反り立つ岩場をよじ登れ! 〜屹立する巨樹 岩屋のカツラ〜
楽しみにして下さっているファンの為、今日も材木屋目線を含めた巨樹の記事をお伝えしたいと思います。
カツラの巨樹って、最近お伝えしていないなぁ・・・・と思って今回のテーマはカツラなのですが、検索してみると先月にある・・・。
いいや、正確には先月のメインはトチでありカツラはメインから少し外れています(と勝手に定義。笑)
カツラといえば、山中にある異形とともにクマに遭遇する危険を感じる地域に多い為、向かう迄に想像の勇気を振り絞らねばならない樹種であり、担当には本当にやる気が必要な樹種。
しかし今回は、神社の裏山すぐに現れるということなので安心して向かった先は、岡山県。
岡山県といえば、材木屋的にはヒノキです。
そのイメージが非常に強いのですが、巨樹で言うと全くそうではなく(いや、ヒノキの大木もたくさんあるという噂・・・内緒にされているとか?!・・・)広葉樹もしっかりと確認でき、印象深いのはムクノキで県内各所に巨樹がありますし、あの異形のイチョウも有名です(あ、針葉樹か)。
今回訪ねた場所は、広葉樹の森ながらも皆さんがよく想像する紅葉する森の広葉樹というよりも、針葉樹の山かと思ってしまう、常緑広葉樹が繁茂する森です。
鎮守の森にはそういった場所も多いのですが、当日の曇天にくわえて森の中の光が制限されることにより、若干薄暗く感じる訪問が、いつものカツラ巨樹の不安感を掻き立てるのです。
目的のカツラへは、この鳥居をくぐった先の社殿横を通ります。
地域のお社、といった感じで周囲もたんぼを見渡す事ができ、物凄くこころが心地よいことと、これから目にするものとのギャップがおおきすぎるのです・・・
先の案内板の様に、この森自体が「岩屋の森」として郷土記念物として登録されているのですが、目指すカツラは幹周り15mとされる大物!
森の中でも一際の迫力と想像します。
鳥居をくぐってすぐにもう一つある案内板が、そのカツラのものでした。
幹周りが15mもあるのに町指定なの?!と不思議におもってしまいますし、樹齢は700年推定とのこと。
なおさら、県指定位貰えそうなもの、と思ってしまいます。
しかし、案内板には重要な解説が掲載されています。
木まぐれコラムのカツラ編でも触れていますが、カツラの神話的特徴は金屋子神が舞い降りる樹種として有名であり、そこからたたら製鉄とのかかわりが非常に深い樹種であることは有名です。
一般的には知られていない兵庫県の山中にも、山中での製鉄跡地にカツラがある場面を目撃していますので、日本人と樹木は本当に古い歴史的なつながりがあることを実感します。
脱線しますが、材木屋さんや木材利用の場面では頻繁に「日本は木の文化の国」なんて言われますが、本当は木材を使ってきた歴史という側面以上に、樹木として接しながら分け与えてもらう資源の一部という歴史ではないのかと、邪推しているのですがどうでしょう。
駄文になりましたが、いよいよ社殿を拝します。
岩屋、というだけあって石がきれいに積まれた階段の奥に、木造の社殿が見えます。
瓦の風合いから、山陰地方を想起させますが豪奢過ぎない見事な建築です。
カツラへの道のりは、この社殿のそばから裏山へ向かいます。
よく見ると、社殿横にコンクリート塊を並べた階段様の場所があります。
ここから行くんですよ、といってもらっているはずと裏山を目指します。
が、これが意外とハード。
運動靴のひもを、きっちり締めていきましょう。
まぁ、なかなかな斜度なんです。
しかも、地名通りの石の転がる急斜面なので、健脚でも注意が必要。
踏み外してしまうと、本当に転がって落ちそうです。
足元に注意しながら登った先にみえるのが、岩屋のカツラ。
なんと例えればいいのだろう。
巨大なウニの怪物が、口を開いている様。
そんな感じ(どんな感じ?!)。
もちろん、その姿はカツラのそれでありますが、いつものことながら主幹を失っていること以上に、地際すぐにぽっかりと空いた空洞、そして意外にすくないひこばえのせいで、その太さを感じる迫力が減衰されているからかもしれません。
近くにいくと、やはり大きいのですが幹周り15mと言われて想像するイメージとはまた、異なるのです。
見あげる迫力は、やはり斜面下方からが一番ですが側面から見ると、幹周りの迫力は伝わりやすいかもしれません。
下方に見える人影。
幹周りが想像できると思います。
十分な巨樹であることは言うまでもないでしょう。
この側方の位置は、なんとか三脚を建てる事ができますが、写真の左を見てください。
直立するスギに対しての斜面の角度。
スキー場ならば、かなりチャレンジングなコースである「黒文字表記」の上級者コースに違いない斜度。
撮影する為の位置決めも、周囲の樹木を避けながらを考えると意外とスペースがありません。
しかしそれも、渓谷沿いを好むカツラではよくあること。
上部に回れば、「幹に乗る」こともできます。
長い年月により、主幹があったのであろう部分に堆積した土。
前回の大カツラも、主幹部分に「乗った」写真を掲載しましたが急斜面のカツラにはアルアルな現象。
今回は、そこにのったとしても周囲からは見えないのでその写真はありませんが、これも斜度を特徴づける要因の一つです。
そんなことを考えながらも周囲を行ったり来たりするのですが、その移動も本当に大変。
離れて近づいてを繰り返すのが無駄なので、出来るだけ一つの位置での写真アングルを探ります。
中心に近い部分では、やはり空を見上げるのがもっともカツラらしいアングルでもありますね。
スギ林の中心で、ぽっかりとそらが開けているのがわかると思います。
カツラの樹高はおよそ20mほどと、まったく高くないものの斜度の影響でそれほど低いとは感じません。
樹高があれば、空が開けているのもうなずけるのですが、ここではカツラの上部は意外と開けています。
周囲に枝を広げる広葉樹が居ないことも一因だと思いますが、やはり唯我独尊感が無ければ迫力も感じにくいですから、いいロケーション。
あ、因みに中央の洞に入って行くこともできます。
しかし、入りませんでした。
それは以前の経験から。
くぐり抜けると幸運があるという、地際が貫通した幹を持つカツラの巨樹でのこと。
くぐり抜けようとした瞬間に、頭上で羽根音が・・・・・
なんと、穴の奥には巨大な蜂の巣が!!
そんなこともあるもんで、特に山中は要注意。
穴はあきらめ、なんとかいつもの巨さくらべ。
なんか不自然に立っていると思いません?!
斜度を感じさせないように立っているつもりなんですが、明らかに左右の足の位置もシャツの角度も傾いてますね。
これでも、カツラの前に立っているので遠近法で担当が大きめに見えているんです。
実際は根際はもっと太さを感じる立派なものなんですが、いかんせんアングルが・・・
さて、カツラ以外に案内板にあるような照葉樹林ぽい印象を受ける場面はそう感じないのですが、確かに特徴的な風景はあるもので・・・
スギの直立性が目立つ風景の中に、一際個性を放つのは中尾彬さん!!
なんというネジネジ!
感心するほどにねじっていますよね。
もう、ナカオアキラと命名してほしい位(笑)。
つる植物や絞め殺し植物は山では珍しくはありませんが、案内板にもあったようにここではサルナシが多くあるようです。
キウィフルーツの原種がサルナシだときいたことがあります。
確かに、サルナシの実は非常に美味しく、まさしく極小のキウィ。
実は至る所にあるものの、気にされていないだけ。
サルナシの好む生育環境は不勉強ですが、暗いと感じる森の中だからこそ蔓性の素性を活かし、高木に巻き付きながらも生き残ることができるのでしょうか。
脱線しました。
土壌はスギが多いうえに暗いこと、そして岩場のようなイメージなのでやはり、広葉樹に一般的にいだく森の姿とは異なるのではないかと思います。
それも一つの雰囲気なのですけれど。
もう、幹というよりも岩にしがみつく根が這うような雰囲気に見えてきます。
一部は、実際に小石を抱いている部分もあります。
もしかすると、大きな岩の一部に根付いたものが大きくなり、何らかの事情で岩より上部の幹が残ったために、ぽっかりと穴が開いたような状況になったのかも?!
そんなことを考えたりするのも非常に楽しいものです。
このような形状の為、木材となるものは非常に少ないうえに幅広の材はものすごく貴重。
弊社が木彫り材料を大量に製材していた時代には、カツラも非常に緻密で色の美しい300巾の柾目材なども在庫していたのですけれど、巨樹巡りをするようになって初めて、その貴重さに驚いたのは今でも鮮明な記憶です。
どうしてこの場所で、このカツラが残っているのか分かりませんが、もしかすると製鉄とはいかずとも何らかの火にまつわる伝記伝承があるのかもしれません。
奥深い岡山県。
カツラを離れ、社殿から眺める風景に山陽地方の里山を感じながら、急斜面での記憶を刻み込んだのでした。
岩屋のカツラ所在地
岡山県苫田郡鏡野町岩屋716(岩屋神社)裏山内
邪魔にならないように、駐車可能
緯度:35.192111
経度:133.984825
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