空を見上げて
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2016年10月

隠れ家はそれ全体が隠れているもの 〜古希杉浮造りフローリング施工完成〜

想像できない。

しばしば、「できない」ことはよい場合もある。
いつもそう思うのは工事が完成した現場を見せていただくとき。

そうです、想像できないことが目の前にあったり、想像以上だったり、いい意味で思っていたのと違っていたりすると、想像できないことが逆に楽しくなったりする、変な感覚です。

今回もそうでした。
材料を納めさせていただいてから少し時間が経っていたので、早く訪問せねば!と焦っていたお宅のうちの一つです。
しかも材料選定の時からずっと連絡を取らせていただいていたことと、弊社の杉フローリングへのこだわりをとっても期待してくださっていただけに、その貼りあがりが気になっていたこともあったのです。

で、これです。

古希杉浮造りフローリング 30mm 2

きれいな留め加工!
フローリング同士がかどっこでお互いに合わさる部分できれいに斜め加工がされています。
しかも、4m材がのびのびと活きる、縁側型施工です。

思わずうっとり、自画自賛!
もちろん、こだわりを持ってお届けしている材なので当然ではあるのですが、そうはいっても無垢の木材。
写真やサンプルとは異なる色合いや木目が入ることは当たり前。
赤身勝ちではあるものの、まったく白太がないわけでもないし、ましてや均一なものでもない。
だから、イメージで出している弊社の写真を気に入ってもらっていたとしても、原木の違いなどからくる表情の違いを気に入っていただけるか、ちょっと気になるところもあるのです。

古希杉浮造りフローリング 30mm 6

杉という樹種は、辺材の白太と芯材の赤身のコントラストや、純白と赤身のピンクと例えられる色合いが特徴ではありますが、杉も生き物。

育ってきた環境や伐採時期、乾燥工程などによって色合いも表情の濃さも変わります。
そのために、赤身がほんとに赤いものから黒っぽいものまで、白太が少しくすんでいるものなどもさまざまある中で、この美しい色合いがそろっていることは、本当に自慢の一つです。(また自画自賛。)

まるで桜のような「薄紅色」と申しましょうか(^^♪

優しく漏れる電球の温かみのある光と、ものすごくぴったり合ってませんか?!?

古希杉浮造りフローリング 30mm 5

妙にしっくりくることの一つに、その色合いとお互いに引き立てあっているのが、畳の間があること、でしょう。
この明かりの先は畳の間。
やわらかい色合いと、温かみのある光、それがふんわりとした杉の木目とともに、目に優しく入ってくるのですよ。

そのふんわりとした木目を作り出しているのが、弊社自慢の浮造り(うづくり)加工!
杉は柔らかい樹種だといわれますが、晩材と呼ばれる一年の成長の終盤期にできる部分(いわゆる木目と称している部分)は意外と硬いのです。
そして、元気に成長した早材と言われる柔らかな部分を優しく削り取ると、晩材のみが浮き立つように残ることで浮造りは完成します。

その浮造り加工は、巷にあるものとはちょっと違います。
この表情を見てください。

古希杉浮造りフローリング 30mm 3

きれいに硬い木目の部分が浮き立っているのがわかりますか?
浮造りの加工はむつかしいものではありません。
削り取っていけばいいんですから。
機械に突っ込んでバリバリと・・・・

それが普通。
しかし古希杉浮造りはそんなことはしません。
バリバリ擬音を使いたくないくらいに、そぉっと柔らかなタッチで少しづつ「撫でとっていく」ようなイメージです。
だから、深い削り取り傷がつくことがなく、色つやを犠牲にせず「イカツク」なりすぎない木目が生み出せるのです。

気持ちいいですよぉ!この感触。
ショールームでも、感触はダントツのナンバーワンです(笑)。
好評の百年杉柾浮造りフローリングも同じ加工ですが、まっすぐに流れる柾目よりも、規則的でいて不規則な板目の古希杉浮造りは、触れている足の裏からホッとするフローリングだと言いたくなります。

古希杉浮造りフローリング 30mm 7

無垢フローリングでは定番の広葉樹フローリングでは、針葉樹のように木目の目立つものも少ないことと、なにより4mも途切れずに木目が伸びているものも珍しいので、古希杉浮造りのこの伸びやかな木目は針葉樹フローリング、特に杉の特権といえるところではないでしょうかね!

それにしても、古希杉浮造りフローリングは「節あり」のネイキッドグレードの設定なのですが、なんとも節が少ない。
紹介する側からすれば、ある程度の節を見てもらわないと「節なし」のグレードと間違われかねないところですが、これも、少し前の160幅の仕様から原木と木取りを変更した結果のこと。
節なしではなく、大きな節が少ない、それもパテではなく埋め節加工のフローリングですので、お間違いなく!

古希杉浮造りフローリング 30mm 4

そしてもう一つ!
古希杉浮造りの大きな特徴は、天然乾燥の杉フローリングであるということ。
しかも、葉枯らし乾燥という手法で原木の段階から丁寧に乾燥させることで、色つやがよくさらに、杉とは切っても切れない「しぶ」と言われる変色を極力少なく抑えられるために、一層色合いが美しく見えるのです。
曇りのない美しさ。
そんな感じ。

日本全国に杉はたくさんあります。
また、産地にも生産者によっても様々な個性がありますが、色つやのよさと「しぶ」の少ないこの表情は、古希杉特有です!

杉は安いもの、杉なんてどこで購入しても同じ、そう思っているととてもお高い買い物のように思われますが、ほかにはこんな杉のフローリングはなかなかないですから、「杉」という名前だけではきめないでくださいね〜。


さて、私が驚いたのはフローリングだけではありません。
実は工事途中にお邪魔したとき、てっきり更地に建築中の足場に囲われたおうちがあるものだと思っていた想像を打ち破り、「現地」には倉庫風の建物があるではないですかっ!!
どういうこと?!と思っていると、なんと建物はその倉庫風の建物の中。
建物イン建物!!
意外や意外、外観は金属製シャッターが閉まっていると、どこから見ても貸倉庫。
それが一度シャッターを開ければ、巨大な木製の引き戸が現れ「隠れ家」への扉が開くのです!!

古希杉浮造りフローリング 30mm 1

この隠れ家が見たい人はぜひ、今回のお客様であるアトリエFUDOさまへお邪魔してください。(こんなの募って良いのか?!?!)
仕事柄、「こんな建具、仕事すんの大変やったやろうなぁ、職人さん」と、その職人泣かせの大きさと下部のルーバー部分が開閉できるようになっている凝った作りを眺めて、隠れ家を散策するのです。
まだ工事の仕上げ途中段階だったため、内観の写真公開は控えますが、土間の広がる空間に、まるでドラえもんのポケットから出てきたようにたたずむ「隠れ家」は、まったく冷たい印象がなく、みるからに倉庫っぽい外観を、まったく忘れさせてしまうようなほっこりとした建物は、建築の妙、まさにそれでしたね。
まさか、隠れ家自体が倉庫に隠されているとは・・・
驚きました。

内部工事の多くも、施主様自身がなさっていたこともあり、とても時間がかかってしまったとおっしゃっていましたが、私自身の経験からしても、その長くかかった時間は決して無駄ではありません。
やはり建物に対する気持ちや入れ込みが増しますからね。
もう少しで、もっと多くの方が感激する「隠れ家」が完成します。
住宅、店舗をお考えの東海地方の皆さま、ぜひ、アトリエFUDOさまの「隠れ家」まで足をお運びいただいて、ついでに(?!)古希杉浮造りフローリングも見てやってくださいませね。

最後に、いつものアンケートを掲載します。

・今回の弊社の対応について(メール、電話回答の内容や対応はいかがでしたか?!)


フローリングの塗装やメンテナンスについてのアドバイスを一般的な事だけでなく経験談もふまえて教えて頂けてとても助かりました。杉の無垢フローリングを無塗装で使ってみる決意ができました。

 

 

・担当について(印象はいかがでしたか?適切に対応できましたでしょうか?説明は理解できましたでしょうか?)


フローリングのサイズの関係で特別に工場まで取りにいって頂けたり、直接遠方地である現場まで持ってきていただけたりと、とても親身になって頂けて助かりました。

 

 

・インターネット記事について(弊社記事で商品御理解いただけましたか?お探しの物が見つかりましたか?記事内容はいかがでしたか?)


理解できました。写真で見ただけでも興味をひかれましたし、現物も写真同様に素晴らしい物だったので即決しました。

 

・商品について(この材料を選んで頂いた感想と、貼りあがりの感想をお聞かせください。)


同じ杉浮造りフローリングを他社でも見ましたが、目の細かさや赤身の具合、浮造りの感触などなどとても良い状態です。貼り終えてから半年以上たちますが問題もなく、足裏の感触がとても気持ちいいです。

 

 

・弊社を選んで頂いた理由を教えてください。


ブログでとても木に対する思いの強さを感じたのと、扱っている物も、それぞれのフローリングに素敵なタイトルがつけらていて興味がわきました。もちろん最終的な決め手は扱っている物の品質の良さでした。

 

アトリエFUDOさま、有難うございました。
この隠れ家(勝手に命名・・・)が、とっても楽しい空間でありますように。

古希杉浮造りフローリング 30mm 8

 

*古希杉板目浮造りフローリングは、2017年に木取りの仕様変更をしていますので、下記施工写真の表情と現在の規格とは若干異なることがありますのでご注意ください。

・古希杉浮造り(うづくり)無垢フローリングはこちらから
・古希杉浮造り(うづくり)無垢フローリング、15mmエンドマッチ品の施工写真はこちらから(旧規格品)
・古希杉浮造り(うづくり)無垢フローリング15mm、M様邸施工写真はこちらから(旧規格品)
・古希杉浮造り(うづくり)無垢フローリング30mm、T様邸1年後経年変化の記事はこちらから(本記事の1年後です!)

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無垢フローリングについて、私、間違ってましたかね (-_-;)

今までは自信持ってた。
きっぱりと言い切ってた。
困った顔をされても、仕方なし!と思っていた。

しかし、いざ自分の事となると話が変わるものである(汗)・・・

今までは、ショールームに来られる方にも、電話やメールでのお問い合わせの際にも悉く!口酸っぱく言っていたことが自分に帰ってくるなんて(>_<)


先週の土曜日のこと。
家内より、長男がイスを欲しがっている、と言われる。
さては、なんか面白いもの見てきたな?!と思っていたら、塾の自習室のイスがとても座りやすく、子ども用の勉強机のイスではもう合わなくなってきたので「勉強がしにくい」とな・・・
むぅうぅ〜・・・・
勉強と来たか・・・イスでか・・・

とりあえず勉強の為、という口実でイスを探すことになったのだが問題はこれから。
私は、昔に自身も使っていた固定足(十字、もしくは星型に足のひろがったもの)のイスを想像していたものの、いざ希望のものを探して見ると驚くほどに「全てがキャスター付き!!」なのである。
こんな事で驚くのは私だけ?!
やっぱり時代錯誤なのか・・・
いや、そんな事は無い、作っているところもあるはずだ・・・家具屋さんを探そう!近くでどこか見に行こう!!
そう考えてネット検索するも、全く該当するものに当たらず、また、とりあえずあるはずやから見に行こう!と、急ぐ仕事の書類作成もほったらかして出かけたものの、店舗も見事にオールキャスター!!
念の為、店員さんに問い合わせるも、「そんな商品はどこもだしてないんじゃないですかねぇー」という味気ない答え。

そんなはずない!わたし、使ってたもん!!
変に意地っ張りな子供の様な気持ちになるところながら、ないものは無い。

ところで、何故そんなにキャスター無しにこだわるのか・・・
うむ、そこが今回の重要なところ。
使う本人である長男の部屋の床は杉!

無垢床2

そうですよ、察しがつきますでしょう・・・杉の無垢フローリングにキャスターイスを使うなど、言語道断!!!!!!!!!!!と、御客様相手ならば胸をはって言う(もちろん、もっと丁寧に、)ところながら、いざこれだけイスが全てキャスターになっていると、フローリング自体が硬質なものでないと選択を間違っている様な錯覚に陥ってくる・・・

いや、そうじゃないんだ。
床は温かみがあって適度にやわらかくて、硬さが優先されるばかりのものではないんだ!
そう必死に連呼する頭の中を、これでもかというくらいに整然と並んだキャスターイスの隊列が支配しようとする。

あぁ!いままでお客様が、無垢フローリングの場合にはキャスターイスが使えない、とお困りだったことを本心から理解していなかったことに後悔・・・
いや、わかっているつもりだったけども、それは無垢フローリングの性質を理解してもらえばお分かりになりますよね?!ってな感じだったんだろう・・・
そりゃ、新しくなるおうちのインテリアを考えた場合、書斎や勉強部屋にはキャスターイスも使うでしょうに・・・というか、それしか選択肢の無い売り場に行けば、無垢フローリングだと使えないよねぇ…・と今回の私と同じ悩みが発生するわけだ!

無垢床3

ぬぬぬぬぬぅーーー。
なんか、本当に床の提案を否定されているかのようなイスの行列には、あいた口がふさがらない状態。

昔から家でキャスターイスを使うなんていう習慣がなかったもんだから、唖然。
そりゃ、皆さん耐キャスター性能が高いピカピカ合板フロアーにするわな。
うん、理解した。
そういうことか、やっぱり無垢の場合は「あれもあかん、これもあかん」になってきて採用が難しいわけやな。

よぉーし!それならそれで、今まで以上にキャスター使えない生活でも幸せやという事を見せてやろうやないか!!
キャスターでころころするよりも、足への負担や経年での性質の変化など、年月時間が立たないとわからない無垢材の良さをもっと伝えようじゃないの。
一転、燃えてきたぞ!
今まで以上に経験としてキャスターを語れるようになったぞ。
(今さら・・・・・?!)

危うく、自分が間違っているのかと錯覚した、とある休日の出来事。
しかし結果、どうしても勉強がしにくい!という事で、キャスターイスのキャスターを外して使う、という荒技で希望のイスの購入が決定したことを報告しておきましょうか。
んー、これで成績上がらんかったらイス没収やで、ホンマに・・・とひとりボヤキながらキャスターで悩んだ一日の為にほったらかした残務を、その日も夜中まで一人片付ける私・・・とほほ。

無垢床1

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さぁ勇気を振り絞れ、俺! 280mの恐怖 〜大古井の千本桂 ビビりのエピローグ編〜


さぁ、恐怖心と闘いながら上がってきた大古井の千本カツラ(桂)ともお別れ。
名残は惜しいものの、ココにたどり着いたということは帰らないといけない(当たり前!)訳で、再度来た道を戻らなければならないわけです!!

来たときは大丈夫だったけど、帰りにもしかしたら出るのでは?!!?
なんていうことを考えながら、ひたひたと・・・いやホーホーといつもの奇声をあげながら、下っていくわけですが忘れかけてたあいつが襲ってきます。

大古井の千本桂2

いててててててて・・・・
登りほど不注意では無かったものの、ガードしていても容赦なく襲ってくる針の力恐るべし!
まるで鉄条網のジャングルをくぐるかのように、急ぐ体にガリガリと牙をむいてくるのです!
季節的にダメだったのか、若しくは仕方ないのか。
私の様に秋口に訪問する方はくれぐれも、防針対策をお忘れなく・・・

とはいえ、先に目を向ければこんな景色です。

大古井の千本桂1

前日が雨で、早朝も少し小雨が残っていた為にダム湖の対岸の山には霧がかったような風景が見られます。
(まぁ、そんな余裕無く写真撮っている間もホーホー言ってるのが現実ですけどね・・・)

そんな景色も少しは見ながらそそくさと下山です。
帰りはやっぱり凄いもので、下りであることと一度来た道であることが手伝って、グングンと国道へ近づいていきます。
「あぁ、今日も無事に戻る事が出来た・・・」と大袈裟に安心するのは、入山の試練編を見ていただくとわかるとおりですが、その入山の試練を乗り越えられた(?!)のも、あの登山口の木製看板のおかげかもしれません。

大古井の千本桂5

当然のことながら、地元の地理や道路、ましてや山に入っていく場所などわかるはずの無い状況で、くねくねとした山道を車で走りながら目的地を探している為に、「その場所」を通り過ぎるということはよくあることです。
運転には集中しないといけないし、車での探索は遅くても30〜40Km/hは出ているので、前方の交通事情に注意している間に過ぎてしまうのです。
ましてや、登山口などよほどの事が無いと気がつきません。

ここも当たり前の様に一度通り過ぎてしまいました。
もちろん、神社には気がついたのですが、社殿を見ている間に看板を通り過ぎたのです。
車はそんなもんです。
だからこそ、再度戻った時にはお手製の看板の有難さを実感したのです。
いや、それだけではありません。
「ココからで、間違いないよね・・・?!!?」と車を停めて、「入り口」とされる登山道を覗くも、既に草が生い茂って先が見えない!!
そんな状況にビビっている私の脚を、山中に向けてくれたのはやはりこの看板に他なりません。

もしこれが、味気の無い行政の造る看板であれば、「ちょっと危ないかも・・・」と躊躇していたかもしれませんが、やはり人の手を感じられるものはすごいですね。
登ってみようという気になるのです。
で、別サイトの記事によるとこの看板は、高根中学校の卒業生の手によって設置されたものらしい(後報する事情で近接写真なし)ので、どおりで温かみがあるわけだ。
これを見たから、前方に道が確認できなくなろうがトゲトゲに襲われようが進むことができたのです!!

そういう意味でいえば、やはり人の手が加わったものって良いですね。
金属だと長持ちするのかもしれませんが、ちょっと冷やっとするので怖じ気づいてしまいそうです(私だけか・・・)。

そんな看板効果もあり、無事に往復を果たすことができた今回の訪問。
やれやれ、大きな達成感だぁ!!・・・と緊張で硬くなった背筋を伸ばしながら車に乗り込もうと汚れたであろうズボンのすそを上げかけた瞬間!!

なんじゃこりゃ!!!

大古井の千本桂17

写真で見ると大したことない様に見えますが、両足と首下の上半身に無数についている種子?!と見られる物体。
はっきり言って、気持ち悪いです。

すぐにジャンパーについているものを手で払いのけるものの、絶妙に「返し」のきいた引っかかり構造で、払った位ではとれません。
それゆえ一つ一つ、手作業でとっていくことになったのですが、何せ全身なので、取った尻からつまんだ指に引っかかったものが別の衣服についてしまったりで、取り去るのに15分ほどかかる始末。
念の為付け加えておくと、靴ひもの一本一本まで絡みつくしぶとさでして、さすがに安心した体に受けたダメージは大きく・・・・
(そのため、看板の接写も失念する始末・・・)

まぁ、それでも無事に降りてこれたんだから、と針に刺されてひっつき虫だらけになっても、安全に感謝する訪問エピローグなのでした。

秋口に訪れる方、長袖長ズボンは厚手をお勧めします(汗)。
怖い怖いビビり巨樹訪問記、今回はこれにて終了です。


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さぁ勇気を振り絞れ、俺! 280mの恐怖 〜大古井の千本カツラ(桂) 邂逅編〜

これや、これこそ桂(カツラ)や。
それも山の中のカツラや。


体の緊張感を一瞬忘れさせる様な、そんな姿が目の前に・・・・

ヒコバエと呼ばれる分身を茂らせながらも生き永らえる、樹木では一般的な「太っていく主幹」に頼らない生き方を選んだアウトサイダー・・・
いや、目前にすると「山の主」とでも言いたくなる雰囲気。
それが大古井の千本桂。

大古井の千本桂7


各地に「千本カツラ(桂)」の名は日本にいくつもあるので、ここは他と区別するべく地名が冠して掲載されているページが多いので、私もそれに倣うことにしました。

巨樹に多少興味のある方ならば説明しなくてもいいでしょうが、カツラに関しては、他の樹種の様に一本の幹が「ドカーン!!!」と天に向かっているのとは、様子が全く異なります。
写真の様にヒコバエと言われるいわば「自身の分身」を次々と生み出し、例え中心の幹が無くなってもヒコバエ達が成長を続ける「クローン方式」を導入している、人間よりも進んだ?!?種の保存方法をとっている樹種ですね。

イチョウの巨樹に「乳」が出るように、カツラの巨樹は一部の例外を除きほぼ、この外観を呈します。
ただ、神社や街中で出会うことはあったものの、今回の様に山の中に位置するカツラの巨樹は初めてで、周りにいくらでも見えている木々と同じ植物とはいえ、カツラしか目に入らないほどの存在感です。

大古井の千本桂11

いや存在感はもとより、このカツラが際だって見えるのは、もしかすると周囲が開けているせいかもしれません。
開けている、というのはもちろん空もそうですが、それよりも本当の意味での「周囲」です。
おそらくは、訪れる人も多いのでしょう。
皆が歩くからなのか、まるでカツラを取り囲む円の様に、周囲には殆ど草が無く地表が見えている事から、余計にその存在を際立たせている様に思います。

巨樹の中には、周囲に立ち入りできない様に囲われているところや、展望デッキが設けられているところがありますが、なにもないにも関わらず、ある意味「結界」の様になっていることに、おそらく脳が反応したんでしょうね。

大古井の千本桂8


さて、このカツラの名称については先程少し触れましたが、現地の案内板は「千本カツラ」表記で、どこか淋しげに地面に置かれていました。
その隣には、私としてはこちらの方がおなじみの標柱がありますが、やはりこちらも立ってはおらず、横たえられています。
そして看板には、「幹を傷つけたり枝を折ってはいけません」とあります。

そんな人いるんやろか?!
いるんやろなぁ。人気(ひとけ)が無いだけに・・・
なんかむなしくなる看板で、マナーもそうですが当たり前の事を言わなくても皆ができるようになればなぁ、と思ったりしました。

因みにこの大古井のカツラのデータを紹介しておきましょう。
樹齢は300年以上、樹高約35m、目通り幹回りが16,2mとのこと。

大古井の千本桂12

日本には他にも、ゆうに300年を超える樹齢の巨樹巨木があり、中には「ホンマに300年かいな?!」というような、まだまだ青年のようなものもありますが、千本カツラに関しては300年とかどうでもいいのです。
この「生への執念」とでもいいますか、ガンガン?!と周囲を覆うヒコバエと、その異形とはにつかない控えめで可愛い青葉を見ていると、眺めているうちに溜息が出る様な美しさを感じます。

「美しさ」というのは、何も杉の様に「通直」というような意味ではなくこの場合は「線の細さ」からきているものです。
つまりは、幹の太さは剛、ヒコバエを始めとするその集合体が柔、そんなイメージ。
巨樹でありながら、どこかやさしい印象を受けます。


といいつつも、千本カツラが見事なのはヒコバエを出しながらも、主幹(どれかわからないけども・・・・)を始めとして太い幹が多く残っていることです。

大古井の千本桂10

いや、残っているというよりもこちらの方がまだまだ元気で、その名の通り「千本あるかのような」比較的まっすぐに伸びた幹がみてとれます。
もちろん、かなり見えづらい状態になっている真ん中近辺が主幹であろうとは思いますが、不用意に近づくことはしませんよ!

何故かって?!そりゃ、入山前の注意ですよ。
ハチです。
安心してはいけません。思わず顔を覗きこませたくなるカツラの幹ですが、比較的隙間が見えていても暗いところや、スペースのあることろなどには、ハチの巣がある場合があります。

そんなん、めったにないわ!、と言われるかもしれません。

しかぁーーーーーーし!!!
痛い目にあいかかった経験のある私としては、注意を促さなければならないのです。
以前の、そう、それもカツラの巨樹の訪問時。
丁度今くらいの秋にかかる、冷涼で清々しい朝の訪問でした。

大古井の千本桂14


山中ではなく、民家も近くに見える様な立地にあるカツラの巨樹。
そこには、主幹の下側にまるで「大仏っぁんの鼻の穴」ほどの空洞があり、現地の案内板には、「この空洞をくぐりぬけると、願い事が成就する」なる書き込みがあり、人の通っているような跡もある。

むうぅ〜・・・・
別にたいそうな願い事もないのである。彼女が欲しいとか、幸せになりたいとか、一攫千金とか・・・そんなのはないのであるが、書かれている以上は一期一会!
くぐってみるか?!
と思ったものの、実は泊まりがけの研修の2日目の早朝での訪問だったので、服が汚れてしまうと困ったことになる、そう考えくぐるのをやめたのです。

しかし、未練たらしくカツラを写真に収めながら周囲を回って、丁度穴の反対側についた時ビックリ!!

「ハチの巣あり、注意!!はいるな!!」の看板。

んな、アホな!!!
案内板訂正しとかんかいな!危うくくぐるとこやったわ(-_-)/~~~ピシー!ピシー!
エライ事になるところでした。

だから、無茶は禁物、油断は禁物。

大古井の千本桂15

ってなことで、あまり不用意に巨樹には近づかない様にしましょうね!

で、どこまで話したか・・・

そうそう、この見事な千本カツラですが所有は個人さんだそうです。
代々守られてきたものなんでしょうか。
これほどになるものはなかなか無い中で、後世に生き残って欲しいという想いがあったのでしょうか。
そうやって見ていると、山の中とはいえ、人との関わりの見えてくる巨樹で、神様のようなこころもちだった距離が、一気に近くなったような気がします。

しかしながら、訪問時は相当感激したものですが帰宅後の写真では、イマイチその迫力は感じられない。
もちろん、私のウデのなさと簡易なデジカメだからだということもあるのですが、あの存在感を写真で伝えることの難しさを実感しました。

だって、自分は「奇声」をあげながら写真に収めているんですから、そこまで綺麗にいくわけない。(言い訳・・・)
実際、撮った写真の1/5位はピンボケ・・・・
ぬうぅ・・・オートフォーカスやのにボケさせるとは、逆に難しいぞ、俺。
どんなけ手が震えとんねん。

そんなこともあり、今回は危うく昌志スケールを披露出来なくなるかもしれない=自分との比較写真を撮影忘れる、という事態に陥りかけて、帰り道に向かいかけて踵を返す、という馬鹿さ加減も報告しておきましょう(汗)。


大古井の千本桂16


なんとか撮影成功。
右端のわかりにくいのが私。
カメラとともに、簡易な三脚の為にポジションが微妙に調整できない勾配地なので、これも言い写真とは言いにくいですが、ご勘弁を。

なんとか千本カツラのスケールが伝わるでしょうか…

最後に、千本カツラの存在感を感じるものの一つ。
これも、カツラの巨樹を巡ったことのある方にとっては当たり前ではありますが、カツラは谷や沢を好む樹種です。
そのため、山中でも谷地にあるものや、今回の様に水の流れのすぐそばにあったりします。
中には、幹の真下から和泉の如く水が湧き出ているものもあります。

今回の千本カツラも例にもれず、向かって左側をこんこんと水が流れています。
それに気がつくと、静かな山に鳥の声と水の流れのリズムが現れて、少しだけ「クマ、ハチ恐怖症」から解放されるのです。(少しだけ、ね。)


大古井の千本桂9


見るからにまだまだ元気がありそうな千本カツラ。
これから数百年以上、この地域の神様であってほしいものです。
来る時の焦りとは反対に、落ち着いた清々しい気持ちで合掌し、千本カツラに別れを告げるのでした。

あ、シリーズはエピローグに続きます。


大古井の千本カツラ所在地

岐阜県高山市高根町大古井

岐阜県側より、国道361号線を長野方面に向かい、高根第2ダムを超えて700m位行くと左手に道後神社がある。(車だと行きすぎるので注意。ガソリンスタンド跡地に出ると行き過ぎ。)

大古井の千本桂4

その神社のすぐそばに、丁寧な「280m先 千本桂」の立て看板があるので、そこを登っていきます。

駐車は比較的車通りの少ないお社まえの道路端に・・・

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さぁ勇気を振り絞れ、俺! 280mの恐怖 〜大古井の千本カツラ(桂) 道程編〜

はぁはぁ・・・・・


流れる汗と、荒げる息遣いを皆さんにお届けできないのが残念で仕方ありません。
山と野生動物を怖れるビビりと、縄文杉を訪れた十数年前からして6キロほど肥えた(太った)体を、ぬかるんだ足元で先の見えない草むらを進めるには、文字であらわせないほどの呼吸を要するのです。

先に調べておいたサイトによると、案内板もあり迷うことはない、とありますが何のことない、途中から道が見えない!!!!

大古井の千本桂3

というか、道なんか無い!!!!!!!

うわぁ〜・・・出たでぇ、情報と違うパターン。
これが一番困る。
みんな行けるのに、なんで俺だけ・・・勇気振り絞ってんのに・・・
ビビりまくって帰りたい一心やのに、ここまで来たのにひきかえすんかぁ・・・

まぁ、後で思うと夏の雨や日照で元気に伸びた草木のためだと感じるので、時期的なものかと諦めるものの前回の「ビビり全開」で、クマよけに「ホーホー」奇声をあげている私には、引き返したくなるには十分の茂りようです(涙)
それに、この茂みには不届きな訪問者を跳ね返すがごとく、罠が仕掛けられているのです!!(笑)
いや、笑ってられない。
200%くらいの勇気振り絞ってるのに、草むらを進む体に刺すような痛みが走ってくる・・・

痛い、痛っ・・・うわ、痛っっ!!

連続で襲ってくるその痛み。
正体はこれでした。

大古井の千本桂2

やめてぇ〜!!!!!
なんやの、このトゲトゲ。
写真撮るのにつかむのも痛い。
(こちとら、いつ遭遇するかもしれないクマとハチとヘビと・・・うーん、それらにビビりまくってんのに・・・)
こいつらが群生しているおかげで、もう腕も足も針のむしろ・・・?!

実はここで、ハチに遭遇したらなんとか長袖で防ごうと思い着用してきたジャンパーが役に立ちました。
こんなの、半袖やったらもう無理です。めげてます。
意外なところでジャンパーに助けられながら、なんとか手に持った三脚の脚で針をよけながら歩をすすめていくのです。
こんなん、聞いてないけどなぁ・・・


いつもどおり、目的地がわからないとものすごく時間がかかっているように思うもの。
もうそろそろついても・・・280mくらいはきてるやろ、絶対・・・
そんな思いばかりが頭をよぎり、次の草むらを抜けて無理なら帰ろう、この次のこの先になかったら・・・・・
そんな思いを繰り返し繰り返したどり着いたのが圧巻。


大古井の千本桂6

人けがなく、ただただ水の流れる音と私の息遣いのみが、木々の間を行き来する空間に「それ」は存在していたのです。


やっと、やっとついたぁ・・・・(実際は15分もないくらい・・・)
はぁはぁはぁ・・・・・・


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木ぃクンmuku_mokuzai  at 13:15コメント(0)トラックバック(0) この記事をクリップ!