空を見上げて

反り立つ岩場をよじ登れ! 〜屹立する巨樹 岩屋のカツラ〜

今月もやってきました!、巨樹ブログの日(笑)。
楽しみにして下さっているファンの為、今日も材木屋目線を含めた巨樹の記事をお伝えしたいと思います。

カツラの巨樹って、最近お伝えしていないなぁ・・・・と思って今回のテーマはカツラなのですが、検索してみると先月にある・・・。
いいや、正確には先月のメインはトチでありカツラはメインから少し外れています(と勝手に定義。笑)

カツラといえば、山中にある異形とともにクマに遭遇する危険を感じる地域に多い為、向かう迄に想像の勇気を振り絞らねばならない樹種であり、担当には本当にやる気が必要な樹種。

しかし今回は、神社の裏山すぐに現れるということなので安心して向かった先は、岡山県。


岩屋のカツラ 1


岡山県といえば、材木屋的にはヒノキです。

そのイメージが非常に強いのですが、巨樹で言うと全くそうではなく(いや、ヒノキの大木もたくさんあるという噂・・・内緒にされているとか?!・・・)広葉樹もしっかりと確認でき、印象深いのはムクノキで県内各所に巨樹がありますし、あの異形のイチョウも有名です(あ、針葉樹か)。

今回訪ねた場所は、広葉樹の森ながらも皆さんがよく想像する紅葉する森の広葉樹というよりも、針葉樹の山かと思ってしまう、常緑広葉樹が繁茂する森です。

鎮守の森にはそういった場所も多いのですが、当日の曇天にくわえて森の中の光が制限されることにより、若干薄暗く感じる訪問が、いつものカツラ巨樹の不安感を掻き立てるのです。


岩屋のカツラ 2


目的のカツラへは、この鳥居をくぐった先の社殿横を通ります。

地域のお社、といった感じで周囲もたんぼを見渡す事ができ、物凄くこころが心地よいことと、これから目にするものとのギャップがおおきすぎるのです・・・

先の案内板の様に、この森自体が「岩屋の森」として郷土記念物として登録されているのですが、目指すカツラは幹周り15mとされる大物!
森の中でも一際の迫力と想像します。

鳥居をくぐってすぐにもう一つある案内板が、そのカツラのものでした。


岩屋のカツラ 3


幹周りが15mもあるのに町指定なの?!と不思議におもってしまいますし、樹齢は700年推定とのこと。
なおさら、県指定位貰えそうなもの、と思ってしまいます。

しかし、案内板には重要な解説が掲載されています。
木まぐれコラムのカツラ編でも触れていますが、カツラの神話的特徴は金屋子神が舞い降りる樹種として有名であり、そこからたたら製鉄とのかかわりが非常に深い樹種であることは有名です。

一般的には知られていない兵庫県の山中にも、山中での製鉄跡地にカツラがある場面を目撃していますので、日本人と樹木は本当に古い歴史的なつながりがあることを実感します。

脱線しますが、材木屋さんや木材利用の場面では頻繁に「日本は木の文化の国」なんて言われますが、本当は木材を使ってきた歴史という側面以上に、樹木として接しながら分け与えてもらう資源の一部という歴史ではないのかと、邪推しているのですがどうでしょう。


駄文になりましたが、いよいよ社殿を拝します。

岩屋のカツラ 28


岩屋、というだけあって石がきれいに積まれた階段の奥に、木造の社殿が見えます。
瓦の風合いから、山陰地方を想起させますが豪奢過ぎない見事な建築です。

カツラへの道のりは、この社殿のそばから裏山へ向かいます。

よく見ると、社殿横にコンクリート塊を並べた階段様の場所があります。
ここから行くんですよ、といってもらっているはずと裏山を目指します。

が、これが意外とハード。

運動靴のひもを、きっちり締めていきましょう。
まぁ、なかなかな斜度なんです。
しかも、地名通りの石の転がる急斜面なので、健脚でも注意が必要。
踏み外してしまうと、本当に転がって落ちそうです。

足元に注意しながら登った先にみえるのが、岩屋のカツラ。


岩屋のカツラ 6


なんと例えればいいのだろう。

巨大なウニの怪物が、口を開いている様。
そんな感じ(どんな感じ?!)。

もちろん、その姿はカツラのそれでありますが、いつものことながら主幹を失っていること以上に、地際すぐにぽっかりと空いた空洞、そして意外にすくないひこばえのせいで、その太さを感じる迫力が減衰されているからかもしれません。

近くにいくと、やはり大きいのですが幹周り15mと言われて想像するイメージとはまた、異なるのです。

見あげる迫力は、やはり斜面下方からが一番ですが側面から見ると、幹周りの迫力は伝わりやすいかもしれません。


岩屋のカツラ 12


下方に見える人影。

幹周りが想像できると思います。
十分な巨樹であることは言うまでもないでしょう。

この側方の位置は、なんとか三脚を建てる事ができますが、写真の左を見てください。
直立するスギに対しての斜面の角度。

スキー場ならば、かなりチャレンジングなコースである「黒文字表記」の上級者コースに違いない斜度。
撮影する為の位置決めも、周囲の樹木を避けながらを考えると意外とスペースがありません。

しかしそれも、渓谷沿いを好むカツラではよくあること。
上部に回れば、「幹に乗る」こともできます。


岩屋のカツラ 13


長い年月により、主幹があったのであろう部分に堆積した土。

前回の大カツラも、主幹部分に「乗った」写真を掲載しましたが急斜面のカツラにはアルアルな現象。
今回は、そこにのったとしても周囲からは見えないのでその写真はありませんが、これも斜度を特徴づける要因の一つです。

そんなことを考えながらも周囲を行ったり来たりするのですが、その移動も本当に大変。

離れて近づいてを繰り返すのが無駄なので、出来るだけ一つの位置での写真アングルを探ります。
中心に近い部分では、やはり空を見上げるのがもっともカツラらしいアングルでもありますね。


岩屋のカツラ 9


スギ林の中心で、ぽっかりとそらが開けているのがわかると思います。

カツラの樹高はおよそ20mほどと、まったく高くないものの斜度の影響でそれほど低いとは感じません。
樹高があれば、空が開けているのもうなずけるのですが、ここではカツラの上部は意外と開けています。
周囲に枝を広げる広葉樹が居ないことも一因だと思いますが、やはり唯我独尊感が無ければ迫力も感じにくいですから、いいロケーション。

あ、因みに中央の洞に入って行くこともできます。
しかし、入りませんでした。

それは以前の経験から。

くぐり抜けると幸運があるという、地際が貫通した幹を持つカツラの巨樹でのこと。
くぐり抜けようとした瞬間に、頭上で羽根音が・・・・・
なんと、穴の奥には巨大な蜂の巣が!!

そんなこともあるもんで、特に山中は要注意。


岩屋のカツラ 14


穴はあきらめ、なんとかいつもの巨さくらべ。

なんか不自然に立っていると思いません?!
斜度を感じさせないように立っているつもりなんですが、明らかに左右の足の位置もシャツの角度も傾いてますね。

これでも、カツラの前に立っているので遠近法で担当が大きめに見えているんです。

実際は根際はもっと太さを感じる立派なものなんですが、いかんせんアングルが・・・

さて、カツラ以外に案内板にあるような照葉樹林ぽい印象を受ける場面はそう感じないのですが、確かに特徴的な風景はあるもので・・・
スギの直立性が目立つ風景の中に、一際個性を放つのは中尾彬さん!!


岩屋のカツラ 24


なんというネジネジ!

感心するほどにねじっていますよね。
もう、ナカオアキラと命名してほしい位(笑)。

つる植物や絞め殺し植物は山では珍しくはありませんが、案内板にもあったようにここではサルナシが多くあるようです。
キウィフルーツの原種がサルナシだときいたことがあります。

確かに、サルナシの実は非常に美味しく、まさしく極小のキウィ。
実は至る所にあるものの、気にされていないだけ。

サルナシの好む生育環境は不勉強ですが、暗いと感じる森の中だからこそ蔓性の素性を活かし、高木に巻き付きながらも生き残ることができるのでしょうか。

脱線しました。
土壌はスギが多いうえに暗いこと、そして岩場のようなイメージなのでやはり、広葉樹に一般的にいだく森の姿とは異なるのではないかと思います。
それも一つの雰囲気なのですけれど。


岩屋のカツラ 21


もう、幹というよりも岩にしがみつく根が這うような雰囲気に見えてきます。
一部は、実際に小石を抱いている部分もあります。

もしかすると、大きな岩の一部に根付いたものが大きくなり、何らかの事情で岩より上部の幹が残ったために、ぽっかりと穴が開いたような状況になったのかも?!
そんなことを考えたりするのも非常に楽しいものです。

このような形状の為、木材となるものは非常に少ないうえに幅広の材はものすごく貴重。
弊社が木彫り材料を大量に製材していた時代には、カツラも非常に緻密で色の美しい300巾の柾目材なども在庫していたのですけれど、巨樹巡りをするようになって初めて、その貴重さに驚いたのは今でも鮮明な記憶です。

どうしてこの場所で、このカツラが残っているのか分かりませんが、もしかすると製鉄とはいかずとも何らかの火にまつわる伝記伝承があるのかもしれません。

奥深い岡山県。
カツラを離れ、社殿から眺める風景に山陽地方の里山を感じながら、急斜面での記憶を刻み込んだのでした。


岩屋のカツラ 26


岩屋のカツラ所在地

岡山県苫田郡鏡野町岩屋716(岩屋神社)裏山内

邪魔にならないように、駐車可能

緯度:35.192111
経度:133.984825


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程よい距離の、カツラ巨樹 〜轟の大カツラ〜

今年も既に9月になってしまいました。
本当に、恐ろしいほどの早さです。

私がこの季節に思うのは、金木犀の香りと紅葉の巨樹。
9月ではまだまだその時期ではないのですが、その訪れを早朝の空気などで感じるようになるのが9月です。

そして、紅葉の時期にタイミングよく訪問しなければならない樹種がカツラです。

あっという間に紅葉し、早々に散ってしまうのでジャストタイミングで紅葉のカツラの巨樹に出逢うのはなかなか難しい。
そこで大阪や兵庫近県にお住まいの方におすすめなのが、兵庫県北部地域。

その地域の中で今回は、少し所在の分かりづらいカツラをご紹介。


兵庫県養父市 轟の大カツラ 12


兵庫県北部の養父市。
スキー趣味の私にとっては、巨樹よりもスキー場の印象があった地域ですが、こことその周囲には迫力のある巨樹の代表である「大カツラ」が点在しています。

上の写真は、その一つである轟の大カツラへの進入路
氷ノ山国際スキー場の東、出合地区から山間部に入る道を南へ上がります。
すると、熊野神社や大林寺が地図に表示される轟地区の手前、道路が大きく左カーブになるところに写真の進入路があります。

ちょうど赤色のコーンの部分ですが、位置情報をもっていったものの一度通り過ぎてしまった私。
その理由は、車の入っていける進入路と予習していたものの、実際は草が茂っていて道など視認できない状況だったからです。

その道なき道(時期によっては、車が通っているのかも・・・)を徒歩で5分ほど進みます。

するとその先に見えるのが、お目当てのカツラです。


兵庫県養父市 轟の大カツラ 3


道が右へ曲がる内側の下に根を張っています。
期待して行ったものの、既に紅葉した葉は地に落ちてしまっていました。

少し残念ではあるものの、それでも立派な姿を見せるカツラ巨樹であることは間違いありません。
それに、広葉樹のイメージの無いと思われる関西地方で、立派なカツラに逢えることは幸せでもあります。

イメージとしては、冷涼な地域の山中の渓流沿いに多いため、関西地方のイメージないカツラ。
しかし、スキー場を多く有する兵庫県北部地域にはあるんですねぇ。


兵庫県養父市 轟の大カツラ 15



若干情報が古いかもしれない1998年の案内板。
町指定文化財、と表示されていますが現在は関宮町はなく、養父市となっています。

そのため現在は市指定文化財のはずですね。
少し汚れているように見えるのは、若干手入れが遅れているからなのかもしれません。
そういえば、進入路が見えなかったこともそういう理由かも。

所有者さんの記載があるので、市が整備するというわけでもないとすると、特別手をかけて見られるようにする必要もないですものね。


カツラ自体の葉っぱは落ちてしまっているものの、意外なほどに上方へ伸びた枝。
樹高25mとされていますが今も樹勢旺盛なのか、周囲に競争相手が無いと思われる中で、上長生長を続けているようです。

それも当然かもしれません。


兵庫県養父市 轟の大カツラ 10


カツラのすぐ下には、せせらぎが。
斜面上部から、豊富な水量が流れています。

稀に、沢沿い以外の立地で見られるカツラもありますが、ほぼすべてに近い位に巨樹のそばには、水の流れがあります。
スギも水を好む樹種ですが、カツラはその水嗜好を極端に見せている樹種でしょうね。

これだけ水脈に近いと、根は地面下方よりも地表近くに水平に伸びているのでは?と想像し、道路の様になっている部分にもきっと伸びているであろう根が踏み固められないだろうかと若干心配になりますが、どうも杞憂のようですね。


兵庫県養父市 轟の大カツラ 8


カツラの巨樹を見上げると、多くは中央部に主幹があったであろう空間があり、その周囲にひこばえから生長したものであろう幾本もの幹が林立している様子が定番です。

しかし轟の大カツラは、林立してはいるものの、それぞれが重なり合って交差して、上や横へと交わりあうようにして伸びています。
その先にも、細い枝があり、不規則な稲光のよう。

これも、本来は旺盛に茂っているであろう青葉に隠されているのでしょうけども、紅葉に遅れた時期だからこその景色。

そう、紅葉に遅れても他の楽しみがあります。


兵庫県養父市 轟の大カツラ 5



これです。

カツラの絨毯。
可愛らしい葉っぱのカツラが、多くの葉を紅葉させて地面を彩った道は、山吹色の絨毯!
その上、カツラの語源になったともいわれる「香出ら」=香り出づる(かおりいづる)如く、ほのかに甘い香りを感じる事ができるからです。

草木の緑に土の黒。
そこに広がる絨毯の美しいこと。

広葉樹の大きな魅力の一つですね。

そして、本カツラの楽しみ方の一つは下側へ降りてみること。


兵庫県養父市 轟の大カツラ 16


左下にいるのは私。

単独の写真では、そのスケール感が伝わらなかったことと思いますが、どれくらいの大きさか分かっていただけますよね。

畏れおののくような巨さではないものの、この幹の下部から見上げる姿はやはり威厳のある巨樹でした。
いや、普通は感激する巨さだと思いますが、兵庫県北部地方にはこの大カツラをはるかに凌ぐカツラ巨樹が幾本もあるために、どうしてもその存在は薄くなりがち。

同じ養父市にはまだ紹介していないものの、押しも押されもせぬ巨樹である別宮の大カツラがありますし、その他にも和知の大カツラや兎和野のカツラ、そして圧巻の糸井の大カツラなどの全国レベルのカツラ巨樹があるのだから。


そう考えると、この兵庫県北部は素晴らしい巨樹を多く要する地域だということが分かります。
本当は連続で紹介して、一筆書きの様に一日でカツラ巨樹の制覇をしてもらいたいくらいの気持ちですが、あくまでの巨樹のページではなく材木屋のページですので、その機会はまた後に・・・


兵庫県養父市 轟の大カツラ 9



轟の大カツラ 所在地

兵庫県養父市轟
関宮小代線(87号線)を、出合バス停に向かって八木川を渡ってから、山道へ。
鈴鹿サーキットのヘアピンカーブの様な(笑)左カーブの右手に、茂みの入り口がありその奥徒歩5分ほど。

山道の途中、カーブ近辺で特段駐車スペースはないですが車も少なく、寄せる事ができれば駐車は可能


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巨樹の命の水を飲む ~和知の大カツラ~

今月の巨樹はなにを紹介しようかなぁ・・・
そう考えていた時、ふと思いました。「あれ?最近、カツラの記事が無いじゃないの・・・」と。
なんと一昨年の11月の、大石脇出のカツラ以来でした。
カツラはその存在感といい、その姿といい、ストーリーといい、どれをとっても記事にしやすい樹種です。

本音でいうと、もっとも訪問を躊躇する樹種もカツラなんですけどね・・・

沢や谷に多いため、逢いに行くには山中に踏み入ったり軽く登山が必要であったりすることから、どうしても山の動物たちとの遭遇がさけられないから、、、
特に、「黒~いヤツ」には絶対にあいたくないのですけども、その黒いヤツの生息地とカツラの所在地は腹の立つほどリンクしている為に、毎回恐怖との闘いを強いられるのです(汗)。

そんな心配をするカツラの巨樹訪問なのですが、今回はその心配は完全無用!
なぜなら、目指すカツラは植物園の中にあるから!!

兵庫県の北部にある但馬高原植物園、この園内にあるのが和知の大カツラ。


和知の大カツラ4


兵庫県は南北を海に接し、更に東西にも様々な文化圏を有する稀な地域だと思うのですが、神戸市の繁華街からは想像できないほどの自然豊かな山間部を有するのも、特徴ではないかと思います。
その山間部には先の懸念通りに「黒いヤツ」も生息し、それとともに見事なカツラの巨樹も多く存在することもあり、広葉樹とカツラ巨樹とクマのメッカ(と勝手に思っている)の岐阜県と似た巨樹分布を見る事ができます。

先の通りですが、今回に限ってはクマの心配をすることなく辿りつけるカツラということで、余裕の足取り(^^♪

広い園内を案内の通りに進み、道路と交差するトンネルを超えると見えてくる期待通りの姿!


和知の大カツラ18


木道が整備され、朝露に濡れた木々が美しく映えています。
この写真だけであれば、山中とはいえ植物園の中とは思えません。

先にくぐってきたトンネルは、道路との交差と言いましたがナビで目的地設定をすると、車道からすぐのポイントであるために園内ではなく車道のすぐそばのポイントに案内されてしまいます。

しかし、車道からは区画されている為に(もちろん無断立ち入りしないように)道路からは視認することはできませんから、植物園から行きましょう。

例外的には、岩手県の様に道路端に驚くほどの巨樹を見る県もありますが、それを除くとこんなに穏やかな気持ちで山中のカツラに逢うことができるのは、おそらくここだけではないでしょうか。


和知の大カツラ14



ここまで巨きなカツラとなると、ひこばえがかなり多くなっていることが多いのですが、それが見られないのが特徴であるかも知れません。

初期の主幹は無くしているように思われますが、その後で発達したものだと思われる幾本かの幹がひこばえを必要としていないのかもしれません。
そのおかげで、幹としてしっかりと視認できる「土台」のような太くどっしりとした様子を見る事ができるのです。

そしてもう一つ、このカツラの大きな特徴は水!!


和知の大カツラ12


なんと幹の真下に水の流れがあるのです。
いや、正確に言うとせせらぎを跨いで巨樹が立っている、という状況です。

根が川を跨いでいる巨樹というのは、同じく兵庫県の「木の根橋」のケヤキが有名ですが、こちらは根が跨いでいるというよりも、幹の中心を川が流れていると言った方が正しい姿です。
この流れが先なのか、それとも巨樹の根元に流れが出来て少しづつ土が侵食されたのか。

カツラは非常に水の好きな樹種。
冒頭の沢沿いや谷に多いという言葉を訂正し、そこにしかないと言いたくなるほどに川辺などにも多くの巨樹があるほどに、水の流れがある部分にも育つ樹種です。

そう考えると、このカツラにとってはベストな位置に芽吹いたからこそ、ここまでの巨樹になったのかもしれません。
そして、それがひこばえ無しでもこのサイズを維持できる理由なのかもしれませんね。


和知の大カツラ10


巨樹訪問ではいろいろな角度からその姿を撮影するのですが、和知の大カツラはやはりこれですね!
美しいせせらぎ目線でカツラをのぞむ。

このアングルで見ているとシダやコケ類も多く繁茂し、まるで美しい水の流れの先に見えるカツラからこんこんと湧き出ているかのようです。

巨樹が生み出す命の水の様に。

温度も低く非常に澄んだ水。
自宅の出発から水分を取らずに訪れた当地で、この流れとせせらぎの音を聞いていると、この水を味わってみたくなってきます。

と、いうことですくってみることにしました!!


和知の大カツラ8


事前にこのせせらぎの写真を見て予習してきましたので、しっかりとコップ持参(笑)。
ごくごくと飲み干しました。

味ですか?

もう、この景色と巨樹から溢れているかのような状況の前では、美味しい以外のなにものでもない!
まぁ、巨樹贔屓だからしかたないのですけども。
いや、実際この水は「カツラの千年水」と称され環境省の平成の名水100選にも選ばれたとのこと。
その水量は、一日に約5000tが湧き出ているそうです。

さて、ここからは巨樹としての雰囲気に戻りましょう。
近づいてみあげてみるとやっぱりカツラ!


和知の大カツラ20


中央部分がぽっかりと空いた状態で空が見える、この景色。
数本の幹が直立しながらも、少しづつ曲がりくねっている様はカツラ独特と言えるでしょう。

同じ巨樹でもイチョウもひこばえを出しながら巨大になるところ、主幹が残っているのでかなりのボリュームになるのですが、特に秋口以降のカツラの巨樹は他の樹種より早くに小さな葉っぱが落ちてしまうために、周囲の樹種の景色の中に幹が林の様に林立しているように見えることも、私が感じるカツラ巨樹の特徴です。

写真の印象でも、立派な巨樹である存在感は伝わると思いますが、樹齢は1000年以上・幹回りは16mといわれていますので、押しも押されもせぬカツラ巨樹ですよね。

それが安心して逢いに行けるのですから、嬉しくて仕方ありません。

あ、そうでした。
もし私の様に超早朝行動派の方は十分にご注意を。

植物園の入園には500円が必要です。
いや、入園料のことではなくて植物園の入園時間です。
いつも超早朝移動の私ですが、当日植物園に到着したのもなんとか明るくなったな・・・位の時間。


和知の大カツラ1


到着後に巨樹の位置を確認したり、駐車場や入園の確認をゆっくりとしていたものの、植物園はまだ開園されていませんでした。
特に閉鎖されているわけでもなかったうえに、奥から機械音が聞こえていたために園の職員さんを探して入園料を支払おうと思って、そのまま入園したのでした。

途中で職員さんと出会うことができたのですが、入園時間は守ってほしいとおっしゃっていましたので、きちんと入園時間をチェックしていきましょう(涙)。
いつも自分都合で行動している為に、職員さんにはご迷惑をかけてしまいましたが、大阪から夜明け前に出発したことを伝えると、そろそろ開園だからとおおめに見て頂けました・・・
すみませんでした。


さぁ最後に、和知の大カツラ身体測定です。


和知の大カツラ21


展望デッキに立ち、カツラのそばに並ぶ私。
これをみると、幹回り16mという数値が如何に立派かが伝わる事と思います。

そんな状況では困るのですけどももし、登山ののちに出逢ったのがこの姿であれば、更に感動は大きかったであろう、と思うのは心身に余裕があるからこそ。
苦労もなしにこれほどの巨樹に出逢える幸せ。
その幸せを感じながらもう一口、桂清水を味わって植物園を後にしました


実は、この和知の大カツラの所在する地域には他にも有数のカツラ巨樹が存在します。
そしてこの日は、他のカツラにも訪問する予定。
その時の様子は、いずれまた次のカツラ巨樹の記事にて・・・


和知の大カツラ所在地

兵庫県美方郡香美町村岡区和知709
但馬高原植物園内

植物園駐車場有


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青、橙、黄、緑、、、 仕上げの黒で倒れるほどの美しさ 〜大石脇出のカツラ〜

早起きは三文の徳。

私は元来、朝方の人間ですので早起きは苦になりませんしそれ以上に、季節の香りを感じる早朝の空気や景色の色合いを感じられる事は、空気が澄んでいる中での音という情報の少ない朝だからこそと感じますから、早起きして行動することは、三文どころか三万円(少ないか・・・)以上の価値があります。

ということで、コロナウィルスの影響で今年はこのイベントシーズンに休日のイベント予定が無いことを利用して、早朝出発の巨樹巡りに行きました。
この時期に行く巨樹は決まっています。
カツライチョウ
この2種です。
今まではもっぱら真冬の巨樹巡りが定番だっただけに、紅葉(黄葉)目当てなのは言うまでもありません。
そして両者とも非常に見事な巨樹になることも理由の一つですが、特にカツラは1週間タイミングをずらすと美しい色合いを逃すことになるので、一か八か。

そんな思いで今回向かったのは滋賀県大津市。
京都・大阪方面から向かうと「湖国の玄関口」となる大津市です。私のイメージする大津市は言わずもがな「琵琶湖」。
もちろん、大津市以外にも接しているわけですが「三つ子の魂百まで」的に、私の子供のころのイメージがそのまま残っていることに由来するその考えとは反対で、今回訪れたカツラは琵琶湖とは反対方向。

琵琶湖の南端から南下すること、およそ40分。
幹線道路を少し逸れたところに、集落の裏山という表現がぴったりの場所があり、そこに一本のカツラが佇んでいます。


大石脇出のカツラ 1


滋賀県は木材生産を琵琶湖の水を守ることと結びつけていたり、地産地消の木材流通を模索し始めていますがそれでも、大津市に広葉樹のイメージはありません。
しかし、目的とするカツラへの道筋は、紅葉落ち葉のカーペットの如くに設えられていました。

ここまでに見事な黄葉を呈しているとは想像していなかっただけに、思わず「おぉ・・・!!」という声をあげてしまったのは、想像を超えていた大きな喜びから。

いつもの巨樹巡りであれば、早くその姿を拝みたい為にそそくさと近くに向かいたくなるのですが、この景色はずっと眺めていたくなるような、動きたくない美しさ。
いや、動きたくないというよりも、景色が動いてくれているような印象を受ける為に動かなくてもいいと言った方が正しいのかもしれません。


大石脇出のカツラ 2


この黄色というか橙というか、なんとも形容しがたい色彩の葉は陽の光を浴びて色目を変えるのです。
おとずれた時間は早朝。
昇りきった陽光が少しづつその光の強さを増し始める時間帯にかかっていたことで、数分ごとに葉の色合いを変えていくようで、そこに雲が差し掛かったりすると一段と複雑な色目を呈する為に、とにかく動く必要が無くずっと眺めていたい気分になるのです。

しかし、巨樹巡りですからしっかりとその幹の姿もカメラに収めねばなりません。
少しづつ、黄葉の色彩の変化を楽しみながらその樹体に近づいていきます。

大石脇出のカツラ 9


はっきりと対面できる位置に来ると、遠くから見ていた印象とは少し異なっていることに気が付きました。
一つは、もっとひこばえが立ち上がっているのだろうと思っていたこと。
遠目に見える姿では分かりにくかったこともありますが、カツラの巨樹であることで、条件反射的に主幹よりもひこばえでうっそうとしているような状態ではないかと思っていたのですが、意外にも主幹とおぼしき立派な幹が数本伸びているのです。


そしてもう一つは主幹もひこばえも直立するような状態だろう、と想像していたこと。
写真では伝わりにくいと思いますが、地面に近い高さの枝がひこばえから出ているのですが、地面と平行に出ている為に、とても広がりを感じさせるとともに遠目で見た時の勇壮さを増す一因になっていると見受けました。


大石脇出のカツラ 13


既に下部の水平枝の葉は殆ど落葉していましたが、緑葉の時期にはもっと雄大な景色が見られるのではないかと思う、カツラとしては少し珍しい形状です。

カツラの周囲の山は広葉樹の混じる人工林のようですが、人が整備したかのようにカツラの周囲には見事に他の樹木がありません。
もしかすると、本当に地域の方が整備されているんだろうか。
若しくは、その水平枝が周辺の樹木の生育を阻んでいるのか?!

そのおかげで、独立しているうえに広がりのある見事な姿を拝むことができるのですけどね!


それにここへたどり着くまでにも既に、私の鼻を通り肺の中までもカツラの甘いカラメルの様な満たされる幸せ。
黄葉時期のカツラの巨樹巡りの大きな楽しみの一つでもあるのですが、今回はその香りが一段と強く感じられます。
それも、もしかすると周囲が開けていて落ち葉が堆積しやすいからかもしれません。


大石脇出のカツラ 7


カツラの葉が甘く香ることは、樹木や山の好きな方はご存知ですが、一説にはこの香りは土にふれることで発散されやすくなる、というのです。
周囲に次々と落ちてくるその黄色みのある葉の堆積面積が広いために、一段と魅惑的な香りの空間となっているのかもしれない。
そう思ってしまいます。

この日は風が穏やかな日でしたがそれでも、役目を終えた葉っぱは本体である枝から容赦なく切り離され、ゆったりとした風の流れに乗るようにはらはらと、また突然カラカラという乾いた音をたてながら吹雪くように舞い降りてくる。


大石脇出のカツラ 6


動画でないことが悔やまれるほど次々と舞う枯葉。
甘い香りと乾いた音。
そして青い空に映える黄色と橙のコントラストが鮮やかに、五感の隙間を埋めていくようです。

もし、この環境に紅葉する樹木が多ければ受ける印象もまた異なったことと思いますが、空の青に周囲の樹木の緑が重なり、浮き出たようにカツラが映ることで非常に「ばえる」光景となっています。


とにかくその光景に見とれる時間が長すぎて、なかなかその樹幹にたどり着くことができません(汗)。

少しづつ距離を詰めながら撮影を続けてやっと、その巨体に近づいてきました。
すると目に映った第一印象は「犬のフグリ」。


大石脇出のカツラ 11


先に少し出てきましたが、カツラのイメージとしては根際から鬱蒼と茂るひこばえを連想します。
しかし、近づいてみて改めて異なることに気が付きます。

根際に見えるのはふっくらと膨らんだそれ。
犬ではなくタヌキのそれかも知れないと思うような瘤(?!)が垂れています。
垂れている、というのはイチョウの巨樹でよく用いる表現ですがまさかカツラで・・・

イチョウの場合は、その垂れている部分をさする(もしくは煎じる)と「とある御利益」を授かれるとされますが、このカツラの垂れている部分をさする(煎じる?!)とどのような御利益があるのか・・・
その辺の御想像はお任せ致します。

余りに見事な黄葉で、刻一刻とその色を変える姿に感心しすぎて悠々と90分を超える滞在となってしまったにもかかわらず、危うく大事なことを忘れるところでした。

はい、肝心の昌志スケール!


大石脇出のカツラ 15


ちょっと本当に考えないといけませんが、私の洋服のレパートリーは巨樹撮影には向かないようです。
今回も、うっそうと茂る山の黒に紛れてしまって今一つスケールの役割を果たせていません。

しかしながら、このカツラは単なる巨さだけではない存在感と特有の樹幹をもった、見事なものでした。

他に訪れたい巨樹があるものの、カツラは黄葉が早いうえに散るスピードも早く、そして他の樹木の黄葉に合わせると完全に時季外れになってしまうことから、この時期には優先して訪れているのですが、本当にドンピシャな訪問となったことに非常に満足。

いつにもまして、達成感の様なものが感じられる訪問となりました。


大石脇出のカツラ 14


さて、その満足感を胸に別れを告げようとしたその瞬間。
私の次の一歩を踏む場所で、「カサカサカサ・・・・・・・・」と連続する乾いた音・・・
私は動いていないのに、どうして足元で音が?!
そういえば、民家がすぐそこですが畑には獣害予防の柵のようなものがあったなぁ。
もしや熊?!
やめてぇ〜!!!


と思ってふと目をやるとそこには、久しぶりに見る黒く細長いものが・・・

同じ黒でも熊ではなく、それはヘビ。
あぁ、よかった・・・とはなりません。
わたし、熊もですけどヘビもダメ(涙)。
うひょ〜!!と言ったかどうかは覚えていませんが、カツラの目前の急な勾配の斜面に立っていた私は、驚いて飛び上がる手前のつま先立ちになり、そのまま前に倒れると同時に斜面に踏ん張れずにずり落ちる始末。

何とも情けない・・・



美しい色目ばかりに気を取られ、黒いそいつに気が付きませんでした。
色調に魅せられた最後の仕上げは黒の衝撃で、ある意味倒れるところでした。

まぁ、熊でなくてよかった。
とスケールは違うものの、黒にビビらせられたことで名残惜しいカツラへの未練が断たれ、車に戻った情けない姿は、動画も写真もありませんから、ここだけの秘密です・・・


大石脇出のカツラ 16


大石脇出のカツラ 所在地

滋賀県大津市大石富川3-5
離れた道路に広くはないですが駐車可能


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さぁ勇気を振り絞れ、俺! 280mの恐怖 〜大古井の千本桂 ビビりのエピローグ編〜


さぁ、恐怖心と闘いながら上がってきた大古井の千本カツラ(桂)ともお別れ。
名残は惜しいものの、ココにたどり着いたということは帰らないといけない(当たり前!)訳で、再度来た道を戻らなければならないわけです!!

来たときは大丈夫だったけど、帰りにもしかしたら出るのでは?!!?
なんていうことを考えながら、ひたひたと・・・いやホーホーといつもの奇声をあげながら、下っていくわけですが忘れかけてたあいつが襲ってきます。

大古井の千本桂2

いててててててて・・・・
登りほど不注意では無かったものの、ガードしていても容赦なく襲ってくる針の力恐るべし!
まるで鉄条網のジャングルをくぐるかのように、急ぐ体にガリガリと牙をむいてくるのです!
季節的にダメだったのか、若しくは仕方ないのか。
私の様に秋口に訪問する方はくれぐれも、防針対策をお忘れなく・・・

とはいえ、先に目を向ければこんな景色です。

大古井の千本桂1

前日が雨で、早朝も少し小雨が残っていた為にダム湖の対岸の山には霧がかったような風景が見られます。
(まぁ、そんな余裕無く写真撮っている間もホーホー言ってるのが現実ですけどね・・・)

そんな景色も少しは見ながらそそくさと下山です。
帰りはやっぱり凄いもので、下りであることと一度来た道であることが手伝って、グングンと国道へ近づいていきます。
「あぁ、今日も無事に戻る事が出来た・・・」と大袈裟に安心するのは、入山の試練編を見ていただくとわかるとおりですが、その入山の試練を乗り越えられた(?!)のも、あの登山口の木製看板のおかげかもしれません。

大古井の千本桂5

当然のことながら、地元の地理や道路、ましてや山に入っていく場所などわかるはずの無い状況で、くねくねとした山道を車で走りながら目的地を探している為に、「その場所」を通り過ぎるということはよくあることです。
運転には集中しないといけないし、車での探索は遅くても30〜40Km/hは出ているので、前方の交通事情に注意している間に過ぎてしまうのです。
ましてや、登山口などよほどの事が無いと気がつきません。

ここも当たり前の様に一度通り過ぎてしまいました。
もちろん、神社には気がついたのですが、社殿を見ている間に看板を通り過ぎたのです。
車はそんなもんです。
だからこそ、再度戻った時にはお手製の看板の有難さを実感したのです。
いや、それだけではありません。
「ココからで、間違いないよね・・・?!!?」と車を停めて、「入り口」とされる登山道を覗くも、既に草が生い茂って先が見えない!!
そんな状況にビビっている私の脚を、山中に向けてくれたのはやはりこの看板に他なりません。

もしこれが、味気の無い行政の造る看板であれば、「ちょっと危ないかも・・・」と躊躇していたかもしれませんが、やはり人の手を感じられるものはすごいですね。
登ってみようという気になるのです。
で、別サイトの記事によるとこの看板は、高根中学校の卒業生の手によって設置されたものらしい(後報する事情で近接写真なし)ので、どおりで温かみがあるわけだ。
これを見たから、前方に道が確認できなくなろうがトゲトゲに襲われようが進むことができたのです!!

そういう意味でいえば、やはり人の手が加わったものって良いですね。
金属だと長持ちするのかもしれませんが、ちょっと冷やっとするので怖じ気づいてしまいそうです(私だけか・・・)。

そんな看板効果もあり、無事に往復を果たすことができた今回の訪問。
やれやれ、大きな達成感だぁ!!・・・と緊張で硬くなった背筋を伸ばしながら車に乗り込もうと汚れたであろうズボンのすそを上げかけた瞬間!!

なんじゃこりゃ!!!

大古井の千本桂17

写真で見ると大したことない様に見えますが、両足と首下の上半身に無数についている種子?!と見られる物体。
はっきり言って、気持ち悪いです。

すぐにジャンパーについているものを手で払いのけるものの、絶妙に「返し」のきいた引っかかり構造で、払った位ではとれません。
それゆえ一つ一つ、手作業でとっていくことになったのですが、何せ全身なので、取った尻からつまんだ指に引っかかったものが別の衣服についてしまったりで、取り去るのに15分ほどかかる始末。
念の為付け加えておくと、靴ひもの一本一本まで絡みつくしぶとさでして、さすがに安心した体に受けたダメージは大きく・・・・
(そのため、看板の接写も失念する始末・・・)

まぁ、それでも無事に降りてこれたんだから、と針に刺されてひっつき虫だらけになっても、安全に感謝する訪問エピローグなのでした。

秋口に訪れる方、長袖長ズボンは厚手をお勧めします(汗)。
怖い怖いビビり巨樹訪問記、今回はこれにて終了です。


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さぁ勇気を振り絞れ、俺! 280mの恐怖 〜大古井の千本カツラ(桂) 邂逅編〜

これや、これこそ桂(カツラ)や。
それも山の中のカツラや。


体の緊張感を一瞬忘れさせる様な、そんな姿が目の前に・・・・

ヒコバエと呼ばれる分身を茂らせながらも生き永らえる、樹木では一般的な「太っていく主幹」に頼らない生き方を選んだアウトサイダー・・・
いや、目前にすると「山の主」とでも言いたくなる雰囲気。
それが大古井の千本桂。

大古井の千本桂7


各地に「千本カツラ(桂)」の名は日本にいくつもあるので、ここは他と区別するべく地名が冠して掲載されているページが多いので、私もそれに倣うことにしました。

巨樹に多少興味のある方ならば説明しなくてもいいでしょうが、カツラに関しては、他の樹種の様に一本の幹が「ドカーン!!!」と天に向かっているのとは、様子が全く異なります。
写真の様にヒコバエと言われるいわば「自身の分身」を次々と生み出し、例え中心の幹が無くなってもヒコバエ達が成長を続ける「クローン方式」を導入している、人間よりも進んだ?!?種の保存方法をとっている樹種ですね。

イチョウの巨樹に「乳」が出るように、カツラの巨樹は一部の例外を除きほぼ、この外観を呈します。
ただ、神社や街中で出会うことはあったものの、今回の様に山の中に位置するカツラの巨樹は初めてで、周りにいくらでも見えている木々と同じ植物とはいえ、カツラしか目に入らないほどの存在感です。

大古井の千本桂11

いや存在感はもとより、このカツラが際だって見えるのは、もしかすると周囲が開けているせいかもしれません。
開けている、というのはもちろん空もそうですが、それよりも本当の意味での「周囲」です。
おそらくは、訪れる人も多いのでしょう。
皆が歩くからなのか、まるでカツラを取り囲む円の様に、周囲には殆ど草が無く地表が見えている事から、余計にその存在を際立たせている様に思います。

巨樹の中には、周囲に立ち入りできない様に囲われているところや、展望デッキが設けられているところがありますが、なにもないにも関わらず、ある意味「結界」の様になっていることに、おそらく脳が反応したんでしょうね。

大古井の千本桂8


さて、このカツラの名称については先程少し触れましたが、現地の案内板は「千本カツラ」表記で、どこか淋しげに地面に置かれていました。
その隣には、私としてはこちらの方がおなじみの標柱がありますが、やはりこちらも立ってはおらず、横たえられています。
そして看板には、「幹を傷つけたり枝を折ってはいけません」とあります。

そんな人いるんやろか?!
いるんやろなぁ。人気(ひとけ)が無いだけに・・・
なんかむなしくなる看板で、マナーもそうですが当たり前の事を言わなくても皆ができるようになればなぁ、と思ったりしました。

因みにこの大古井のカツラのデータを紹介しておきましょう。
樹齢は300年以上、樹高約35m、目通り幹回りが16,2mとのこと。

大古井の千本桂12

日本には他にも、ゆうに300年を超える樹齢の巨樹巨木があり、中には「ホンマに300年かいな?!」というような、まだまだ青年のようなものもありますが、千本カツラに関しては300年とかどうでもいいのです。
この「生への執念」とでもいいますか、ガンガン?!と周囲を覆うヒコバエと、その異形とはにつかない控えめで可愛い青葉を見ていると、眺めているうちに溜息が出る様な美しさを感じます。

「美しさ」というのは、何も杉の様に「通直」というような意味ではなくこの場合は「線の細さ」からきているものです。
つまりは、幹の太さは剛、ヒコバエを始めとするその集合体が柔、そんなイメージ。
巨樹でありながら、どこかやさしい印象を受けます。


といいつつも、千本カツラが見事なのはヒコバエを出しながらも、主幹(どれかわからないけども・・・・)を始めとして太い幹が多く残っていることです。

大古井の千本桂10

いや、残っているというよりもこちらの方がまだまだ元気で、その名の通り「千本あるかのような」比較的まっすぐに伸びた幹がみてとれます。
もちろん、かなり見えづらい状態になっている真ん中近辺が主幹であろうとは思いますが、不用意に近づくことはしませんよ!

何故かって?!そりゃ、入山前の注意ですよ。
ハチです。
安心してはいけません。思わず顔を覗きこませたくなるカツラの幹ですが、比較的隙間が見えていても暗いところや、スペースのあることろなどには、ハチの巣がある場合があります。

そんなん、めったにないわ!、と言われるかもしれません。

しかぁーーーーーーし!!!
痛い目にあいかかった経験のある私としては、注意を促さなければならないのです。
以前の、そう、それもカツラの巨樹の訪問時。
丁度今くらいの秋にかかる、冷涼で清々しい朝の訪問でした。

大古井の千本桂14


山中ではなく、民家も近くに見える様な立地にあるカツラの巨樹。
そこには、主幹の下側にまるで「大仏っぁんの鼻の穴」ほどの空洞があり、現地の案内板には、「この空洞をくぐりぬけると、願い事が成就する」なる書き込みがあり、人の通っているような跡もある。

むうぅ〜・・・・
別にたいそうな願い事もないのである。彼女が欲しいとか、幸せになりたいとか、一攫千金とか・・・そんなのはないのであるが、書かれている以上は一期一会!
くぐってみるか?!
と思ったものの、実は泊まりがけの研修の2日目の早朝での訪問だったので、服が汚れてしまうと困ったことになる、そう考えくぐるのをやめたのです。

しかし、未練たらしくカツラを写真に収めながら周囲を回って、丁度穴の反対側についた時ビックリ!!

「ハチの巣あり、注意!!はいるな!!」の看板。

んな、アホな!!!
案内板訂正しとかんかいな!危うくくぐるとこやったわ(-_-)/~~~ピシー!ピシー!
エライ事になるところでした。

だから、無茶は禁物、油断は禁物。

大古井の千本桂15

ってなことで、あまり不用意に巨樹には近づかない様にしましょうね!

で、どこまで話したか・・・

そうそう、この見事な千本カツラですが所有は個人さんだそうです。
代々守られてきたものなんでしょうか。
これほどになるものはなかなか無い中で、後世に生き残って欲しいという想いがあったのでしょうか。
そうやって見ていると、山の中とはいえ、人との関わりの見えてくる巨樹で、神様のようなこころもちだった距離が、一気に近くなったような気がします。

しかしながら、訪問時は相当感激したものですが帰宅後の写真では、イマイチその迫力は感じられない。
もちろん、私のウデのなさと簡易なデジカメだからだということもあるのですが、あの存在感を写真で伝えることの難しさを実感しました。

だって、自分は「奇声」をあげながら写真に収めているんですから、そこまで綺麗にいくわけない。(言い訳・・・)
実際、撮った写真の1/5位はピンボケ・・・・
ぬうぅ・・・オートフォーカスやのにボケさせるとは、逆に難しいぞ、俺。
どんなけ手が震えとんねん。

そんなこともあり、今回は危うく昌志スケールを披露出来なくなるかもしれない=自分との比較写真を撮影忘れる、という事態に陥りかけて、帰り道に向かいかけて踵を返す、という馬鹿さ加減も報告しておきましょう(汗)。


大古井の千本桂16


なんとか撮影成功。
右端のわかりにくいのが私。
カメラとともに、簡易な三脚の為にポジションが微妙に調整できない勾配地なので、これも言い写真とは言いにくいですが、ご勘弁を。

なんとか千本カツラのスケールが伝わるでしょうか…

最後に、千本カツラの存在感を感じるものの一つ。
これも、カツラの巨樹を巡ったことのある方にとっては当たり前ではありますが、カツラは谷や沢を好む樹種です。
そのため、山中でも谷地にあるものや、今回の様に水の流れのすぐそばにあったりします。
中には、幹の真下から和泉の如く水が湧き出ているものもあります。

今回の千本カツラも例にもれず、向かって左側をこんこんと水が流れています。
それに気がつくと、静かな山に鳥の声と水の流れのリズムが現れて、少しだけ「クマ、ハチ恐怖症」から解放されるのです。(少しだけ、ね。)


大古井の千本桂9


見るからにまだまだ元気がありそうな千本カツラ。
これから数百年以上、この地域の神様であってほしいものです。
来る時の焦りとは反対に、落ち着いた清々しい気持ちで合掌し、千本カツラに別れを告げるのでした。

あ、シリーズはエピローグに続きます。


大古井の千本カツラ所在地

岐阜県高山市高根町大古井

岐阜県側より、国道361号線を長野方面に向かい、高根第2ダムを超えて700m位行くと左手に道後神社がある。(車だと行きすぎるので注意。ガソリンスタンド跡地に出ると行き過ぎ。)

大古井の千本桂4

その神社のすぐそばに、丁寧な「280m先 千本桂」の立て看板があるので、そこを登っていきます。

駐車は比較的車通りの少ないお社まえの道路端に・・・

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さぁ勇気を振り絞れ、俺! 280mの恐怖 〜大古井の千本カツラ(桂) 道程編〜

はぁはぁ・・・・・


流れる汗と、荒げる息遣いを皆さんにお届けできないのが残念で仕方ありません。
山と野生動物を怖れるビビりと、縄文杉を訪れた十数年前からして6キロほど肥えた(太った)体を、ぬかるんだ足元で先の見えない草むらを進めるには、文字であらわせないほどの呼吸を要するのです。

先に調べておいたサイトによると、案内板もあり迷うことはない、とありますが何のことない、途中から道が見えない!!!!

大古井の千本桂3

というか、道なんか無い!!!!!!!

うわぁ〜・・・出たでぇ、情報と違うパターン。
これが一番困る。
みんな行けるのに、なんで俺だけ・・・勇気振り絞ってんのに・・・
ビビりまくって帰りたい一心やのに、ここまで来たのにひきかえすんかぁ・・・

まぁ、後で思うと夏の雨や日照で元気に伸びた草木のためだと感じるので、時期的なものかと諦めるものの前回の「ビビり全開」で、クマよけに「ホーホー」奇声をあげている私には、引き返したくなるには十分の茂りようです(涙)
それに、この茂みには不届きな訪問者を跳ね返すがごとく、罠が仕掛けられているのです!!(笑)
いや、笑ってられない。
200%くらいの勇気振り絞ってるのに、草むらを進む体に刺すような痛みが走ってくる・・・

痛い、痛っ・・・うわ、痛っっ!!

連続で襲ってくるその痛み。
正体はこれでした。

大古井の千本桂2

やめてぇ〜!!!!!
なんやの、このトゲトゲ。
写真撮るのにつかむのも痛い。
(こちとら、いつ遭遇するかもしれないクマとハチとヘビと・・・うーん、それらにビビりまくってんのに・・・)
こいつらが群生しているおかげで、もう腕も足も針のむしろ・・・?!

実はここで、ハチに遭遇したらなんとか長袖で防ごうと思い着用してきたジャンパーが役に立ちました。
こんなの、半袖やったらもう無理です。めげてます。
意外なところでジャンパーに助けられながら、なんとか手に持った三脚の脚で針をよけながら歩をすすめていくのです。
こんなん、聞いてないけどなぁ・・・


いつもどおり、目的地がわからないとものすごく時間がかかっているように思うもの。
もうそろそろついても・・・280mくらいはきてるやろ、絶対・・・
そんな思いばかりが頭をよぎり、次の草むらを抜けて無理なら帰ろう、この次のこの先になかったら・・・・・
そんな思いを繰り返し繰り返したどり着いたのが圧巻。


大古井の千本桂6

人けがなく、ただただ水の流れる音と私の息遣いのみが、木々の間を行き来する空間に「それ」は存在していたのです。


やっと、やっとついたぁ・・・・(実際は15分もないくらい・・・)
はぁはぁはぁ・・・・・・


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さぁ勇気を振り絞れ、俺! 280mの恐怖 〜大古井の千本カツラ(桂) 入山の試練編〜

おそろしい、本当に怖ろしい・・・

以前に記事にて紹介した「胎金寺山口の天狗杉奥の天狗杉」を見てもらうとわかるように、巨樹に会いに行くにはしばしばそこそこ、人のいない山中に足を踏み入れる必要があります。

胎金寺山口の天狗杉9

皆さんのイメージでは、木というものは山に生えているので当然、木を見に行くには山の中!という概念でしょうが、巨樹というのは実は山中より町中のほうが多く存在しています。
社寺の境内で大切にされている場合や個人の所有物で伐採をまぬかれた場合、伝承によって受け継がれている場合、いろいろありますが巨樹巡りで会うことのできる多くは、町中やもしくは人里の近くに位置しているために、車で行く若しくは人の気配を感じることができる場所にあるものです。

しかぁ〜し!!!!!!

中には、近世に巨樹巨木の詳細調査の折に発見された、もしくは昔から守られている山の神様のような存在の巨樹が山中にあります。
それらに出会うには少々、もしくはかなりの登山を要する場合があります。

常瀧寺の大公孫樹3
(雪道を登り、この先のがけ崩れにおそれおののくこともあるのです・・・)

むぅう〜・・・前置きが長くなりましたが、兎に角「山」へ入る必要があるのです。
そして、材木屋で木が好きで、もちろん山も好きな私ですが一人で山へ入るのは、メッチャクチャ嫌です。
その理由は、前出の「胎金寺山口の・・・」と「巨大株杉群」の記事をご覧になれば一目瞭然ですが、もう一度言いましょう!

フフフ・・・
クマとハチとヘビとそのほか、野生動物全般が怖い!!!のです。

こいつ、ビビりやなぁ。( ̄∇ ̄;)ハッハッハ。
笑いたければ笑うがいいさ(汗)。
そんなの、少し山に入るくらいわけないかもしれない。でも、自然は決して侮ってはいけません。
自分が軽率な行動をとったことによって、家族にもその他にも迷惑をかけることもある。
だから、ビビりと言われようが怖いんです(まぁ、ちょっといいわけか・・・)

株杉 13


しかし、しかし!!
280m先(ちゃんと明示されている)には、お目当てとなる堂々たる巨樹が存在する。
しかもネットの時代(その表現すら時代遅れ・・・)、ほかの巨樹探訪者の方が写真を掲載されているのを見れば、逢いに行きたくなるにきまってる!!!

そんな衝動とビビる体の相反する状態を何とか行動に移し、今回は山中の桂に逢いに行くのです。
いや、山に従事されている方には「山中」というにはおこがましいくらいの、「これより280m」という文字通りの道路からの距離なので、ただのビビりの弱音なのですが、事前検索した巨木サイトに「ハチ・クマとの遭遇に要注意!」と、ハチは黄色、クマは黒色で注意書きをされると、もう卒倒寸前。

万が一、ハチに遭遇したら!と夏にも関わらず薄手の長袖を着込み(これが後に功を奏することになる・・・)、もしもクマに遭遇したらこれを投げ込もう!と、自身の昼食用に購入していたサンドイッチをポシェットに差し込み(これはちゃんと自分の胃におさまった・・・)、いざ、たかだか280m先の巨樹を目指す腰抜け巨樹マニア材木屋。
たどり着けるのか、いや、クマには遭遇しないのか?!
怖いですねぇ、緊張しますねぇ・・・

それでは、続きは次回ですよぉ〜。

大古井の千本桂5


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秋の名月と月に棲む樹 桂(かつら) 巨樹部

名月のシーズンに始まった桂特集の最期を飾るのは、やはり私の得意分野である巨樹であります。

一口に巨樹といっても様々な樹種、そして多くの見事な樹形を持っているものがありますが、桂はまた特別です。
実は、日本全国の巨樹ランキング60本を樹種別でみると、1位は当然?のクスノキで34本、2位はやっぱりで11本、そして次に桂の5本ということで、桂がランクインしているのです。
クスノキの巨大さや迫力というのは、常緑樹であることも手伝ってかある意味圧倒されるほどの見た目で、それ一本で小さな林のように感じることすらあります。
すぎも「直ぐい木」という割には、ワイルドすぎるやろ?!と言いたくなるような生命感と躍動感にあふれる巨樹があり、幹回りも堂々としたものですから、心に残ります。

それらに比べるとやはり桂は特別。
何せ巨樹の一つのバロメーターである「太さ」というものを言及するにはちょっと違うような気がするのですが、それでも大地から伸び上がるように突き出た萌芽枝に囲まれた、主幹の存在などどうでもいいと思わせるような特異ないで立ちは、木々がすべてみな一様ではないことと、前回までにお伝えした「桂の生きていく戦略」を如実に見ることができるものとして、ありがたくさえ感じるのです。

そんな桂の巨樹で紹介するのはこちら。

古屋敷の千本桂4

久しぶりに大雪での巨樹巡り写真がでましたねぇ〜!
そうです、ごらんのとおり冬真っ盛り?!のため葉がなく、しかもクスノキのような太い幹が見えないことから、若干迫力に欠けますが、これが「古屋敷の千本桂」です。

古屋敷の千本桂1

千本桂というのはしばしばある名称ですが、もちろんそれは、この見た目から由来するのでしょう。
この千本桂のほかにも同じような樹形の桂を見ますが、千本は大げさでもよくニュアンスの伝わる名称であることには間違いありません。
看板に所有者の方の名前があるということは、この一帯を持っていらっしゃるのか・・・
一段高くなった道路から、階段を下りて桂の足元まで行けるようになっているのですが、解放していただいていることに感謝したい気持ちです。

推定樹齢580年。まだまだ老木への到達には時間がありそうですが、樹高が25mということで、杉のような仰ぎ見る迫力というよりは、やはりワンダーランドへの入り口でもありそうな主観の位置を探すしたくなるのが、桂の巨樹なのかもしれません。

古屋敷の千本桂5

巨樹巡りになれる(?!)と、どのポイントに驚くか、というのも楽しみのうちの一つで単純な大きさではなく、やはりその佇まいから感じる空気が特別な雰囲気を醸し出していたりするもので・・・
本当は、千本桂も主幹も伸びた上に密集した萌芽枝があると・・・と思ってしまいますが、実は太く伸びていたであろうと思われる主観はすでに伐採されており、そのために胸高直径の割には「頭が軽すぎる」印象を受けるのです。
それもあり、若干スカスカ感が否めませんが、実はこの古屋敷の千本桂は、環境省の調査で単幹で元日本一の桂と言われていたものです。

古屋敷の千本桂7

看板にも「県内全樹種中第一位」という冠がついていますが、現在は山形県の最上郡にある「権現山の大桂」が日本一とされているようです。
幹回り19.2m、樹高40mといいますから、私はまだあったことはないですが、写真で見る限り立派な桂ですが、おそらくこの千本桂も、グリーンシーズンには印象が一味違うのだろうと感じます。

特に東北には桂の巨樹が多くありますが、やはり樹形はこのような箒型が多く見られます。
桂と言えばこのスタイル!という固定観念ができてしまいます。

古屋敷の千本桂9

こうやって道路から降りて桂のそばに立つとやはり、大きい。
上から目線でいると、どこか神秘さや大きさに対する畏敬の念も薄いような感じがしますが、人間、見上げるという行為に至ったその時点で、心のどこかで自分を超越したものを見るような感覚に陥るのでしょうか。
そうでも感じてしまうような、異なった感覚で、太い主幹がなくとも十分に立派で屹立するその姿は、樹木という生き物の生命力を感じるにも十分な存在感です。
また、雪のせいで根元がはっきりと確認できません(膝まで優に入ってしまうような積雪・・・)が、幹からさらに根が傾斜して伸びていることもあり、雪のないシーズンにはさらに広範囲な桂の肌が目に飛び込んでくることから、単純な胸高直径では語り切れない千本桂の迫力を見ることができるようです。

古屋敷の千本桂8

こんな見事な桂のすぐそばにまで車で寄ることができるというのは本当にありがたいこと。
桂は杉と同じくらいに水の好きな樹種。
ゆえに山中の沢沿いや渓谷に位置することもあるものの、周りには民家も見える中でこの迫力です。
案内看板にもあるように、「水飲みに立ち寄った」という記述からもこの場所に水があふれていた様子がうかがえます。
また、その続きにある「立てたまま忘れていった杖が」の行、どの地方にも必ずある「弘法大師の杖が・・・」と同じく、杖が大樹になる伝説をも持っているのです。

まぁ、この時は水飲みどころか靴に積もる雪で足の冷えることが第一で、その場所、を探すことはできませんでしたが、きっと清水湧き出る環境だったのだと思います。

古屋敷の千本桂3

残念なことに、あまりにもうずもれる雪の堆積により幹周辺での「昌志スケール」の実行はならず、仕方なく上の道路から記念撮影を兼ねた大きさ比較。
うーむ、どうも伝わりにくい。
やはり、広がる根と立ち上がる萌芽枝とともに映ってこそ、迫力が伝わるというものだと思いますが、今回は勘弁してください。
せっかくの元日本一ですが、雪の力に阻まれてしまいました。
もちろん、この時は仕事で訪れた場所もすべてが雪の中で、整地してある場所以外はとても入っていけるような積もり方ではなかったために、やむなしです。

余談ですが、宿泊していた宿のおかぁさんに、「お客さん、明日からすべるの?!」と声をかけられました。
滑る=スキーです。
なんといっても、泊まった宿が悪かった。
学生のスキー部が合宿に来ていて、スキーをしない(できないよ、仕事だもん・・・)客が私一人という環境でしたから、「仕事で泊まっている」と伝えた時の残念そうなおかぁさんの顔。
忘れられません。私も滑りたい!!食事のテーブルの横には、快晴の空にダイブするようなゲレンデの写真・・・あぁ、生殺し・・・

それでも、こんな季節に会う桂もまた格別で、東北の良い思い出になったことは言うまでもありません。


古屋敷の千本桂6

月から始まって雪に終わる。
白銀の世界に棲む桂の存在感は、確かに私の心に刻まれたのでした。


古屋敷の千本桂所在地

岩手県九戸郡軽米町晴山第19地割122

駐車スペースあ特別設けていないように見えましたが、桂に降りる所に止めることができます。


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秋の名月と月に棲む樹 桂(かつら) 木材部

一通り「ロマンチック」な桂を知ってもらった後は、私の本業でもある(いや、まぎれもない本業だ・・・)木材としての桂のお話に入っていきましょう。

木材について本格的な知識を持たない一般の方は、桂という名前を聞いて何を思い浮かべるでしょうか。
木材の性質はもとより、材の色やその手触りなど想像もできないのが当たり前。
感じたいと思っても、建築では使うことはほぼゼロですし、建築では使わないというとどこで見られるのか?!という話になってきますが、ほとんどは特殊用途の世界に入っていっているのが桂です。

桂2

なぜなら、桂の木材としての性質が「均質で加工性がよく、精緻な木質、なおかつ素直な木材」であることから、家具材をはじめ楽器材、漆器の素地に碁盤や将棋盤、まな板、製図版、そして洗い張り用の張板。
中でも最もポピュラーであろう用途が「彫刻材」。
彫刻に使われる、というのはその材に少しでも触れれば一般の方でもピンと来るはずです。
触れた瞬間に柔らかさとともに暖かさすら感じる木目は、刃物との相性の良さを感じますし、同じく彫刻に多用されるシナに似た「思い通りにサクサクいけそう!」な印象を受けるわけです。
実際、その生息域の本場である東北地方では、仏像彫刻におけるカヤの代用材として使われているといいます。
また、材面を仕上げると、若干キラキラと光るように感じるのが特徴で、散孔材広葉樹であるにも関わらず、年輪用の木目を持つことからまるで針葉樹のような印象を受けるのも桂の特徴です。
道管の直径は大きくないものの在中に多く散在しているために、特有の質感を醸し出しているようです。
針葉樹に比べ進化しているといわれる広葉樹組織ですが、道管と呼ばれる組織の形態は、植物の系統上原始的であることを顕著に表しているといわれます。


触れて暖かいと感じるほどの柔らかさは、寒さの厳しい北日本においては接触冷感が少ないことから、無垢のフローリングとして利用する文化もあった(ある?!)そうです。
確かに、スギヒノキといった針葉樹の柔らかさとは全く違うその接触感覚は、足にとても心地よいものですから、納得です。

材の比重はおよそ0.40〜0.60ほどなので、広葉樹の中では軽軟な部類に入るために、やはり接触感覚がよいのはうなずけます。

また、赤身のはっきりした桂は朱色とも言いたくなるような紅色の材色になるために、寄木細工用材としても用いられるほどの美しさ。
それに輪をかけて大木になるものもあるので、大型の彫刻や裁ち板として重宝されるのです。

桂3


とはいえ、材の硬さではなく、刃物をいためるきらいもあるので、柔らかいからと言って油断は禁物・・・やはり天然の木材。

産地としては、巨樹巨木の多く残る東北地方をはじめ、各地の肥沃な土地に根付き、古くは北海道日高地方が特に美しい木材を産出することで木材界では有名でした。
アイヌでは桂は丸木舟を作る大切な木材です。
そして変わり種では、盛岡市にある珍しい種のシダレカツラは、国の天然記念物に指定されています。

実は、意外なこともあるのです。
色が美しく木目もよく、という文句の通りの桂ですが、実はこんなやつもいるんです。

神代桂2

いきなり違う樹種か?!
いやいや、そうではありません。
これも桂です。
この色合いを見てわかる方は、木工好きな方か木材好きですね。

これは、桂の神大木、つまり「神代桂(じんだいかつら)」です。
杉やケヤキ、楡(にれ)等の神代木は比較的目にしますが、朴や桂の神代はとても珍しいもの。
ところどころに墨を流したような黒っぽい筋が現れ、気持ち固くなったように感じる木質は、あの美しい朱色はどこに消えたのかと(ほかの神代も同じだけど)思うほどの変貌ぶり。
まず、それだという予備知識がないと、まさかこれを見てすぐに桂だと思うことはないでしょう。

これも古くから存在する樹種である証拠のうちの一つでしょう。
生息域が限られていることが逆に、洪水や土砂崩れなどで埋もれやすい環境であり、こうして手にすることができるのかもしれません。

神代桂1

といってもさすがは神代。
いかに素直な樹種の桂といえど、一筋縄ではいきません。
たまたまなのか、それともやはり神代の宿命とともに性質まで変わってしまうのか、私が今まで扱った神代桂はどれも強烈なそりやねじれで、ご覧の写真のように、材の端まで削り落とそうとすると、大量のもったいない削り粉を放出することになってしまいますので、困りもの。
ある程度のところで顔を見えるようにしておいて、あとはこれを手にした人の腕にゆだねるのです。
その削り粉も、神代の夢のうちなのかもしれませんが・・・


そんな桂の木語は「不変」。
そう、恐竜の住む時代からずっと、姿かたちを変えずに残っていることこそ不変。
そんな桂に込めるのはやはりロマンチックな恋心。
ハートの新緑の葉が、甘い香りとともに甘酸っぱい恋心を支えてくれる。
そして変わらぬ愛の心を紡ぎ続けていくシンボルに・・・
もしかすると、いつの世も人が月に魅せられるのは月の魅力ではなく、月に住む桂の不変の魅力のせいかもしれませんね。
若者よ!桂が照らす月明かりの下で、不変の愛を語り合ってくれたまえ!!

(あぁ、そんな時代はいつの昔か・・・・・・)

桂1



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秋の名月と月に棲む樹 桂(かつら) ロマンの始まり部

春も素晴らしいが秋も素晴らしい。
しかしながら、いつもあっという間に過ぎている(既に)のはなぜだろうかと考えてみた。
一つ思うことは、春はまだまだ肌寒い時期から「桜」を待ち、その花が散ってしまうまでのわずかな時間の宴を楽しむことが、季節を自然と感じさせているからかと思い、では秋は?!というと紅葉を思い浮かべるも、宴がないからか(笑)どうも明確にその時期を感じることなく冬に突入しやすいのかもしれない。

そうそう、時期的にイベントが満載でその上に運動会シーズンの後に一瞬ある心地よい季節だけに、楽しみにしている余裕がないのかもしれない。
そういう先週末の運動会も確かに暑かった。日焼けで真っ赤になった肌が、10月も夏だ、と感じさせた。
ところが、その数日前には「中秋の名月」と「スーパームーン」なる、天体ショー?がいつもよりクローズアップされていたために、今年は少しゆっくりと秋の空を眺める機会を持つことができた。

特に、たいていの人は気が付いていないかもしれないけれど、スーパームーン直後の月は、昼間になってもはっきりと見えていました。
秋の青空に浮かぶ白くすけそうな月は、運動会の清々しい空気とともに浮かび、闇夜の魔法的な魅力とはまた異質な存在感を放っていたもの。
(写真中央上部のうっすらと雲のあるところにある丸いのがそれです。)

秋の月

月にはウサギがいる、というお話は今の子供たちも知っているんだろうか?!
子供のころは、月を見るたびにその「長い耳」を探したもの。
しかし、月にいるのはウサギだけではないんです!
もしかしたら、月で餅つきをしていたウサギの臼と杵はこの木でできていたんだろうか・・・と思いたくなるその木とは「桂」。

桂1

そこそこ有名でそこそこマイナー。
そう、桂には悪いけれどそんな雰囲気。
その材の性質や質感を知っている人にはすぐに通じる材であるも、建築や器具などに使われる機会は少ないので、その方面の方や一般のお客様にはあまり知られない樹種。

それでも、桂は古くから月との関係のとても深い木だったのです。
中国では、桂は月にあると考えられていたといいますし、日本でも古今集や伊勢物語にも月と関連付けられて登場するほどに、その関係性は深いのです。
中国から海を隔てた日本においても、「久方の月の桂も秋はなほ もみぢすればや照りまさるらむ」=月にはえている桂の木も、やはり秋に紅葉するから月が一層輝くのだろうか、と詠まれているようにやはり月に棲む桂の姿を想像していたのは確かなようです。

桂は、表舞台にはほとんど登場しませんが実は古くから存在する樹種で、およそ1億年前の白亜紀(恐竜の時代!!)からその姿や特徴を大きく変えずに現在に残っている数少ない種だといわれます。
古くから残る針葉樹樹種のスギも、現在では日本特産と言われ(中国にも似ていない仲間がある)ていますが、同じく白亜紀から6500万年前にはさらに多くの仲間が北半球に広がっていたものの、ある時期から以降は現在のスギが多くなったという歴史があるそうです。
スギが冷涼な気候に対応できたからだといわれていますが、原始的と言われる針葉樹のそれと同じくらいの歴史を持っている広葉樹は珍しく、それもほとんどその時の様子と変わっていないというんだから、進歩しないのかそれとも変わらずともよいくらいに卓越しているのか・・・

月面着陸した宇宙飛行士は、月の地表で桂の落ち葉の一つでも見つけただろうか?
いや、四季のない(であろう)月面ではもしかすると落ちることなく不朽の黄葉なのかもしれないな。
もしかしたら月が時折金色に見えるのは、月の桂の黄葉なのかもしれないですね。

中秋の名月



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高槻市 出灰(いずりは)素盞嗚神社の桂


自重していたのですが、私にとってはもうすぐシーズンイン(?!)なので、ウズウズしてきてしまいます。

何の事か・・・巨樹めぐりです!

現在は事情があり、9月以降しか動く事が出来ないためどうしても毎年秋から冬にかけての巨樹めぐりが多い私。
皆さんはやめてくださいね。
特に山間部の場合は、清内路小黒川のミズナラの時の様に豪雪でしかも携帯圏外で夕暮れ時などという無謀な計画になる場合もあり(普通の人はないか・・・)、万が一を考えるとお勧めできません。

ですが、春から夏に我慢し続けた「木の虫」に羽がはえるこの季節(笑)。
ちょっとのぞきに行ってしまいました。

次の巨樹の紹介記事は決めていた樹種があったのですが、延期です。
今回会いに行ったのは、偶然現場の近くだったため所在地は我が町大阪府茨木市のお隣、高槻市です。

高槻市や茨木市と言っても、市街地から京都兵庫方面に抜ける山道があり、南北に広い印象を受けます。その山道を上がると、里山が広がりそれを抜けると亀岡や巨樹の多い能勢方面となるわけです。
その里山を抜けて行く道から少しそれて、小さな集落に入っていくとお宮さんの表示があり、すぐにその場所がわかるでしょう。
といっても、表示を前進で曲がると、帰りはバック!ですので後退に自身のない方は標識からは少しですので、邪魔にならないところに駐車し歩きましょう。

さて、入っていったその先に見えるのがお目当ての高槻市出灰地域の巨樹、出灰素盞嗚神社の桂です。

出灰の桂 2
























出灰の桂 7














桂という樹木は、彫刻に使われる方も多くまた、その柔らかで優しい木目から周りと調和することのできる材として使われる事が多いので、弊社にも材があるのですが、巨樹の桂となるとなかなかお目にかかれません。
というもの、樟や杉などの様に、人里や街中に巨樹があるのとは違い、ほとんどが深山幽谷(言い過ぎか・・・)にあるため、ちょっとやそっとでは会うことができません。

それに比べ、この出灰の桂は車でもすぐに会いに行ける点が大きく異なるところでしょう。
また、桂の巨樹と言うとイチョウの巨樹の様にひこばえがグングン伸びている事が多いのですが、この桂はそれが無く、幹がはっきりと見え地面を伝った根から新たな幹が立ちあがっているのを見る事が出来る事も大きな点ですね。

出灰の桂 5














鳥居の傍にはもちろん由緒書きがあります。

出灰の桂 9














由緒書きにあるとおり、ここは元は京都府だったところだそうです。
どうして京都府から大阪府に入った(合併になった)のかは定かではないですが、私が京都府民だと恋人を失ったような気になりそうです。

出灰の桂 4
























ひこばえが無いおかげで、異様な迫力というものには欠けますが幹の分かれている様子や苔むして風格をたたえながら天に向かって伸びる幹にはやはり存在感があります。

出灰の桂 10














その分かれた幹の根元部分はというと、根上がりの様な状態というか、まるで南洋の植物に見られる板根とよばれる形状を想い起すようにゴツゴツとしてて、周囲に根を伸ばしています。
というよりも、本当は、地中にある根はこれくらいは伸びていて当たり前なのでしょう。
広葉樹の場合は、その枝張りと同じかそれ以上の面積の根の張りがあると言われていますから、普段は見えていないものが気にならないだけかもしれません。

出灰の桂 6














大樹の宿命、朽ちていく姿も当然見られます。
しかし、そういった部分も併せ持ってこその風格というものもありますし、西岡常一棟梁など、立木と製材木の双方をよく知る方は、樹勢がつよくあおあおと葉を茂らせている物ほど内部が空洞化していたりするものだ、とおっしゃっていたように記憶しています。
反対に、今精一杯生きているという老木の方がしっかりとした木部を備えている場合が多いそうです。
巨樹を廻っていると、本当に「大丈夫か?!」というものもあれば「元気そうやなぁ・・・」というものもありますが、もし、彼らの内部を見られたとすれば、外観では判断できない部分が多い事を知る事になるかもしれません。

人間と一緒、外見では判断できないということでしょうね・・・

出灰の桂 3














やや、桂に近づく不審な人物が・・・・・・・・私です。

大きな幹が聳えているというものではないので、あまり太さなどを感じる事はできないかもしれませんが、普通に考えると十分に大木。
通例どおり、ご挨拶して力を授かります。

大阪には、薫蓋樟を始めとする街中にある巨樹や、峠は越えますが、平野に巨躯を誇る西のケヤキの横綱「野間の大けやき」があります。
この出灰地域も、峠越え道の最中を少し入ったところの集落ではありますが、木々をかき分けて行く様な山中ではなく、すぐ近くまで車で行く事が出来ます。とても不思議な感じがするなぁ・・・と思っていたのですが、よく考えると山中にあった巨樹や、ご神木以外の巨樹(いや、ご神木ももしや含まれたのかもしれませんが・・)は、第2次世界大戦までに伐りつくされたのでしょう。
もしかして、今残っている巨樹の近くにはそれこそ、樹齢数百年の木々が茂る森だったのかもしれません。

当然、人は殺生します。木も伐ります。
それらの糧を得て生きています。だから仕方ないのかもしれない。
しかし、だからこそ、現存するものを維持し、木材になったものは限りなく有効に長く使わせてもらう。
それらを感じるにも、やはり巨樹の存在というものは大きな意義があります。
車で訪れられるとはいえ、やはりその存在と姿にいろいろな想いを馳せる事が出来ると、巨樹も神様もきっと温かく迎えてくれるにちがいありません。
そんなことを考えながら眺めた、桂の青葉。
ハート型をしたその葉が、優しく微笑み返してくれているような、そんな感覚を覚えた訪問でした。

出灰の桂 1














出灰素盞嗚神社の桂所在地

大阪府高槻市出灰堂の前8

駐車場は、ありません。地域の方に邪魔にならないところに駐車しましょう。



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