2023年07月16日
七夕過ぎても出逢える姫君 〜 糸姫の栃 〜
材木屋として見ている木材の栃（以下、トチ）のイメージは、いまや高級品！です。
一般的には「いまや」は余計なのかもしれませんが、それこそがトチなのです。
樹木ではなく木材としての価値評価は、節がないということとともに、美観や耐朽性、多様な寸法が木取できるか、用途としての性質に耐えるかなどが指標でした。
でした、としたのは現在ではそれだけではないからです。
トチだけではなく、シナなどの木材がそうですが芯材もあまり着色しづらい樹種は、相対的に耐朽性が低いため汎用性が低いことと、それに伴う用途が限られ木目も華やかではないことから、今までの木材利用では重要とされてきませんでした。
それは担当の実感であり、古い書籍を見てもそのような記述ばかりです。
しかし、決してそう卑下されるものではないことは、近年の木材利用と人気を見れば明らかです。
どうしても、そんな材木屋目線の考えをしてしまうトチ。
木材として人気の理由の一つは、大きなテーブルサイズの木材ができるから。
弊社でもよくご来店いただきますが、ダイニングテーブル用の材として非常に人気なのがトチ。
大きな材がとれる、ということは巨木に育つということ。
今回は、そんなトチの巨木の一つであり、また美しい名称をもつものをご紹介します。
岐阜県郡上市。
関西地方からのスキー、スノーボード客も多く押し寄せるスキー場が集まる奥美濃地域。
そのスキー場への道すがら、山中に足を踏み入れた場所に、お目当てのトチは立っています。
担当は、普段この地域には冬にしか訪れません。
言わずもがな、スキーの為なのですがだからこそ、雪のないシーズンにそこに行くのが少し変な感じがします。
といっても、郡上市にもさまざま巨樹が存在していますので、まだまだ紹介したいところなのですが、今回はあまり好きではない山中の巨樹です。
山中、という表現は正しくないかもしれませんね、茂み？中という感じでしょうか。
グー〇〇マップでは、近くにある「西日本最大スケール」のスキー場の写真が表示される当地。
国道158号の道の駅大日岳をこえ、さらに北上。
マップ上では廃棄物処分場の東、長良川のすぐ東そばになるのが所在地。
文面ではわかりづらいのが、山中の巨樹。
実際には、道の駅近辺から林道を入るので地図表示ほどは茂みを行かずともよいものの、上の写真のような場所です。
そこにひっそりとたたずんでいるのが、糸姫の栃です。
実は、担当が訪れたのはもう10年前。
もしかすると、もうこの看板ではなくなっているかもしれませんが、平成時代の歴史を感じる解説板です。
巨樹の中で、訪問する人が多い場所や有名で観光名所化しているところなどは、老朽化の前に看板が立て変えられることも珍しくないのですが、ここはどうなっているのか気になります。
この毛筆っぽい書体が、どこか歴史を感じさせるのでしょうね。
それにもう一つ、文面を見ると「高鷲村」との表記。
現在、高鷲という名はスキー場の名称にも残っていますが、現在の郡上市。
さて、その郡上市のスキー場の谷間のようなところに位置する茂みをかき分け、進んだ先に現れるのがお目当てのトチ。
地上からすぐに分岐しているためか、幹回りは6mほどとさほどではないものの、巨さを感じます。
それ以外に担当の場合は、岐阜県＝熊！（すみません、でも本当）というイメージですから、夏に茂みに入るという行為自体で特別な感覚になっていることが理由なのかもしれません。
こんな場所で出逢う巨樹。
特別感がありますよ。
周囲は青葉、そしてすがすがしい緑の香り。
気化熱で冷えた空気に乗って鳥のさえずりが聞こえる環境は、ヴァーチャルでは味わえない感覚。
巨樹の記憶は、そういった環境とともに担当の記憶にきざまれるものなのです。
そしてもう一つ、巨樹感を思わせるのは主幹とは別に後ろに伸びる枝。
正確には、このトチのものかは定かではありませんが、それが樹木として広がりを感じさせるところがあるのかもしれません。
当地は一部、棚田状になった地形なのですが、このトチの上部には明治初期まで製糸工場があったそうです。
お察しの通り、トチの名称である「糸姫」というのはそこからとられたものであるのです。
製糸工場で働く「乙女たち（と解説板にある）」が、このトチの周りに集い話に花を咲かせたことから、糸姫の栃と称するというのです。
なんともロマンティック！！
実は、現地にいると枯損したであろう枝の空洞部分が、巨大蛸の目のように見え、伸ばしたそれぞれの枝が脚に見えて仕方ないので、全くロマンティックさはないのだけれど・・・
推定樹齢は250年ほどということですが、「乙女たち」が花を咲かせてから凡そ100年余り。
その間にどれほどトチが生長したのかはわかりませんが、枝に苔むす姿は巨樹の威厳を纏っているようですし、草木が生い茂るようになり、特定の訪問者（担当のような巨樹巡り）しか訪れることがないような状況になりつつあることを思うと、本当にひっそりたたずむ、という印象が強くなります。
岐阜県にはほかにも、以前に紹介した洞のカツラのように集落が移転し人のいなくなった場所に残った巨樹もあります。
もしかするとこのトチも、数年か数十年で忘れられた巨樹になるのかもしれません。
七夕は過ぎてしまいましたが、ここにいるともしかすると、製糸工場の乙女たちではなく、織姫がトチの枝に衣をかけて、長良川で水を浴びる姿が見られるのではと思ってしまいます。
さて、熊におびえながらの茂みではありますが最後のお仕事である比較写真を撮りましょう。
の前に、お断り。
訪れたのは盛夏。
エアコンの車内から出るとモワッとする熱気ですから、どうしても軽装で出かけたくなる。
こんなに茂みに入ると想像もしていなかったこともあり、半袖に短パンという恰好で挑んでしまいました。
熊には出逢わなくても、様々な虫もいますので皆さんはこんな格好では出向かないようにしましょうね
（汗）。
少し湿気のある緑の香りに包まれて、この後トチがどのような成長を遂げ、どれほどの人に出逢うのか興味が尽きませんが、出逢えたことに感謝し帰路につきました。
その途中も、夏用タイヤで走行している自分の車に違和感ばかりだったことは言うまでもありません。
糸姫の栃所在地
岐阜県郡上市高鷲町西洞
GISコード
緯度：35.99416667
経度：136.89333333
・弊社へのお問い合わせはこちらから
・その他の無垢フローリング・羽目板ラインナップはこちらの記事下段から
・無垢フローリング・羽目板の一覧はホームページからどうぞ
＊2019年以前のリンク表示をクリックしても過去リンク記事が見られない場合は、こちらの手順でお願いをいたします。
＊消費税10％への改定前、2019年9月以前の記事の価格は旧税込み価格となっています。お手数ですが、ご連絡の上正式なお見積の依頼をいただけますようにお願い致します。（ホームページ価格も改定が間に合っていない物もありますのであしからずご留意ください。）
木のビブリオが、それぞれの木が持つストーリーとともに、こだわりの木材をお届けするブログと、稀少木材・無垢フローリングのホームページです。
・樹種別無垢フローリングのブログ記事一覧
http://muku-mokuzai.livedoor.biz/archives/1611916.html
・戸田材木店・セルバのホームページ
http://selva-mukumokuzai.jp
・無垢材と樹木が大好きな材木屋が配信する、きのむしラジオ | Podcast on Spotify
https://open.spotify.com/show/6HBMrFR3UFHaNLNfgdFE8l?si=ff6525ab5d0f464a
一般的には「いまや」は余計なのかもしれませんが、それこそがトチなのです。
樹木ではなく木材としての価値評価は、節がないということとともに、美観や耐朽性、多様な寸法が木取できるか、用途としての性質に耐えるかなどが指標でした。
でした、としたのは現在ではそれだけではないからです。
トチだけではなく、シナなどの木材がそうですが芯材もあまり着色しづらい樹種は、相対的に耐朽性が低いため汎用性が低いことと、それに伴う用途が限られ木目も華やかではないことから、今までの木材利用では重要とされてきませんでした。
それは担当の実感であり、古い書籍を見てもそのような記述ばかりです。
しかし、決してそう卑下されるものではないことは、近年の木材利用と人気を見れば明らかです。
どうしても、そんな材木屋目線の考えをしてしまうトチ。
木材として人気の理由の一つは、大きなテーブルサイズの木材ができるから。
弊社でもよくご来店いただきますが、ダイニングテーブル用の材として非常に人気なのがトチ。
大きな材がとれる、ということは巨木に育つということ。
今回は、そんなトチの巨木の一つであり、また美しい名称をもつものをご紹介します。
岐阜県郡上市。
関西地方からのスキー、スノーボード客も多く押し寄せるスキー場が集まる奥美濃地域。
そのスキー場への道すがら、山中に足を踏み入れた場所に、お目当てのトチは立っています。
担当は、普段この地域には冬にしか訪れません。
言わずもがな、スキーの為なのですがだからこそ、雪のないシーズンにそこに行くのが少し変な感じがします。
といっても、郡上市にもさまざま巨樹が存在していますので、まだまだ紹介したいところなのですが、今回はあまり好きではない山中の巨樹です。
山中、という表現は正しくないかもしれませんね、茂み？中という感じでしょうか。
グー〇〇マップでは、近くにある「西日本最大スケール」のスキー場の写真が表示される当地。
国道158号の道の駅大日岳をこえ、さらに北上。
マップ上では廃棄物処分場の東、長良川のすぐ東そばになるのが所在地。
文面ではわかりづらいのが、山中の巨樹。
実際には、道の駅近辺から林道を入るので地図表示ほどは茂みを行かずともよいものの、上の写真のような場所です。
そこにひっそりとたたずんでいるのが、糸姫の栃です。
実は、担当が訪れたのはもう10年前。
もしかすると、もうこの看板ではなくなっているかもしれませんが、平成時代の歴史を感じる解説板です。
巨樹の中で、訪問する人が多い場所や有名で観光名所化しているところなどは、老朽化の前に看板が立て変えられることも珍しくないのですが、ここはどうなっているのか気になります。
この毛筆っぽい書体が、どこか歴史を感じさせるのでしょうね。
それにもう一つ、文面を見ると「高鷲村」との表記。
現在、高鷲という名はスキー場の名称にも残っていますが、現在の郡上市。
さて、その郡上市のスキー場の谷間のようなところに位置する茂みをかき分け、進んだ先に現れるのがお目当てのトチ。
地上からすぐに分岐しているためか、幹回りは6mほどとさほどではないものの、巨さを感じます。
それ以外に担当の場合は、岐阜県＝熊！（すみません、でも本当）というイメージですから、夏に茂みに入るという行為自体で特別な感覚になっていることが理由なのかもしれません。
こんな場所で出逢う巨樹。
特別感がありますよ。
周囲は青葉、そしてすがすがしい緑の香り。
気化熱で冷えた空気に乗って鳥のさえずりが聞こえる環境は、ヴァーチャルでは味わえない感覚。
巨樹の記憶は、そういった環境とともに担当の記憶にきざまれるものなのです。
そしてもう一つ、巨樹感を思わせるのは主幹とは別に後ろに伸びる枝。
正確には、このトチのものかは定かではありませんが、それが樹木として広がりを感じさせるところがあるのかもしれません。
当地は一部、棚田状になった地形なのですが、このトチの上部には明治初期まで製糸工場があったそうです。
お察しの通り、トチの名称である「糸姫」というのはそこからとられたものであるのです。
製糸工場で働く「乙女たち（と解説板にある）」が、このトチの周りに集い話に花を咲かせたことから、糸姫の栃と称するというのです。
なんともロマンティック！！
実は、現地にいると枯損したであろう枝の空洞部分が、巨大蛸の目のように見え、伸ばしたそれぞれの枝が脚に見えて仕方ないので、全くロマンティックさはないのだけれど・・・
推定樹齢は250年ほどということですが、「乙女たち」が花を咲かせてから凡そ100年余り。
その間にどれほどトチが生長したのかはわかりませんが、枝に苔むす姿は巨樹の威厳を纏っているようですし、草木が生い茂るようになり、特定の訪問者（担当のような巨樹巡り）しか訪れることがないような状況になりつつあることを思うと、本当にひっそりたたずむ、という印象が強くなります。
岐阜県にはほかにも、以前に紹介した洞のカツラのように集落が移転し人のいなくなった場所に残った巨樹もあります。
もしかするとこのトチも、数年か数十年で忘れられた巨樹になるのかもしれません。
七夕は過ぎてしまいましたが、ここにいるともしかすると、製糸工場の乙女たちではなく、織姫がトチの枝に衣をかけて、長良川で水を浴びる姿が見られるのではと思ってしまいます。
さて、熊におびえながらの茂みではありますが最後のお仕事である比較写真を撮りましょう。
の前に、お断り。
訪れたのは盛夏。
エアコンの車内から出るとモワッとする熱気ですから、どうしても軽装で出かけたくなる。
こんなに茂みに入ると想像もしていなかったこともあり、半袖に短パンという恰好で挑んでしまいました。
熊には出逢わなくても、様々な虫もいますので皆さんはこんな格好では出向かないようにしましょうね
（汗）。
少し湿気のある緑の香りに包まれて、この後トチがどのような成長を遂げ、どれほどの人に出逢うのか興味が尽きませんが、出逢えたことに感謝し帰路につきました。
その途中も、夏用タイヤで走行している自分の車に違和感ばかりだったことは言うまでもありません。
糸姫の栃所在地
岐阜県郡上市高鷲町西洞
GISコード
緯度：35.99416667
経度：136.89333333
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・その他の無垢フローリング・羽目板ラインナップはこちらの記事下段から
・無垢フローリング・羽目板の一覧はホームページからどうぞ
＊2019年以前のリンク表示をクリックしても過去リンク記事が見られない場合は、こちらの手順でお願いをいたします。
＊消費税10％への改定前、2019年9月以前の記事の価格は旧税込み価格となっています。お手数ですが、ご連絡の上正式なお見積の依頼をいただけますようにお願い致します。（ホームページ価格も改定が間に合っていない物もありますのであしからずご留意ください。）
木のビブリオが、それぞれの木が持つストーリーとともに、こだわりの木材をお届けするブログと、稀少木材・無垢フローリングのホームページです。
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・戸田材木店・セルバのホームページ
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