本物の無垢木材　～茨木市戸田材木店・セルバの木の虫ブログ～:クリ

クリ

2025年04月12日

蟻留納栗机、製作納品完了！

誰もが手にすることはできない工藝品。

もちろん、その価値を理解していなければなおさらですが、理解すればするほど遠く感じるのも工藝品かもしれません。
そんなことを感じるからこそ、弊社の木材を使用した「誠昌酒㐂（せいしょうしゅき） Toda joinary 」を販売しているわけですが、今回はそこに近づく？！わけではないものの、そんな雰囲気も出せればなぁ・・・と思いながら製作したもののご紹介。

弊社作業場にて、景色を映すほどに光る板物。

弊社定番の日本の広葉樹シリーズである、フローリングや土台及びデッキ材等をお届けしている樹種、クリです。
クリは、特別な用途の場合は非常に注目されるものの、今回の様な机やテーブル、そして本来の性質を発揮できる屋外用途などには、実はあまり活用されていないものです。

もちろん、弊社の場合は積極的提案していますので、すっぽん料理店のカウンターや今回の様な机にも幅広板が採用されていますが、毎度「こんな大きなクリが材木であるんやなぁ・・・」と言われるほどに、意外な様ですね。

あるんですよ！（笑）

そして、それを利用して50cm幅の机を製作するのですが、その製作も一般的なものではなく、全て手刻みによる金具などを使わない仕上げなのです。

鉋や鑿など、刻み道具が広げられ少しづつすすめられる製作。

今回のお客様は、各方面に非常に造詣が深い方で、工藝品にも大変親しんでいらっしゃることから、机の脚を蟻（あり）という形状で組み合わせる提案を頂きました。

これ、言うは易しなんですが、難しい。

担当が作るわけではなく大工さんに任せているのですけれど、狂いなく隙間なく、そしてバランスよくくみ上げていくのは本当に繊細な作業。

工藝品レベルで見ると、また仕事内容が異なるので比較はできませんが、家具や造作に長けた大工さんでなければなかなかやりたがらない仕事です。

一般的な金具を使って、切った貼ったで作るものとは違うので、少々製作日数がかさんでしまいましたが、非常に良いものが完成しました。

組み上がり、天然オイル塗装を施すところ。

若干薄かった色合いが、どんどん深みのあるクリ色に染まっていく。
そして、しっとりとしながらも魅力的なクリの深い表情も浮き立ってきます。

これは、お客さまのところで工藝作家さんの机と一緒に並ぶ為、見た目の印象やバランスがとれているかと考えましたが、周囲にクリが使われていることもあり、搬入後はしっくりとなじんでくれました。

しかし！、納品でホッとしていて写真を失念。

折角のチャンスだったのに・・・
と思うのですけれど、気にいって頂けたようで一安心。

実は、こんな製作も「予算次第では」行っております（笑）ので、一枚板とともに本格手刻み製作の御依頼もお待ちしておりますよ！

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タグ：: 栗; クリ; 日本の広葉樹

muku_mokuzai at 13:30│コメント(0)

2024年08月23日

伝統工法で建てよう！を少しだけ～日本のクリデッキ施工と地松手刻みのエントランスのおうち～

前回の記事で、伝統工法で！そしてそれを可能にする大工さんと材料で！と言いましたが、完璧にそれを遂行するにはなかなかハードルが高い。

材料は現代では時間と労力があればどうにかなるでしょうけれど、大工さんと巡り合わない。
文明の利器であるネットに頼れば頼るほど、情報の沼にはまる確率大！

ではどうすればいいのか。

建築現場に行くことです。
情報をもって現場に行くこと。

情報とは、皆さんがあつめられているものと、少しだけ異なった方向の情報。
もしかしてそれが、少数派の伝統工法かもしれません。
巷に溢れる自然素材の家と宣伝されているところの多くは、工法にはこだわっていない。
いや、使用する耐震金物や素材へのこだわり（受け売りの情報が多い）は表記されているかもしれません。

それは、それを建てる大工さんやその技法、そしてそれ以前に木組みの伝統工法ではなく、木という木質素材が見えていることだけが自然素材の家だとアピールすることになっているからだと思います。
無垢材大好き、森と建築をつなげる材木屋が言うのだから間違いありません！（笑）

ということで、今回はその伝統工法が間近に見える大工さんの仕事と、そしてそれを実現する森をつなぐ材料をお届けする材木屋のおうち（勝手にコラボみたいにしてますけど・・・）をご紹介します。

日差し照り付けるお盆前。
日本の広葉樹の様子を確認しに行ったのは、東大阪市。

予想通り、つやっ艶に輝くクリたちが迎えてくれました。

弊社が強くおすすめする、日本の広葉樹活用のうちの一つ「日本のクリ」。
土台や柱利用の角材をはじめ、デッキ材用の板材を在庫として保有しているものです。

角材については、以前の記事にてその想いを吐露していますし、デッキ材についても何度も取り上げていますが、この節有りかつ虫孔ありの広葉樹利用が大事なのです。

針葉樹とは異なり、広葉樹に節有りという概念があるのは一部のグレーディングのしっかりとした無垢フローリングのみ。
そんな中、長尺（3m以上）で節などがあるものもしっかりと山から運んでくれる人が居るからこそできるもの。

クリはいわずもがな、日本産材の中では耐久性はピカイチ！

その特性を、室内用途の化粧材として耐久性に関係のない部分のみに使用するなんてもったいない！
否、装飾用はそれでもいいのですが、何度も言う様に適材適所の長所を活かすとともに、通常は使われることのない節や欠点を含む部分を、屋外というこれ以上ない適したステージで使用することによる、樹種のアドバンテージを得る事ができること。

それが日本のクリ、デッキ材です。

よく、高耐久木材は高価だから塗装で持たせるよ、というお話をうけます。
それもいいでしょう。

しかし、根本的にはそうではありません。
塗装と本質的な木質部分は別問題。

いや、それ以上に担当がこだわるのは、価格と質感と適材適所。

広葉樹の木目、それが経年変化で美しる出るのがクリだと思います。
もちろん、他の広葉樹も木目は出るのですが、底光りというか銀鼠色に輝くように感じるのはやはり、クリです。

それは、担当が続けている屋外での実験で感じるところ。

それとともに、価格は一般流通の高耐久南洋材に比してもリーズナブルに設定しています。
それは、望む人に届けたいから。

南洋材以外に高耐久な木材の選択肢がなく、そちらに移行する皆さんに向けての選択肢。
もちろん、先の通りの適材適所とともに。

今回は、土台や束まで全てがクリ！

いつもおすすめしているのは、土台などは一般流通ヒノキで床材はクリなのですが、今回はオールクリ！！
見えないところのホゾ（これも前回触れましたよね？！）もしっかりとされているそう。

これならば、経年変化を楽しみながらも長い期間、無垢材とともに本物の木製デッキを満喫して頂けます。
流石です。

それもそのはず、ここを建築された大工さんは伝統工法を知る大工さん。
そうでなければホゾまでこだわることはないでしょう。

そして、その技法はなんと屋外でも見る事ができるのです！

いやぁ、驚きでした。

用途は聞いていたものの、やはり伝統工法の大工さんの仕事は美しい。
撮影当日は、ひどい炎天下だったため妙な色合いになっていますが、エントランスを飾る屋根は地松です！

それも、手刻みによる伝統工法の地松構造。

もう、これ以上ない贅沢の極み。
それを屋外スペースで・・・
施主様が羨ましくてたまりません。

もちろん、金物はありません。
木組みです。

いつもなら、材木屋らしくその木材自体をご紹介したいところなのですが、今回はやはり伝統工法です。
大工さんの技術と技法が素材を活かす。
技術と技法が材と絡まってしっかりとした建築を成す。

それを屋外で見る事ができる贅沢。

あの長い栓、見えますよね？！
腕木は長ホゾで、しっかりと柱に固定されています。

いや、そういうと語弊がありますが柔軟性を持ちながら引き寄せられているのです。
それが伝統工法。

因みに、化粧野地はこちらも弊社在庫の、スギ上小無節合じゃくり板ですが美しい！
基、持ち出し腕木の接合部分上部に見える、飛び出した部材がわかるでしょう？！

ここも継手なのですが、伝統的な継手工法を用いられています。

こんなの、見たことないですよね？

そこなんです。
自然素材の家、無垢材を使用、という宣伝文句の家は多くあります。
しかし、本物の大工さんが作る自然素材の家は、こういった組み方や工夫、工法が採用されています。

見えない場合もありますが、こういうところが違うのです。
いや、根本的な違いなのです。

柱が引き抜けるとか、瓦が重いから倒壊するという安易な考えとは異なる、ほんとうの木造伝統の技法。
もう、そういう大工さんや工務店さんと巡り合うしか方法が無い、と言いたいくらいに建物は違いがあります。

それこそが唯一の正解！とは言いません。
しかし、「地震対策」をこうじるのであれば、対策の必要が無い工法を選ぶ方が先の様に思います。
それはやはり、それが可能である大工さんと、そのつながりがある材木屋との出会いではないかと感じます。

建築は木造が全てではありません。
しかし、木の家、無垢材の家が希望であれば大工さんとの出会いを大切にすること。
先ずはそこを見てもらいたい。

材木屋で建築をしているからこそ分かる意味。
出合が無い場合は、弊社が紹介します。
伐採にも行きましょう。

少しでも、本当の木の家が出来るように。
全てでなくてもいい、重要な部分から考え始めるきっかけに、少しづつ始めてみませんか？！
と伝えたくなる伝統工法の大工さんの無垢材のおうちリポート！でした。

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タグ：: クリ; 栗; 地松; マツ; 赤松; 乾燥材; 日本の広葉樹; 屋外使用の木材; 木製デッキ材; 施工写真

muku_mokuzai at 13:30│コメント(0)

2024年01月21日

木を活かす！日本のクリ、デッキ材加工中！

「熱帯産ハードウッドと同等以上」。

それが最初の条件でした。
屋外木製デッキ材を検討する上での条件です。

熱帯産ハードウッドとは、東南アジアやアフリカ、南米などから輸入される重硬な木材で、樹脂分であったりタンニンを多く含むために、腐りにくく虫害も受けにくいなどの長所があります。
それらの成分が少なくても、基本的に硬質なので紫外線含む物理的な劣化に対して優れています。

一般的に、屋外の木製デッキ材を検討する場合必ず候補に挙がるもの。
もちろん、非常に優れた性質を有していますが、年々価格が上昇し室内用の化粧材用の木材と同じような価格帯になっているものも多く、見積時点でヒノキ他の針葉樹に代わってしまう場面も少なくありません。

桧などの針葉樹が悪いわけではなく、きちんとした用法と性質を理解した材料を調達すれば、ハードウッドと同じ、とは言いませんがある程度の使用には十分に耐えてくれます。

しかし、その二択に一石を投じるのが弊社がおすすめしている、日本のクリ！

日本産の木材の中でも、傑出した耐朽性を持つ樹種。

古くから、土台や水気のある場所に使用されてきた有用な木材。
現在でも、大径木は銘木として様々に使われ流通しますが、今回のように屋外デッキに使用されることは非常に稀です。

単純に原木価格が効果なために、そのような用途には使えないからです。

しかし、クリでも銘木級以外の丸太もあるのです。
知られずに使われないだけ。

弊社では、それを適材適所に使いたいと思うことと、それ以上にあのクリの美しい木目を、屋外でも活かして「無垢の木のデッキ」を経年変化後も感じてほしいと思うから、です。

色も変わらず質感も変化せず劣化する人工物ではなく、またシルバーグレーになった後の木目がわかりづらいハードウッドでもない、そして日本で産する木材を日本で長く使いたい。

こんな美しい木目が、褪色しても美しく映えるのです。
これが、「ザ！ウッドデッキ」を演出するわけですが、クリの特徴である灰汁が出るのが一つの欠点。

いや、欠点ではなく特徴。
灰汁もクリの持つパワーとして、喜んでみてもらえるような方に向けて。

そうです、当初はクリではなく何かをすすめてほしいというご依頼でした。
そこで、価格でも十分にハードウッドから比較検討できるクリを候補にあげました。
あえて。

興味を持っていただけるかどうかでしたが、加工や質感などをとても大事にする方からの依頼でしたので、気に入っていただき祝採用！
現在加工が進んでいます。

また、仕上がりを見てみたい。お届けしたい。

弊社加工場で進んでいますので、見てみたい方は今のうち！？（笑）
あ、いやその隣では兵庫県産のスギ無節材で、幅はぎミニテーブルを製作している大工さんも・・・
みなさん、楽しい木の仕事、してはります！

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2022年10月18日

今年も入荷、120本　～日本のクリ　土台用角材～

今年も来ました！（というか、来ていました。既に・・・汗）

弊社が取り組んでいる日本の広葉樹利用の一つ、「日本のクリ、土台角用材」。

広葉樹山に訪れた時、山土場で仕分けされた大量の広葉樹の丸太を見て疑問に思いました。
「右と左は何が違うの？！」

針葉樹の様に、ほぼすべてが通直で整然と積み上げられている光景とは全く異なる、どういった選別なのか少し分かりにくい仕分け。

いや、私が分かりにくかっただけでそれは単純に、「細い、曲がり、節」で分けられていただけでした。
「だけ」としたのは、原木市場へ出荷されるもの以外に分類されたものでも、どうしてこちら側に？！と思うものが多かったから。
つまりは、使う側にすれば「ここで切れば・・・」とか「これなら節があっても・・・」という、掘りだして帰りたいようなものが、バイオマスやチップ工場へ運ばれるというからです。

中には、立派に太っていながらも大枝が出ていたからと通直な幹を「不適格」としていたものもあり。
そして、一般的には受け入れられなくても私の様なものには非常に響く、美しい曲線を描く曲がり広葉樹の数々も、「不適格」だったのです。

殆どの人は知らないことと思いますが、広葉樹の曲がりは芸術です。
命の曲がり。生きざまそのものです。
マツもそうですが、ヒノキやスギの様に通直なものが外的要因（斜面や負荷）によって生じるものではない場合が多くあります。

それらは変な癖があるものではなく、生きていくために自らの生きる道の方へ伸びたものたち。
もう、見とれる曲線なのですよ。

基。

針葉樹の造材に慣れてしまうと、とにかく節や軽微な曲りも選別ではねられてしまう。
そんな状況を、伐採現場と山土場で目にしてから目覚めるように私の木材への取り組みが変わりました。

小径木のきれいなものは自社オリジナルのフローリングに。
曲り材は、曲りなりを活かしたいと共感してもらえる大工さんに。
そして、今回の様に特殊な用途に賞用されてきたものは出来る限り、元の用途として活用できるようにしていく。

腐りにくく耐久性が高いクリ材は、土台やウッドデッキとして。

本来の適材適所。

その上有難いのは、短くカットすることが慣例の広葉樹丸太を、4mや5mなど長いままで山から出してくれる環境があり、そこで決断したのが土台でした。

例え細くても、少々曲がっていても、辺材の少ないクリという樹種の特性を利用し、じっくりと天然乾燥をさせて土台にする。
こだわりの大工さんに使ってもらうため。
そしてそのおうちが100年、もっと大切にされるため。

そうすれば、数十年～100年育ってきた広葉樹も循環し、伐採現場に意味が生まれる。
チップやパルプに破砕せずとも、広葉樹は様々な特殊用途を持っている。

そこにあて嵌めるプレーヤーがいないだけ。
儲からないから・・・・

ここが大きなポイント。
儲かるならだれでもやっているし、大きな投資がある事でしょう。
儲からないからしない、そこには木の好きな材木屋の関わりしろが、いやそれしかないのですよ。

弊社がしなければ！！つたえねば！という使命感に勝手に駆られて今年もできました、120本。

有難いことに3mや4mの長尺を多く造材してくれましたので、いろいろな現場に対応できそうです。

生木の状態ですので割れは少ないですが、乾燥が進むとクリはバリバリに割れます。

また、節あり材ですので節や洞を含みます。
中にはこんなものもありますが、これをはねてしまうからいつまでも安定した製材品などできやしないのですよ。

和室の化粧材や、欠点一つない無垢材のおうちにはそぐわないかもしれない。

でも、節や洞や割れを許容できる木の家にとっては、心強い適材適所の材です。
特に、長尺材120mm角仕上がりとして使うことのできる広葉樹はなかなかありません。

どこにもないから作る。

無駄なく利用できる用途に使う。

山で頑張ってくれる人が長尺を出してくれる限り。

街の材木屋は頑張ります。

今年も数年後の出荷の為に、丁寧に桟を入れて眠りにつくクリ材たち。
次に目を合わせるのはいつの事か・・・

ゆっくりと休んで出番を待ってもらいます！！

タグ：: クリ; 栗; 土台; 日本の広葉樹; 屋外使用の木材; 土台用の木材; デッキ材

muku_mokuzai at 13:30│コメント(0)

2022年02月19日

屋外木製デッキ材、日本の栗（クリ）デッキ材加工中！

近年、弊社が力を入れている日本の広葉樹利用。
一度に大量に、いつでも同じ寸法を供給できるという代物ではないのですが、その分大切にわかっていただける方にだけお届けできるものになってきました。

その日本の広葉樹の中でも、特殊な位置づけなのがクリ。
少し前の木まぐれコラムでも特集しましたが、土台用角材の在庫をはじめ勝栗（すぐり）無垢一枚物フローリングはもちろんの事、その耐久性を活かす用途の一つとして屋外用の木製デッキ材の素材としてお勧めしています。

そのおかげで、少しづつ採用が増え続けていき今回もまたデッキ材としての出荷となりました。

クリといっても、木材としてのイメージをお持ちの方は意外と少ないかもしれませんね。
一般的な建築材というよりは、特殊用途で用いられる樹種ですし特に、屋外での使用は古い木造建築には見られるものの、大工さんでも室内の様に見栄えの化粧性を重視しない屋外用途に、貴重な広葉樹であるクリを気軽に使うというイメージが無い場合もあります。

しかし、弊社ではもっとクリ材を、日本の広葉樹を身近に感じてもらうために節あり材であったり、クリにはつきものである虫穴（ピンホール）のあるもの、割れが大きなものや傷のあるものをデッキ材として活用しています。

大きな節や割れ、変色などは室内の装飾目的には適していません。
これらは原木の時点である程度見える「欠点」として、当初から選別されるものです。
しかし、クリ材の持つ性質が劣っているものでは決してありません。

性質が劣っていないのであれば、装飾性はなくとも性質を活かせる場面に使えばいい。
ということで、当たり前ではありますがその当たり前がなかなかできていなかった屋外用途に使用することにしているのです。

当たり前が出来ない事。
それは先入観。
クリ材は化粧性を優先するあまり、市場に出るまでの選別でこのような材は流通しにくくなります。
樹種の用途が特殊すぎるあまりに・・・

耐久性よりも装飾性を重視するのは、その方が流通価格が高くなるため。
原木も製品も、高く売れる方がいい。
その観点から、より価値の高い原木を優先され欠点とされるものを含むものは流通しづらくなる。

せっかくのクリ材が。

欠点を含むとしても、削ってみれば美しいクリ材の木目はもちろん顕在。
数十年という耐久性が人気となり、輸入硬木材が木製デッキ材として広く認知されていますが、担当の経験上では経年による「腐朽」という点での劣化スピードは非常に緩やかなものの、木材であるという観点では経年による木質感を感じにくいという点が、若干残念ではあるのです。

もちろん、数十年という耐久性の時間の為に行う初期投資、つまりその価格も年々高騰しています。
成長に要する時間も永い南洋材ですから当然の事なのですが、予算的に手が届きにくいお客様もあり、皆さんにおすすめしづらい状況になってきた現状でもあります。

それに比べて、硬質さでは劣るために同等程度とは言わないまでも、日本で育った高耐久木材の旗手であるクリを活用しない手はありません。
それも、南洋材よりもフレンドリーな価格で！

だって、南洋材デッキにもこんな虫穴があったりするんだから、クリにあっても当然。

それによくあるケースでは、高耐久南洋材を採用できないために本来屋外での耐久性は期待できないホワイトウッドなどを使われること。
木製のデッキにこだわるあまりに、適していない木材を使ってしまうと数年のうちに朽ちてしまい、やっぱり木は腐る、というマイナスイメージが残ってしまう。

それは避けたい。

そこで木質の柔らかい針葉樹ではなく、比較的硬質な広葉樹でありタンニンを多く含み耐久性のあるクリが使えれば！と思いませんか。
少しづつですが、しっかりと使い続けて頂き始めました。

今回は、切削の加工をしてお届け。

美しい木目がどんどん現れてきて、楽しくて仕方ありません。
これぞ、材木屋の特権。
木に触れながら楽しい仕事が出来る。
あ、楽しんでいるのは担当だけですかね。

いや、絶対に使ってもらえる大工さんやお施主様にも喜んでいただけるはず。

少しずつではありますが、日本の広葉樹の一つの出口として屋外使用の木材用途を開いていきたいと思います。
弊社だからできる価値。
屋外用木製デッキ材、日本のクリ。
よろしくお願いします！！

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タグ：: クリ; 栗; 屋外木製デッキ材

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2021年12月16日

情熱溢れる大工さんの、無垢材溢れる手づくりの家　② 板屋楓（ペインテッドメープル）幅広無垢一枚物フローリング編

室内に入る前から、木の質感を活かして頂いている仕事ぶりを拝見し、ワクワクとして入らせていただいた室内。
縁の下の力持ち的に隠れてしまっている地松に対して、室内にてしっかりと見える形で使ってもらっている無垢材が楓（カエデ）です。

使ってもらっているのは、楓の幅広130mm幅の一枚物フローリングのオイル塗装。
暖色系のダウンライトによって、ほんのり柔らかな色合いになっているように感じます。

白っぽい部分、黒っぽい筋のある部分、赤茶色い芯材が多い部分安くない部分などと、様々な表情が見られます。
もちろん、節もありますし節のパテ埋めもあります。

楓のイメージといえば、白をイメージされる方もいるかもしれません。
確かに、白い部分もありますがむしろそんな部分は少なくて、今回の様に多彩な色のついた部分が多くあります。

そうだ、変色がある部分も含まれます。
白っぽい色合いの樹種は、どうしても原木の状態でも原板の状態でも、菌の影響を受けやすいからです。
そんな様々な表情があるのも楓ですが、セレクショングレードやプルミエグレードでは、表情の差はわずか。
それはそういうグレーディングをし、仕分けをしているからです。

ある意味、その時の原木によってどんな表情が含まれているか分からないところなのですが、今回は今までにも使ってもらっていて、ネイキッドグレードがどのようなものかを御存じの上で、「楓の一枚物を使いたい！」と言っていただいたことで、大きなおうちの隅々まで（2階もすべて）貼りこんでいただくことが出来ました。

きちっと3尺ズラシで貼っていただいていますが、実はこの貼り方の振り分け（どこから始まってどうやって終わるかなど）も考えられていて、巾方向はもちろんの事、長さ方向も計算されているというから驚き。

何気なくきれいに貼ってあるようでも、現地で聞くと「ここからこうすると、あそこでこうなるからね。こうしたんですけどね。」という、本当に言われなければわからないような細かな気配りや考えが見えてくるのです。

そういうの、とても好きです。

プレカットという、工場で全て加工され組み上げられるような住宅が多い中、機械と人間の仕事の違いはそこだと思います。
気持ちが、思慮深さが、お客さんへの想いと完成するおうちへの想いが違う。
仕事や物に対する心が通っている。

無垢材と合板フロアーの違いも、ある意味そこに集約されると思っています。

最近では、印刷技術の向上で写真の木目と殆どわからないような印刷シートの合板フロアーが多く見られます。
本物のカエデ材をスキャナーで読み取っているんだから当然なのですが、見た目では分からないほどの木目と無垢材との違い。
もちろん、肌触りなどは当然と思われるでしょうけども、一番違うのは施工する人が考え手を加え、そして一つずつ個性のあるものを仕上げていくこと。
そこに大きな違いがあると思います。

集成材の構造梁桁でも同じです。

強度もあって実績も多くなってきて、劣っているわけでもなく用途によっては非常に可能性が大きいのが集成材。
しかし敢えて、今回の様に無垢の地松を構造材に使うのか・・・
どうして、無垢フローリングといえばUNIタイプが多い中で一枚物を使うのか・・・

なぜ、手を動かす職人さん仕事をするのか・・・
その答えが、この無垢フローリングの貼り方ひとつにも大きく現れているように感じます。

冒頭に、京都らしい奥に長い立地とお伝えしていますが、そこには一枚物の伸びやかな木目がよく似あいますし、それだからこそ貼り方ひとつで印象がかわるために、細かなことまで考えて納められている。
大工さんとしては当然？！と言う声もあるかも知れませんが、そういった気配りや木使いだけではなく、そこに通じる人間性が素晴らしいということを感じられる施工をみることができたというのは、もう少し後で報告します。

前回に紹介した、日本のクリ材をふんだんに使ったデッキへもリビングからも廊下からもアクセスする事ができ、しかも中庭の様になっていることもあり、プライベートな空間が空に開かれていて、ものすごく贅沢なんですよ。

で、私が好きなアングルの一つが上の写真で、L字に組まれているデッキですが縦方向と横方向の板の交わるところに注目。
ちょうど、双方の板が中途半端なところで交差しないように、ぴったりと板の端で合わさるように施工されている。
そう、フローリングの割り付けと同じように。

気持ちいい。

こういうところ、きもちいいんですよ。
何気ない、当然と思ってしまうくらいに普通の仕上げ。
でも、当然と見過ごしてしまうほどに違和感なく仕上げられていることほどに、考慮された時間や手間が詰まっている。
はず、なんです。そこまで聞いてはいないけど、絶対そうです（笑）。

そんなことを考えていると、細かなところが気になって・・・
どこでどんなことを考えておられるのか・・・
いや、私がみてもわからないところは多くあるのですが、そうやって見てみると大工さんの愛情というか想いがとてもよく伝わってきて、材料を納めた人間としてもとっても嬉しいのです。

もちろん、フローリングやデッキも喜んでいるでしょう。
いや、一番喜んでるのは私自身なんですが、、、

そんなことを考えながらも、へたくそなカメラを構えているもんですから時間ばかりが過ぎていき、刻々とその表情を変えていく無垢材。
いつの間にか周囲は暗く、日光の赤みがなくなったことで楓の表情もまた一味変わっていく。

あ！お月さんが窓に縁どられて！！

と思ったら、ダウンライトでした（汗）。
でも、壁の落ち着いた黒色が夜の帳のようで、もう少しダウンライトの感覚が広ければ、完全に月に錯覚するのになぁ・・・と、いい感じの「映える」写真を期待したのですが、その辺もへたくそカメラマンには細工の余地がなく残念。

でも、このアングルと色合い、気に入ってます。

図面からは分からない色々な発見があり、やっぱり完成見学は楽しい！！

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2021年12月13日

情熱溢れる大工さんの、無垢材溢れる手づくりの家　① クリの屋外デッキ編

ずっと楽しみにしていました、完成を。
無垢材を使ってもらったおうちを拝見出来る時はいつでも、弊社から旅立った木材達の姿に逢うことが楽しみです。
特に今回は、建築の計画が決まるかも知れない、という段階からお話を聞いていてその完成を想像していたこともあり、首が長くなってしまったのかもしれません（笑）。

そしてそのおうちには、つくり手である大工さんのたくさんの想いが詰まった無垢材が使われていて、有難いことにその多くに関わらせていただいているから。
だから早くその完成した姿を見てみたかったのです！

京都市内の京都らしい街区の一つに、京都らしい奥に伸びる宅地。
そこに今回のおうちが建っています。

外周りの最終仕上げ段階でのお邪魔でしたが、玄関さきでは早速お出迎え。
今回は、内装においては構造材が殆ど隠れてしまう大壁造りという仕様ですが、屋外では反対に木が程よく見えていて、「木の家」であることがよくわかります。

外壁は焼杉板と塗り壁、そして屋根面や玄関部分の下屋根部分は天井や構造材の梁などが見えています。
そこで迎えてくれるのは、地松（じまつ）の梁！
日本の建築構造材として、私がおすすめする日本の赤松の梁材です。

実はこのおうち、隠れてしまっているのがもったいなすぎる位、土台と柱、屋根部分の材料以外はすべて地松の梁で構成されています！
地松の家！なのです。

現在の住宅の多くは米松（べいまつ）。日本の木を使っているところの多くは杉材。
そこを地松としているのは、大工さんが構造材としての地松の持つ力を知っておられ、大事なお施主様のために地松を使いたい、と思っておられるから。

地松は強度が高いだけではなく、樹脂分のおかげで非常にツヤがあり仕上げられたその素材は、しっとりと美しい輝きを放ちます。
今回、はっきりと見えるのはこの玄関の一部分などのみ。
隠れてしまっているのは非常に残念と思ってしまうのは、材木屋だから。

お客様にとっては、その美しさとともに大切なのは住宅本体。
陰にかくれていたとしても、その強い骨格によって大切なおうちをささえてくれているのが、とても心強いところです！

さぁ、いよいよおうちの中へ・・・と思うのは早計。
今回は外にも見どころがあるのです。

午後からの訪問のため、暗くなる前に撮影しておかねばならなかった場所、デッキです。
京都市内の和風に近い外観ですから、濡れ縁と言った方がいいのかもしれません。
ここに使われているのは、もう定番化と言ってもいい日本のクリです。

古くから耐久性が高く屋外使用にも用いられてきたクリ材を、木製デッキの材料としてご案内していたため、普通はヒノキか硬質な外国産材をつかうところを日本の広葉樹で仕上げてもらっているのです。

クリを使うことによる一番のポイントは、腐朽しづらいこと。
そう思ってらっしゃると思います。
しかし！それだけではありません。
貴重な日本の広葉樹であるクリを、わざわざ変色退色劣化する屋外に使用する理由。それは、経年変化での美しさです。

広葉樹の中でも木目のはっきりとする環孔材。
そのはっきりとした木目は、大工さんの仕上げによって美しく光りながらもしっとりと落ち着いた雰囲気も持っています。
どの樹種も仕上げた当時は美しいもの。しかし、屋外での雨や汚れや太陽の紫外線による避けられない劣化は、徐々にその美しさを削いでいくようです。
それはどの樹種でも同じことですが、クリはヒノキなどとは異なり耐久性を持っていながらも、退色してグレーになったあともその特徴的な木目がくすんでいきづらいのです。

時間がたっても、木のデッキ材であるということを感じられるのが、クリを使うことの大きなメリットです。

今はまだ、その変化を見ることはできませんがきっとこのおうちと住まい手が年を重ねるのと同じように、少しづつ表情を変え変化していく。
その変化を楽しんでいただくのも、こだわりの無垢材を散りばめて頂いているこのおうちの特徴。

ただ、皆さんはご存知のようにクリには灰汁があります。
これから雨によって少しづつその灰汁が出てきます。
茶色い樹液が流れてくるのですが、それもご承知のこと。
いつまでも変化のない模擬木材では得られない、木の家だからこその特別な無垢の木のデッキ材。

そしてその価値は、表面的なことにとどまりません。

床板を受ける大引き材とその柱となる束木理材なのですが、その接合部分を見てください。
通常は釘や金物で止められる部分に、木の栓がうちこまれています。
柱の部分と大引き部分に手作業で凹凸をもうけ、はめこんだところにくさびの様に木の栓がされています。

床板ばかりを見ていては、なかなか気が付かない足元部分。
この見えにくい場所でも、きちんと手仕事をしてあることでクリ材が一層特別な材料の様に感じます。

もちろん、そんなことで喜ぶのは私の様な人間や仕事の分かる職人さんだけだと思います。

しかし、お施主様には気が付かれなくとも気づかない部分にも気を配る。しっかりとした仕事をする。
そんな姿勢にあふれた大工さんであることは承知の上でしたが、このあと室内を拝見しお話を伺っていて、その目に見えないところまでの気配りに更に驚くことになるとは、この時は全く思いもしませんでした。

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2021年11月06日

材木屋が個人的に行う、非公式試験でみえてくる無垢材のこと　②

前回、非公式ながらもオリジナルの曝露試験をしている様子を少しだけお伝えしましたが、今回はその中でも実験するまでもなく優秀な結果を予想していた樹種の経過を、お伝えしたいと思います。

前回の流れでは、大方の予想通りに劣化の進む樹種がはっきりと変化が見えたことをお伝えしました。
そしてそれが、「天然乾燥だから」とか「赤身（芯材）を使っているから」という理由で耐朽性が高いと信じすぎないようにしたい、ということもお伝えしました。

もちろん、虫害や雨水等の劣化要因に対しては樹脂分がある方が有利なので、天然乾燥で樹脂分を残している方がいいはず、という考えや赤身は芯材物質があるので腐朽などに抵抗できると考えることは当然。
間違いではありませんが、物理的に柔らかい樹種などでは、それらの効能だけでは表面の劣化を完全に防ぐ事ができるわけではありません。

そう考えると、屋外使用には高級素材過ぎるケヤキなどは硬質なだけに表面の劣化は遅い様子。
もちろん、デッキ材として販売されている熱帯産の硬質木材も、表面の退色は見られるものの、前回の様な変化は全くなし。

とはいえ、室内の装飾にでも使いたいケヤキや熱帯産木材を気兼ねなく採用できるケースは稀。
そんな中で、弊社がおすすめしているのがクリ！！

非公式試験場７

他の材と同じくグレーに退色しています。

しかしながら、木目がはっきりと見えると思いませんか？
比較して実物を見れば一目瞭然なのですが、クリはこのシルバーグレーというか銀鼠色（ぎんねずいろ）となっても、特有の木目はなくなるどころかはっきりとしてくるので、経年変化のあとも木の質感を視覚的に非常によく感じ取れます。

そこが私のおすすめポイント。

もちろん、古くから耐久性の高さはお墨付きがある材ですが、なによりもこの木質感です！
外壁材などの垂直面では、木目が見えにくいシルバーグレーも他の素材との印象で独特ではあるものの、ウッドデッキで木目が見えないとどこか味気なく感じてしまいます。

特に、熱帯産木材は木目が出るような印象にはなりづらいので、耐久性は抜群ですが「ウッド感」が薄れていきます。

以前から、土台やウッドデッキなどの記事を公開していますが、クリももちろん高級素材であり仕上がりの美しさから装飾材として多用されます。
それをウッドデッキなんて！！と思われるかもしれません。

しかしその特性を活かすため、そして多くの木材としてクリを使いたい人に向けて、節や虫穴や割れがあっても日本で産するクリの無垢材を使ってもらいたいという思いで、弊社は継続販売をしています。

単純な耐久性ではなくおすすめする理由。
この写真でお分かりいただけるだろうか。

さて、この曝露実験室。
一般的に使われる材と、それに対する比較材を試験的に用いていますが、実は中には非現実的な樹種もあるんです。
私が、木材の中では世界で最も有用ではないかとさえ考える樹種。

非公式試験場５

これでは全く分かりませんが、それはチーク。

説明する必要もないかもしれませんが、宮殿建築から船舶まで、室内から屋外まで、木材で考えられる用途の殆どに対応するのではないかと思われる万能エリート。

超高級樹種ですので、これを屋外に放置なんてするの？！と思われるものですが、こちらも海水にも耐え耐久性は非常に高い樹種として有名なものだけに、どのような変化が起こるのかが知りたいところでした。

注目したいのはその艶。

写真では分かりづらいでしょうけども、木目の交錯している部分とその他の部分も含めて、本当に銀色と形容したくなるような渋いツヤを感じます。
いぶし銀！とでも言えばいいのか・・・

このようなチークの変化を見る事ができるのは、一部のセレブか若しくは、私の様な病木の方で懐の余裕のある一部の方だけでしょうけども、退色しても美しいと感じてしまいます。

年齢を重ねて白髪になっても、しわが出ても内面から美しく溌剌としている女優さんのよう・・・

偏見かも知れませんが、そう例えたくなります。
先日、テレビで拝見した草笛光子さんが美しかったですね～。
御歳を正確に知り、驚嘆するほどにお美しかった。内面からあふれるような感じ。
失礼ながら、すぐにこのチークの変化を思い浮かべてしまいました。

広葉樹には珍しく、非常に多くの樹脂分を含み仕上がりも美しく耐久性がある。

そして経年変化に光沢とツヤがある・・・

さすがの私も、いかに実験とはいえチークを曝露するなんてもったいない！と、すごく控えめな大きさのサンプルにしてしまったのですが、これが大きな面積だとどれくらい迫力があり美しいかを想像する良い材料になりました。

非公式試験場４

その上、クリでおすすめする理由とした木目がチークでも見えるのです！
これは大きなポイント。

普段は、木目のはっきりとしにくい散孔材的な環孔材である「半環孔材」と称されることもあるチーク。
予想では、退色すると木目は見えなくなるものと思っていたのに、しっかりと濃淡として年輪模様が視認できる。

それもクリの時とは少し異なって、薄い墨を流したような特徴的な木目。

あぁ、またチークを好きになってしまった。

クリの優位性を伝えるべく行っている（全体の劣化もですが）試験なのに・・・

どうぞ、懐の温かなかたはチークを屋外使用の木材に(^^♪

いや、うちはチークなんて要らないよ！クリがいいよね！という方もどんどんお待ちしていますので、日本のクリ材もしっかりと活用していきましょう！
（結局どっちやねん！！・・・いや、両方です。実験ですから・・(;'∀')）

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2021年07月18日

復活へと続く命の種子歴史を残すクリの巨樹～大洞のクリ～

さぁ、いよいよ木まぐれコラムの日本のクリシリーズも最終回。
今回はクリの巨樹をご紹介！

材木屋の巨樹の記事としては、なかなか多くを取り上げてきたと思っていますが、クリの巨樹は一度もなかったのではないかと思います。

栗の巨樹の個体数が多くないと思われることと、どうしても大阪から遠方に存在するケースが多いこと、そして遠方の場合は仕事を絡めて訪れる為に、原木シーズンの冬となり目的地への道路が積雪通行止め、などで阻まれた経験は一度ではありません。

そんな理由で紹介する機会のなかったクリの巨樹ですが、今回は古くからクリの利用では有名な地である岐阜県にて尋ねた「大洞のクリ」を紹介し、木まぐれコラム・クリの締めくくりです。

私にとっては遠くて近い岐阜県。
へたくそながらもスキーを愛する私にとっては、学生時代から幾度となく往復している場所ですが、今回の舞台である下呂市は、スキーではなく温泉のイメージが強く、実は今まで数度の通過交通を経験するにとどまっていました。
実は下呂市には、大正時代頃に記された書物にクリ材を屋根葺き材にする「木端（こっぱ）板葺」の記載があるそうです。
厚く割った木材を用いるのが木端板葺で、クリは最上のものとされていたそうです。
クリ材が割りやすいという性質は、前回までのコラムを見てもわかる事ですが、下呂市をはじめ岐阜県では栗が非常に身近であったことを推測できます。

その下呂市を南北に走る国道41号線を、小坂川沿いに東へ進み（この道中にも他の巨木が5か所ほど・・・）途中の分岐を大洞川方面へ南下。
4kmほど走ると集落へたどり着きます。

ナビを目当てに目的地と表示される場所に到着するも、それらしい巨樹が見えない。
その代わり、存在を示す標柱はあるもののそこは田畑となり、存在が確認できませんでした。
もしや、少し先に見えるあれでは？！と思いながら眺める個体があるものの、田畑を横切って奥に踏み入るには距離がありますし、奥には柵がみえるので無断で乗り越えるわけにいかず立ち往生。
巨樹訪問では、密伐採業者の下見と間違えられる事数回、集落にて場所を探していて不審者として通報されること数知れずの「準不審者」の雰囲気が漂う私（そんなに悪そうに見えるかな・・・・汗）ですから、なおの事うろうろしにくいのです。

集落の人たちに所在を確認しようと思っても、人がいない・・・
今まで、建物があっても廃村になっていたケース（そういえば、そこ名称も洞だった・・・）などもあり、もしやここも？！・・・・と思ったりしていましたがそこへ救世主！
お一人のおばぁちゃんがいらっしゃって、やっと聞く事ができました。

するとなんと、クリ巨樹の所有者（家）の方だというではありませんか！
これで公認（？！）獲得。堂々と行く事ができる免罪符（？）を得て、教えて頂いた場所からクリを目指します。

よく見てもらうと、標柱の先に葉を落とした樹が見えます。
あれがお目当て。
ただ、巨樹という頭で探しているので、そんなに太いんだろうか・・・と訝しく思ってしまうのは、その場所が斜面で一段低くなっているから。

場所を確認し、やっとのことで巨樹本体へ！

途中、ジーンズをチクチクとさしてくる関門を突破して辿り着いた姿は、巨樹のそれでした！

道路面からでは主幹が確認できなかったことや、分岐枝がさらに分岐していることでその巨さを推測することができませんでしたが、しっかりとした太さ！
もちろん、クスやスギなどのように驚くものではないけれど、一本だけ残った感が貴重さを感じさせます。

クリの周囲には鎖柵用の支柱が確認できますが、周囲の雑草の状況を見ても分かるように放置されている感は否めません。
このまままっすぐに進むこともできず、わずかに草の少ない部分を辿り、斜面上部を迂回するように近づくことにしました。

苔むした幹に着生したものたちを纏い、風格を感じさせます。
日本のクリは、英名を Japanese chestnut というとおり、他の地域のクリとは異なる様子。
欧州など海外の巨樹の写真などでは、オークとともに驚くほどのクリの巨樹の写真を目にしますが、日本のクリに関していえば文献上は、稀に1.5m級の直径をもつものがあるものの、ほとんどは60cmほどだと言われています。

その基準でいえばもちろん、クリの巨樹としては十分なサイズですが、もし葉が茂っていたとすればもう少し印象も変わっていたかもしれません。
それも、主に冬に巡回している巨樹巡りでは仕方ないこと。

枝を支えていた？！と思われる支柱も年月を感じさせ、維持作業が行われていないのだろうかと感じます。
というのも、この大洞のクリは道路面から辿り着いた時の初見と裏側に回ったときの印象が全く異なるからです。

巨樹撮影では、様々な角度から写真を撮りたくなります。
もちろん、その姿が角度や場所により千変万化であるからという理由もありますが、もう一つが「まったく異なった姿」を確認する為であるともいえます。

大洞のクリの場合は裏側へ回るとなんと、ぽっかりと幹の中央部が抜けてしまっているのです。

半身になっているような状況というか、中心部分だけが消失しているというか・・・

巨樹の中には、洞を有しているものが少なくありません。
そして、そこで焚火をしたことで主幹を燃やしてしまったなどという話があります。
ここもそうなのか？若しくは落雷なのか。

上部で失われたと思われる大枝に落雷したものなのかもしれませんが、その大枝があればさらに迫力のある巨樹としての姿が見られたのかもしれないと思うものの、樹木にとっては幹中央部はそう重要ではない為、生命活動維持には影響していないのかもしれません。

岐阜県でのクリの活用に枕木が有名で、一時期には需要が旺盛であり明治末期ごろにはすでに、枕木利用での資源が枯渇する状況を記載した資料が残っていたり、昭和の末頃には木材であるがゆえの取替時期がおとずれる事も影響し、コンクリート製に移り変わっていったといいます。

ちなみに、枕木は英語で sleeper ！
あぁ！寝かしてあるからか？！、とダジャレにしか思えないような言葉に驚くも、その音から飛騨地方の古い文献では枕木を「スリッパ」と呼ぶとあるということですが、似て非なる意味の2語が、硬く重そうなイメージの枕木をどこか柔らかなイメージにしていると思いませんか？！

願わくは、どの方向から見ても巨樹感満載な状態を見られれば最高なのですが、焦げたこの姿も歴史の一つ。
生活に密着してきたクリという樹木の中で、これほど大きくなるまで残り地域の人たちとのかかわりも深かったことと思います。

ただ、クリとして考えた場合は現代の人たちにも岐阜県とクリの関係は大いに興味深いところがあると思います。
本年も引き続き話題となっているアニメ、鬼滅の刃に登場するキャラクターの名称で「つゆりかなを」がいます。
アニメから見始めた私は、その苗字の音に「変わった名前もあるもんだ」と思っていましたが、原作漫画を読んだときにハッとさせられたのです。

ご存知の皆さんでも気にはされていないことでしょうけども、「つゆり＝栗花落」と表記します。
クリの花が落ちる、と書くのです！
クリの花！
そして、その音が「つゆり」であることはしっかりと意味があり、想像どおりにクリの花が旧暦の5月頃に落ち、そして入梅することから「つゆいり」の転訛であるということなのです。
（入梅後の雨がクリの花を落とす、ともとれる）

こういうお話、すごく好きです。
由来や名称が気候風土に即しているのは、生活や自然背景を感じる事ができ、非常に重要だと思っています。

鬼滅関連で感心した名称やストーリーでは以前の記事でも、主人公の名称や背景についてや、材木屋としては主人公の妹の名称が樹木の名称と同じ音であることの関連性を持たせたいと思ってしまうお話などを記載しましたが、実はのちのちのストーリーで大きな役割を果たすこととなるキャラクターの名称も、樹木と関係しているなんて、さらに鬼滅を好きになってしまうではありませんか！！

しかも、その名称の由来が岐阜県（飛騨地方）であり、古くから生活の中にあったクリに因むというところがものすごく萌えポイントであり、アニメ放送を見た時点では無表情であまり好きではなかったそのキャラクターを、一気に好きになるポイントとなったのは言うまでもありません。

欲をいえば、そのキャラクターの髪色を「栗毛色＝マロン」にしてもらっていると完璧？だったのかもしれませんが、キャラの性格としては合わないのかなぁとも思ってしまいます。

おっと、脱線してしまいましたが現在ではその「栗花落」という言葉も、今では実際に口にされているのか分かりません。
言葉が語られないことと同時に、都市部へ人口も会社も集中する傾向が進む現代においては、集落からも人が出ていき動くことのできない巨樹達は、私の様な人間以外の目には触れなくなっていくのかもしれません。

木材であっても、ひとつの性質にとびぬけたところがなく、同じ性質を求めるのであれば化成品の方が優れている場面も多くあるのですが、人の手ではなく自然がもたらす恩恵が享受できるということが、本当は幸せなのではないのかなぁ、とも思ったりしてしまいます。

縄文の時代から人の生活に密着してきたクリ。
現在、そのつながりは薄くなっているのかもしれませんが、忘れたくない自然との関わりの一つとして伝えていきたいと思います。

今回、不法侵入にならずにクリのもとまで行く事ができたおばぁちゃんとの出逢いも、もしかすると何かのつながりかも知れません。
撮影を終えて帰って来た時、またおばぁちゃんとバッタリ。

ありがとうございました、と声をかけてその場を離れましたが、私が撮影していた間に坂道を往復されていた模様。
足腰の維持なのかと思いますが、大洞のクリとともにお元気で過ごしていただきたいと、その後ろ姿に心の中で手を振って、現地を後にしたのでした。

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muku_mokuzai at 13:30│コメント(0)

2021年07月13日

復活のプロローグは、生き残りへの第一歩　～日本の広葉樹無垢フローリング勝栗（すぐり）無垢一枚物フローリング～

全9回のクリを語るシリーズはいかがでしたか？

建築の中での出番は多くはないものの、一部では非常に賞用され他の広葉樹と同じく木目の美しさを引き出す部分に使われてきました。
木目が大きく現れる環孔材という部類の木材ながら、どこか柔らかく感じるというか柔和な表情を見せるのが魅力ですから、製材や加工の技術が進んでいる現代ではわざわざ土台などという目立たない部分に使われることはありませんでした。

木材利用に関わる古い書籍において、クリに関しての記載にこうあります。

「保存期の永き、他木の次して及ぶところにあらず」

薬剤処理や木材改質処理などがなく、樹木そのものの性質に依存していた時代には、クリの持つ力は非常に大きく貢献してきたことでしょう。
上記の記載とともに、もう一つ。
「割りやすく水質に耐えることから、床板に」とあります。

製材機が発達しておらず、床下からの湿気の影響を強く受けていた時代、土台や床板は湿気に対して大きな配慮をしなければならない上に、割裂させやすい木材というとクリ以上に優れたものは無かったのでしょう。
その上、木目も美しいとなれば日本建築においての装飾性も兼ね備え、適材適所となっていたのだと思います。

湿気による腐朽や材料の割り易さを気にせずともよくなった現代においては、適材適所というほどではないとしても、広葉樹のイメージそのままのはっきりとした木目を持ち、広葉樹としては中庸な程よい硬さを備えるその材を、日本の広葉樹無垢フローリングとして個性を発揮させようではありませんか。

環孔材の代表格である「なら」は道管配列が明瞭な為、非常にはっきりとした木目になります。また、クリに木目の似ているとされる「たも」は、「なら」ほどの派手さがないからこそ和洋折衷の建築に多く用いられてきました。
私が感じる、クリのフローリングとしてのそれらとの違いはまさしく、その表情の柔らかさ。

環孔材は、非常に特徴的な木目があるもののどうしても力強いイメージになりがち。
巨大社寺建築において、ケヤキの構造材を見てどこか安心しませんか？！堅牢なイメージを持つのは材木屋だけかもしれませんが、雄大な木目からうける視覚的なイメージと実際に触れた時に感じるイメージはリンクします。
お寺などで触れてみてください。しっかりしてるなぁ・・・と感じることでしょう。

そんなイメージから若干外れるのが、実はクリ材です。

ふと見た瞬間は他の広葉樹と変わらないものの、道管と呼ばれる組織が日本産の木材の中で最大級の大きさと言われている為、木目の年輪が若干ぼんやりと感じることが、やんわりとしたイメージを与えているのだと思いますし、実際触れた感覚も、見た目の印象よりもどこか優しく感じます。

道管でいえば、似たような表情である「たも」には少ない芯材物質であるチロースが、クリには含まれやすいことや、暗赤色の樹脂物質が詰まっているものがあるために、その表情が若干ぼんやりかんじられるのかもしれません。

個人的な話ですが、私は木材そのものを味わいたいタイプですので、床でもなんでも基本的に無塗装が大好きです。
しかし、そんな私でも着色をしても映えると感じる数少ない樹種がクリです。

以前、ウッドデッキに使ってもらったときには木目の出るタイプの塗装で白色とされていましたが、その白色の中に浮き出るように道管の木目が現れ、本物の無垢材のウッドデッキ！という印象をさらに強いものにしていました。
白色だけではありません。
茶色系にしても、あるいは黒っぽい色合いなどの古民家仕上げにしても、どんな形にでも寄り添ってくれるのが、クリフローリングの最大の特徴かもしれません。

屋外の場合は塗装していても、浸透性塗料から微妙に入り込む湿度によって灰汁が析出することで、一層木目が引き立つという不思議な現象（灰汁がコンクリート面を汚すと言われる方には向きませんが）が起りますが、この強力な灰汁にも含まれるタンニン成分は、染色材料や古くは皮なめしには必需でした。

現在でも、高級皮革製品のなめしにはクリが使用されているところもあるようですが、一般普及品はクロム化合物が使われているということ。
代替材料が優れている、という見方をするか自然の材料でそのような力を持っていることが優れていると見るかですが、自然素材はその一つの役割では終わらないところがすごいと思いますよ。

クリの葉を煎じた汁を風呂に入れ入浴すれば、皮膚病の治療に効果をみせるという記述も見られます。
樹皮の煎じ汁のタンニンも同じような効果があるそうです。
自然の力のすごさを感じますが、これらも天然成分だからすべての人に対して無害有益ではないことは考慮せねばなりません。

植物が持つ力の多くは自己防御策の一つ。
ある種にとっては毒性の物もありますから、天然成分の特殊な力の一つの利用方法として知っておいてくださいね。

そうです、今回の勝栗（すぐり）無垢一枚物フローリングにはもう一つあるのです。
1820mmの一枚物ではなく、日本の広葉樹シリーズで採用している定乱尺。

1820mm一枚物は90mm幅サイズですが、こちらは120mm幅広サイズ！

1820mmの一枚物ももちろんいいものですが、定乱尺はリーズナブルですしそれ以上につなぎ目ができることで、フローリング表面に不規則なリズムが生まれ、合板フローリングとも挽板フローリングとも違う存在感を発揮します。

清涼楢（せいりょうなら）や清涼たも（せいりょうたも）、清涼樺（せいりょうかば）も同じですが「貼り応え」もあり「見応え」もある。
そう感じるのが定乱尺です。

もう一つ、材木屋さんの感想でいえば木目のはっきりとしている樹種は「暴れる」という印象があります。
暴れるというのは寸法などが狂うということですが、ケヤキはそれが非常に顕著。
そのイメージでいくとクリも・・・と思うのですが、乾燥してしまえば思っているよりは狂いは少なく、さらに乾燥が進むと木質がしまっていくとされていますので、しっかり感が増す！ことは感じられないまでも、強くなっていくというイメージが進歩しているようで、個人的にはとても好きなんですよ。

さて、クリのフローリングでお伝えしなければならない大きなポイントを、忘れてはなりません。
そのポイントは葉節。

プツプツと出ているものもあれば、一部分に集中しているものもあります。
この葉節と呼ばれるものは、クリにはつきもの。
大きな節は避けているのですが、この葉節を避けていると使える部分が非常に少なくなってくる、と言えるほどに含まれると考えてもらいたい部分。

もちろん、大部分に含まれるというものではありませんが、全く現れないものもあれば集中しているものもあるため、どこかには含まれるという特徴です。

もちろん、それによって樹木であった面影を残している、ともいえるのですけれど・・・・

クリは、森林が遷移するときの初期段階で育つ樹種であることをお伝えしました。
暗い部分でも葉を茂らせ生きていける。
生き残ることのできる樹種。
現在の生き残りの厳しい社会情勢の中で、土台材とともに弊社の生き残り、勝ち残りのきっかけである「搗栗（勝ちクリ）」となってくれるのではないかと思っています。

ただし、一人勝ちという形ではありません。
クリは、他の樹種に優先して生きていくのではなく、ギャップで生きていける樹種。つまりは、多樹種との共存で生き抜けるということ。

クリがよく育つところは、他の樹種にとっても良く育つ場所です。
それが、大きな堅果を作る樹種であり木材としての優れた性質を持っているものの、大部分で育成されなかった理由ではないかとされています。

優れているものの、派手に突出していない。
若干控えめなところもまた、魅力的だと思いませんか？！

キリスト教の中では、善良さのシンボルとかんがえられるそうです。
自分の為だけではない、そんな生き方が現れているクリの性質そのもの。
善良に共存する生き方ができるクリ。
今の時代にこそ、ぴったりな樹種？！なのかもしれません。

勝栗（すぐり）無垢一枚物フローリング　90mm貼り上がりイメージ

勝栗（すぐり）無垢一枚物定乱尺フローリング　120mm貼り上がりイメージ

＊勝栗（すぐり）無垢一枚物フローリングを採用頂くにあたって

1,
勝栗無垢一枚物フローリングの原材料のクリは、ケヤキやタモと同じように環孔材広葉樹であり、キクイムシによる白太（辺材）の食害を受ける可能性があります。
全てがそうではありませんが、採用にはその可能性がある事を含みおき頂きますようによろしくお願いいたします。

2,
材質は若干毛羽立ちやすい部分を含みます。表面仕上げは平滑にサンディングされていますが、組織の特性上細かな繊維が立ってくる場合もありますが、加工不良ではありません。

3,
クリの特性として、鉄分などと反応し表面が変色する場合もありますので、浸透性のオイル塗装での表面塗装をおすすめします。

日本の広葉樹無垢フローリング勝栗（すぐり）無垢一枚物フローリング

・寸　　　　法　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　
15×90×1820
15×120×1820
15×75×1820

・形　　　　状
一枚物、定乱尺

・エンドマッチあり

・品番と価格（表示価格全て税別表記です）

SG-11P　OPC一枚物　無塗装　15×90×1820　プルミエ　　　
￥15,000/10枚入り（1.63㎡）

SG-14P　OPC一枚物　無塗装　15×75×1820　プルミエ
￥13,500/12枚入り（1.63㎡）

SG-45P　定乱尺一枚物　無塗装　15×120×450/600/750/900/1050/1200(1800)　プルミエ　　　
￥13,500/（1.51㎡）

SG-24P　UNI　無塗装　15×75×1820　プルミエ
￥11,000/12枚入り（1.63㎡）

・運　　　　賃
別途、地域によりお問い合わせください。

・グレード　
プルミエ　　　材の特色を生かしたトップグレード（葉節、軽微な虫穴補修を含む）

・納　　　　期
無垢商品の為、該当年度の原材料が限られている都合いつでも生産をするということが出来ませんので、余裕をもってご確認ください。

表情の違い

特有の灰汁

道管組織部分のケバ

葉節　1

葉節　2

葉節　3（集中）

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muku_mokuzai at 13:30│コメント(0)

2021年07月10日

復活のプロローグ～適材適所の樹種　栗（クリ）～　⑨

興奮気味に終了した前回の耐蟻性試験の結果。

試験結果を目にした時の興奮、そして試験を依頼した大学教授から結果についての詳細を伺ったときの気持ちは、皆さんにお伝えすることはできません。
しかし、結果として貴重なエビデンスを得たことはお伝えすることができるようになりました。

他にはない、弊社だけが持つエビデンス。
胸を張って、クリの土台は桧に勝るとも劣らぬ、いや同等以上の性質を備えていながらの広葉樹利用を念頭に置いた利用が出来ることを証明したものとなりました。

興奮冷めやらぬクリへの想い。
ここでいったんクールダウンしましょう。

一つ、正直なところを報告しておくと、本当はヒノキをはるかに凌ぐ結果を想像していたのです。
それは、文献による耐腐朽性はもちろんの事、耐蟻性についても劣ることはないと思っていましたし、強度性能では広葉樹の硬質さを存分に発揮してくれるものと想像していたのです。

しかしながら、思い通りばかりには進まないこともあります。
無垢フローリングなどにおいてもそうですが、長所やいいところばかりを紹介することはしません。

私が企画する山林や製材所ツアーにおいてもそうですが、良いところばかりを見せて魅力を伝えるということではなく、本質を知るにはどうすればよいかという視点において、良い部分と悪い部分、長所と短所を知ってこその本質が見えるという考えに基づいて、きちんと劣っている分や性質も知ってもらいたい。
その上で、その部分を補えれば欠点ではなくなるからです。
そのうちの一つとして、今回の試験結果のうち、文献での記載が証明されたものの一つとして割裂性があります。

クリ材は割裂性が良い材料である、というのは知られたことです。
割裂性、つまりは裂けるということです。
その性質が正しく出たのが強度試験でした。

比重平均0.6（0.44～0.78）。

針葉樹よりやや硬質で重硬な性質を示す数値ですが、比重平均0.44ほどのヒノキに比べると明らかに強度（部分めり込み）性質としては優れていると思っていたクリ材ですが、実はクリ材がもつ割裂性の良さという性質とヒノキの比強度の高さ（軽いわりに強度がある）により、ヒノキを凌ぐものの圧倒的な強度を示すほどの期待値には至りませんでした。
比重の数値の上限と下限に開きがある、つまり個体差が大きいこともその理由でしょう。

文献が示すヒノキの強度は十分超越したものの、期待値には至らなかったということなのですが、それが古くからクリ材が生活の一部に属してきたことの理由の一つにもなるのです。
建築材料を木材に依存してきた時代。鋸が発達していなかった時代には、割裂性というのは木材を利用する上で非常に重要なファクターだったと言われています。

なにせ昔は、製材機などなく製材できないのですから。
割って使う事が出来る材料で、腐朽しづらいうえにヒノキとはことなり実りを食料とすることのできるクリは、人類にとって非常に大きな存在であったことが想像できます。

用意に割れること。
その性質が、部分めり込み試験においてはヒノキをはるかに凌ぐであろうという期待にそう事が出来ない理由になったものの、だからこそ人々の生活を支えてきたのかと思うと、その性質の持つ可能性に再度惚れ直すこととなるのです。

あばたもえくぼ。
そうです、そう言ってください。
あくまでも贔屓目かもしれません。

もちろん、ヒノキも好きなのです。
しかし、適材適所の中で見過ごされている状況を看過することはできない。
その代表格がクリ材だったのです。

水湿に耐えるという性質から船の材料になり、耐久性と強度から車両材料とされ、明快な木目の美しさから装飾材料とされ、硬質過ぎないとともに粘りがあるために加工が容易で刃物加工を容易にし、乾燥とともに硬質になり締りの出るといわれる性質はあらゆる場所への木材利用を可能にするものです。

しかしながら、針葉樹の通直性や扱いやすさ、そして植林事業による用材としての供給性に勝ることなく、今日に至っています。
木材としての利用の可能性を大きく秘め、古くから利用されてきた歴史のあるクリ材を、利用用途が無いからと破砕燃焼させるわけにはいきません。

そんな勝手な想いを胸に、一人でクリの土台材やデッキ材の普及に努めています。

そうだ、重要なことをお伝えせねばなりません。
クリはポリフェノール類の灰汁を含む樹種。
それが様々な利点をもたらす一方、雨や水分その他の状況下で灰汁を析出してしまう場面があります。

自然素材の当然の事象ですが、お伝えせねばならないことの一つです。
そして、土台などの角材にした場合の割れ。
非常に大きな割れが木口と材面に走ります。

割れると弱い、壊れそう、などというイメージを持たれる方にはおすすめできません。
当たり前のことですが、知っておいていただきたい事。
（木口割れは長さカットできる部分もありますし、若干の余尺があります。）

ウッドショックという言葉が浸透してしまってから2カ月以上になりますが、国産材がチャンスだからと始めるのではありません。
反対に、ヒノキの原木価格は現在よりは必ず下がるでしょう。
クリの原木は下がることはほとんどないでしょう。
投資目的でしているのではありません。
本当に良いと思う木材を届けたい。
ただそれだけ。

でも少しだけ、軌道に乗った先に材木屋の生き残る道が見え、そして大工さんも森も山も良い方向に回りだす世界があるのなら、利益を積み上げてまた少しづつ違う木を活用していきたい。

さて、クリの乾果を搗いたものを搗栗（かちぐり）と言います。
戦の絶えなかった時代には、その語呂から「勝栗」にあやかり出陣の折に撒いたり、もしくは肌身につけたりしたといいます。

木材不足なうえに樹木の価値が見いだされにくい戦のようなこの時代に、変わり者の弊社にとっての勝ち栗となってくれるのか。若しくは価値栗として認められるのか。
あやかりたい気持ちと、認めてもらうべく今後奔走する決意を胸に、ここに日本の広葉樹材であるクリで作る建築土台材の復活を宣言します！

長さ：4m・3m・2m

材寸：荒木寸法およそ127mm角

割れ、原木時の虫穴等を含みます。

少量生産ですので、数量には限りがあります。
在庫のお尋ねは弊社の下記お問い合わせフォームまで！

また、その特性を活かした意匠性の高いデッキ材もあります。
その施工例は以下参照ください！

・高耐朽！屋外木製デッキ材日本の栗（くり）を紹介した木まぐれコラムシリーズはこちらから
・高耐朽！屋外木製デッキ材日本の栗（くり）木目の見えるホワイト塗装の施工例はこちらから
・高耐朽！屋外木製デッキ材日本の栗（くり）長尺デッキ用材納品例はこちらから
・高耐朽！屋外木製デッキ材日本の栗（くり）はこちらから

タグ：: クリ; 栗; 屋外使用の木材; 土台用の木材; デッキ材

muku_mokuzai at 13:30│コメント(0)

2021年07月07日

復活のプロローグ～適材適所の樹種　栗（クリ）～　⑧

語り継がれる耐腐朽性をもつクリ。
その性質は、前回エビデンスを得ました。

そしてもう一つ。
越えねば大きなヤマがあります。
それは耐蟻（シロアリ）性。

腐りにくいものは白アリにも抵抗性がある。そう信じたい気持ちですが、それとこれとは別問題。
その上、文献の多くには抵抗性が低いとの記載。
その文献というのも非常に数が少なく、どのような試験でどのような状況だったのかもはっきりとせず、本当のところが分からないままでした。

土台として使用するために、腐朽とともに抵抗性を持たせたい耐蟻性。
クリの真価はいかに？！

白アリへの抵抗性試験も、腐朽と同じ試験片を用います。
複数の試験片を一つずつ、活発に動き回るシロアリの中に投入します。

クリ34

ひえぇ～。

見たくないような、さぶいぼ（鳥肌）が出るような光景。
食料となる木材に群がるシロアリたち。
モザイクしときました（汗）。

結果の前置きとしてこれを見て知ってもらいたいのは、比較試験ではないこと。
白アリに対する抵抗性として試験をしたというものの中には、いくつかの樹種を同列に並べておくものが見られます。
抵抗性があるとされる樹種と、非常に被害を受けやすい樹種。
それを並べておくと、シロアリも美味しい方を食べます。当たり前です。
ホワイトウッドが如何にシロアリに食害されるか、という半ば意味のないと感じるような比較試験が思い出されます。

その試験結果を用いて、抵抗性のあると言われるものは被害を受けずに、抵抗性の無いと言われるものが非常に被害を受ける、という視覚的に非常に分かりやすい結果を得る選択食害試験。
それでは意味がないのです。

子供に対して、ハンバーグとピーマンを並べておいてどちらを食べるか選ばせるようなもの。
私でも、迷わずハンバーグですよ！
そんな感じです。

だから、今回はきちんと結果の出る強制摂食試験なのです。

その結果をお伝えしましょう。

今回も腐朽試験と同じく、基本となる杉の辺材を用いていますので、その状況を見てみます。

ワオ！
孔あいてますよ。

まさしく、シロアリです。
硬質な晩材部分を残して柔らかな早材部分を喰いぬいています。
これも、シロアリの強制摂食試験としてはきちんと成立する結果。

それを念頭に次はヒノキです。

試験片の大きさは、杉を含めて全て同じ。
この形状ですが、杉は孔が開くほどに食害を受けていたのに対して、ヒノキは孔どころか木口面には殆ど被害がありません。

改めて言っておきますが、杉は試験の進行を見るための基準材であり、辺材を使用しています。
もし芯材であれば、あれほどの状況にはなりません。
そして、ヒノキも芯材だということです。

精油成分を含む芯材部分は、非常に被害を受けにくいということ。
大切なのは、被害がないのではなく少ないということ。

端っこが若干かけたようになっている部分は、シロアリに齧られている部分です。
ヒノキでも齧るのです。
そしてもし、これしか食料が無ければもっとかじるのかもしれません。
そんな状況での試験ですので、これが本来のシロアリとの「一対一の真剣勝負」です。

木材とシロアリとの関係を正しく知る事が出来る状態。
本来の耐蟻性が見えるのです！！

そしていよいよ本丸であるクリです。
贔屓目バリバリの目を補正し、曇りなき眼で見届けねばなりません（汗）。
その結果とは・・・

印象はどうですか？！
ヒノキと同様に、貫通された部分はなく一部かじられてはいるものの、大きな被害は無し！

はっきり言って、一安心どころか大きく納得。
やはり、クリはシロアリにも抵抗性があるということ。
涙が出そうです。

信じる者は救われる。
いや、クリの力は偉大だったというべきか。

今までは腐りにくいもののシロアリへの抵抗性は不明か、もしくは低いとされてきたところに明らかな結果を残しました！！

改めて言います。
シロアリへの抵抗性としては、針葉樹材のもつ精油成分が非常に有効に働きます。
その精油成分が殆ど認められない（ポリフェノール類を含むが詳細な関連性は不明な）クリ材が、ヒノキ同等の性質を示したことは、非常に大きな成果を得たと思います。

本当に、我が子が受験をしたような気持ちなのは、ただ木材が好きだということ以上に材を有効活用したいという気持ちと、意地でもクリの節あり材を活かしたいという気持ちが、根拠のない有用性実証への扉を開いたと思っています。
誰もやらない、やっても仕方のない試験を零細材木屋が行うことの意味。

日本の広葉樹を活用する、人工林ではなく大量に産出されるものでもない樹種が用途なく見過ごされている中で、活用への道筋をつけることはほかでもない零細材木屋だからこそ。

売れるあてもなく、半ば意地で始めたクリ材の土台利用への道。
誰もやらないのは、売れないから。
ヒノキで十分、ヒノキより高い、供給できるのか、などという声に埋もれているうちに利用されずに製材されない原木が過ぎ去っていく。

ならば、ヒノキ以上とは言わずとも同等以上の性質を証明し、そこに価値を見出してくれる人にのみ届ければいい。
敢えて競っているのは、神殿社寺に最高とされるヒノキです。
神話の時代から続く美しくも耐用年数もある、一級品です。

クリ材は、節なしの化粧材としての用途は様々なところで確立され、その存在感と質感を認められています。
しかし、山からでる原木は必ず枝、つまり節があります。
節なしが選別されている中で、かならず節ありの原木がありチップやパルプ、燃料へ回されています。
それは大径木であっても例外なく、もちろん製材すれば美しい木目が出るであろう物でも、一部に大きな節があればそうなる可能性があり、事実、作業中の仕分けにおいては、明確な用途や利用方法が無い限りは製材用材としての搬出はありません。

そんなこと、山の施業現場に行くか施業に携わる人との会話の間にしか得られない情報です。
その選別を通り抜けられない多くの広葉樹は、木材製品となることなくどこかで破砕されているのです・・・
上の写真の私は笑顔です。

この写真は嘘です。

喜んでいるのではありません。
悲しいあざけ笑いなのです。
何故なら、カメラの後ろには多くの破砕されるべし原木が山積みされているからです。
消費者の、工務店さんや大工さんの見えない、いや材木屋さんが利益や価格で見ていないところで、多くの広葉樹が破砕燃焼されています。

少し曲がっているから、分岐しているから・・・

野菜と同じですが、野菜ならば朝市で売ればいいかもしれません。
しかし、原木は朝市で売るわけにはいきません。

製材し、乾燥しなければいけません。
しかも体積が大きい！

そんな問題ばかりなのです。

基・・・

クリの土台は私の、そして木材コーディネーターという肩書が、単なる形容詞でないということを証明する為の、本当に木が好きな馬鹿が本気で取り組んだものの成果なのです。

そう、きちんと利益や儲けを計算できる人は決して手を出さない。
だから、文献書物にも記載がなかったクリの性質。
そこに踏み込んだ今回の結果。

土台材として求められる、耐腐朽性と耐蟻性という二つの性質を、ヒノキと同等以上という性質でクリヤし、その上別途行った強度破壊試験においても、文献にあるヒノキ以上の強度性質を発揮し、構造材としての力を証明して見せてくれました。（実は、それ以上の強度も期待していたことは、包み隠さずお伝えします・・・）

この結果を引っ提げて、胸を張ってヒノキ同等以上の性能を持つものがクリ材であるということをアピールし、節あり広葉樹の土台利用の用途を切り開いていきたいと思います。

どうぞ皆さん、零細材木屋の取り組む広葉樹利用、応援して頂けると嬉しく思います。
針葉樹ばかりではない、人工林がすべてではない豊かな日本。
適材適所の木材利用を再度見直し、用途を復活させたい木材利用。

その一歩を今、大阪府茨木市の零細材木屋が始めようとしています。

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muku_mokuzai at 13:30│コメント(0)

2021年07月04日

復活のプロローグ～適材適所の樹種　栗（クリ）～　⑦

日本のクリ原木から生まれるクリの土台用材。
木材に関係するどの書物を読んでも、「クリ材は水湿に耐え、耐腐朽性が高いので建築用土台や浴室部分などに使われ・・・」とあります。
大工さんや材木屋さんの間でもそれは当然の様に知られています。

しかし、一般的にクリ材が建築に使われる場合は装飾用用途や銘木床柱などとして使われている為、どの程度耐腐朽性があるのかは意外と実証されていないのです。

土台用として使用する上で、さらに現代ではヒノキが最も優れていると思われている用途で、それに代えて使っていこうと思う中では、この耐腐朽性と耐蟻性は同等以上には備えておきたいと思うところでした。
特に、耐蟻性についてはインターネットを含めどの書物にも言及がないか、わずかに残る古いデータの一部以外では、シロアリへの抵抗性区分は低いとされていいるため、自身も非常に気になっていたところでした。

よし！、それならば自分が最初にデータを取ってやろう！！
そして、クリ材の適材適所はエビデンスをもった製品となっていることを備えて、クリの土台をお届けしようと思ったわけです。

某大学へ協力をお願いし、耐腐朽性と耐蟻（シロアリ）性をそして材としての強度の試験を実施しました。
今回紹介するのは前者の2点。
比較するのは、もちろん双方芯材部分。
その部分を試験用材として切りだします。

クリ材とヒノキ材を同条件で比較する為に、数種類のサンプル材を作ります。
試験は材の一部分を使った試験片にて行うために、小さな部材を切りだす作業は意外と手間（汗）。

この試験片にどの程度試験が進行したかということを見るための基準材料として、杉の辺材を加えた3種類を使って、腐朽菌が繁殖する環境の中にて決められた期間の経過を観察し、そののちにどの程度の影響があるのかを見るのが耐腐朽性試験。
そして、同じくシロアリが活発に活動できる環境の中に試験片を置き、どの程度の食害があるのかを見て、抵抗性を観察します。

まずは前者。
試験片を腐朽菌とともに容器の中に放置します。
そして、温度と湿度が管理された部屋にて腐朽菌の進行度合いを見ます。

私たちの生活環境とは異なり、腐朽が進行する状況での実験なので、驚くほどに菌が繁殖。
元の試験片が見えないほどに菌に覆われている物や、菌の色がものすごく異常？に感じるもの。
書物で見るものとは違い、実際に自身が提供した材がどんどん菌に浸食されていく状況というのは、決して気持ちのいいものではありませんが（汗）、これものちの材料の為！！

この強制的に腐朽進行させた状態の試験を経て、戻ってきた試験材たちがこちら。

まとわりついていた腐朽菌を拭われている状態です。
この状態と試験投入前の状態との質量の差を計測し、どの程度質量減少しているかをみることで、腐朽菌による影響を見るのです。

もちろん、目視による腐朽の進行具合もみえるのですが、客観的な判断材料である質量変化の数値を得ます。

試験は、杉の辺材の質量が正常に減少（菌が影響していることを確認）できたために成功。
実は、それが正常に進んでいなければ試験は成立しませんので、一安心。

その杉の辺材の状態がこちら。

木材の水分と養分を菌に吸われた、と形容したくなるように四角だった形が変形してしまっています。
この状態が腐朽。

今回は、白色腐朽菌と褐色腐朽菌の2種による腐朽を見ていますが、代表的な例をあげるとこのような感じです。
試験は完全に腐朽させるのではなく、この杉材の腐朽の進行が進んだ状態のときに、対象となる試験材料がどのくらい腐朽するかを見るものです。

さぁ、この状態のときヒノキやクリはどのような状態なのか。

まずはヒノキ。

先に断っておきますと、試験材料は全て芯材部分であることと、天然材料であるために性質のバラつきがあります。
ですから、試験材料によっては腐朽の進行していないものもある事もお伝えしておきます。

それにしてもヒノキですよ。
ヒノキの芯材部分もこのように、強制腐朽試験では菌の影響をうける。腐るということ。
ヒノキだから大丈夫。そんなことはないのですよ。

では、クリ材はどうだったのか？！

こちらも、若干は菌の影響を受けているものがあります。
その一方で、大きな被害の無いものもあります。
外観として比較することは難しいものの、印象としてはヒノキと同じような状況の様に見えます。

この結果はどのように判断するのか。
そこで重要になるのが質量減少。

その観点で見ると、ヒノキもクリも双方、十分な耐腐朽性を持っていると判断できる結果でした。
その理由は、防腐薬剤が機能しているかどうかを見るための基準数値に適合しているからです。

自然におこる状況ではなく、強制的な腐朽を起こしていることも菌が進行している理由なのですが、結果としては十分に腐朽に対する抵抗性のエビデンスを得る事が出来ました。

この結果は、先の記事に書いた通りクリが持つポリフェノール類の力によるところが大きいと思われます。
広葉樹であるクリは、ヒノキのように多くの精油成分を含みません。
腐朽やシロアリに対しては、精油成分が大きな影響力を持ちます。
そんな中で、伝承にも書物の中にも伝えられる耐腐朽性について、きちんと結果を残したことは大きな成果でした。

では、もう一方の耐蟻性はどうなるのか・・・
抵抗性は低いと言われる場合もあり、私自身もこちらの方が結果を非常に気にしていたところ・・・

その様子は次回、明らかに！

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muku_mokuzai at 13:30│コメント(0)

2021年07月01日

復活のプロローグ～適材適所の樹種　栗（クリ）～　⑥

わざわざ、木材の辺材と芯材のお話を引用したのには、腐朽や虫害をうける部分の殆どは辺材である、ということを知ってもらいたかったから。
そして、クリ材を建築用土台材やデッキ材として活用できるように「復活」させようとした理由は、クリ材の耐腐朽性とともに辺材の少なさなのです。

前回お伝えしたように、腐朽にも虫害にも抵抗性が高いと思われているヒノキ材の流通品の多くは辺材を含んでいます。
木材として使用する表面の大部分に辺材が露出している。その部分が早期に腐朽する。
それに比してクリ材であれば、原木から製材された土台用製品はほぼ芯材。
つまりは、腐朽や虫害に抵抗性のある部分を非常に有効に使える、というわけです。

そのうえ、通常であれば広葉樹材は山から搬出される時には短い原木に切りそろえられる場合が多く、特に価値のあるとされるもの以外は長さを長いまま持ち出されることは少ないものの、節ありでそんなに大きな直径ではないものの、長いまま搬出してくれる場所があるからには、4mや3mという長さで土台材として活かしていきたくなるのは、木のビブリオであり山の木を活かす存在である木材コーディネーターとしては、必須のことなのです。

弊社が地松の丸太を有効活用する為に、学生に授業を行いながらも山で曲がりの赤松を伐採し、そして生育のままに使うという取り組みをしているのも、単純に木材として利用するということではなく、山の循環や自然環境、そして人や伝統をつないでいくという大きな輪を動かしたい一心から。
木材コーディネーターとしての資質を活かせるように、自社にしかできないことを行っているのです。

そう、会長からの時代を超えた言葉を実行するように・・・・

concept1

大量に供給は出来ません。
いつでもあるわけではありません。
もちろん、貴重な材料ですから安価で提供することはできません。

それでも、出来る時まで待っていてもらえる人に、出来る限りのストックを弊社でもち、そして山や製材所の人たちが喜んで出荷してくれる最低限の費用を確保しながら、可能な限り手の届く価格を実現する。
決してすぐに儲かるものではない。
だからこそ、弊社のような零細でかつ木の好きな材木屋しか取り組むことのできない製品。

それが、クリの土台用材だと思います。

特注品ではなく、定番在庫品として今後在庫を増やしていきます。
現在、50本ほどの在庫ですが今後の使用量を見定めながら順次増えていくことを想像するとワクワクします。

そんな期待に溢れる、いや自己満足にあふれると自嘲するクリ土台。
木の性質をよく知る方や、クリの性質を求めている方にとっては非常に魅力的だと思っています。
しかしながら、クリ土台も商品。
販売しなければなりません。
そうなった場合、腐朽性等の点以上に比較されるのが価格であり、そしてヒノキに比してどれほどの性質があるのかということ。

本来であれば、エモーショナルに使っていただきたいところではあるものの、流通量も多く大規模林業で産出されるヒノキに比べると高価であるクリ材ですから、その性質の差をお客様に伝える必要性がある。
クリ材を求める人がみんな、私の様に「木に盲目」名わけではないのですから。

そういう想いから、決心しました。
よし！、クリ土台復活のためにエビデンス（根拠や証拠）を得よう、と。

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タグ：: 栗; クリ; デッキ材; 土台用木材; 屋外使用の木材

muku_mokuzai at 13:30│コメント(0)

2021年06月28日

復活のプロローグ～適材適所の樹種　栗（クリ）～　⑤

クリが実りと木材の両面で、古くから利用されてきたことを前回までに触れてきました。
そして、その特徴を活かした建築材料として土台材を生み出したいと計画していることを・・・

土台は建築材を足元で支える、表には見えにくいものの重要な存在。
近年では、コンクリートで床下全体を覆うベタ基礎という形式が主流になり、床下の湿気に対する腐朽の心配は軽減されました。
とはいえ、通風が確保されない場合や結露、とくに現在の機械換気を旨とする住宅の場合の換気不全による腐朽など、完全に配慮せずともよいわけではありません。

いえ、それ以上に私が配慮したいと思っている点は、現在主流となっているヒノキの土台材が辺材を多く含むということ。
まさしく、この点がクリ材を土台として復活させたい！と思った大きなポイントなのです。

本当は、クリの土台材を語るうえではここで、木材の辺材と芯材について詳しく触れなければいけないところです。
しかし、本題に戻るには非常に時間を要する為に今回は要点のみを加えながら進めることにします。
木材（樹木）には、肥大上長成長などに大きく関係する辺材（俗にいう白太）と、樹体維持を担う芯材（俗にいう赤身）があります。
単純に色が違うだけ、と思われているかもしれませんが実は全く異なる組織であることを知って下さい。

そして全く異なる組織だからこそ、木材として使う場合に注意が必要であることも知っておくべきポイントです。
現在は、人工乾燥材の普及とともに製品の寸法も安定し、上記のような基礎を含む工法の変化で木材の特徴を最大限に生かす適材適所の考え方を知らずとも、気軽に木材をどこにでも活用できるようになりました。

しかし、誰でもどこにでも使えるようになったからこそ、木材の信頼性や本来の性質に対する配慮や用途の仕分けがされなくなったとも感じます。

一時とても多く見られた屋外のデッキ材もその一つ。

建築工事の最終段階でつくられる屋外デッキ。
雨や紫外線などにさらされ、腐れや浸食による劣化の激しい用途のため、ウリンやバツなどのような硬質南洋材を使用するか、比較的身近なヒノキを使用するのが考えられるとこと。
とはいえ内装などとは違い、出来るだけ費用を抑えたい。
そういったことから、使用用途よりも費用が優先されどこでも入手でき上記よりも低価格で扱いの容易なホワイトウッドなど、腐朽に抵抗性を持たない樹種に塗装を施して使われる場面が非常に増えました。
その結果数年で劣化。
やっぱり木は腐る！失敗した！という結果になる場面を多く見てきました。

そんなの、ホワイトウッドを使うからだ！と思われる木材関係者もいらっしゃることでしょう。
そうではありません。
それはヒノキでも同じこと。

ヒノキ＝腐らない、虫が食わないと思っていませんか？！
それは芯材部分お話しです。

先にお伝えした木材の辺材部分は、樹木の生命活動に重要な水や養分を運んだり、木部を形成したり成長に大きな役割を果たしています。
そのため、木材になってもその性質を残しているため腐朽菌やシロアリなどの影響を受けるのは殆どが辺材部分です。
一方、芯材部分には腐朽や虫害に抵抗性のある樹脂成分などを含むため、それらに抵抗性を持つ樹種は少なくありません。
もちろん、樹種によっての差は非常に大きく芯材だからよいわけではなく、ホワイトウッドなどは芯材部分でも抵抗性は低いとされています。
だからヒノキにおいても、もちろんその他の樹種も辺材部分では抵抗性はなく、芯材部分を使用しなければならないということ。

ホワイトウッドではなくヒノキだから腐らない、ではなくヒノキでも辺材部分は腐るということを考慮すると、一般流通品のヒノキ材の殆どが、表面から相当な部分が辺材の露出しているものです。

ヒノキを使っていても、やっぱり木は腐る。
木はダメだ、金属やプラスチックの方が優れている。
そんな結論になってしまう。
誤解なんです、辺材だからなんです。

もちろん、芯材でも腐らないわけではありません。
でも、まったく違うものだという認識を持ってもらいたいのです。

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muku_mokuzai at 13:30│コメント(0)

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