本物の無垢木材　～茨木市戸田材木店・セルバの木の虫ブログ～:2021年04月

2021年04月28日

じゃあ、これは分かるか？！　霧雲杉　①

私が異様に木材に興味を持っていることは、家族であればもちろん知っているので、相当な頻度で木のモノのことや木でできている何かについて、私に質問をしてきます。

最近最もホットだった質問が、今回のお題。
息子が漫画コミックスを開いてニヤニヤしているなぁ、と思っていたら「なぁなぁ。じゃぁさ、これは分かる？！ねずこの入ってる箱。何でできてる？！」という質問を投げかけてきた。
そんなこと、最初に箱を背負いだした時から疑問におもってること。
そして、ストーリーの早々にきちんと樹種名も解説されています。（その塗装も・・・）

流行に乗り遅れるのが毎度のことである我が家において、いまさら鬼滅ネタで引っ張るつもりではなく、本当はもっと早くに取り上げたかった樹種であるため、この際書いてみようと思ったのが作中に出てくる「霧雲杉」。

ファンの方はもちろん、キャラクターの詳細まで研究されているのでネット記事でも掲載が見られますが、この霧雲杉なる素材を鬼滅とともに木材にはまっている材木屋さんが考察するとどうなるのか？！、ということではじめますよ！

我が子に聞かれた質問の趣旨は「箱の素材となった樹種名」だったので、すぐに答える事が出来ましたが本当の問題はこの「霧雲杉」なる樹種はどんな木であるのか、ということですよね。
ちょっと木にはこだわりのある私ですが、聞いたことがない。
いえ、実は「雲杉」という名称はあるのです。

ファンの方の中には「霧雲」＋「杉」に分けて考察される方が多くおられますが、材木屋的に言いますと「霧」＋「雲杉」なのです。
原作者さんの意図は知りえませんが、木材としてのアプローチとしてはこうなります。

この杉という名称は非常にたくさんの樹種で使われているのは、一般には知られていません。
というより、輸入木材の多くで「スギ、ヒノキ、マツ」などの日本にも産する樹種の名称を使うことは、業界では当たり前なので、あえて語られていないという方がいいかもしれません。

日本の住宅に欠かせない米松（ベイマツ）も、日本の松とは全く異なるものですし杉に関しては「米杉（ベイスギ）」、「ヒマラヤスギ」、「チリ杉」、「新屋久杉」などなど・・・
どれも杉とは関係のない樹種ですが、杉の名称が使われています。
殆どが、杉の持つイメージを連想させるためにつけられたり、知らない名称よりも流通上で抵抗がない（本来の樹種名よりも）というような理由があると思いますが、雲杉もその一つです。

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2021年04月25日

カスクオーク幅広無垢一枚物フローリングと、本物の木のおうち

オーク無垢フローリング。
それは、もっとも簡単でもっとも難しい選択肢。

というのは、前者は建築設計者や工務店さん側、そして後者は私の様な材木屋の視点でのお話。
本来は、材木屋さんも「オークかバーチ」をおすすめしていれば、とりあえず無垢フローリングとしては提案をできた形になる昨今ですが、実はオークのフローリングというのは非常にデリケートなんですよ～。

今回は、そのオークのフローリングのカスクオーク幅広一枚物フローリングを施工いただいたお宅にお邪魔してきましたよ！

一枚物はやっぱり違う！
いつも自社の商品として眺めているし、その違いなど分かりきっているはずなのに、やはりこうやって施工されたおうちを見ると我が子に惚れ直す気分です（笑）。

今回のおうちは、広々としたリビングに燦燦と日が差し込む角地立地の恵まれた環境なので、目視しているとものすごくオークの落ち着いた風合いがわかるのですが、写真だとどうしても木目がとんでしまうのがふがいないところ・・・

ですので、場所によっての色目の違いなどは撮影者（私）のせいだと思ってくださいね・・・
そして、使っていただいたのはキャラクター感満載のネイキッドグレード！
ある意味、オークというとみなさんこちらのイメージが強くて、非常に売れ筋商品といいますか、本当は節や変色のないプルミエグレードをおすすめしたいところながら、この節の表情の人気が高いのは、桧や杉などの針葉樹材にも言える傾向ですね。

もちろん、ネイキッドグレードではその樹種にある性質や表情が全て含まれていると言っても過言ではありませんから、木の質感を楽しみたいお施主様に人気があるのは当然なのですけども・・・

一般的に使っていただく機会が多いのは、つなぎ目のあるUNIタイプ品。
しかし、一枚物であると木目が伸びるために「一枚の木をそのまま床に！」という質感になるので、「無垢材」としての仕上がりは断然異なります。
そこに節や補修パテの表情が加わるので、気にせずとも天然素材広葉樹であることが、無意識のうちに感じられます。

そして一枚物であることとともに驚くべきは、幅広材であること。
そうです、150mm幅材なのです！！
弊社がお勧めする幅広材130mmのさらに上をいく150mm材。
幅が広くなると反りが大きく出たり、伸縮が大きくなるのでフローリングとしては非常に難しいサイズになってくるのですが、そこは製材と乾燥技術と選別のなせる業！！

一枚物であることと幅広150mmであることの双方が重なって、無垢の本物の質感はこの上なし！

と言いたいところですが、ここで本当のことをお伝えしておきます。
実は、150mm幅品ではなく正確には148mm幅品なのです。

え？！何が違うの？！
そう思ってください。
2mm違うのですけども、弊社の規格寸法は150mm。
でも、実際の原板の中には乾燥途中や製材製作中に、ほんの数ミリ！！の違いでどうしても150mmに仕上がらない物が出てきます。
そんなもったいないものをまとめて、148mm幅に仕上げている、というわけです。
なので、別に品質が悪いわけではないのですけども、たまにこういった寸法の商品もできてきますので、まとまれば規格寸法よりも非常に！お買い得なお値段でお届けしているのですが、今回はそのうちの一つ、というわけです。

お施主様、お得感満載！
どれくらいかは言えません（笑）けど、大げさながら本来ならばUNI品の選択幅にこの一枚物が入るほどの価格なので、もってけ泥棒！的な（笑）。

そんな内情なのですが、それをお施主様に提案し空間としてまとめて頂ける業は、木の家の工務店さんの妙。
写真撮影でうかがって見た時、「こんなにバラつきがなかったっけ？！」と思ってしまったんですが、後で聞くと大工さんがちゃんと表情ごとに仕分けして貼り分けておられるとのこと。

一応、弊社の施工説明書にも記載はしているのですが、バランスを見て施工していただくことを当然にされているクオリティーの高さは、建物の仕上がりにもにじみ出ていました。
お施主様、うらやましいです。

さて、冒頭でオークフローリングがデリケート、と言いましたがその理由はこの表情豊かなネイキッドグレードほど顕著なのです。
それは、オークの特性上割れが出やすいことや反りと曲がりが大きくでることで、表情は豊かなもののきちんとした製品に仕上げることが困難だからです。

だからこそ、UNI品であれば「ちょん切ったものをつなげていけば出来る」ようなものですが、特にこのオークのネイキッドグレードは、価格は控えめにせずをえないものの（涙）非常に作りにくいグレードなのですよ！
乾燥も非常にデリケートですから、この表情をだすのにはそれはそれは・・・・・

見慣れたオークやバーチフローリングの節ありグレードが、実は非常に製作側にとっては難しいグレードであることを理解している販売店さんがどれほどあるか・・・
弊社の様に、自社製造と仕入商品のどちらもある場合はいやでもその違いを実感しますから、声を大にして言いたいのです。

カスクオークネイキッドグレード一枚物はお買い得ですよ～！！！！と、ね。

UNIタイプにはない木目の美しさ。
一枚物のみが持つクオリティーを、存分に感じて頂ける今回のフローリング。
きっと、お施主様にとっても森の王オークの豊富な実りの恩恵があることと思います。

採用、ありがとうございました。

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今回紹介したカスクオークの、その他の施工例記事は以下からご覧くださいませ！

・カスクオーク幅広無垢V溝フローリングオイル塗装CO-32VOPの施工写真はこちらから
・カスクオーク無垢UNIタイプオイル塗装CO-21OSの施工写真はこちらから
・カスクオーク無垢UNIタイプ床暖房用プルミエグレードCO-24UPとCO-21UPの貼り伸ばし施工写真はこちらから
・カスクオーク幅広無垢UNIフローリング、ネイキッドグレードCO-23N ホワイトペイントオイルのおうちはこちらから
・カスクオーク幅広無垢UNIフローリング、ネイキッドグレード建築士さんのリノベハウスの施工写真はこちらから

・カスクオーク150mm一枚物とネシアンチーク150mmプルミエグレードと、板屋楓の一枚物の無垢材のおうち！！はこちらから

・カスクオーク幅広無垢つなぎ目V溝フローリングセレクショングレード、モノづくりに共感の納品その①　～カスクオークのプライベートルーム～はこちらから

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2021年04月21日

日本の広葉樹フローリング絹朴（きぬほお）無垢一枚物フローリング事務所編

最初にお伝えしたのはいつだったか・・・
少なくとも、5年前には始めていたプロジェクトである「日本の広葉樹フローリング」のニューラインナップの開発。

メジャーな樹種である、清涼楢（せいりょうなら）・清涼樺（せいりょうかば）・清涼たもという樹種以外に栗（これは近々フローリング以外も取り上げます！！）や兵樟（つわものくすのき）など、少量のみ製作を始めている樹種は、拙ブログにて紹介してきました。
特に兵樟幅広無垢一枚物フローリングに関しては、その特殊性からコアな方からの注文を少しずつながら継続して頂いていて、有難い限り。

そんな日本の広葉樹フローリングラインナップですが、新たに特殊な樹種である「絹朴（きぬほお）無垢一枚物フローリング」を追加します！
と、ここに宣言しておきながらまだ本格的には稼働できていません。
加工作業が追い付いていないからですが、そんな中で試作から出来上がった一号品を早速使っていただいたので、本編の前に施工写真を掲載を致します！

朴。
非常に特殊な樹種です。
詳細は、後日の本編にてお伝えしますが、この木材とは考えにくいような「緑」を連想させる色合いから、建築はもちろん家具などでも目にする機会は非常に少ない樹種。

そんな朴ですが実は、弊社は非常になじみが深い樹種です。
古くから、彫刻専門のお客様が多くあったため在庫を多く持っていた、珍しい広葉樹でした。
その様な背景なので、私にとってはケヤキやナラよりも身近な存在（笑）。

今回使っていただいたのは、実は事務所のおしゃれな打合せスペース。
普段ならば、お施主様にこの色合いをどのようにコーディネートしてすすめようか、と考える設計者の方もおられますが心配無用。
今回は、その建築設計者さんの事務所なのでトータルコーディネートばっちり。
というよりも、そこまで心配するほどの強烈な個性ではない、と考えるのは私だけでしょうか？！

私が贔屓目に見ていることもあるのかもしれませんが、この特殊な個性は活かさねばもったいない広葉樹の一つなのです。
私がわざわざ特殊な色合いを持つこの絹朴フローリングを製作するかというとその足触り。

さすがに足触りはこの記事では伝えることはできませんが、非常にいい！！
良いのです！
一般的には、杉のフローリングが非常に足に柔らかくて良いと言われますが、弊社ではそれと並び広葉樹ではクルミが人気。
杉の「ザ・針葉樹！」的な木目ではなく、広葉樹の木目が好みだという方もいらっしゃるためです。
クルミのあの、一瞬硬そうでふんわり優しい感触も一種特有の物です。

しかし、それとは少し異なる足触りの良さが、この絹朴にはあるのです。

特殊用途でしか注目されない朴。
そして緑色の印象をアピールすると、辺材の部分は意外と白いというギャップをお伝えせねばならない。
普通では扱いにくいかもしれません。
それでも、ずっと足が触れる部分であるフローリングには、硬さや木目、色合いだけではなく足触りを重視したい思いで企画したものです。

朴のことをご存知の方も、無垢フローリングに朴を使うという概念はあまりないと思います。
一昔前も、杉をフローリングにするなんて！！というお声もいただきましたが、弊社は商社ではありません。
売れるものを作るのではなく、自身が良いと思うものや好きなもの、優れていると信じるものを作り届けるのが弊社です。

そのお届けしたい商品の中の一つがこの、絹朴無垢フローリングだということです。

朴の樹木についての詳細は、いずれの本編をご期待頂くとしてとりあえず、日本の広葉樹無垢フローリングシリーズに新ラインナップが増えたことをお伝えしておきます。

夜の灯りに映る「緑」も最高に綺麗です！！

・日本の広葉樹絹朴（きぬほお・ホオ）幅広無垢一枚物フローリングはこちらから
・日本の広葉樹絹朴を紹介した木まぐれコラム、第一回はこちらから

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2021年04月16日

会員制の巨木記事(^^♪

以前から、私がブログを更新してきたことをご存知の方はたまに、「まだ、あのブログやってんの？！」とおっしゃいます。
あの、というのは「長文で木の話ばっかり」という意味ですが（汗）、今でも今日も、更新しています。
まぁ、当初よりは記事の文章も短くしてできるだけむつかしいことを省くようにしていますが、続けています。

ちなみに、他にも続けていることがあります。
昨年の同じような時期の記事で、連載三十回を超えた、と書いています木材組合誌に出稿しています巨樹の記事が、現在四十四回を数えるまでになりました。
そろそろね・・・と肩たたきされるまで、とりあえず第百回くらいまでは目指したいとひそかにもくろんでいるのですが、こればっかりはブログと違い自分の都合ではいきませんからね・・・

そんな連載記事ですが組合誌での掲載だけに、公開されているわけではないので、組合員さん以外の目に触れることはほとんどありません。
稀に、著者自身（私・・・）が印刷してお渡ししたりしているくらいなので、ある意味「会員制の巨木記事」なのでは！？

それは冗談ですが、たまには皆さんにも見ていただく機会を作ろう！ということで、今回はいつもの巨樹巨木記事とは異なる、会員誌向けの巨樹の記事である「材木屋の巨樹木甦（きょじゅきこう）」をお届けします。

掲載するのは、最新記事である「胎金寺山の天狗杉」。
以前に、拙ブログでも紹介していますので稚拙な記事の違いや語彙に乏しい描写の違いをご覧ください（汗）。

胎金寺山の天狗杉は、2回シリーズですのでお得な二月にわたる記事を掲載していますよ～！

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2021年04月13日

ウッドショックはプラスか、マイナスか？！

今回の記事は、10年後への備忘録を含めたボヤキの記事になることと思います。
現在、木材業界は「ウッドショック」と呼ばれる大変な資材不足に直面しています。
新型コロナウィルスの影響他の要因が重なり、建築木材業界で主流となっている「ホワイトウッド、米松」の入荷が滞っているのです。

入荷しないとなると材木屋は売るものが無く困ります。
そこで、普段は見向きもしない杉や桧に需要が集中。現在は杉や桧も入手しづらい上に価格暴騰。
株や投機の様に、実態や相場とは関係なくどんどんと上昇し品物は入荷しない。
少し前にお伝えしたように、日本の木材は使い時！という国の宣伝を信じるならば、入荷しないということはないはずなんですが、実際は山に木が沢山あっても木材として潤沢に流通する事とは事情が異なるのです。

今回は、その理由を追う回ではありません。
今回のお話は、杉をホワイトウッドの代用材として（仕方なく・・・）使用しなければならない、という状況になって困っているというお話がある、ということに関するボヤキです。
こんな状況になって、私が聞かれることは決まっています。

「杉って、どうなんですかね・・・？！大丈夫なんですか？」

意味わからない質問ですよね。
でも、実際に聞かれるのです。工務店さんから。
行間を読むとするならば、「ホワイトウッドに比して欠点はないだろうか。クレームになるようなことはないか。」といったようなこと。

黒っぽくて見た目が悪い、という理由で杉材の納入が禁止の工務店さんが、取引の材木屋さんから杉材での代用納品を打診され「仕方なく」使うかどうかを決めかねているというパターン。

ホワイトウッドより弱いとか、割れや伸縮が心配とか、柔らかくて釘がきかないとか。
いや、実際に杉を使ってクレームになった所がある、とか・・・
こんな時に、なんとか納品義務を果たそうとしているにもかかわらず（弊社ではないんだけど）、信用してもらえない材木屋さんと杉。
材料が逼迫した時は毎回同じような状態になる。いつまでたっても変わりません。

今回はいつ、この状況が改善するのか見えていないだけに不安になり、それがさらにウッドショックを助長しているのですが、しょせん杉の需要は代用材。
ホワイトウッドが入荷すれば、今までと同じ状況に戻るでしょう。（一部の層を除き）
一時の狂乱需要は、杉にも山にもなにも良いことがありません。

施主さんや売主さんを納得させられるような杉の長所ないですかね？！
挙句、マイナスイメージをカバーするプラスイメージで代替しようとするのは、営業さんの手法としては良いのかもしれませんが、今の世の中ほど杉材が如何に優れているかとPRしているときはありませんから、木の事を学んでいる施主様の方がよほどよく知っているでしょう。
そこににわかな知識で「杉の長所」をアピールしてもなぁ・・・と思うのですが。
それに、杉の優れているところは拙記事にも多く記載しています。

本当に知りたいと思うのであれば、先に拙記事を一読してから聞いてほしいと思ったりもします。
仕方なく使うような人には、長所は分からないと思います。
だって、短所に見えるところが長所であるからです。
伸縮しやすいということは吸放湿性能が大きいということ、柔らかくて傷がつきやすいということは肌に温かいということ、色が濃いということは芯材成分が多いか抽出成分などが豊富であるということ。

同じ用途で同じ寸法であっても、樹種が違えば性質が違うのは当然。
集成材でも合板を使っても、木造住宅を手掛けるからには杉や桧のことくらいは知っておいてほしい。
それは、ホワイトウッドや米松を使おうとも、その違いが判らなければ判断基準が無いからです。

私のところに数件話があるくらいですから、現在の多くの住宅会社で、このようなお話が出ていることと思います。
ウッドショックによって変わっていける工務店さんと材木屋さんでありたい。そう思いながらも、出来るだけは早く落ち着いてほしいとも思う今日の業務です。

明日からは、構造材も米松じゃなくて日本の地松だぞ！！

地松乾燥構造材　

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2021年04月10日

年輪が詰まっている材は強い？！　 ④

どんな業界でも、経験というのは非常に大切。
それは、単なる計算とは異なって人間の感覚やその時の状況まで加味したものになるはずなので、蓄えたい情報であることは間違いありません。

前回の結果を当然だ、と思われる方もおられれば反対に、おかしいと思われる方もいらっしゃるでしょう。
それはご自身の扱う材料が広葉樹がメインか針葉樹かの違いにもよりますし、産地の違いや含水率、そして現実には木目の違いも関係してくるのです。

以前に広葉樹の糠目材についてお伝えしているので、今回は針葉樹に限定すると「木目が細かい」というだけではなく、その木目の内容や抽出成分などにも複雑に左右されるということが前提になると思います。

写真は米松材。
年輪模様がはっきりとしていて、年輪間の幅も広い。
その上、人工乾燥材なので軽いはず！ですが比較的ずっしり。
前回のヒノキと同じような感じです。

それに対して、経験上非常に重たそうな木目の詰まった材ではどうでしょう。

私が握っているのは、同じく米松ですが非常に年輪の細かい材。
沢山積み上げていたため、取り出しての撮影はしていませんが年輪が読みづらいほどに細かい。
ということは重たいはず？！
さて、どうでしょう。

実は、ここで見てもらいたいのは年輪の幅だけではなく、晩材と言われる年輪のうちの色の濃い部分（年輪として数える部分）についてです。

成長が遅ければ、色の濃い晩材部分も細くうっすらとしたものになります。
それに比べ成長が早いものは概ね晩材部分がくっきりとしていて太い傾向にあります。
そして、年輪間の幅も広いのが分かります。

木材を加工された経験があれば、このような年輪のはっきりとした材は少し加工しづらい印象があるかも知れません。
それに対して、先ほどの年輪が読み取りづらいほど細かな材は、比較的柔らかで加工が容易であることが経験上分かるのではないかと思います。
広葉樹を扱う家具や木工家さんと同じように、一般的な建築でも以前はこのような木目などに気を配って、部材を用意していたものでした。
つまりは、すっきりと美しく見せたいところや精緻な加工がしたいところは木目の細かく加工のしやすいものを。
対して、下地としての性質や構造強度を期待したい部分には、見た目ではなく成長の仕方を現す木目を見たりして、配置を決めていたものでした。

本来は無意識のうちに適材適所に木材を使ってきた業界でしたが、きちんとした「乾燥材が普及していなかったこと」と「建築用針葉樹の扱いが多かったこと」も手伝って、木材全般に対しての「木目が細かいから強い」という誤解を生んできたように思います。

それを正すには、今回の実験の様に自身で正しく体験してもらうのが一番！
もちろん、木を少しだけ専門的な目で見ることで、体験した結果の理由を納得してもらえることが前提です。
そしてそこに、きちんとした木材や樹木に関する知識がつけば、根拠のない偏った情報に惑わされることも少なくなると思います。

簡単そうで知られていないことの多い樹木と木材。
また次回以降、少しずつ触れていきたいと思っています。

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タグ：: 木まぐれコラム; 木材に関する素朴な疑問

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2021年04月07日

年輪が詰まっている材は強い？！　 ③

さぁ、今回からやっと実証実験です！！
といっても、たいそうなものではありません。
ただ、重さを量るだけ。

本当は、私がいつも行っている授業の中では聞いていただいている人たちも参加してもらって、その重さや質感を体感しながら、ご自身で行ってもらうのですが記事ではそうはいかないので、写真でご紹介します。

では早速、用意していた２枚のヒノキのうちで、年輪幅の広い方の重さを計測したいと思います。

私の出張授業他で大活躍してくれている相棒、「はかりんちゃん」に載せます！
そんなに大きな材ではないので重さは数百グラム。

結果はこの通り。

ぴったりオン・ザ・ラインの240グラム！
なんか、2で割れる倍数で気持ちいいのは気のせいか・・・（汗）。
基、基準となる数字が出ました。

2枚の比較のうちで、年輪幅が広い方は240グラム。
では、もう一方の年輪幅の狭い方はどうだと思います？！
理論的にいえば、年輪幅が詰まっているので強い＝重いはず！！

昔ながらの材木屋さんであれば、それが当たり前の結果。
果たして？！

接写すると年輪が今一つ分からないくらいに細かな年輪のヒノキです。
実は、こうやって持っている時点で、結果は分かるくらいにはっきりとその重さに差を感じます。
それは、触れている指先の感覚に「硬さ」という基準でも伝わっているように感じてしまうほどの差です。

さて、その差は如何に！？

む？！
むむ？！

先ほどの針が刺した部分を覚えていらっしゃいますか？！
グラム数は割り切れる（笑）240グラムでしたよね？！
指針が水平になるような部分まで傾いていたと思います。
しかしどうでしょうか？！
明らかに、10時10分じゃないですか！！（教習所では、この位置でハンドルを握ると良い、と教わったなぁ・・・）
10時じゃないけど、10分の位置ですよね？！9分か？！（笑）

正確な数字はなんと・・・

185グラム！！！！

なんと、55グラムも軽い！
年輪が詰まっているのに！
なんということでしょう！

ということは・・・
ということはですよ。
年輪が詰まっているほど強い＝重い、という連想は一つ崩れる。

そして、年輪が詰まっている材は重たいという材木屋さんの古くからの経験則も異なることが目に見えて分かります。
もちろん、自然素材でありケースバイケースであることは前置きせねばなりません。
が、一般論として語り継がれる定説とは異なる結果が一つ出ていることは非常に重要です。

何が重要かというと、根拠のないもっともらしいことのみを信じることの危うさ、です。
もし今回の実験が、前回例示した米松ならばもしかすると結果は異なっていたかもしれません。
（これに関しては、出前授業でしかしていませんので、知りたい方は出前授業にて~(^^♪）

経験則だけで物事を判断する事。
もっともらしいお話のみを基準にしてしまうこと。
今回の実験も先に書いたように、手に持った瞬間からその差を実感できるのです。
そして実は、実験前に大きさをそろえる前の時点で、結果は想像できていました。
年輪が詰まっていても軽い場合がある、と。

実は、それも経験則であり材木屋さんや大工さんで語られるお話の中にも出てくる、理論ではない適材適所の使い分けが関係しているのです。
そして、それは理論的にある程度説明できることとしっかりと共通していることなのです。

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タグ：: 木まぐれコラム; 木材に関する素朴な疑問

muku_mokuzai at 13:30│コメント(0)

2021年04月04日

年輪が詰まっている材は強い？！　 ②

2枚のヒノキの板材。

樹種が同じで大きさも同じ。
異なるのは年輪が広いか狭いかということ。

木口をみて分かるように、実は板目と柾目という違いもある（厳密にいうと、節のある無しということもある）のですが、今回はあくまでも年輪による単純比較と考えてください。

なぜ、わざわざこんなことが気になるのかというと、一般の方は気にも留めないかもしれませんが、材木を扱うものとしては昔から年輪が詰まっている材の方が強い、というある意味「刷り込み」的なイメージがあるからです。
それは、少し前に書いた節のある木材の方が強い、というのと同じで材木屋さんや製材などを専門とする木材関係者の方に多い誤解だと思うから。
私も、今よりも無知で若い時は妙に納得していた部分ですから、みんな通る道？！というんでしょうかね。

私の若い時の材木屋さんはみんな、肩で木材を担ぐのが当たり前でした。
今では殆ど見かけませんが、大きな木材も肩で担いで動かせることが一人前の証明？！みたいなもんでした。
いや、私の中でですが、そんな時代には人工乾燥材は殆ど流通していませんでしたし、現在よりもはっきりとした木材の用途別の利用が行われていた時代でした。

それと今回の話題に何が関係しているかというと、肩で木材を担ぐと実感するのが「重さ」です。
辺材の多い木材、芯材ばかりの木材、今にも水が滴りそうな生の木材などなど。
そんな中、見た目ですぐにその重さを感じるものが何かというと、年輪の詰まった木材だったのです。
現在でも多く流通している米松（べいまつ）材を例にすると実感する方もおられるかもしれません。

米松とピーラー

年輪幅が詰まった米松はずっしりと重く、反対に年輪幅が広い木材は総じて軽く感じる。
木材の一般的な「強さ」というのは、ある程度重さ（比重）に比例するところがありますが、このことから重い＝強いというイメージが形成され、周囲の先輩も同じように口にするものだから正しい知識としてインプットされる。
芯を含む木材の方が強い、というのも同じような考え方です。

実体験に基づいたものだから正しく感じることなのですが、そこが本当は危ういところ。
自分が感じたことを信じたい気持ちがバイアスとなって、実際は違う結果を受け入れにくくなることがある。
重い＝強い、もそうです。
一概に言えないのは、含水率が関係していることはもちろんの事、それ以外の理由が多くあります。
今回のお話も、それ以外の理由の部分が関係していると思うところ。

実体験による偏った知識を改めてリプロダクトするには、実験をしたり異なった材料で同じようなことを試してみる事が非常に大切です。
前置きが長くなりましたが、年輪の詰まっている材は重い＝強いということが本当はどうなんだろう、ということを見ていきたいと思います！

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muku_mokuzai at 13:30│コメント(0)

2021年04月01日

年輪が詰まっている材は強い？！　①

前から書きたかったネタに着手（書き始め）する時、少し慎重になります。
凄く気持ちだけが前のめりになって、誤った見方や考え方になっているのではないかと思うからです。

少し前に、木のお話のウソ・ホントという記事を書きましたが、どうしても自分の信じたい情報を正しく評価するような状態になったり、自然の物だけに理論よりも理想論があたかも本来の性質であるかのような材ばかりを取り上げてしまいがち。
だから、とっても書きたいネタほど、ずっと温め続けていていつまでも出せずに期を逸するということも少なくありません（汗）。

その肝心のネタというのは、昔ながらの材木屋さんならば今でも信じていたい（私も含め）もの。
それは、「年輪の詰まっている材は強い！」というもの。

今まで何度もこの「強い」について触れていますが、今回の場合は簡単に言えば「材としての強度が高い」という意味です。
これは、昔ながらの材木屋さんであれば感覚的にはとっても納得できるお話だと思います。

ここで賢明な（？！）否、敬虔な拙ブログの読者の方であれば（笑）、上記の理論は半分は間違っていることを容易に推測できるはずです。
その理由は、以前のタモ材での比較記事とそれに関連する「水を通す木材」の記事を見てね！！

さて、では残りの半分はどうなのか？！
結論としては、半分正解で半分は不正解、といったところでしょうか。
なんともすっきりとしない答えではありますが、これが無垢材！
なにせ言い切れないんですから（笑）。

しかし、一例は示す事が出来ます。
それを今回は見ていきながら、「強さ」について考えてみたいと思います。

一般的に考えて、「強い」というものはそれに比例して「硬い、重い」というイメージが連想されると思います。
カーボンファイバーなどの一部の化学素材を除き、天然材料においてはおそらくそういったことが言えるかと思いますが、それは木材においても同じことです。
水に沈むような重硬な木材は概して強度的にも優れています。
もちろん、それにも理由があるわけですが、それでは同じ樹種で比較するとどうなのか？！
今回は非常に身近な木材であるヒノキを例に見てみることにします。

ヒノキは重硬といわれる木材ではありませんが、一般的に多く流通している樹種の中では中庸以上の性質と重量感ですし、比較する対象が得やすいことから、採用することにしました。

用意したのは、ヒノキの板2枚。
同じ大きさで樹種も同じ。

違うのは、木目が詰まっているかどうかということ。（節のあり無しもありますが・・・）
まずはこの両者の重さを量ってみることにします。
そしてその結果から様々な推測をしていきたいと思っていますので、いろんな想像を膨らませてご覧になって下さいね！

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muku_mokuzai at 13:30│コメント(2)

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