本物の無垢木材　～茨木市戸田材木店・セルバの木の虫ブログ～:スギ

スギ

2025年05月08日

心を魅せる大樹の森～熊野神社の老杉（群）旅情編～

巨樹の旅は出逢いの旅。

そればかりではないのですが、やはり現地で出会う人との世間話や地域の話、歴史についてなどは非常に楽しいひと時。
ただ、それは時間に余裕があるときのお話で、いつもゆっくりとお話できるわけではないのですが、今回は予定のスケジュールより60分早かったために、ゆっくりとお話しすることができました。

熊鈴の音を響かせながら、門を掃除されていた女性が出ていらしてごあいさつ。

お決まりの「どちらからですか？！」に始まったわけですが、なんと女性は担当の住まいのお近くに3年ほどおられたことがあるとかで、妙な親近感を持ってお話ししました。
お掃除されている、ということは当然地元の方だと思っていたのですが、なんと移住組でした。

そして、移住の理由がなんと「老杉」だったんです。
山登りの趣味の折、当地と老杉に出逢いここに移住しようと、広島市内から移ってこられたそう！
すごい。

老杉とそれをとりまく社叢に感動されたとのことですが、神社の保全にも砕身されているようで、こんなに立派なのに、知られていないと嘆いてらっしゃいました。
どんなに素晴らしいかというお話の中に、社殿の奥には滝があり、その手前に二ノ宮と三ノ宮まであるとのこと。

是非行ってみて！とのことでしたので、普段はお目当てを撮影後は立ち去るところ、奥へと歩を進めることになったのですが、行ってびっくり。

社殿裏、奥へと続く道沿いにすぐ現れる二股の杉。
分岐してはいるものの、巨樹レベル。

老杉を超えたにもかかわらずの邂逅に、おもわず「おおっ！」と声が出てしまいました。
ここは巨杉が立ち並ぶからなのか、もしくは強風の影響でか意外と林内が明るく感じます。
巨杉以外の背丈が低い、というのもあるのか、、、いや反対に巨杉が巨すぎるのか・・・

とにかく素晴らしい森です。
県内の杉巨樹が集まっている、と言われても納得の迫力です。

そうやって驚いていたのもつかの間。
二ノ宮手前に、また出現。

今度は三本杉・・・

なんか、感覚がマヒしてきます。
女性の言っておられた、社叢に感激したという意味が少しづつわかってきました。
普通は、しめ縄が巻かれていても当然、いや無いほうがおかしいくらいのサイズ。

分岐幹なのか、それとも合体木かは分かりません（おそらく後者）が二ノ宮の眼前にあることも非常に神秘的。
なぜなら、上の写真の右側にあるのは巨岩。

岩境。

神話の地にふさわしく、巨岩とお社。

後でおもったことですが、巨木と同じようにどうして昌志メーターしなかったのか。

もちろん、巨樹訪問はいろんなものを「閉じて」いるためですけれど、こうやって紹介するのはやはり昌志メーター比較は必要ですね。

閉じているのは、「参拝や巨樹以外のものへの興味」です。
もちろん、合掌しご挨拶の一つはするのですが、寺社の由緒やほかの物事へまで目や耳が行くと、とてもではないですが時間が足りません。

そういう状態ですので、比較写真がなく悪しからず。

とはいえ、先の写真で少しは伝わるであろうそのサイズ。
これだけ見ごたえがあると、何に集中していいのかわからなくなってくるのです。
そんな状態で目指す三ノ宮。

到着したのですが、意外とあっさりと（失礼）した造りのお社。

ふと柱を見ると、黄泉津事解男神（よもつことさかのおのかみ、でいいのかな）とある。

おぉ！
島根県の黄泉比良坂へと続く神話の道。

イザナギ命がイザナミ命を追い向かった黄泉の国へと通ずる黄泉比良坂。
島根県にその伝承が残っていますが、当地から北へ行けば島根県。

ちょうど黄泉比良坂へと通ずる道に感じます。
当地の解説板にも、神話をめぐるお話が見て取れますので、ぜひ一読の上で参拝されることをお勧めしますが、ここで当社の名称ともつながるんです。

熊野神社。

先の黄泉の国の神話に関係する速玉之男神を祀るのが、熊野大社。
その関係で、当地もその名称に・・・

本記事の時点では来歴は何も調べていない（訪問時の記憶と気持ちを上書きしないため）ので、そういったことに想いを馳せる楽しみをかみしめていました。

そんな三ノ宮のそばにも。

参道は、雰囲気のある根上がりの道。
そしてそのそばにもこのサイズ。

いや、もうこのサイズでは驚きません。
参道以外にも、社叢には立派な大木が多く、慣れてくる？！んでしょうかね。

参道脇よりも一まわり立派なのがさらに左手に。

もう、見事としか言いようがありません。

神社の来歴や所在地のロマン、そして社叢と老杉（群）。

お掃除されていた女性のおっしゃった魅力は、非常に大きなものでしたし、それはここまで足を延ばさねばわからなかったこと。
いつもならば足を踏み入れなかったであろうことを考えても、女性とゆっくりお話ができたことがきっかけでした。

さらに奥にある滝は遠慮しましたが、それでもロスタイムの60分を使い果たし、反対に10分オーバーになってしまった訪問記。
もう少し、神話の詳細が分かればさらに意義深い訪問になること間違いなしですが、今回は巨樹メイン。
神話がなくとも十分に魅力的な熊野神社。
心を魅せられるのは、決して一人ではないはず。

もっと宣伝してね！とおっしゃっていた女性。
ちゃんと宣伝しましたよ！2回にわけて！（笑）。
この記事のアップロードの時には、もう終わってはいるものの例年お祭りが催されているようです。
是非来てね！ということでしたが、それはかないませんのでこの場でお祭りのことを紹介して、当地の紹介の最後にしたいと思います。

熊野神社の老杉（群）所在地

広島県庄原市西城市熊野1160（神社所在地）

緯度：35.0274401
経度：133.0819771

広い駐車場があります。
＊念のため、熊鈴を携行されることをおすすめします。

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タグ：: 巨樹; 巨木; 所在地; 広島県; 杉; スギ

muku_mokuzai at 13:30│コメント(0)

2025年05月04日

心を魅せる大樹の森～熊野神社の老杉（群）邂逅編～

巨樹の記事にはやはり、インパクトが一番。
珍しさ、そして巨さは紹介するためには非常に重要。

しかし、担当の巨樹記事にはもう一つ非常に大切なことがあります。
それは、訪問記であるということ。

巨樹巡りをしていると、様々な状況に遭遇します。
もちろん、見つけられないことも。

そんな状況の中で、現地の方とのコミュニケーションはとても心に残るものです。
今回は、それが大きな印象であるとともに、お話をすることでさらに当地を好きになった、というお話です。

でか！！！

斜面を登ったら急に現れる鳥居。
写真からはサイズ感が伝わりにくいと思いますが、こんなに大きいものがあるなんて想像していなくてびっくり。
こんな立派な鳥居がある神社でこの後、どのような巨樹に逢えるのか・・・

そしてもう一つのびっくりは、案内板にありました。
当地は、「神在月」で有名な島根県にも近く、神話の地でもあることから、ロケ地巡りならぬ本当の意味での聖地巡礼的なロケーションにあり、周囲の地と神話の関係を丁寧に教えてくれる看板があります。

今回はスペースの都合上その関係性にはふれませんが、その看板の中の一つに目がいきました。
木の看板やないの！！

しかも、柾目！！無垢！！！

この節が無垢の証。
いい感じで浮造りになっていますから、スギなんでしょうかね。
それにしても幅の広い柾目です。

その上に、丁寧に掘り込みで文字が。それも非常に美しい書体。
しばし見とれてしまいました。
贅沢すぎる看板。
分かる人にはわかる、この贅を尽くした看板にこそ、伝えたいという熱意が伝わるというもの。
こういうのも、ある意味旅の楽しみです。

さて、本当の楽しみはこれから。
なんせ、「老杉」なんですから。

どんなんかなぁ！？とおもいながら、鳥居の奥の階段を上ってすぐに見えてくるのは第一のスギ。

でか！（２回目。）

もういきなり昌志メーター発動していますが、これがお目当ての老杉か・・・と思うほど、ふつうに太い。
若干末広がり・・・いや元広がりではあるものの、十分な巨樹サイズ。

これが目当ての老杉かと思ってしまうのは、このサイズとともに石柱もあるため、としたいところなんですが、ここは間違いません。
巨樹巡り注意点その①。

きちんと位置情報や事前情報で、所在地の中のどこにあるかを調べておくこと。

というのは、当地のように一般的な基準では巨樹とされるものが幾本もある場合で、しかもそれが広い境内に離れて所在するときなどは、本当のお目当ては境内の奥であるパターンが散見されるからです。

代表的なのは、志多備神社のシイですよね。
今回のように鳥居のそばに、そこそこのサイズのシイがあるために、巨樹巡り初心者ではそれがお目当てだと思いこんでしまい、境内奥まで向かわないのです。
たしか、現在は注意書きがあったような・・・・・

今回もそのパターン、に似ていますが全く違うことは「第一のスギ」のすぐ奥にお目当てとする境内で最も太い老杉が控えているから、間違いようがありません。

地上5mほどで分岐しているものの、根株のサイズは間違いなく巨樹のそれ。
石柱にも県下第二位と表記されています。
実は、第二位ではなく正式に一位になったとのちに聞いたものの、真偽や如何に。

少し脱線しますが、材木屋なりの見解をお伝えすると、広島県では「枝が強い」と感じます。
それも、暴れ木やウラスギのような枝ぶりになっているものを多く目にします。

当地周辺の神社や森を見ていてもその印象は同じ。
当地も、大杉群以外に目を向けてもそうです。

周囲のスギたちも、優等生的なそれではないのです。
もちろん、それは老杉も同じなんです。

おいおい、ウラスギやろ？これは。
そう思うこと間違いなし。
これは、分岐している幹よりもさらに上部より伸びている枝。
それが地上に達しています。

材木屋は思います。
「ウラスギやん！伏条更新してるやん！！」と。

実際はしていないのでウラスギではない？！（オモテスギもそうなることも稀にある）という推測になるわけですが、その姿はやはりウラスギ。

巨さ比較、昌志メーター発動！

実際見ている印象ではもっと太く感じるのですが、この位置からだと少し扁平に映るためか、担当の印象とは少しことなるものの、立派なスギです。

境内には、樹齢千年を超えるものもある、とされているためにこの最大のスギがそうであろうか、と思われるのですが千年ほどかどうかは分かりません。
しかし、当地の解説にあるように老杉群のうち11本は県の天然記念物に指定されているんですから、どれほどの社叢かは想像していただけるかと思います。

巨樹巡りの困るポイントはこれですね。
目的地は一つなのに、幾本もの巨樹がそびえているとき。
所要時間が長くなる！んですよね。

そのうえ、どれに照準を合わせていいか迷うんです。
当地では、この「県下第二位」がお目当てになるわけですが、念のためほかの巨樹も撮影しておこうと思い、参道に立ち並ぶ大木たちを眺めながら、社殿のお参りに歩いていきました。

参道に立ち並ぶスギがこのサイズ。
社殿手前のスギですが、これもまた特徴的。
ねじねじ！！

ヒノキの巨樹ではよく見られるねじれ。
材木屋としては、製材してみたい興味と製材したらあかんという商売人との狭間で揺れるような、危険な魅力（笑）。

いや、不謹慎ですけどもこの状態は風によるものかと推察します。
参道に抜ける風と、吹き降ろす風。
先の巨樹を見てもわかるように、枝が偏っているなどの特徴があります。

この参道のスギは、大枝の落枝も見られますし皮目のねじれから想像しても、やはり環境による影響を大きく受けているのだろうと考えられます。
もちろん、「巨樹好き樹木好き」の材木屋の邪推の域をでませんが・・・

参道を照らすように開けている空は、上記のように大枝がないからなんですが、おかげで導かれるような気持ちで本殿へ向かいます。

写真では聞こえることはないのですが、参道を歩みだす時から遠く聞こえていた音。
明らかに熊鈴の音。

あ、そうだ忘れてた。というか油断してた。
森に入ることはない、と思っていたのですが当地はそこそこ山の中。
駐車場から近いとはいえ、この辺りは・・・・

とその不携帯を悔いていたのですが、その音のする方をみていると写真の左手に動く人が。
お掃除にいらしている女性だったのですが、実はこの女性のおかげで当地をしっかり楽しむことになるのですけれども、その理由はゆっくりと次回にお伝えすることにしましょう。

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muku_mokuzai at 13:30│コメント(0)

2025年04月18日

スギ低温乾燥梁、手刻み加工開始！

ご要望があった時、材料を広げて見てもらっている弊社倉庫。

無垢材を積み上げ、天然乾燥兼保管をしているわけですが、時折別の用途に供する時があります。
というか、ふた昔前まではそちらの用途の方が圧倒的だった、加工場として。

倉庫から音がしない日は、ものすごく気持ち悪い（居心地悪い）ほどに電動工具や鑿を打つ音が響いていた時代がありました。
プレカットが普及する以前は、弊社倉庫の2階にて大工さんが手刻みで仕事をしておられるのが普通でしたが、今ではその機会は殆ど無くなりました。

しかし、手刻みや手加工が残っていかなければよい住宅や製品は、いずれなくなってしまいます。
機会でも加工はできますが、人が考えて「してはいけないこと、しなければならないことの意味」において仕事ができるからです。

プレカットを否定するのではなく、同じことをするようでもアプローチが異なる、という事です。
詳しくは又の機会にしますが、その残したいと思う手刻み加工が、昨日より弊社加工場にて始まりました！

製材を頼んでいた、スギの構造材。

スギを構造材（横架材）とすることにも賛否があり、乾燥方法などにも様々な意見がありますが、今回のスギは低温での乾燥工程を経たスギです。

隠れてしまうのがもったいないほどの、赤身勝ちの横架材。
別に、高価な赤身勝ちを指定しているわけではなく、この地域は大径木からの構造材製材となる為、おのずと赤身勝ちになるんです。

一般的な、小径木のスギを製材しているものと異なり、丸太が大きいことの恩恵が現れていますが、これを期待してこの産地にこだわって提供しています。

中には、4mずっと赤身だけのものも・・・
そして、その中には芯去り（木の中心を含まないもの）も・・・

柾目になっています。
美しい・・・

横架材でいうならば、実は赤身勝ちではなく周辺は白太がある方が良い場合が多いのですが、太さや樹齢、木取りの場所によっても変わりますので、やはり小径木できっちりの寸法を製材するのではない、余裕を持った製材寸法が強度にも関係してきます。

そしてもう一つのおすすめポイント。

低温乾燥であること。

なぁ～んだ、天然乾燥じゃないのか・・・と思ってください。
しめしめです。

そう、天然乾燥ではありません。
ですが、近年の日本の猛暑より少し暑い位の温度でじっくりと寝かせたスギ。

それもあり、赤身が綺麗なんですよね。
高温乾燥にて強制的に含水率を下げると、どうしても色合いが悪くなる上に貴重な樹脂分が析出しやすくなります。
それに比べて、これから割れは入ると思いますが美しい木肌。

天然乾燥では、表面からほんの少ししか乾きません。

10年以上放置するならまた別ですが、横架材をそんな単位で天然乾燥など不可能。
横架材以外でも、数年天然乾燥させた材を製材した時にも、やはり内部はきっちりと水分を感じますから、天然乾燥がいかに難しいかを実感しているつもりです。

特殊な方法でない限りは、低温乾燥でも内部までしっかりと乾かすことは非常に難しい（特にスギは）ですが、数年乾かす時間を短縮できますし、高温ではないので材への負担も少ない。

それらの大きな2つの理由でスギの横架材は、この産地をおすすめしているのです。

その加工がいよいよ始まります。
今年は小規模改修も含めて、手刻み案件が続いています。

今回の新築では、化粧で見える部分は一部ですが低温乾燥材の力を感じて頂ける施工になるのではと、今から楽しみです。
もちろん、手刻みですと大工さんと仕上げや加工の話も随時にできて、効率的。

昔はそんなやり取りが、嫌（厳しい大工さん多かったし…）でもあり楽しみでもありました。
今日、打ち合わせにおいでになった工務店さんは、たまたま見かけた天板の耳の丸みの部分を見て、「これ、いいやん！こうやって使おうかな！。取りおきね、コレ！」と喜んでもらう場面も。

やはり、こういうやりとりは楽しい。
見てもらって、気にいって用途を考える。
在庫があるからできること。

実は、この後も2件、手刻み案件あり！
場所の確保が心配ですが、手刻み普及できるように、どんどんアピールしたいと思っています。
よろしく～！

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タグ：: 構造材; スギ; 横架材; 梁桁; 手刻み

muku_mokuzai at 13:30│コメント(0)

2024年12月25日

天然乾燥のフローリングと、天然素材の壁・天井エクスウォールで、安心の空間を！

秋から冬にかけては、とにかく森林や原木の時期ですので、とかく森関係の記事が多くなってしまい、業務の内容をお伝えできていない場面が増えると想像される（そう思うだけ？！）ので、きちんと施工事例をお伝えしておこうと思います（笑）。

ちょっと冗談もありますが、今回は素材の特徴を100％有効活用してもらえる施工記事です。
というのは、このお部屋のリフォームのきっかけはVOCに刺激を受けやすい施主様の希望によるものだったから。

おおっと、最初にお伝えしておきますがVOC（揮発性有機化合物）はすべてが悪者じゃ、ありませんよ。だって、無垢の木材もVOCを発するのだから。

名前のイメージで、どこか不健康に感じるかもしれませんが、有用な成分も揮発性の化合物であれば同じ名称でくくられる場合があるので、イメージだけで判断してはいけない、ということです。

昔、シックハウスが叫ばれ始めたころに、担当が営業に行っている工務店さんへ来客がありました。
化学物質に過敏で、自然素材だけの家を望んでいる、との相談だったことで工務店さんも得意分野であった作業風景を見学してもらおうと、ちょうど手刻み作業中だった作業場へお客様を案内した時のこと、ヒノキの非常に良い香りが充満したシャッターを開けて少しすると、お客様の体調に異変が！

ヒノキは、非常に有用な成分を多く含み、ご存じのような抗菌作用や様々な効能を持っているものの、それらの精油成分も効能が強いということは、香りが強いということは多くの揮発性成分を有しているということ。
そのため、そのお客様は一旦相談を中止し、帰宅されたわけですが・・・・

どうしてこのような話をするかというと、自然素材は万能ではないということと、無垢材も効能があればその裏返しもあるということを知ってもらいたいからです。
イメージだけの、理想ばかりの使い方をしてほしくないからです。

という前置きをしないといけないのは、本当に自然や無垢材というのは人の思った期待ばかりを実現するものではない、ということを伝えたいから。

と言いながらも、今回は天然素材の持つ力を発揮できるステージではあるのですけれど・・・

今回もいつもと同じ、天然乾燥のスギフローリングと天然素材の塗り壁材エクスウォールを採用いただき、天然素材の空間を作ってくれているのは、堺市でお客様の信頼を集める笑顔の工務店さん、堀住建さん。

毎度毎度、「戸田さーん、今えぇかなぁ。いつもの頼みたいねんけど～。」と連絡をくれるのです。
本当にありがたいです。
きちんと信用してもらっている証の「いつもの」です。

スギフローリングでいうと大阪府の堺市といえば、かの有名な全国区の名産地である奈良県吉野地方での仕入れがあるにもかかわらず、弊社がおすすめする高樹齢スギを愛用してもらっています。

担当のつたない話術（汗）では吉野スギの魅力を凌駕する言い回しはできなかったことと思いますが、それでも担当の伝えようとする趣旨や、それ以上に出来上がったフローリングの質感をきちんと評価いただいた上での、今までの定番採用である「いつもの」なのです。

涙が出ますね。
おおきに・・・・

でもね、今回の採用はその信頼以上の理由がきちんとある。
先の、VOCの影響を受けやすいお客様だということ。

そこに持ってきての天然乾燥！
いや、この場合天然乾燥でスギの樹脂分が残っていると具合が悪いのか？！なんて考えたりもしましたが、今のところは問題がないようです。

そう、そのような課題がある中での自然素材の選定ですから、広葉樹の提案もある中でやはりいつもの定番を選んでいただき、自然の樹脂分も残っていながらも、精油成分が強すぎないスギの特徴と、何より足触りの快適性とともに、採用していただいた経緯

製品をしっかりと知っていただいているからこそと感じます。

中には、天然乾燥の証である桟の跡が残るものもありますが、これこそ本物！です。

そして、高樹齢杉とともに天然素材仕上げを造るのは、エクスウォールです！
これこそ、空気環境を整えてくれる上、天然素材で形成された貴重な建築材。

先の、ラワンベニヤ仕上げの親子スペースでもありましたが、エクスウォールの特徴は一般的な珪藻土系建材とは異なり、天然素材のみで構成されているということ。
樹脂分や化学合成の接着剤を含まない、天然素材の塗り壁材。

意外とないんです。
そして、こだわりまくってコストをいくらでもかければできることを、きちんと手の届く価格でできることは、ものすごく大変。
そこをついているのが、エクスウォール。

こだわった素材だけれど、非常に高価！ではなくてできるだけ使いやすい価格と施工性を実現させる。

もちろん、天然素材で。

漆喰とは違うために、ピター・・・・っとした押さえ仕上げはできないものの、安心する職人さんの手仕事の伝わる塗り仕上げは、いつ見ても落ち着きますね。

心なしか、空気がいいように感じます。
個人差、ありますがこの職人さんの手仕事を感じるだけで、心地いいんですよ。
やっぱり、人の仕事を感じられるというのはいいものです。

それを残したい。
左官屋さんの、美しい仕事を木の空間に。
それが、材木屋の理想でもあります。

名建築には左官屋さんが必要です。
しかし、左官屋さんも乾式工事の増加で職人さんが激減！

水気を使い、仕上げが割れたりすることを極端に嫌う世の中では、仕事が減るということです。

先に、押さえは基本的に向いていない旨の記載をしましたが、堀住建さんの職人さんは押さえるのです（笑）。
もう、美しく！

そして、壁や天井の意匠により仕上げを変えてくれる。
いつも本当に美しく塗り仕上げてもらってありがとうございます！

押さえには向いていないのに、きっちりと押さえてくれる仕上がりは、ワクワクしますよ。

そこに職人さんはいないのに、その職人さんがどのような思いでこの仕事をしたのかが見えるようで、それは大工さんやほかの職人さんにも通じること。

弊社が何気なく出荷している無垢材にも、その用途や使い方の方向などを気にかけて、口にはしなけれどもその想いを込めているのと同じ感覚！？、と一緒にするのは失礼かもしれませんが、そう感じています。

昔の建築は、そのような本物の「職人さん」の集団でできたものだったのだろうと思います。
全てではなく一部ですが、でもそんな職人さんは多かった。

今ではそんな想いが伝わりにくい世の中かもしれませんが、だからこそ静かにその想いを形にしてくれている職人さんにはリスペクトしかありません。

めちゃ脱線しましたが、とにかく天然素材のいい空間ができたのです（笑）。

エクスウォールの欠点は、写真にうまく映らないこと！！
表情を伝えるのが大変！

撮影者の技量の部分は問わないでください。

しかし、天井も塗ると聞いていた（ビニールクロスはもとよりなし）ものの、本当に天井も塗り仕上げかと思ってしまうくらいに痕跡が見えない、きれいな仕上がりに嬉しいやら撮影に困るやら。

それくらいに、職人さんの技が光ってしまった施工現場。

本当に職人さんはすごい。
材料屋からすると、憧れます。

毎度、魅力的なリフォーム現場をありがとうございます。
施工記事をきっかけに、皆さんの地域にも天然素材のリフォームが広がることを期待しながら、天然素材のエクスウォールと天然乾燥のスギ材を叫びます（笑）

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～施工例　一覧は以下からどうぞ！～

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2024年10月14日

つかおう！本物の古民家に！！　～高樹齢杉！純白羽目板を水回りとダイニングキッチンへ！～

前回の日本のひばの美しさ、良かったんじゃないでしょうか。
すすめた担当も、おぉ～！というほどいい感じに仕上がっていたと思っています。

そして、もう少し続く施工報告はスギです。

前回の本文中で、古民家改修と言うと無条件に猫も杓子もスギばかり！なので、弊社ではあえておすすめしていません、的なことを書きましたが撤回・・・ではなくて、360°まわってスギの提案なのです（笑）。

はい、わかりますか？

弊社のド定番でもある、高樹齢杉シリーズの中のアイテム。

純白浮造り羽目板です。
純白、というのはスギの辺材（白太）ばかりを集めたもの。
そして、それに丁寧な浮造り加工を施すことで、施工当初から白さ際立つ美しさを備え、経年変化で飴色になっていきながらも、浮造り部分が光る様が美しいのが大きな特徴。

もちろん、無節であるために木質感バリバリ！にならずに仕上がるのもお勧めの一つ。

弊社があえて、古民家改修にスギをおすすめしないのは、ログハウスと混同するような使い方が多いと感じるからです。

木というと、節があってこそ！というイメージで古民家に多用したくなる気持ちも分かりますが、前回のとおりで既にある素材の存在感が大きいのに、そこに持ってきて節がありさらに、赤白の色差が出ているとすれば、ものすごく主張してしまうのでせっかくの落ち着いた雰囲気の古民家が、一気に現代の「コテコテの木の家」に見えてしまう、担当の感性。

感じ方は人それぞれですし、現代ではその方が見せ方は正解かもしれませんが、やはり前回の上がり框の様に「なんじゃ、この凄い材の使い方は！」という素材の美と昔の大工さんの意思に反するように感じてしまうのです。

あざとい木材利用、とでもいうのでしょうか。

そう感じてしまう。
なので、スギであえておすすめするのはこの高樹齢杉！純白浮造り羽目板。

樹齢70年以上（正確にはもっと高樹齢・・・）の、しかも斜面まで限定した原木の中から、節の無い変色の無い美しい木目の白太（これでも4条件！）のみを厳選して、その上丁寧な浮造り（ガリガリ擦らない！）を経てできる羽目板。

浮き立つ木目に木を感じるものの、うるさくなくさりげなく空間に居る純白材。

洗面脱衣スペースには、明るく清潔感を感じる純白材が殊更似合いますよね。

空間の質感的にもおすすめなのですが、それとともにおすすめするポイントはやはり浮造り。
木材の年輪に硬度の違いがあること、とくにスギはそれが顕著なことを利用して、柔らかい部分を削り取ることで年輪を浮き立たせる（赤身の場合は樹脂分も浮き出て質感向上！）ことで、視覚的に節が無くても非常に強く、木の質感を印象付けます。

もちろん、上品に・・・・

その上品さ、御手洗いにこそ似合うのかもしれません。

腰壁に縦貼、
高樹齢杉の白太の美しさが、清潔感を感じさせるので御手洗いにも非常に明るく清涼な空気感を感じますよね。

スタイリッシュな便器にもぴったり！
この某メーカーさんのコマーシャルにもおすすめしたいほどですよ。
T◯T◯さん、もしくはL◯X◯Lさん、どうでしょう？！（笑）

公衆のお手洗いにしても、近年は非常に清潔感を感じる場所が増えました。
高速道路のサービスエリアの一部では、スーパー銭湯？！的な遊び心があり綺麗なお手洗いも見かけるようになりました。

やはり、落ち着く空間にはさりげない木の質感は非常に合う、ということですね！

そして水回りだけではなく、こちらにも採用いただいています。

どどーん！と長尺丸太梁が架かる、広いダイニングキッチン。

黒光りするまぶしい梁とともに、まるで白雲の如くにさりげない輝きを放つ、純白浮造り羽目板。
この時の印象は、雲の間を自由闊達に突き抜ける龍。

陽光を受けて輝く白雲の間を泳いでいく様。

そんな印象です。
この丸太梁は伝統工法ですので、そのまま外部にまで突き出しています。

現在の軸組み木造では考えられないですが、そこが伝統工法。
その突き出しが、龍がすすんでいく様のように感じてしまったところ。

場所は違いますが、こんなイメージ。
（写真は縁桁）

こうやって外に出ている事にも、構造上非常に大きな意味があるのですが、現在の住宅工法では不可能な納まり。

そんなこんなも、先ずは伝統工法と軸組み工法の違いを理解していなければ気にしない、「古民家だから木が出ている」と言うほどの認識にしかならないところ。

そこは、伝統工法の大工さんも材木屋も、きちんと伝えねばならないところだと思いますね…

おっと、話はもどり純白羽目板です。
純白も美しいのですが、それをひきたてるのは浮造りなのです。
単純に白太でも美しいのですが、丁寧な浮造りによりひきたつ木目は艶があり、底光りするような質感を持っています。

これこそが、弊社おすすめの高樹齢杉シリーズのうちの浮造り製品の特長。

硬いワイヤーブラシで「ガシガシ」削るのとは異なる、美しい仕上げ
なかなか真似できるものではありません。

そこにプラスしての白太厳選ですから、そんじょそこらの白太とは大違い（笑）。

そんなこだわりの商品ばかりを、提案のまま受け入れてくださり美しく納めてくださったのは、高槻市の三善設計工務さま。
勉強熱心であり、そしてお客様にも大切な家づくりの勉強への誘いも熱心な、アツい工務店さんです。

その情熱溢れる施工に、上手に材が応えてくれました。
石場建ての貴重な住宅が、また今から永い年月残っていく改修作業。
そこに携われたうれしさを感じる撮影でした。

こんな立派な古民家に住まう施主様を、しきりに羨ましがりながら現場をあとにするのでした。

・高樹齢杉！純白無節浮造り（うづくり）羽目板の記事はこちらから
・高樹齢杉！純白無節浮造り（うづくり）羽目板、板屋楓セレクショングレードとの白の競演の記事はこちらから
・高樹齢杉！純白無節浮造り（うづくり）羽目板、石山赤松と和室改修の施工記事はこちらから
・高樹齢杉！純白無節浮造り（うづくり）羽目板の、作業ではなく、手仕事ができる大工さんが建てる終の棲家 ④はこちらから
・高樹齢杉！純白無節白波羽目板、埋め節フローリングとの高樹齢杉共演はこちらから

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muku_mokuzai at 13:30│コメント(0)

2024年10月04日

やはり最後は足で稼ぐ？！（笑）～左右内の一本スギ～

最近の倒木のニュースの多さに、もっと早く紹介せねば！と思う巨樹が沢山あることに焦りを感じているのですが、いつも言う様にメインは木材の拙記事ですので、もう少し紹介ペースを上げてしまうと巨樹専門ページになってしまう危惧があるのですが、そこは非公開出版物掲載の「材木屋の巨樹木甦」との並走で紹介することにしよう、と思うのです。
（といっても、そちらで字数や写真が足りない為に結局こちらでも取り上げる始末なのは、過日にお伝えした通り・・・）

さて、今回は倒木の記事ではなくまた珍道中のお話？！ですよ。

今回の舞台は、クスの驚く巨樹も多く擁する徳島県。
弊社も木材製品で昔からお世話になっている場所ですが、巨樹が多く存在することは意外と知られていない？！かもしれません。
先にお伝えすると、今回のスギの幹周りは7m少々。

10m超えには驚くものの、7mだとそこそこだな・・・というバカバカしい思い込みを、激しく否定されることになろうとは、道中思ってもいませんでした。

いつものことながら、なかなかハードな道を行きます。
麓からの登山道があるものの、巨樹訪問では時短メイン（汗）の担当は行けるところまでは車で行く！ですので、こういう道は当たり前。

しかし、分かりづらいかもしれませんが道路の端のほう、若しくは時折中央も陥没や舗装の欠落があり、しかも落ち葉の堆積がひどいところなどはタイヤがスリップし、さらにそれがカーブであったりすると完全にホイールスピン状態になり、進むことが不可能になる状況。

車に詳しい方ならわかるかも知れませんが、片方のタイヤが空転すると一部の機構のある車以外は前に進めなくなるものなのです。
本当にしっかりと考えていないと、電波の届かない山道で身動きが取れなくなるのでかなり危険ですから、皆さんは無理をしないように、若しくは4輪駆動での巨樹巡りをおすすめします（汗）。

というものの、その状態を幾度も乗り越えどんどん上るも、最後にはアウト！

倒木あり・・・

こういうこともあります。
諦めて、ここからは徒歩に切り替え。
駐車スペースはないものの、倒木がある以上山頂からの下山も無いものと仮定して、車を置いて歩きます。

もちろん、ダッシュボードには行先の書置きを残してですが・・・

そうまでして辿りつきたいスギはいったいどのような姿なのか。
下調べで見ていなければ、ここまで頑張ってはいかないかもしれない、期待以上のスギだったからこその道のりは、舗装路を登り切った場所で目にする光景によって報われます。

駐車スペース（というか転回スペース？）を越えていくと、墓石のとなりにお目当ての巨樹が見えてきました。
よっしゃ、着いた！
文面では伝わらない、いつもよりは焦らず登る事ができた理由。

それは、四国にはクマは（ほとんど）居ないという情報を信じているから。
車で登りたい理由は、どの地方でもクマに逢いたくないからです。
訪問時短ももちろんですが、とにかく一番の理由は毎度のことながらクマです。

その心配がない、と聞いているだけで心が楽なために、いつもより疲労が少ないと思うのは気のせいか・・・
そんなことを考えながら、立像のある正面？へと歩を進めてみると、なんとも圧倒的な存在感！！！

ははぁ～・・・・・・・・

フランスの超高級ワインである「モンラッシェ」を称賛する、ひざまずき脱帽して飲むべき、という言葉がありますが、まさしくそれ。

脱帽し、ひざまずき拝むべき存在と形容したくなります。

その威厳はスギだけに感じるのではなく、スギの前の立像が与えるものであることは言わずもがな。

この左右内の一本スギは、各地の巨樹伝説にその名を遺す「巨樹お手植え人？！」弘法大師さまによるものとのこと。
もちろん立像も大師様なのだろうと推察しますが、異様の大スギにもひれ伏す思いなのにそれよりも前にあり、しかも基壇の上であることでもう崇める姿勢になってしまうとでもいうのでしょうか。

見あげるイメージはこのような感じ。

地際からおさめたアングルであるものの、イメージとしてはこんな感じの現地です。
広角が好きではない（全体を伝えるにはいいものの）担当ですので、もちろん広角カメラではなく普通の視点でこの迫力です。

驚くのはやはり、スギ自体の異形でしょう。

スギは直ぐい（すぐい）木の転訛である、という説がありますが、真っ直ぐ素直に伸びる傾向にある事から、林業でも称揚される樹種のはずですよね。
それが、この異形。

それも、太平洋側のというか、太平洋の真ん中？！に位置する徳島県においての異形。
日本海側に多いとされるウラスギを想像させるようなその姿です。

扁平で、水平方向か下方に向けて伸びた大枝が、一気に点に向かうさまはウラスギ以外の何物でもない、という固定観念に襲われます。
そして、その固定観念からどうしてこのような形になったのか、という不毛な謎解析に頭が動くのです。

揺らめきながら燃え盛る炎のような印象に、心が揺さぶられます。

春埜杉他、山中にて信仰の対象にもなっていたであろうスギたちは、厳しい登山の末に出逢うその姿に、人々の畏敬の念をあつめていたことと思います。
この一本杉も、今では舗装道路がついている有難さで、担当のようなビビりでもお目にかかる事ができるようになっていますが、本来であれば、非常に有難い山行きの後の神々しい景色だったのだろうと、拝察するのです。

そして、その雰囲気を少しでも味わおうと、姑息な（？！）いやあざとい写真アングルを決行！

これが、本来の有難いアングルです。

お遍路道の険しい山中を歩いた末に、この景色が目に焼き付くであろう場所。
舗装路からでは、一本スギの側方からのアプローチになるのですが、遍路道（とおもう）からは石段を上った末に仰ぎ見る姿、いや石段下の段階で、大師様とその背後のスギに見下ろされている感覚となる事から、もうひざまずくしかないような状況なのです。

冒頭お伝えしたように、一本スギの幹周りは案内板によると7.62m。
驚くほどの太さではないのです。

しかし、やはりその立ち姿と雰囲気による印象は、幹周りでははかられないものがあることが分かっていただけるでしょう。

また、案内板には「稀に見る一株の巨木」とありますが、その意味はやはり合体木やウラスギでは見られるような樹形であるものの、という前置が隠れているのでしょうか。
担当のイメージでは、一本スギというと通直で枝分かれの無いもの！という印象なのですが、真意は如何に・・・

そんなことを考えていた時、がさがさと音がする・・・・

え？！えぇ？！・・・・・・おらんはずやろ、あいつ・・・
まさか、殆どいないという状況のアイツに、ここで遭遇？！！！！と、黒いアイツの姿が見えるのかと恐怖におののいていた時、現れたのはお遍路さん？！・・・

まさか、こんな山中に・・・と思うものの、先の通りお遍路道であることとこのような有難い場所であることで、人が居ても不思議ではないものの、やっぱり焦りますよ！

頼むから、人間だという合図に歌いながら来て（汗）。

暑い季節にもかかわらず、木立から心地よい風が流れ緑が目に染みます。
苔むす石段やスギをみても、そして道中の写真からもそうですが、植物が生育するのに良い環境である霧が発生しているため、湿って入るのですが心地よい山中。

時代劇映画のワンシーンのようですが、やはり舗装路がつくまえには登山にて多くの人が手入れしてこられたのだろうな、と思う雰囲気です。

徳島県は、非常に山が険しい地域。
北と南の間には壁のような山脈があり、北の市街地から海側の町へ出るのは山越えロングドライブを要します。
もちろん、他の県からも同じ。
しかし、そんな状況だからこそ上った先にある巨樹は、特別なものが多いのも事実。

幹周りだけでは知ることのできない迫力と存在感。
それをはっきりと感じることのできた、一本スギとの出逢い。

立像の左に、担当がいます。

像と、一本スギのサイズがわかるでしょうか。
立像も大きいですよね（汗）。
比較しなければわからないところが写真のむつかしさ。

そして、少し暗い写真ですが、担当が訪れた第一印象はこの感じです。

湿っていて、曇っていて、少し暗い。
鬱蒼とした中の一部が開けている印象。

そこにお遍路さん・・・（汗）。びびりますよ。
独りだと思っているのに。

いつもながらの珍道中、如何でしたか。
それを経て向かうに足る、有難い景色でした。

皆さんは、4輪駆動車を用意し天気の良い時期（暴風や雨天後ではなく）での訪問をおすすめします。

左右内の一本スギ（天然記念物指定名称表記）所在地

徳島県名西郡神山町阿野一本杉

緯度：34.0027086
経度：134.3252793

舗装路をのぼりきる事ができれば、駐車可能。道路途中には駐車することは不可能ですので、今回の様に放置しないように注意しましょう（汗）。

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muku_mokuzai at 13:30│コメント(0)

2024年07月22日

巨樹は林業の産物？！～山住神社のスギ（山住杉）～

イレギュラーですが、続けます。

木まぐれコラムが連投になることはいつものことですが、今回は巨樹連投です！
まぁ、木まぐれコラムのおかげで先日の大栃が2か月ぶりの投稿だったのですから、たまにはいいでしょう（笑）。

というよりも、本当のところはここを紹介しておきたかっただけのこと。
というのも、前回の大栃から今回の神社ヘは、同じ道をたどりさらに山頂へと昇った先が目的地だからです。
一日で一筆書き巡りをモットー（？！）にしている担当の巨樹巡りにおいては、ここを紹介せずにはいられませんし、もし拙記事をご覧になり訪問される方には、市街地は抜きにしてもこの場所だけは、同じ苦労で二度上ることのないように、「一筆書き」で訪れてほしいからです。

前回のアカクボ沢の大栃から東へ、ファイティングなほどの九十九折れをくぐりぬけて向かうのは、標高1000mを超える峠道。
今までの道路から、うそのように広くなった分岐点に山住神社が鎮座しています。

あれ？こんなに観光の人たちの車があるんだ・・・と少し驚きますが、スーパー林道（担当は昔から「スパリン」と呼んでましたが・・・）や春野町方面からの道の交差する部分であるために、登りで出会うことのなかった人たちが、一気に集まっている状況。

そして、そこにある山住神社がこれまたすごいのですよ。

道路からすぐ、開けた視界の先に見えているしめ縄がまかれたスギ。

山住神社のスギ、山住杉です。
一般的には、参道の両脇に鎮座する、というイメージが強いのですが、ここでは参道のど真ん中に居る。
そして、社殿を守っているかのようであり、参拝者をその人間性で選別するかのよう（担当のイメージ）に、太い幹を張り出しています。

静岡県の天然記念物に指定されている、二本のスギ。

樹齢、約1300年！
約、ではなく屋久杉並みの樹齢ではないですか！！

スギやクス、イチョウなどの全国に巨樹を見る樹種の中には、1000年という時間を超える者たちが多く存在するのは確かですが、当地との違いは実は、材木屋にも非常に興味深いところなのです。

担当が当地を紹介したかった理由は、大栃に近いということ以外に上記の理由があるのです。

スギという樹種は、非常に歴史が長く人とのかかわりも永いうえに長寿であるがために、伝承は多くあるものの、化石や発掘物以外で史実として残っているものは、思った以上に少ないと思われます。

解説板によると、当地に神社鎮座の頃にご神木として植栽されたものとのこと。
そして、それが伝承ではなくかの有名な伊勢湾台風の折の倒木の年輪で確認できている、というのですから驚き。

担当は、その年輪を見たことはないのですが、それにしても1000年をゆうに超える年輪を数えるものとしては、幹の太さが若干足りないようにも見えなくもないのですが、それはそれ。

巨樹というのはロマンのかたまり。

史実と突き合わせる学問や証明ではないのです。
十分に迫力のあるこの姿で問題なし。

いつもならそう思うところです。
しかし、材木屋としての興味はまた別の次元であり・・・

巨樹としての樹齢もさることながら、もう一つ担当が気になるのがこの地域では相当早くから植林が根付いていたのではないか、ということ。
根付く、というのは習慣として行っていたのでは、と思うこと。

境内では、注連縄の二本以外にも社殿から山側を見ても、相当に太いスギが林立しています。

上部こそ、既に人の影響も周囲の影響も受けない自由な枝ぶりになっていますが、非常に整った樹形と素直そうな素性を感じる姿。

それらは、同時期に植えられたものと推察するのですが、当地近くにある巨樹の春埜杉が位置する山も、昔の献木植林により大木の森となったと記されていた記憶があります。
植林の歴史は簡単には語れませんが、体系的にまとめ林業とした最古は彼の地ですが、此方でも宗教的な献木植林や一般的な植林は、かなり以前から継続的に行われていたそうですから、当地のこれらの巨樹も、完全なる植林によるものだったのかもしれません。

とはいえ、境内の二本は植林での優秀木である母樹などと比較すると、自然の厳しさを知った天然の巨樹の様にも感じる風格がありますから、真偽のほどは想像で楽しむことにしましょう。

歴史とその土地の事を考えることも、巨樹巡りでの楽しみの一つですね。

因みに、当地で治山治水や植林林業に大きく貢献した人物は、一カ月ほど前に残念な事件で有名になってしまったものの、社会的に重要な役割を担って下さっている保護司、という方々の創設にも関わったらしい、非常に功績の多いお方。

本当に、昔の偉人は計り知れないスケールの人が居たものです。
屹立する如くに急峻な山にもかかわらず、立派なスギ巨樹を擁する当地の理由が少しわかる気がします。

写真ではあまり太くは見えなかったかもしれませんが、十分な太さですよね？

手前のスギの左に居るのが担当です。
下界よりも清々しい空気の中、しばし日差しの暑さも忘れて木陰に。

先日の大栃の、ザ！広葉樹とは異なり、まさしく！針葉樹という大スギ。
樹高もあり、立派な姿とこの立地は是非、大栃とともに訪れて頂きたいと思います。

訪問時間がかかりますから、きっちりと時間配分されることをおすすめしますよ！

そして、お腹がすいたり喉が渇いた時は道路挟んですぐのここ、山住茶店大杉へ！

おそばにおうどん、そしてヤマメの塩焼きまで！あるみたい。
過密スケジュールで道を急ぐ担当は、立ち寄ることを許されませんでしたが、ぜひヤマメの感想を聞いてみたいものです。

食された方はぜひ、コメント下さいませ（笑）。

山住神社のスギ（山住杉）所在地

静岡県浜松市天竜区水窪町山住

緯度：35.13510027
経度：137.91406615

駐車スペースあり

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木のビブリオが、それぞれの木が持つストーリーとともに、こだわりの木材をお届けするブログと、稀少木材・無垢フローリングのホームページです。

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muku_mokuzai at 13:30│コメント(0)

2024年03月12日

まじめな材木屋の、オーバークオリティーはどちらに転ぶ？！ ②

今回は、施工自慢や納品材料自慢ではないのですよ。
納品材料の程度のお話。

そう、無垢の木材は二つとして同じものはありません。
もちろん当たり前のことですが、だからこそ同じスギであっても提案するものは千差万別であり、材木屋さんの担当者によってさまざまなのです。

もちろん、それによって価格も様々。
そして、それに比例するように木材の程度も様々。
死節や変色、辺材が多く含まれるものでも、赤身で節が少なく製材の気遣いを感じる木目のものであっても、同じ寸法の同じ樹種では文言上は何も変わりがありません。

今回も、スギ105角の節あり、が指定の表現です。

普通の材木屋さんであれば、写真のようなものは用意しないでしょう。
基本的な価格が違います。

オーバークオリティとされるでしょう。

節無しの赤身材？！そんなもの必要ないと。
しかし、そう思うのは金額面でのお話に他なりません。

もちろん、予算は非常に大切。
しかし、今回は予算はある程度かけられるお施主様の物件。
それ以上に、写真を拝見しても非常に価値ある伝統建築ですから、増改築するにも既存に恥じない木材と作業で次世代に残したい、そう思います。

主となるのは工務店さんと施主さんですが、材料について知るのはやはり材木屋。
まずは、その建築に恥じないものを提案することが仕事の一つです

その想いから提案するのが、今回の赤身のスギ材。
そして、その上低温乾燥材という弊社がおすすめするもう一つの理由をもっているのです。

一般的に、スギの芯材の人工乾燥は非常に困難だとされます。
それはスギ材内部の水分の分布に偏りがあることと、状態によっては芯材の水分が抜けにくかったり、抜けるものの、すのスピードに耐えられずに表面や芯材内部が大きく割れたり、木質部分が劣化してしまうことがあるからです。

それらの複合的な要因で、単純な含水率の低減はできるものの、美観と木材としての性質を維持しながらのが難しいとされているのです。

そういった理由から、単純な高温乾燥で材面は割れてはいないものの、スギの色あいや風合いが少なくなったものや、風合いは残っても乾燥ができていないものなど、難しい問題が残る場合が多いものです。

その点、この低温乾燥材は若干時間はかかるものの、スギの香りや色合い、風合いを壊すことなく割れも少なく供給できるところが非常に優秀なのです。

そうでなければ、こんな芯去り平角など製材しません。
原木仕入れからして、このような木取をするものは異なりますからね。

オーバーなのはクオリティではなく、想いなのです。
やりすぎ、かもしれませんが今回は屋外使用。
それに対して、単にスギという指定だからと言って安価なものを提案することはできません。
材木屋だもの。

施工された後の写真を拝見しましたが、真っ黒に塗装されていました。
そりゃ、黒光りする伝統建築に合わせるため仕方なし。
弊社がデザインに口出しすることはありません。

しかし、黒塗りされ美しい赤みが見えなくなろうとも、数十年先までその材料が役目を果たしているかどうかが重要なのです。

ベイマツでもいい、と言われることころにわざわざ地松を提案することもあります。
いや、近頃は地松にしたい！と言ってもらえるようにもなりました。
それも、オーバークオリティーかもしれません。
強度ではなく、費用と時間や労力において・・・

しかし、そこは想いなのです。
強度とともに、仕上がりの美しさや全体の建築としての美観とともに、大工仕事の徹しごとに耐えられる材料の素材としての資質。

そこは、大工さんと話ができるからこその、材木屋冥利。
一部の大工さんや工務店さんには「そこまでいらんねん！」と言われ、見積合わせに負けることもしばしばですが、弊社がお届けしたい木材は、想いのある木材。
そこまでいらんねん、でも一度は提案しておきたいのです。

詳細な判断は、そのあとしてもらえばいい。
最初から値段だけの提案はしたくありません。

こんな不必要と思われるこだわりは、売上業務としては良くない方向に転ぶのかもしれません。
しかし、どちらに転ぶかは想いをつないでくれる人と仕事ができるかどうかだとも思います。

そんな変態材木屋にお仕事をいただける大工さんもしばしば（笑）。
そんな人と少しづつ、本物の無垢木材の建築と手仕事を残していく材木屋が、大阪に一人いてもいいですよね・・・

無垢材とそれを生み出す山、そして活かす人と喜ぶ人をつなぐ材木屋であるために・・・
良い方向に転ぶ経過の一ピースとなりたいと思う、スギ赤身材での建築でした。

タグ：: スギ; 赤杉; 手刻み

muku_mokuzai at 13:30│コメント(0)

2024年03月09日

まじめな材木屋の、オーバークオリティーはどちらに転ぶ？！ ①

弊社ブログも、ある程度の方には認知いただいているようなのですが、見ていただいていると、弊社の考えや担当のことが理解していただけるのではないかと思います。
木が好きなお店であることは伝わるかと思いますが、実際にどのような木をどうやっておすすめしているかは、当事者になってみないとわからないところがありますよね。

そう、当事者しかわからないことが、実はたくさんあるのです。

その中の一つ、どの程度の木材を供給するか。
この意味、分かるでしょうか。

弊社での代表的な「どの程度」がわかるものとしては、古希杉無垢フローリングがあります。
多くのファンに愛されている無垢フローリングですが、それは一部分であり大半はそこまでは要らない、と言われます。
いえ、古希杉が俎上ならまだしも、埋め節フローリングですら「こんなにきれいなものじゃなくてもいい」と言われます。（それも、逆にうれしいんですけれど・・・）

今回も、その一つの例です。

節のない、美しい材面。
節無し材ではありません。節あり材です。
節あり材でも、節がない・・・
いや、注目はそこではありません。

赤身なのです。
芯材のみなのです。

辺材である白太がないのです。
そのうえで、105角なのに節がない。
今回は、ここに焦点を当てると他の話題になるので控えますが、とにかくこだわりの強い材なのですが、なぜ今回これを話題にするのかということが、非常に重要なポイントです。

どの程度の木材を供給するのか、ということはコストにも関係します。
しかし、それ以上に弊社が最初に気にするのは用途や使われるその場所。

美しく中心に芯を置いて製材してある角材。
晩材と言われる年輪の筋もはっきりとしていて、けっして「緻密な年輪の優良材」というものではないものの、製材の基準や原木の選別が良いことがうかがい知れます。

もちろん、そのあたりにこだわって製材されているのですが、今回これをおすすめしたのにはきちんと理由があります。

それは、スギ材が指定の屋外使用であることと塗装はするものの、歴史ある建築の一部分を増改築した純和風の門屋の材料であったことからです。

工務店さんとしては、塗装する上に予算の関係でスギであれば問題ない旨の連絡であったものの、加工の大工さんは手刻みを惜しまないうえ、木の特性を生かそうとする人。
それならば、提案しないわけにはいきません。

塗装するとしても、軽軟な杉材の流通品では辺材部分が痛むことと、非常に美しい伝統建築に対して、増改築する部分とのバランスが取れないと感じるのです。

そして、そのバランスを重視するために依頼したのが、今回の赤身（芯材）を用いた材なのですが、担当の想いを理解してくれる製材担当も、それならば！と用意してくれたのが写真の材で、驚くべきは盤。
指定もしていないのに、赤身の芯去り平柾目（汗）。

つまりは、木の芯を含まない部分で柾目製材してあるということ。
もちろん、節無し・・・

門屋と伝えたもんだから、ものすごくいい材料を出してくれています。
おおきに！

これで、スギといえども塗装の力を借りながら、少しでも永くその姿を維持することができる条件がそろいました。
それとともに大事なのは、やはり加工。

墨付けをし、手仕事での刻み作業です。

近年主流のプレカット加工で工場から出荷されるのもいいでしょう。
しかし、機械ではできない微妙な木の組み方や加工精度（木組みに必要な木を噛ませる加工）など、人の手が生み出すことのできる大事な作業が手刻み。

それを経て、さりげなく建築に溶け込むのが粋！

おっと、これで終わると単なる優良材の納品報告。
そうではなくて、今回は納品材の程度のお話。

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タグ：: スギ; 赤杉; 手刻み

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2024年02月15日

今は願うことばかり・・・　～徳成谷内のスギ～

原稿を仕上げたのは、年が改まった1月４日でした。

まさか、こんなことが起こるなんて・・・
自身も阪神淡路大震災を経験し、その後の大阪府北部地震でも倉庫や社屋に被害があった経験もあり、「もう起こらないでほしい」と思っている規模の地震被害が、年始早々に能登半島を襲った数日後のこと。

そこに訪れたのは、昨年です。
その時から、近いうちにブログとともに担当が寄稿している「材木屋の巨樹木甦」への記事候補としていたある巨樹は、その地震の震央に近い輪島市にありました。
業務でもお世話になっている製材所さんも、大きな被害を受けた今回の地震を忘れず、そして能登に思いを馳せるためにも、今日彼の地の巨樹を紹介したいと思います。

巨樹巡りをしていて、「遠い」と感じたのは北海道と、この能登半島。
単純な印象ですが、北海道はやはりでかかった！のです。
いつもの調子で下調べするも、縮尺がマヒするような広大さは、現地に訪れた時の移動距離と所要時間で実感しました。

能登半島も、サイズは違えど最初の印象は似た感覚でした。
金沢から遠いっ！、です。

里山街道

担当の巨樹訪問は時間との勝負。
二度と訪れることがないかもしれない巨樹を、一日で一筆書きよろしく廻るのですから、時間配分が大切。
なのですが、能登半島は意外と遠かったのです、金沢から。

それが最初の印象ですが、その半島の輪島市の内陸部にワクワクとして訪れたスギがあります。

日本海側の異形のスギ、というだけでワクワクしますよね。
それも、山中ではなく裏山程度の場所で逢えるらしい（訪問前）のですから、なおのことです。
そう思い訪れたものの・・・・

ない、どこにもない。
それらしいものが見当たらない。

そんなことはままあることなのですが、今回も事前情報ではお宅の裏山の様子。
誰かに聞けばいい、と思っていたものの問題発生！

誰も、その存在を知らない！！
え？！
異形の巨樹のはずなのに、裏山のはずなのに、それらしき家の方に尋ねてもご存知ないとの答え。

最後の手段として、「ここしかない！」と目星をつけていた裏山への細い通路への進入許可のみ承諾をいただき（そこは個人所有地ではなく集落の共有のものだそうですが、勝手なことは慎みたい）、いざ探索！

すると、上り始めてすぐ呆気ないほどに簡単にその姿を確認できました。

竹藪の向こうに見えるのが、徳成谷内のスギ。

燭台のように立ち上がる大枝が特徴の、スギの巨樹です。
スギという樹種単体でいえば、全国には多くの巨樹が存在し、その姿も驚くものが少なくありません。
その中で比較すると、当地のものは幹周り5.5m（公表）とされているので、全く比較にならないと思われるかもしれません。

そう、竹藪の奥に見た時には、一瞬そんな気もしました。
その上、事前情報にはなかった（事前情報は2018年のもの）竹藪の旺盛な繁茂により、背丈ほどの密林状態で通路がなく、見えているのに近づけない状況。

う～ん、どうしよう・・・それほどの太さでもないしなぁ。ここを行くのは・・・
一瞬はそう思ったものの、意を決し藪をかき分け入っていった先には、逢えて納得の姿を見ることができました。

これが幹周り5.5mか。
そんな数値を忘れさせる、感心するその姿。
私が上った方向からは、スギを見上げるような形になるために、一層迫力を感じるのですがそれを差し引いても見事です。

単純な巨さならば、比較にならないほどのものが数多い中で、裏山にこの姿がずっと残ったことに驚きです。
スギのそばは墓地です。
このスギの持ち主の方のものと推察しますが、所有者さんが残されたスギなのか、それとも有用ではないとして伐らずに放置したものなのか。
ご神木、ではないだろうとおもいますから後者の可能性が考えられますが、今となっては立派な巨樹の仲間入りをするほどになっています。

林業地でも、皆伐をしていないところなどではまれに、このような「暴れ木」を残すところもあります。
もしかすると、この個体もそうなのか？と思われるのですが、聞く方もおられずその生い立ちはわかりません。
典型的なウラスギの部類なのでしょう。

水平に出た枝が垂直に伸びていく様や、幹から数本枯れ枝が残っているものも、雪による影響かと思われることろが野性味も感じます。

しかし、竹藪へ入る前に感じた「それほどの太さでもない」という感覚と、写真の迫力の違和感の理由は何のなのか？。

それは、スギが想像以上に扁平であること、です。

太い、というよりも幅がある、という印象。
壁みたいなもの？というのでしょうか。

木々は、真円のような形状だと思い込む傾向があるものですが、そうではなく、とくにこの徳成谷内のスギはものすごく扁平なのです。
そのため、墓地側からみると迫力十分な異形の巨樹ぶりなのですが、竹藪側から見るとほっそりとした暴れ木に見えるのです。

見た目のイメージってすごいものですね。
人間にとっての視覚の及ぼすイメージは、とっても大きい。
それを実感しました。

それともう一つ、ネット上の巨樹写真の多くが、異様なスケール感を持っていると感じ、実物以上の迫力は写真の効果によるものかと推察していたのですが、今回謎が解けたように思いました。

それは、三脚を立てて比較写真を撮影するアングルを探していた時のこと。

藪に阻まれ、あまりにもアングルがないうえに、近づくと全体像が全く分からない。
仕方なく、更新したスマホの機能である広角レンズを使用したとき、わかったのです（今頃ですけど・・・）。

皆さん、広角レンズを使っておられるから、樹高も高く幅も広く映る傾向で、巨樹感が増しているのだということを。
上の写真もその広角です。

一つ、勉強になりました（汗）。

アングルがない中で、なんとか撮影の一枚。
ちょっとずれていて、自身も完全に映ってはいないですけども・・・
（虫と蚊がきになり、じっとしていられないので・・・）

近づけるのが有難い、触れられる巨樹。
竹藪の茂り具合からいうと、墓地があるにもかかわらず、人が入っていないような雰囲気。

一部は、草のない土が通路のようになっているのですが、入り口らしきところがないのが不思議でした。

さぁ、そんなことを考えながら一通り撮影し、そろそろ戻ろうかと思って冷静に見てみると、このありさまでした。

難儀な奴です（汗）。

一つずつ取っていかないといけない、「ひっつきむし」が上半身から靴までびっしりとついているではありませんか。
よくあることながら、ここまでついているのは久しぶり。

人による種の移動を抑制するべく（？！）、入念に現地で落としていかねばなりません。
という、やる気を出そうとする理由をつけて、一つずつ外していく面倒なこと。

これも、虫さされとともに藪を敬遠したい理由の一つです。

そんな思い出も、何気ない日常だから感じられるもの。
今は、あの荒波押し寄せる海岸の道と、驚くほど穏やかな内海との対比の景色が変わってしまっている中での、被災された方の生活が心配でなりません。

住居やお仕事などの生活基盤は、簡単には戻らなないものだと思いますが、穏やかな能登の生活とおいしい魚介を産する港町が、一日も早く復興することを願い、記憶の保存記事として今回の輪島のスギをお届けしました。

（入口となる、裏山への小道）

徳成谷内のスギ所在地

石川県輪島市徳成谷内イ

緯度：37.39644809
経度：137.08993472

ほとんど車は来ないので、路上駐車可能ですが少し離れた広い場所に停めましょう。
本文中にもありますが、集落の裏山進入路であり、個人所有の巨樹のようですので、できればお声掛けして入りたいものです。

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タグ：: 巨樹; 巨木; 所在地; スギ; 杉; 石川県

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2023年11月02日

大阪府が誇る異形スギ！ ~大沢のスギ~

巨樹巡りで大阪に来たなら、ここへ寄らなきゃいけません。
そう思うのは、大阪府随一のスギ巨樹であり、驚く異形のスギだからです。

大阪府三島郡。
都市としての大阪府ではなく、京都府へと抜ける山間部にそのスギ巨樹はそびえています。

府道79号線、ゴルフ場の西側に道路からもわかりやすい看板が立っています。
担当も、その存在を知ってはいたものの、近くであることと「山中」であることを理由に、なかなか訪れる機会がなかった場所。
しかし、所用で府道を走行中、その看板を見つけてしまったのです。

あぁ、これはもうすぐに訪問せよ！ということなんだと思い、意を決して訪れたのですが期待通りの素晴らしいスギでした。
担当が、意を決することが必要な理由。
いうまでもなく、クマです。

いくら大阪府とはいえ、油断することはできません。
それに、ネット上の写真を見ても本気の（？）山中の様子。
その上、担当の地元茨木市（三島郡とは、高槻市とともに山で続いている）でも近年はクマの目撃情報が出ているために、用心せずにはいられません。

その上、異形のスギにブルっと震えることと予測されるため、意を決するのです。

大阪府の天然記念物。
推定樹齢800年、堂々の巨樹古木です。

大阪府には、他府県に誇る二大巨樹である薫蓋樟と野間の大けやきがあります。
双方、押しも押されもせぬ巨樹ですが、今回紹介するのはスギであり、なによりもその偉業が印象に残るものです。

大阪府も、南部は林業の歴史があり、当地北部も森林地帯となっています。
しかし、全国的に多く存在するスギですら巨樹が存在しない大阪府。
その北部に、このような見事な巨樹が存在することは、前述の二大巨樹とともに知られるべきものだと感じます。

出逢った瞬間に、本当にここは大阪府なのか？と思ってしまうほどに荒々しい姿を見せる大沢のスギ。

おどろおどろしくうねる枝は、京都府の伏条台杉や岐阜県の巨大株杉を想起します。
大阪府のホームページによると、落雷などで幹が欠けた後に枝が育った、ことによるこの異形だそうですが、それにしても凄すぎる。

山深い他地域であったとしても、このような姿は驚くものですが、何度も言うようにここは大阪府。
よくこの姿が800年間残ったものだと思います。

ここは個人所有の山林のようで、地権者さんのご厚意で公開されている様子。
天然記念物登録をうけているから、公開しないといけないんだと思いますが、代々の地権者さんなのか、暴れ木として除伐されるか他の有用樹種を育てたいようなところのはず。

そう思っていましたが、府のホームページはこうも記載されています。
「集落の境に四つの神木があり、その一つがこのスギ」
なに？！四つの神木？！、そこが非常にきになるところですが、やはり昔から神木とされてきたために残ったようですね。

それが方角を見てのことだったのか、他の理由でそう考えられたのかはわかりませんが、神木にふさわしいのは言うまでもありませんね。

主幹を失ったことで、大スギの生命の危機感が一気に噴き出したのでしょうか。
幹から四方に枝を伸ばし、さらに伏条更新を進めているのではと推察される、扁平かつ幅広い大枝が地表から伸びあがっています。

巨樹には共通することですが、なんともいえない生命力を感じます。
それは単幹の巨樹であっても同じことですが、それ以上にこのような姿からは、一層の命のほとばしりが見えるようです。

しかしながら、府のホームページにはこう続いていました。

「2本が寄り合って1本になったものらしい」と。

それは伝承なのか調査の結果なのか。
おそらく調査結果なのかと思います。
一時期、樹勢が衰えていたようです。

樹木医さんが入り、診断したことによるものなのでしょう。
現在では、根をいためないように柵を設けられています。

こんな感じで。

訪問時、正直がっかりしたんです。
いや、遠目には感激し畏敬の念を抱いたことは言うまでもありません。

しかし、すぐにこのフェンスに気が付き、カメラアングルが限られるうえもう少し全体を眺めたいという欲求が生まれるからです。
しかし、そこは巨樹訪問のマナー。
後世にもこの見事な姿を残していくためにも、柵を超えていくわけにはいきません。
そう思っていたものの、よく見てみると入られるじゃないの！

いやぁ、妙に背の高い柵だと思ったんです。
しかも木製の柵との2段構え。
その理由は動物による土壌侵食の予防でした。

読んでよかった。
外側の柵の中に入って、と書いてある。喜んで！！

ということで柵の内側でその姿を撮影することができたのですが、さらに中の木製柵からは立ち入らないようにしましょう。
どこの巨樹でもそうですが、一部では柵を超えていく方も少なくありません。
巨樹訪問を多くアップロードされている方の中にも、そういう方もいらっしゃいます。

もちろん、担当も入りたい。
でも入らない。
ルールだから。守るための。

だから、今回は担当との大きさ比較はありません。

これほどの巨樹ですし、近づけないのは残念ですがこころよきかたは、どうか外側からの見守りをお願いします。

先のように、もしこの大スギが合体木だとしてもその存在価値に変わりはありません。
周囲の人工林の木々が頼りなく見えるほどの圧倒的な存在感は、神木としての雰囲気は十分です。

伏条更新が多くみられるウラスギのように見えますが、日本海側と言えない、いやどちらかといえば太平洋側である大阪府で、しかも多雪地帯でもない当地でどのようにしてこの樹形になったのか、考えたくなるのは無粋でしょうか。

樹木医さんが入る前の姿は、残念ながら知りえないのですが、どうももっと鬱蒼とした人工林だったようです。

大スギの周囲はほかの木々は少なく、柵を設置後に鳥による散布で芽生えたと思われる雑木が見られるものの、非常に「きれいに」保たれています。

訪れる人が多かった、ということではないのでしょうが、もしかすると周囲の人工林の若木の生長が良すぎて、十分な光や水分などの摂取ができていなかったのかも知れません。

担当が訪問した時も、昼間であり大スギ周囲には樹木がないのに若干暗めに感じたのは、日当たりとその周囲の木々の雰囲気なのかもしれません。
実際に暗いわけではありませんが、明るい斜面でないことは確か。

それに、道路から数分で到着できることもあり、それほどの緊張感無くたどり着けることも、怖がり（基、慎重！）な担当であっても暗さをさほど感じない理由でしょう。

とはいえ、やはり冒頭のクマ対策はしておきましょうね。
この異形に感じる身震いならいいですが、クマとの遭遇での身震いだけは避けたいものですから。

近寄れないことへの残念さではなく、近寄りがたい偉大な姿を見せる大阪府一のスギ巨樹。
若木に囲まれ、以降も元気に。そして1000年の樹齢を重ねた時、どのような姿でどのような賛辞を受けているのかを楽しみにしつつ、現在の姿をお伝えしておこうと思います。

この山中なら、腐朽による予防伐採ということもありませんから、寿命を全うするまで大切に残していきたいものです。

これからは、大阪府の三大巨樹として知られるように、ここにその異形を残しておきます。

大沢のスギ所在地

大阪府三島郡島本町大沢（個人所有ですが、訪問可能）

駐車場なし、路上駐車になりますのでゴルフ場への往来時間をさけることをおすすめします。

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muku_mokuzai at 13:30│コメント(0)

2023年03月05日

門前の高僧、後世に名を遺す　～婆羅門杉（下之坊の大スギ）～

近年、ほぼ月イチで公開していたため、一か月飛ばしただけでかなり久しぶりのように感じているのは、私だけでしょうか。
先月は、長々続く広葉樹シリーズの最中だったため中断するわけにはいかずに進めていると、2か月ぶりの巨樹の記事となりました。

今回紹介するのは、非常にインパクト抜群な名称のスギ。

弊社のある大阪府の隣県、奈良県。
近そうに感じるのですが、実際は山を越えたり渋滞を抜けたりでなかなかな道のり。
そういうイメージからか、お隣という感じが薄いことは否めません

しかし、見事な巨木が多いこともある上に、趣味の車での走行の舞台であったり、もしくはモータースポーツの聖地である鈴鹿市へ向かうための交通の要衝でもあるのです。
その奈良県天理市の市街から離れた場所に、山門の如くにそびえているのが、その名も婆羅門杉！

2本の巨杉の並び立つここは、下之坊と称されている元寺。
「花の寺」としても有名な長谷寺の末社だそうですが、さすがに華やかさはありません。

天理市、といっても市街地から山間に入ったところだからということもあるのですが、それがかえってゆっくりと「婆羅門」に対峙する時間を与えてくれるのです。

奇異なその名の由来は、婆羅門僧正に由来するとされています。
十一面観音さまに願い事をし、再度婆羅門杉に願い事をすると叶えられると伝えられるそうですが、お百度と同じような行為なのでしょうか。

樹齢八百年、という表記から想像するほどの太さではない幹回り6.8mという数値ですが、ここで特筆すべきはやはりその姿。

杉は時折、想像を絶するような異形をなすことがありますが、それほどではないものの特異な形状。
二本あるうちの一方、北側は天理市のホームページによれば幹回り7.4m。
その数値ではなく見どころは、その枝ぶり。

奈良県天理市　下之坊の婆羅門杉23

どっしりとした幹の上部でたけだけしく分岐し、水平方向に伸びたのちに垂直に天を目指す大枝。

伸び方自体は特殊な状況ではないのですが、多雪地域や日本海側などに多い「ウラスギ」という形態では多くみられるものの、内陸部の奈良県でこの姿というのが非常に珍しいように感じます。

奈良県には、以前に紹介している八房杉や高井の千本杉など、異形のスギがありますのでその姿自体驚くことではないのかもしれませんが、植物の生育という観点で見たときには、特異な環境にあったのだろうかと思いを巡らせるに十分な形状をしている婆羅門杉。

もしかすると、婆羅門杉が生長過程にあったとき大雪のが続き、一生懸命に伸ばしていた枝にも着雪し、少しづつその重みに耐える行為を続けているうちに、枝の付け根に「アテ」が形成され現在の形状になった、と考えるのですがどうでしょう。

奈良県天理市　下之坊の婆羅門杉20

太陽光の影響や風など、生育環境には大きな影響を受ける樹木ですが、この枝はそのものにかかる荷重が鉛直方向に働き続けたことを示唆している、と考えたくなるに十分な楕円形をしています。

全体的に太くなるというのではなく、下垂するように枝の下側に「頬杖」よろしく不均一な形状を有している。
一材木屋である担当の邪推とは別に、枝に関する情報がもう一つあります。

それは、枝が折れる、ということ。

どの樹木も、巨樹巨木以外でも枝が折れることは珍しいことではありません。
しかし、巨樹ともなるとその枝一つでもかなりの大きさと重さになります。

特に、今回のように貴重な建築物や民家の近くにある場合は、折れた枝により被害を受けることになります。
近年の大型台風で、幹そのものを倒壊させられた例も幾つかあり、日吉の神社のタネスギのように大きな被害がない場合もあれば、岐阜県の大湫神明神社の大杉のようにたまたま道路側に倒木したようなケースもありますが、いずれにせよ事前対処するのか事後処理にするのかはその樹木に対して、どのようにかかわるのかを考えさせられます。

婆羅門杉においては前者の事前対処をされているのです。

小枝も含めて、日本の巨木からの落枝は多くあるようで、近年も大きな枝が折れて建物の屋根を損傷したそうです。

それを受け、以降は定期的に枝を除去するなどの対応をしている、と現地にいらっしゃった地元のご主人から教えていただきました。

切りたくて切っているのではなく、やはり仕方ないのだとおっしゃっていました。
ネット上にある婆羅門杉の写真には、以前の枝を茂らせていた姿も散見されますが、担当の写真と比較してみていただくとわかる通り、正面からも枝が切られた切断跡が確認できると思います。

山中の巨樹の場合や、増えてきている「ほぼ住人のいなくなった集落」においての残された巨樹の場合は、落枝や倒壊の危険を考えることはほぼないでしょう。
しかし、身近な巨樹の場合は数百年の樹齢を数える場合、そのかかわり方の中に信仰や畏敬の念に合わせて、万が一の場合にも備えなければならないのかもしれません。

巨樹巡りをしていると、期待していた巨樹が見当たらず伐採された「静かな株」だけが、私に年輪を誇っている場所がいくつもあります。

貴重な樹種や太さの場合にはもし、現存していればどれほど立派で敬われるべき姿なのだろうかと思うのですが、人が近くでかかわる以上は早期伐採という選択も仕方ない時もあります。

担当にとっての巨樹巨木は、単なる大きな植物ではありません。
ましてや、単なる訪問記でもなく記録でもありません。

その場所での空気を感じ、触れられる時には触れ、環境や気候を感じて土を踏みしめ、観察し想いを馳せ、そしてかかわる人たちや住まい人たちのお話を聞く。

生きた一人の人間が、数百年数千年の樹齢の生き物と対峙し、そこに代々かかわる人たちや環境の変化のことを知り考える。
その時間をかみしめるための巨樹巨木巡りだと思っています。

婆羅門杉の表す姿もその一つ。

奈良県天理市　下之坊の婆羅門杉６

担当は街の材木屋でありますが、単なるモノ売りではありません。
いや、そうではないと思っています。

自社記事で巨樹を紹介するのも、どこかそんな想いがあるからです。
木材の組合誌において巨樹コラムを担当していることもそうです。

木材、ではなく樹木であり、その樹木をはぐくむ山を知ることは翻って人間の生活や環境やそれに必要な物事を考えることになりうる、とちょっと哲学的？！なことを考える時もあります。
そんな考えの一つが今回の婆羅門杉の姿でもありますし、名称でもあります。

奈良県天理市　下之坊の婆羅門杉21

正面の枝が残っていたなら、これほど明るい写真ではなく印象が変わっていたことだと思いますが、これも現在の姿。

今後また数百年、どのように人と関わりどのような姿になっていくのか。

そんなことを想像し、また樹木や植物、木材に思いを馳せる。
そんな契機になる婆羅門杉でした。

婆羅門杉（下之坊の大スギ）所在地

奈良県天理市福住町265

車通りは少ないですが、ご迷惑の内容に駐車しましょう

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muku_mokuzai at 13:30│コメント(0)

2022年08月04日

神秘の姿はイザナギとイザナミ　～大地主神社の夫婦杉～

巨樹巡りをしていると、慣れてきたころにミスをすることがあります。
いや、その可能性は少し前の時代のことかもしれません。

私が巨樹巡りを始めた時は、現在の様にインターネットのサイトも充実していなかったですから、もっぱら書籍の情報をもとにしていました。
書籍には住所の地番が無い場合や、簡単な地図すぎて分からないときも多くあって、意気込んで向かっても幾つもの巨樹にたどり着けないことがよくありました。

また、比較的容易につくことが出来た場合も注意が必要でした。
それは、目的地に同じ樹種の巨樹が複数本ある場合です。

確かに目的地で間違いないものの、神社（など）の入り口にある標識つきの巨樹の姿を、目的の巨樹と思い込んでしまい、本来の目的とする社殿奥の巨樹を拝せずに帰ってしまうというケースです。
以前に紹介している日本一のシイノキ、志多備神社のシイノキがまさにそれ。

今回も同じようなケース？！、ではないものの同じスギの巨樹があり、私にとっては社殿奥にあるスギに逢わずに帰るのはもったいないとおもうような、そんな場所なのです。

朝霧が立ち込める、静謐な雰囲気満載の高倉神社。

こちらでの目的は「スギとシラカシ」。
巨樹としては、シラカシの方が貴重なのでスギは相当太くない限りは驚かないもんね～、なんて思いながら社殿鳥居をくぐります。

するともう、いきなり目的のスギ登場。

生き生きとし、武骨に伸びあがる太い幹を誇っているかのようなスギ。
幹周り5.7m、樹高33mという綾部の古木・名木100選に選ばれたスギです。

確かに、大木で立派。
今後も更に元気に育つだろうと思う姿ですが、スギで幹周り6m弱というのはここ綾部市のある兵庫県でみても、決して太いわけではありません。

写真では結構太いと思うのですけど、現地では「うん、これくらいだろうな・・・」というのが正直なところ。
もう一つの目的は、シラカシ！
広葉樹の巨木で、ケヤキやクスとは異なりなかなか珍しいカシ。

それも、このスギのすぐそばにあります。

後ろにスギが見えるこの位置。
参道から少しそれた場所に立っているシラカシ。

カシのイメージから期待する剛健な幹とは異なり、既に幹の内部、というかほとんどが朽ちている状態。
もちろん、樹木としては周囲の形成層が健全であれば、人間が思うほど弱っているということではないのかもしれませんが、見た感じはやはりちょっと残念に感じるものですね。

見あげる、というよりもそっと手をあてて話しを聞きたい。
そんな印象でした。

さて、ここまで終わり普通であれば、次の目的地を目指すところなのですが事前情報において、社殿の奥にも手前のスギほどの大きさではないものの、スギの大木があるということ。

冒頭、入り口の巨樹だけを見て奥の巨樹に気付かないケースがある、としましたが今回は手前の巨樹ほどではない、との情報。
それに、昔はその巨樹の情報も写真をみることがなかったので、目的の巨樹を勘違いすることがあったものの、ネット記事に写真が出ている時代。
そんなこともありません。

目的は先のスギとシラカシ。
わざわざスケールの小さいスギを探しに行くべきか・・・他へ回る時間を優先すべき（一日で10か所を周ることは日常だから・・・）かと考えたものの、予定の所要時間よりも早く目的を終えていることもあり、少し時間をとって見に行くことにしました。
でも、後からしみじみと「行ってよかった・・・」と思うんですけどね。

高倉神社の社殿向かって右の、笹が繁茂した小径をすすんでいくとまた小さな鳥居があります。
さっき、大きな社殿を通ってきたところなのに、またこんなはずれに鳥居？！と思いながらも、小径が続いている通りに鳥居をくぐり、更に奥へと歩を進めようと思ったとき。

鳥居にかかるその文字に、「伊邪那伎神社伊邪那美神社」と見えます。

ん？！この奥に、神話で有名なあの二柱の神様が祀られているということなんだろうか。

そんなことを考えながら少し進んで目に入ったのはまさしく、その二柱・・・
否、その拠りどころと思しき巨樹の姿。

おぉ・・・

なんと神々しい！
鳥居を従え、朝霧にかすむ空に並び立つ二本のスギ。
これを夫婦スギとせずなにを夫婦スギとするのか・・・

先の鳥居の二柱が、このスギを依代に我らの世界に降り立つ。
あの鳥居のすぐ後ろに。

周囲には神聖な場所であると言わんばかりに他の樹種もなく、空からすっぽりと、いや天空からの神の梯子がかかる場所であるということを暗示しているかのようです。

鳥居の奥のお社は、大地主神社とされています。
解説板には、隣接する夫婦スギがパワースポットである、とも。

もちろん、そんなことを言われなくとも注連縄で結ばれたこのスギたちと、高倉神社の鳥居をくぐった時よりも一層静謐な空気に感じるこの場所からは、パワースポットという言葉が今一つ馴染めない私でも、神のお力を感じる心持になるのです。

少し現実的な話に戻ると、二本のスギは幹周りそれぞれ4.9mと4.7m。
先の入り口のスギの幹周りが5.7mであったことを考慮すると、まったくの迫力不足、と思いませんか？
先ほど、6m弱の幹周りでは驚かない、などとのたまう場面があったところですよね。

前言撤回（汗）。

何と美しいのか。
伊邪那伎と伊邪那美という、日本人の多くがその御名のみは知っているであろう神。
その御名がある上に、夫婦神であった二柱になぞらえるように天に伸びるスギ巨樹をみて、その神秘性を感じない方がおかしいというものですよね？

とくに暴れるようなそぶりも無く、枝も巨樹の生命力というよりは「あるべくして最低限のものがそこにある」かのように、競うでもなく自然にそこにあるのです。

普通ならばここで、夫婦神に肖って「夫婦円満」とお願いをするところなのかもしれません。

でも、ウチは十分に夫婦円満。
これ以上仲良くなってしまうと、家内にうっとおしがられかねない（汗）のでそれは無し。

というか、古事記などに造詣が深い方は夫婦神がどのような物語を辿るかを御存じでしょうし、ここにきて夫婦円満と素直に思わない私の心中もお察しの事と思います。

とはいえ、この二柱は日本の歴史や神話にとって非常に重要な存在ですから、やはり有難い存在と感じます。

周囲に木々が無い、といっても夫婦スギを含めて自身も画角に納まろうと思うとぜんぜんアングルがありません。

結局、参道のこの位置。
実際に人間がそこにいると、巨さはもちろん神聖な場所に人一人・・・という感じに見えませんか？
余計なもの、のように自分でも見えてしまいます。

巨さ比較で入っているだけなんですけど、まったく余計。
少し離れて眺めていると、このスギが指す先は高天原で今こうしているときにも、天の浮橋から伊弉諾と伊邪那美の夫婦神が私たちを見下ろしておられるのかもしれない、という気分にも感じます。

事前情報では、その数値から侮っていた夫婦スギ。
しかし、朝霧に包まれるその姿は、神々しくも美しく存在感にあふれるものでした。

入口のスギでは淡々としていた私も、思わず「おぉ・・・」と声を発した夫婦スギ。

神秘の姿はやはり、先を急ぐ心ではなく気持ちの余裕がどこからかの誘いを受けて、この場所へと足を運ばせたのかもしれません。

巨樹を事前情報とその幹周り数値だけで判断するべからず。

もう、いい加減理解しているつもりなのですが、このような意外な出逢いがあるからこそ、思い込みも楽しくそして、思い込みで出逢いを逃すことが無いように訪問の時間をしっかりと満喫できるように心がけているつもりです。

是非皆さんもゆっくりと、できれば朝霧が出る時間に夫婦スギに逢いに出かけてください。

きっと神秘的な空間を感じる事ができると思いますよ。

高倉神社内大地主神社の夫婦スギ　所在地

京都府綾部市高倉町奥路6　高倉神社本殿奥大地主神社

駐車スペースあり

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タグ：: 巨樹; 巨木; 所在地; スギ; 夫婦スギ; 京都府綾部市

muku_mokuzai at 13:30│コメント(0)

2022年05月08日

街と山の差を生むのは、その環境と達成感　~笠形寺のコウヤマキと笠形神社の夫婦杉（大スギ）目的地編　①~

登山口のコウヤマキを後にし、日が沈む迄に戻るべく大スギへの歩を進め始める私。

登山口から来ると、確かに「笠形寺・笠形神社➡」となっているし、地図にも寺を過ぎて登っていくようになっている為に間違えてしまいますが、ご住職はこの道を左に進んでいく方が良いとおっしゃる。

ここはお言葉を信じ向かってみることに。

寺の方へはアスファルト舗装になっていますが、教えて頂いた道はコンクリート舗装。
もちろん、これでもありがたいのですけども明らかに、不安になる。
なぜなら、ここからは林道ではなく簡易な通行用の私道か林業作業道ですよ、みたいな合図に見えるから。
つまり、いつもはこの舗装が見えると車のオイルパン（エンジンオイルを溜めている車の下にある部品）やエアロパーツを損傷しないように神経をとがらせる必要があるサインとして、一層緊張する合図だからです。

杉の枯葉が積もっているのも、通行の少ない証拠（汗）。
そりゃそうです。
登山道なんだから。

ここからは意を決し、カツカツとストックの音を響かせながら舗装路を上っていきます。
目指すはご住職のおっしゃる休み堂！！
そう気合を入れてどんどん歩を進めていくものの、山には入っていくものの休み堂なんて見えてこない。
とにかく、勾配のきついところを幾度も通り（そんな気がする・・・）かなりの距離を上っていった先にやっと、その休み堂が見えてきました。

ちっくしょう・・・
息があがって、クマよけの歌声を発声する事ができない・・・・
その上、登山靴すら重く感じるように・・・・

大丈夫だ・・・この休み堂で休んでもう少し、もう少し行ったところにきっと大スギは姿を現すはず・・・
そう信じて、もう一度歌声（奇声）をあげながら登り続けようと思っていました。
そこへ目に入るのが、「神社まであと30分」の看板。

え？！嘘やろ？！
往路1時間のまだ半分？！
寺からでも相当上ったで。で、あと30分？！
まだあと30分も、この重い足を引きずりながらも黒いヤツの恐怖と戦わねばならんのか・・・
日頃の不摂生と体重増加を恨めしく思うのはこんな時。
スキーで鍛えているつもりになっている足腰も、まったく歯が立たず。

当然、ここにつく頃には安心の笑顔など消え失せ、帰路の道のりと時間が心配になり始めているところ。
行か行くまいか・・・
しかし、もう一度勇気と体力を振り絞ってこの場に挑む気にはなれず、折れそうな心を奮い立たせて再度歩を進めることに・・・

この到達時間の表示、後でわかるのですけど相当励ましてくれる雰囲気であるものの実は、実際の所要時間を考えるとサバ読みの様な・・・
いや、勇気づけてくれる頑張れる源と信じなければならないのですけど、つい愚痴が漏れてしまうのはビビりだから。

その理由は、頑張り続けて声も枯れて、持参のペットボトルも飲み干そうかという時、目の前に現れた景色を見て思うのです。

おぉ！？ついに到着か！？いやまた東屋の様なものが見える・・・
そして、道を示す➡の看板も・・・

嘘や、もうあかん、帰られへんし行かれへん（涙）・・・

さっきは休み堂。
そして今度は八角堂。

もうえぇ、もうえぇねん。
お堂シリーズ、もうえぇねん・・・・
しかも、看板には「神社まであと15分」。

あかん、もうあかん。
なんぼ何でも、休み堂から15分しか歩いてないとかありえへん。
もしかしてこの時間表示、直線距離表示か若しくは、不動産取引における徒歩所要時間基準を用いて、この登山道の距離を割り返して表示しとんのとちゃうやろな！！、と独り言ではなく大声で発狂しそうな声をあげてしまうような、見苦しい状態に陥る状態。

休み堂から30分で、今半分やろ？！そしたら、同じだけの苦労をするってこと？
いや、信じるなよ。次の看板はきっと「あと５分」が出てきてから30分くらいかかるぞ・・・と疑心暗鬼。

こんなの、私だけなんだろうか・・・
既に訪問されている方たちは、そんな思いを投稿されているのは見かけない。
私がへなちょこなだけなのか・・・
うぅ・・・

流石にもう引き返すことはできないし、さっきから「ヒー・・・・・ヒー・・・・」と鹿の鳴き声とスギの揺れる音だけが、私の鼓動との三重奏を奏でている状況。
いや、荒い呼吸音との四重奏か。
再度、この苦労をして訪問する勇気無し！ということで、行けるところまで行くために最後の勇気を振り絞っていきます。

もう、俎板の上のなんとやら。
どうにでもしてくれ・・・と思っていると目に飛び込んでくる、あの憎らしい・・・基、有難い励ましの看板。

なになに・・・
あともう少し？！・・・

うわー、ついに時間表示なくなった！！！！！！
励ましの時間終了かっ？！もう、さすがにみんな、時間表示を信じなくなるからか！！！！

もうあかん、ほんまにこの看板は！！！
と思う気持ちを抑え、「クソぉ~・・・この辛さ。絶対にブログに残してやるからな・・・」という訳の分からん執念を燃やし、この最後の看板を背にしていくと、心を和らげるようにミツマタがあちこちに見えてきます。

これはもしや、目的地に向かう上で心を落ち着けるための仕掛けなのでは？！。
そう思わせるように迎えてくれる。

このころには両手に持つストックが、クマよけではない本来の用途に近い、登山補助のストックと同じような役目に変わっていました。
いつの間にか、視線も前ではなく下にむきかけていたその時、明るく開ける台地が・・・
あぁ、到達した笠形神社・・・

目の前には石段と大きなスギと、並んでいたであろう大きな切株。

長かった道のり・・・

もう、クマが出てもうでは上がらず死んだふりやな・・・
そんなしょうもないことだけしか考えられない状況ながら、登山者を受け入れてくれる社殿と日差しを求め、石段を上った先には久しぶりに感じる「山の神」の鎮座を見ることになったのです。

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muku_mokuzai at 13:30│コメント(0)

2022年02月13日

御神木の大スギへと続く道のり～白山中居神社の巨木林と浄安杉～

一番最初に訪れた巨樹は何だったのか？！考えてみるけどもはっきりしない。
それは、もともと好きだったこともあるし、「よし！今日からめぐろう！」と決めたわけでもなく、またカメラの性能も良くなかったうえ撮影の仕方も稚拙だったこともあり、こんなのめぐったうちに入らないと自分の中でバッサリきり捨てているからかも、と思っています。

そんな中で、2014年に紹介している日本を代表する巨樹の一つである石徹白のスギは、今に続く巨樹めぐりのルーティーンを行い始めた場所の一つです。
撮影のアングルや方法、撮影する視点など自分なりのルールができたところ。
当時の記事は、大スギのことを伝えたいがゆえに詳細を記載しきれていなかったがあります。

それは、大スギに至るまでに存在する巨木の森を持つ神社と、その神社の奥にあるもう一つの巨樹のこと。

先日、仕事で使う古い資料を探していた時に偶然見つけた写真。
それは浄安杉なる巨樹の写真。
実は、その名称は覚えていたもののすぐに姿を思い出せない自分に驚き、早速写真を見てみました。
そこにあったのはそう、石徹白の大スギに通じる白山中居神社。

岐阜県の白鳥観光協会のホームページによれば、富士山・立山と並ぶ日本三名山である白山を開いた泰澄大師が養老年間に社城を拡張したと伝えられ、宮川のせせらぎと樹齢200年から1,000年の150本に及ぶ杉の大木に囲まれた静かな場所、とあります。

あまりにも有名な石徹白の大スギに隠れて注目していなかったのですが、説明のとおり数百年生のスギの巨木がいたる所にあり、なおその先にはさらなる巨杉が存在するのですから、信仰の上での神社という観点以上に訪れておかねばならない場所でした。

立派な鳥居を超えて進んでいくとすぐに表れる巨杉群。

おいおい、いきなりこんなに林立するの？と思わず声が出るほどに並び立つスギたち。
上を見上げているうちに、進む石段を踏み外してしまいそうです（汗）。

先にはさらなる巨樹が、と分かってはいてもどうしても立ち止まってしまうのは、木々の中では本当にちっぽけな自分の存在を実感するとともに、だからこそ再度自分の存在を確認できるような気がするから。
でも、あまりにも並びすぎてアングルに困っちゃう。

そんな悩みを抱えながら、本当の目的（？！）までの道のりを進みます。
境内の端、浄安杉と呼ばれる巨杉への案内板のあるところから「登山」です。
その看板にある200mに惑わされてしまいますが、今までの常瀧寺の大公孫樹や大古井の千本カツラのように、垂直距離表示である場合は想像以上の苦労を伴うので注意が必要！（200mって、近いイメージがしますよね？！）

途中にある巨木に視線を奪われながら（岐阜県は本当に山が豊かだから・・・）200m（といわれる）道のりを進むと視界に入ってくるその姿！

なんとなんと・・・
先入観やイメージというのは、本当に深く人の思考に影響するものだと感じました。
石徹白の大スギがすごすぎて、大きくはあるだろうけれどもさすがに比較にならないのでは・・・なんてバカバカしい考えをしていた自分を恥じました。
比較なんてとんでもない。
同じ地域にあるとはいえ、まったく別物の存在感とその姿。
想像以上、期待を超える、そんな姿です。

ずんぐりとしていながらも樹高も高く、目通り幹回りの公表値では12.1m。
私が出逢ったときに驚く巨樹の数値の目安の一つである、目通り10mの基準を超えているのですから立派に感じるのは当然。

その上、太い幹からまるで猛牛の角の様に突き出ているように思える枝や、太い株に巻き付くように出ている細い根などが、生命力の強さを物語っているようです。

迫力さえ感じる姿ですが、樹齢は不明とされているものの500～600年ほどではないかともいわれています。
そう考えると、受ける印象は若さある力強さなんだろうか・・・

神社の解説にある樹齢1000年の巨木というのは石徹白の大スギの事なのでしょうけども、浄安杉の持つ迫力と山中に聳える姿に出逢うと、数字以上の感動があります。

写真からも分かるように、根元の近辺で幹が分かれておりさらにそこから太い幹が分かれているのですが、一本のスギではなく合体したものだと考えられています。
太い幹を跨いで細い根があるような状況を見ても、おそらくそれは間違いないでしょう。

しかし、合体木だからと言ってその存在価値が薄まることは全くありません。
それ以上に、樹木は通常では癒着したとしても樹勢の強い方に飲み込まれるような状況になる場合が多くあります。
しかし、浄安杉はどうでしょう。

太さも高さも勢いも、それぞれが猛々しく威勢を保っているではないですか。

スギの巨樹では意外と多くに合体木が見られます。
そうですね、高井の千本杉などは最たるものではないでしょうか。
巨樹めぐり初心者である私が、畏れおののいて近づくことさえできなかった大スギ。
確実に飲み込まれてしまう、と確信するほどの迫力は鮮明です。

それとはまた異なるものの、浄安杉も見事に合体している個体です。

さて、この巨杉の名の由来については解説板に表記があります。
しかし、その表記よりも名称の文字から想像する意味を尊重したい気持ちになるのは、白山という信仰とともに石徹白の大スギの存在があるから。

浄は「けがれなく清らか」で「きよい、きよめる」を意味し、安はそのとおり「やすらぎ、穏やかに落ち着く」であり、白山や石徹白の大スギへと続く道のりにおいて人のけがれを落とし、穏やかな心で神域へと向かうことを意図していると私は感じていますがどうでしょうか・・・

有難いことに、すぐそばまで近づくことのできた巨樹。
石徹白の大スギではこんなにそばによることは叶いませんが、ここではその傍らに寄り添うことができます。

訪問時はあいにくの雨天でしたが、降り注ぐ雨でさえその存在を美しく見せるものであり、晴天時には感じられない貴重な空気を感じる事ができました。
大スギへと続く一部分でもあり、神社も浄安杉も石徹白の大スギも含めた白山というものの大きさを、改めて感じることのできた素晴らしい出逢いとなりました。

浄安杉所在地

岐阜県郡上市白鳥町石徹白3-48

駐車スペースあり

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muku_mokuzai at 13:30│コメント(0)

木ぃクン