空を見上げて
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2016年05月

薪が売れると風呂屋が無くなる?!

風が吹けば桶屋が儲かる・・・

子供の頃は、なんで?!風がふいて桶屋さんが?!とおもった語呂もいいフレーズですが、現在の材木屋風に言うと「薪が売れれば風呂屋が無くなる」というような感じかな、とふと思った出来事が先日。

つい一昔ちょっと前まで、材木屋にはたくさんの木っ端と鉋屑がたまり、その「処分」に困るのが常識?でした。
家を建てる建築構造材の加工の端材や、室内の木を見せる部分に使う部材を仕上げたりするときにでる鉋屑です。
弊社でもっとも多かった時期は、倉庫の作業場に本当にうずたかく積まれた鉋屑と、パレットに積まれた木っ端が10パレットほどが常時残っているほどの勢いでしたので、「処分」は焼却とお風呂屋さんの燃料行きがお決まりでした。

そのため、お風呂屋さん行きの木っ端は毎回お風呂屋さんが取りに来てくれていた(無償提供なので)ものです。
しかしながら、住宅構造部材も工場で全て加工仕上げして納材されるプレカットという形態が主流になり、木っ端はみるみる減少しました。

たきもん


現在、一般的な建築ではプレカット加工は当たり前のように普及し、さらに室内に木を見せる部分はほとんどなくなったために、鉋屑すらまず出なくなりました。
そんな状況なので、「処分」にはそう困ることはなくなったのですが、反対に今まで一般の方に無償でお渡ししていた「薪やたきもの」などの燃料用にされる木っ端が集まりにくくなってきました。
先日も久しぶりに特殊用途の薪を分けていただくために、懇意にしてもらっている製材所さんに行ったのですが、すでにそこは有料で薪を販売されていました。

キャンプファイヤーや薪ストーブの燃料用などです。
少し郊外に行くと薪ストーブ用の需要も多いらしく、すぐに売れてしまうそうです。
本当に一昔前は、木っ端を引き取ってくれるというと、いくらでも持って行ってくれていいよ!!という感じだったのが、えらい違いです。

たきもん1


一般の方が有料でも薪を求めておられるのです。薪集めも手間のかかる時代になりましたが、昔では薪の一番の消費者だった「お風呂屋さん」の姿はもうそこにはありません。
そう、薪が「販売されるほど貴重?!」になってきた現在までに、街のお風呂屋さんはほとんどなくなってしまいました。
街中に少し背の高い煙突が見え、入口にのれんのかかった佇まいは本当に一昔前までの景色。

もちろん、広葉樹の薪は昔から販売されていますが、現在では針葉樹の薪さえも販売されています。
冷静に考えればそうでしょうね。
有名になった「バイオマス発電」などの燃料としても求められる木材ですから、「無償で」入手できる木々はほとんどなくなってきているのかもしれません。

 薪が売れれば風呂屋が無くなる・・・

街のお風呂屋さんが無くなっていったのは決して薪のせいではないと思いますが、針葉樹の薪さえも集めにくく、販売されるようになってみると、「あぁ、そんな時代になってるんやなぁ・・・」と昔のお風呂屋さんの顔を思いだしたのでした。

ウチもそろそろ薪、販売しよっかなぁ・・・・・・・・

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想いが届いていないことがあるらしい

前にも一度書いた事がありますが、ここ最近もたまに、問い合わせいただいた内容の、こちらからの返信がお客様に届いていないことがある事がわかりました。
正確には、迷惑メール処理されていたというものやサーバーではじかれた(?!)もの、もしくはなかなか届かなかったもの、などですがそれらはお客様が「連絡がないんですけど〜・・・」と再連絡を頂くからわかったことであり、もしかするとまだまだ未達のメールがあるのかもしれない、と思うと心配で・・・


弊社はご覧の通り(?)、商社さんや他のインターネットショップに比べて目立つ特価品やページ上での特別な仕掛けをしたりしていませんし、どちらかというと極力宣伝広告費を抑えています。
もちろん、宣伝しなきゃ知っていただくことはできないのですが、それは地道に続けているこのブログ記事や、とても熱心な方が夜中のネットサーフィンにて流れ着いて頂いたことによって御縁を頂く場合が殆どですし、もともと、無垢の木材を届けることで喜んでいただきたい!と思って始めていますから、間違ってはいないのです。


それでも、折角来ていただいたお問い合わせまで連絡が取れない様では、どうしようもありません。
そのため、勝手ではありますがもし、弊社からの連絡が3〜4日以上無い場合にはご連絡をいただければ有難いです。
弊社の方も、お問い合わせが迷惑メールに分類されないとも限りません。


折角の御縁、精いっぱいの返信をしています。
そしてその後は無理に様子を伺う様な連絡などはしていません。
読んでいただくことなく、届くことなく終わっていては悲しい限り。
皆さんがお問い合わせいただいた想いと、答えようとする私の想いが繋がる様に、「届いてないみたいですよ〜」の一声、よろしくお願いいたします。

戸田材木店戸田昌志からのお願いでした。


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北摂に息づく赤い魂 〜天王のアカガシ(赤樫)〜

アカガシという、木を扱う人でもほとんど見ることのない特殊材のことをつづってきましたが、今日はそのアカガシの巨樹を紹介しましょう。

アカガシは比較的寒さに適応した樹種であることはお伝えしましたが、今回のアカガシの巨樹が位置する場所は、大阪府の中でもほぼ最北、豊能郡能勢町の国道173号線が伸びる目の前のトンネルをくぐると、もうそこは兵庫県の篠山市になるという、境界地点に位置しています。

住所からすると、西日本有数のケヤキの巨樹である「野間の大ケヤキ」の近くなのかと思いきや、ちょっと離れているので、同じ能勢町だとは思えない距離感です。

さて、アカガシという樹種自体が木材としてほとんど流通していないことと、まさか同じ大阪府にそのアカガシの巨樹が存在するなんてことは想像していなかったので、ずっと会いに行けていないままでした。
巨樹といっても、それほどでもないのだろう、きっとちょっと太いなぁ・・・そんなくらいのもんやろう。
心の中でそんな決めつけをしてしまっていました。
ところが・・・・

天王のアカガシ1

もともとは神域とされていたと看板にあるとおり、大切にされてきたのでしょう。
そうでないと残らないのではと思われる、見事なアカガシが目の前に現れるのは、少し暗い針葉樹の森の中です。

天王のアカガシ4

どうしてこの2本だけが残っているのか?!と不思議に感じるほどに周りの景色とは全く異なる巨樹2本が並んでいるのです。
周囲は普段から人が入っていることが想像できる、整然とした林ですが、その中で天に向かって叫びをあげるような出で立ちです。

天王のアカガシ3

訪れたのは少しひやっとする時期でしたが、それとともに夕方であったこともあり次第に暗くなりつつある空と、国道のすぐ脇の山だというのに静かで、どこか切り離された空間のような感じがするのです。
それくらい、特異というか存在感のあるものです。

私自身、木や森は好きなものの、一人で山に入るのはあまり好きではありません。
材木屋といえども、森の勝手を知っているわけでもなく、熊やへびや蜂などはいつも怖ろしく感じるので、森の中や山中の巨樹はできるだけ行きたくないのですが、ここも同じような雰囲気。

天王のアカガシ2

その上、アカガシは想像以上に「雄叫び」をあげていました。
まるでこの世から天上の世界に向けて何かを訴えているような、そんな雰囲気です。
いや、もし宇宙人がいるのならばこんな顔をしているんだろうか?!というなイメージ。
よく樹木を切り倒したものを「丸太」と言ったりしますが、このアカガシは決して丸太とはいえないでしょう。
ごつごつしたその木肌から、なにか別のものがでてくる・・・いや、ハ○ー・ポッ○ーにでてくる人、の魂を喰らうディメンターのように、巨樹そのものに襲われんばかりの迫力です。

天王のアカガシ10

天王のアカガシ6

同じブナ科であるシイノキの(旧)日本一の巨樹である「志多備神社のシイノキ」のような圧倒的な幹回りで驚くというのではなく、2本が孤立して残っているそのタフさを感じさせる状況に、アカガシの木材としての強靭さを重ねてしまうのは、材木屋だからでしょうか。

天王のアカガシ5

その異形にばかり目を奪われがちなものの、このアカガシ、実は広葉樹の巨樹としては結構なノッポさんである。
ふつう、広葉樹の巨樹はノッポなもののあれどもずんぐりむっくりであったり、重厚感あふれる横幅の持ち主だったりするイメージなんだけれども、一見して表示されている樹高の22m以上ありそうに感じる上背である。

どれ、私と比べてみましょう。

天王のアカガシ9

このアングルでも結構距離あるんですよ。
ちょっと上りだから、自動シャッターが間に合わない距離。
じゃあどうやって撮影したのか?!
はい、助手がいましてね・・・息子です。このときは小学校6年生くらいだったかな。
小さな息子といえど、暗い森に入るには話し相手がいるだけで気持ちの違うもの・・・って、どんだけビビってんのかと笑われそうですが…

いや、そんな話ではなく背が高いのはわかっていただけるでしょうか。
もちろん、これくらいのものはほかにも存在しますが、希少なアカガシがこんなにも大きく成長しているのを見られるのはとても幸せです。

ちなみに樹齢は推定500年超だそうです。
その辺の貫禄は、この小ぶりな板根のような形にも現れています。

天王のアカガシ7

温暖な気候の土地で見るものだと思っていたカシ類の巨樹に、まさか大阪で会えるなんて思っていもおらず、またそれが貴重なアカガシであるなんて本当に驚きですが、植林された林の中で、周りの景色が変わっていくのを数百年も見てきたんですね。
もしかしたら、自分の周りにあった母木や仲間の広葉樹は、目前で切り出され針葉樹植林に移り変わったのだろうか。
だとしたら、残されたこの2体の個体が少し寂し気に感じてきて、撮影の後もどこか去りづらいような感情に驚くのでした。

アカガシ、その名前に負けない立派な巨樹でしたよ。ありがとう。


天王のアカガシ8


天王のアカガシ所在地

大阪府豊能郡能勢町

国道を篠山市に抜ける手前のトンネル入り口脇のスペースに駐車し山へ。真っすぐ鳥居のほうにはいかず、向かって左に進むと水道施設?!の建物があり、そこから人の道沿いに行くと数分で出会うことができます。


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特殊な木材のもつ性質 〜アカガシ その材について その参〜

ワインネタが絡みやすい「オーク」を題材にした、ナラとカシの違いについつい時間を費やしてしまいました(汗)。
そろそろアカガシをまとめていかねばなりません。

特殊用途が注目される重くて堅くて強い材であるアカガシ。
私の主戦場である建築用途としては殆ど活躍の場が無いのか?!というと、そうでもありません。
アカガシに限ったことではありませんが、カシ類が建築で多く用いられるところといえば、「込み栓」があります。

込栓図

上の図の小さな棒のようなもの、それが込み栓です。
用途って、こんなに小さいの?!というべからず。
木材同士の接合や嵌合の際につなぎ合わせの部材としてや、接合部の締め合わせ、そして地震などの時の木材の性能を十分に発揮できるようにするための「めり込み力」をひきだすための「堅い中の柔軟性」をもっているのがカシ類の込み栓の持ち味です。

現在の建築の多くは、木材同士を接合する時には金属製の金物を多く使用しますが、込み栓は昔からの木材同士の接合や嵌合にとても重要な役割を果たすもの。
もし、これがカシ類以外の樹種であれば、つなぎ合わせた当初はしっかりとはまるものの、その真価を発揮するべき時には摩擦力や圧縮力などの外的要因で接合部よりも先に破壊されてしまい、接合の力が出にくくなってしまいます。

木材同士の接合や嵌合で大切なのは、「粘り」です。
圧倒的な強度ではなく、じわじわと粘る強さ。
だからいきなり壊れることなく、ゆっくりと衝撃などの力を吸収しながら耐えるのが木材のいいところで、カシ類の込み栓は外的要因による力がかかった接合部において、接合材同士の粘る力を引き出す「めり込み」に耐える強度をもっていて、木材同士がめり込んでいくことで突然の破壊を防いでくれる役割を担っています。
それは強くても柔軟性のある木材、カシ類の面目躍如、なのです。
(込み栓などの技術は、試験データなどを元にした見解です。性能を担保するものではありません。)

そう、堅く強い中にも柔軟性と弾力性がある、と言われるのですがまぁそんなの実感として感じることはまずできませんが、昔の人はわかったんでしょうねぇ。
道具の柄には、カシ類が使われることはよく知られていますが、その中でも微妙に使い分けがあって、私の近くでは「かけや」といいますが、大きな木の金づちみたいなこの道具の頭にはアカガシ、柄にはシラカシが使われることが多くあります。

赤樫0

それは、衝撃が伝わっても割れにくいからだといわれています。
堅いけれども柔らか。そんな不思議な感覚を感じとっていたのでしょうか。
すごいですよね。

頭


割れにくさや硬さのバランスでいうと、カシ類のなかではイチイガシがもっともすぐれているといわれます。
アカガシが割れにくいことに対してシラカシは粘りがあるといわれすものの、さらにイチイガシは弾力性がありねばりがあることで、大きな力もしなやか且つ折れずに堪えることから、艪羽根にはイチイガシが最適だといわれています。
書籍の中には水質にも耐えるため、ということも書かれていますが、その辺りは先人の知恵として受け継がれてきたことなのでしょう。

他には前回も触れましたが、アカガシの色調や木目、光沢を生かして三味線の棹や床柱、銃床にもされていたそうです。
また堅い、ということは音の響きが良いために、日本の木材の中では拍子木に最適とされている材のうちのひとつです。
拍子木を打ったことのある人ならば、堅く重い木材同士を打ち鳴らした時の独特の音がわかると思います。

もちろん、私たちがカシ類でもっとも頭に浮かぶ用途が鉋台や鑿などの柄ですね。

カシ12

何度か、自分用の鉋台をアカガシで作りたいというお問い合わせをいただきましたが、鉋台はカシのほかには最適な材がない、と言われるくらいに重要視されている用途です。
また、そんなに問題になることはないものの、赤っぽい材が向かないところにはシラカシを使う、という使い分けもあったそうですが、材の流通が極端に細っている現在では、そのような使い分けはなかなかできるものではありませんね・・・
それに有用な木材ではあるものの乾燥は簡単ではなく狂いやすい一面をもっているので、丸太からの歩留まりは良いほうではないといわれます。

最後に、特殊用途というよりも強靭さの証明ともいうべき用途を忘れてはいけません。
それは車両材。
車台や車輪、また車輪の軸など常に振動や衝撃がつたわり、なおかつ摩耗にさらされるようなところに用いられているのが、その強さの証明以外の何物でもありません。
祇園祭の山鉾の車輪にもアカガシが使われているそうですから、見る機会があればぜひ、山鉾の足元観察してみてくださいね。

車輪

あ、あともう一つ意外なところで「ウメガシ」というのがあります。
梅と樫?!ということではなく、カシで埋める、ということです。
何のことかというと、最近はあまり見られないと思いますが、和室の入り口などの敷居の溝にはめ込んで、扉の滑りを良くし、なおかつ幾度の摩耗にも減らずに使えることから、重要な用途の一つだったようです。
もちろん、どこでも入手できるものではなかったでしょうから、桜の入手しやすいところでは、一般的に桜を使っていたことでしょう。
(敷居の滑りをよくするものを、桜の用途から「サクラ」と今でも呼ぶことがあります。)

最後の最後に、カシは薪にもいいといわれますが、そこはどのようなものかはいまだに検証できていません。
こんな貴重な材を薪にできるような環境にはないからです(汗)。
もし、アカガシを含むカシ類の燃え方を検証したことがある方、結果教えてくださいね。

長々と続いたアカガシ。
その特殊性ゆえに、どこでも見られるものではないですが、実は自分の住む地域の近くに、そのアカガシの巨樹が存在するなんて想像もしていませんでした。
希少材であるアカガシで想像するスケールをはるかに超えたその姿を自分の目で確認するまでは、にわかに信じがたかったものの、大阪の北摂と言われる地域の北の山々では、古くから薪炭材、特に炭焼きが盛んだったことから、ブナ科の木材が繁栄した名残なのかもしれません。

男の子の季節である5月をまたいでお伝えしてきたアカガシシリーズ、次回の最終回は、北摂に残るアカガシの巨樹「天王のアカガシ」を紹介して締めくくることにしましょう。

カシ11


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特殊な木材のもつ性質 〜アカガシ その材について その弐〜

どうしても、カシとナラを区別したいのは変わり者材木屋だからでしょうか・・・
いや、単純にそれぞれがとても大きな特徴を持っているのに混同されていることに、どうも納得できないところがあるようです。

いや、材木屋だけではなく、一般の方も多くの方が知りたいと思っているはず!

前回の最後、ナラは環孔材でカシは放射孔材であるといいましたがその違いは木材の木口をみればわかります。

カシ8

アップなので少しわかりづらいですが、これはナラの木口面の写真。
よく見ると、小さな穴が連続して並ぶことで年輪のような環(わ)を描いているのがわかるでしょう。
これが環孔材です。孔(あな)が環(わ)になる、ということ。

では、孔が放射状になるとどうなるのか?!
アカガシの断面がこれ。

カシ7

これはさらにわかりにくい・・・というかナラほどにははっきりと見えにくいのですが、非常に小さな穴が年輪のような黒い筋の間に並んでいるのが見えるでしょうか?
その穴が放射状に配列されているのが放射孔材です。

で、その違いを木材の表面で見るとこんな感じ。

カシ10

これはナラの柾目にでる虎斑。
幾何学模様、というか水面のさざ波のように美しい輝きを見せる、なんとも言えない木目です。

一方のアカガシ。

カシ6

むむぅ〜。
なんともあっさりとしている。
板目面よりもちょっとすじが太くなったのと、若干斑の幅方向が「液体をこぼして染みになっちゃったぁ・・・!」というような感じで、ナラのような華やかさには欠けるというところ。

カシ類の斑というのは、「樫目」とか「ゴマ斑」とかいわれますが、ナラ類のように虎模様にはなりにくいのです。
それは斑模様の元である「放射組織」というものの並び方に由来しているのですが、それこそがナラ類とカシ類を見分ける最大のポイントになるのです。
もちろん、カシには虫害などの影響による「ボタン」と言われる黒っぽいスジが出やすいので、それも一つのポイントですが、慣れると斑をみればある程度判別できるようになります。
ケヤキとニレの見分け方よりは簡単?!でしょうか?!

ただ、斑の華やかさではナラ類に一歩ゆずるものの、特に赤樫の木目や色は視覚的に重硬さと堅牢さを印象付けるために、前出の木刀や並んで特殊用途の三味線の棹などの用途には、とても珍重されています。
もちろん、堅く強く重いことが重要であることは言うまでもありません。


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特殊な木材のもつ性質 〜アカガシ その材について その壱〜

アカガシシリーズ、やっと?!アカガシの木材のお話に入ります。

アカガシ(赤樫) ブナ科
学名 Quercus acuta (Quercus ナラ属)
カシ属とする場合は、Cyclobalabopsis となるとのこと。

カシ3


別名をオオガシというほどに大きく成長(直径1m、樹高25m)するものもある(次回以降に紹介の巨樹参照)ものの、仲間であり木材で見るとより「アカガシらしく見える」イチイガシのほうが一般的に大きく長生きであるといわれる。
常緑樹で、ある程度の高所にも分布している種。
ちなみに、カシを英語名表記している木材文献は少なく、表記してあったとしても前回お伝えしたとおりに、「oak」が一般的でナラを紹介しているページとの違いが言及されていない場合がほとんど。

アカガシ1


ここで先の「常緑」が大きなポイントで、カシのそれにたいしてナラは落葉樹。
つまり、葉っぱを落として冬を越す種なのです。
諸外国でオークと言われるのはほとんどがナラなどの落葉樹であると推察されます。
それは、写真や様々な絵画などを見ても明らか。
なので、私が考えているのは oak は落葉のナラ、そしてナラよりも厚い葉をもつ常緑であるカシは ever green oak というのがより現実的だということです。
もちろん、それでもすべての樹種を分類することにはなりませんが、少なくとも混同されている2種を区別することはできると考えています。

アカガシ2


アカガシは先の通り常緑のブナ科の樹木ですが、比較的常緑樹が好む温暖な気候の場所だけではなく、ある程度の寒い地方にもその生息が知られています。
常緑樹には珍しく寒い地方にも適応できたのは、冬の寒さの中でも冬芽や葉が凍りにくいからだといわれています。

一方、木材となった時のアカガシは比重0.87(最大1.05)と言われ、日本でもっとも重たい木4傑の中の一つです。
その4傑中で、もっとも木目がはっきりしているとも言えます。
ナラが環孔材であるのに対し、カシは放射孔材です。つまり、環のように道管が並んでいる環孔材と放射状に並んでいる放射孔材という決定的な違いがあるのです。
そうです、なにも混同することはないのです。
そういった明らかな組織の違いがあるんだからちゃんと見分けてつかいわけてほしいもの。

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いつまでも変わらぬ誤解 〜ナラとカシ アカガシ編〜

最近、ちょっとばかし古い歌を聴くのがストレス発散になっていて、「いつまでも変わらぬ愛を」という曲を聴いていました。
いい歌です。曲調も歌詞もとっても好きです。それとともに、想い出もよみがえってきます。
音楽というのは、そういった面からも心のよりどころとして必要だと感じています。

前回からつづくカシのお話し。今回は音楽の話ではなく、「いつまでも変わらずに気になっている」どんぐりのお話しなのです。

まず、一口にみなさんが「どんぐりの木」と称しているのはブナ科の木材、こと球形で帽子のような「殻斗(かくと)」と呼ばれるものをかぶっているものができる木の総称のように用いられています。
どんぐり拾いの時、気にしていないかもしれませんが大小さまざまで、殻斗という帽子にもいろいろな模様があるのですよ。
それは、同じ場所でも様々なブナ科のどんぐりの木があるという証拠で、実際私の家の裏でも4種ほどのどんぐりを採取することができます。

ブナ科の仲間には大きくわけて、ナラ類とカシ類、そしてシイ類と栗があります。
それぞれがそれぞれの形のどんぐりを作ります。
ふつうはそれらの違いも気にすることではないのかもしれないですが、どんぐりの違いよりもその材の違いは大きく気になるのです。
それは、ワインをちょっと詳しく語る場合に切っても切れない関係にある樽のお話に関係する、オークのこと。

今までも幾度か、「オークという英名は、カシを意味するものではない」ことを取り上げてきました。覚えてらっしゃるでしょうか?
そう、オークは樫の木(カシ)ではないのです。
どのワイン誌をみても、またワイン売り場に行っても、ワインにこだわった広告を見ても、「樫(かし)樽熟成」とか「樫(カシ)の樽にこだわって・・・」などと表記されています。
これ、ものすご〜く気になります。
正確には、オーク=ナラですので、ナラの樽のはずなんです。
だからなんやねん、と言われればそれまでですが、木にこだわるワイン好きな人間としては、どうしても気になるのです。

カシ17

ワインの専門ページにも、樽の材質に関する記述がありますが、ほらね・・・

先にもあったように、両者は同じ科に属する樹木で木材を見た場合にも非常によく似ていますから、混同されることも納得はできるのですが、ワイン樽としての材質は全く異なると推察します。
楢(ナラ)がワインの樽に使われるには理由がありますが、まずカシとの大きな違いはその香り!
いや、これが最大の違いだと言いたくなるほどに違います。

ナラの香りをじっくりと意識をして嗅いだことのある人は少ないでしょう。
しかし、高級白ワインに出るとされる「樽香(たるこう)」や、熟成した赤ワインの渋みを伴うまろやかな甘さは、まさしくナラの木材の香りから連想できる味わいだと感じています。
カシは、そのような香りは感じられません。
オークという中にも、大きく分けてホワイトオークとレッドオークがありますが、それらにしてもホワイトオークでなければならないのですから、やはりカシではだめなのです(いや、ダメなはず・・・)。

蛇足ながら、今まで私が出会ったレッドオークには、ワイン好きの期待するような樽香を感じたことがないので、それもホワイトオークでなければいけない理由の一つかもしれません。
そして、レッドオーク=赤樫(あかがし)ではありませんよ、念のため・・・

いつまでも変わらないこの誤解を、できるだけ早い時期に、ワイン誌だけではなくワインメーカーの方も、オーク=カシの神話を崩して現実を見てもらいたいと思います。
ほんと、材の香りをかぐとすぐわかるんだけどなぁ・・・

カシ18


蛇足ながら、ワイン好きのかたは機会があれば「カリン」という赤っぽい木材の香りをかいでみてください。
果樹のカリンではありません、木材のカリンです。
そうすれば、熟成赤ワインの持つ甘い香りを想像できるはず。
私なんかワインが飲みたくなると、いつも倉庫でカリンの木材の香りを・・・否、それくらい似ているということです。
植物も、それからできる産物も自然のものはすごいなぁ、と思ってしまうのです。

アカガシ、もちょっと続きます。

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神話の赤い刀 〜アカガシ〜

前回からのもう少し木刀のお話。

もちろん、木刀や剣士が現在の世の中でも男子のみを意味しないことは注記しておかなければならないかもしれませんが、男女ではなく神々の時代においてもすでに、カシは存在し木刀として用いられた記述もあります。

現在でも地名の残る橿原のように、神話にゆかりのある地においてカシが登場するお話が伝えられています。
それらは古事記にでる(カシ、と仮名があてられているらしい)と日本書紀の橿からきたものだそうで、その中には「密かに赤で偽りの刀を作って・・・」という記述があり、偽りの刀=木刀(本来刀は金属製だから)がアカガシで作られたことを想起させるものになっています。
また別のお話では、赤は「いちひ」と読まれていたらしく、赤いちひ=イチイガシやアカガシのように、材色が赤色に感じるカシを指したのではないだろうかというように考えられている。
(因みに、針葉樹のイチイとは別物です。)


カシ5

因みに、先のイチイガシとアカガシは見分けが非常にむつかしいです。
というより、同じ物とされているおそれもあります。
というのは、アカガシよりもずぅっと「赤樫」らしいから、です。
材色が紅色を帯びていることからアカガシという、とされていますが、書物をもとにその情報だけを覚えていると、まさしくイメージにぴったりなのはイチイガシです。

私が手に持っているのがイチイガシ、後ろの赤白の材がアカガシ。
イチイガシの方が斑まで赤く感じて、やっぱりどう見てもアカガシの名にふさわしい・・・

アカガシ00


そのため、中には加工されて「アカガシ」として販売されているものも今まで多く見かけました。
それくらいによく似ています。


もうひとつ、カシとよく混同されるオーク(ナラ)も、ヨーロッパの神話にはよく登場します。
カスクオークの記事でも色々と触れていますが、ヨーロッパにおいてオークの巨樹古木が多いのは、日本においての神話に出てくるスギやクスノキの巨樹古木が多いのと同じだと思います。
やはり如何に神話といえど、古くから人々の生活の中に根差しているかという事を推し量るには十分なようです。

洋の東西で神話に登場する両者ですが、実は皆さんのしらないところで両社は非常に混同される場面が多いのです。
材質も違えば、詳しくみると材の表情も違うにも関わらず、様々なところで混同されています。

みなさんは、「どんぐり」は知っていますよね?
かわいらしいとんがり頭の茶色いつぶては、森の豊かさを感じさせてくれますし、古くは食料として、子供の遊び道具として生活にも多くかかわってきたものです。

イベント5

そうそう、びっくりされる方も多いですが、今でも食用で当たり前のように食べている「栗」もあれは、どんぐり!です。
どんぐりを漢字で書くと「団栗」ですから、まさしくあの丸ぅい甘栗が想像できることでしょう。
そして、カシもナラもどんぐりの木です。栗の木もどんぐりの木です。
それらの「どんぐり」のできる木は一般的にひとまとめにされて、「どんぐりの木」と称される場合が多いのです。(栗は別。)
材木屋さんですら、そうやって販売されていることがあるくらいだから、細かい区分けはむしろ必要ないのかと思ってしまいますが、私にとっては絶対に一緒にしたくはない理由があるのです。

もうお分かりの方もあることでしょうけど、もったいぶって次回に持ち越しさせていただきます(笑)。
混同されるどんぐり・・・萌えてくる話題!


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男の子の日には鯉より刀兜 〜ナラに隠れたカシ アカガシ〜

今年は冬が短かった(これを強調したい・・・)代わりに春が永く、桜を楽しむ時期が2週にわたり、季節を満喫できました。
そうこうしているうちにやってくるのが鯉のぼり。

カシ16

うちでは昔から鯉のぼりをあげています。
最近ではなかなか「屋根より高い」鯉のぼりを見ることがなくなりましたが、だからこそ弊社の前を通るご近所の子供たちは「あ、あったぁー」と、毎年のその光景を楽しみにしてくれていて、こちらもうれしいのです。

さて、その鯉のぼりもただの飾りではなく端午の節句の一つの意味あるものですが、鯉だけではなく兜を飾るところもありますね。
私はあまりなじみがないのですが、男の子の節句ということであれば、そちらのほうがより勇壮な感じがして、古来の男の子のイメージからくるものにはあっているように思います。
兜といえば鎧があり刀を携えるのが武士ですが、もちろん明治以降の廃刀令により刀自体を持ち歩くことなどできませんが、剣の道である剣道は現在も盛んですし、剣士の出で立ちや構えを拝見していると、こちらの身も締まるような感じがします。

剣士の持つ刀の中で木刀がありますが、読んで字のごとくで木の刀。
木の刀であるその木刀の樹種、じつはよく知られています。
なぜかというと、特殊用途で「これが一番!」という性質を利用されているからです。
一番の理由で使われているその樹種は「樫(カシ)」です。

カシ1

樫(以下カシ)はかなり重硬な木材で、だからこそほかの樹種にくらべても用途もかなり限定的な木材です。
その限定的な用途のうちの一つが木刀で、ほかの樹種の木刀もありますが、有名なのはやはり赤樫(以下アカガシ)。
赤み(実際は赤茶色)を帯びたその材色が重硬感を相手に想起させる上に、もちろんのことながら重く硬いことと、やはり樫類の特性である「手になじむ」性質から振りかざす用途に用いられたことと思います。

木刀でいうと、ビワの木も木刀としての特殊用途をもっていますが、こちらはちょっと物騒なお話で、ビワの木刀でうたれると折れた骨が腐る、と言われています。
これは木材の性質というよりも魔法のようなお話ですが、アカガシもビワも木刀として所持する場合は、警察への届け出をしなければならない時代があったといいます。

カシ3


そりゃ、アカガシのずっしりとした材を知っているものならば、あんな材の木刀を振りかざされる怖ろしさは、届けが必要なのも納得しますが、相手のいるものではなく、精神を統一し己を見つめる剣士のもつ木刀としてならば、これ以上に身の引き締まるものはないと推察します。

戦国の世では、若い男子が刀を携えることで、男子としての成長と心構えを自身に植え付けていったのかもしれません。


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