今の私にはこれが精一杯・・・

神代原木 7


軽く持てるようになったら「大人買い」してやるからな〜、待ってろよー神代。



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神代桧の講義机


以前に御紹介していた神代桧、覚えていらっしゃいますか?!
神代桧と言うとラムネの様なサイダーの様な香りの漂う、神代(かみよ)の贈り物ですが、先日、その神代桧の厚板をお買い上げいただいたお客様が、わざわざ御足労いただき、完成後の机の写真を見せてくださいました。(以下写真はデータです。)

講義机 1














いかがです?綺麗な色合いと仕上がり具合です。

講義机 4
























講義机という形で使われるそうですが、平時はしまっておけるように足が取り外せるようになっている事も重要なポイント。
このように足をおさめる箱まであるのです。

講義机 2













開けると納品詳細一覧が・・・・

講義机 5















それにこの脚。
本漆を施してあるそうです。
すごく時間がかかったのだとか。
その値打ちあって、深い輝きが写真からも伝わってきます。

講義机 1














これら神代桧の様な特殊な材料は、いつでもあるわけでもなく、あっても寸法が希望に添えない場合が大半です。
そのため、このように隅々まできっちりと使っていただくと、神代の命も生きるというものです。

神代(かみよ)の時代の桧との相乗効果で、講義が更に有意義なものになる事を祈っています。


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神代木その他の旅立ちから・・・


先日ご紹介した神代桧の厚盤を、ついこの間お引き取りに見えました。

神代桧 プレナー加工済
























神代(かみよ)よりの贈り物、タイムカプセル、化石の一歩手前、というような神代木ですが、よく考えるとこの神代桧も数千年前の地球の炭素の固定されたものなんですね・・・
はるか昔の日本の空気中の二酸化炭素を光合成し、その体内に取り込みそのまま現在によみがえったもの。
今回の神代桧には数千年前の、およそ9.9kgの炭素が貯めこまれている事になります。
すごいですねぇ・・・・
そのサイダーの様な香りもさることながら、その木質部自体も数千年前にできたものである事に、当たり前ながらに驚いてしまいます。

神代桧 板目


 削るまでわからなかった桧の油も出ています。どおりでいい香りがするはずだ。









神代桧柾目




 また、柾目にはとても細かい木目が入っていたりして、良質の無垢天井板をおもわせます。






更にこの後、大工さんの手によって加工が加わり、正式に生まれ変わる事になるので、出来上がりがますます楽しみですが、その反面少し淋しくなるようなところもあります。

この神代桧厚盤以外にも、先日から真桜や木曽桧、杢木などなどが旅立っているので、材木屋としては喜ばしい事でありスタッフからすると、やっと売れたか・・・というような、弊社に来てから5〜10年以上経過した物が気に入っていただいてめでたく旅立ちがあるわけですが、私にしてみれば彼女(彼ら?!)は今まで可愛がって眺めてきた子どもたちの様なもの。
材木屋としてではない思考(嗜好?!!)も頭の片隅で働くわけです。

あぁ、この杢目がみられるのも今日までか・・・とか、超希少材になると、うーー、やっぱり惜しいなぁ・・とか言う風に思ってしまいます。
当然、木材に異常な熱を上げる弊社の様な変わった材木屋に問い合わせて下さるような方には、木材を無駄にするような方はいないのはわかっているのです。
でも、本当に「嫁入り」という言葉がぴったりとくるように、出荷の前日などにはとても淋しくなったりするのです。(といいながら、子どもには女の子はいないんですが・・・・・)

木材というのは、当然ながら元々は一本の樹(または樹林)です。
そこから、運命的に私の元にたどり着き、または出会った事によって弊社の倉庫に入るわけですが、全てがそのままの形で旅立っていくわけではありません。
生木の場合は割れもしますし反りもします。
買い付けてから知らない間にフトドキモノによって傷が付いている事も!!
そんなこんながありながら、一年一年乾燥させていくわけですがその間の時間が、「あー、この時一緒に入れてきた材はめっちゃねじれたなぁ・・・」とか「おぉ、君でついに最後の一本か・・・」と感慨深くなることもしばしば・・・
おっと、なんとアホな奴や、と思う方はもういらっしゃらないとおもいますが、結局はやはり、自分がそこまで思える材料かどうか?ということが、弊社の在庫材料の違いなのかもしれません。

樺幅広板の反り



 こんなになったり・・・










ナラ板目の割れ



 こんなんなったり・・・










アホやなぁ、あんな材料こーとるわ、とか、こんなんどないしはるんですか?!ってなことはいつものこと。
想いのこもった材料に共感し、その材料に新たな命を吹き込む方がいてくれればそれでいいのです。

商売人はこんなんじゃアカンのでしょう。
もちろん、私もそればかりをしているわけではありません。
ですが、特別な材料を探しているお客様には、そんな特別変わった材木屋がいてもいいじゃありませんか。
いや、いるべきです。
これからの時代には、更に稀少材となるものが増えるでしょう。
それを少しでも永くお届けしたい。よろこんでもらえるようにしたい。
そのために、ちょっと変わった木を扱う材木屋が必要です。
もうこじつけだとしても構いません。自分の惚れた材料を扱い、割れや反りや曲がりのロスも抱え込みながら、求めてこられるお客様を待つ。木と対面した時のお客様の顔がパッと明るくなる瞬間が嬉しくて。

ただの規格のある「商品」となってしまった木材には、用途以外の魅力は薄いです。
商品は売れなければ不良在庫となります。早く売れないといけないスピード勝負。

しかし、「これしかない」というような想像力をかきたて、その物の香りを想像し削られた材面に興奮するような木材は、喜びの塊でありまさしく「木」であると思います。

物を売るのも商売、喜んでもらうのも商売。
アホでもえぇんです。アホしかもってない材料もあるんです。
有名でなくとも、偉い人とつながりはなくとも、大阪の茨木市でボチボチいきます。
ちょっと変わった材木屋が好きや、というかたは応援してもらえると嬉しいです。

神代椿杢の割れ


 それでも、折角の神代椿がこんななったらちょっとショック・・・(でも、なんか黒柿みたいな雰囲気になってきましたよ!!)









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神代桧厚板が旅立ちそうである


最近は一時に比べて落ち着いていた「神代木」へのお問合わせ。
通常の木材であっても、お尋ねの寸法などにぴったりのものというのはなかなか無い場合が多いのですが、神代木となるとその物の数が少ないうえに避けられない反りや割れなどが入っている場合が多いので、なかなかすぐに採用決定とは行かないのですが、今回は意外な程にばっちりに近い寸法でした。

神代桧 1
























まぁまず出るものではないと思って、見つけた時にはいつも触手が伸びる神代木ですが、実はこの神代桧は他の神代杉に交じっていた為に、当初は神代杉だと思っていたものでした。
それもそのはず、神代桧などそおは出てきません。
以前に金具不使用神代桧木製名刺ケース(名刺入れ)をつくった事がありますが、その材料以外では出会っていなかったのです。
それが数年前に神代杉の材を仕入れた時に入っていたのが偶然というか、必然というか・・・
今回の厚板と柾の盤が含まれていたのですが、私も削ってみるまでまさか神代桧だとは思っていなかったので、気がついたときは「一攫千金」まさにこのこと!というような気持ちになったものです。

神代桧柾盤



 まだ手入れしていませんが、神代桧の柾盤です。割れはありますが、稀少ですね〜。







それから数年、貴重な神代桧が旅立つことになりそうです。
先日遠方より、加工をしていただく宮大工さんをお連れになってお客様がご来店されました。
厚さなどはご希望と異なっていたものの、長さや幅はほぼご希望寸法。
これぞ巡り合わせ。出会う運命だったのかもしれません。

神代桧 2














神代特有の目まわりという割れや、傷、その他は散見されますが、数千年の歴史にそれぐらいはあたり前!
それを受け入れるのが使うものの使命!!
といいたくなるような、貴重な材です。
生の桧の少し「ツーン」とした香りとはまた少し違う「甘いサイダーの様な香り」は所有者だけの楽しみです。

まだ正式ではありませんが、気に入っていただいているので是非嫁がせたいものです。
また仕上がりも気になるところ。記事で紹介できるかなぁ・・・
できればご紹介しますね。

神代桧 3


























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琥珀(こはく)に思う


先日の新聞にロマンのある記事を見つけました。
それは、「恐竜や初期の鳥類に生えていた羽毛がカナダ西部で発掘された白亜紀の後期(7000万年前!!!)の琥珀(こはく)に閉じ込められた状態で見つかった。」というものです。

私は特に琥珀を蒐集しているわけでも、化石マニアでもありませんが、その記事の続きが大切です。
その羽毛は、細部の構造まで琥珀の中に保存されたままだったそうです。

琥珀とは古くから、宝石としてやお守りとして人々に愛されてきた歴史のあるものですが、その材質は太古の恐竜や鳥類が栄えていたであろう時代の木の樹液の化石化したものです。
とても美しいブランデーやウィスキーのような色合いや、赤身がかっていたり緑色がかっていたりするものもあり、見るものを虜にするような自然の産物です。

実は私も、数年前に東北に旅行をした際に、琥珀の記念館に訪れるまでは樹液の化石だとは知っていましたが、それほどの興味はありませんでした。
しかし、琥珀の多くはアガチス(*)という現存する木の仲間の樹液からできている物が多い事と、様々な琥珀の種類があること、そしてその時代背景や珍しいものでは「インセクトアンバー」といって、琥珀の中に虫が当時のままの姿形で残っているものもあり、時の流れをより一層身近に感じる事が出来たのです。


*アガチス(カウリパイン。パインの仲間ではないが・・・)
桧や杉の様な針葉樹であるが、珍しく南半球に自生している、。日本には「南洋桂」や「新カヤ」などと言って将棋盤や碁盤などに使用されていた。カウリという名で、ホームセンターなどでも棚板を目にする事がある、ナンヨウスギ科の植物。
ニュージーランドのノースアイランドに住むマオリ族は、この木の巨木を「tanemahuta(タネマフタ。森林の王様、森の紙。)」と呼んで大切にしている。その由来は、一帯の林冠の更に上樹高45mの高さに達することからであるらしい。そのタネマフタは直径4.38m!!、高さ51.2m、推定樹齢1200年ということ。
フィリピンでは Almaciga アルマシガ(日本では一般にアルマシカとして流通。)と呼ぶ。普及品の和室の床柱用として多く流通していた。 


インセクトアンバー以外にも、植物が閉じ込められている物もあります。
それらも虫たちと同様に、その時代を映す鏡として貴重な存在なのですが、大抵の場合、琥珀には残るのですが、平らに押しつぶされた状態で化石となります。
そのため、今回の様に羽毛までわかるような状態で発見されることは極めて稀なのです。
もしかすると、これが発端で恐竜時代の研究にまた新たな発見があるかもしれません。

しかし、琥珀がアガチスの樹液(全てではないけども・・・)だと知ってとても感動した事は忘れませんが、時代背景は違えど、やはり植物は神秘的ですね。
7000万年とはいかなくても、神代木も数千年の時を経て現代に現れるわけですし、琥珀の様に化石になっている木は珪化木や木化石として出現します。
それらはともに人知を超えた世界からの贈り物だと思います。
この美しさを見て、もっと地球を、自然を考えてほしいという小さなメッセージかもしれません。
数百年後の世界において、人類が発見するものが自然の産物「化石」ではなく人類の手に負えない物質「核のゴミ」ではないことを切に願い、残暑厳しい(この言葉は不適切ですが・・・)事務所にて節電することとしましょう・・・



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木がつなぐ「人と人」


材木屋で木を販売して一番嬉しい時は、そりゃ当然お客様に喜んでもらった時。
これはどんな業種でも同じことでしょうが、喜んでもらうといっても、材料を気に入って喜んでもらうこと、人柄で喜んでもらうこと、いろいろとあるのですが、まさか今回の様な形で喜んでいただく事になるとは、材木屋の新たな喜びを感じた瞬間を記録したいと思います。

それはある日の事。
外出から帰社すると、私の机の上に見慣れない緑色の封筒が置かれています。それもそこそこ厚みがあります。
なんだろう?!何かの勧誘や、名簿を参照して送られてくるどこぞのコマーシャルかと思っていたのですが、よく見てみると材木店さんの封筒になっています。
それも、結構遠く離れたところからです。

あれれ?!いつお会いしたかな?!と記憶の弱い頭を振ってみたのですが、どうも記憶の棚には見当たりません。
開ければわかるか・・・と、封を切ろうと手に取った瞬間、封書の中身のそれが木材である事がわかったのですが、その事を気付かせたのは手触りや重さではなく、「香り」でした。

帰社直後から事務所内に何か香る、と思っていたのですが、私の机の隣の社長のところにも香る木が置いてある為、今日は良く香る日だな(材木屋では、日によって香りのする木が違います。今日は桧、次の日は樟、雨が降ると米桧・・などなど。)とおもっていたのですが、実はその香りの正体はこの封筒でした。
それも、私の好きな香りで弊社倉庫でも香る物・・・・

実はこれでした。

神代のお便り














わかるでしょうか?神代樟(じんだいくす)です。
弊社の記事にて幾度か紹介しています、紀州にて河川より出現した巨躯を持つ神代樟。
それと同じ香りがします。


紀州有田川神代樟1紀州 有田川神代樟4







この距離感わかるでしょうか・・・これが紀州神代樟です。


実は、私の記事をご覧になった材木屋さんが、以前四国にて出た神代樟を製材したことを懐かしんでくださり、わざわざ達筆なお便りとともに36年前に出土したらしい神代樟の端材を送ってくださったのでした。

その時の神代樟もかなりの大きさだったそうで、仏像彫刻用に出荷なさったそうです。
確かに通常の樟とは違い、悠久の時、眠りについていた神代樟はどこか熟成したというか、円みのある香りを漂わせるのです。
仏様からの香りとすれば、涼しげな神聖さの中に円みのあるような芳香と感じ、仏像の姿をより身近に感じる事の出来るものになった事でしょう。

近年出現した神代樟とは若干色目が異なる様にも思いますが、いずれにせよ時を経たとは思えない素晴らしい芳香です。


芳香と言えば、以前にも弊社記事をご覧になった方から白檀を送っていただいた事があります。
その時も、商売ではないのですが幾度かのやり取りをさせていただき、送っていただいた次第です。
見知らぬ者同士が「木」という素晴らしいものを介してつながる。
その中に喜びを見出し、時には感激する。
商売でも、こんなに嬉しい事はありません。

今回も、弊社の記事をご覧いただいて昔を懐かしんでいただき、手紙まで頂戴しました。
そのお気持ちがとても嬉しく、人と人がつながる、「木がつなぐ人と人」を心に沁みて実感しました。



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神代割ってまた神代 −神代栂との出会い−


さてお待ちかね(?!)の新・神代の樹種紹介です。
先日のこれ。


新・神代







 良い木目ですねぇ。

















ぱっと見た感じはやはり神代杉に似ているでしょうか。
中央の2本は割れ止めを塗布されているため色合いが濃く写っています。

さてさて、杉に似ているけども杉ではないんです。
私の今までの神代木記事でも紹介していなかった樹種。
しかも、私も今まで見た事のなかった神代です。
その正体は「神代栂(じんだいつが・じんだいとが)」でした。


神代栂 2














どおりで針葉樹なのに重さを感じる(生木だからというのも手伝ってですが)し、とてもよい木目です。
この栂という樹種については、国産地栂(じつが)幅広無垢一枚物フローリングの記事の時にいろいろと書いていますので、是非そちらも参照していただきたいところです。

この栂という木は、読んで字のごとく。
その字の由来が、「木の中のおかぁさん」だから、なんです。
というのも、木偏に母(はは)という字を書いて栂(つが)と読みますが、母=おかぁさんは子供にお乳を与えますよね。
だから、母という漢字の真ん中の「ちょんちょん」(なんていうんだろう・・・)という点は、乳房を意味しているそうなので、これを続け字で書いてしまうと正式にはいけないのだとか、聞いた事があります。
その乳を意味する漢字を用いている母という字が木偏とともに用いられている栂は、木の幹を傷つけると「お乳のような白っぽい樹液がでる」ことから、木偏に母の字をあてて「栂」となったそうです。

良い話ですよね。

そんな日本の栂の木ですが、植林という事がされていないことで天然林からの木材が基本になるのですが、現在では入荷が少なく安定しないこともあり、なかなか見る事の出来ない貴重な樹種になってしまっています。
普通の栂でもそんな状態なのに、今回は「神代(じんだい)の栂(つが・とが)」です。

どれだけ珍しいか・・・
私も初耳でした。

栂普請といえば、関西では桧普請よりも立派だとされ、古くから愛され使われてきたのですが、その理由もわかります。
前回ご紹介した、構造材や階段他の化粧仕上げ材に栂を使用した「現代版栂普請の家」を思い出せば・・・


さすがに神代栂普請とまではいきませんが、薄板から框材、その他が入手できましたので、栂普請の中に神代栂をあしらうという「現在と神代の粋な栂使い」は可能かと思います。


神代栂 1






 厚みのある栂らしい節板もあり、短い杢板もあり。

















こりゃ、栂だ!というしっかりとした大きな節ですね。

神代栂 3














良材とはいっても、神代。やはり少し傷や割れはあります。
いたしかたないところです。
余すことなく有効に使いたいもんです。

神代栂 6















神代栂 4














この神代栂ですが、まだまだ製材したてですので、残念ながら?これからじっくりと弊社倉庫で寝てもらう事にします。
神代(かみよ)からの眠気をとるために、しばしの休息です。
数千年単位の時間を過ごしてきた神代栂へのしばしの休息時間です。

数年後にお渡しできるようにしっかりと乾燥をしてもらわねばなりません。
いつご案内できるか・・・気長に待っていてくださいね!!
乾燥期間中にも神代栂をご覧いただけますので、お問い合わせをくださいませ。


神代栂 5


























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神代割ってまた神代 −神代丸太の色変化−


近頃、通常の弊社業務自体はそんなに繁雑ではないのですが、私自身がやるべきことは相変わらず山積状態でして、新しく入荷した木材の管理や、お客様に見ていただいた後の倉庫の材の片付けなども全くできていない状態で、少し時間に余裕ができても、何から手をつけていいのやらわからなくなり始めています。
そろそろ、本腰を入れていかないといけません(汗)。

そこで一番早く片付けられそうな丸太の製材を始めることにしました(意外と場所も占領していましたし・・・)。
といっても、弊社の製材機では丸太は挽けないので、大きな鋸のある製材所に持ち込んでの製材です。
今回製材したのは、お楽しみのある「神代木」の丸太です。
神代木は、ご好評いただいている金具不使用木製名刺ケース神代桧神代朴)や神代タモ等の記事の時にお話していますので、もうご存知いただいているとおもいますので、説明についてはそちらを参照していただくとしましょう。

今回の丸太は火山活動での埋没だったのでしょう。焼け焦げた様な後が見られるところを残しています。



神代丸太製材 1














さて製材。
なかなか立派な丸太。いいものが取れますように。



神代丸太製材 2














神代木の製材のお楽しみは、丸太を割った瞬間にやってきます。
それはこういうこと。


神代丸太製材 3














製材した直後です。
芯材部分の赤い色合いが見られます。が、普通の木材の様に「赤身と白太(芯材と辺材)」というような分かれ具合とはちがいますね。
というのも、神代木のような地中や水中に1000年などという単位で埋もれていたものは、土中の成分などと反応しその木質の色合いを徐々に変化させ、いわゆる「神代色」というような、あの独特の渋い黒褐色や灰緑褐色の色合いを呈するようになるのですが、空気を遮断された状態で時を経てきた為、彼らを製材した場合、鋸を入れ木の内部が空気に触れるとみるみるうちに変化があらわれるのです。

製材して15分後くらいには既にこんな状態の色合いに変化してしまうのです。



神代丸太製材 4














コレがなんともいえない変化です。
写真では伝えにくいのですが、まさしく「布や紙が水分を吸い込んでいく瞬間」のようにスーッと変色していくのです。



すごいなぁ、神代。
幾千年の時を超えて現代に現れる木々というロマンも心を揺さぶるもがありますが、この変化も神代の醍醐味といえるのではないでしょうか・・・
なかなか神代の製材など立ち会えるものではないので、少々高い買い物であったとはいえ、頑張って丸太を仕入れた価値があったというものです。

と、一人でニヤニヤしながら製材を見守っていたのですが、実はこういう時って続くもんなんですね。
何が続くのかというと、この丸太を製材する数日前から在庫の神代木の手入れや片づけをしていて、いつもになく神代を触っていたのですが、なんと、製材後にさらに又新たな神代に出会ってしまったのです!!

それはこれ。


新・神代








 何だと思いますぅ?!
うへへへへ。思わずニンマリ。

 この写真だけでわかる人はすごい。ほんとすごい。私の記事を読む必要はないでしょう・・・(笑)








さてさて、何の神代かを少し考えてくださいね。
因みに私が今までの記事で紹介してきた中には掲載されていない「新・神代」ですよ。

さぁ〜て、次回の樹種紹介まで少し考えてみてくださいね。
次回をお楽しみに!!



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発見!!神代イス(ユス)


念ずれば通ず

以前に紅木紫檀を入手したときに実感した言葉ですが、やはり何でも心に決め思うことが大切だと、また改めて感じました。
それはこの出会いです。


神代イス(ユス)原木2














この原木、みたところ神代木だということはすぐにわかったのですが、杉などの針葉樹ではない・・・・広葉樹です。
でも、いままで見てきたような神代樟神代欅などとはどう見ても違います。


神代イス(ユス)原木1














なんだろうと土場の方に聞いてみたところなんと、「神代イス(ユス)」だというではありませんか!!
正確には土埋木(どまいぼく)で川から出たんです、ということでしたから、いつくらいのものかはわかりませんが、神代などの埋もれ木に見られる灰緑褐色の変色具合がありそうなので、材になったときが楽しみですが、それにしても、手頃なイスノキ(ユスノキ)を探していたところに、なんと言うタイミングで現れるんでしょう!!
ほんと、念ずれば通ずです。
でっかいものに通じましたね。

イスノキ(ユスノキ)については、近日入荷する予定ですので、そのときに詳しくお話したいと思いますがさてさて、この神代イス(神代ユス)の丸太。実はこれから競りなんですねぇ・・・
がんばって入手に勤めたいところですが、おそらくいい値段がつくだろうし、神代ですから材にした時のロスを考えるとあんまり高いと手が出ないし。強敵が現れないことを祈っています。
通常のイスの木以外に、もし入手できればまた、神代イス(神代ユス)についてのお知らせをしたいと思います。

皆さんも願い事、念じ続けてくださいよぉ!!




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中国磁器と神代木


今年は(も、かな?)中国の話題が多かったように感じるのは気のせいでしょうか?!
私が研修に出た先の宿泊地でも、またレジャーに出かけた先でも、かなりの数の中国の方をお見かけしました。
今までは、そんなに多くの方が日本にいらっしゃっているような気はしていなかったのですが、やはり成長国なんだなぁと感じています。


さて、その中国の建設現場に宝の山があるそうです。
レアアースや、一昔前のように鉄や銅などではなく、明や清といった時代の「磁器」が発掘されるからです。
陶器ではなく、中国原産といわれている磁器です。
英語で「china」という言葉の意味の中に、磁器という意味も含まれているくらい、中国では古くからの歴史のあるものだそうです。
なんでも、殷王朝(紀元前17世紀~前11世紀)中期からの歴史があるそうで・・・・
さすが、中国・・・


その「発掘磁器」を高値で売りさばくことを生業としている人たちがいるそうです。この辺もさすが中国です。
建設現場の警備員や現場監督を買収して関係を築き、深夜の工事現場に侵入し、シャベルと懐中電灯片手に、工事によって掘り起こされた地底に入り込み土を掘り続けるそうです。
周りが土のため、いつ崩落するかわかない中での作業だそうですが、もちろん違法。
それでも、元宮廷の倉庫やゴミ捨て場だった場所などでは、「宝に変わる」ものを掘りあてようと、「働いている」そうです。

収集家にとってはかなりの値打ちものもあるようですが、いいのか悪いのか・・・・・


地中から「掘りあてる」といえば、神代木もそうですね。


神代楡神代タモ板目拡大













数千年前に火山活動や洪水等で地中深くに埋もれていた木が現在の空気に触れ、あの何とも言えない渋い色合いを出します。
それだけではなく、埋まっているものの中には「樹齢数千年」といったものや、神代樟の様に「(一般的な言い方で)直径2~3m」といった巨木が出現することも、神代木にひかれる理由の一つでしょうか。
昔は磁器のハンターならぬ、神代のハンターが各地にいたそうですから、やはり日本も中国もおんなじなんでしょうかね。



磁器も神代木もロマンのある話ですが、やはりどちらのものも、収集家や専門家など、価値のわかる方というか、価値の見いだせる方にとってはまさに宝ですが、そうでなければまったく意味をなさないものであるところは共通でしょうか・・・

私は器もいいけど、やっぱり木かなぁ。
芽が出て数千年、地中に埋もれること数千年。
この年月を越えてくる生命の塊にわくわくするのは、やはりそのものに価値を見出すからでしょうね。
物の価値や、それに対する価格の考え方が多様化しているこの時代ですが、磁器や神代木だけでなく、新しい商品であっても時間が経っても価値の残るものを提供しないといけないということを如実に表している今回のお話でした。





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