本物の無垢木材　～茨木市戸田材木店・セルバの木の虫ブログ～:材木屋の巨樹木甦

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材木屋の巨樹木甦

2024年10月07日

本年二度目！　全国紙にて自己紹介（笑）

報告がちょっと遅くなってしまいましたが・・・

本年1月に取材をうけ、2月に全国紙デビューを果たしたことは既知であることと思いますが、それからおよそ10か月後、同じ年にまさかまた取材を受けることになるとは思いもしませんでしたが、再度全国紙にて皆様に担当の事を知っていただく機会を頂きました。

一般紙ではなく日刊木材新聞さんという業界紙ですが、インタビューの内容を簡潔にまとめて頂いていて、業界でも「巨木巡りの変人」と認知されている担当のことを、いい感じに伝えてもらっています。

次代の潮流に合わせた「私の推し事」という表題のコーナーではありますが、担当で目立つことが組合誌でも連載する巨樹巡りであったため、主題はそれなのですがしかし、担当の希望で内容に若干割り込ませてもらったのは、毎年行っている伐採授業のお話。

だから、掲載写真も自身のアップではなく主役は木。
推し、となると巨樹を紹介したいわけではなく、巨樹に逢うことの意味やそれを含めた森林のことこそが、自身の推しであることをインタビューにてお伝えしました。

1月の時とは異なる記者さんでしたので、再度自身の事も知っていただきながらの文面。
前回とは一味違った内容だと思いますので、もし興味を持っていただけるならば是非、10月3日付の日刊木材新聞をご覧になって下さいね！

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タグ：: 巨樹; 巨木; 材木屋の巨樹木甦; 新聞記事掲載

muku_mokuzai at 13:30│コメント(0)

2024年10月04日

やはり最後は足で稼ぐ？！（笑）～左右内の一本スギ～

最近の倒木のニュースの多さに、もっと早く紹介せねば！と思う巨樹が沢山あることに焦りを感じているのですが、いつも言う様にメインは木材の拙記事ですので、もう少し紹介ペースを上げてしまうと巨樹専門ページになってしまう危惧があるのですが、そこは非公開出版物掲載の「材木屋の巨樹木甦」との並走で紹介することにしよう、と思うのです。
（といっても、そちらで字数や写真が足りない為に結局こちらでも取り上げる始末なのは、過日にお伝えした通り・・・）

さて、今回は倒木の記事ではなくまた珍道中のお話？！ですよ。

今回の舞台は、クスの驚く巨樹も多く擁する徳島県。
弊社も木材製品で昔からお世話になっている場所ですが、巨樹が多く存在することは意外と知られていない？！かもしれません。
先にお伝えすると、今回のスギの幹周りは7m少々。

10m超えには驚くものの、7mだとそこそこだな・・・というバカバカしい思い込みを、激しく否定されることになろうとは、道中思ってもいませんでした。

いつものことながら、なかなかハードな道を行きます。
麓からの登山道があるものの、巨樹訪問では時短メイン（汗）の担当は行けるところまでは車で行く！ですので、こういう道は当たり前。

しかし、分かりづらいかもしれませんが道路の端のほう、若しくは時折中央も陥没や舗装の欠落があり、しかも落ち葉の堆積がひどいところなどはタイヤがスリップし、さらにそれがカーブであったりすると完全にホイールスピン状態になり、進むことが不可能になる状況。

車に詳しい方ならわかるかも知れませんが、片方のタイヤが空転すると一部の機構のある車以外は前に進めなくなるものなのです。
本当にしっかりと考えていないと、電波の届かない山道で身動きが取れなくなるのでかなり危険ですから、皆さんは無理をしないように、若しくは4輪駆動での巨樹巡りをおすすめします（汗）。

というものの、その状態を幾度も乗り越えどんどん上るも、最後にはアウト！

倒木あり・・・

こういうこともあります。
諦めて、ここからは徒歩に切り替え。
駐車スペースはないものの、倒木がある以上山頂からの下山も無いものと仮定して、車を置いて歩きます。

もちろん、ダッシュボードには行先の書置きを残してですが・・・

そうまでして辿りつきたいスギはいったいどのような姿なのか。
下調べで見ていなければ、ここまで頑張ってはいかないかもしれない、期待以上のスギだったからこその道のりは、舗装路を登り切った場所で目にする光景によって報われます。

駐車スペース（というか転回スペース？）を越えていくと、墓石のとなりにお目当ての巨樹が見えてきました。
よっしゃ、着いた！
文面では伝わらない、いつもよりは焦らず登る事ができた理由。

それは、四国にはクマは（ほとんど）居ないという情報を信じているから。
車で登りたい理由は、どの地方でもクマに逢いたくないからです。
訪問時短ももちろんですが、とにかく一番の理由は毎度のことながらクマです。

その心配がない、と聞いているだけで心が楽なために、いつもより疲労が少ないと思うのは気のせいか・・・
そんなことを考えながら、立像のある正面？へと歩を進めてみると、なんとも圧倒的な存在感！！！

ははぁ～・・・・・・・・

フランスの超高級ワインである「モンラッシェ」を称賛する、ひざまずき脱帽して飲むべき、という言葉がありますが、まさしくそれ。

脱帽し、ひざまずき拝むべき存在と形容したくなります。

その威厳はスギだけに感じるのではなく、スギの前の立像が与えるものであることは言わずもがな。

この左右内の一本スギは、各地の巨樹伝説にその名を遺す「巨樹お手植え人？！」弘法大師さまによるものとのこと。
もちろん立像も大師様なのだろうと推察しますが、異様の大スギにもひれ伏す思いなのにそれよりも前にあり、しかも基壇の上であることでもう崇める姿勢になってしまうとでもいうのでしょうか。

見あげるイメージはこのような感じ。

地際からおさめたアングルであるものの、イメージとしてはこんな感じの現地です。
広角が好きではない（全体を伝えるにはいいものの）担当ですので、もちろん広角カメラではなく普通の視点でこの迫力です。

驚くのはやはり、スギ自体の異形でしょう。

スギは直ぐい（すぐい）木の転訛である、という説がありますが、真っ直ぐ素直に伸びる傾向にある事から、林業でも称揚される樹種のはずですよね。
それが、この異形。

それも、太平洋側のというか、太平洋の真ん中？！に位置する徳島県においての異形。
日本海側に多いとされるウラスギを想像させるようなその姿です。

扁平で、水平方向か下方に向けて伸びた大枝が、一気に点に向かうさまはウラスギ以外の何物でもない、という固定観念に襲われます。
そして、その固定観念からどうしてこのような形になったのか、という不毛な謎解析に頭が動くのです。

揺らめきながら燃え盛る炎のような印象に、心が揺さぶられます。

春埜杉他、山中にて信仰の対象にもなっていたであろうスギたちは、厳しい登山の末に出逢うその姿に、人々の畏敬の念をあつめていたことと思います。
この一本杉も、今では舗装道路がついている有難さで、担当のようなビビりでもお目にかかる事ができるようになっていますが、本来であれば、非常に有難い山行きの後の神々しい景色だったのだろうと、拝察するのです。

そして、その雰囲気を少しでも味わおうと、姑息な（？！）いやあざとい写真アングルを決行！

これが、本来の有難いアングルです。

お遍路道の険しい山中を歩いた末に、この景色が目に焼き付くであろう場所。
舗装路からでは、一本スギの側方からのアプローチになるのですが、遍路道（とおもう）からは石段を上った末に仰ぎ見る姿、いや石段下の段階で、大師様とその背後のスギに見下ろされている感覚となる事から、もうひざまずくしかないような状況なのです。

冒頭お伝えしたように、一本スギの幹周りは案内板によると7.62m。
驚くほどの太さではないのです。

しかし、やはりその立ち姿と雰囲気による印象は、幹周りでははかられないものがあることが分かっていただけるでしょう。

また、案内板には「稀に見る一株の巨木」とありますが、その意味はやはり合体木やウラスギでは見られるような樹形であるものの、という前置が隠れているのでしょうか。
担当のイメージでは、一本スギというと通直で枝分かれの無いもの！という印象なのですが、真意は如何に・・・

そんなことを考えていた時、がさがさと音がする・・・・

え？！えぇ？！・・・・・・おらんはずやろ、あいつ・・・
まさか、殆どいないという状況のアイツに、ここで遭遇？！！！！と、黒いアイツの姿が見えるのかと恐怖におののいていた時、現れたのはお遍路さん？！・・・

まさか、こんな山中に・・・と思うものの、先の通りお遍路道であることとこのような有難い場所であることで、人が居ても不思議ではないものの、やっぱり焦りますよ！

頼むから、人間だという合図に歌いながら来て（汗）。

暑い季節にもかかわらず、木立から心地よい風が流れ緑が目に染みます。
苔むす石段やスギをみても、そして道中の写真からもそうですが、植物が生育するのに良い環境である霧が発生しているため、湿って入るのですが心地よい山中。

時代劇映画のワンシーンのようですが、やはり舗装路がつくまえには登山にて多くの人が手入れしてこられたのだろうな、と思う雰囲気です。

徳島県は、非常に山が険しい地域。
北と南の間には壁のような山脈があり、北の市街地から海側の町へ出るのは山越えロングドライブを要します。
もちろん、他の県からも同じ。
しかし、そんな状況だからこそ上った先にある巨樹は、特別なものが多いのも事実。

幹周りだけでは知ることのできない迫力と存在感。
それをはっきりと感じることのできた、一本スギとの出逢い。

立像の左に、担当がいます。

像と、一本スギのサイズがわかるでしょうか。
立像も大きいですよね（汗）。
比較しなければわからないところが写真のむつかしさ。

そして、少し暗い写真ですが、担当が訪れた第一印象はこの感じです。

湿っていて、曇っていて、少し暗い。
鬱蒼とした中の一部が開けている印象。

そこにお遍路さん・・・（汗）。びびりますよ。
独りだと思っているのに。

いつもながらの珍道中、如何でしたか。
それを経て向かうに足る、有難い景色でした。

皆さんは、4輪駆動車を用意し天気の良い時期（暴風や雨天後ではなく）での訪問をおすすめします。

左右内の一本スギ（天然記念物指定名称表記）所在地

徳島県名西郡神山町阿野一本杉

緯度：34.0027086
経度：134.3252793

舗装路をのぼりきる事ができれば、駐車可能。道路途中には駐車することは不可能ですので、今回の様に放置しないように注意しましょう（汗）。

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muku_mokuzai at 13:30│コメント(0)

2024年04月03日

やはり美し三大桜　～根尾谷淡墨ザクラうつろい編～

サクラ巨樹というのはずるいですね。
巨樹という時点で特別なのに、花の時期には言いようのない美しさを纏う。

それも日本三大桜となると、数時間の滞在ではその魅力を存分に感じるには短すぎるのです。
前回お伝えした花の美しさや立派な巨樹としての存在感。

青空と山の緑、そして淡い花びらの美しさに巨樹の存在感。
何度見ても、満足するには時間を要するのが日本を代表する桜巨樹。

そう、美しさに満足をもたらす要因は、公園が非常に整備されていることも一つの要因ではないかと思いました。
大勢の見物客が訪れる当地。
出店もあり、混雑することもあるとおもうものの、意外な美しさがあり、それが表に出ていないからこそ自然に美しいと感じるのではないかと気が付きました。

それは見物客に紛れているようですが、きちんと行き届いた清掃をしてくれている職員さんのお仕事。
桜と人ごみに気を取られていると全く分からないのですが、とっても地味にしかしながら確実に園内の美観を保っておられる。

なにせ、ゴミがないのです。
当たり前のようにゴミがない。
本当に地味だけど、だからこそ美しさを保つことができると思う清掃の皆さん。

うん、素晴らしい。
桜とその公演を維持する人たち。
そして、そこで幸せな時間を過ごす人達。
一人俯瞰するような目線で見てしまいましたが、こういったことが一層の訪問満足度を醸し出しているのだと感じました。

訪問時に耳にした話では、三大桜のなかでもっとも満足したのは当地だ、という話。
奥様に語られるその方は、三大桜すべてをご覧になったそうですが、当地は巨樹として堂々の見ごたえとしっかりとした生命感、そして美しい花がそろっているというのです。

前回少し触れましたが、古木感ある巨樹もよいものですが、やはりいつまでも威風堂々の幹と美しい花の双方を楽しみたいというところからでしょうか。

もちろん個人の感想ですし、三つのうち二つしか知らない（しかも一つは花の時期ではない）担当にはわからないはなしなのですけれど、こういうお話を聞くことができるのも、現地ならではです。

さて、それらのストーリーも非常に重要なのですが、当地での滞在はできれば一日としてもらいたい。
経験からそう思います。
それは、前回お伝えした「その時」があるからです。

早朝よりも更に人が増える、夕暮れ時。
空はまだ少し明るいのですが、ちょうど谷のような位置にある当地は、陽光が遮られすでに薄暗くさえあります。

日中の華やかさが闇に隠れようとする少し前、人々は花を見る目を全体を見る目に視点変えします。

それは、この後のライトアップに備えてのカメラの位置決めの為です。

早朝もカメラ位置をシビアに決めている方は大勢でしたが、それよりもはるかに多くのカメラが周囲を囲んでいました。

「その時」、とはこの瞬間なのです。
早朝の日の出の瞬間、そして日中の映える花の時間、そして最後に待つライトアップの時。

今か今かと待ち受ける観客から、一斉に「おぉ～！！」という歓声が聞こえると、ぼんやりとその姿を見せるライトアップされた淡墨ザクラ。

日中とはうって変わってブルーグレーに染まる海のような空に、黒い森をキャンバスとしたと淡いサクラが現れるのです。

感激の声は上げるまい。
どこかで他の観光客とは一線を画したいというプライドもどこへやら、思わず「うわぁ・・・」と言ってしまった（汗）。

やはり美しい。

ソメイヨシノのライトアップお花見も最高ですが、三大桜のライトアップはやはり格別です。
そして、この瞬間は早朝から一日で見るのがベスト、です。

いや、一日も待っていられない、とおっしゃるかもしれません。
しかし、一日を費やして淡墨ザクラをめでてほしいのです。

刻一刻とその姿を変える淡墨ザクラ。
それは、ずっと眺めているからこそ楽しめる時間の特権。

もちろん、同じ光景はその時々に訪れるかもしれません。
しかし、同じ環境に流れる時間を感じながら、目と体全体でその変化を経験するにはやはり、一日滞在してほしい、そう思うのです。

人ぞれぞれ感じ方は異なるため、担当のあくまでも私見ではありますが、これだけ見事な景色はうつろいを感じられる時間を費やすことができるからだと思います。

滝桜でも、早朝の移ろいを感じて離れられなくなったものですが、やはり自然の中での時間の流れが生み出す景色は、本当に最高の贈り物です。
サクラに限ったことではありませんが、せっかくの時間を体験しないのはもったいなく感じられます。

時間の贈り物の仕上げは、漆黒の中に浮かぶ淡墨ザクラ。

公園内は、最低限の照明はあるといえどライトアップの照明と空の闇のコントラストは本当に美しい。

淡墨の由来は前回にお伝えしましたが、昼間には薄ピンクだった花びらが白銀の照明をうけ、雪をかぶったような白さに感じるのです。

浮かび上がる花を支えるように、巨大な幹も映し出される照明の妙。
美しい。

いくら撮影しても、そして眺めても満足することはありませんでした。

それは、一日の変化を追ってきたこともあるのかもしれませんが、やはり「景色」として周囲の人々の気配さえも一刻ずつの変化をもたらしていて、いつまでの同じ景色がないからです。

とはいえ、3月末の夜は日中のあたたかさとは異なり冬の冷たさ。
そして、今からノンストップでも凡そ150分ほどをかけての帰路を考えると、いつまでもその場にいるわけにもいきません。

惜しむ気持ちを抑えながら、少しづつ帰路に就こうと背中を向けつつ歩くものの・・・

園の端に向かうにつれて、借景ならぬ借光を得ていた淡墨ザクラ。
黄白色に輝く光に照らされているような錯覚を受ける、月夜のサクラ巨樹。

あぁ、この光景も目に刻みカメラにも納めたい。

離れれば離れるほどに、ライトアップに集まる人たちの姿を客観的に眺める自分がいて、主観とは異なる風景を独り占め、でした。

過日に発行された、組合の連載である材木屋の巨樹木甦にも当地の記事を掲載しましたが、ご実家が根尾谷の奥にあるというある先輩から、「行ってくれたのね！ありがとう。」というコメントをいただきました。
嬉しいことです。

材木屋の巨樹木甦は現在は非公開ですが、拙ブログを通しても楽しみにしてくださっている方がいらっしゃいます。
数名ではありますが、それを励みに残る一つの山高神代桜にも、いつの日か訪問する夢をみる今日この頃です。

＊名称の表記は、天然記念物指定での表記に倣ってカタカナ表記にしています。

根尾谷淡墨ザクラ所在地
岐阜県本巣市根尾板所

駐車場あり

緯度：35.6322249
経度：136.6088228

＊少し北には、下記の巨樹（希少木）もありますので、足を延ばしてみてはいかがでしょうか。

・春日神社のスギ（フジが支えるように見えるスギ）
緯度：35.6406070
経度：136.6052186

・長嶺の大杉（力感たっぷりの堂々とした巨樹）
緯度：35.6635586
経度：136.5800967

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タグ：: 巨樹; 巨木; 材木屋の巨樹木甦; サクラ; 桜; 根尾谷薄墨ザクラ; 岐阜県本巣市

muku_mokuzai at 13:30│コメント(0)

2024年03月31日

やはり美し三大桜　～根尾谷淡墨ザクラ邂逅編～

記事の更新がなかなか進んでいない。

ずっと見てくださっている方の中には、きっとそう思っていらっしゃる方がおられるはず。
そう信じて更新するブログ記事ですが、どうしてもこの冬場は遅れてしまいます。

今年は2回？！だったかお伝えした、趣味のスキーの時間が必要だからですが、他の時間を利用して更新できそうに思われるかもしれません。
しかし、土曜の夜中に出発し日曜の夜に帰宅。
翌日も早朝より出社というサイクルの中では、さすがに睡眠時間や体力もかなりの無理が生じるため、どうしても記事の更新にしわ寄せが・・・という言い訳なのです。

しかしながら、スキーだけではなくその間に出張が入っていることもしばしばあり、そこでも夜中の出発で日帰りなどを強行している影響の疲れもあったりして、もう春先の今頃は瞼が落ち込んで疲労困憊。

それでも、春には桜を目指して早朝から動かねばならないということで、寝不足と疲労はなかなか回復する機会がありません（汗）。
単純な巨樹ではなく、有名な桜巨樹に訪問の場合は、朝の時間が勝負ですしなによりも、時間経過による美しさを堪能するためには、時間が惜しいからです。

早朝5時前に到着した駐車場がしらみはじめたものの、まだ肌寒い3月末。
少しは先着の方がおられるかと想像していたものの、それ以上に並ぶ車に驚きながらも目的の場所へと徒歩で向かいます。

今回の目的地は、日本三大桜と称されるうちの一つです。

以前、花はないもののその壮大なスケールをお伝えした三春滝桜。
そして、必ず訪れたい場所の一つである山高神代桜。
それらとともに賞される桜巨樹であるのが、ここ根尾谷淡墨ザクラです。

完全に太陽が昇る前、広い公園内へ視界が開けるとすぐに目に映る淡墨ザクラ。

この桜の為にある広すぎる公園。
しかし、その贅沢な広さがこの桜への想いと、美しい眺めを楽しめる大きなポイントとなっていることは、時間の経過とともに知ることができます。

桜の周囲には既にその花を堪能している方や、入念に三脚を固定し機をうかがっている方。そして、ご夫婦で肩を寄せて見とれている方。
様々な人たちが、「その時」を待っていらっしゃいました。

到着して数十分後、その時が訪れた瞬間にシャッター音が一斉に響きました。

雲一つない青空と、要綱を一身に受ける淡墨ザクラ。
本来は、皆さん完全に要綱を受けるまでの経過とともにシャッターを切っておられるのですが、担当は初めての満開の淡墨ザクラの姿を目に焼き付けるために、「その時」を目に刻み、その後を撮影することにしたために、瞬間の写真はありません。

それも、それぞれの楽しみ方。
そして、担当は写真家ではありませんので、一瞬を切り取る技術もありませんから、自身の目に映るものを記憶に残し、こうしてお伝えすることができればといつも考えています。

有名な観光地で見かけるような、立派な石碑に刻まれた銘盤。
桜の代表的巨樹、とされています。

日本には、様々な美しいサクラが存在し巨樹も多く残っています。
その中でも三大桜とされるのは、やはり巨樹であることとともに希少且つ、美しいことが条件なのでしょう。

先ほどのように、巨樹の美しさについては担当の記事ではお伝えしきられないのですが、花や全体の美しさ以外の、もう一つの「現地で目にしてもらいたい美しさ」についてすこしずつお話していくことにします。

当地で見るべきことの一つは、その巨樹ぶり、です。

巨樹なんだから当たり前、というべからず（笑）。

巨樹は巨樹でも「かろうじて残っている」、というものではないところに注目したいのです。
大枝の欠損などは経験しているものだと思うものの、お花見などで接するソメイヨシノからは想像できないその巨大な幹。

そして、その幹がしっかりと現存していることが、非常に貴重です。

貴重であるから天然記念物に指定されている、というところもあるのではないかと考えますが、主幹が上部に伸びていた時代は江戸時代？もしくはもっと以前なのだろうか？！、または早々に上長主幹を失ったことで肥大生長したものかはわかりません。

それでも、遠く離れていてもボリューム感を感じずにはいられない、見事な巨躯に壮大なスケールを与えている枝ぶり。

本当に見事で希少な存在だと思います。

以前に記事にしている樽見の大桜も、斜面に位置しとても美しいサクラ巨樹でしたが、若干痛々しい部分も否めず心配してしまう場面もありました。

しかし、淡墨ザクラはというと古木の中でもしっかりとした生命力を感じる気がします。

多くの枝が支柱に支えられ、折損したのであろう部分には洞がありますが、しっかりとした息吹を感じます。
もちろん、それは花の盛りが与える視覚効果であり、植物学的に言うともしかすると、一生懸命に子孫のために花をつけているのではないかという、穿った見方もできるのですが、やはりここは前者を信じたいと思うのです。

保護のため、かなり遠くからでなければ撮影できないために、幹の詳細や巨樹感をつぶさに見ていただくことはできません。
やはり現地で感じてもらう以上ないわけですが、ひとつだけお伝えしたいのは、満開だから見られるその花の様子。

桜の淡い花の色は、人々を魅了してやまないことは言うまでもありませんが、淡墨ザクラのそれは、また一段とかわいらしくも美しく感じるのは贔屓目でしょうか。

担当のカメラでのズームアップはこれで精いっぱい。

正確にお伝え出来ないことが残念ですが、一般的なソメイヨシノよりも花びらが若干小ぶりに感じます。
離れているからなのかもしれませんが、とてもかわいらしいサイズだと思います。

それだから、あの巨躯の存在感に似合わない、いや満開であっても巨躯の存在感にとって付けたかのような花の美しさを感じるのかもしれません。
巨樹が花を咲かせるとこのようになるのですよ、というお手本のようです。

花といえば、珍しい名称である「淡墨ザクラ」という表記。
うすずみ、と発音するのですが本来であれば「薄墨」と漢字変換されてしまうところ。

日本にはひらがな、カタカナ、漢字と様々な表記がありこれも美しい文化だと感じますが、その名の由来はやはりその特徴的な花に因むのだそうですね。

名称のもととなった美しい花の色は、うすいピンクのつぼみが咲くとともに白色になり、そして散り際には淡い墨色になるといわれます。

本当にそのように変化するのかはわかりませんが、そういったお話一つでもロマンチックですし、その巨樹の魅力を引き出すと感じるところです。

花の色の変化をずっと観察することは私にはできませんが、一日でその変化を体験できるのが、満開の時期の薄墨ザクラの大きな魅力の一つです。

その変化の魅力とは？！
それは次回、「うつろい編」にてお届けします。
一つの記事では伝えきれない魅力の塊を、次回もお楽しみに！

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2023年05月12日

但馬を総べる、将軍様～大将軍杉～

出逢ったときに、思わず「おぉ・・・」と声が漏れる巨樹があります。
もちろん、それには様々意味があるわけですが、ここでもその声が漏れ出てしまいました。

若いころの私には、兵庫県というとどうしても神戸市のイメージばかりでした。
その理由は学生時代を謳歌した、という経験によるところが大きいことは言うまでもなく、翻ってはそれ以外を知らずに井の中の蛙でした。

巨樹巡りを始めると、兵庫県は近畿の中でもなんと見事な巨樹が林立しているのか、と思ってしまうほどの巨樹県だと思います。
「私が見ていた瀬戸内の兵庫県」ではなく、日本海に近い豊かな兵庫県には驚く巨樹がひしめいていて、今日のスギもその一つです。

「大将軍杉」。なんとも勇ましく威厳のある名称。
それとともに、巨樹に明るい方ならば「あれ？！兵庫県だったか？！」と思われることでしょう。

確かに、あちらも将軍なんですがこちらは大将軍なんですよ！（笑）

現地の解説板の一つは、えらくあっさりとしたもので名称の由来もあっさりと紹介されています。
だからと言って、大将軍のスケールが小さなわけではありませんよ。

知名度はもう一方に譲るものの、兵庫県の大将軍もそのインパクトある存在感では引けを取らない、と言いたいものです。

写真では、大将軍の威厳のすべてを伝えることができないのが非常に残念。
そう思うのは、多くの巨樹を訪ねている私でも、事前調査の際の写真を見た時には驚きがなかったからです。

ご覧になっている皆さんも、その形状に感心されることだろうとおもうのですが、その大きさが伝わらなければ「驚き」にはいたらないでしょう。
その大きさをお伝えするのはもう少し後。

この写真ではわかりにくいかもしれませんが、大将軍の最初の見どころはその幹の中心部分です。
非常にしっくりとなじんでいるというか、違和感がないほどに自然な存在ですが、遠景からでもよく見るとわかる「扉」がついています。

これくらい近づくと、異様に感じるほどに大きくて物々しい扉が、幹の中心部分に据えられています。
それも、しっかりと閂をかけられて。

懐に飛び込む、という言葉がありますがまさしくそんな気分になります。
違和感のなさは、きちんと杉皮で拵えられているために、遠くからは幹になじんでいるため。

人の背丈を大きく超える扉は、ファンタジー映画のなかの宮殿の扉のような圧迫感を感じるものの、やはり大将軍というからには、その「腹」のなかには多くの武具が隠されているのでは？！と思ったり、もしくは戦国時代への扉になっているのかも？！という妄想も膨らみます。

その扉の奥へ行ってみたい、と思うのにはもう一つ理由があります。
それは、大将軍杉が非常にスリムだから。

幹の横に回ってみるとわかるのですが、正面からみるイメージを覆すほど「幹の裏が無い」のです。
変な日本語ですが、そう思ってしまった正直な感想。

人間の視覚からの情報は、非常に正確かつ的確な判断のもととなりますが、脳が補正したり経験上の判断が加わることで、先入観を持ってしまうことがあります。
今回の印象がまさにそれでした。

正面から見た巨大な姿から、頭の中では当然のものとして想像していた「円形の幹」がなかったのです。
巨樹の多くには、常識的な考えが当てはまらないのは十分に承知しているつもりです。
それでも、正面の幹回りサイズがそのまま背後にも存在すると脳が判断してしまったまま、幹の横に立つとそこにあるはずの「幹が無い」という変な日本語になってしまうのです。

しかし、だからこそド〇え〇んのどこでもドアのように、ドアを開ければすぐに別の世界や違う場所、ということが連想されたことから「戦国時代への扉かも？！」ということが頭に浮かんだのだと思います。

扉にばかり気を取られがちですが、上を見上げると見える枝は「マンモス！」に見えませんか？！
枝垂れた牙、上部で天を目指す鼻、そして偶然の位置関係で見える大枝の切断面が目。

象じゃなくてマンモス。
それは現地で見上げてもらうとわかるのですが、うねるような皺のついた皮が、まるで厳寒を生きるための剛毛に感じるから。
それとともにやはり、扉がタイムスリップのイメージを私の脳に焼き付けているからでしょう（笑）。

人間の視覚的イメージってすごいもんです。

それとともに、「牙」の間を縫って伸びる枝にも注目なんですが、普段なら「植物ってすごいな」と感じるところも、もうマンモスで頭がいっぱい（笑）。

そんな状況で、スリムな大将軍の裏側が気になり背後から眺めてみます。
ここでありがたいのは、周囲に柵などがないことなんです。
近づいたり、見上げることはもちろん、正面だけではなく背面からもその姿を拝むことができるために、正面の印象とは異なる多面的な姿を感じられます。

どうです？！
大将軍、大きくないですか？！？
大将軍の名に恥じないスケールです。

主幹ではない幹ですら、この太さ。
だから、全体の幅から受けるイメージは本当に大きいのです。
そこと厚みのなさのギャップも大きいのですけれど。

大将軍杉の裏手は斜面になっていて、すぐそこに沢があります。
斜面は、大将軍の落ち葉でフカフカ。
正面から見た時に、のたうち回る太い根が露出しているのが非常に不健康なのでは？！と邪推したのですが、その反対側に豊かな水を得られる状況から、この生長があるんだなと理解しました。

このサイズ感を持って、もう一度正面に立ってみましょう。
私と比較して。

これで、いかに写真ではそのスケールをお伝え出来ないかがお分かりになるでしょうか。
青色のちっぽけな人間を従える将軍。

そういえば、アメリカにも将軍の名を関する巨樹がありますね。
いつかは訪れたい、世界一の樹高を持つ木の仲間であり、世界一の体積の木。

日米の将軍対決も、記事にしてみたい！
そんな夢も出てきます。

そういえば、先月の巨樹記事も但馬の桜である樽見の大桜で、昨年9月には轟の大カツラを、6月には和知の大カツラをお伝えしていました。
近隣には、まだまだこれからお伝えしたい巨樹だらけ。
ここへの道すがらにも、乳ノ木庵の大銀杏（和田山町殿177-3）もあります。
一日かけて、一筆書き状態で回っても回り切れないので、死ぬまでネタは尽きません（汗）。

こんな巨樹に逢いに行けるのは、車のありがたさを感じますね。
道路沿いの雄々しき将軍。

新緑のドライブとして、大将軍に拝謁されてはいかがでしょうか。

大将軍杉所在地

兵庫県朝来市和田山町藤和381

広い前面道路に駐車になりますが、路上駐車ですので気を付けて。

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2023年04月08日

1000年見下ろす、仙人桜　～樽見の大桜～

皆さん、今年のお花見は如何だったでしょうか。
コロナ禍がひと段落（？！）し、仲間や家族と久しぶりにサクラの下での時間を楽しんだ方も多かったことと思います。

担当も、久しぶりの花見に出かけたものの、数年間の気候変動の影響なのか、異常な日差しの暑さに辟易した一日でした。
半袖にもかかわらず、額から流れ落ちる汗は、3月に20度超えを記録し融雪を促す異常気象とともに、今後も忘れることは無いでしょう。
（まだ雪解けの無念を引きずっている担当です・・・）

さて、当記事は材木屋のブログでありながらも、担当の趣味である巨樹巨木めぐりを不定期で紹介していますが、ことサクラだけは開花に合わせて訪問することが難しい為に、なかなか良い写真で皆さんにご紹介する機会がありません。
写真家ではなくて、本業は材木屋ですからね・・・

そんな中で、なんとか花が見られる時期に訪れることのできたサクラの巨樹で、ご紹介しないわけにはいかないのが、近畿の誇る名桜であるこちら。

兵庫県の巨樹王国、養父市。
その山中、駐車場より植林針葉樹が林立する林を徒歩で登る事およそ20分。
急に開ける視界の上部に仰ぎ見る姿こそ、目的とする「樽見の大桜」です。

樹齢は1000年と伝承され、古い文献にも国を超えて名桜として紹介されたこともあるという、由緒のあるサクラ巨樹。
国指定の天然記念物にもなっているといえば、その稀少性が伝わる事でしょう。
兵庫県下で最大のエドヒガン種。

案内板にあるように、花が咲くと白雪に覆われたように美しい、という姿は周囲の緑との対比に非常に映えるのです。
しかし、「白雪」という形容の通り、一般的なソメイヨシノ種に期待するような薄紅色の花ではないということの比喩でもあるように思えます。

樹齢1000年と言われるその姿は、さすがに古木であることを否めず満身創痍を通り越しているように感じます。
昭和40年代から腐朽がすすみ、とのことで懸命な治療と保存活動の末、私も目にする事ができる幸せを享受できることに感謝すべきところなのですが、それを理解していても健全であればどれほどに見事な佇まいなのだろうか、と思ってしまう自分もいるのです。

その理由はやはり、多くの枝を支えるための支柱が「張り巡らせられている」ことでしょう。

花は色づいている為に目視できますが、巨樹探訪としてはやはり、その歴史と迫力を感じさせる幹の姿を拝みたい気持ちになるものです。
しかし、ジャングルジムの中にあるような姿は、訪問当日の曇天の影響もあってか、幹をはっきりと見る事ができず必要だとはわかっていても、「もし、それがなければ・・・」という思いを断ち切ることができませんでした。

とはいえ、山中の名桜です。
急な斜面を見下ろすように立つ姿は雄大で、斜面下部へと広げた枝まで美しく色づく花を見ると、心が休まる気がします。

サクラの周囲は木道として整備され、ステージの中央に主役が立っているかのようでもあります。
もちろん、その木道と柵から内部へは立ち入ることはできません。
治療により樹勢が回復しつつあるとはいえ、多くの人が絶えず周囲に立ち入ることのサクラへの危険性は非常に高いもの。

「ジャングルジム」の中に入り、サクラに寄り添いたい気持ちがありながらも遠くから眺めるだけになってしまいます。
それも仕方ないのですが、比較的小さな花びらであるうえに淡い色合いと、若干満開を過ぎていた訪問日と雨天直後での散り桜であったことで、本来の美しさをカメラに残すことはできませんでした。

それでも、訪れた人に挨拶をするように、木道へと枝（手？）を伸ばしている部分で、大桜と触れ合うことができます。
まるで E.T のように、「僕は、ここにいるよ～！」とは言わないまでも、近づくことが叶わない訪問者たちとの触れ合いの機会を与えてくれるかのように、可憐な花がついた枝先を伸ばしてくれている大桜。

そっと、その枝に触れてみます。

もしソメイヨシノのように、花の最盛期を過ぎたのちに葉がでるのであれば、本当に白雪に覆われたような姿なのだろう、という印象。
どうしても、ソメイヨシノの様に咲き誇る薄紅を想像すると、物足りないように感じるかもしれません。
しかし、1000年の月日を刻み、そして人とともに今でもこの地に姿を残していること。

それだけで十分な存在価値があります。

現地によると、昭和初期のこの地は養蚕に用いられる桑の葉を採集する場所だったといいます。
石の多い土地であったため、石を除きながら桑畑として切り開いたとされていますが、本当にこのような奥地にまで人の営みが入り込んでいたという歴史に、驚かされます。

昭和40年代に養蚕が行われなくなり、スギやヒノキの植林へと転換されたそうですが、広葉樹好きな材木屋としては、今でももし桑畑が残っていたならばどのような光景だったのだろうか、とその地に思いを馳せていました。

現在は、天然記念物指定を受けていることもあり、また多くの観光客が訪れることもあり整備されている為に、人の営みの歴史よりも整然と整備されたところに、白雪の様なサクラとコケや針葉樹の緑、そして群生するミツマタの黄色が映え、人とかかわっている自然の中の美しさを感じます。

本来の自然、というのは人を寄せ付けない厳しい一面も併せ持つ美しさがあるものだと思います。
山中の、人がやってくる前の大桜はどれほどの威厳を放っていたのでしょうか。
それを想像するのは今では難しいものです。

しかし、人が関わったからこそ現代でもその姿を望む事ができる幸せを感じられる、この場所にいられる事。
非常に有難いと感じます。

近づくことはできませんが、差し伸べられた手（枝）の先で記念撮影。

生憎の天候もあり、立派な姿の魅力を半分もお伝えする事ができない未熟さはご容赦頂きたいのですが、写真右端の担当と比べてもらうと、どれほど立派なサクラなのかは想像して頂けることと思います。

巨樹を治療で残すことに賛否があることは承知しています。

延命治療で生き地獄、などと強烈な言葉で批判されることもある古木巨樹。
樽見の大桜もその一つなのかもしれません。
人間のエゴ、という意見も耳にしますがそうではなくて、この姿を拝むことのできる幸せと、樹木に比して短い人生の人間が生きていくということを考える機会となる古木との対峙に、価値を見出すきっかけを与えてくれる場ではないか、と思います。

幸い、万一倒木ということがあったとしても、人々への生活や居住安全への心配のないところ。
できうる限り、この佇まいを維持してもらい、訪れる人たちに花の美しさだけではない、巨樹との対峙の価値を考えさせてくれる場となることを祈ってやみません。

樽見の大桜所在地
兵庫県養父市大屋町樽見　山中

駐車場有、そこから徒歩になります

登山道で山を越えると、県下で有名な「口大屋のアベマキ」があります。
こちらもいずれ、紹介したい巨樹です。

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2023年03月05日

門前の高僧、後世に名を遺す　～婆羅門杉（下之坊の大スギ）～

近年、ほぼ月イチで公開していたため、一か月飛ばしただけでかなり久しぶりのように感じているのは、私だけでしょうか。
先月は、長々続く広葉樹シリーズの最中だったため中断するわけにはいかずに進めていると、2か月ぶりの巨樹の記事となりました。

今回紹介するのは、非常にインパクト抜群な名称のスギ。

弊社のある大阪府の隣県、奈良県。
近そうに感じるのですが、実際は山を越えたり渋滞を抜けたりでなかなかな道のり。
そういうイメージからか、お隣という感じが薄いことは否めません

しかし、見事な巨木が多いこともある上に、趣味の車での走行の舞台であったり、もしくはモータースポーツの聖地である鈴鹿市へ向かうための交通の要衝でもあるのです。
その奈良県天理市の市街から離れた場所に、山門の如くにそびえているのが、その名も婆羅門杉！

2本の巨杉の並び立つここは、下之坊と称されている元寺。
「花の寺」としても有名な長谷寺の末社だそうですが、さすがに華やかさはありません。

天理市、といっても市街地から山間に入ったところだからということもあるのですが、それがかえってゆっくりと「婆羅門」に対峙する時間を与えてくれるのです。

奇異なその名の由来は、婆羅門僧正に由来するとされています。
十一面観音さまに願い事をし、再度婆羅門杉に願い事をすると叶えられると伝えられるそうですが、お百度と同じような行為なのでしょうか。

樹齢八百年、という表記から想像するほどの太さではない幹回り6.8mという数値ですが、ここで特筆すべきはやはりその姿。

杉は時折、想像を絶するような異形をなすことがありますが、それほどではないものの特異な形状。
二本あるうちの一方、北側は天理市のホームページによれば幹回り7.4m。
その数値ではなく見どころは、その枝ぶり。

奈良県天理市　下之坊の婆羅門杉23

どっしりとした幹の上部でたけだけしく分岐し、水平方向に伸びたのちに垂直に天を目指す大枝。

伸び方自体は特殊な状況ではないのですが、多雪地域や日本海側などに多い「ウラスギ」という形態では多くみられるものの、内陸部の奈良県でこの姿というのが非常に珍しいように感じます。

奈良県には、以前に紹介している八房杉や高井の千本杉など、異形のスギがありますのでその姿自体驚くことではないのかもしれませんが、植物の生育という観点で見たときには、特異な環境にあったのだろうかと思いを巡らせるに十分な形状をしている婆羅門杉。

もしかすると、婆羅門杉が生長過程にあったとき大雪のが続き、一生懸命に伸ばしていた枝にも着雪し、少しづつその重みに耐える行為を続けているうちに、枝の付け根に「アテ」が形成され現在の形状になった、と考えるのですがどうでしょう。

奈良県天理市　下之坊の婆羅門杉20

太陽光の影響や風など、生育環境には大きな影響を受ける樹木ですが、この枝はそのものにかかる荷重が鉛直方向に働き続けたことを示唆している、と考えたくなるに十分な楕円形をしています。

全体的に太くなるというのではなく、下垂するように枝の下側に「頬杖」よろしく不均一な形状を有している。
一材木屋である担当の邪推とは別に、枝に関する情報がもう一つあります。

それは、枝が折れる、ということ。

どの樹木も、巨樹巨木以外でも枝が折れることは珍しいことではありません。
しかし、巨樹ともなるとその枝一つでもかなりの大きさと重さになります。

特に、今回のように貴重な建築物や民家の近くにある場合は、折れた枝により被害を受けることになります。
近年の大型台風で、幹そのものを倒壊させられた例も幾つかあり、日吉の神社のタネスギのように大きな被害がない場合もあれば、岐阜県の大湫神明神社の大杉のようにたまたま道路側に倒木したようなケースもありますが、いずれにせよ事前対処するのか事後処理にするのかはその樹木に対して、どのようにかかわるのかを考えさせられます。

婆羅門杉においては前者の事前対処をされているのです。

小枝も含めて、日本の巨木からの落枝は多くあるようで、近年も大きな枝が折れて建物の屋根を損傷したそうです。

それを受け、以降は定期的に枝を除去するなどの対応をしている、と現地にいらっしゃった地元のご主人から教えていただきました。

切りたくて切っているのではなく、やはり仕方ないのだとおっしゃっていました。
ネット上にある婆羅門杉の写真には、以前の枝を茂らせていた姿も散見されますが、担当の写真と比較してみていただくとわかる通り、正面からも枝が切られた切断跡が確認できると思います。

山中の巨樹の場合や、増えてきている「ほぼ住人のいなくなった集落」においての残された巨樹の場合は、落枝や倒壊の危険を考えることはほぼないでしょう。
しかし、身近な巨樹の場合は数百年の樹齢を数える場合、そのかかわり方の中に信仰や畏敬の念に合わせて、万が一の場合にも備えなければならないのかもしれません。

巨樹巡りをしていると、期待していた巨樹が見当たらず伐採された「静かな株」だけが、私に年輪を誇っている場所がいくつもあります。

貴重な樹種や太さの場合にはもし、現存していればどれほど立派で敬われるべき姿なのだろうかと思うのですが、人が近くでかかわる以上は早期伐採という選択も仕方ない時もあります。

担当にとっての巨樹巨木は、単なる大きな植物ではありません。
ましてや、単なる訪問記でもなく記録でもありません。

その場所での空気を感じ、触れられる時には触れ、環境や気候を感じて土を踏みしめ、観察し想いを馳せ、そしてかかわる人たちや住まい人たちのお話を聞く。

生きた一人の人間が、数百年数千年の樹齢の生き物と対峙し、そこに代々かかわる人たちや環境の変化のことを知り考える。
その時間をかみしめるための巨樹巨木巡りだと思っています。

婆羅門杉の表す姿もその一つ。

奈良県天理市　下之坊の婆羅門杉６

担当は街の材木屋でありますが、単なるモノ売りではありません。
いや、そうではないと思っています。

自社記事で巨樹を紹介するのも、どこかそんな想いがあるからです。
木材の組合誌において巨樹コラムを担当していることもそうです。

木材、ではなく樹木であり、その樹木をはぐくむ山を知ることは翻って人間の生活や環境やそれに必要な物事を考えることになりうる、とちょっと哲学的？！なことを考える時もあります。
そんな考えの一つが今回の婆羅門杉の姿でもありますし、名称でもあります。

奈良県天理市　下之坊の婆羅門杉21

正面の枝が残っていたなら、これほど明るい写真ではなく印象が変わっていたことだと思いますが、これも現在の姿。

今後また数百年、どのように人と関わりどのような姿になっていくのか。

そんなことを想像し、また樹木や植物、木材に思いを馳せる。
そんな契機になる婆羅門杉でした。

婆羅門杉（下之坊の大スギ）所在地

奈良県天理市福住町265

車通りは少ないですが、ご迷惑の内容に駐車しましょう

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2022年11月11日

一面、朱と黄橙！～紅葉の絨毯！～船谷日枝神社のケヤキ～

さぁ！紅葉の季節です！
過日に訪れた山間部は、既にカエデ類が燃えるような色合いに変わっていました。
いつまでも日中があたたかいと思っていても、季節は進んでいますよね。

紅葉、というとやはりカエデ類やイチョウの黄葉を想像してしまうのですが、たまにはっとさせられるのが「ケヤキ」です。
少し黄色みがかっていたり、かと思うと少し焦げたように赤茶けていたり。
材木屋としては、どうしてもその木材としての表情のイメージばかりが先行してしまいますが、力強い木目のある材とはことなり、その葉は非常に可愛らしい印象を受けます。

今回紹介するのは、巨樹王国である兵庫県北部の養父市（やぶし）。

まだ、拙記事でも紹介できていない多くの素晴らしい巨樹を擁するこの地域。その中で、この季節だからこそ大きく印象に残った船谷日枝神社を紹介します。

当初は、事前情報にてその幹周りが驚くほどではないことから、まったく期待はしていなかったことを白状します。
ケヤキで幹周り5m台。

西の横綱「野間の大ケヤキ」へ年に数回逢いに行く私にとっては、残念ながらケヤキ巨樹というには物足りない印象は拭えなかったからです。

そう思って尋ねた印象は、美しい！でした。
残念ながら、お目当てのケヤキはやはり驚くものではなかったのですが、2つの事に驚きました。

私が見上げているのが、主役のケヤキ。
幹に空洞を有していますが、弱弱しさはまだない印象。

地盤面よりも上がっている為か、周囲に根を張りにくいからかエネルギッシュではありません。

風格はあるものの、この個体を見上げるよりも先に興味が移ってしまう一つの理由は、境内を埋め尽くす紅葉の絨毯。

まるで、ケヤキの木材を現しているかのような橙色の絨毯のようです。
それが、人の足跡も無く一面に続いているさまはとても美しいのです。
もし、新緑の季節に訪れていたならば、そこまでの感動はなかったかと思いますが、大木ひしめく境内は、紅葉の時期にしか感じられない悦びです。

良い景色だなぁ・・・と思いながら、足跡の無い朱の雪原のような境内に足を踏み入れていくと、入口のケヤキ以外にも立派な木々がある事に気が付きます。

そして、その中でもひときわ目をひく個体がある事にも・・・

木材業に従事していると、木は真っ直ぐなもの、いや真っ直ぐしていなければいけないもの、という意識で商品として樹木を見てしまうのではないかと思います。
担当の場合は、地松が好きな事でもお分かりの様に曲がりや「むくり」が大好きですから、広葉樹ののびのびと生きる曲がり具合に非常に萌えるものです。

そんな心をくすぐる巨木が、境内にもう一つあるではないですか。

それが二つ目の驚き。

なんという姿！
ズヌヌヌヌ・・・・・とこのおおきさのまま地面から突き出したようなその姿。
境内の平地であるにもかかわらず、これほどの曲がりがどのように形成されたのかと、見た瞬間から興味が尽きません。

地松もそうですが、広葉樹は針葉樹とは異なり単純な上長生長以外に、自分の方向を変えることで隙間をぬって伸びていく事ができる特性を持っています。

その特性がでているのか、とも思うものの周囲は比較的開けていることから、このように曲がる必要はなかったのでは？！とも思ってしまいます。

樹種の指定はされていないようですが、ケヤキの様にも見えるものの、特徴的に剥げ落ちていく樹皮を見ていると、ムク（椋）ではないか？とも思えてきます。
確認しようと葉を見たいのですが、樹高が高くてカメラでもとらえられずで分かりません。

知りたい気持ちはあるものの、樹種はどうであれ、とても印象的な出逢いがあることに感謝です。

いろいろな巨樹ブログを見ても、この個体に関しての記載がないのが不思議なくらいなのですが、それももしかするとこの曲がりのせいなのか？
それとも、見た目以上に樹齢が若いからなのか・・・

それもどちらでもいいのですが、境内の紅葉の彩に一役買っている上に、社叢としての重量感にも大きく貢献しています。

ね？！

この地際の存在感は、巨樹マニアの心をくすぐるはずですよね。

ケヤキやクスは、超巨大なものも多く残っていますから今回のサイズでは驚かないのですが、やはりどこか特別感を演出してくれるのは紅葉ですね。
少し肌寒い中ながら、あたたかさを感じさせる橙の葉っぱたち。

そして、風が吹くたびに「カサカサ・・・」と音をたてながら降り注ぐ葉。
そう思っていると、ふと甘みを感じるような香りが漂っているような・・・イメージでそう認識しているのかもしれませんが、そんな香りさえも感じる境内の雰囲気。
五感を優しく刺激してくれます。

それこそ、秋の巨樹巡りの醍醐味。

都会では、降り積もる落ち葉は迷惑になる、とゴミ扱いされる場面が多いもの。

しかし、当地では除雪された道路の様に、車の通った部分のみにアスファルトが見えるような状態。
黒い人工物を覆い隠す自然の営み。

こういった景色の一つ一つが、心を揺さぶるんですね、少しづつ。

紅葉の季節にはイチョウの黄色も美しいし、巨樹の存在感むき出しになる葉を散らしたカツラもいいものです。

しかし、なんとも言えない温かみのある色づきを見せる巨樹であるケヤキも、見過ごせないと思っていただけたのではないでしょうか。

木の葉が落ち切ると、次にやってくるのは白い粉雪。

あたたかな橙から白銀の世界へと変える使者は、養父市をウィンタースポーツの町に変えます。
担当も、雪山へ繰り出す季節。
その少し手前の短い間のあたたかな景色。

今年も目に焼き付けて、冬に備えたいと思います。

船谷日枝神社のケヤキ所在地

兵庫県養父市船谷７６

駐車可能

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2022年10月15日

地域の人と1100年　～根岸の大いちょう～

もう今年もあと2ヶ月。
あぁ、そんなこと言わないで（汗）。
そう思う方も多いのでは？！

担当もその一人です。
冬が近づくことで、「銀色のシーズン（スキー）」が到来する楽しみも大いにあるのですけども、時間のすぎるスピードが早すぎて自分の感覚が追いつきません。

樹木はどうなんだろう。

人間の様に、歳を重ねて時間が過ぎていくスピードが早くなるということがあるのだろうか。
もっとも歳を重ねていると言われる、この樹に聞いてみたいものです。

弊社としては、ふるくから繋がりを感じる場所、青森県。
もちろんそれは、当地の貴重な財産である青森ひばで、担当の自宅も土台に青森ひばを使用していますし、毎日の風呂には青森ひば油での「ひば風呂」ですので、毎日青森を感じていると言っても過言ではありません（笑）。

そんな青森県で、同樹種での樹齢一番の存在がこの「根岸の大いちょう」なのです。

イチョウは、各地に巨樹が存在し伝承樹齢が千年と言われるものも存在します。
当地のイチョウは、推定樹齢1100年。

1100年前の青森県はどんな様相だったのか。
寒さの厳しい当地で1100年を生き抜いてきた中で見た景色はどのようなものだったのか。

どうしてもその、時の流れが気になるところ。

実は1100年どころか、およそ30年ほど前にとても大きな出来事がありました。
それは、当初日本一の幹周りのイチョウの巨樹の称号を受けていたものの、その後の調査でその座を譲ることとなったのです。
そのいきさつがあってかどうか、先の案内板には「東北・北海道では一番目で、イチョウの木としては日本一」と、何が日本一なのかが濁されているような感じがしなくもない。

しかし、残念な対面にはなりません。

幹周り15mとされる巨さは、巨樹中の巨樹。
1100年の月日のためか、カツラの巨樹同様に主幹があった？！中央部分が欠落しているようで、その上真冬の訪問のために葉がないことから、広がりは感じにくい写真ではあるものの、十分に迫力があります。

1100年の月日の過ぎ去る力は、想像よりも大きいのでしょう。
ひこばえを形成して入るものの、大枝や太い幹は悉く枯れたり折れたりしている模様。

枝の欠損部分も目視で多く見られますし、イチョウを囲む柵のすぐそばには切り落とされたものだろうと推察できる、中心が枯れた大枝（幹？）が横たわっていることからも分かります。

それでも、命を繋いでいっているのだろうと思わせることがあります。

それは若干歩きにくい、大いちょうそばの参道の足元にあります。

鳥居から大いちょうに向かって右手。
細いイチョウがスクッと立っています。

樹木の事や、状況を観察することがなければただの単体の細いイチョウ。

しかし、よく見ると大イチョウから根が伸びている様子！

柵の下を潜るかのように根をあらわにしている大いちょう。

そしてその先には別個体であるかのような、もう一つのいちょうが・・・

これは大イチョウの後ろ側から撮った写真ですが、この写真の右側がそうです。
完全に別個体に見えます。
確定ではありませんが、おそらく大イチョウのDNAを持ったクローンであると思われます。

そう考えてみると、大イチョウの方には枝を伸ばしていないのは本体に対しての忖度？！

このような現象は、西日本最大のイチョウともいわれる「常瀧寺の大公孫樹」でも見られたもの。

植物の生命力の偉大さを感じるところです。
1100年生きてきたことも驚きなのですが、このような形でさらに先の数百数千年への布石を打っていると思うと、言葉がありません。

ちなみに当イチョウは、見る位置によって大きく印象を変えます。
鳥居側から見ると少しスリムに見えますが、90°転換するとものすごい太さなのです。

元日本一もうなずけるそのスケール。

景色に同化して少し分かりづらいですが、左にいる私がわかるでしょうか。

この角度が最もいいアングル。
もし、主幹が残っていれば更に迫力がましたに違いない姿。

そんな大いちょうですが、何よりも印象に残るのは地域の人たちとのつながり。
離れたところからの巨大さや、近づいてぽっかりと口を開けて見上げることももちろんいいのですが、その幹やひこばえをよく見てみると、至る所にお賽銭があるのです。

ある意味、どこかに引っ掛けることに意味があるのか？！と思ってしまうくらいに皆さん引っ掛けている。
だから、ほとんど5円玉なんだけど、稀に50円も！

それらは、ずっと置きっぱなしにされているような様子ではありませんでした。
きちんとお賽銭として管理されているのか、そして場所が開いたところに継続的に新しい「御縁」を求めた5円が収まるのかもしれません。

これだけ多くの地域の方が、このいちょうに逢いに来ているのかと思うと、物凄くこころが温まる気がしました。

多くは子宝や乳の出の願掛けなのかも知れませんが、きっと他にも様々な想いや願いが込められているはず。

巨樹は、ただ巨な存在ではありません。
その生育には多くの地域の人が絡み、歴史があり、いわくがある。
その場所に根付いて動かないからこそ、土地とともに歩んでいく。

私が好きなワインもそうですが、地域の個性を活かすことや土による大きな違いが如実に表れることを考えると、当地はイチョウの生育条件が非常にいいのかもしれません。
そう、ここ青森県には巨樹巡りでは外すことのできない、押しも押されもせぬ日本一がいるのですから。

その姿は、いつかまたお伝えすることにします。
今回は、地域に御縁深い大いちょうの雪の姿で、もうすぐ来るであろう冬の訪れをお届けしました！

(左下が担当です・・・小さい・・・)

根岸の大いちょう

青森県上北郡おいらせ町東下谷地6

駐車スペースは雪で確認できませんでした。

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muku_mokuzai at 13:30│コメント(0)

2022年05月11日

街と山の差を生むのは、その環境と達成感　~笠形寺のコウヤマキと笠形神社の夫婦杉（大スギ）目的地編　②~

ゴールデンウィークは、大スペクタクル。
外出せずに、私の巨樹木甦をご覧いただきありがとうございます。

苦労の道のりを知ってもらう間に、黄金週間を消費してしまいました（汗）。
もう、それくらいの苦労と思ってください。この道のり。

本当は、仲間とハイク！的なものであれば、まったく思いは異なっていたと思うのですけども、いろいろな思いを抱えながらの一人旅は、時に不安を煽るのです。
そんなことで、やっとたどり着いた目的地。

真新しい解説板。
事前の情報では、大スギとなっていたものが夫婦杉になっています。

樹齢850年、目通り9.5m。
この期に及んで夫婦であろうがなかろうが、この立派な姿には文句のつけようがありません。

この山を統べるもの。
そうとしか思えない、迫力のある姿。
ご覧あれ。

ん？！
迫力？！
どこが？！・・・

そう思われるでしょう。
すみません。
伝えきれません。正直なところ。

夫婦杉の所以は、もちろん幹が寄り添っているところ。
綺麗な注連縄をみても、御神木として霊験あらたかなことは間違いなし。

現地にいれば、このなんとも言えない圧倒的なスケールと太さの存在感は、とにかく見上げてしまうだけで立ち尽くすのみなのですが・・・

大スギの周りには他の木々はないものの、大スギの全景をとらえようとすると、どのアングルからも他の木々がかぶさり、特に樹上は枝がかかってきていて全く見えない。

だってね、大スギが大きく見えないことに歯がゆいほど、実際は周囲のスギたちも十分に大木なんですよ。
これですよ。

見えます？！
後ろが大スギ。

私が手をかけているスギから、直線で10数メートル離れているんですよ、大スギ。
それでいて、この大木と同じくらいのスケール感。
分かります？！

これしか比較しようがないんですよ。
このスギでも、直径1m。
ものすごく立派で太い。

それから10数メートル離れて同じくらい！。
伝わらないもどかしさ。

大スギのそばにはヒノキも立っています。
細く見えますよね？！
そんなことない、このヒノキ。
材木屋としては、感動的な立派なヒノキ。

思わず、「太っ！！」という声がでて大スギよりも先に撮影したほど。

それには理由がありまして、ここ笠形神社では地元近くの名城である姫路城へ、御神木であるヒノキを献木している歴史を持っているからです。

姫路城昭和34年の大修理の折、この場所から高さ42m、幹回り4mというヒノキが芯柱として搬出されたのです。
その様子は、今も伐採場所に写真掲示され、レプリカとして残された場所には新たなヒノキが育っています。

だからこそ、大スギとともに鎖の「結界」の中に保護されているのだろうと思うのです。
きっと、この先の大修理の折に活躍するか、若しくは夫婦杉以上の「１０００年ヒノキ」として数百年後に保護されているのか。

そんな姿を拝みたいと思いながらも、そこは人命を超えた世界。
そうあってほしいと願うのは、この記念碑があってこそ。

有難い山の命。
材木屋としては、忘れたくない心の様に思います。

そうそう、夫婦杉です。
その姿を拝みにくいほどに、周囲も自身も緑をかかげています。

麓よりも標高の高い山地だから、冬は雪も降り積もる事でしょう。
ウラスギの系統なのか、幹上部ではそれらしく枝をくねらせる様子も見受けられます。

いや、ウラスギにしては通直で下枝も少ないことを考えると、そうではないのかもしれない。
樹勢として強く見えている枝ぶりが、実際はそうでない場合もある。

必死に生きる糧を得ようとしている場合もある。

登山ルートとして、人の往来はあるであろうところ。
とはいえ、神社が無ければほとんど人の訪れないような山の上。

厳しい自然環境の中、周囲の仲間が寿命を迎える中でこれほどの巨躯にまで生き残ってきたこと。
それこそ、自然の中で自然の植物が生き残ってきた命そのもの。

私も、植林による巨木としては樹齢400年しか体感したことはありません。
いえ、もしかすると植林なのかもしれない春埜杉を入れるとすれば、そちらの方が驚きとしては大きいかもしれません。

しかし、山の中で育ったものの風格というか、伐採期を定めて100年にも満たない状況で育つ樹木と、生きていけるのかわからない環境で100年～数百年を生きてきたものとでは、やはり風格も違えば木材としての性質も異なる。

この姿を見ると、そう思わずにはいられません。

非常に失礼な話ではあるものの、木材としての実際の性質などは使ってみなけりゃわからない。
でも、やはりその雰囲気を見れば素直かどうかではなくて、自然の厳しさに耐えたすごみというか、歴史を感じさせるものは、そのものにしか備わらないと思わせるのです。

神社がある事と、広く境内として開けていること。
そして、登山道途中であり山頂まではまだ道が続いていること。（別ルートから降りてくる途中でもある。）
それらが重なり、秘境の巨樹ではないものの前回までの私の苦労を見て頂くと、なんとも有難い存在であることを感じて頂けるのではないかと思います。

街の木と山の木の違いは、もしかするとこの到達までの苦しさと達成感なのか・・・？！
いや、そんなことはないんだけどそう思わせてしまう道のりと風格は、その環境でしか生まれないもの。
夫婦杉も、芯柱となったヒノキもこの場所が生んだもの。

土と気候と時間と、そして樹木の生命力。
人が関わる山の中にあって、人の関わることなく命を繋いできた巨樹巨木。

人工林を活用するとかなんとか、人間の都合で木を見るのであれば人間の及ばない木の力や土の力、山の事を知って語りたい。
そして、知れば知るほど人間の都合だけではない山の事や動物の事、全てを含んだ環境の事を考えることを始めたい。

山に関わることは悪いことじゃなく、関わらないこともあるということ。

木々は、そして山は人の都合であるものじゃない。

樹齢50年は伐採時期なのかもしれない。
でも、樹齢850年を知った上で50年を語れる人でありたい。
その姿を前にして、首を垂れる心をもって山に関わりたい。

非現実的なことかもしれないけれど、巨樹をただ崇めるだけでもなく、植林材を伐採利用する事だけを考えるのではない、もっと大きなこと。
考えても自分の人生ではどうにもできないこと。
でも、その想いはつないでいける。
つないでいけば、850年のうちの50年はきっと、後に何かのきっかけになる。

街の小さいな材木屋が、山で数本の木を伐り倒し大切に使わせてもらうこと。
そしてその様子を学びとしてつないでいく場をつくること。

今風のプラットフォーマ―にはなれないけれど、これからを生きる誰かの心に少しのきっかけとなる石を投げこむ事ができるようになれば・・・

材木屋であることの意味を探す、いやつくる。

もしかすると、巨樹巡りはそんな自分への理由付けなのかもしれない。そう思うこの頃。

やはり、神様は見上げるもの。
登山道の帰り道、少し近づかせてもらってのアングル。

街の木と山の木の違いを生むのは、育つ環境や到達までの達成感。
それはもちろんのことだと思いながら、それ以上の事を教えてくれるのはやはり山という存在自体なんじゃないか。

だから今日も、ビビりながらも山の巨樹に逢いに行く・・・

そう。そう自分に言い聞かせ傾き続ける陽光に復路の猶予が少ないことを実感し、夫婦杉に別れを告げ下山するのでした。

もちろん、そんな高貴な思いとは裏腹に、往路での辛さにうんざりしながら・・・・・

笠形神社の夫婦杉（大スギ）所在地

兵庫県神崎郡市川町上牛尾2038-1

登山口駐車場から距離にしておよそ1.5kmで笠形神社。
途中、かなりの勾配があるので健脚でも1時間であがれるのかどうか。
本文中の最後のポイントである八角堂から、上りおよそ25分（耐力消耗時）。

水分補給と体力維持をお忘れなく。

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muku_mokuzai at 13:30│コメント(0)

2022年05月08日

街と山の差を生むのは、その環境と達成感　~笠形寺のコウヤマキと笠形神社の夫婦杉（大スギ）目的地編　①~

登山口のコウヤマキを後にし、日が沈む迄に戻るべく大スギへの歩を進め始める私。

登山口から来ると、確かに「笠形寺・笠形神社➡」となっているし、地図にも寺を過ぎて登っていくようになっている為に間違えてしまいますが、ご住職はこの道を左に進んでいく方が良いとおっしゃる。

ここはお言葉を信じ向かってみることに。

寺の方へはアスファルト舗装になっていますが、教えて頂いた道はコンクリート舗装。
もちろん、これでもありがたいのですけども明らかに、不安になる。
なぜなら、ここからは林道ではなく簡易な通行用の私道か林業作業道ですよ、みたいな合図に見えるから。
つまり、いつもはこの舗装が見えると車のオイルパン（エンジンオイルを溜めている車の下にある部品）やエアロパーツを損傷しないように神経をとがらせる必要があるサインとして、一層緊張する合図だからです。

杉の枯葉が積もっているのも、通行の少ない証拠（汗）。
そりゃそうです。
登山道なんだから。

ここからは意を決し、カツカツとストックの音を響かせながら舗装路を上っていきます。
目指すはご住職のおっしゃる休み堂！！
そう気合を入れてどんどん歩を進めていくものの、山には入っていくものの休み堂なんて見えてこない。
とにかく、勾配のきついところを幾度も通り（そんな気がする・・・）かなりの距離を上っていった先にやっと、その休み堂が見えてきました。

ちっくしょう・・・
息があがって、クマよけの歌声を発声する事ができない・・・・
その上、登山靴すら重く感じるように・・・・

大丈夫だ・・・この休み堂で休んでもう少し、もう少し行ったところにきっと大スギは姿を現すはず・・・
そう信じて、もう一度歌声（奇声）をあげながら登り続けようと思っていました。
そこへ目に入るのが、「神社まであと30分」の看板。

え？！嘘やろ？！
往路1時間のまだ半分？！
寺からでも相当上ったで。で、あと30分？！
まだあと30分も、この重い足を引きずりながらも黒いヤツの恐怖と戦わねばならんのか・・・
日頃の不摂生と体重増加を恨めしく思うのはこんな時。
スキーで鍛えているつもりになっている足腰も、まったく歯が立たず。

当然、ここにつく頃には安心の笑顔など消え失せ、帰路の道のりと時間が心配になり始めているところ。
行か行くまいか・・・
しかし、もう一度勇気と体力を振り絞ってこの場に挑む気にはなれず、折れそうな心を奮い立たせて再度歩を進めることに・・・

この到達時間の表示、後でわかるのですけど相当励ましてくれる雰囲気であるものの実は、実際の所要時間を考えるとサバ読みの様な・・・
いや、勇気づけてくれる頑張れる源と信じなければならないのですけど、つい愚痴が漏れてしまうのはビビりだから。

その理由は、頑張り続けて声も枯れて、持参のペットボトルも飲み干そうかという時、目の前に現れた景色を見て思うのです。

おぉ！？ついに到着か！？いやまた東屋の様なものが見える・・・
そして、道を示す➡の看板も・・・

嘘や、もうあかん、帰られへんし行かれへん（涙）・・・

さっきは休み堂。
そして今度は八角堂。

もうえぇ、もうえぇねん。
お堂シリーズ、もうえぇねん・・・・
しかも、看板には「神社まであと15分」。

あかん、もうあかん。
なんぼ何でも、休み堂から15分しか歩いてないとかありえへん。
もしかしてこの時間表示、直線距離表示か若しくは、不動産取引における徒歩所要時間基準を用いて、この登山道の距離を割り返して表示しとんのとちゃうやろな！！、と独り言ではなく大声で発狂しそうな声をあげてしまうような、見苦しい状態に陥る状態。

休み堂から30分で、今半分やろ？！そしたら、同じだけの苦労をするってこと？
いや、信じるなよ。次の看板はきっと「あと５分」が出てきてから30分くらいかかるぞ・・・と疑心暗鬼。

こんなの、私だけなんだろうか・・・
既に訪問されている方たちは、そんな思いを投稿されているのは見かけない。
私がへなちょこなだけなのか・・・
うぅ・・・

流石にもう引き返すことはできないし、さっきから「ヒー・・・・・ヒー・・・・」と鹿の鳴き声とスギの揺れる音だけが、私の鼓動との三重奏を奏でている状況。
いや、荒い呼吸音との四重奏か。
再度、この苦労をして訪問する勇気無し！ということで、行けるところまで行くために最後の勇気を振り絞っていきます。

もう、俎板の上のなんとやら。
どうにでもしてくれ・・・と思っていると目に飛び込んでくる、あの憎らしい・・・基、有難い励ましの看板。

なになに・・・
あともう少し？！・・・

うわー、ついに時間表示なくなった！！！！！！
励ましの時間終了かっ？！もう、さすがにみんな、時間表示を信じなくなるからか！！！！

もうあかん、ほんまにこの看板は！！！
と思う気持ちを抑え、「クソぉ~・・・この辛さ。絶対にブログに残してやるからな・・・」という訳の分からん執念を燃やし、この最後の看板を背にしていくと、心を和らげるようにミツマタがあちこちに見えてきます。

これはもしや、目的地に向かう上で心を落ち着けるための仕掛けなのでは？！。
そう思わせるように迎えてくれる。

このころには両手に持つストックが、クマよけではない本来の用途に近い、登山補助のストックと同じような役目に変わっていました。
いつの間にか、視線も前ではなく下にむきかけていたその時、明るく開ける台地が・・・
あぁ、到達した笠形神社・・・

目の前には石段と大きなスギと、並んでいたであろう大きな切株。

長かった道のり・・・

もう、クマが出てもうでは上がらず死んだふりやな・・・
そんなしょうもないことだけしか考えられない状況ながら、登山者を受け入れてくれる社殿と日差しを求め、石段を上った先には久しぶりに感じる「山の神」の鎮座を見ることになったのです。

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muku_mokuzai at 13:30│コメント(0)

2022年05月06日

街と山の差を生むのは、その環境と達成感　~笠形寺のコウヤマキと笠形神社の夫婦杉（大スギ）麓編~

物語は、起伏があり起承転結なってこその読み応え、聞きごたえだと思います。
特に、ブログの様な読み物の場合は一層の事と感じています。

拙記事は、そこまでうまくできてはいないのですけれど・・・

ということで、前回スギに触れた流れから大スギ巨樹記事へと流れる予定でしたが急遽、物語性を重視（そんなたいそうな事じゃないけど）して樹種変更！
今回は、大スギへと向かう道のりをストーリー仕立てにして紹介し、大スギまでにもう一つ、巨樹探訪をお伝えしたいと思います。

今までの拙記事の中でも幾度か、山中の巨樹についてご紹介してきました。
切越の夫婦ヒノキや胎金寺山口の天狗杉と奥の天狗杉、そして毎度ビビってしまう桂の巨樹の代表として大古井の千本カツラに洞のカツラ。

それらはいずれも、一般道からの登山を要するかそれとも、車で行けるとしても延々と車がすれ違うことのできないような道を走り続けないといけない（ポツ●と１軒●よりもハードな道を・・・）かという、もう一度行くには決心が必要と思われるものたち。
大げさではなくて、それらに逢いに行くときは車のダッシュボードには緊急連絡先として家内の電話、そして何時に出発したかなどを自分の名前とともに残していくのです。
携帯電話が通じない場所で、クマに遭遇するとかいう万が一のために・・・

今回ももちろん、ビビりまくっているのはその黒い生き物のため。

山中に入る登山道の手前に、広い駐車場があります。
そこに車を駐車し、目的の笠形山へと入ります。

駐車場のそばに、獣用のゲートがあります。
入ってはいけません、ではなくてきちんと開け閉めを管理して入らねばならないゲート。
大きなゲートですが、閂の見えているところは笠形寺の住職さん用の車ゲートなので、向かって左側の人通口を通ります。

その人通口の目線には、必ず見える注意看板が掲示されています。

あぁ、そうなのね・・・・

山中の巨樹へのみちのりで、もっとも嫌な事は登山ではなくてこの黒いヤツとの遭遇です。
山は大好きです。
登山も好きです。

でも、この黒いヤツは勘弁してほしいのです。
彼らが悪いのではなく、ただ怖いだけ。

なので、もちろんラジオは全開、鈴はシャンシャン、歌声全力（笑）で登るので普通の登山よりも何倍も体力を消耗するうえに、到着する頃には声も枯れて・・・

もちろん、結果なにごともなかったからこそ、面白可笑しく記事にできるわけですからありがたいことなんですけども、とにかく一大決心をして閂をはずすのです。

そんなこんな考えながらも最初の目的地である笠形寺へは、ほどなく到着。
舗装された道路なので歩きやすく、見通しもいい。
のぼりはじめから二股になった道路を右に行くと、すぐに見えてきます。

他よりも一層濃い緑を有する立木。
あそこが第一目的である、笠形寺のコウヤマキ。

一般的に「マキ」と言った場合、想像されるのは生垣で多くみかけるものではないかと思います。
いや、生垣も見かけることが少なくなってしまいましたが、その生垣で見かけるのはコウヤマキではなくイヌマキです。

双方、マキという名前がついていますが全く異なる樹種です。

それについては、また他の機会に木まぐれコラムにて取り上げたいと思いますが、コウヤマキは「一科一属一種」という珍しいもの。
その材は湿気にも抵抗性が高く、なによりも非常に爽やかで清々しい芳香を持っています。
木材も黄色みがかっていながらも艶っぽくて、美しい材面をしています。

木材としてはなかなかお目にかかることが無いと思いますが、巨樹としてもそう多くは無いように思います。

解説板によると樹齢500年。

巨樹としては驚くほどではないかもしれません。
しかし、単純に西暦1500年代と考えるとものすごく古いようにも感じますが、実際の姿としてはまだ若々しく感じるのは不思議なところです。

寺の庭へ入ってすぐに目に入るコウヤマキ。
訪問したのは初夏の午後。
少し日が傾きかけてはいるものの、強い日差しが照り付けているのが逆光ながらもその姿をくっきりと浮かび上がらせています。

綺麗な庭なのですけども、よく育った木々によって全体像をそのままとらえることはできません。
それでも、この写真からみると幹が少し傾いているように感じませんか？
左側の開けた方に少し傾いているように見えるのは、ひとつにそちらが一段下がった畑になっていて、光が多いから。

そしてもう一つは、反対側が欠損しているから、です。

明治21年に起こった火災で幹を消失したそうで、その影響もあってより光の得やすい方向に育つことになったのだと推察します。

この白骨化したような部分。
住職さんによると、この部分がもともとの上部の主幹だそうです。
確かに、たたいてみるとポコポコと音がして、背後には空洞となっていることを想像させます。

焼け残った部分がちょうど、焼けた部分を覆っているような感じ。
そうです、ちょうど、庭に入ろうかと思っているところにタイミングよく住職さんが出てこられて、撮影の許可を得たところでした。

快く招き入れてくださり、うろうろとしながら撮影をしている間ずっと、コウヤマキのお話や周辺の地域のお話などをしてくださいました。
その中で、この「白骨化」した部分のお話も聞く事ができした。

また、まだアングルを探している最中の私に「このね、下が畑になってるんや。下から撮ったらえぇよ！ほら、こっち！」と、のちほど立ち入りたいとお願いしようと思っていたところにもご案内頂きました。

ここにこう、しゃがんでな・・・

そう言って教えてくださったアングル。
おそらく、私と同類の皆さんを案内するうちに会得されたのでしょう（笑）、巨樹ファンのアングルを。

庭から見るのとは違い、堂々とした姿に感じるこの見上げるアングル。

残念ながら、陽光が強すぎて陰になってしまいましたが、目で見ると十分に立派なことを感じます。
欲しかったアングルはまさにこれ。
一番の目的を達成しようとしていたところ、住職さんよりもう一言アドバイス。

「マムシは、踏まん様にだけしなはれや。ここでやられたら、一番近い病院まで行くのに（治療が）間に合まへんからね。（血清の打てる病院のあるのは）市内やから。その辺の茂みにな、たまにな・・・」

えぇ？！！！
早く言ってよ！
もう、十分茂みに踏み込んでるやん、私・・・（汗）。

それを聞いてから、出来る限り足を動かさずに撮影をするビビり具合。
そりゃ、自然の山の中。
開けているとはいえ、ヘビ位いるわな・・・

自由に撮ってえぇよ、と言って下さるも不安になり住職さんについて庭に戻ることにし、気を取り直して本体の撮影に入りました。
それからも、住職さんはいろいろと教えてくださいました。

実はこんなアングルを撮りながらも、一番住職さんに聞きたかった事。
それはやはり、次の目的地である大スギのこと。

マップアプリで見るものの、途中から道路が途切れていてどのようなルートを辿るのかがわからない。
山中の巨樹では当然ですが、入山の門のあの「黒いヤツ」を見てしまうと、のんびりハイクアップという気持ちにもなれません。

そのうえ、このコウヤマキに到着した時には既に午後の２時半を回っていたころ。
事前の調査によると、登山口より次の目的地にある大スギまでは1時間かかるとのこと。
往路１時間ということは、撮影を瞬足で済ませたとしても復路と合わせて駐車場に戻るまで今から２時間半。

ということは5時は確実に過ぎる。

いくら初夏とはいえ、日が暮れる時間近くに山中にいることは危険を感じずにはいられません。
もちろん、携帯電話が通じない可能性は当たり前に考えておかねばなりませんし。

必死にコウヤマキの撮影をしながら住職に大スギの事を尋ねてみました。
そうすると、最初はこの笠形寺を通り過ぎて山中に入ると思っていたところ、来るときに寺方面へと分岐した道を反対の方へ行く方がいいとのこと。

それなら、若い人だと1時間もかからないだろうと。

そうなんだ！よし！！
そして、もう一つ聞かねばならないこと。

「でも、クマいるんですよね・・・」と尋ねると、この周辺の人は見たことが無いとのこと。
たまたま、登山者が見て通報されてからの注意喚起だそう。

いないわけではないけれど、大丈夫だろうとのアドバイス。

もちろん、護身用のカーボンファイバー製ストックを2本持参しているので、戦う準備は万端（？！）なのですけど、会いたくはないもの・・・

二股の道を左に登っていくと休み堂（休憩用の東屋）があり、登山道が続いているということで、その道をそのまま上がれば大スギのある笠形神社につくということでした。

道順とクマの情報を得る事ができ、時間計算も頭に入れ安心したところで最後に、コウヤマキとの別れのひと時。

住職さんは、「あんたの脚力やったらえぇけども、なんやったら泊っていきや。どうや？」と夕方にかけての登山ではなく宿泊させてくださるとおっしゃっていただくのですが、あいにく翌日は仕事。

もちろん、弾丸巨樹ツアーには慣れているので有難く辞退させていただき、大スギを目指すことにしました。
まだこの時は時間的にも安心安心と思っていたものの、いざ道のりを歩み始めるとすぐに笑顔が消えることになろうとは、この時は思いもしませんでした。

笠形寺のコウヤマキ所在地

兵庫県神崎郡市川町上牛尾2042（市川町教育委員会による、コウヤマキ所在地）

登山口に駐車場とお手洗いあり。

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2022年03月25日

手を取り合って、新しい朝日に向かって・・・　～岡の宮の大クス～

読者の皆さんは早起きタイプですか？！

私は早起きです。
仕事の時もそうですが、学生時分から早朝大好きの早起きは「三文の徳」人間です。
体の調子を整える事ができますし、なにより心地いいと感じます。

現役世代だけに、平日は巨樹巡りをするわけにはいきませんし、休日といっても仕事や出張があるために、時間を無駄にする事ができません。
そんな私にとって早朝は、三文どころではない徳をもたらしてくれると感じています。
巨樹めぐりに限らず・・・

しかし、最近は様々な事情で少しづつ夜型人間になってきていて、早朝がつらい場面も・・・
コロナ禍で会食や飲み会は減ったものの、その分書類作りやプレゼンづくりにいそしまねばならない（これも営業下手が営業の代わりとして精一杯行う活動・・・汗）ので、年齢のせいもありどんどんと朝がつらくなりつつあります。

しかし、それをふっとばすのはやはり三文の徳。
特にそれが無垢材や巨樹がらみの時はなおの事・・・

今日紹介する巨樹は、そんな徳を感じさせるクスノキ。

巨樹、というのだから一定以上の威厳ある巨さを想像するでしょうけれども、現実に訪れると写真で見るよりも迫力のあるケースは、まったく少なくありません。
むしろ、そんな場合はテンションが上がることはいうまでもありませんが、今回の大クスがそれです。

事前に想像していたものよりはるかに立派で巨い。
単幹ではない為に、巨樹に慣れた目にはそれほどの印象ではないのでは？！と思っていた浅はかさ。

覆いかぶさるように伸びた枝、周囲が支配領域・・・否、神域であると思わせるような圧倒的な存在感は、社寺で守られる巨樹として十分すぎる威厳です。

目的に向かって意思をもって曲がりくねる大枝。
着生し緑が映える様子も年月とともに威厳を持たせるに十分。

その意思は、古くから住民の皆さんの思いの中にもあったようで、現地の解説板には船を造るから大クスを差し出せ、との命令にも許されたとあります。
大クスが造船にもっぱら供出要請があったことは、今までの巨樹記事や以前の木まぐれコラム「神話受け継ぐ奇し姿～クスノキ・樟～」でも取り上げたところです。

それもクスノキが避けては通れない、優れた適材適所の性質が故の事ではあるのですが、心情としてはやはり巨樹は守りたいもの。

その心が、樹齢700年という大クスを守ってきたようです。

また、解説板によると根廻り25mとあります。
巨く感じるはずです。

一つの幹から三本にわかれ、うち一本がさらに二つに分かれ四本の幹になっているため、広がり感を感じます。
クスノキ特有の「象の脚」のような、ごつごつとした武骨な根廻りもその広がりを一層ひきたてているのは言うまでもありませんね。

境内は広く高低差もあり、道路から見上げるようなしせいになることも、クスノキとお宮さんの存在感を感じる良い印象。
前面道路は広くはないものの通勤通学時間には、そこそこの車の往来があり住居も目と鼻の先です。

離れてみる事ができないことと、石段をあがってお宮さん参りをすることを合わせて荘厳な雰囲気をあたえるのですが、住居などが近いということは外部の人間にとっての印象とはまた異なる場面もあるのです。

最近では、神社やお宮さんの敷地内で子供が遊んだりすることを禁じる場所も見かけます。
いや、最近の子供は神社などで遊ぶことは少ないのかもしれませんが、稀にそれを禁じる看板を見ることもあります。

しかし、本来社寺仏閣は地域の方や氏子さんとともにあるもの。
だから、住民の方や地域に非常にかかわりが深い。
クスノキを守るお話もそこから考えると当然のこと。

私が訪問した早朝も、地域を感じる場面に出逢いました。

どうすればこの巨大感をお伝えできるか、とアングルを思案している私の後方からガッサガサという音ともに元気な話声が。

地域の子供たちの登校の時間でした。
気が付けばそんな時間になっていたのですけども、平日の出張の目的地の前に寄り道していた岡の宮。
お母さんのお見送りを受け、小さな子供たちが境内を通って通学していきます。

毎度不審者と間違われる私ですので、必ず挨拶を心がけていますが子供もお母さんもきっちりとご挨拶してくれました。
気持ちいい瞬間です。
やはり、言葉とともに心を通わせるのに挨拶は非常に大切。

この子達も、この見事なクスノキを郷里にもつことを実際に感じるのは、あと20年ほど先かもしれませんが、貴重な時間を巨樹のそばで過ごせる環境は羨ましく感じますね。

ここで、大クスの大きさを見ておきましょうか。

いつもすみません。
石段の途中をご覧ください。

立っているのが私です。

一番巨さ比較をしやすい位置が陰になってしまい、更に濃色な服がマイナスポイント・・・
分かりづらいですが、昌志スケールです。

さて、私の主な目的は巨樹であり社寺巡りではありません。
当たり前ですが、本来はそんな中でも社殿や建築様式、堂塔をじっくりと見て居たくなる時もあるのですけど、いつもその欲求を抑えています。
時間がないからですけども、今回は石段の上に続くお宮を拝見したくなり登ってみることにしました。

その様子は、実際に皆さんが訪れてみてほしいのですが、今回は石段を上ったことで見る事ができた景色がありました。

遠くの山すそに広がる美しい雲海の様相。
訪問時は少し冷えていた上に快晴の予感。

市街地はそれほどではありませんでしたが、山に近いところでは朝日を受けて美しい光景が広がっていました

あぁそうか。
この景色が、私を石段へと導いたのかもしれないな・・・
そう思っていました。
早朝にしか見ることのできない貴重な景色。
朝焼けのこの色合いと、澄んだ空気は大好物。

これだから、早朝は貴重なのですよね。

そう思い、三文の徳を感じて石段を下りているとさらに美しい光景が待っていました。

複数の分岐幹であるクスノキがまるで二本の単幹の、それも結び合った枝が手を取り合い睦まじく朝日に向かい進んでいくような姿にみえるではありませんか。

恋人同士、睦まじい夫婦のように。

あぁ、これこそが三文の徳！
なんと美しい。

この貴重なわずかな時間にしか見られない光景。
これが早朝、そして早朝の巨樹訪問。

岡の宮にあっては、この時間にこの場所から大クスに願いを込めれば「夫婦円満、恋愛成就」という御利益を謳ってもよいのではないでしょうか！？と提案をしたくなる光景。
採用された際には、石碑でも立ててもらおうかしら・・・（笑）

冗談はさておき、これだから早起きは清々しいのです。

もうすぐ四月の新生活。
皆さんにも、新生活に朝日が明るく照らす新しい門出が待っていますようにと祈念し、三月の巨樹紹介を締めくくろうと思います。

岡の宮の大クス所在地

徳島県板野郡板野町大寺字岡山路7（掲示看板による）

駐車場は無いように思われます。前面道路は対向することは可能ですが、近隣に迷惑の無いようにしたいところです。

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muku_mokuzai at 13:30│コメント(0)

2022年02月13日

御神木の大スギへと続く道のり～白山中居神社の巨木林と浄安杉～

一番最初に訪れた巨樹は何だったのか？！考えてみるけどもはっきりしない。
それは、もともと好きだったこともあるし、「よし！今日からめぐろう！」と決めたわけでもなく、またカメラの性能も良くなかったうえ撮影の仕方も稚拙だったこともあり、こんなのめぐったうちに入らないと自分の中でバッサリきり捨てているからかも、と思っています。

そんな中で、2014年に紹介している日本を代表する巨樹の一つである石徹白のスギは、今に続く巨樹めぐりのルーティーンを行い始めた場所の一つです。
撮影のアングルや方法、撮影する視点など自分なりのルールができたところ。
当時の記事は、大スギのことを伝えたいがゆえに詳細を記載しきれていなかったがあります。

それは、大スギに至るまでに存在する巨木の森を持つ神社と、その神社の奥にあるもう一つの巨樹のこと。

先日、仕事で使う古い資料を探していた時に偶然見つけた写真。
それは浄安杉なる巨樹の写真。
実は、その名称は覚えていたもののすぐに姿を思い出せない自分に驚き、早速写真を見てみました。
そこにあったのはそう、石徹白の大スギに通じる白山中居神社。

岐阜県の白鳥観光協会のホームページによれば、富士山・立山と並ぶ日本三名山である白山を開いた泰澄大師が養老年間に社城を拡張したと伝えられ、宮川のせせらぎと樹齢200年から1,000年の150本に及ぶ杉の大木に囲まれた静かな場所、とあります。

あまりにも有名な石徹白の大スギに隠れて注目していなかったのですが、説明のとおり数百年生のスギの巨木がいたる所にあり、なおその先にはさらなる巨杉が存在するのですから、信仰の上での神社という観点以上に訪れておかねばならない場所でした。

立派な鳥居を超えて進んでいくとすぐに表れる巨杉群。

おいおい、いきなりこんなに林立するの？と思わず声が出るほどに並び立つスギたち。
上を見上げているうちに、進む石段を踏み外してしまいそうです（汗）。

先にはさらなる巨樹が、と分かってはいてもどうしても立ち止まってしまうのは、木々の中では本当にちっぽけな自分の存在を実感するとともに、だからこそ再度自分の存在を確認できるような気がするから。
でも、あまりにも並びすぎてアングルに困っちゃう。

そんな悩みを抱えながら、本当の目的（？！）までの道のりを進みます。
境内の端、浄安杉と呼ばれる巨杉への案内板のあるところから「登山」です。
その看板にある200mに惑わされてしまいますが、今までの常瀧寺の大公孫樹や大古井の千本カツラのように、垂直距離表示である場合は想像以上の苦労を伴うので注意が必要！（200mって、近いイメージがしますよね？！）

途中にある巨木に視線を奪われながら（岐阜県は本当に山が豊かだから・・・）200m（といわれる）道のりを進むと視界に入ってくるその姿！

なんとなんと・・・
先入観やイメージというのは、本当に深く人の思考に影響するものだと感じました。
石徹白の大スギがすごすぎて、大きくはあるだろうけれどもさすがに比較にならないのでは・・・なんてバカバカしい考えをしていた自分を恥じました。
比較なんてとんでもない。
同じ地域にあるとはいえ、まったく別物の存在感とその姿。
想像以上、期待を超える、そんな姿です。

ずんぐりとしていながらも樹高も高く、目通り幹回りの公表値では12.1m。
私が出逢ったときに驚く巨樹の数値の目安の一つである、目通り10mの基準を超えているのですから立派に感じるのは当然。

その上、太い幹からまるで猛牛の角の様に突き出ているように思える枝や、太い株に巻き付くように出ている細い根などが、生命力の強さを物語っているようです。

迫力さえ感じる姿ですが、樹齢は不明とされているものの500～600年ほどではないかともいわれています。
そう考えると、受ける印象は若さある力強さなんだろうか・・・

神社の解説にある樹齢1000年の巨木というのは石徹白の大スギの事なのでしょうけども、浄安杉の持つ迫力と山中に聳える姿に出逢うと、数字以上の感動があります。

写真からも分かるように、根元の近辺で幹が分かれておりさらにそこから太い幹が分かれているのですが、一本のスギではなく合体したものだと考えられています。
太い幹を跨いで細い根があるような状況を見ても、おそらくそれは間違いないでしょう。

しかし、合体木だからと言ってその存在価値が薄まることは全くありません。
それ以上に、樹木は通常では癒着したとしても樹勢の強い方に飲み込まれるような状況になる場合が多くあります。
しかし、浄安杉はどうでしょう。

太さも高さも勢いも、それぞれが猛々しく威勢を保っているではないですか。

スギの巨樹では意外と多くに合体木が見られます。
そうですね、高井の千本杉などは最たるものではないでしょうか。
巨樹めぐり初心者である私が、畏れおののいて近づくことさえできなかった大スギ。
確実に飲み込まれてしまう、と確信するほどの迫力は鮮明です。

それとはまた異なるものの、浄安杉も見事に合体している個体です。

さて、この巨杉の名の由来については解説板に表記があります。
しかし、その表記よりも名称の文字から想像する意味を尊重したい気持ちになるのは、白山という信仰とともに石徹白の大スギの存在があるから。

浄は「けがれなく清らか」で「きよい、きよめる」を意味し、安はそのとおり「やすらぎ、穏やかに落ち着く」であり、白山や石徹白の大スギへと続く道のりにおいて人のけがれを落とし、穏やかな心で神域へと向かうことを意図していると私は感じていますがどうでしょうか・・・

有難いことに、すぐそばまで近づくことのできた巨樹。
石徹白の大スギではこんなにそばによることは叶いませんが、ここではその傍らに寄り添うことができます。

訪問時はあいにくの雨天でしたが、降り注ぐ雨でさえその存在を美しく見せるものであり、晴天時には感じられない貴重な空気を感じる事ができました。
大スギへと続く一部分でもあり、神社も浄安杉も石徹白の大スギも含めた白山というものの大きさを、改めて感じることのできた素晴らしい出逢いとなりました。

浄安杉所在地

岐阜県郡上市白鳥町石徹白3-48

駐車スペースあり

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muku_mokuzai at 13:30│コメント(0)

2022年01月06日

日本の年明けには富士が似合う～河口浅間神社の七本スギ～

明日より、弊社の通常営業が始まります。
有難いことですが、どうしても仕事始めの日は集中してしまうために、分散にてのお願いをしなければいけないこともしばしばですみません。

さて、そんな新年の営業開始に合わせて投稿している拙記事。
今までは、日本一の巨樹を紹介することにしていましたが、そればかりではなくいろんな視点から紹介するべく今年は、日本の新年と言えばあれ！を取り上げたく用意していました。

毎年、元旦の番組で報じられる初日の出。
特に富士山越しに太陽の昇る光景は、今か今かと中継に目をくぎ付けにされている方も多いのではないでしょうか。
お正月注目される富士山。素晴らしい山であることは言うまでもないことですが、その周囲にも紹介したい巨樹たちがいます。

新年紹介する巨樹は、河口浅間神社の巨杉群です。

まだ夜が明けきらぬうち。
美しい曙色とでもいえばいいでしょうか。その色の移り変わりを楽しめる時間に到着した河口浅間神社。
いつもは到着してすぐにお目当ての巨樹を探すものなのですが、やはりこれだけ美しく富士山が見えていると、テレビ以外では見慣れていない風景に足が止まってしまいます。

空が青へと移り変わり始めてやっと、境内へと歩を進めていこうとしたのですが、そこでいきなり先制パンチ！

参道に居並ぶ杉並木、それが既に太い！

一つ一つをゆっくりとみていたい気持ちがわいてくるものの、事前情報で目当てとしているのはもっと見事な巨樹群。
しかしながら実は時間的な制約があり、滞在時間が限られていることもあって杉並木をそそくさと通り抜けて先を急ぎます。

余談ですが、詳しく調べ始めるまで「浅間神社」が沢山あることを知りませんでした。
いや、正確に言うと「あさま」と「せんげん」という読みの違いもあるのですが、知らずにいると「あれ？！さっき浅間神社チェックしたぞ？！・・・」という状況になるのです。
以前にも、北口本宮冨士浅間神社をご紹介した通りです。

そう、北陸における「白山神社」のように・・・

白山神社にも、杉巨木群を有するところがるのですがこちらの浅間神社はその光景がまた特殊なのです。

七本スギと称される巨杉群。
目前にした時、どのように撮影していいものやら悩んでしまいました。

杉並木の様なものや夫婦杉と称されるものなど、複数の巨杉を目にする機会はあります。
しかし、ここでの光景は初体験でした。

とても整備されている為に原生林的ではないものの、巨木の森ではこういうことがあるのかなぁ・・・と見たこともない巨木の森を想像してしまう景観。

ボコボコと林立する、と簡単に形容してしまうのは失礼なのですが、広い境内を広いと感じさせないほどにボコボコと立っているのです。

鎮守の森という言葉もありますが、そんなイメージではありません。
富士山という御神体に通じる、神々の化身が巨杉であるのでは・・・と思う光景。
奥まで続く広い境内の広さが、山一つ続いているような印象を受けるスケール感。

どの方向から、またどのスギから写真を撮っていいものやら。
いや、後からこのように紹介するときにどういうふうに撮影すれば、この「群れ」をお伝えする事ができるのかを考えるのですが、すぐにそのアングルを特定する事ができません！

迷いながらも一つ一つの巨樹に近づいていくと小さな看板が立っていることが分かります。
そこには①という番号が振られています。そして名称がつけられています。

おぉ、有難い。
手帳にでも番号を振ってから撮影しようかと思ったところでしたが、先にこの看板を撮影すれば後で確認する事ができます。

そして名称には意味があり、たとえば⑤と⑥で並び立つスギ。
「父母（ふたはしら）」とされています。

あぁ、よくある夫婦杉ね。
既婚者にはあまり関係ないね、と思いきやしっかりと「更に円満」と書かれているではないですか。
これは拝んでおかねばね！！（笑）。

いや、そこではないのです。
後で知ったことなのですが、神社のホームページによればこの「ふたはしら」は「イザナギとイザナミ」を指すようです。

あぁ、どうりで読み方が「ふたはしら」なんだ。
単なる夫婦杉ではなく、神話とも結びつく夫婦のきずななのだな、と有難さ倍増！なのです。

それにしてもやはりすごい。この光景は。

柵の手前にいるのが私。

遠近法で考えても大きくなるはずの私ですけども、なかなか小さい。
わかりますよね、巨さ。
三本も並んでいるのも珍しいのに、周囲には更に四本と他の樹木も茂っていて、全方位撮影しないと伝わらない迫力。

どうしても引いたアングルが多くなってしまうのですが、見上げる姿ももちろん迫力十分。

河口浅間神社の七本杉７

そうそう、ここで忘れてはならないのが根！
どういうわけか、俗にいう根上がりの様な状態になっているものが見受けられるのです。

先の看板にも、「根廻り」という表記があるとおり、根がすごいのです。

特に⑦は30m！！となっています。

巨樹の幹周りの基準に当てはめると驚愕の数値ですが、確かに根廻りが張り出しています。

河口浅間神社の七本杉４

クスの巨樹にも見られるこの迫りくる根っこ。
スギで思い出すのは夏山の大スギ。
それはそれで、ヤマタノオロチ的な存在感でしたがこちらはこんもり。
木の柵がある為、少し遠目ですから驚くほどの迫力ではないものの、根がこれほどまでに広がるのだということを再認識させられます。

柵が新しいということは、最近設置されたのだろうかと考えたりすると、失礼ながらも根を伝って近くまで行く事ができるとまた、感じ方も変わったのかとも思ってしまいますが、近づく事ができないからこそ有難いというふうに感じます。

いつまでいても、どのように撮影すればいいのかを結局つかむ事ができずじまい。
こういう時は、もっと写真をうまくとれるようになれれば・・・と思うこと毎回（汗）

しかしながら実は、この訪問は既に8年前のこと。
じっくりと他の写真を見ていると、担当も若い若い（汗・・・）
当時から、8年も経過していてる最近訪問した今年の巨樹においても、未だに同じことを考えてしまうので進歩していない様子・・・

写真の腕前はいつまでも上がりませんが、今年も定期的に巨樹を紹介しながら施工写真や新製品の写真を紹介していこうと思います。

あっちこっちと撮影している間に、気が付けば既に青空に・・・

居並ぶ巨樹の森を後にし、早朝とは異なる青と白の富士山を眺めながら、山梨の一日を満喫したのでした。

河口浅間神社の七本スギ所在地

山梨県南都留郡富士河口湖町河口1

駐車スペースあり

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muku_mokuzai at 13:30│コメント(0)

木ぃクン