守られた550年 〜大元神社の樟(くすのき)〜
私の場合はほぼ、第一印象です。
それは巨さであったり、立地条件であったり、樹形の良さであったり、異形と形容したくなるような姿であったり。
様々な第一印象がありますが、クスノキの巨樹ではその多くの条件を満たすものが多く存在します。
それは、社殿に近い神木として大切にされている場合や、数百年の樹齢の物でも相当な迫力を有しているものが多く、その幹周りも眺め応えのある太さの物が多くあるからです。
だからこそ、その迫力を伝えようとするあまりに接写された写真が多くなり、全体の様子を伝えきれない事態に陥るのが、アマチュア巨樹巡りの欠点。
眼で見ている視界が、そのままカメラにも収まるように考えてしまうので、全体像を伝えられないのは毎度の反省点である私。
しかしながら、ここのクスノキは久しぶりに遠く離れて眺められる見事な姿でした。

訪れたのは、あいにくの雨の日。
時折風を伴って強く降ったりするので、カメラもおちおち構えていられない状況でしたが、それでも様々な角度からの姿をフィルムに収めたい(デジカメだけど)気持ちになる、大元神社の樟(くすのき)です。
開けた土地の坂の上に、まさしく大クス!という出で立ちを誇っています。
雨が無ければもっと、三脚使用や様々な遠景写真を撮っておくのですが、傘をさすと撮影しにくいし、傘がないとすぐに水浸しになってしまう状況なので、とりあえず近づいてみることに。

周囲には柵がされていますが、2重になっており最初の模造木の柵の内側には入れる模様。
特に写真下手な私にとっては、その迫力を伝えるメインは「昌志メーター」ですから近づけるかどうかは非常に重要。
幹分かれがあるため単幹の巨樹!というものではないものの、枝の広がりや堂々としたその姿はさすがです。
こちら側からは、住宅があるために離れて撮影する事ができませんから、写真ではおそらくその迫力は全く伝わらないと思います(汗)。
背景がもし青空であれば、その葉の隙間から見る空が美しいはず、と思ってしまうだろうと考えて眺めるのは、大枝からでる小枝に隙間があるから。
曇天でも空と青葉がまじりあって見えますが、これだけの巨さなので「緑の傘に覆い隠される」というイメージかと思いきやそうではないのです。
もちろんそれは、丘のようになったクスから斜面下に向かって視界を遮るものがないことが大きな理由。
斜面から見上げた時も同様に、気持ちがいいくらいに遠くからこの姿を眺めることができるため、遠くも近くも二度美味しい?!的な味わいを持っています。

これは、斜面下部から見上げるようなアングル。
やはり、巨樹は畏敬の念を持って見上げるもの、と思ってしまう見事な樹形と枝ぶり。
写真右下には休憩ができる場所が確保され、駐車スペースとともに御手洗いもあり、至れりつくせり。
こんなに見事な巨樹を前にして、駐車スペースを気にしながら撮影するなんて集中できませんから、有難いことです。
地域の皆さんと土地の所有者の方には本当に感謝です。
地域の宝をゆっくりと見てもらおうということなのかと思いますが、それもそのはず。
写真には鳥居が写っています。
ここには以前、大元神社がありその御神木だったのがこのクスノキだそうです。
現在の姿しかしらなければ、鳥居を介してクス自体が御神体として祀られているように感じますが、やはりお社があったのですね。

現地の解説版によると、本殿・拝殿・神楽殿があったというので、立派なことだったのでしょう。
明治44年に三渡八幡宮へ合祀せられて、このクスノキだけが残ったとあります。
その当時から見事な姿だったんでしょう。
しかし、立派なクスノキの避けて通れぬ宿命に直面しています。
それは、樟脳の精製。
拙記事の木まぐれコラムのクスノキ編でも触れましたが、戦時下軍需物資として、樟脳製造業者がクスノキの譲渡を強力に申し入れてきたといいます。
それを免れるため、反対運動を行い島根県に天然記念物の仮指定を申請し、後に指定を受け続いて国の天然記念物(一時)にも指定され、その難を逃れたのだそうです。

仮指定を受けたのは昭和14年。
その時はどんな姿だったんでしょう・・・
樹齢はおよそ550年と言います。
千年を超えるクスノキも少なくない中では青年、という樹齢かも知れませんが昭和の初期にもさぞ美しかったのでしょうね。
その時に守られたことによって、現在私がその前に立っている。
歴史とその当時の情勢に想いを馳せたくなります。
さて、最初に分岐しているとお伝えしたその見事な姿、実は合体木だそうです。

こんなに太い2本が並んでいることは珍しいと思いながらも、合体木というのは古くから見られるものですから、それも納得。
同じ島根県で、古代の森を知ることのできる素晴らしい施設である三瓶小豆原埋没林公園(すでに二ケタ訪問を達成し、いつもお世話になっている)においても、太古の昔の合体木を見る事ができます。
神代木となって、時空を超え目にする合体木は数千、数万年前の巨樹巨木の林立する様子を想像させます。
そう考えると珍しいものではないのですが、双方が合わさることで周囲に見事な枝ぶりを誇っていることが珍しく、さらに、その根元にはもう一本の幹が立ち上がっていることも見所です。
それらが一緒になって、単幹ではないものの美しい樹形を維持しているんです。

空の青は見られませんでしたが、青々とした田畑とで曇天ながらも清涼感いっぱい。
解説版には幹周り約12.5m、枝張東西に約38m、南北に約42mとあります。
私が大好きな美しい樹形のクスノキである加茂の大クスの同、約13m、46m、40mにも通ずるような数値を誇っています。
よく残してくださったものです。
勿論のことながら、現在も県指定第一号の天然記念物となっていて、県内最大のクスノキです。
単幹でこのスケールであれば、樹齢1000年クラスかもしれませんが、この美しさに樹齢は関係ありませんよね。
それに、このスケールの巨樹としては若いこともあるので、もしかするとさらなるトランスフォーム(?!)もあるのかもしれません。
その理由はこれ。

まるで意志をもった触手の様にのびる枝が、もう地表に触れているのです。
日本海側のスギであれば、間違いなく伏状更新で新しい樹幹が立ち上がっているであろうと思われる場面です。
垂れた枝先が再度空に向かって立ち上がっているのは、おそらく地表面を感じているからに違いありません。
この先、この枝がどのように成長するのか見てみたい気持ち。
大きな腕を差し出されているような感じで、思わずその樹皮をさすってしまいました。
最後にもし、一つだけ巨樹としての贅沢を言うのであれば、扁平な樹幹が完満(全体に太く)であればもういうことはないのですけど、それも個性ですからね。
存在感は十分です。
だって、いつもの比較でこれだもの。

ね、十分ですよね。
このスケール感は、下手なカメラ技術では伝えるすべがありません(汗)。
これを見ると、若干斜面下方に勾配が付いていることが分かります。
三脚が水平ですから。
それが余計に、下部からの迫力を生んでいるのですよね。
550年の命を、地域の人たちとともにしてきた巨樹。
樟脳という、時代の宿命をも乗り越えて目の前に居てくれる幸せを噛み締めながら、この後およそ450kmの大阪への帰路にかかる6時間という道程に入る自分への土産として、その景色を目に焼き付けたのでした。
大元神社の樟(くすのき)所在地
島根県鹿足郡津和野町池村1536
駐車スペース、御手洗い完備
(地域のみなさん、ありがとうございます!!)
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