本物の無垢木材　～茨木市戸田材木店・セルバの木の虫ブログ～:トチ

トチ

2024年09月01日

畏怖と恐怖と美しさと・・・～君尾山の大トチと小トチと、大カツラ行脚　大カツラ、小トチ編　②～

今回の君尾山巨樹シリーズ。

以前からやろうやろうと考えていたのです。
でも、巨樹ブログではない会社ページで、巨樹ばかり連投というのもいかがなものか？！とリミッターがかかっていたのですが、大トチが倒壊するようなことになってしまってから、懐かしむ記事にはしたくない、と思い今回の三部作になったのですが、巨樹ファンではない愛読者の皆さんには、今日で最後ですので、もう少しお付き合いを・・・

大カツラをはなれ、今度は標識もなく迷うこと間違いなし、と覚悟して歩き出したトレッキングコース。
事前調査での位置関係は、先の大カツラを下った方向に小トチ。
地図は2Dですが現地は3D。
そこでまた思い込みです。

位置関係が地図で下方なのだから、下るはず・・・
そう考えて、先の方へ進もうとするもどうもそうではない。

行けば行くほど、トレッキングコースで山中から離れてしまうように感じるのです。
これはダメだ、いったん戻ろう。
そう考え、上部の道路に戻ろうと方向転換して進んだところ、意表を突くところに標識が現れました。

出た！40m看板（汗）。

また、その距離でだまそうとしているな！（失礼）、なんて警戒していたのですが、今度は拍子抜け。
今まで歩いてきた広葉樹林とは違い、目の前は整然と植林された針葉樹人工林。

それも、伐採による手が入れられているので明るく見通しがききます。
紅葉の山々、というイメージは一変しますが、この中にトチの巨樹があるとすれば、その樹形からもすぐに見つかるはず！

そう考えていた矢先。

標識の先に目を移した瞬間に見つけちゃいました（笑）。

大トチと同じように、急斜面にたつ小トチ。

ヒノキも当然のように根曲がりの出る、きつい斜度。
その傾斜に体を預けるように傾き、その上部で空に枝を伸ばしています。

稜線は異なるとはいえ、ここがほんの先ほどまでと同じ山かと信じられない光景ですが、完全にこの小トチを優先されているのであろうと思われる植林。

巨樹好きとしては有難いのですが、何度も言うように人工的な雰囲気の中にある巨樹に、担当は違和感を感じてしまいました。
とはいえ、人がかかわるのが人工林ですから、それを否定するのではなくあくまでの先ほどまでとのギャップや勝手なイメージからくる連想ですので、悪い意図はありませんよ！

ヒノキの林を抜け近づこうにも、斜度のために足元を取られてしまいます。
スキーならば滑り降りるのに、と思ってしまう踏ん張りが必要な足元。

その斜度の為、いつも撮影する見上げるアングルは、広角カメラを使っているわけではないのに、大げさに感じるほどになってしまいます。
しかし、広角カメラで迫力を出す写真が性に合わない気質の為、広角ではないことを考慮してみていただきたいのがこちら。

奥の方の林の角度、分かるでしょうか。

写真の端が歪んでいないことからも、広角ではないとわかっていただけると思いますが、とにかく大トチでも踏ん張りましたが踏ん張る角度なのです。
そんな角度に倒れこむような小トチは、よく折れないものだと思うものの、それをいうなら大トチの方が、という話。

もちろん、それには張り巡らされた根やアテの形成など、樹木としての生育が大きく関係してくるのでしょうけども。

下部からの写真では、倒れこんでくるようにみえるのですが、上部に移動すると光景が変わります。

この写真を見れば、何かが連想されませんか？

担当が感じたのは、手のひらを空に向けているさま。
ちょうど5本の指に見えるように思います。

そして、手のひら部分の中心がくぼんでいることからも、一層それが斜面から突き出た手のように見えてくるのです。

今回の小トチは、大カツラとともに期待のサイズとは若干異なるものでした。
印象的ではあるものの、サイズ感はもう一息。

しかし、人が入りつつも様々な景色と巨樹を一度に見ることのできる山が近畿にあることは、非常に貴重です。
また、ネット記事には青葉の茂る写真が多いものの、紅葉の時期に山を楽しみながら歩くことができたのは、とても心地よい時間でした。

そして、大トチの検索では紹介されていない小トチや大カツラに逢えたことも、大トチだけにこだわらずに調べておいた結果。
そういうこともあり、必ず一緒に紹介したかった今回の三部作。

いかがでしたか？！
京都北部で時間が取れる日があればぜひ、君尾山トレッキングに出かけてみてくださいね。

君尾山の小トチ所在地

京都府綾部市五津合町不毛

緯度：35.3914520
経度：135.4392969

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＊2019年以前のリンク表示をクリックしても過去リンク記事が見られない場合は、こちらの手順でお願いをいたします。
＊消費税10％への改定前、2019年9月以前の記事の価格は旧税込み価格となっています。お手数ですが、ご連絡の上正式なお見積の依頼をいただけますようにお願い致します。（ホームページ価格も改定が間に合っていない物もありますのであしからずご留意ください。）

木のビブリオが、それぞれの木が持つストーリーとともに、こだわりの木材をお届けするブログと、稀少木材・無垢フローリングのホームページです。

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タグ：: 巨樹; 巨木; 所在地; 京都府; トチ; 大トチ; 栃; 小トチ; 大カツラ; カツラ

muku_mokuzai at 13:30│コメント(0)

2024年08月29日

畏怖と恐怖と美しさと・・・～君尾山の大トチと小トチと、大カツラ行脚　大カツラ、小トチ編　①～

幻の大トチはいかがでしたでしょうか。

日本第三位ともいわれるトチ。
その迫力は、やはり現地でなければ伝わりませんが、大トチとともにあるために注目されないかもしれないカツラを通り、さらに離れた場所にある大カツラと小トチを目指します。

これが大トチのそばにあるカツラですが、立派なものです。
普通に出逢うならば、このサイズでも大きいと感じるかもしれませんが、今から目指すのは大カツラ！
その名称と、この山中という立地にも期待が大きく膨らむのです。

各地の大カツラの、ひこばえが林立する林のようないでたちを連想しますが、今日はどんな姿に逢えるのか。
事前に入手していた案内地図（ネットにて公開されている）を手に、捜索開始！

車で上がってこられる道路の出発点まで戻り、位置関係を確認。
大トチへの入り口の少し下方に、標識がありましたので見落とさなければ問題なく到達できます、と言いたいところですが、勘違いをしそうなので順を追ってお話しましょう。

車道にも降り積もる落ち葉に気を取られていると、見過ごしてしまうような看板。
写真左に、表示が見えると思います。

ここが車道からの入り口。
山中であるために、どのようにしてその位置へたどり着けばよいのだろうかと考えていたところ、拍子抜けなほどにご親切な看板を見て安心してしまったのが、この後の間違いを生むのです・・・

トレッキングコースに指定されている山だけあり、踏み分け道のように進むべき道があり、安心して歩を進めていたところ、また親切な看板にであいます。

まだ道路から下り始めてすぐなのに、もうあと40mなの？
クマさんの恐怖が濃い秋。
その上、カツラの巨樹への到達にはいつも勇気を振り絞らねばいけない経験が多いことから、この40mというには、嬉しさ以外の感情はないのです。

もちろん、看板通りに分岐を右折し大カツラのもとへ一目散！

のつもりだったのですが、ここで落とし穴（汗）にはまらないように気をつけねばなりません。
視覚とそれによる思い込みは恐ろしいものです。

40mの思い込みが目的地を見誤る数字になるかもしれません。
それはすぐにわかります。
分岐を下り、目の前に姿を見せるカツラ！

大きなカツラです。
看板からすぐ、容易に到達できる距離は、40mを疑いません。

もう着いたのか。
早々に撮影をして、小トチを捜索せねば・・・
そう考えていたのですが、少し心配になり事前資料を確認すると、どうも大カツラとされるものとは樹形が異なる。

大カツラを紹介している写真も、上のようにカツラの樹幹に人がいるものなのですが、どうも違う。
アングルか？！と思っていたのですが納得できず、小トチ捜索とともにもう少し先へ進むこととしました。

するとどうでしょう。
やっぱりです。

谷のような地形に現れた、こちらが本物の大カツラ。

巨さは、先のものと写真での判別はしづらいかもしれませんが、納得のスケールです。
本当は、想像していたのはもっと「ひこばえ」が林立する近寄りがたい雰囲気のカツラだったのですが、それでも立派なことに変わりありません。

そのうえ、大トチに続きカツラの巨樹（サイズは小ぶりなものも含め）3本もの巨樹に逢えるのですから満足しないわけはありません。
それに前回冒頭でお伝えした通り、季節は最高でしたので心地よいことこの上なし。

そして、事前情報通りの位置へと進ませていただきました。

手前のカツラとの違いが分かってもらえるでしょうか。

驚くほどの違いが見えないかもしれませんが、現地では「こっちが本物！」と納得するはずです。
詳細なサイズの記載や、案内看板は見当たりませんでしたし、カツラの巨樹として全国区になるにはまだ時間が必要かもしれませんが、とにかくたどり着けたことに安堵したのです。

道路沿いであれば探すことは比較的容易ですが、目印のない山中ということでかなり時間を要してたどり着けないということも想定していたものの、看板のおかげで？！、いや看板を信じ切らずにたどり着くことができました。

志多備神社のシイにしてもそうですが、樹種名だけで容易に発見できたと勘違いする場面は多くあります。
同一樹種の、そこそこ立派なサイズのものが、目的の巨樹の手前に存在するとき。
今までに何度も経験があるために、今回も先に進んでたどり着きました。

さて、安心したのもつかの間。
もう一つの目的地、小トチの捜索が残っています。
次も「看板トラップがあるのではないか？！」、という疑心暗鬼の中、大カツラを離れる前の「カツラの中」からの黄葉は、クマさんをすっかり忘れる美しさ。

もう少しだけ、あと一回続く君尾山巨樹シリーズ。
次回は最終、小トチに向かいます！

君尾山の大カツラ所在地

京都府綾部市五津合町不毛

緯度：35.3923556
経度：135.4393482

道路に駐車して下山方向になります。

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2024年08月26日

畏怖と恐怖と美しさと・・・～君尾山のトチノキと小トチと、大カツラ行脚～

ネタバラシしますと、今回の巨樹記事は10月に木材仲買組合で掲載予定の、材木屋の巨樹木甦のネタです。
そちらは一般公開されていませんので、皆さんの眼に触れることは今のところないのですが、そちらの記事の方は文字数の加減で割愛せねばならない部分が多いので、一部の巨樹では執筆中から「続きはブログで！」と表記したくなるものも少なくないのです。

そしてもう一つ。

今回紹介するのは、直前に報告した小黒川のミズナラの倒木の報をうけ、倒木するまでにその姿を紹介したい！という一念が沸き起こったからなのです。

木材に限ってのことですが近畿圏は、広葉樹のイメージは無いかもしれません。
各地で紅葉が見られるため、広葉樹はあるのですがその木材の産地というイメージはありません。

そういった材木屋の偏見を覆す広葉樹巨樹は、兵庫県のカツラや京都府のシイなど多くあるのですが、今回はスケール感も十分なうえに存在感抜群、そして今後の維持が気がかりな「トチ」についての記事です。

トチは、先月のアカクボ沢の大栃で見事な姿を紹介しましたが、今回もすごいですよ。

細い山道を車で何分上がっただろう。
途中の駐車場を越えて、山道の徒歩に入る手前の小さな駐車スペースに車を停めて、大トチへ向かいます。（車で上がったその理由は、後ほどすぐ分かります。）

思い立って向かった季節がちょうど紅葉！
道のりは美しい紅葉のトンネルよろしく、がさがさと歩を進める「落ち葉の音」とともに「山の香り」を「カラフルな視覚」で演出してくれる、最高の季節。

その心地よさは、やはり山に入る行為そのものの記憶としてインプットされます。
後に出てくるのですが、当地はトレッキングコースとして麓から登ってくるルートが多いのも上記の素晴らしい景色があるからです。

それでも、車で登ってくる巨樹マニアの担当。
それは、もちろん恐怖の「黒いアイツ」に合わないようにするため、です。

最近は、合図すると「エサ」だと思って反対によって来るという話も耳にするアイツ。
しかし、出来ることはすべてしておきたい？！という自己防衛反応から、無駄に打ち鳴らしてしまう鐘。

それにしても、よく整備されています。
チェーンソー作業された跡もみかけますし、踏み分け道という感じではなくきちんとルートが分かるようになっています。

看板も分岐ごとに設置されていて、迷うことはありません。
看板に従い歩くこと20分弱（のはずだけど、不安で長く感じるだけ？）、見紛うことのない目的地にたどり着きました。

想像はしていたものの、頭で理解している幹周りの数値や情報よりも、圧倒的な存在感を見せられた時は、やはり言葉を失うというかゴクッと喉がなる畏怖の緊張感があります。

完全に、標高の高い山の中という環境もあるのでしょうけれど、見事な姿だと思います。
君尾山のトチノキ（以降、大トチ）です。

立っているのは急斜面。
周囲はおそらく、以前は整備がされていたのであろうと思う、開けたスペースになっています。
そのため、大トチのみが存在するその場所が一際目をひくのです。

実は、この大トチを目にする前に視界に入るのは、手前にあるカツラなんです。
普通に出逢うと、嬉しくなるようなサイズのカツラ。
敢えて写真は出しません（次回以降の為に・・・）が、そのカツラの存在がかすんでしまうほど際立っている、といえばいいでしょうか。

京都府綾部市観光局のページによると、幹周りは10.4m、樹高は23mというデータ。
それだけでも、巨樹としては十分です。
というか、幹周りでは全国のトチの中で第三位だというではありませんか！

さすがは、京都府自然200選において光明寺の「幻の大トチ」と称されるだけはある迫力！

担当が判断する基準としては、幹周りが10mを超えると出逢ったときには感嘆する場合が多く、10mという数値はその期待値を刺激するものなのですが、今回はその環境、そして立地、そしてトチと言う樹種とともに京都府であるという意外性とともに、担当の心に刺さってくるのでした。

道程でも感じていましたが、針葉樹人工林であろう部分もありつつも、足元は広葉樹の落ち葉で一杯で、特に大トチの周辺は早々に落葉するカツラがあることと相まってか、若しくは11月下旬の遅い紅葉だったからなのか、紅葉の絨毯と化していたことで近畿圏だとは思えない光景に、勝手に異国感（？！）を感じていたようです。

そんな感動の対面だったのですが、感動ばかりではいられません。

巨樹には避けられないことですが、大トチはすでに幹の半分、否半分以上？を失っているのです。
その理由は知り得ていませんが、巨樹には避けられない枯損や、中心部分の損失による割裂などが原因かと思われますが、斜面上部は空洞と化しているのです。

この状況が、担当に危機感を抱かせる一因です。

立地が急斜面であることに加え、斜面下方に向けて枝が張っている事（樹木の性質としては当然？！）とともに、木材とした場合には特段腐朽に弱いトチという樹種であること。
それらが複合的に頭を巡り、よくぞ倒壊せずにいてくれるものだ、と感じてしまいます。

実際、以前は保護用のワイヤーも多く機能していたのかもしれませんが、既に周囲の木柵も朽ちていたりして、保護されている感はもうありません。

それが何を意味しているのかは別として、よく耐えているものだとしか思えません。

ただし、柵が残っていれば踏み入れていない部分に踏み入れているのかもしれませんが、大トチのスケールと斜面の斜度をはかる位置に立てることは、視覚的情報をお伝えできるという観点では望ましいこと。
（という、いきなりの昌志メーター。若干遠近法で担当が小さめですが、まぁ、本当にこんなイメージ！）

見てくださいよ、この斜度。
私、めっちゃ踏ん張っているのです。
埋もれながら。

根を傷めるという心配も、ハイカットの登山靴がそのハイカット部分まで埋まってしまうほどの落ち葉の絵要であることを考えれば、土の踏みしめ効果は薄いのでは？！と良いように考えてしまうのですが、出来るだけ近づかない方がいいですね。

よくぞこの巨躯を維持しているものだとしか思えませんが、内部には大きなキノコ（サルノコシカケ？！）が多数あり、自然の流れとはいえやはり倒壊の危機感がぬぐえません。

ゆずって、倒壊することももちろん自然のままであり、それが自然界の遷移でもあり、巨樹で問題になる人家や生活への影響もない当地であれば、人知れず次の世代に命を繋ぐ・・・ということもあるのかもしれませんが、春埜杉やぎふのおやこすぎのように、信仰対象としての高山のスギと同じく、現代でのトレッキング後に拝謁する山の神の如く、その神聖な巨躯を維持してほしいと思うのは、単なる巨樹好きのエゴなのでしょうか。

残った周囲の樹皮？にも、大きく孔が開いている部分も多数。

今後どのように残っていくのか、それとも自然に還る日が近いのかは定かではありませんが、無くなって悔やむ投稿にならないうちに、その雄姿を紹介したい一心の今回。
少しはその存在感が伝わればうれしく思います。

さて、大トチのそばのカツラには少し触れましたが、実は別途トレッキングガイドを見ているとなんと、トレッキングコースに大カツラや小トチなるものがあるではありませんか！！

太田の大トチノキにも、少し離れて子トチがありましたがあちらは字違い。
こちらは小トチです。

いずれにしても、逢いに行かないでは帰れない！
ということで、夕刻迫る中大カツラと小トチの捜索に出たのでした。
次回に続く・・・

君尾山のトチノキ（光明寺の「幻の大トチ」）所在地
京都府綾部市五津合町大ヒシロ（天然記念物指定所在地）

緯度：35.3958121
経度：135.4380587

道路脇に、わずかに駐車スペースがありますが、基本的に狭い道なので手前で駐車して徒歩になることもあります。

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タグ：: 巨樹; 巨木; 所在地; 京都府; トチ; 大トチ; 栃

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2024年07月19日

森に包まれる感覚を・・・～アカクボ沢の大栃～

当たり前のことですが、拙記事は巨樹訪問記がメインではありません。

ほぼ月一回ほどのペースで投稿はしているものの、業務や木材に関することがメインのページですので、巨樹専門の写真家さんや訪問記ページを主催されている方には、内容は到底及びません。

個人それぞれ、訪問記も異なり感じ方も異なるので、並ぶつもりもないのですが、それでもネット記事に詳細の記述がないものや新しく発見されたものなどには、非常に興味をそそられてしまうのは、仕方のないところ(^^;)・・・

今回訪問の場所も、近年までは知られていなかったようで、それも森の中に佇んでいるということで、心躍らせ行ってまいりました。

場所は、急峻な山道が続く静岡県の山間部。
九十九折れ道の運転が好きなタイプの方には爽快ですが、助手席での同行者がある場合や運転に苦労を感じる方にはおススメできない場所。

都市部からどれくらい走ったか、低速で長時間運転しているので距離はそうでもないはずなのですが、とにかくハードなヒルクライムドライブ。

目的地が森の中、ということで進入する目印を見落とさないように運転していましたが、意外と目立つ場所に看板がありました。

見落とさないうえ車も駐車できるいい環境。整備、ありがとうございます。

車を止め、森の中へと「降りて」行きます。
車で登ってきた道とは違う山の中を歩いて降りるのですが、これまたきれいに整備された木階段があるので、運動靴であれば楽勝で行けます！
本当に感謝。

明るく整備されたスギの木立の中を、帰りののぼりの体力が心配になるくらいの勾配を下っていくと、川のせせらぎが聞こえてきます。

下り勾配が終わり、平坦になりつつある踏み分け道のようなところを、少しづつ右手にすすんでいくイメージで歩みを進めると、視界の開ける場所に出ます。
そこが目的地。

下りきる手前にも、トチの大木があるのでお間違いのないように・・・

下りきって開けた場所で出逢えました。
アカクボ沢の大栃。

先ず、この石垣は一体何の為に積まれているのだろう。
炭焼き？窯があったのか？

森の中には人の生活と次代を映すものが多々みかけられますが、特に巨木のそばにそういった痕跡が見られると、その歴史について知りたくなってしまうものですね。

といいつつも、実は現地では意識は石垣よりもやはり、大栃。

期待通りの立派な出で立ち。

沢沿いの谷地のような場所に、すっぴりと納まっているかのように大栃が鎮座。
周辺のスギ林の勢いも、まるでトチに遠慮をしているかのように、空間を明け渡しているかのようです。

もちろん、林業のみなさんにより、大栃の周囲も整備されているのだろうことを想像するのですけれど、それを差し引いても際立つ存在感に、かなりの間、近づかずに遠目に眺めたくなりました。

人間の眼は、カメラとは違いかなり広い範囲を全体的に視野にいれつつも、見たいポイントを無意識と有意識と双方で選別しながら、断片情報を組み立てて脳裏に映す事ができる為、森の中の全体の雰囲気とその巨躯の双方を感じられる、遠目に眺めるスタイルを無意識に選択したのだろうと感じます。

少しして近づいてみると、遠景とはまた異なる表情を感じます。

遠目にはあまり意識しなかった、うっすらとトチを覆うコケ類。
そして、幹のくぼみに着生する別の広葉樹たち。

森の生態系を受け止めているかのような雄大な大栃の姿に、街からの訪問者である自身も受け入れてもらっている様で、心地よいのです。

その上、担当が訪れた時期が新緑溢れるタイミングの良さで、とにかく気持ちいい。
気持ちいいのは、見上げる景色がこの緑だから。

単なる緑ではなく、この日も汗ばむほどの日光の強さだったものの、日本産広葉樹の中でも最大級クラスともいわれるその葉が、日光を適度に遮りながらも透過させ、同じ色の緑ではなく、様々な色合いに感じさせる不規則なリズムが、気持ちよさに通じるようです。

それに、そばを流れる川のせせらぎが、清々しさを増すのです。

それらは、1/f ゆらぎであったりフィトンチッドであったりするのだと思いますが、巨樹に抱かれているような感覚と、誰もいない森の中で巨樹と対峙している幸せが、心を高揚させるとともに体の落ち着きをもたらしてくれているのだろうと思います。

また、今でこそ普通は知られていないかもしれない、これも見られます。

クリ、じゃないですよ。
いや、海外ではほぼクリ扱い？！の話題は木まぐれコラムにて紹介していますが、なんせ Horse Chestnut なんだから、クリでもいいのかもしれませんが、これは栃の実です。

あちこちに、この大きな栃の実の殻が落ちています。
人間にとっては今では、まったく重要ではないかもしれませんが、お土産などでは目にする栃餅のもとがこの実。

巨樹そのものだけではなく、このような実や葉っぱ、そして皮の具合や枝張りなどを観察することも、地域と樹種との関係を知る手掛かりにもなります。

雲が移動し、見る角度によってはかなり強い日差しが差し込む日中。

裏側？！からの姿をカメラに収めようとするも、強烈な逆光に閉口（汗）。
しかし、巨樹にはアルアルですが見る位置により印象が変わるのは、大栃も同じでした。

正面からよりもねじれたような印象と、生長の途中で背面が開けたのか、その方向へ大枝をのばそうとするような印象を受けました。

樹木は、環境による影響を大きく受けます。
歴史を物語る、とでもいうのでしょうか。

単なる個人的な想像の域を出ませんが、そんなことを現地で考えながら居ることも、巨樹との対話の様で楽しみの一つです。

そして、こちらも巨樹にはつきものである洞。

大枝を枯損したのでしょうか。
ぽっかりと空いた空洞部分は、おそらく樹芯近くまで伸びていると思われるので、時間とともに中心部が空洞化していくのだろうと考えます。

もし枯損していたのであれば、幹そのものに大きな損傷が無かったことが救いではないかと思いますね。
稀に、樹皮や幹そのものが、枝の重さで一緒に引きちぎられるような場面もありますので、洞の周囲が巻き込んでいることを考えても、損傷は少なそうです。

強すぎる日光を避け、心地よい大栃の木陰に入っている写真、のはずだったのですが意外と暗いですね・・・
現地ではこれくらいでちょうどよいほどの日差しだったのですが、写真難しい・・・・・

それでも、大栃の右側に居る担当との巨さ比べは感じて頂けるかと思います。

堂々とした太さ。
そして、この姿がまだそれほど有名ではなかったという事実。
地域の皆さんに大切にされてきたことは、非常にうれしく思います。

そして、このような訪れる人にとって快適な環境を整備してもらっている事にも感謝。
自然そのままが良いのかもしれませんが、スギ林は手入れをされていますし、森の中ですが人間の関わる森。

大栃を大切にする気持ちをもって森にも関わることは、自然を荒らすということにはならない、と思います。
もちろん、訪問の節度は大切ですので、感謝の気持ちをもって訪れたいものです。

心地よすぎる環境と、太陽により刻一刻と表情を変える大栃に魅了され、気がつけば訪問から3時間が経過！（笑）
どれほど心地よかったのか、想像して下さい(^^♪

名残惜しくも、この後の帰阪の時間を考慮し大栃に別れを告げました。

アカクボ沢の大トチ１１

そうそう、どれほどトチの葉が大きいのか。
わかるでしょう？！
担当の顔など覆い隠し余りあるほどの大きさ。

ホオとともに、森でこの大きな葉っぱを見ると自身の存在をアピールしているかのようで、ほっこりとします。
この葉は、大栃のものではなく駐車スペースにある一般的なトチのもの。
本当に大きい・・・

こういうことも、経験すれば森を考えるきっかけにもなると思いますから、やはり経験してもらいたいことの一つ。

本当は、こんなに素晴らしい大栃で締めくくりたいものの、奥が深すぎるのが静岡県。
実は、ここからさらにヒルクライムした後の山住神社に、スギの巨樹があるのです。

ここまで来たならば、必ず訪れたいものですからもし訪問されるのであれば、時間配分をお間違いのないように（笑）。

それにしても、とにかく心地よい新緑の季節の大栃でした。

アカクボ沢の大栃所在地

静岡県浜松市天竜区水窪町山住

緯度：35.14833333
経度：137.90444444

駐車スペースあり（山道の途中です。通行の妨げにならないように。）

詳細な案内は、水窪山に生きる会さんのページに公開されています。

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2024年01月11日

大トチノキのあとの「子」、ではないスケール・・・～太田の子トチノキ～

先日の大トチノキ、少し残念だったと思われたかもしれません。

普通、日本一は偉大で絢爛な印象に飾られるのかもしれません。
しかし、大トチノキは担当の知らない往時の勢いはなくしているように感じられました。
それでも、その邂逅は非常に想い出深く、訪れることができてよかったと思ったもの。

そして、大トチノキを目指す前にその所在地を地図上に落とし込んでいたところ、なんと「子トチノキ」という表示があるではありませんか！！

え？地図に出るほどのものなの？それとも、大トチノキとの対比で紹介されているだけなの？！？
興味をそそられるのは当然で、大トチノキとともにあってみたくて仕方ありませんでした。

先に大トチノキへのあいさつを済ませ、地図にある地点に向かいます。

大トチノキの前の林道（作業道っ！）を挟んで反対の斜面に、ご丁寧に看板がありました。
ここが入り口でした。

一応、案内板には「遊歩道」ということになっていますが・・・と言葉尻は気にせずに踏み分け道を進みます。
クマさんが恐ろしくて仕方ないので、どれくらいの時間で到達したのか記憶にありませんが、すぐに到着くらいの距離でした。
一安心。

スギの根曲がり木に囲まれた先に目にした子トチノキは、決して「子」などではありませんでした。

もちろん、そのスケールや単純な巨さでいうと大トチノキは偉大なのですが、一般的に考えれば子トチノキでも立派なトチの巨樹です。

何せ幹周りは、現地の案内板によると8.15m。
大トチノキや分岐幹のトチを除くと、堂々の巨躯です。

実は、マップアプリには大トチノキに対して「小トチノキ」と記されています。
なんと失礼な、と思いませんか？

担当も当初は、大トチノキに対しての子トチノキとしておくほうが、名所としてよいのかもしれないな、と想像をしていたのです。
完全に失礼でした。

大トチノキには近づくことはしませんでしたが、子トチノキには近づかせてもらいました。
（あとで気が付いたのですが、やはり案内板には近づかないで下さいと・・・・。というより、折損している枝に近寄らない！！これはダメな例です！）

本当に、「子」なんてことはないんです。

ましてや「小」でないことは間違いないですよね。

惜しむらくは、担当の訪問時には大枝が折損してしまっていたこと。
これが広がっていれば、さらにスケールを大きく感じたことだろうと思うと非常に残念ですし、主幹上部にほとんど枝がないのです。

どうしてか。

大枝からも小枝をだすものだろうし、上部があまりにもさみしすぎる。
落葉したからということだけではなく、生長点になるはずの頂部が欠損しているように見えます。

その上、枯損した部分も空洞化している様子で、健康状態が少し心配。

巨樹であり、風雪に耐えてきた証拠でもあるのですが、斜面下部をのぞくとさらに別の大枝の折れたものがころがっていますから、巨躯を支える力が少なくなっているのかもしれません。

そのうえ、子トチノキの斜面上部に回ってみると、主幹下部の地際にも空洞が大きくみられ、内部は相当空洞化が進んでいることが推察されます。
それ自体は悪いことでもなく、自然の流れではあるものの、さらに拍車をかけるように主幹のあちこちに菌類が育っています。

それは、一目見た瞬間から感じられた不安の色でした。

遠目からでもわかる、幹の不自然な白色や橙色。
そこには多くの「キノコ」が。

これも自然の摂理といえばそれまでなんですが、大トチノキにどこかさみしい姿を感じた後ですので、子トチノキにまで寿命の梁の進みを感じることになり、巨樹に出逢う喜び以上に複雑な気分になったことを今でも忘れません。

大トチノキが天寿を全うしても、子トチノキがそれに続くのだろうと想像して向かったものの、状態は疑問符が残るように感じました。

さて、大トチノキと同じくこちらも、写真アングルが限られてしまいなかなか良い塩梅で写すことができません。
足場が限られることや、平坦な場所があっても一部分のみで先は崖、的なためです。

そのうえ、周囲を歩くことを拒否するかの如くの「トゲトゲ」がたくさんあり、まだ夏の気配が残る季節には肌を痛めつけてしまうのです。
それでも、この山中によくぞ残ってくれたと思う子トチノキ。

大トチノキが近くになければ、立派なトチの巨樹であることを誇られるものでした。

担当が訪ねてからでもすでに数年。
子トチノキは今頃どうしているのか・・・

自身の愛車では二度と訪れたくない場所ではあるものの、その後の大トチノキと子トチノキが気になって仕方がないのですが・・・

いつものように、テンションの上がる訪問、ではなかったものの当時の姿の記録としてここに残すことといたします。

太田の子トチノキ所在地

石川県白山市白峰

緯度　36.1381173
経度　136.6146841

林道の終点は広くなっていますので、駐車は可能。
ただし、文中の通り普通車（低床、2輪駆動）や運転に不慣れな方は、車での訪問はおすすめしません。
大トチノキから林道を挟んで反対の斜面少し下に、子トチノキへの踏み分け道があります。そこから数分行くと開けた場所に立っています。

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タグ：: 巨樹; 巨木; 所在地; トチ; 栃; 石川県; 太田の大トチノキ

muku_mokuzai at 13:30│コメント(0)

2024年01月08日

忘れられない邂逅　～太田の大トチノキ～

以前から、年始の休暇明けの巨樹記事は日本一、を掲載することを意識していました。
どこか縁起がいい、というか日本一で始めるっていいな、位のことだったのですがそんなに日本一ばかりを追い求めているわけではないので、近いうちにネタ切れになる。
なので、数年続けて以降は自分の中での日本一もオッケーにしよう！、といういい加減なルールを適用してきたわけですが、今年は正真正銘の日本一で始めたいと思います。

といいながら、本当は一番最初に頭に浮かんだのは元日の能登半島地震のこと。
被災された地域のことを思うと、単純に新年を祝うという気持ちで進むことはできません。

担当にできることは、新年の巨樹記事において被災された県の日本一の巨樹を紹介すること。
能登半島地震を忘れないことだと思い、巨樹の記事を綴ることにしました。

震央地となった能登半島は石川県。
弊社の取引先の企業もあり、状況に胸をいためています。

石川県には、樹種だけにとらわれず様々な観点での日本一の巨樹が存在しています。
しかし、その中でも疑いもなく樹種での巨さ日本一として紹介するのは「太田の大トチノキ」です。
それは、巨樹を追うものとしては必ず訪れたいうちの一つ。

大トチが佇むのは石川県白山市。
ある事前情報によると、大トチノキの前まで道路が整備されていて車でいけます、とのこと。
日本一に車で行けるなんて！、と喜んでいたもものの・・・・

国道から大トチノキへと向かう道は、間違うことのない看板があり道路幅も広く、安心して向かっていける、はずでした。途中までは。

登り始めてすぐ、仕事では通りなれた林道となり、次第に締め固められていない砂利道となります。
そして気が付けばタイヤが食い込むほどの緩い砂利＋勾配、それに追い打ちをかける曲がり角度！

いや、大げさかもしれません。
しかし、乗用車であれば四輪駆動で車高の高いもので、砂利での傷を気にしないものをおすすめします！というくらいに担当には厳しく感じました。
たぶん状況は伝わらないだろうけれど、車重が軽い二輪駆動の後輪駆動車では登れない！！！！！！！
びっくりマークが足りません！

本当に登れない。
事前情報では大トチノキまで車で行ける、を信じて来たのに、しかも雪道でもないのに砂利道でスタック（車が身動きできなくなく）しかけてしまう。

写真では伝えきれない、行くてを阻む轍（エアロ車と乗用車はオイルパン破損注意！）とこの勾配・・・（水みちできてるし・・・）

車で行ける、とはどんな車なのか・・・
ラン〇ク〇〇ザー限定の情報なのか・・・
そういった思いが頭をめぐりつつ、ドラテクで（いや、本当に・・・）なんとか登っていく。

途中の急勾配も、5回のトライののち（車の限界！）なんとか登りきり目に見えた光景に感動。
スギ人工林の間に、ぽっかりと空いたスペースにあるのが、日本最大のトチ。

到達までの苦労、それが伝わらないのと同じくらいにこの邂逅の気持ちは伝わらないことでしょう。
途中、どうしても車が上がれないかもしれない・・・。
そう思い、歩いて上がることも考えたものの、時間がかかることと車を置いていくスペースのないこと、その上もちろん最も警戒するクマとの遭遇を避けたいこともあり、決死の覚悟で車を進めた結果の出逢い。

サイズ感は、文字でお伝えしましょう。

幹回り12.38m。

担当の感覚では、巨樹は幹回りが10mを超えると驚くスケールに感じられるもの。
単幹で10mを優に超えているうえ、山中の佇まいは残っていることが有難いとすら感じられます。

多くの支柱に支えられた姿。

ネット上に見られる写真の多くは、緑をたたえていたり「迫力の巨樹！」さながらの写真が多いのですが、担当が訪れた当時（今から数年前）は、ご覧のようにコケが生えだし不朽に進む途中にある支柱と、弱弱しくさえ感じる支柱に支えられている葉のない大トチノキでした。

風雪耐え抜いた老大樹、という雰囲気は確かに感じられます。
しかし、どこかさみしい・・・

その理由は、先ほどの道程にてあきらめなかった「携帯電波が届かない」ことも一つでしょう。
止まってしまっても助けてもらえない。
クマに遭遇しても、連絡をとれない。
それが気になって仕方ないのです。

そして、終点であるとはいえ林道がついているために、今でもいくらか往来があるはずの場所で、周囲も明るいもののどこかさみしい。

やはり、その姿は迫力というよりさみしさを感じるのかもしれません。

未だ紹介できていませんが、京都府で出逢った大トチも同様に、主幹はすでに大きな洞になっているのと同様に、太田の大トチノキもかなり以前に処置されたと思われる保全痕が見られますが、それも現在は機能していない様子。

トチは、木材とした場合は非常に菌類や水分に弱く、腐朽が非常に進行しやすい樹種です。

その固定観念が、樹木としてあいまみえる巨樹にもフィルターとして見えてしまうからでしょう。
その存在を、風雨が損傷するような気がしてならないのです。

もちろん、自然の中でそのままの姿を維持することは不可能ですし、いつかは寿命が尽きてしまいます。
それが自然。

しかし、どうしてもいつまでもその姿を残してほしいと思ってしまう。
それが少しさみしく感じるのでしょう。

既に朽ち、はずれてしまったと思われる看板が、根元に立てかけられていました。

文字はまだ読めますが、これが近いうちに判読できないようになっていくのでしょう。
周囲の枯葉はいつのものか。

もしや、すでに生命を維持していないのではないか・・・
そう感じてしまうのは、山の中で一人この日本一の巨樹と対峙しているからです。

樹木は中心部分の幹が普及しても、生命活動は維持できる。
わかってはいても、心配してしまいますよ。
だって、推定樹齢は1300年だそう。

1000年を超えるんですよ。
1000年といえば、屋久島のスギが屋久杉を名乗れるようになる月日。

樹木として、一般的に数百年生きれば相当な長命。
すべての樹木が1000年の時をいきられるわけではありません。

その年月が、出逢いの感動を与えるのは当然のことですが、今回に限ってはこの大トチの生命力がどれほどの余力を残しているのかが気になって仕方ありません。

なにせ、訪問は9月末。
紅葉で葉をすべて落とすには早すぎるような気もして・・・

幹が分岐せずしているものを合わせても、これほどの幹回りのトチはほかにないといわれます。
そして、単幹のものに限っては12mに迫るものはないのですから、特別感はこの上ないのです。

風格も申し分なく、林道が無ければ到達は容易でないうえに、積雪などがあるとなると山中の神木と呼ぶにふさわしいと感じます。

周囲は木柵が「あった」ものの、すでにその形状を保持しておらず、立ち入ることは容易です。
しかし、その姿を見るとその幹に触れたいものの、安易に近づくこと許されないようにも感じます。

自分一人の足跡が、もしこの1300年の命に傷をつけてしまうとすると・・・
そう思うといつもの担当との巨さ比較は憚られるところです。

そのため、自ずと写真ポジションも決まってしまい映える風景になりにくい。

しかし、それが訪問時のリアル。
担当の感じたそのままの感覚です。

20年ほど前には、主幹の上部の孔にも蓋があったそうですが、それも現在ははっきりと視認できません。
洞に水がたまるということは、腐朽が進んだり土が保水しやすく根腐れなどの影響があるのでは、などと邪推を呼びます。

冒頭の、訪れたい気持ちの大きさは、これらの要因から「万一寿命が尽きる時」の前に逢っておきたいという気持ちからです。
そうなってほしくはないものの、自然にいつかは訪れるその時までに・・・

私の寿命までに、その時が訪れるのかはわかりませんが、お互いの限りある命を確認しあうような出逢いになったような気がします。
また逢う日が来るのかわかりませんが、忘れられない邂逅となった石川県の日本一。

太田の大トチノキです。

おっと、これで終わりではありません。
ネット地図にて所在を確認したら、すぐ近くに「子トチノキ」という表示があるではないですか！
これは尋ねないわけにはいかない。

大トチノキを継ぐものとしての子トチノキなのか。
その真偽を確かめに、次回捜索に入ります！

太田の大トチノキ所在地

石川県白山市白峰

緯度　36.13866667
経度　136.61397222

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muku_mokuzai at 13:30│コメント(0)

2023年07月16日

七夕過ぎても出逢える姫君～糸姫の栃～

材木屋として見ている木材の栃（以下、トチ）のイメージは、いまや高級品！です。
一般的には「いまや」は余計なのかもしれませんが、それこそがトチなのです。

樹木ではなく木材としての価値評価は、節がないということとともに、美観や耐朽性、多様な寸法が木取できるか、用途としての性質に耐えるかなどが指標でした。

でした、としたのは現在ではそれだけではないからです。

トチだけではなく、シナなどの木材がそうですが芯材もあまり着色しづらい樹種は、相対的に耐朽性が低いため汎用性が低いことと、それに伴う用途が限られ木目も華やかではないことから、今までの木材利用では重要とされてきませんでした。
それは担当の実感であり、古い書籍を見てもそのような記述ばかりです。

しかし、決してそう卑下されるものではないことは、近年の木材利用と人気を見れば明らかです。
どうしても、そんな材木屋目線の考えをしてしまうトチ。

木材として人気の理由の一つは、大きなテーブルサイズの木材ができるから。
弊社でもよくご来店いただきますが、ダイニングテーブル用の材として非常に人気なのがトチ。

大きな材がとれる、ということは巨木に育つということ。
今回は、そんなトチの巨木の一つであり、また美しい名称をもつものをご紹介します。

岐阜県郡上市。

関西地方からのスキー、スノーボード客も多く押し寄せるスキー場が集まる奥美濃地域。
そのスキー場への道すがら、山中に足を踏み入れた場所に、お目当てのトチは立っています。

担当は、普段この地域には冬にしか訪れません。
言わずもがな、スキーの為なのですがだからこそ、雪のないシーズンにそこに行くのが少し変な感じがします。
といっても、郡上市にもさまざま巨樹が存在していますので、まだまだ紹介したいところなのですが、今回はあまり好きではない山中の巨樹です。
山中、という表現は正しくないかもしれませんね、茂み？中という感じでしょうか。

グー〇〇マップでは、近くにある「西日本最大スケール」のスキー場の写真が表示される当地。
国道158号の道の駅大日岳をこえ、さらに北上。
マップ上では廃棄物処分場の東、長良川のすぐ東そばになるのが所在地。

文面ではわかりづらいのが、山中の巨樹。
実際には、道の駅近辺から林道を入るので地図表示ほどは茂みを行かずともよいものの、上の写真のような場所です。

そこにひっそりとたたずんでいるのが、糸姫の栃です。

実は、担当が訪れたのはもう10年前。
もしかすると、もうこの看板ではなくなっているかもしれませんが、平成時代の歴史を感じる解説板です。
巨樹の中で、訪問する人が多い場所や有名で観光名所化しているところなどは、老朽化の前に看板が立て変えられることも珍しくないのですが、ここはどうなっているのか気になります。

この毛筆っぽい書体が、どこか歴史を感じさせるのでしょうね。
それにもう一つ、文面を見ると「高鷲村」との表記。

現在、高鷲という名はスキー場の名称にも残っていますが、現在の郡上市。

さて、その郡上市のスキー場の谷間のようなところに位置する茂みをかき分け、進んだ先に現れるのがお目当てのトチ。

地上からすぐに分岐しているためか、幹回りは6mほどとさほどではないものの、巨さを感じます。
それ以外に担当の場合は、岐阜県＝熊！（すみません、でも本当）というイメージですから、夏に茂みに入るという行為自体で特別な感覚になっていることが理由なのかもしれません。

こんな場所で出逢う巨樹。
特別感がありますよ。
周囲は青葉、そしてすがすがしい緑の香り。
気化熱で冷えた空気に乗って鳥のさえずりが聞こえる環境は、ヴァーチャルでは味わえない感覚。

巨樹の記憶は、そういった環境とともに担当の記憶にきざまれるものなのです。

そしてもう一つ、巨樹感を思わせるのは主幹とは別に後ろに伸びる枝。
正確には、このトチのものかは定かではありませんが、それが樹木として広がりを感じさせるところがあるのかもしれません。

当地は一部、棚田状になった地形なのですが、このトチの上部には明治初期まで製糸工場があったそうです。
お察しの通り、トチの名称である「糸姫」というのはそこからとられたものであるのです。

製糸工場で働く「乙女たち（と解説板にある）」が、このトチの周りに集い話に花を咲かせたことから、糸姫の栃と称するというのです。
なんともロマンティック！！

実は、現地にいると枯損したであろう枝の空洞部分が、巨大蛸の目のように見え、伸ばしたそれぞれの枝が脚に見えて仕方ないので、全くロマンティックさはないのだけれど・・・

推定樹齢は250年ほどということですが、「乙女たち」が花を咲かせてから凡そ100年余り。
その間にどれほどトチが生長したのかはわかりませんが、枝に苔むす姿は巨樹の威厳を纏っているようですし、草木が生い茂るようになり、特定の訪問者（担当のような巨樹巡り）しか訪れることがないような状況になりつつあることを思うと、本当にひっそりたたずむ、という印象が強くなります。

岐阜県にはほかにも、以前に紹介した洞のカツラのように集落が移転し人のいなくなった場所に残った巨樹もあります。
もしかするとこのトチも、数年か数十年で忘れられた巨樹になるのかもしれません。

七夕は過ぎてしまいましたが、ここにいるともしかすると、製糸工場の乙女たちではなく、織姫がトチの枝に衣をかけて、長良川で水を浴びる姿が見られるのではと思ってしまいます。

さて、熊におびえながらの茂みではありますが最後のお仕事である比較写真を撮りましょう。
の前に、お断り。

訪れたのは盛夏。
エアコンの車内から出るとモワッとする熱気ですから、どうしても軽装で出かけたくなる。
こんなに茂みに入ると想像もしていなかったこともあり、半袖に短パンという恰好で挑んでしまいました。

熊には出逢わなくても、様々な虫もいますので皆さんはこんな格好では出向かないようにしましょうね
（汗）。
少し湿気のある緑の香りに包まれて、この後トチがどのような成長を遂げ、どれほどの人に出逢うのか興味が尽きませんが、出逢えたことに感謝し帰路につきました。

その途中も、夏用タイヤで走行している自分の車に違和感ばかりだったことは言うまでもありません。

糸姫の栃所在地

岐阜県郡上市高鷲町西洞

GISコード
緯度：35.99416667
経度：136.89333333

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muku_mokuzai at 13:30│コメント(0)

2020年05月05日

静かなゴールデンウィークには・・・

外出できない今年の連休。
私にとってはすごく都合がよくて、普段はできない書類の整理や写真の整理、先に必要になるものの用意などをしています。

もし移動できるのであれば、今すぐにでも出張したい場所はいくらでもあるのですが、そうできない間にしなければならないことが製品仕様の決定と販売方法などの詳細。
弊社は大阪の街の材木屋としては珍しく、山での原木伐採をしたり森林へのツアーをしたり、製材での物作りをしたりなど様々取り組みをつづけていますが、同時進行の企画が多いことと「自分がやりたいことをしてしまうこと」から、きちんとした計画がないまま進んでしまうのが悪い癖・・・

今も少なくとも3つ以上の企画を抱えていて、整理が出来ていません。
それを整理する機会と考えているのが今年のゴールデンウィーク。

賢い営業企画が出来る人は、街や人が求めるものを考えそれを具現化して商品とします。
おそらくそれは、マーケットイン。
対して、市場に出す商品を企画してそれを作り出して販売する。これはプロダクトアウト・・・
で、私は後者であるために、なかなか売りづらいものばかりを手掛けることになるのでは・・・！？と、博識の方には見通されたことがあります。
正直その通り。

もちろん、マーケットインは非常に大切な考え方ですが、プロダクトアウトも潜在的なニーズを掘り起こす製品を作ることが出来る方法としては、決して劣っているわけではないと思います。

しかし私の場合は、市場の潜在的ニーズというよりも自分自身が欲しいと思うものや、あればいいと思うもの、若しくはお勧めする理由のあるこの木材を使ってもらいたい！、というそんな「自分の気持ち」だけが先行している状態で物事を進めてしまうから、良いものである（と思っている）にも関わらず、非常に販売に苦労したりします。
そのおそれが現在の企画にもあるのです。

今回はその悪い癖を封じるべく、この連休の間に価格設定や販売方法、PR方法を考えておかねばなりません。
そのうえ、費用の事は後回しで進めているものばかりで、肝心の商品が出来ても開発費を回収できないという、商売としてあり得ない事態を起こしてしまいかねません。
こうやって告白をすることで、自分への戒めとしているのですが、うまくいくかどうか・・・

今ではクラウドファンディングなどで事前に資金集めをして、商品開発に臨むことが出来ますが、未だにインターネットの世界を信用していない私には、クラウドなど遥か遠い世界・・・
現実的に自社の費用をジャブジャブとつぎ込んで、販売して儲けが出せるのかわからない物を作ろうとしているのです。
アホです。本当に。

でも、自分が良いと思うものでなければいけない。
自分でも使いたいと思えるものでなければ喜んでもらえない。

そう思うからこそ、まずは自分が良いと思うものをつくり出そうと思うのです。
山での伐採授業もそう。
無駄にすることなく、伐採される立ち木を活かすこと。
現在進行中の広葉樹材企画もそう。
山からきちんと出てこないことで流通しない貴重な広葉樹を活かせるように道筋をつけること。

量を確保しにくい広葉樹は、使いやすい形の材にして届けられるように・・・
まとまって確保できたときに、小さな寸法のものも様々な形で使うことが出来るように、幅方向を接着でつなぎ合わせる「幅はぎ加工」をした板材「OPCボード」をつくること。
利用できること、需要がある事、そしてなにより製品にすることが出来るということを、山側に示すことで活用できる広葉樹が市場流通する可能性を増やすことが出来ると考えています。
広葉樹を使いたい声を届けるためにも、試作を続けて需要を作り出す必要があると考えています。

そして、銘木という価値に届かない原木を、本来求められる用途で現在の世に活かすこと。

現在では目にすることのなくなった、本来の適材適所での使い道をもう一度見直すために、日本のクリ材での土台角流通に取り組んでいます。

また、細くて量がまとまらないことで販売しにくい状態にある原木を、新しい用途として活用すること。

順調であれば、今頃実をつけて日本の広葉樹フローリングシリーズの仲間入りを果たしていたであろう、「キハダ」、「トチ」、「ホオ」、「ブナ」の原板たち・・・・・

これらすべてがチャレンジで、マーケットでの需要があるわけでもなく、消費者の声を聞いているわけでもありません。
ましてや、販売できる価格でできる企画なのかすらも分からない状態で進めている、という馬鹿さ加減。
もちろん世にないということは、儲からないか失敗するか、はたまた成功するのは非常に難しいかだと思います。
でも、それでも、活かしたい原木がそこにある。だから挑戦する。

自分がなんとか活かしたいと思う木がそこにある。
それだけが理由です。
だから、お金ではないことを始めてしまう。販売方法もお客さん像もないままに支払いリスクばかりをかかえながら（リスクでなく、デンジャーか・・・）・・・

そんなアホな奴ですので、少しづつ紹介していきます企画に賛同して頂ける方は、是非その商品を使ってみたい、欲しい！と手を挙げてください。
安売りはできないけれど、それ以上の見えない価値と見えない経費をかけた（涙）、お勧めできる商品をお届けします。

情勢が見えにくい世の中ですが、そんなことを日々考えています。
まとまった時間のある連休に、少しは商売に出来るように（？！）価格設定や販売方法を考えたいと思います。

そんなアホな企画ばかりの毎日ですので、いつも楽しみにしている趣味の読書の時間は、今年はお預けかも知れません・・・・・・・・

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muku_mokuzai at 18:24│コメント(0)

2014年05月23日

これぞ象の、脚ぞ想えし　～贄川のトチ～

2回にかけて「トチ」についてお話してきましたが、締めくくりはトチの巨樹のお話にしましょう。
あれだけテーブル材などの大きな木材ができるとお話してきたんですから、きっと大きな木があるはず・・・
そう考えながら山間などを見ていても、なかなか見当たらないものです。こと、私のいる地域大阪は、巨樹と言えば樟、といってもいい位に樟が多く（他では長野県の一部ではケヤキばっかりというのを経験しました）街中でも立派な木を見る事が出来るのですが、トチの木となるとなかなかお目にかかれません。

それもそのはず、トチの生育環境としては渓谷沿いに育ちやすいということなので、盆地である大阪近辺には巨木は見かけないのでしょう。
以前に「モミではなく栃（とち）の木は残った」という記事を書きましたが、その残ったトチが生育していた場所も、滋賀県の安曇川流域ということで、水のある場所でした。

今回見てもらうトチの木もすこし離れてはいますが、近くには川が流れています。やはり関係はあるのかな。

場所は長野県塩尻市贄川。
ここから有名な木曽路が馬籠まで続いていく、現在の国道19号沿いにご丁寧な見学駐車場という綺麗な看板が出ています。
とはいえ、歩道が整備されている区間を走っていると、道路際に聳え立っていると思しきトチを目当てに行く者には、民家のすぐそばに立っているこの看板は目に入りにくく通り過ぎてしまいそうになります。

道路際の説明板。
右に見える民家の進入路になっているため、まさか見学用駐車場だとは認識しづらいのです。実は一回通り過ぎてしまいました。
しかしながら国道沿いで駐車スペースを用意してくれているのはとても有難いです。
どの巨樹訪問においてもそうですが、ちょろっと眺めて帰る様な事は無いので、駐車スペースはいつも気になるところです。

有難い駐車スペースに車を停め（といっても、私が訪問したときは入り口にどっかりと積雪していて、流石に愛車のバンパーを除雪車代わりにそこに入ることが出来ずやむなく別に駐車したのですが・・・）改めて眺めてみると迫力があります。

雪景色でわかるとおり、冬が終わるころの為葉はありません。
これにあおあおと葉が茂っていれば、更に印象は変わったことと思いますが、それでも、山肌に太く大きく鎮座する光景は見事なものです。

ボコボコと隆起した幹は力強く、木材としての涼やかなトチの白さとは全く対極で、優しげなイメージを払拭されたような気分です。
そのごつごつとした樹皮にはカテコール系のタンニンがふくまれている事から、鞣革（なめしがわ）に使われるそうです。
またトチは、ナラなどのように薪炭材としての有用性は低いけれども、活性炭には白樺やハンノキとともに良いとされています。
また実に含まれる「サポニン」はシャボン玉の「シャボン」と同じ語源から来ており、その言葉のイメージ通りで、石鹸の代わりとして使うことが出来るといいます。

巨樹のこんなコブを見ると、不謹慎にも「どんな杢がでるんだろう・・・」と考えたりしてしまうのは、木が好きだとはいえ材木屋のサガ・・・
こんな明るい場所だとその想像もふくらみますが、神社境内や、薄暗い山の中の巨樹の場合はそんな想像をしていると、身震いしてきます。こんな感覚わかるでしょうか。

めちゃくちゃ綺麗な看板。最近新しくされたのだと思います。
落ち着いた赤紫地の木目のパネルに見やすくかかれています。ついつい、この看板の樹種は？！と思ってしまいますが、印刷とはいえローズウッド系の杢柄か、と読み進めると最後に「ウェンジ」の文字が・・・
何？ウェンジの柄なの？！と我が目を疑うも、よくよく読んでみると樹幹下の祠が「ウエンジン様」とよばれているそうな・・・
なんとも早とちりな勘違い。職業病ですな、これは。
トホホなオチでした。

さて、長野県の天然記念物に指定されている贄川のトチ。
その立派な体躯からすると指定は当然のこと。
しかし驚くのはその樹齢。
なんと約1000年とあります。
各地の巨樹である杉を含む屋久杉やクスノキ、巨樹になるイチョウなど様々ありますが、しかしながら前回までに書いたように比較的大きく育つトチが、この大きさで1000年ということに対して驚きました。
1000年もたてば更に巨大になっているのかと思っていたからです。
もちろん無尽蔵に大きくなるわけではないのですが、このトチの歩んできた1000年という月日がどんなものだったのか、ふと思い耽ってしまいました。

廻りが雪に覆われ、しかも結構な斜面のため、カメラアングルが限られていしまいますが、やっぱり正面のこのアングルが一番迫力がある様に思います。

斜面下から見上げるトチはまさしく、その名「橡」が示す通り「象の脚」の如く太く逞しく感じます。
まるで今踏みだされたかの様な、シワくれていますが力強い感じ。
前回まではトチと馬の関係を多く紹介しましたが、もしかするとこの見事な幹に象の逞しさを感じたのが「橡」のもとなのではないかという想像が巡りました。

しかし、本当のところはどうも、昔は「橡＝つるはみ」と発し、ドングリの事を指して用いられていたようで、これがまさしく先のドングリに酷似した実から来た当て字なのではないかと邪推するのですが、どちらも楽しくなってきますよね。
名前と漢字の結びつきは面白い！

下に見える車の位置が国道です。
少し小さく見えますが、それだけ離れているということ。だからこそ、道路際ばかりを見ていると通り過ぎてしまいます。
この位置からトチを眺めると、ちょっと1000年生きてきたトチの気持ちになったような気がします。
斜面から一人巨樹になった自分の眼下に広がる川、そしておそらく車の無い時代には往来の人々を静かに見守ったであろうことを思うと、すこしその大きさに親近感を覚えました。

これがトチの真横から撮影した写真です。
眼前が国道とはいえ、大阪の様に車が車列を成しているわけでではなく、途切れては通るという程度です。
その道路の向こうに川を挟んで正面も雄大な山景色。
道路の整備されていない時代は、厳しい山道だったのかもしれませんが、今は至って静か。
ここから見る移り変わる時代はどうみえていたのでしょう・・・

さて、最後に恒例の背比べ。

トチの周囲には柵があるので少し離れていることと、正面がもっとも樹幹の幅を感じさせるのですが、カメラを上手く設置することが出来ずに、仕方なく横面に並びましたので、その立派さが伝わりにくいのが残念です。
実は訪問前に見ていた他の写真でも、「まぁまぁの大きさかな・・」位にしか思っていなかったこともあり、やはり贄川のトチは実際に会ってみてこそ良さのわかる巨樹なのかもしれません。

やっぱりこれだけの大きさに成長するトチですから、立派なテーブル材が取れるのも納得してしまいます。
でも、こんなに立派な木を見ると、「売りやすいか否か」という観点の善し悪しで判断する様にはならないですね。注目されて然るべき樹種だと思います。

流石に広い広い長野県下一のトチの木。
見事でした。
出来る事ならば新緑の季節にもう一度会ってみたい、そう思わせるに十分な存在感はやはり「万の実り」を予感させるからでしょうか・・・・・

贄川のトチ所在地

長野県塩尻市贄川1882
駐車場あり

近くには池生神社のトチノキや東漸寺のシダレザクラほかがある。
その他にも足を延ばせば様々あるが、長野県は目的地から少し脚を伸ばせば次の巨樹が現れる為、どこまでを行程に含めるのか相当悩むのが苦しいところ。

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muku_mokuzai at 13:15│コメント(0)│トラックバック(0)

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