2024年09月10日
必然なのか、思慮不足か？！ 話題の木材利用を考える
ネットに出てからテレビでも取り上げられ、瞬く間に業界を含めて話題になっている、建築物。
超大御所建築家、隈研吾氏が携わった栃木県那珂川町の馬頭広重美術館です。
不勉強で、竣工当時の状況を詳しく見ていなかったのですが、屋外の屋根や外壁にふんだんに、意匠的に木材を、地元の木材を使用して建てられたものだそうですね。
その屋外使用の木材が、経年で朽ちて交換が必要なものの、費用が3億円に上るということで物議をかもしている。
そもそも、屋外に木材を使うからだとか、スギではもたないのは当然とか、メンテナンスをしていなかったからだとか、部材の寸法が小さいとか、意匠的すぎるとか・・・
もちろん、材木屋的にも言いたいことはいっぱいあって、しかも批判をする人の中にも論点はいろいろとあると思うのですが、ひとつ、ニュースで気になったのは「当時の塗料の性能は現在ほど高いものではなく」というような趣旨の言葉でした。
ん？！
塗料のせい？！
塗料で耐久性を担保しようとしていたの？！
と安易に考えてしまうようなコメント。
つい最近も、「きのむしラジオ」の屋外使用の木材シリーズで様々お話したところで、塗装の大切さはお伝えしたものの、それでも塗装だけで飛躍的に木材の耐朽性が向上するものではありません。
しかし、先のコメントでは塗料の耐朽性の問題と思えるような言葉。
そもそもの材料の寸法が30×60という、材木屋からすれば小さすぎる（腐朽スピードに抵抗する断面が少なすぎる）ことが明白です。
しかし、デザインのうえでは「細さ＝繊細さ」ということで、無垢材にもとにかく「細く、薄く」を追及されるのは担当の経験上も、非常によくわかります。
しかし、木材という生物材料を扱うのに、使用（デザイン）する側の配慮が不足しているのはもちろんのことながら、デザインと「先生」が設計した建物が街の観光資源になるという、レガシー的な考えでの発注に（ではないかと思われる）してしまったのが原因になっているのではないかと思ってしまいます。
材木屋だったら、必ず注意喚起するようなところ。
それが、建築から24年後のいま、問題になる。
もちろん、メディアとして話題になるから取り上げているわけですが、担当が所属する木材業界はこのニュースで多くの事を学ぶべきだと思います。
そりゃ木は腐るとか、スギじゃなくてヒノキじゃないと、とか防腐注入木材を使わないと、ということじゃない、もっと本質的な意見交換や情報交換や基本的な使い方などを、もっと建築に入り込みながら話ができる環境を作るべきだと思います。
といっても、「🐻先生」の物件で意見を出来るようなことはないと思いますが、その風潮がいけませんよね。
裸の王様のような状況?!
建築で昔からつづく、「先生が言ってるんだからそのとおりに」という風潮。
いや、今回は燃えない腐らない木をつくることができた、ということでの採用だったようですが・・・
今でもみますよ、ききますよ。
先生が言うから、その通りにというお話。
そのうち取り上げますが、最近でも意味が分からない設計者からのJAS材指定をもらっている弊社が思うこと。
木材は、生物資源でありその使用方法も樹種による特性も、そして使い方も非常に繊細です。
それを間違えなければ、そして適切にメンテナンスをすれば非常に長寿命なマテリアルです。
今回は、そのすべてがかみ合わなかったということの様に思います。
いや、もしかして材木屋さんのプロパガンダ（嘘）を信じ込んで、法隆寺の様に1300年維持できると信じちゃったのかな？！
細く小さな材料が、いかに防腐処理をされていてもメンテナンスもなく、放置された状態でここまで来たことに驚きますが、本当に様々な立場でしっかりと考えて建築されなかった物件。
カッコイイけども、経年で見るも無残な状況になり、お客様としては「やはり木材はダメだ」という結論に至る。
材木屋はそれを減らしたい。
今回も、スギではなくクリなどの高耐朽な材を使えばという声もあるでしょうし、弊社としても在庫しているクリはおすすめするところではありますが、あんなに灰汁が出るものを大量に屋根や外壁に採用するのは、ためらわれるでしょうから一番の候補にはあげづらい。
それこそ、前回のお話の様に鉋仕上げにすれば、少しは耐久性が向上したのではないか、など・・・
材料や施工方法や寸法や、そもそものデザインについても様々な考え方ができるはず。
しかし、やはり耐朽性と耐久性を考慮するのであれえば、材質を考慮して「赤身は腐らない」とか「スギは水に強い」という、神話的かつ地産地消にこだわりすぎる使い方を、方向転換したいものです。
今あるものを批判するのは簡単ですから、現状に対して「こうしておけば」とは言えませんが、やはり木材を使うこととのその樹種選定に対しての考え方の軽薄さは、発注側も受注側も否めないところかと推察します。
自然素材はいつまでも、同じ姿ではいられません。
百歩譲って、朽ちれば交換し何度でもやり直しができる資産家の個人宅ならかまわないでしょう。
しかし、公共施設で税金が投入されている。
それでは、この状況は批判されることだろうと思います。
木材が悪いのではありません。
無知と意思疎通の無さが悪いのだと思います。
今後の中大規模木造や、シンボリックな建築に対する木材使用について一石を投じる機会になるかどうか・・・
いずれにせよ、考える機会であることは確かですね。
それにしても、ある意味24年もすれば木材は腐朽する可能性が高いため、当然ともいえますしメンテナンスするにせよ、防腐不燃処理されているであろう材料に塗料が浸透するのか？！という疑問もあり、また木材は朽ちて自然に還る素材であり、塗料がどうのという問題だけではないことは確かだと思うのです。
あるサイトでの隈さんのコメントでは、自然素材は弱いが、弱い自然素材を使いたい、旨の内容を見ました。そのためには少し強くしなければならないと・・・
その時点で、もう自然素材ではなく人工素材になってしまっているのでは？！とか、そこまでして人為的改変で使用しなくてもいいのでは？！と思ったりもします。
様々な見方がある事と思いますが、もっと誰もが建築とその素材について真摯に向き合う機会となることを望む、巷で話題の記事でした。
・弊社へのお問い合わせはこちらから
・その他の無垢フローリング・羽目板ラインナップはこちらの記事下段から
・無垢フローリング・羽目板の一覧はホームページからどうぞ
＊2019年以前のリンク表示をクリックしても過去リンク記事が見られない場合は、こちらの手順でお願いをいたします。
＊消費税10％への改定前、2019年9月以前の記事の価格は旧税込み価格となっています。お手数ですが、ご連絡の上正式なお見積の依頼をいただけますようにお願い致します。（ホームページ価格も改定が間に合っていない物もありますのであしからずご留意ください。）
木のビブリオが、それぞれの木が持つストーリーとともに、こだわりの木材をお届けするブログと、稀少木材・無垢フローリングのホームページです。
・樹種別無垢フローリングのブログ記事一覧
http://muku-mokuzai.livedoor.biz/archives/1611916.html
・戸田材木店・セルバのホームページ
http://selva-mukumokuzai.jp
・無垢材と樹木が大好きな材木屋が配信する、きのむしラジオ | Podcast on Spotify
https://open.spotify.com/show/6HBMrFR3UFHaNLNfgdFE8l?si=ff6525ab5d0f464a
超大御所建築家、隈研吾氏が携わった栃木県那珂川町の馬頭広重美術館です。
不勉強で、竣工当時の状況を詳しく見ていなかったのですが、屋外の屋根や外壁にふんだんに、意匠的に木材を、地元の木材を使用して建てられたものだそうですね。
その屋外使用の木材が、経年で朽ちて交換が必要なものの、費用が3億円に上るということで物議をかもしている。
そもそも、屋外に木材を使うからだとか、スギではもたないのは当然とか、メンテナンスをしていなかったからだとか、部材の寸法が小さいとか、意匠的すぎるとか・・・
もちろん、材木屋的にも言いたいことはいっぱいあって、しかも批判をする人の中にも論点はいろいろとあると思うのですが、ひとつ、ニュースで気になったのは「当時の塗料の性能は現在ほど高いものではなく」というような趣旨の言葉でした。
ん？！
塗料のせい？！
塗料で耐久性を担保しようとしていたの？！
と安易に考えてしまうようなコメント。
つい最近も、「きのむしラジオ」の屋外使用の木材シリーズで様々お話したところで、塗装の大切さはお伝えしたものの、それでも塗装だけで飛躍的に木材の耐朽性が向上するものではありません。
しかし、先のコメントでは塗料の耐朽性の問題と思えるような言葉。
そもそもの材料の寸法が30×60という、材木屋からすれば小さすぎる（腐朽スピードに抵抗する断面が少なすぎる）ことが明白です。
しかし、デザインのうえでは「細さ＝繊細さ」ということで、無垢材にもとにかく「細く、薄く」を追及されるのは担当の経験上も、非常によくわかります。
しかし、木材という生物材料を扱うのに、使用（デザイン）する側の配慮が不足しているのはもちろんのことながら、デザインと「先生」が設計した建物が街の観光資源になるという、レガシー的な考えでの発注に（ではないかと思われる）してしまったのが原因になっているのではないかと思ってしまいます。
材木屋だったら、必ず注意喚起するようなところ。
それが、建築から24年後のいま、問題になる。
もちろん、メディアとして話題になるから取り上げているわけですが、担当が所属する木材業界はこのニュースで多くの事を学ぶべきだと思います。
そりゃ木は腐るとか、スギじゃなくてヒノキじゃないと、とか防腐注入木材を使わないと、ということじゃない、もっと本質的な意見交換や情報交換や基本的な使い方などを、もっと建築に入り込みながら話ができる環境を作るべきだと思います。
といっても、「🐻先生」の物件で意見を出来るようなことはないと思いますが、その風潮がいけませんよね。
裸の王様のような状況?!
建築で昔からつづく、「先生が言ってるんだからそのとおりに」という風潮。
いや、今回は燃えない腐らない木をつくることができた、ということでの採用だったようですが・・・
今でもみますよ、ききますよ。
先生が言うから、その通りにというお話。
そのうち取り上げますが、最近でも意味が分からない設計者からのJAS材指定をもらっている弊社が思うこと。
木材は、生物資源でありその使用方法も樹種による特性も、そして使い方も非常に繊細です。
それを間違えなければ、そして適切にメンテナンスをすれば非常に長寿命なマテリアルです。
今回は、そのすべてがかみ合わなかったということの様に思います。
いや、もしかして材木屋さんのプロパガンダ（嘘）を信じ込んで、法隆寺の様に1300年維持できると信じちゃったのかな？！
細く小さな材料が、いかに防腐処理をされていてもメンテナンスもなく、放置された状態でここまで来たことに驚きますが、本当に様々な立場でしっかりと考えて建築されなかった物件。
カッコイイけども、経年で見るも無残な状況になり、お客様としては「やはり木材はダメだ」という結論に至る。
材木屋はそれを減らしたい。
今回も、スギではなくクリなどの高耐朽な材を使えばという声もあるでしょうし、弊社としても在庫しているクリはおすすめするところではありますが、あんなに灰汁が出るものを大量に屋根や外壁に採用するのは、ためらわれるでしょうから一番の候補にはあげづらい。
それこそ、前回のお話の様に鉋仕上げにすれば、少しは耐久性が向上したのではないか、など・・・
材料や施工方法や寸法や、そもそものデザインについても様々な考え方ができるはず。
しかし、やはり耐朽性と耐久性を考慮するのであれえば、材質を考慮して「赤身は腐らない」とか「スギは水に強い」という、神話的かつ地産地消にこだわりすぎる使い方を、方向転換したいものです。
今あるものを批判するのは簡単ですから、現状に対して「こうしておけば」とは言えませんが、やはり木材を使うこととのその樹種選定に対しての考え方の軽薄さは、発注側も受注側も否めないところかと推察します。
自然素材はいつまでも、同じ姿ではいられません。
百歩譲って、朽ちれば交換し何度でもやり直しができる資産家の個人宅ならかまわないでしょう。
しかし、公共施設で税金が投入されている。
それでは、この状況は批判されることだろうと思います。
木材が悪いのではありません。
無知と意思疎通の無さが悪いのだと思います。
今後の中大規模木造や、シンボリックな建築に対する木材使用について一石を投じる機会になるかどうか・・・
いずれにせよ、考える機会であることは確かですね。
それにしても、ある意味24年もすれば木材は腐朽する可能性が高いため、当然ともいえますしメンテナンスするにせよ、防腐不燃処理されているであろう材料に塗料が浸透するのか？！という疑問もあり、また木材は朽ちて自然に還る素材であり、塗料がどうのという問題だけではないことは確かだと思うのです。
あるサイトでの隈さんのコメントでは、自然素材は弱いが、弱い自然素材を使いたい、旨の内容を見ました。そのためには少し強くしなければならないと・・・
その時点で、もう自然素材ではなく人工素材になってしまっているのでは？！とか、そこまでして人為的改変で使用しなくてもいいのでは？！と思ったりもします。
様々な見方がある事と思いますが、もっと誰もが建築とその素材について真摯に向き合う機会となることを望む、巷で話題の記事でした。
・弊社へのお問い合わせはこちらから
・その他の無垢フローリング・羽目板ラインナップはこちらの記事下段から
・無垢フローリング・羽目板の一覧はホームページからどうぞ
＊2019年以前のリンク表示をクリックしても過去リンク記事が見られない場合は、こちらの手順でお願いをいたします。
＊消費税10％への改定前、2019年9月以前の記事の価格は旧税込み価格となっています。お手数ですが、ご連絡の上正式なお見積の依頼をいただけますようにお願い致します。（ホームページ価格も改定が間に合っていない物もありますのであしからずご留意ください。）
木のビブリオが、それぞれの木が持つストーリーとともに、こだわりの木材をお届けするブログと、稀少木材・無垢フローリングのホームページです。
・樹種別無垢フローリングのブログ記事一覧
http://muku-mokuzai.livedoor.biz/archives/1611916.html
・戸田材木店・セルバのホームページ
http://selva-mukumokuzai.jp
・無垢材と樹木が大好きな材木屋が配信する、きのむしラジオ | Podcast on Spotify
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muku_mokuzai
