2021年07月07日
復活のプロローグ 〜適材適所の樹種 栗（クリ）〜 ��
語り継がれる耐腐朽性をもつクリ。
その性質は、前回エビデンスを得ました。
そしてもう一つ。
越えねば大きなヤマがあります。
それは耐蟻（シロアリ）性。
腐りにくいものは白アリにも抵抗性がある。そう信じたい気持ちですが、それとこれとは別問題。
その上、文献の多くには抵抗性が低いとの記載。
その文献というのも非常に数が少なく、どのような試験でどのような状況だったのかもはっきりとせず、本当のところが分からないままでした。
土台として使用するために、腐朽とともに抵抗性を持たせたい耐蟻性。
クリの真価はいかに？！
白アリへの抵抗性試験も、腐朽と同じ試験片を用います。
複数の試験片を一つずつ、活発に動き回るシロアリの中に投入します。
ひえぇ〜。
見たくないような、さぶいぼ（鳥肌）が出るような光景。
食料となる木材に群がるシロアリたち。
モザイクしときました（汗）。
結果の前置きとしてこれを見て知ってもらいたいのは、比較試験ではないこと。
白アリに対する抵抗性として試験をしたというものの中には、いくつかの樹種を同列に並べておくものが見られます。
抵抗性があるとされる樹種と、非常に被害を受けやすい樹種。
それを並べておくと、シロアリも美味しい方を食べます。当たり前です。
ホワイトウッドが如何にシロアリに食害されるか、という半ば意味のないと感じるような比較試験が思い出されます。
その試験結果を用いて、抵抗性のあると言われるものは被害を受けずに、抵抗性の無いと言われるものが非常に被害を受ける、という視覚的に非常に分かりやすい結果を得る選択食害試験。
それでは意味がないのです。
子供に対して、ハンバーグとピーマンを並べておいてどちらを食べるか選ばせるようなもの。
私でも、迷わずハンバーグですよ！
そんな感じです。
だから、今回はきちんと結果の出る強制摂食試験なのです。
その結果をお伝えしましょう。
今回も腐朽試験と同じく、基本となる杉の辺材を用いていますので、その状況を見てみます。
ワオ！
孔あいてますよ。
まさしく、シロアリです。
硬質な晩材部分を残して柔らかな早材部分を喰いぬいています。
これも、シロアリの強制摂食試験としてはきちんと成立する結果。
それを念頭に次はヒノキです。
試験片の大きさは、杉を含めて全て同じ。
この形状ですが、杉は孔が開くほどに食害を受けていたのに対して、ヒノキは孔どころか木口面には殆ど被害がありません。
改めて言っておきますが、杉は試験の進行を見るための基準材であり、辺材を使用しています。
もし芯材であれば、あれほどの状況にはなりません。
そして、ヒノキも芯材だということです。
精油成分を含む芯材部分は、非常に被害を受けにくいということ。
大切なのは、被害がないのではなく少ないということ。
端っこが若干かけたようになっている部分は、シロアリに齧られている部分です。
ヒノキでも齧るのです。
そしてもし、これしか食料が無ければもっとかじるのかもしれません。
そんな状況での試験ですので、これが本来のシロアリとの「一対一の真剣勝負」です。
木材とシロアリとの関係を正しく知る事が出来る状態。
本来の耐蟻性が見えるのです！！
そしていよいよ本丸であるクリです。
贔屓目バリバリの目を補正し、曇りなき眼で見届けねばなりません（汗）。
その結果とは・・・
印象はどうですか？！
ヒノキと同様に、貫通された部分はなく一部かじられてはいるものの、大きな被害は無し！
はっきり言って、一安心どころか大きく納得。
やはり、クリはシロアリにも抵抗性があるということ。
涙が出そうです。
信じる者は救われる。
いや、クリの力は偉大だったというべきか。
今までは腐りにくいもののシロアリへの抵抗性は不明か、もしくは低いとされてきたところに明らかな結果を残しました！！
改めて言います。
シロアリへの抵抗性としては、針葉樹材のもつ精油成分が非常に有効に働きます。
その精油成分が殆ど認められない（ポリフェノール類を含むが詳細な関連性は不明な）クリ材が、ヒノキ同等の性質を示したことは、非常に大きな成果を得たと思います。
本当に、我が子が受験をしたような気持ちなのは、ただ木材が好きだということ以上に材を有効活用したいという気持ちと、意地でもクリの節あり材を活かしたいという気持ちが、根拠のない有用性実証への扉を開いたと思っています。
誰もやらない、やっても仕方のない試験を零細材木屋が行うことの意味。
日本の広葉樹を活用する、人工林ではなく大量に産出されるものでもない樹種が用途なく見過ごされている中で、活用への道筋をつけることはほかでもない零細材木屋だからこそ。
売れるあてもなく、半ば意地で始めたクリ材の土台利用への道。
誰もやらないのは、売れないから。
ヒノキで十分、ヒノキより高い、供給できるのか、などという声に埋もれているうちに利用されずに製材されない原木が過ぎ去っていく。
ならば、ヒノキ以上とは言わずとも同等以上の性質を証明し、そこに価値を見出してくれる人にのみ届ければいい。
敢えて競っているのは、神殿社寺に最高とされるヒノキです。
神話の時代から続く美しくも耐用年数もある、一級品です。
クリ材は、節なしの化粧材としての用途は様々なところで確立され、その存在感と質感を認められています。
しかし、山からでる原木は必ず枝、つまり節があります。
節なしが選別されている中で、かならず節ありの原木がありチップやパルプ、燃料へ回されています。
それは大径木であっても例外なく、もちろん製材すれば美しい木目が出るであろう物でも、一部に大きな節があればそうなる可能性があり、事実、作業中の仕分けにおいては、明確な用途や利用方法が無い限りは製材用材としての搬出はありません。
そんなこと、山の施業現場に行くか施業に携わる人との会話の間にしか得られない情報です。
その選別を通り抜けられない多くの広葉樹は、木材製品となることなくどこかで破砕されているのです・・・
上の写真の私は笑顔です。
この写真は嘘です。
喜んでいるのではありません。
悲しいあざけ笑いなのです。
何故なら、カメラの後ろには多くの破砕されるべし原木が山積みされているからです。
消費者の、工務店さんや大工さんの見えない、いや材木屋さんが利益や価格で見ていないところで、多くの広葉樹が破砕燃焼されています。
少し曲がっているから、分岐しているから・・・
野菜と同じですが、野菜ならば朝市で売ればいいかもしれません。
しかし、原木は朝市で売るわけにはいきません。
製材し、乾燥しなければいけません。
しかも体積が大きい！
そんな問題ばかりなのです。
基・・・
クリの土台は私の、そして木材コーディネーターという肩書が、単なる形容詞でないということを証明する為の、本当に木が好きな馬鹿が本気で取り組んだものの成果なのです。
そう、きちんと利益や儲けを計算できる人は決して手を出さない。
だから、文献書物にも記載がなかったクリの性質。
そこに踏み込んだ今回の結果。
土台材として求められる、耐腐朽性と耐蟻性という二つの性質を、ヒノキと同等以上という性質でクリヤし、その上別途行った強度破壊試験においても、文献にあるヒノキ以上の強度性質を発揮し、構造材としての力を証明して見せてくれました。（実は、それ以上の強度も期待していたことは、包み隠さずお伝えします・・・）
この結果を引っ提げて、胸を張ってヒノキ同等以上の性能を持つものがクリ材であるということをアピールし、節あり広葉樹の土台利用の用途を切り開いていきたいと思います。
どうぞ皆さん、零細材木屋の取り組む広葉樹利用、応援して頂けると嬉しく思います。
針葉樹ばかりではない、人工林がすべてではない豊かな日本。
適材適所の木材利用を再度見直し、用途を復活させたい木材利用。
その一歩を今、大阪府茨木市の零細材木屋が始めようとしています。
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木のビブリオが、それぞれの木が持つストーリーとともに、こだわりの木材をお届けするブログと、稀少木材・無垢フローリングのホームページです。
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その性質は、前回エビデンスを得ました。
そしてもう一つ。
越えねば大きなヤマがあります。
それは耐蟻（シロアリ）性。
腐りにくいものは白アリにも抵抗性がある。そう信じたい気持ちですが、それとこれとは別問題。
その上、文献の多くには抵抗性が低いとの記載。
その文献というのも非常に数が少なく、どのような試験でどのような状況だったのかもはっきりとせず、本当のところが分からないままでした。
土台として使用するために、腐朽とともに抵抗性を持たせたい耐蟻性。
クリの真価はいかに？！
白アリへの抵抗性試験も、腐朽と同じ試験片を用います。
複数の試験片を一つずつ、活発に動き回るシロアリの中に投入します。
ひえぇ〜。
見たくないような、さぶいぼ（鳥肌）が出るような光景。
食料となる木材に群がるシロアリたち。
モザイクしときました（汗）。
結果の前置きとしてこれを見て知ってもらいたいのは、比較試験ではないこと。
白アリに対する抵抗性として試験をしたというものの中には、いくつかの樹種を同列に並べておくものが見られます。
抵抗性があるとされる樹種と、非常に被害を受けやすい樹種。
それを並べておくと、シロアリも美味しい方を食べます。当たり前です。
ホワイトウッドが如何にシロアリに食害されるか、という半ば意味のないと感じるような比較試験が思い出されます。
その試験結果を用いて、抵抗性のあると言われるものは被害を受けずに、抵抗性の無いと言われるものが非常に被害を受ける、という視覚的に非常に分かりやすい結果を得る選択食害試験。
それでは意味がないのです。
子供に対して、ハンバーグとピーマンを並べておいてどちらを食べるか選ばせるようなもの。
私でも、迷わずハンバーグですよ！
そんな感じです。
だから、今回はきちんと結果の出る強制摂食試験なのです。
その結果をお伝えしましょう。
今回も腐朽試験と同じく、基本となる杉の辺材を用いていますので、その状況を見てみます。
ワオ！
孔あいてますよ。
まさしく、シロアリです。
硬質な晩材部分を残して柔らかな早材部分を喰いぬいています。
これも、シロアリの強制摂食試験としてはきちんと成立する結果。
それを念頭に次はヒノキです。
試験片の大きさは、杉を含めて全て同じ。
この形状ですが、杉は孔が開くほどに食害を受けていたのに対して、ヒノキは孔どころか木口面には殆ど被害がありません。
改めて言っておきますが、杉は試験の進行を見るための基準材であり、辺材を使用しています。
もし芯材であれば、あれほどの状況にはなりません。
そして、ヒノキも芯材だということです。
精油成分を含む芯材部分は、非常に被害を受けにくいということ。
大切なのは、被害がないのではなく少ないということ。
端っこが若干かけたようになっている部分は、シロアリに齧られている部分です。
ヒノキでも齧るのです。
そしてもし、これしか食料が無ければもっとかじるのかもしれません。
そんな状況での試験ですので、これが本来のシロアリとの「一対一の真剣勝負」です。
木材とシロアリとの関係を正しく知る事が出来る状態。
本来の耐蟻性が見えるのです！！
そしていよいよ本丸であるクリです。
贔屓目バリバリの目を補正し、曇りなき眼で見届けねばなりません（汗）。
その結果とは・・・
印象はどうですか？！
ヒノキと同様に、貫通された部分はなく一部かじられてはいるものの、大きな被害は無し！
はっきり言って、一安心どころか大きく納得。
やはり、クリはシロアリにも抵抗性があるということ。
涙が出そうです。
信じる者は救われる。
いや、クリの力は偉大だったというべきか。
今までは腐りにくいもののシロアリへの抵抗性は不明か、もしくは低いとされてきたところに明らかな結果を残しました！！
改めて言います。
シロアリへの抵抗性としては、針葉樹材のもつ精油成分が非常に有効に働きます。
その精油成分が殆ど認められない（ポリフェノール類を含むが詳細な関連性は不明な）クリ材が、ヒノキ同等の性質を示したことは、非常に大きな成果を得たと思います。
本当に、我が子が受験をしたような気持ちなのは、ただ木材が好きだということ以上に材を有効活用したいという気持ちと、意地でもクリの節あり材を活かしたいという気持ちが、根拠のない有用性実証への扉を開いたと思っています。
誰もやらない、やっても仕方のない試験を零細材木屋が行うことの意味。
日本の広葉樹を活用する、人工林ではなく大量に産出されるものでもない樹種が用途なく見過ごされている中で、活用への道筋をつけることはほかでもない零細材木屋だからこそ。
売れるあてもなく、半ば意地で始めたクリ材の土台利用への道。
誰もやらないのは、売れないから。
ヒノキで十分、ヒノキより高い、供給できるのか、などという声に埋もれているうちに利用されずに製材されない原木が過ぎ去っていく。
ならば、ヒノキ以上とは言わずとも同等以上の性質を証明し、そこに価値を見出してくれる人にのみ届ければいい。
敢えて競っているのは、神殿社寺に最高とされるヒノキです。
神話の時代から続く美しくも耐用年数もある、一級品です。
クリ材は、節なしの化粧材としての用途は様々なところで確立され、その存在感と質感を認められています。
しかし、山からでる原木は必ず枝、つまり節があります。
節なしが選別されている中で、かならず節ありの原木がありチップやパルプ、燃料へ回されています。
それは大径木であっても例外なく、もちろん製材すれば美しい木目が出るであろう物でも、一部に大きな節があればそうなる可能性があり、事実、作業中の仕分けにおいては、明確な用途や利用方法が無い限りは製材用材としての搬出はありません。
そんなこと、山の施業現場に行くか施業に携わる人との会話の間にしか得られない情報です。
その選別を通り抜けられない多くの広葉樹は、木材製品となることなくどこかで破砕されているのです・・・
上の写真の私は笑顔です。
この写真は嘘です。
喜んでいるのではありません。
悲しいあざけ笑いなのです。
何故なら、カメラの後ろには多くの破砕されるべし原木が山積みされているからです。
消費者の、工務店さんや大工さんの見えない、いや材木屋さんが利益や価格で見ていないところで、多くの広葉樹が破砕燃焼されています。
少し曲がっているから、分岐しているから・・・
野菜と同じですが、野菜ならば朝市で売ればいいかもしれません。
しかし、原木は朝市で売るわけにはいきません。
製材し、乾燥しなければいけません。
しかも体積が大きい！
そんな問題ばかりなのです。
基・・・
クリの土台は私の、そして木材コーディネーターという肩書が、単なる形容詞でないということを証明する為の、本当に木が好きな馬鹿が本気で取り組んだものの成果なのです。
そう、きちんと利益や儲けを計算できる人は決して手を出さない。
だから、文献書物にも記載がなかったクリの性質。
そこに踏み込んだ今回の結果。
土台材として求められる、耐腐朽性と耐蟻性という二つの性質を、ヒノキと同等以上という性質でクリヤし、その上別途行った強度破壊試験においても、文献にあるヒノキ以上の強度性質を発揮し、構造材としての力を証明して見せてくれました。（実は、それ以上の強度も期待していたことは、包み隠さずお伝えします・・・）
この結果を引っ提げて、胸を張ってヒノキ同等以上の性能を持つものがクリ材であるということをアピールし、節あり広葉樹の土台利用の用途を切り開いていきたいと思います。
どうぞ皆さん、零細材木屋の取り組む広葉樹利用、応援して頂けると嬉しく思います。
針葉樹ばかりではない、人工林がすべてではない豊かな日本。
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その一歩を今、大阪府茨木市の零細材木屋が始めようとしています。
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