空を見上げて
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2017年02月

15cmのカットサンプルの注意 

本当のところ、実際に「こわい」のはお渡しするカットサンプルの取り扱いと、施工者やお施主様の、木材に対する理解度の程度がこわいのです。
こわい、というと語弊がありますがあえて言います。なんども「こわっ!」と思う経験をしているからです。

だって、弊社から出荷するカットッサンプルの大きさは、樹種にもよりますがだいたい15cm位です。
商品そのもの、グレードそのままをカットしているものですが、前回の通りその物によってはグレードの見分けが非常につきにくいものや、同じグレードでも全く表情のことなるものもあります。
こんな具合です。

カットサンプル2

これはネシアンチーク幅広フローリングのUNIタイプネイキッドグレードのカットサンプル。
右側は丁度白太の部分が混在し、UNIジョイントのつなぎ目の部分で木目の変り具合も良くわかり
ます。
しかし、左はどうですかっ?!
もし、長さの都合でUNIジョイントの部分が含まれていなければ、真っ白なフローリングのサンプルになってしまいます。
チークって、こんなに白いの?!!そうなってしまいます。

これがネイキッドグレードで気をつけないといけないところなのですが、ネイキッドグレードは基本的に、フローリングとして問題の無いキャラクターは全て含みますので、「チークというのは茶色いものだ!」と思われていると、白い部分のまじったフローリングが届いた瞬間に、「チークを頼んだのに、違う材料がきた!!!」となるわけです。

カットサンプル3

見てくださいよ。
UNIタイプではない一枚物フローリングの場合、同じくネシアンチークネイキッドグレードのカットサンプルですが、見事にさっき言ったとおりでしょ。
一部分だけを切り取ると、こういうサンプルも出来るんです。
しかし、嘘じゃないんです。
こんな部分も実際にあるんですから。実物その物なんですから。

カットサンプル4

白太、なんていうもんだから「白い部分」と思われていても、薄茶色の白太もあります。
今度は幅違いのUNIタイプですが、右側はオイル塗装でもしたかのように薄茶色になっています。
しかし、これも左の幅広サンプルと同じく、ネイキッドグレードの無塗装のカットサンプルです。

もちろんこれらは、お施主様に連絡を頂きカットサンプルをお送りする場合には、様々な注意事項とともに、各無垢フローリングや木材の記事において、特徴や表情を確認していただくようにお願いしていますし、特に上記の様な連絡を受けやすいネイキッドグレードに関しては、そのグレードを御依頼頂いたその時に、特徴をお伝えするようにしているので、お施主様から連絡を頂くことは少ないのですが、うまく大工さんと意思疎通出来ていない場合などには、「色が均一ではない、パテがある、変色してる」から不良品だ!と現場から電話がかかることがあります。

これを危惧しているわけです。

特に、至急!と言ってこられる場合には、兎に角商品として現場に納めなければ!!という意識が先行し、表情の違いや特徴は二の次になり、材が到着したその時に初めて「こんなイメージではなかった!」というパターンに陥ります。

また、カットサンプルでわかることもあります。
これも各無垢フローリングの記事でも書いていますが、幅広フローリングや幅広一枚物フローリングを少しでも多くの方にお届けできるように、また原木丸太を有効活用できるように、フローリング表面の美観に関わらない部分は、ある程度の事を許容しているものもあります。
一例をあげますとこんなところ。

カットサンプル6

これは「実(さね)」と呼ばれる、フローリング同士を嵌め合わせる為に施されている加工部分です。
数枚重ねているサンプルの下の方は綺麗なのが見えると思いますが、私が指している部分は少し黒っぽく、ざらつきがある。
白さ際立つ、ヨーロピアンメープル(欧州楓)無垢フローリングなので余計に目立つんですけど(汗)・・・
これは、フローリングの元となる原板の端っこの部分であったり、できる限り加工によって削って木くずになってしまう部分を減らすために、必要最小限の板幅で製材された部分で、実加工機にわずかに掛からなかった部分です。

こういったものも、実際のフローリングには含まれています。
これを施工しても、嵌め合わせ部分で隠れてしまうので、この様に表面上の美観には問題はありません。

カットサンプル7

ね、どれが先程のサンプルかわからないですよね。

もちろん、隠れる部分はどうでもいい、というわけではなくこの様な部分を許容しないのであれば、幅広材や一枚物のフローリングの出来上がり量は大幅に減少して、捨ててしまう木材部分が多くなり、非常にモッタイナイばかりか、生産量が減少するためにフローリングのお届けする価格の価格を値上げせざるをえません。

しかし、やはりこういった部分も指摘を受ける事があります。
御社のフローリングには加工不良が含まれている、とかB品を出荷しているんですね、などなど。
以前に本当に頂いたご意見です。
いつも、完成現場の報告写真にてウソみたいにほめられているアンケートを掲載していますが、それも本当で、その上で上記の様なお怒りを受けたことも本当です。
しかし、そういった部分が含まれる理由は先に書いた通り。
欠陥品でも、B品でもなく、少しでも無駄なく幅広で一枚物で良いものをお届けしようと思いながら含まれるのです。


現在、単板貼り合板フローリングや印刷シートのフローリングであっても、無垢の自然な表情を表現している商品には、白太や節、そしてパテまでも再現しているので表面仕上げにバラつきがある事をアピールしています。
今までは、均一であることが美しく、小さなサンプルで着色された「色」だけをみて、その色品番を伝える事で商品決定出来ていた建築業界の時代の流れの転換のためでしょう。
まだ、無垢材のバラつきに慣れない方が多くいらっしゃるから。
無垢の木材を扱う私が、日々発信していても先の様なお言葉を頂く位ですから当然ですけど。

そろそろ、無垢の木材という素材を知る時間を十分にとって頂く時代になっているとおもいます。

たったの15cmに凝縮される情報。
良くも悪くも色々見えてきます。

カットサンプル8

私なら、こんな木目嬉しくて仕方ないんだけど、やはり実の部分がひっかかるだとか、木目がおかしいとかおっしゃる場合も・・・
たかだかカットサンプル。表情の違いというよりも質感を見ていただく事が重要ではありますが、稀にそれ以上の情報が詰まっている場合もあります。
そんなお話もいたします。

至急!カットサンプル!!!ではなく、ゆっくりとお話する時間を「至急」つくってくださいませ・・・・・・



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その物には違いありませんが・・・15cmのカットサンプルでわかること

カットサンプルが至急欲しい!!

このパターンの時は、ちょっと身構えてしまいます。
「至急」とある様に、時間の無いことは一目瞭然。
連絡主がお施主様の場合は、まだお話する時間をとれる場合がありますが、工務店さんの場合は「そんな話よりも先ずはサンプル」という要望になるので、どちらにせよ身構えるのです。

ご存知の通り、無垢の木材や無垢フローリングには様々な特徴があったり、伸縮するなどの特性を知ってもらう必要もあり、さらには自然の産物ゆえに在庫が切れている場合があり、すぐにお届け出来ないこともしばしば。
それなのに急ぐ急ぐと・・・

稀に、用事があって近くに来たから、といった理由その他で連絡なしにカットサンプルのみを持ちかえることを希望されることもあります。
基本的には、先の様にお伝えしたいことなどがたくさんありますから、きちんとお話ができる状態、もしくはメールなどで連絡を頂いたうえでお渡ししていますが、お急ぎだからと断るわけではありません。
その代わり、折角おみえになってるんだから、カットサンプルだけではなくショールームにて、実物を見ていっていただこうとお誘いするのですが、それがやはり身構えてしまう。

ショールーム


ショールームへご案内すると、様々な樹種で色々な幅広バリエーションで、中には浮造りやウールアッシュの様に特別な表面加工が施されているものなどもあるので、「普通は」色とりどりでキャラクター豊かなそれらの木材達に感心されるハズなのですが、「至急カットサンプル」のお客様は「あ、これね。はいはい。わかりました。それじゃ、また。」と、10秒ほどで事足りてしまうのです!!

身構えてしまいます。
何考えてんねやろ?!、なんでウチにきはったんやろ?!・・・

真剣に採用を考えておられるなら、木材や無垢フローリングの実物を見れば少なくても質感や表情の差、それよりも自分が考えていたものとの違いなどの想いが言葉になるのですが、あきらかに「カットサンプルだけあればいい」という状況がヒシヒシと伝わってくるんです。
だから身構えてしまう。
そんな場合はいつも決まって、納期はどうか?間に合うか?いつできるか?といった、木材自身のことよりも納入することが大事であるかのようなやり取りが待っている場合が殆どなので、もう頭の中でそれらの質問への回答シミュレーションが自動的に始まってしまうのです。
あれを伝えて、こう答えて、これだけは言っておかないと・・・・的な感じです。

だって、カットサンプルからどれだけの情報が得られますか?!

カットサンプル1


販売している本人の私ですら、樹種こそわかれどグレード間の差が曖昧なカットサンプルなどは、並べて整理する時に気をつけないと間違えてしまうこともあります。
それほどに、無垢の表情をカットサンプルに込めるのは難しい事なのです。
基本的に、カットサンプルにもグレード表記していますが、必ずしもグレードの表情が出ているわけではないのが申し訳ないところです。
無垢フローリングの場合は、そのグレードの実物をまさしくカットしてはいますが、どうしても他のグレードの表情に似た部分も出てきます。
特に、人気のつなぎ目V溝フローリングなどは、1820長さで多くても2個所しかV溝が無いので、カットしても2枚しかサンプルにできないということになる。
えぇっとぉ、つなぎ目V溝フローリングで最もお求めやすいネイキッドグレードでも、一枚およそ1800円位しますから、サンプルが一枚あたり900円!!ということになる。
最低でもそうですから、必ずしもV溝の部分をお送りすることができない場合もありますし、尚且つ、グレードの表情がうまく含まれるかというと、無論難しいのですね。


無垢の木材ですので、カットした全てにその特徴を同じ様に含めろ!という方が無理なのですが、やはり「カットサンプル」として受け取った方は、これと同じものが入荷する!!と思ってしまうのです。

恐るべしカットサンプル・・・


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能登ひばの風呂枠のあるおうち

先日の能登半島周遊巨樹巡り(否、仕事!!)で思い出した。
能登あての上小無節の枠材を、適材適所!お風呂の枠とお風呂の入り口ドアに使ってもらったものを見てもらうのを忘れてました。
あれはもう数ヶ月前・・・・・・・


普通の工務店さんであれば、浴室や外壁などの無垢の木材にとって過酷な条件になると頃には、木材を使いたがらないものですが、こちらはいつも積極的に活用されています。
しかしながら、ただやみくもに使うのではなく、きちんとしたポリシーがありその上で、湿気の多い場所には湿潤環境に耐える能登あてを使用し、適材適所な使い方をされているところです。
もちろん「適材適所」、なんて言って「そうしておけば大丈夫」みたいに聞こえますが、決してそう言う意味ではなく、樹種や特性を何にも考えずに使用するよりはよほど優れてはいますが、メンテナンスや手をかける事で維持していける環境を作ることも、無垢材を適切に使ううえでとても大事なことです。

と話をするよりも見てもらうのが一番。
施工写真ですからね。見てもらいましょう。

能登あて枠

本当はココで、「どうですかぁ!!いいでしょう、能登あての風合い!」と伐り出したいところなのですが、生憎思いっきり逆光&カメラの性能を活かしきれない&アングルが限られることで、いつもながらにその魅力を伝えきれない内容ですみません(汗)。

能登あて枠3

能登あては、品種にもよりますが木目などはヒノキに似るものの、赤身が特徴的な黄色みを帯びているものが多いのが特徴です。
ですが、なかなか写真では現しきれずですね。

要は、この様な事ができるという一例です。
いや、お客様ときちんと意思疎通をすれば、樹脂性の枠材でなくても、アルミのドアにしなくても、適材を使いメンテナンスをすることで浴室まで木のある生活ができるということですね。
因みに、浴室内は今回はスギ板でした。

能登あて枠4

今回は面的使用量としてはそこまでの面積が無いので微量ですが、それでもやはり能登あての特徴的な香りが漂います。
香りの強い針葉樹の良さは、独特の香りが楽しめること。
香りの元は精油成分=耐朽性の源ですから、用途に適していながらとても良い香りが楽しめるというわけ。
木がふんだんに使ってある建て物に入った時「うわぁー、木のにおいがする!」ってなりますよね?!あれです、あれ。
森林浴効果、ってな感じです。
これも樹脂やアルミなどではもちろん出来ないこと。
毎日のお施主様の楽しみにもなるでしょう。

能登あて枠2

また、金属ではないということは「冷たくない」ということ。

部屋の温度をあげても、どうしても金属部分は冷たい場合が多いですが、木はとても断熱性が高いので、触れた手のぬくもりを逃がしませんから、冬でも冷やっとあしないはず。
これも、無垢の木材を使うメリット!
手で感じる感覚というのは、結構大切なものですからね!


近畿、こと大阪ではまだまだ能登あての知名度は低いままです。
私の力不足もありますが、白太の多いカラカラに乾いた寸法精度の揃ったヒノキの方が大工さんの仕事がし易いので、自ずと能登あての様なちょっと暴れん坊でクセのある材は受け入れられにくいようです。
それでも、こうやって化粧枠材やドア用材として使える供給ができる!、ということを知ってもらい、もっともっと特殊用途に使っていってもらいたいものです。

浴室まで木に囲まれたおうち、羨ましいですね。
因みに、ここはマンションです^_^
マンションでもこんなことができる。それも一例です。

・能登あてについて詳しくはこちらから
・能登あて幅広無垢一枚物フローリングはこちらから
・能登あて幅広無垢一枚物羽目板はこちらから


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支えが欲しくなる気もわかる?! 〜高照寺の倒スギ(さかさすぎ)〜


さて、前回は完全に前置きを力説してしまいましたが、ようやく到着。
ここが高照寺の倒スギ(さかさすぎ)。

高照寺の倒スギ1

むむ?!さかさ?!どこが?!
という感じの遠景なので、ちょっと遠くからだとそんなに立派な巨樹に見えないのが残念ではありますが、近づいてみましょう。

高照寺の倒スギ3

はい、全体をとらえるとこのような感じですね。
これでも結構離れていますから、大きいのは大きいんですがやはり樹高がない分、上からの圧迫感がないことと、周囲が田んぼなので全く大きさを比較するものがないおかげで、余計に大きさを感じないのです。
しかし、この倒スギの見どころは、単なる大きさ比べではありません。
さらに近寄るとみることのできる枝垂れぶりと、幹の傾斜具合です。

高照寺の倒スギ9


正式名称「倒スギ」。
もうちょっと凄い冠をつけてあげたい様な、立派な倒れ方をしているものの、読み方は「さかさスギ」。
この容姿をみれば、まぁ十中八九「倒=たおれ」と読みたくなるに違いありません。

それに、「逆さ杉」とよぶ巨樹巨木は様々な場所に存在しますので、音の響きだけでは判断しにくいですが、漢字のインパクトとしては抜群ですね。
ただ、私がいつもお世話になっているサイトの表記が、このスギの所有者の名前を冠しておられたので、それが相応しいと思い倣って「高照寺の倒スギ」とします。

スギの場合は一般的に、日本海側に分布するものを「ウラスギ」とよび、太平洋側のものは「オモテスギ」と呼んだりしていますが、それに倣うのであれば、まず間違いなく「ウラスギ」の部類ですね。
ウラスギの外見は、多くは枝が一度根の方に垂れ下がってから上に出る、もしくは、そのまま枝垂れて地表に着き、そこからまた新たに自分のクローンとなる主幹を作る、という性質を持っていますので、まさしくこの枝垂れ具合はその通りですよね?!

高照寺の倒スギ7

しかし、そういった特異な性質を持っている為に、同じスギの巨樹であっても異形を呈しているものも少なくありません。
そう、魔法使いSF映画に出てくるような、暗闇で人を絡め取る触手を這わせているような、そんな印象。
いやいや、そういうと可哀想ですが今までの経験上はそのようなものにも逢ってきました。
それでも、ここでは「おそろしさ」よりも、どちらかというと「包まれる優しさ」の様なものを感じます。
例えるならば・・・う〜ん。そう、風の谷のナウシカにおいて、主人公のナウシカが王蟲の黄金の触手に包まれるかのような、人の力ではない大きなものに包まれる感じ、そんなイメージでした。


高照寺の倒スギ8

一般論をいえば、スギは通直に天を目指して伸びる樹種だという認識です。
各地の植林用の種取り木などになると、そりゃまぁ見事なほどに節が無く通直で、皮の欠点も見当たらない「スカーっとした」ものもあります。
それに対してこちらではやはり、北側よりは穏やかなのかもしれませんが、風の影響や雪の影響をうけやすいのでしょう。
山中とはまた異なった、厳しい環境があったのかもしれません。
ここで設置されている看板を参照しましょう。

高照寺の倒スギ11


おぉ、なんと英語表記もある。NATURAL MONUMENT っていうのね。
外国からの観光に対応しているのか、それとも県指定の天然記念物だからなのか。
なんか目新しくすら感じるのは気のせいかな。

樹齢は850年と表記されていますから、4桁の大台にはもう少し頑張ってもらわないといけませんが、それでも存在感はとても感じられます。
どうしても枝や遠目からの形に目がいきがちですが、樹皮を見てください。
ところどころに油が出ているのは、他のスギでも見られますが部分的に見るとあたかも松にも見える様なゴツゴツとした大きな粗い皮をしている部分があります。

高照寺の倒スギ6

さて、今の今まで倒スギの周りを普通に撮影してきましたが、写真を見てもわかるように、自由に近づくことができるのですよね。
だから「とぐろを巻くような」うねった枝の枝垂れを視界近くに収めることもできれば、その特徴的な樹皮や傾斜の具合を肌に近く感じることができるのです。
これは、本当にありがたいことです。

近頃は、樹木保護の観点から巨樹古木に近寄れないように、柵があったりする場合が多いので、真下から見上げたり、ましてや樹皮に触るということはできません。
もちろん、まだまだそうではないところもありますが、とてもありがたいことです。

名前の由来となっている高照寺さんは、倒スギよりももう少し北側に位置しますが、もともとはこのあたり一帯が寺の境内か所有地だったのでしょうね。
今現在がどうなのかまでは不明ですが、こののどかな田園とともに寺の一部として、これからもずっとその姿を維持し続けてほしいものです。

高照寺の倒スギ5

幹の太さもしっかりしているでしょう。
さぁ、倒れすぎている倒スギ。
実際の大きさ比べです。いつもどおり昌志といきましょう。
実はこれも、近くまで寄ることができるからこそ、迫力のある対比ができるのです。

高照寺の倒スギ12


どうですか。
右側が私です。またもや同化するようなグレーのシャツという失態を犯してはいますが、真横に立つとこんな具合です。
いかに見事かがわかるでしょう。
晴天の中、大きく太い触手の傘の中にいると、850歳につつまれてとても心地いいのです。
周囲を何周も回ってみて、違う見え方を探したり元気な青葉を眺めたり。
本当に巨樹の手の中に抱かれているような感覚。そんな体験でした。

平地の、それも田んぼのど真ん中でよくぞここまで生き残ってくれたものです。
田んぼでは、水分が多いので成長は早くなる傾向にあると思いますが、自分が大きくなるにつれて根の張りも小さく堅固な地盤がないために、倒木となることも少なくありませんが、850年の間にどのような変遷があったのか、立派に育ってくれていました。

もし、倒スギに抱かれに行くのであれば、皮を傷つけたり枝を折ったり、ましてや根に悪影響の少ないような歩き方でいきましょうね。
ずっとこのまま、だれでも抱擁してくれるようなあたたかな倒スギを維持できるように。



高照寺の倒スギ2



高照寺の倒スギ所在地

石川県珠洲市上戸町寺社6-9 (インターネットマップにも記名されています。)

交通量がないので、道路に停車可能です。


あ、もし私と同じように北側から回ってこられる方は、ぜひ、波の花とともに?!名物である「塩」をお買い求めください。
海岸沿いの道の駅・・・というか塩の駅?にて販売されています。
今はこのあたりでしか入手できない、しかも一人3袋までです。
お土産にどうぞ・・・・・・・

shio


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まだ見ぬ巨樹 高照寺の倒スギまでのみちのり

少数かもしれませんが、待っている人もいるのです。
何を?!って、拙記事で紹介される巨樹達の姿を、です。

もちろん、写真の構図や迫力、そして情報量というものは、巨樹巨木専門のホームページに譲りますが、ちょっと変わった材木屋が見る視点というものを、楽しんでくださる人もいらっしゃるのです。

ということで、今回も紹介していきましょう。各地の巨樹達をっ・・・


ココは大阪から意外と遠い場所、能登半島。
デッキ材や土台、柱や浴室内装枠など湿気のある場所に使っていただく機会の多い「能登あて」を産する場所。
石川県でありながらも、金沢市から更に1時間は北上してたどり着く場所。
まぁ、知っている限り兵庫県や岐阜県、長野県や岩手県も相当南北移動に時間がかかるので同じ様なものかもしれませんが、私の地図上のイメージではもう少し近い様に思うのですが、意外と遠い・・・(でも人も温かくて好きですよ!)


そんな能登半島に、杉の見事な巨樹が存在するのですよ。

能登半島、と一口にいってもその表情は千差万別。
能登半島素人な私ですが、1日で北西に位置する輪島市をスタートしほぼ半島の東の端をかすめて珠洲市に入り、そしてひたすら南西の穴水町を目指して周遊(仕事です!!!)するというコースを実践したのですが、まぁ驚いた。

日本海側、というような表現が正しいのかどうかわからないので、半島の「北側」と呼ぶことにしましょう。
その北側と、反対に南側ではおそらく直線距離で20Km少々のはずなのに、天気も海の様子も全く違う!!!
まさしく日本海!といわんがばかりの強風と荒波!!

高照寺の倒スギ15


輪島市を出発した時は曇りだった天気が、見る見るうちに暗くなり雨とともに海からの強風を伴って嵐の様に車の車体を押してくる!!
そんな道中、だんだんと道路に白いものが現れる・・・
むむ?!まだ11月に突入したばかり、しかも暖冬!まさかノーマルタイヤなのにいきなり積雪?!!?
あまりに荒れる天候に、正しい判断ができなかったのでしょうかね。
良く見るとその正体は日本海名物、波の花でした。

高照寺の倒スギ14


実物は私も始めてみました。いつも見られるものではないらしいのですが、その量が中途半端じゃなく、相当な量が悶絶するような強風とともに吹き飛ばされてくるので、本当に雪山での吹雪スキーの様なのです!
この光景、きっと巨樹の記事に使うぞ!!と調子に乗ってカメラを手に車を降りて撮影しようと、ドアノブに手をかけた瞬間!!!!

「ブワッ!!!!!」うぉおーーーーーー」

能登半島の風、なめてました(汗)。
もう少しで車のドアヒンジやられるところでした。
余りの強風で、ドアがもげるかと思うほどの勢いで開いてしまったものの、なんとか指がかかっていたのでセーフでしたが、調子のったらあきませんね・・・

そんなこんなで記念写真をなんとか取り終えて、ビックリマーク一杯の「北側」を抜けやっとこさ珠洲市へ。
するとどうでしょうか。
むちゃむちゃ穏やかな天気。

高照寺の倒スギ13

直線距離20Kmほどとは思えない違いに唖然。
こんなもんなんだろうか?!わたしには知りえないもののとても貴重な体験をした一日になりました。
田舎者ばりに地域性豊かな土地にひとしきり驚き、さて、いよいよお目当ての巨樹へ!と思ったらやたらと前置きが長くなりすぎました・・・
長文になってしまいますので、お楽しみは次回に持ち越しいたします。

観光案内みたいになってすみません・・・
いよいよ次回が本番ですぞよ。

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「たたり」を残さず想いを残す・・・(^_^)

巨大なイノシシ神である「鎮西の乙事主」が、人間への一斉蜂起を呼びかける手前の場面。

乙事主 2


「みんな小さく馬鹿になりつつある・・・」


この言い回しの善し悪しではなく、あくまでも一族と森の神々として生きてきた誇りの様なものが無くなっていく淋しさが、悔しさや虚しさとともに現れた言葉なのではないかと思っています。

作品のスケール感と間竿を比べることはできないけれど、自分もこのまま時代に流されていると、小さく馬鹿になっていく様な気がするのです。
だから、貪欲に良いものを取り入れたい、色々なものを見てみたい、木材だけではなく山やそこで生きる人たちと木材を通じて活動したい、また、木材や建築の世界に飛び込んできた後輩に、知る限りの事を伝えたい。
全員がそうでなくてもいい、知りたいことがあるのに知る機会が無い。訊きたいことが訊ける人がいない。
そんな状況を少なくしていきたい。

でも、もしかしたらそんな社会をつくっているのは、私自身かもしれない。

話は急に飛んでしまいますが、私の好きな歌にB'zの「ケムリの世界」というものがあります。

「悪いやつ もちろん悪い でもそれをつくるのは 歪んでる社会です って気づいてみたけど この社会=僕たち」

一部分だけきりとってもいけませんが、「歪んでる社会=僕たち」なんですね。
人のせいにしても、社会のせいにしても、やっぱりそこに生きているのは自分たち。
歪んでいる方が楽なのかもしれない、得なのかもしれない、儲かるのかもしれない。多分そう。
しかし、歪んでいる社会で誰かが得をしても、その歪みの連鎖で、廻り廻って自分が苦しむことになるのかもしれません。
残業を減らせ、勤務時間を短くして休日を増やそう、と大きく絵に描いてみても、実際にそれができる土壌を作らなければならないことに目をつぶっている人たちが旗を振っても意味が無いもの。
みんな頑張っているんだから。

その社会の中で自分たちで良くしていこう、という気持ちが無ければ期待しているだけではダメだという事だと捉えています。
私自身はそうならない様に、稚拙ながらも記事や製品を通じた出会い、イベントを通じて活動を知ってもらう機会を作っていきたいと思っています。

間竿2


昔は板材などを製材して、細い角材が残っても「間竿にするからおいときや」といったものです。
だって、大工さんが加工に来るたびに絶対いるんです。
そのたびに製材機で細い角材作ってたら、勿体ないでしょ。
そんな時代でした。
そういえば、柱の元末(木の向き)を反対に置いて、えらく叱られたこともあったなぁ。今は集成材が多いので、そんなこと言う大工さん自体少なくなったけど・・・
少なくとも、木の事を見て触っていた時代の事です。
しかしそれでは、物事の意味が全くなくなってしまいます。何でもアリ?!な状況です。

手仕事がもたらすものは、目に見えないものが多い。だから、その価値や意味を伝えないといけません。
木材には、機械加工が主になったとはいえ関わる人たちの手が欠かせません。
手をかけずにほおっておかれた山が、現在どの様な状況になっているのかは周知の事だと思います。それが答えです。

手仕事が無くなっても、日本の木材の消費量は増えるでしょう。
国の予定通りに。
しかし、いくら需要と消費量が増えても、そこに手仕事がなくなってしまうなら、この先に日本の木材は「量・質共に使えなくなってしまう」でしょう。
先人が残してくれた森林という財産を、儲かる仕組みを作った大きな企業だけが消費していくんだから。
安易な「国産材利用」や「日本の木材を使うことが一番」というだけではなくて、「歪んだ社会」を変えられる仕組みの中で、木の事を考えてほしいと思っています。
そんな私の考えも歪んでいるのかもしれないので鵜呑みは禁物(汗)。


劇中、とうとう乙事主は「たたり神」への道を進んでいきますが、私は憂うばかりではなく、前向きに!「たたり」が残るのではなく、少しでも多くの想いを残していきたいものです。


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「たたり」はもらってないけど・・・(^_^;)


表題から想像する様な、おどろおどろしい話題ではないんだけども、題名をつけるのならそんな感じ。

昨年末から、在庫品の入荷に備えて少しづつ倉庫を片付けていってるんだけれども、前から触っていないところって結構あるもので・・・
今回は壁沿いを整理していったわけですが、途中でこんな棒がたくさん出てきました。

間竿1

細い、2.5cm〜3cm程の角材です。長さは3〜4mあります。
それが10本どころじゃなく立ってます。
何だと思います?!
もちろん、木造建築に使うものなんですけどね。


地方によって呼び方は異なるでしょうが、当社では「間竿(けんざお)」とか「尺杖(しゃくづえ)」とか呼んでいました。
なんのこっちゃわからんでしょうが、これはいわば大工さんの「スケール(定規)」です。
それも、結構便利な定規。
現在は、住宅も含めた木造建築の新築工事は、ほとんどが工場にて継ぎ手や仕口という接合部分を機械加工されて現場に運ばれますが、10数年前までは大工さんが材木屋サンの作業場で加工機械を使って自分で加工されていたわけですね。
その時に、梁や土台などに加工する目安の「墨(すみ)」をつけるわけですが、その墨をつけるための定規なんですね。

それも結構便利。
角材なもんで、グルっと4面ありますので、1本で4つの部分の寸法を表示することができるのですよ。
だから、天井の高さと1階〜2階の高さはココ、梁の加工する部分のココは溝をつくる、なんていうことが「間竿」をあてるだけで一瞬でわかるのです。
いちいちメジャーを出してきて測るということをしなくてもいいんですね。

その光景が普通だった時は何とも思わなかったですが、めっきりそんな光景見なくなってしまうと、やたらとすごい「道具」のような気がしてきます。
大工さんそれぞれによっても印の仕方や表記にクセがあって、久しぶりに加工にくる大工さんに、たまに他人の間竿を渡したりすると「わしのんとちゃうぞ!(怒)」と即座に返される位個性のある「道具」です。


しかし、そんなすごい道具も使われなくなってはただの細い角材。
その他に用途といっても、こればかりを使うこともなく淋しげに林立しているのみ。
道具にしても、材料にしても、技法にしてもそうですが、伝わらなくなったり知られなくなるというのは淋しいものです。
偉そうにいう当社でも、手刻みが殆どなくなってから入社したスタッフは、やはりこの間竿のことを知りません。
「なんか、細長ぁ〜いのが立ってるところあるじゃないですか…」と説明されて、ちょっと恥ずかしくなりましたが、それも時代の流れ。彼が悪いわけではないんだけれど・・・


少し前にも「●曜ロード●ョ−」で、数週間連続でジブリ作品を放送していましたが、いつもそれらの作品の中のメッセージ性の様なものを感じて止みません。
そんなこと考えながら見てる人、自分だけかもしれないし、ましてや自分が想像する様なメッセージなどないのかもしれないけれど、自分が何かを考えるきっかけになっていることは確か。

特に、今回の様に時代の流れによって、優れたものが次第に「利便性と対コストの上での必要の無さの波」にのまれて知られなくなっていく淋しさは、私にジブリ作品のもののけ姫における「乙事主(おっことぬし)」のセリフを想起させます。
そう、迫力満点。あの巨大なイノシシ神である「鎮西(ちんぜい)の乙事主」です。(この響きが妙にかっこよくて好きです。)

乙事主 1


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木ぃクンmuku_mokuzai  at 13:15コメント(0)トラックバック(0) この記事をクリップ!