神代博打にのるかそるか!?
男は度胸、女は愛嬌とはいいますが、材木屋も度胸が必要な時もあるけれども、私みたいなタイプにはあんまり度胸があるとエライ事になってしまうので、愛嬌程度で丁度いいんではないかと、自分に言い聞かせています。
いっつも市場に行く時は、踏ん張って買わないつもりで行きますし、いいものがあってもなるべく低ぅ〜く見積もっておくようにしています。
踏ん張って買わないつもりでなにしに行くねん、となりますが、私の場合はそれ位に自制しておかないと、あれもこれもと大変です。
たとえば仕事柄、そんなに必要ではないように見えるオシャレ着も、普段は殆ど買うことがないのですが、一度買うと決めたら貪り食うかのように買い漁ります。
この性格を自覚しているので、値段の張る木材などはよっぽどのことがないと買えません。
そのよっぽど、というのはこれのことでしょうか・・・?!
このボロいけどデカい代物はっ・・・・
そう、神代木です。
私の大好きな・・・・
私の背丈と比べてもまだ大きい。
普通の人だとその大きさだけ見て感心して、えらく汚れているなぁと思われることでしょう。
確かに他の丸太よりもくすんでいて埃をかぶっているようです。
それもそのはず、神代木は海や川、土の中に埋もれていたものですから、土や泥が付いていて当然なんです。
この原木は、鳥海山近辺で出土したものだそうです。
どうも最近出てきたところの様で、皮に近い部分は未だに水分を含んでいてズブズブでした。
どれくらいだろう昔、おそらく火山によって流されたのでしょう。いたるところに焼けた跡が残っています。
因みにこの神代木、幅は大きな原木に見えますが、実は丸太だと仮定すると半分以上が無い状態です。
それは埋もれているうちに分解されてしまったこともあるのでしょうけれど、溶岩で焼けたか裂けたかしたために、失われたのではないかと想像します。
まだ半分がのこっているのではないか?!と夢を持つ方もいるかもしれませんが、こんな状態で出てくるのも神代ならではです。
また、最初は樹種が何かと気になって近づいたのですが、よく見てみるとたくさん杢華が咲いているではありませんか!!
表面のポコポコしたこれです。
これが製材すると玉杢とかいわれる、何とも言えない柄?!として現れるのです。
これが結構たくさんあるので、もしかするとすごくきれいな板や盤が取れるのかも!!と早くも購入した後の製材を想像してしまうのは取らぬ木の虫の皮算用。
ただ、こればっかりは製材してみないとわからないところで、こんなにたくさんポッコリしていても、中身は全然普通の木目だったりするので、これは博打です。
杢を期待して大金を積んで競り落としても、果たしてそれが杢に出るかは保証されていませんから、鋸を通すまでハラハラドキドキ・・・
さて、お金の話は別として神代木のもう一つの楽しみはその色合い。
もちろん、普通思い浮かべるのは少し黒っぽかったり茶褐色だったりだと思うのですが、神代も最初からそんな色ではないんです。
以前に神代椿を製材したのを思い出してください。
この色合いがみるみる間に変色。
神代は空気に触れることによって深みをもった色合いに変色していく、その過程もとても魅力的なところなんです。
この原木も同じ。
見てください。
ここ、皮をはぐ前はこんなですが・・・
一皮むくとこうなります。
わかりますか?!
中央の少し緑に見えるところ。
ここが空気に触れていなかったところ。
鮮やかな緑です。
こうしてみるとまるで蛙がいるかのように綺麗です。
これが私の心を魅了する神代の魅力。
乾燥で暴れようが割れようが欲しくなる一因です。
あぁ、なんとも罪な存在。
今回、少し気張って材木屋サン仲間で共同購入しようかと、同じ船に乗ってくれる船員を募って挑んだ神代の争奪戦。
そんなに敵船はいないかと思いきや、原木の傍で有力そうな「得意先」さんに電話で購入を打診する人もいれば、あわよくばとチョロチョロと下見に来る(欲しい人間にはそう見える!!失礼。)人もいて、なかなか手ごわい船合戦・・・
どうなる事かと思っていましたが、結果私たちが考えていた上限金額という波を超えて船を進めた方(超強敵だったらしい・・・)が購入権を獲得されました。
私たちのつかの間の夢の船出も博打も実らずで終了。
少し大きな買い物になりそうだったのですが、これも縁のもの。
今回は神代に手をとってもらえなかったという事で諦め。
またの縁を待つことにしましょう。
今の私にはこれが精一杯・・・
軽く持てるようになったら「大人買い」してやるからな〜、待ってろよー神代。