紀州産 神代樟の杢
今回はあまり多くを語るより、見ていただくほうがいいでしょう。
超稀少で、超貴重材です。
神代樟(じんだいくす)の板材です。
もともと、数年前に紀州は有田川の川底から引揚げられて、ニュースにもなったくらいに有名なクスノキで、樹齢は1000年以上といわれていますし、その樹齢もさることながら土中・水中に、これまた1000年単位で埋もれていたものですから、ひょっとするとこの木が芽吹いたのは、紀元前!かもしれません!!
ほんとに、神代という呼称にふさわしいものです。
直径が3m超、長さ12m、重さは60tと言われていました。
(写真下段、右側小さい丸太で径が1m程ですから大きさがわかると思います。)
近づくものを圧倒する、威圧感があるくらいの大木で、幹の大きな穴には人が入れるくらいの空間があったのですが、夏にそこへ登ると不思議にひんやりしていて、目を閉じると外気と遮断された「神代(かみよ)の昔」に行ける様な、そんな涼やかな風が流れていたのを今でも昨日のことのように覚えています。
もともとクスノキは、樟脳(しょうのう)という精油成分を活用して、防虫や防臭などの目的で使用していたもので、箪笥の裏板などにも虫除けとして使用されていたものもありました。
古くは日本書紀にも「杉とクスノキは船に・・・・」というように用途を示して記載されていたくらいに、日本人には古くからなじみの深い木材の一つです。
さて、今回その神代樟が製材され・・・・・・・・
いや、正確にいいますと「木挽き」されて販売されることになったのです。
木挽き(こびき)とはなんぞや・・・
木挽き。
大鋸(おおが。大きいのこぎり)を使って、丸太から木材を切り出していく職人さんの事。
製材機が発達するまでは、小さな材木から大きな材木まで全て木挽きさんが挽いておられました。
近年では製材機の発達と、古挽きさんが木を見て、ここならどんな杢がでるかやどうすればいちばん効率よく木取りできるかと考えて挽いていくような、そんな仕事も丸太もめっきり減ってしまい、木挽きさんの数は減少し今に技術を伝承する方がいらっしゃらなくなることが危惧されるような現状です。
今回の神代樟を挽いた木挽きさんがお弟子さんだった頃は、仲間というか弟子さんも35名ほどいらっしゃったそうですが、現在はおそらく残っていらっしゃらないのでは…(関東では木挽きさんは、東京は新木場にいらっしゃるのですが、私は面識がありません。)
そんな木挽きさんですが、今回のような超弩級の大径木などの場合は製材機に通すというわけにもいかないので、当然出番となるわけです。
といっても、もう相番さんがいないため、残念ながら昔のように大鋸で挽くのではなく、チェーンソーでの木取りということでした。
本当に残念です。
が、昔の技術の伝承者である木挽きさんが製材を手がけた神代樟です。
それだけでもワクワクしませんか?!
しかも、その巨躯のうねりから想像できるように、製材した原木からは縮みや玉杢というとても美しい杢目の材がとれ、あたりに立ち込める「1000年の樟脳の香り」とともになり、なんとも言えない雰囲気を醸し出していました。
弊社トラックとの比較。
大体トラックのてっぺんが2.1mですから、大きさがわかりますよね。
その神代樟の丸太からの製材分が若干ですが入荷しました。
杢もとても美しく、惚れ惚れします。
こんな感じの杢が取れています。(一部は弊社仕入れ分以外のものもあります。)
数年前に陸に上がり鎮座していた状態だったにもかかわらず、製材された原板はまだまだ水分を多く含み、表面はズブズブと水分が滲んでいましたので、すぐに何かに使うということは当然できませんし、何といっても神代木、しっかりじっくり乾燥させないととんでもない暴れが出ます。
以前にご紹介した「神代欅(ボグケヤキ)生材」や、乾燥材でありながら羽のように反り繰り返っている「神代樟」の薄板を想像すれば、どんなことになるかが少しは想像できるかと思います。
巨木の暴れはどんなものか、現状では知る由もありませんが、皆さんに製材品としてお渡しできるまで、しばし弊社にて永年の疲れを癒して?もらう休眠期間を取りたいと思います。
ご覧になりたい方、香りをきいてみたい方はご一報いただければ、ご案内いたします。
伽羅とまではいいませんが、白檀などの香木に伍するような風格のある木材であることには違いないと思います。
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