本物の無垢木材　～茨木市戸田材木店・セルバの木の虫ブログ～:2024年07月

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2024年07月

2024年07月31日

ナチュラルワインと秀逸な日本酒の棚、そしてワイド一枚物のフローリングの酒屋さん改装！前編

担当にとって、目の毒が並ぶ店内・・・（笑）

毎度お世話になっている秀逸な焼酎から、買い占めたくなるナチュラルワインたち、そして夏が悔しくなるくらいに買い控えないといけない日本酒が、ところ狭しと冷蔵庫に納まる店内。
その店内の拡張に伴い、フローリングと無垢の棚材のご依頼を頂き、先日漸く完成しましたので、紹介せずにはいられません。

ご依頼を受けた最初の要件、棚。
それも、無垢材で作りたいとのお話。

そりゃ、得意分野ですから提案もウキウキ。
そこにはワインが並ぶというのですから尚の事。

有難いことに、寸法などは展示のボトルの配置と使い勝手を考慮したうえで、図面としてご提示いただいていたために、非常にスムーズに作業に取り掛かれました。

何より、写真では伝わらないこの棚の奥行き！！
450mmオーバーです！無垢一枚物です！！！

この厚みで無垢一枚物で、奥行450mm以上。
まぁ、興奮しているのは担当くらいですが、テーブル天板などとは異なり、この薄さでこれほどの一枚板を、同一樹種で多く供給する、というのは実はなかなか難しいものなのです！

柾目の部分もあったりする、そのすごさ。
原木直径はゆうに1mオーバーです。

そんな材を供給できたのは、弊社の在庫でこのような用途を想定していたアユース材。
大きな欠点なく（といってもキクイムシの食害はある）加工が楽で、塗装もしやすく何より幅の広く厚みの薄い一枚板が供給できる、数少ない樹種。

今回も、後に出てくるフローリングは目立つものの、棚材の主役は並ぶワインたち。
なので、主張する必要はないのです。
しかし、店主さんの「無垢材で！」のご希望に、アユースしかない！と言うことでご提案したもの。

背板は見えなくなるうえに、転倒や揺れを心配されていたことからラワン合板としましたが、その木目ともよく合う上に、細かな部材も同一材料ですので雰囲気もばっちり！

とっても落ち着いた棚になりました。

本当に頼りになるアユース材。
価格的にも優等生だったものの、やはり近年は高騰気味。
とはいえ、まだ入手できる有難さがあります。

今回の様に幅はぎ無しの一枚物の良さを活かせる用途に、今後も提案していきたい樹種がアユースです。
そして、棚だけではなく、今回はフローリングと壁面のパネリング、そして追加で出てきた無垢材建具も供給することに・・・・・

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muku_mokuzai at 13:30│コメント(0)

2024年07月28日

戸田先生と愉快な仲間たちの伐採授業 2024 大阪研修　二日目！

さぁ、大阪研修も二日目。
学生さんを迎えて、今日は街の材木屋さんの見学です！

街の材木屋さんといっても弊社の事ですので、物凄く特殊なものもあり、あまり一般論ではないものの、企画主催者である担当が普段している仕事を、そしてその延長上にある企画を知る機会にしてもらう狙いです。

軽く、無垢材ショールームを案内した後、資材倉庫に移動。
そこで目にしたのは、昨年学生さんの地元で伐採した丸太たちの美しい姿。

訪れた学生さんの多くは、昨年一緒に森での伐採に参加したメンバーですので、あの森から出た木がこうなるのか・・・と、製材される丸太とは異なる感慨深さを感じてもらえたのではないかと思います。

それとともに、現地で見たものの多くは曲がり丸太で直材利用はしづらいものもあったはずながら、皮を剥かれて横たわる丸太たちは、どれも秀逸で「直材以外は価値が無い」という教科書的な考え方ではないものを、目の当たりにしたのではないかと思います。

因みに、担当の向こう側の細いながらも写真の左側がこんもりとしている丸太が実はコレ！

しっかりと、弊社の材であり馬搬されたことを森の中で証明する「馬ト」が刻まれています。

斜面に生えているときは、根曲がりがひどく膨らんでいて、上部も大きく湾曲し、他のヒノキたちの間を縫うようにして曲がりくねりながら斜めに伸びていたもの。

しかし、そんな形質から想像できないほどの美しい年輪。
マツが、一般的な針葉樹のアテ形成とは異なる理由で、幹を湾曲させており、その曲線を利用した建築を伝承したいという狙いもあり、曲がりのマツを使いたいのです。

そして、その技術や考え方を伝えていきたい。
過去には、大工さんになろうと思っている生徒さんとも一緒に伐採する機会もありました。

こういうことが大事だと思っています。

そして、丸太の後は体験会第一弾！

鉋削り体験です。

一般生活ではおろか、最近では大工さんでも鉋を使ったことのない人も増え、仕事で使う機会が無いと処分する大工さんもいるくらいに、「珍しくなった」鉋削り。

この作業も、手作業であり、材との対話があってのこと。
ヒノキとスギの2種を用意し、全員に削ってもらいました。

デモンストレーションの大工さんは、いとも簡単に綺麗な削り花を出していきますが、生徒さんは如何に？！と思っているとみんな真剣で、得手不得手はあるものの材と鉋を感じながらの作業は良い経験になったと思います。

余談として、鉋に使用される木材であるカシとそれ以外の広葉樹を、同じくらいの大きさで重さ比べもしてもらいました。
「重っ！！、片手で持てん・・・・」という声もちらほら。

その性質と安定性が特徴で使われるものの、鉋では刃物の重さと勘違いしているのか、木材本来の重さに驚く学生たち。
これも、一つの経験で樹種の特性と質感を肌で感じられたことと思います。

というより、普通の町の材木屋さんはカシなんか置いていませんからね！
特殊な材木屋の面目躍如（笑）。

鉋削りの後は、伐採丸太のうちで皮の残っているものの皮むき作業体験です。

製材は機械で挽いていきますが、丸太利用では機会もあるものの手作業が多くなります。
丸太を使う上での、一つの大きな苦労ポイントである皮むきを、どれほど大変か経験してもらいました。

この経験が本当に大事だと思います。
因みに、皮を剥いたら出てきた虫食い！

昨日、旬が悪かったりほおっておいたりすると虫に食われるよ、といった通りの教科書的な虫食いを見せる事ができました。
もちろん、この時期まで皮つきで置いている時点で、おそらくそういった説明ができると思ってはいたものの、まぁ幼虫が出るわ出るわ・・・

それももちろん、経験であり今後木材関係者と話をするときに、嫌がられる虫害とはどんなものかを、高校生にして知る事ができたのです。
良い機会だと思います。

弊社の企画する伐採授業は、材を求めているだけではありません。
森にある材に関連させ、全ての流れをつなげていくことを主眼としています。

今回の大阪研修以降、「伐っておわり」の収奪ではない取り組みだという、この企画の趣旨である「人の関わる森の、人のかかわりでの遷移」の意味をきちんと伝え、そして少しだけ森から分けてもらう伐採をする。
そして、伐採後に大阪研修をする。
そのサイクルを、森とともに続けつなげていくのが弊社の担当の使命と肝に銘じ、今年も続けていきます。
ジブリにおいての「釜じい」が言っている通り、やっぱり関わるのなら最後まで、ですから人の関わってきた森は、最後までしっかりと関わり人的遷移を起こしたい。

それが、結果として良いものにつながると信じて。
どうぞ、今年以降も応援して下さい。

大阪研修、今年も終了！
また秋には森にもどります！
また会おうね、みんな！

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タグ：: 戸田先生とゆかいな仲間たちの伐採授業

muku_mokuzai at 13:30│コメント(0)

2024年07月25日

戸田先生と愉快な仲間たちの伐採授業 2024 大阪研修　初日！

熱すぎる夏。
いつも通りに焼けるような日差しの梅雨明けは、毎年恒例のイベントの季節です！

弊社が仲間たちと大工さんとともに行っている、戸田先生と愉快な仲間たちの伐採授業。
その授業企画は、伐採して終わりではありません。

伐採した木々は大阪へ運ばれ、天然乾燥ののちに住宅の素材として活かされます。
しかし、それでも終わりではありません。

伐採に一緒に携わった学生さんを大阪に呼び、そして大阪の森林や製材、そして製品市場や材木屋さんを案内し、森から街への流通を学んでもらう企画、大阪研修を実施しているのです。
森の人は伐るところまで、市場は捌くのみ、製材は製品にして出荷するだけ、材木屋は運んで終わり、大工さんは森も立木も知らずに木を使って建築をしている。
そんなつながりのないままの流通を、森からつなげる一つの手段として、一般的な流通を理解しそれ以外の方法を模索する手がかりとして、業務で携わる者が情報を伝えるための研修である大阪研修。

その大阪研修が、先日終了しました。

大阪研修の第一の舞台は森林！

学生たちが普段触れている森林とは異なる、ほぼ針葉樹の人工林。
そこで様々な問いをたてます。

手入れがどうとか、枝打ちがどうのとか、それも大切ですがそうではなく、一番学んでほしいのは地域ごとの差。
授業と教科書では分からない、その場所に行くからこそ分かる事。

地域と関わる人が違い、見ている未来が違うと大きく山の姿が異なるということ。
そして、人が関わる針葉樹林業と人が関わるものの広葉樹が自生する天然更新林との違い。
それとともに、水や土の違いとそれがもたらす材の違いと生態系の違い。

もちろん、施業や道づくりの違いなども顕著に出ます。
残念ながら、施業や道づくりに関しては担当が伝えられることは殆どありませんが、それでも関わる場所の説明だけはしっかりと。

そして、その後は製材に移動し実際に丸太の説明を受けたうえで製材実演。

戸田先生と愉快な仲間たちの伐採授業 2024 大阪研修二日目４

わざわざ、生徒の為に一本の丸太を挽いての実演に感謝！
生徒たちも動画を撮りながら、どのような材が出てくるかを見届けます。

如何に節やそのほかの欠点といわれる部分を出さずに木取りできるか。
そして、実際に引いた材面を見て、これが枝打ち、こっちはしな（もめ、胴折れ）という説明を実際にその場で行います。

立木の事は見ていても、実際に木材としての価値づけや欠点とされる部分の事、そしてその実際を目で見て触れて、話を聞くことで自身の確実血肉となります。

そして、製材品はちょうどよく（？！）注文材の為の今年の5月伐採の原木でしたので、ばっちりとアレが分かったのです。

写真では分かりづらいものの、水分量の差が辺材と芯材での顕著に異なる様子が、色として目で見て分かるうえ、実際に触ってみると水分の感じ方が全然違う！ということを、驚くほど実感できたと思います。

こういう、理論で分かっても実際に触る事ができたうえで経験として理解するのとでは、雲泥の差が出ます。
だから、この体験は事情に重要で、どうして木材として水分量や伐り旬を重んじてきたかが理解できるのです。

もちろん、木目の話や色合いなど伝えたいことは山ほど・・・

情報量がパンクしそうになりますが、初日の最後には担当のメインステージである製品市場が待っていいる為に、後ろ髪引かれながら製材をあとに・・・・

製材からいよいよ製品市場に到着後、市場の強みを紹介します。

様々な産地の得意分野の製品が集まり、そしてグレードや用途別などおおくの品目が一度にみられる、いわばテーマパーク（笑）。
そんないいものではありませんが、当日もネタに溢れていたのです。

上の写真は、ちょうど良いところにあった虫害を受けたヒノキ材。

ヒノキなのに、ボコボコに虫食い（汗）。
いや、ヒノキなのに、という先入観を捨てるようにという良いサンプルなのです。
その上、ヒノキなのに（笑）カビがびっしり・・・

そこで、腐朽や虫害のお話、そして樹種の特徴や芯材と辺材のお話をし、樹木の生長と精油成分なども交えて木材のお話をしました。

もちろん、ここでも産地の違いによる施業の差や木味の違い、乾燥の違いや材の木取りの違いなど、産地から施業と製材と関わる人の違いを出来るだけ感じられる材の特徴を説明していきました。

最後にたどり着いたのは、人工乾燥材のブース。
皆さん批判的になる（汗）、高温乾燥材のお話です。

香り、色合い、内部割れ、価格、そのメリット、どうしてそれが流通しているのかなど、大きな話になりましたが分かりやすくお話できたのではないかと思っています。

ここでも、香りを嗅ぐことも忘れず記憶として頭に刻んでもらいます。

実は、まだ回りたい浜もあったものの、気がつけば既に終了時刻を15分オーバー・・・
熱心に聞いてもらって、調子に乗ってしまったようです。

翌日もまた、日中の予定を組んでいる為に初日はここまでで終了。
明日はいよいよ、材木屋さんを知る！と言う予告をして初日は分かれたのでした。

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2024年07月22日

巨樹は林業の産物？！～山住神社のスギ（山住杉）～

イレギュラーですが、続けます。

木まぐれコラムが連投になることはいつものことですが、今回は巨樹連投です！
まぁ、木まぐれコラムのおかげで先日の大栃が2か月ぶりの投稿だったのですから、たまにはいいでしょう（笑）。

というよりも、本当のところはここを紹介しておきたかっただけのこと。
というのも、前回の大栃から今回の神社ヘは、同じ道をたどりさらに山頂へと昇った先が目的地だからです。
一日で一筆書き巡りをモットー（？！）にしている担当の巨樹巡りにおいては、ここを紹介せずにはいられませんし、もし拙記事をご覧になり訪問される方には、市街地は抜きにしてもこの場所だけは、同じ苦労で二度上ることのないように、「一筆書き」で訪れてほしいからです。

前回のアカクボ沢の大栃から東へ、ファイティングなほどの九十九折れをくぐりぬけて向かうのは、標高1000mを超える峠道。
今までの道路から、うそのように広くなった分岐点に山住神社が鎮座しています。

あれ？こんなに観光の人たちの車があるんだ・・・と少し驚きますが、スーパー林道（担当は昔から「スパリン」と呼んでましたが・・・）や春野町方面からの道の交差する部分であるために、登りで出会うことのなかった人たちが、一気に集まっている状況。

そして、そこにある山住神社がこれまたすごいのですよ。

道路からすぐ、開けた視界の先に見えているしめ縄がまかれたスギ。

山住神社のスギ、山住杉です。
一般的には、参道の両脇に鎮座する、というイメージが強いのですが、ここでは参道のど真ん中に居る。
そして、社殿を守っているかのようであり、参拝者をその人間性で選別するかのよう（担当のイメージ）に、太い幹を張り出しています。

静岡県の天然記念物に指定されている、二本のスギ。

樹齢、約1300年！
約、ではなく屋久杉並みの樹齢ではないですか！！

スギやクス、イチョウなどの全国に巨樹を見る樹種の中には、1000年という時間を超える者たちが多く存在するのは確かですが、当地との違いは実は、材木屋にも非常に興味深いところなのです。

担当が当地を紹介したかった理由は、大栃に近いということ以外に上記の理由があるのです。

スギという樹種は、非常に歴史が長く人とのかかわりも永いうえに長寿であるがために、伝承は多くあるものの、化石や発掘物以外で史実として残っているものは、思った以上に少ないと思われます。

解説板によると、当地に神社鎮座の頃にご神木として植栽されたものとのこと。
そして、それが伝承ではなくかの有名な伊勢湾台風の折の倒木の年輪で確認できている、というのですから驚き。

担当は、その年輪を見たことはないのですが、それにしても1000年をゆうに超える年輪を数えるものとしては、幹の太さが若干足りないようにも見えなくもないのですが、それはそれ。

巨樹というのはロマンのかたまり。

史実と突き合わせる学問や証明ではないのです。
十分に迫力のあるこの姿で問題なし。

いつもならそう思うところです。
しかし、材木屋としての興味はまた別の次元であり・・・

巨樹としての樹齢もさることながら、もう一つ担当が気になるのがこの地域では相当早くから植林が根付いていたのではないか、ということ。
根付く、というのは習慣として行っていたのでは、と思うこと。

境内では、注連縄の二本以外にも社殿から山側を見ても、相当に太いスギが林立しています。

上部こそ、既に人の影響も周囲の影響も受けない自由な枝ぶりになっていますが、非常に整った樹形と素直そうな素性を感じる姿。

それらは、同時期に植えられたものと推察するのですが、当地近くにある巨樹の春埜杉が位置する山も、昔の献木植林により大木の森となったと記されていた記憶があります。
植林の歴史は簡単には語れませんが、体系的にまとめ林業とした最古は彼の地ですが、此方でも宗教的な献木植林や一般的な植林は、かなり以前から継続的に行われていたそうですから、当地のこれらの巨樹も、完全なる植林によるものだったのかもしれません。

とはいえ、境内の二本は植林での優秀木である母樹などと比較すると、自然の厳しさを知った天然の巨樹の様にも感じる風格がありますから、真偽のほどは想像で楽しむことにしましょう。

歴史とその土地の事を考えることも、巨樹巡りでの楽しみの一つですね。

因みに、当地で治山治水や植林林業に大きく貢献した人物は、一カ月ほど前に残念な事件で有名になってしまったものの、社会的に重要な役割を担って下さっている保護司、という方々の創設にも関わったらしい、非常に功績の多いお方。

本当に、昔の偉人は計り知れないスケールの人が居たものです。
屹立する如くに急峻な山にもかかわらず、立派なスギ巨樹を擁する当地の理由が少しわかる気がします。

写真ではあまり太くは見えなかったかもしれませんが、十分な太さですよね？

手前のスギの左に居るのが担当です。
下界よりも清々しい空気の中、しばし日差しの暑さも忘れて木陰に。

先日の大栃の、ザ！広葉樹とは異なり、まさしく！針葉樹という大スギ。
樹高もあり、立派な姿とこの立地は是非、大栃とともに訪れて頂きたいと思います。

訪問時間がかかりますから、きっちりと時間配分されることをおすすめしますよ！

そして、お腹がすいたり喉が渇いた時は道路挟んですぐのここ、山住茶店大杉へ！

おそばにおうどん、そしてヤマメの塩焼きまで！あるみたい。
過密スケジュールで道を急ぐ担当は、立ち寄ることを許されませんでしたが、ぜひヤマメの感想を聞いてみたいものです。

食された方はぜひ、コメント下さいませ（笑）。

山住神社のスギ（山住杉）所在地

静岡県浜松市天竜区水窪町山住

緯度：35.13510027
経度：137.91406615

駐車スペースあり

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2024年07月19日

森に包まれる感覚を・・・～アカクボ沢の大栃～

当たり前のことですが、拙記事は巨樹訪問記がメインではありません。

ほぼ月一回ほどのペースで投稿はしているものの、業務や木材に関することがメインのページですので、巨樹専門の写真家さんや訪問記ページを主催されている方には、内容は到底及びません。

個人それぞれ、訪問記も異なり感じ方も異なるので、並ぶつもりもないのですが、それでもネット記事に詳細の記述がないものや新しく発見されたものなどには、非常に興味をそそられてしまうのは、仕方のないところ(^^;)・・・

今回訪問の場所も、近年までは知られていなかったようで、それも森の中に佇んでいるということで、心躍らせ行ってまいりました。

場所は、急峻な山道が続く静岡県の山間部。
九十九折れ道の運転が好きなタイプの方には爽快ですが、助手席での同行者がある場合や運転に苦労を感じる方にはおススメできない場所。

都市部からどれくらい走ったか、低速で長時間運転しているので距離はそうでもないはずなのですが、とにかくハードなヒルクライムドライブ。

目的地が森の中、ということで進入する目印を見落とさないように運転していましたが、意外と目立つ場所に看板がありました。

見落とさないうえ車も駐車できるいい環境。整備、ありがとうございます。

車を止め、森の中へと「降りて」行きます。
車で登ってきた道とは違う山の中を歩いて降りるのですが、これまたきれいに整備された木階段があるので、運動靴であれば楽勝で行けます！
本当に感謝。

明るく整備されたスギの木立の中を、帰りののぼりの体力が心配になるくらいの勾配を下っていくと、川のせせらぎが聞こえてきます。

下り勾配が終わり、平坦になりつつある踏み分け道のようなところを、少しづつ右手にすすんでいくイメージで歩みを進めると、視界の開ける場所に出ます。
そこが目的地。

下りきる手前にも、トチの大木があるのでお間違いのないように・・・

下りきって開けた場所で出逢えました。
アカクボ沢の大栃。

先ず、この石垣は一体何の為に積まれているのだろう。
炭焼き？窯があったのか？

森の中には人の生活と次代を映すものが多々みかけられますが、特に巨木のそばにそういった痕跡が見られると、その歴史について知りたくなってしまうものですね。

といいつつも、実は現地では意識は石垣よりもやはり、大栃。

期待通りの立派な出で立ち。

沢沿いの谷地のような場所に、すっぴりと納まっているかのように大栃が鎮座。
周辺のスギ林の勢いも、まるでトチに遠慮をしているかのように、空間を明け渡しているかのようです。

もちろん、林業のみなさんにより、大栃の周囲も整備されているのだろうことを想像するのですけれど、それを差し引いても際立つ存在感に、かなりの間、近づかずに遠目に眺めたくなりました。

人間の眼は、カメラとは違いかなり広い範囲を全体的に視野にいれつつも、見たいポイントを無意識と有意識と双方で選別しながら、断片情報を組み立てて脳裏に映す事ができる為、森の中の全体の雰囲気とその巨躯の双方を感じられる、遠目に眺めるスタイルを無意識に選択したのだろうと感じます。

少しして近づいてみると、遠景とはまた異なる表情を感じます。

遠目にはあまり意識しなかった、うっすらとトチを覆うコケ類。
そして、幹のくぼみに着生する別の広葉樹たち。

森の生態系を受け止めているかのような雄大な大栃の姿に、街からの訪問者である自身も受け入れてもらっている様で、心地よいのです。

その上、担当が訪れた時期が新緑溢れるタイミングの良さで、とにかく気持ちいい。
気持ちいいのは、見上げる景色がこの緑だから。

単なる緑ではなく、この日も汗ばむほどの日光の強さだったものの、日本産広葉樹の中でも最大級クラスともいわれるその葉が、日光を適度に遮りながらも透過させ、同じ色の緑ではなく、様々な色合いに感じさせる不規則なリズムが、気持ちよさに通じるようです。

それに、そばを流れる川のせせらぎが、清々しさを増すのです。

それらは、1/f ゆらぎであったりフィトンチッドであったりするのだと思いますが、巨樹に抱かれているような感覚と、誰もいない森の中で巨樹と対峙している幸せが、心を高揚させるとともに体の落ち着きをもたらしてくれているのだろうと思います。

また、今でこそ普通は知られていないかもしれない、これも見られます。

クリ、じゃないですよ。
いや、海外ではほぼクリ扱い？！の話題は木まぐれコラムにて紹介していますが、なんせ Horse Chestnut なんだから、クリでもいいのかもしれませんが、これは栃の実です。

あちこちに、この大きな栃の実の殻が落ちています。
人間にとっては今では、まったく重要ではないかもしれませんが、お土産などでは目にする栃餅のもとがこの実。

巨樹そのものだけではなく、このような実や葉っぱ、そして皮の具合や枝張りなどを観察することも、地域と樹種との関係を知る手掛かりにもなります。

雲が移動し、見る角度によってはかなり強い日差しが差し込む日中。

裏側？！からの姿をカメラに収めようとするも、強烈な逆光に閉口（汗）。
しかし、巨樹にはアルアルですが見る位置により印象が変わるのは、大栃も同じでした。

正面からよりもねじれたような印象と、生長の途中で背面が開けたのか、その方向へ大枝をのばそうとするような印象を受けました。

樹木は、環境による影響を大きく受けます。
歴史を物語る、とでもいうのでしょうか。

単なる個人的な想像の域を出ませんが、そんなことを現地で考えながら居ることも、巨樹との対話の様で楽しみの一つです。

そして、こちらも巨樹にはつきものである洞。

大枝を枯損したのでしょうか。
ぽっかりと空いた空洞部分は、おそらく樹芯近くまで伸びていると思われるので、時間とともに中心部が空洞化していくのだろうと考えます。

もし枯損していたのであれば、幹そのものに大きな損傷が無かったことが救いではないかと思いますね。
稀に、樹皮や幹そのものが、枝の重さで一緒に引きちぎられるような場面もありますので、洞の周囲が巻き込んでいることを考えても、損傷は少なそうです。

強すぎる日光を避け、心地よい大栃の木陰に入っている写真、のはずだったのですが意外と暗いですね・・・
現地ではこれくらいでちょうどよいほどの日差しだったのですが、写真難しい・・・・・

それでも、大栃の右側に居る担当との巨さ比べは感じて頂けるかと思います。

堂々とした太さ。
そして、この姿がまだそれほど有名ではなかったという事実。
地域の皆さんに大切にされてきたことは、非常にうれしく思います。

そして、このような訪れる人にとって快適な環境を整備してもらっている事にも感謝。
自然そのままが良いのかもしれませんが、スギ林は手入れをされていますし、森の中ですが人間の関わる森。

大栃を大切にする気持ちをもって森にも関わることは、自然を荒らすということにはならない、と思います。
もちろん、訪問の節度は大切ですので、感謝の気持ちをもって訪れたいものです。

心地よすぎる環境と、太陽により刻一刻と表情を変える大栃に魅了され、気がつけば訪問から3時間が経過！（笑）
どれほど心地よかったのか、想像して下さい(^^♪

名残惜しくも、この後の帰阪の時間を考慮し大栃に別れを告げました。

アカクボ沢の大トチ１１

そうそう、どれほどトチの葉が大きいのか。
わかるでしょう？！
担当の顔など覆い隠し余りあるほどの大きさ。

ホオとともに、森でこの大きな葉っぱを見ると自身の存在をアピールしているかのようで、ほっこりとします。
この葉は、大栃のものではなく駐車スペースにある一般的なトチのもの。
本当に大きい・・・

こういうことも、経験すれば森を考えるきっかけにもなると思いますから、やはり経験してもらいたいことの一つ。

本当は、こんなに素晴らしい大栃で締めくくりたいものの、奥が深すぎるのが静岡県。
実は、ここからさらにヒルクライムした後の山住神社に、スギの巨樹があるのです。

ここまで来たならば、必ず訪れたいものですからもし訪問されるのであれば、時間配分をお間違いのないように（笑）。

それにしても、とにかく心地よい新緑の季節の大栃でした。

アカクボ沢の大栃所在地

静岡県浜松市天竜区水窪町山住

緯度：35.14833333
経度：137.90444444

駐車スペースあり（山道の途中です。通行の妨げにならないように。）

詳細な案内は、水窪山に生きる会さんのページに公開されています。

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＊消費税10％への改定前、2019年9月以前の記事の価格は旧税込み価格となっています。お手数ですが、ご連絡の上正式なお見積の依頼をいただけますようにお願い致します。（ホームページ価格も改定が間に合っていない物もありますのであしからずご留意ください。）

木のビブリオが、それぞれの木が持つストーリーとともに、こだわりの木材をお届けするブログと、稀少木材・無垢フローリングのホームページです。

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タグ：: 巨樹; 巨木; 所在地; 静岡県; 栃; トチ

muku_mokuzai at 13:30│コメント(0)

2024年07月15日

雰囲気づくりと素材のバランス　～ネシアンチーク幅広無垢UNIプルミエグレードフローリングと新素材羽目板のリフォーム～

今回の施工記事は、ちょっと特別。
一般のお施主様ではないからと、今は一般流通していない最先端？！の木材を利用したから。

いつも通り、床を含むリフォームのお仕事での提案だったのですが、今回は木材はもちろん流通や森林林業にも精通されているお施主様のおうちだったので、いつもと違う角度からの提案を、と考えながらもご希望の雰囲気と材のバランスを考えてご提案したのは、世界の銘木（笑）。

この表情でピンとくる方、ありがとうございます。
そう、弊社おすすめのネシアンチーク幅広無垢フローリングのUNIタイププルミエグレード150mm幅です！

今更いうことでもありませんが、リンクを開くのすら邪魔くさい（笑）方に向けて言うと、「幅広・無着色・本来の油質」の三拍子そろったものが、このネシアンチーク。

幅広、を除くと化粧品のようともおもえるうたい文句ですが、お伝えしたいところと今回の採用のポイントの一つもそこにあるのです。

今回のリフォーム計画の、初回に検討されていたフローリング樹種の中には、このネシアンチークは候補にありませんでした。
いや、全く眼中になし。
国産広葉樹材が最初のご希望だったのですから。

全く違うやないの！！と思ってください。
そう違うんです。

国産材ではない価値。
それがどこにあるのか。
また、国産広葉樹ではない理由はやはり部屋の雰囲気と、その木材への想いです。

弊社でももちろん、原木からも日本の広葉樹をおすすめしているところをなぜ、敢えてネシアンチークなのか。
それは、お部屋の雰囲気と施主様の雰囲気、＋施主様の思考を感じての提案でした。

業界の様々なことをご存じの施主様。
そこに敢えて提案したネシアンチークの存在意義は、当製品のページをご覧になっていただきたいとおもいますが、見てもらってもわかるその存在感は言うまでもなく・・・

業界のことをご存じだということは、一般的なチークと呼ばれるものと弊社がおすすめするネシアンチークの違いとともに、その違いがあるからこその存在感に納得いただいた末の選択。

敢えて言うと、チークは古くから世界の銘木のトップランナーのうちの一つですが、優良な木材は現在では非常に少なく、特にフローリングにされる材料は非常に少ないもの。
弊社でも、その希少性からミャンマーチークの超幅広フローリングの製作などがありますが、そんなものを除けば流通しているものの多くは若木や樹脂分の少ないものを原材料としているものがほとんど。

また、イメージを近づけるために着色や木目の描写がされているものもあるのですから、それと比して無塗装のままで本来のチークの樹脂分を感じられ、なおかつきちんと管理された国有林からの政府認証植林材である、ということが大きなポイントです。

生活の中で多くの時間を過ごしながらも、仕事もできる落ち着いた空間。
当初候補にあった国産広葉樹材も、もちろんよいものなのですがこの雰囲気は出せません。

お手持ちの調度品を見ても、同じような色合いですしお好みの質感を考慮し、さらに持続可能な植林材でありながらもチークそのものを感じることのできる質感。
そこが採用のポイント。

単に国産材こそがすべて、という考えではないことがさすがだと思います。
敢えて国産材ではない、管理された価値のある世界の銘木を使うこと。
おそらく、これからのスタンダードになるだろう決定だと思います。

しっとりとした表情の中にも、このようにギラギラとした野性味あふれる部分もあり、杢もあり。
もちろん、チーク脂の香りも香るんです。
わかりますかねぇ、チークの香り。

それから、忘れてはならないのは150mm幅という幅広フローリングであるということ。

無垢フローリングは、幅広と言われる流通品でも多くは120mm。
それに対して150mです。

150mmを作るには、どれほど良質で太い丸太が必要か。
それは、自身で丸太からフローリングを作っている担当には嫌というほどわかること。

だからこそ、チークで150mm幅広で、脂感たっぷりなものを今使わないでいつ使うの？！（笑）ということになるわけです。

施工に際しては、天然素材のオイル塗装を施してはいるものの、艶っぽく色っぽい表情は無塗装からつづくもの。

この落ち着いた空間の一部分に、もう一つアクセントが加わることになるのです。
それは、施主様のたってのご希望である、新素材を使うこと。
それも、単なる製材品ではなく、「シン！素材」（笑）。

その姿とは？！

なんだ？！この樹種は？！

どう見ても針葉樹。
しかし、針葉樹にこれほどの色合いのものを見たことがない。
いったいこれは・・・？！？！？

そう思ってください。
わかるわけがないのです。
シン（新）・素材なのだから。

少し木材に詳しい方は、あぁ、あの乾燥方法の・・・と思うかもしれませんがそうではありません。

正解は、針葉樹なのですが従来とは全く異なる方法で、針葉樹にはない性質を得た針葉樹、とでも言いましょうか。
その姿がこれなのです。

色味と言い雰囲気と言い、本当に針葉樹とは思えないもの。

実はこの素材は、エクステリア用として期待されている製法で作られたもの。
硬質で腐朽しづらい針葉樹。

重厚な南洋材に求められてきた性質を、針葉樹で実現する技術でできた木材。

それを、あえて室内に仕上げ材として使うという斬新なアイディア。
床は落ち着いたチークであるものの、壁と天井は白色系のクロス仕上げ。

そのなかで一点、視線の落ち着く場所として、テレビの背面になる場所にこの素材を配置させていただきました。
そうそう、ここは弊社の担当が受け持った、弊社施工の現場なのです。

なので、提案もネシアンチークという選択肢があるわけで。

はい、完成写真がこちら。

いや、本当はこの後に電気屋さんが照明器具を入れたのだけど、仕上げはほぼこの通り。
右側の本棚も製作させていただきました。

なんといっても、お手持ちの書籍が多すぎて、ほぼ一面が書棚になったにもかかわらず、たまっていたものが少し整理できるかな、位の所蔵数というのだから恐れ入ります。
本好きの担当は納得なんですけど。

その理由は、取材をもとにされる職業柄ということで、落ち着いて仕事の整理ができる空間が必要なのも、やはり理解できる？ところです。

とにかく国産材が一番！ではなく、部屋の印象や自身の好みにきちんと向き合った木材をえらぶこと。
そのバランスの大切さが、いい感じにマッチしたと思います。

もともとの古い換気扇の開口部かくしは、既存の銘木合板（これも懐かしい！）のケヤキにあわせて、本物のケヤキ330角板材にて製作させてもらいましたよ！
白太もわざと入れ込んで、木目を通して製作。

横に並んだ電気の目隠しプレートのビス止めとも合わせて、わざわざビス止め仕上げ！
施主様からも、そこはビスでもいいですよ！とのお話でしたので、きれいな板材にビス打ちました（笑）。

きちんと材料選びをしてのぞまれた改修工事。
居心地の良い空間となっているはずです。

任せていただいたことに感謝するとともに、これからどのようにこれらの材が変化するかの様子をお聞かせいただくことを期待して、工事を終了しました。

・ネシアンチーク幅広無垢一枚物フローリングはこちらから
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＊ネシアンチーク無垢フローリングを検討するにあたってのご注意
1,
ネシアンチーク無垢フローリングは、チーク脂を多く含んでいる性質上オイル塗装を施した場合に、部位により染みこみに差が出る場合があります。
また、樹脂がフローリング表面に染み出すことがありますが、チークの優れた特性をもたらす貴重な樹脂です。
2,
木目の交錯により若干毛羽たったように感じたり、オイルが染みこんでいない（白濁様や艶ムラ等）ように見えたりすることがあります。（下部、表情の差を参照ください。）
3,
樹脂分の影響で、他の樹種に比べて表面を均一に仕上げることが難しい面があります。オイルなどで塗装後に光の角度により表面仕上がりの差を感じることがありますが、ネシアンチーク加工上の都合とご了承くださいませ。（表情の差に掲載される逆目等を参照ください。）
4,
樹脂成分により、他の広葉樹材よりもオイルの染みこみにくい部分があります。塗装の際には、乾燥不良や塗りすぎに特に注意して下さい。
5,
チークの樹脂を含んだサンディング粉が、木目に残っている場合があります。塗装の浸透性をよくするため、塗装前にはフローリング表面にウエスがけをしていただくことをおすすめします。

上記に関しては、後日の記事も参照の上ご検討下さい。

タグ：: 無垢フローリング; 無垢フローリング選び; 幅広; オイル塗装; ネシアンチーク; 施工写真; 無塗装

muku_mokuzai at 13:30│コメント(0)

2024年07月12日

木の五感シリーズ、リニューアル！　味覚 ⑩

さて、どうしてもお酒の話がしたい！、というわけではないのですが近年は樽も含め、お酒と木材の関連する話題が多くあることをお伝えせねばなりません。
昨年末、「木のお酒」が発売間近である、と報道されたのをご存知でしょうか。

意味が分からないかもしれませんが、担当が20年ほど前にすでにキャッチし興味のあった分野がついに一般販売されるということで気になっています。

木材はそのままでは人間の食用（飲用）とはなりません。
シロアリ、牛やヤギ、深海エビなどのように微生物の共生によりセルロースを分解する力がないからです。

しかし、セルロースナノファイバーを作ることのできる時代。
ついに、木材そのものから作られたお酒を直接飲むことができるようになったのです！

期待せずにはいられませんが、先に述べた通り木の香りが付けばよいというものではありません。
もちろんのことながら、木のお酒には材由来の香り成分が含まれているそうです。

意外にも、オークとスギにも含まれるイソアミルアルコールは、アルコール臭とバナナ臭を有するそうです。
バナナ臭は、とてもよくわかります。
個人的な感覚ですが稀に、そう感じるものに出逢うことがあるからです。

そのあたりをうまくコントロールして、嗜好品としての味の精度を高めていけばきっと、「木のお酒」の人気は高くなることでしょう。
「昨日は春らしく桜だったから今日は、スギにするかぁ！」とか、そんな日が来るのも近い？！

ご当地樹種による地域活性化（木曽桧酒や岩手赤松酒、沖縄ウラジロガシ酒などなど？！）も起こるのか。
単なるアルコール飲料で終わらないように、期待したいものです。

さて、お酒をメインに（汗）語ってきました木の五感シリーズ味覚編。
最後に伝えたいのは、時間軸です。

担当の好きなワインやウィスキーでは、熟成された年代物は非常に高価で取引されます。
それは、ヴィンテージによる味わいへの影響もありますが、熟成期間という永い年月を経ることでしか得られない味わいと価値があるからですね。

そして、その熟成のサイクルは早めることができない。
どんなに科学技術を使っても、現在では待つしかないからこそ価値があり、高価で取引されている。

それは木材でも同じで、樽用材になるオーク（ナラ）材は百年以上の樹齢を数える中からも希少な部位のみを使用しますし、それ以外の木材利用においても高樹齢で素性の良い木材というのは、その生長にかかった時間はお金に換算して得ることしかできません。

樹木を単純に太らせることはできるかもしれませんが、求める材質に時間そのものをコントロールすることはできません。

時間をお金で買っている、ということですよね。
神代木も、数千年の時間を経て得られるものの代表。

現在は、新聞紙面にも出てくるように30年～40年が適正伐期と言われます。
それは、二酸化炭素の吸収固定をしなくなる、と言われる樹齢だからとされていますから、そのサイクルを回すことで気体の二酸化炭素を減らせる、という目的です。

木材利用では、そんな設定の伐期イメージを流布してほしくないと思ってしまうのですが、現在は一昔前の木材利用を前提とした森づくりから、もっと間接的な金銭的価値であったり二酸化炭素固定という名目でしか森林を見ていないと感じてしまいます。

どちらも、様々な形のある森林をひとつの型にはめた経済本位の見方。
それだけでは、本来の森林の在り方や人間とのかかわり方、若しくは人間のかかわらない森林や山の在り方が見えなくなるような気がします。

時間という変えられない価値を「待てない」社会は、それが作り出すものへの経緯や配慮を失ってしまったように感じます。

社会の早すぎる流れの時間軸ではなく、自然の中の森林という時間軸にもう少し、人間の方が合わせていかねばならないのではないか。
30年で二酸化炭素の固定力が、というものではなく森林が与えてくれえる様々な恩恵を広い視野でとらえられるような、そんな「豊かな社会」を目指せる材木屋でありたいと考えています。

馬で搬出する馬搬を実践するように・・・

遊びではなく、生き物と一緒に森の中で時間軸を感じられる機会をつくること。
そこが、現在の材木屋としての仕事としていきたい。

味覚編の着地点は、意外にも時間軸という思いもよらない場所となりましたが、そこがいつも考える木材と森林であるんだな、と実感するシリーズとなりました。

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タグ：: 木の床の不思議; 五感; 味覚; 木まぐれコラム; 木材に関する素朴な疑問

muku_mokuzai at 13:30│コメント(0)

2024年07月09日

木の五感シリーズ、リニューアル！　味覚 ⑨

さて、少し樽とお酒に偏りすぎた（好きだから仕方ない…笑）ので、もう少し一般論に戻しましょう。

生活の中で使われるものの中では、お椀などの容器は熱いものを注いでも触れることのできる断熱性と、口当たりの良さ、そして尚かつ保温性が高いという木材の優れた長所を活かしています。

その他、気にかけていないでしょうけれど、かまぼこ板は今でも木材ですよね。
白っぽく手清潔感がありつつも、商品に気の香りがほとんど移らない臭気の少ない材を利用していることも、木材利用の大きなポイント。
適材適所です。

最近はほとんど使われなくなったであろうまな板も、本来は木材であったもの。
黒く変色すると不健康や汚いというイメージの定着で、すっかり要望がなくなりましたが稀にご要望をいただきます。

台所つながり？！では、担当の緊急用に常備している口に入れる木材と言えばこれ！

体調の黄色信号のようにも感じる（汗）この色が目印の胃腸薬。

お世話になっております！
木目美しく色合いも特有、そして製材後少しの間香る甘い香り。
担当の好きな要素をたくさん持っている樹種、キハダ。

どれくらい好きかは、原木から無垢フローリングをつくるほど、といえばわかるでしょう。
あんなに甘い香りのする材なのに、ものすごく苦い薬ができるんだから不思議。
もちろん、材と薬では同じ木でも部位が全く異なり木材とは関係ないですが、それも樹種の個性のいろいろなのです。

もう一つ好きな樹種であるホオも同じく、漢方薬になる樹種。
こちらも、原木から無垢フローリングや羽目板を作ってしまった樹種なので、どれほどの思い入れ化はお分かりのはず・・・
奇しくも同じ薬用つながりの二種。
後者は、その名の通りに食品を包む、役割もあり直接ではないものの味覚に関係のある木材と言えるでしょう。

昔の家には常備（？）されていた寿司桶（おひつなど）は、ヒノキだと思っている方も多いと思いますが、実はサワラである場合がほとんど。
ヒノキに似た、というかほとんど見分けのつきにくい樹種サワラ。

さわらかな香り、が由来とされているほどに香りを有していますが、それとは別に御飯が引っ付きにくいという性質を有し、ヒノキ同様殺菌抗菌作用とともに耐酸性であることも含め、寿司桶などには特に最適であるとされます。

高樹齢のものは、本当に美しいですから納得の理由。

お寿司そのものでは登場しないかもしれませんが、お刺身などにはついてくる葉っぱ！
あれも味覚に関係しますよね？
味は感じないし、食べるわけではないと思われるでしょう。

しかし、あれは単なる飾りではなく葉っぱの持つ精油成分により、食材の劣化や菌の繁殖を防ぐ役割を担っています。
それは木材ではなく、葉っぱでなければいけないのです。

なぜなら、葉っぱは木材部分よりもはるかに精油含有量が多く、先ほどのかまぼこ板に利用されるような材は無臭のものでも、葉っぱには多くの精油を含有しているものが存在します。
ヒノキなども、意外ですが葉っぱのほうがはるかに精油分は多いのです。

飾りもちゃんと仕事をしているんですよ。
凄いですよね、樹木。

葉っぱでいうと、桜餅も葉っぱですよね。
これは、クマリンという成分の利用方法ですが、塩漬けされた葉っぱを餅と一緒にほうばると、何とも言えないおいしさを感じます。

その他、イチイ科の樹皮からは抗癌成分のタキソールを抽出でき、イチョウはアルツハイマー抑制に効果があることがわかっていますよね。

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muku_mokuzai at 13:30│コメント(0)

2024年07月06日

木の五感シリーズ、リニューアル！　味覚 ⑧

オークに含まれる成分、クエルクスラクトン。

それが果たす役割は、お酒好きに多くの恩恵をもたらしています。
その成分は、木材中においてはタンニンと結合して存在していて、アルコールとの反応で分解され溶出するのです。

しかし、その成分は落葉性のオーク（ナラ）にしか存在しないそうです！
落葉性のオーク？！
どういうことだ？！と思ってください。

またまた脱線しますが、オークとされているものは古い文献では「樫（カシ）」とされています。
ワイン雑誌の多くも、一昔前まではみんな「カシ樽で熟成させた・・・」と記載していました。

しかし、カシは同じ仲間の樹木ですが常緑樹で、ナラは落葉樹。
そして、熟成に重要なクエルクスラクトンは落葉性のオークにしか存在しない、のですから自ずとナラ材が必要になるのです。

しまったなぁ、味ばかり重視して実験しませんでしたが、まだ実験結果を公開していない自家試験で、カシも試しておけばよかった・・・
それと、クエルクスラクトンは焼く（チャー！）ほどに溶出しやすくなるので、二回目の実験では焼いたものもよういしていたので、そちらの結果はわかりましたよ！

脱線しますが、ピート（泥灰）香が特徴的で有名なウィスキーたちの場合、それが取れる土壌によって香りが異なるとされていることは納得できますし、ウォッカはシラカバ系の樹種の灰を使い、テネシーは貯蔵前にサトウキビの灰で処理するそうです（某、マスター談。）

奥が深すぎる・・・いや、備長炭そのほかの炭自体も木材ですからね。
十分味に影響することは理解できることかもしれません。

因みに、ワインやウィスキーではわざわざ中古樽を使用して熟成させることがあります。
新樽ほどの強い抽出がないことや、新樽時に入れられていた銘柄の風味を取り込むことができる言葉度が特徴ですが、上記の実験時にはそれも気になったので、一度使った材を再度他のお酒に投入する実験も行いました。

結果はというと、たしかに抽出は非常に緩やか。
色味の変化や香りの変化が、当初の一回目よりも大幅に遅く少ない。

翻って、どれほど材の成分が抽出されているのかを実感しました。

そしてもう一つ、試しておきたかったのがカリン！
果樹のカリンではなく、木材のカリン。わかります？
一般の方はもちろん、ソムリエさんもふれることのないであろう木材のカリン。

ワインなどのテイスティングコメントでは、「カリンのような」という表現があります。
学び始めは「そうそう、カリン！」と思っていたものの、少しして自分の思っているカリンとは異なる果樹の方だ、と気が付いたのですが今でも、熟成赤ワインなどは木材のカリンの香りを感じてしまい、ただでさえ好きな木材のカリンが、使うたび（といってもそうそう場面はないけれど）にワインを思い出してしまうのです！

香りでは、玉椿（ハマセンダン）の甘い香りも似たような雰囲気に感じるのだから、もう連想がお酒になっちゃっているのかも、と思ってしまう担当の嗅覚です・・・

オークネタのついでですが、レッドオークは液体が漏れやすいことから樽には使用されることがないとされますが、担当の感覚ではそれとともに、材の発する特有のちょっと酸いぃ匂い（脂肪酸由来と思われる）を嫌ってのことではないかとも推察していますが、いかに・・・？！

もちろん、重要なのは様々な要因が複雑に絡み合っていることなので、一つに限られはしませんがやはり木材の重要性は大きくて、材中のタンニンの影響や、材を焦がすことによってリグニンが分解されてバニリンが溶出することなども非常に重要です。

酢酸という成分は樽材に由来し、熟成中にエタノールと反応して酢酸エチルを生成するため、新樽の使用では溶出量が多くなりやすく風味が付きやすいそうです。
レッドオークの脂肪酸臭との因果関係は担当ではわかりませんが、レッドオーク以外でも発生するのでしょうけれど、レッドオークの樽を試した人は良い結果が出なかったのではないだろうか、と邪推しています。

昔はサボテンからできている、と聞いていたテキーラですが正確にはリュウゼツランだということ、最近知りました（汗）。
ジンが、セイヨウネズを使っていることはクラフトジンブームで有名になりましたよね？！

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muku_mokuzai at 13:30│コメント(0)

2024年07月01日

木の五感シリーズ、リニューアル！　味覚 ⑦

お酒の話とくれば、「さけて」通れない（酒だけに・・・）のが樽（笑）。
そして、ワイン好き（もちろん、日本酒も好き！）な材木屋として外せないのは、オーク（ナラ）樽。

オークと言っても、樽材については産地や品種細かく分けられています。
木材の書籍には、そんなに詳細なことは掲載されていませんが、アルコール類書籍にはマニアックな情報として、その違いが載せられています

まるで、楽器の世界で同じ樹種が産地違いで語られるように・・・

例えば、有名なアリエオークはタンニンが少なく長期熟成用向け、リムザンオークは木目が粗目なためウィスキーやブランデーなど向け、などです。
木目が粗いと空気の出入りが多い、とされているのですが、それは少し疑問が残ります。

材木屋としては、木目が粗いもののほうがどうかんの分布面積が少ないために、空気の出入りは少ないように思うのですが、理解が違うのだろうか・・・正確に聞いてみたいものです。

その辺の推測はまた別の話として、洋酒やワインの樽にオークが使われるのは、琥珀酸という成分が溶け出しアルコールと反応することでエステルを形成し、豊かで複雑な味と香りが醸し出され、熟成による魅力を増すからですね。
ウィスキーの科学なる書籍によると、480L容量の樽からできる、加水調整した560Lのウィスキーの中には、1.5～2キロの樽由来成分が溶け出しているそうです。

その他、木材中の酢酸も重要だといわれますし、細胞膜を形成する植物ステロールも若干感じるオイリーな香りに関与するそうですね。

ウィスキーはワインと同じく、その土地ごとや作りてごとの個性を表しますから、樽だけでは語られないものの、詳細にみればその中に溶け込む木材精油成分は100種類以上にも及ぶそうですから、単純にこの成分が影響して・・・とは言えないのかもしれません。

とはいえ、特に熟成香を醸し出すのは「クエルクスラクトン」だといわれます。

聞きなれない名称だと思います。
担当ももちろんそうです。

しかし、その響きに非常に親しみと親近感を感じるのは、やはりその名称にオークという樹種を感じるからです。
オークの学名に関する名称「 Quercus (クエルクス)」。

ホワイトオークならば、Quercus alba ですし、ミズナラであれば Quercus crispula です。
まさしく、オークの成分！という名称にウキウキしてしまいます。

ワインも愛するものとしては、その成分がウィスキーの熟成工程で見つかったらしいということで、若干残念（？！）ではあるものの、やはりオークの力はすごいものだと実感する名称。

クエルクス、というのはラテン語で美しい木を意味するといわれます。

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