三瓶小豆原埋没林公園
ずっと縁がないのかと思っていました。
こんなに想っているのに・・・・
片想いを続けて何年になるでしょう。
やっと出会う事が出来ました!
それはこれ!

この景色だけで、木の好きな方はもちろんご存知の場所、そう「三瓶小豆原埋没林公園」です。
埋没林・・・読んで字のごとく「埋もれた林」ですが、埋もれたままだったものが発見され、それも数千年前の火山活動や洪水などで土砂や河川に埋もれてしまった木々や森が出現するのが埋没林ですね。
神代木が現れるのは、こうした埋没林からです。
この三瓶埋没林もその一つ。
この三瓶と双璧を成す日本の埋没林には、魚津埋没林博物館がありますが、各地で埋没林や珪化木などがみつかっていますので、ここだけという話ではない中で、どうして有名なのか?
それは、その双璧が素晴らしい展示内容と管理がされているからでしょう。
もちろん、その時代を知る上で貴重であるということ(これは後で出てきます、公園整備の発端となることです。)もありますが、相当な量の埋没樹木とその保存状態の良さが、人々に様々な影響を与えるからだとも推測します。
さて、その埋没林公園。
私が恋焦がれていたのは、ここを目当てに向かった一回目は休館日だったことと(現在は職員さんのご尽力で年末年始などのみになっていますが。)2回目の旅行では訪問を打診したものの、他のメンバーから「そんなん行きたいのは自分だけやで・・」といわれ、目と鼻の先まで生きながらも涙をのんだわけで・・・・
3度目の正直はもちろん単独での訪問!!よっしゃー、泊り込む位の勢いで乗り込んでやる!!と意気揚々。しかし半面、魚津の時の様に「エイリアンの襲来」にさらされたらどうしよう・・・と少しビビりながらの出発であったことも付け加えておきましょう。
さぁ、チケットセンターの女性ともウキウキで言葉を交わし、いざ地底の埋没林の世界へ!!

このタイムトンネルの様な入り口をくぐると、少し空気が変わるような気がします。
地下へと伸びる階段に、どんな景色が待ち受けているのか期待は高まるばかり。そして前の景色が開けると・・・・・

でたーっ!!いきなりの埋没樹木のお出迎え。
しかもビッグサイズがニョキッと立っています。
保存処理の影響でしょうか、照明を反射し黒光りするその木肌は、出土当時も泥水にまみれながらも永き眠りから揺さぶり起こされた「旧世界の巨人」を想像させます。
その根株の張り具合が、まるで自分の足で立っているかのようにも感じてきます。

できる限り、発見当時のままの姿を維持してくださっているのでしょう。
覆いかぶさるように重なり合う樹木と、その隣で土砂や溶岩でも流され倒れることのなかった強靭な幹を持った巨体が立っている。
木々も自然のものですが、それらの景色をも一瞬で変えてしまったであろうもう一方の自然の力に驚きつつ、よくぞこんな状態でもう一度空気に触れる時代に現れてくれたものだと感謝したくもなります。

展示の中には、出土した地層をそのまま見せてくれるところがあり、そこには地層の中からその姿を見せる流木となったかつての木々の姿がはっきりと確認できます。
助けを求めているのか、それとも時代の証言者としての言葉を投げかけているのか?!できることならば、その当時の様子を語って欲しいような気分です。

(照明の加減で変色しています。すみません。)
回廊の様になった展望スペースは、まさに埋もれたままの感覚を味わうことが出来る内容で、中には自分のすぐ近くに直径1mを超える立木状の埋没材があったり、巨体でありながらもその体を引き裂かれなぎ倒された状態のものが、年輪を読むことも出来る状態で横たわっています。
間近に感じるその光景は、自然の力としか言いようがありません。

左手にいる私と比較しても、木々の大きさはわかると思います。
ここが埋没した時代には、これらの巨樹が林立していたのかもしれません。
今の時代においても立派な大木だと感じるこのサイズ、やはり出雲大社の神殿などの巨大宇豆柱や社殿の御用材はこの地域で賄われていたのだろうか。
どちらにせよ、それだけ山が豊かだった証拠か・・・
出土材の多くは杉だったということなので、杉を中心とした森だったのだろうけれども、巨木の蓄積は多かったのでしょう。
ぐるぐると展示スペースを歩き、出たくないなぁ・・・とブツクサ言いながらも次の展示スペースがあるからには出ないわけにはいきません。

次の世界への入り口はこちら。
合体木根株展示棟。
開かれたドアに吸い込まれるようにまた地底の世界へ・・・

ドアをくぐると、グルグルと続く階段。
その下には根株があります。
一段一段おりるごとに、少しづつ「その時代」まで時間を逆回ししている様に木々が埋没した時代へと続く階段を踏みしめていきます。
何段下りただろう・・・いや、彼らが埋没した4000年前の時代へはまだまだ遠いはずですがずいぶん下りたような気がします。

そこにあったのは、根上がり気味に寄り添って合体する切株。
発掘時にこの部分から伐採されたそうですが、10m以上の樹高を残したまま直立した状態で発掘された株は、切断当初も鮮やかな木の香りを放ったと当時の記録にあります。
4000年以上も埋もれていた樹木から香りがするというのは、自身の経験からわかってはいるものの、信じがたいものであるとも感じます。

今すぐ手の届くところにある根株が、数10mの高さのまま埋もれ、外気に接していた部分のみが朽ち果てて、今の状態で残ったわけですが、目の前にしても保存状態も美しくまさかこれが地下に埋もれていた巨木の株だとは想像できません。
つまりは、やはり人知の及ばない自然の世界の出来事だということでしょう。その力には驚かされるばかりです。

見事な展示内容は、その歴史を知る上でもまた、彼らの生きた時代から現在に生を受けている私たち自身を見る為にも、非常に貴重なものだと思います。
現存する巨樹もそうですが、やはりそれらよりも以前の地球を知っている彼らの記憶を覗いてみたい気持ちでいっぱいです。
ここ小豆原は「埋没林」というだけあって、これら以外にもたくさんの埋没樹が敷地内に存在するそうです。
もともとこのあたりからは、以前から倒木が出土していたようですがそんなに気にはされていなかったそうです。
そして水田の区画整備事業の最中にも、一本の立木で出現した埋没樹があったそうですが、その時も大きく取り上げられることなく時は過ぎ、ある時、その区画整備時に出土した立木の写真を見た一人の方によって、のちの埋没林公園の整備計画と発掘作業が始まるのです。
そんな背景から、敷地のあちこちに不思議な突起がたくさん。

正面と左奥(カラーコーン左)の円柱です。
これは「埋没林モニュメント」というらしく、敷地内に点在しているのですが、このモニュメントの下には同じ大きさの埋没樹が埋まっているそうです。
ということは、林立するモニュメントを見れば、どこにどんな大きさの埋没樹があるのかわかりますし、その数からやはり相当数の樹木が埋もれたこともわかります。

これらを見ると、「埋没林」という存在を改めて認識することができますし、学術的にも貴重な埋没林は、埋め戻し保存されているそうで、展示されている以外にもこれらの樹木が再び眠りについているというのもいい話ですね。
これらの埋没材に会うと、歴史を感じることは当然ながらその時代のことや、その樹木の成長の事、動く事が出来ずに火山活動にのまれた樹木たちの事を想い、巨樹に出会った時とはまた違った気持ちにさせられます。
これからも人々に歴史と自然の力、そして木々の力を伝える場として活躍してくれることを祈って、惹かれる後ろ髪を引きずりながら埋没林公園を後にする私でした。
*ご注意
埋没林公園のホームページにもありますが、現地へ向かわれる出発場所によっては「ホンマに?ここいくの?!」という当然車の対向などできない林道を延々と通らないといけないルートになる場合があります。
特にカーナビを頼りにされる場合はホームページに記載されている「推奨できないルート」を参照のうえ出発されることをお勧めします。
因みに私もがっつりと「車一台分通行可」ルートを通りました(汗)。