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2014年04月

原始の森 春日山のナギ伐採


先の新聞記事に「春日山原始林 1200年ぶり伐採へ」という記事が大きく出ていました。

春日山原始林とは奈良県において、有名な春日大社を抱える広葉樹を中心とした(とされる)、都市近郊に残る珍しい原始林として1955年に国の特別天然記念物に指定され、1998年には周辺の6社寺とともに世界遺産の「古都奈良の文化財」に登録された名所です。

大社 2

その世界遺産にも登録されている森を伐採する、いったいどういうことなのか?!
世界遺産であるという以前に、基本的には平安時代の841年から勅命により伐採が禁じられている春日大社の神域。
そんな場所の木を伐採するというのは異例なことです。伐採だけではなく、人の手が入ること自体も、原始林にとっては良くありません
よく言われるのは、一度人の手が入った(造林や樹種転換他の整備など)森はずっと人が手を入れていかないといけない、ということです。
もちろん、とても壊滅的な森になる、というような悲観的な意味ではないですが、意図的に整備された森を維持するには、人が関わり続けないといけないということです。

天然林と原始林(原生林)というのは意味が全く異なります。
天然林というのは、植林などではなく実生(自然に種がおち芽が出る)の山を指している言葉だと解釈すると、人が枝打ちや伐採整備の為に介入していても、天然は天然。
かの有名な木曽桧でも、天然林=自然のままと思われがちですが、樹齢数百年の実生木の他に、人の手によって植えられたものもあり、「自然のまま」というわけではありません。

一方の原始林(原生林)というのは、基本的に人が入っていない原始の姿の森を指していると解釈できますから、その森に入って木を伐るということが、現在だけではなく将来に与える影響がどうなのか?そんな事も考えますが、どうも入らざるを得ない状況の様です。

そうするともしかして、稀少な原始林から貴重な広葉樹丸太がわんさかでてくるのか?!?、と不謹慎な推測をしてしまいましたが、今回伐採するのは広葉樹ではなく針葉樹の「ナギ」という樹木だそうです。

事の流れは簡単で、奈良公園や春日大社周辺に行かれたことのある方はお分かりだと思いますが、あちらこちらにいるシカが広葉樹を食べてしまうから反対にナギという樹種が増えた、そのために増えたナギを伐採する(正確には密集地の高さ数十センチから2m程度を伐採)ということです。
シカも終戦直後は約80頭ほどだったのが、今では1100頭が生息しているそうで、餌ももらえる環境ではこれからも増え続けるのかもしれません。

なんかこの流れ、先日の「シカが先か、人が先か」の記事ににていますよね。

今回は周辺で守られているシカが増え、その代わりに大切な原始林の様相が変化してきている、というなんとも皮肉な出来事です。
春日大社原始林近辺のシカは「神様の御使い」ですから守られた存在ですし、原始林もまた人が入らずにそのままの状態で保たれた場所です。
どちらも守っていくべきもののはずなのに、そのバランスが崩れてしまっていたのでしょう。

8世紀にナギが春日大社に献木された後、原始林に広がったという説があるそうで、県などによると樹齢は数百年のものも存在し高さ20mまで生育しているということ。(文献によってはもっと昔の枯れ株もあるとか?!)
そういえば、春日山の巨樹ガイドには、幹回り3mを超えるナギがいくつか記載されています。
それ以外にも群落のような場所があるということなので、百年、二百年以上の月日をかけて広がっていったのでしょう。

ナギについての詳しくは長くなるので次回に持ち越しをさせていただくとして、ナギが原始林で問題になるほどに生育する理由は、「ナギラクトン」という
動物の嫌う成分を分泌するため、他の広葉樹の様にシカの食害を受けないからだそうです。

原始林なんだから、ナギが増えるのもそのままにしておく方が自然でいいのではないか?!、そう思うところもあるかもしれませんが、このままいくと数百年後には原始林は針葉樹の森になってしまう可能性もあるといいます。


もともと樹木には日陰でも成長しやすい陰樹や日向を好む陽樹、荒れ地を好むものや密生地でも育つことのできるものなどがあります。
以前とりあげたセコイアなどは、山火事の後に初めて芽吹くと言われます。巨人に育つために周囲の環境が整うまで待っているとしか思えません。
木々を含む自然そのものが、自らの形を変えていく術を知っているのでしょう。
そういった、一見自然が壊れ後退し、まったく違ったものになってしまうと目に映ることも、地球の営みの中では本体の姿なのかもしれません。

土の大地をアスファルトで固め、山を切り開き、海を埋め立てて生活する人間も生きていく上での営みに変わりはないのですが、その反面で環境的に今ある自然を維持しようとしていくのも人間が出来ること。
シカの食害も生きる上でのことで、わざわざ自然破壊しているシカなどいないはず。
みんながそうなんですが、やはり丁度良い状態でバランスをとっていくというのはとても難しいことですね。

自然保護として人が入るのか、それとも自然をそのまま見届けるのか?!
もしかしたら、これは自然界の自己淘汰なのか?!神様の使いであるシカが広葉樹を減らし、現状の環境変化と何百年先の未来をみて森林の更新作業をしているのではないか?!!
そんな神秘的な妄想すらも浮かんできますが、シカ以外にもナラ枯れの被害も深刻化する恐れのあると言われる春日山原始林。
最善の結論というものを探っていくしかないのでしょうが、どう動くにせよ今後の様相に注目です。


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よみがえる雄姿 紀ノ川神代樟in紀伊風土記の丘


以前から出てきたという事実は知っていたのですが、それからどうなったのか気になっていた木がありました。
それも、知らないうちに結構とりあげられてたみたいで、メディアでも報道されていたのですが、先日やっと会いに行くことが出来ました。

紀ノ川神代樟 3



宇宙船ではありません。
もちろん小高い丘でもありません。木の株です。
大きい・・・・!!



高さ7m、直径3.9m、幹回り12m

これは、平成23年9月の台風12号によって和歌山県は紀ノ川に1300年ぶりに姿を現したクスノキです。
いわゆる材でいうところの神代木です。

紀ノ川神代樟 6


このクスノキは、今から約1600年前に芽生え、樹齢約350年を数えると言われるものです。
この木がこうして見える大きさになっていた1300年前といえば飛鳥時代頃。
やはりその時には、このような巨木が紀州には多く存在したのでしょうか。
紀伊国=木の国、と称された和歌山だと納得です!
以前に製材されたことを紹介した、同じく紀州は有田川に現れた「紀州有田川神代樟」(勝手に命名)も、同じく和歌山県から出てきたものです。

有田川神代樟


今でも大阪府堺市や泉南地方では樟の巨木を見る事が出来ますが、そんなクスノキ達が林立していた時代があったのかと思うと、思わず心震えます。

また、このクスノキが珍しいのは巨樹であり根株として残っていること。

紀ノ川神代樟 5


神代として出土するものは、昔の火山活動や洪水などで立木が折れたりして流され、これだけ大きな株の部分がそのまま見つかるということは稀だからです。
もちろん、魚津埋没林博物館の様に海中埋没林の場合は見事に根がそのまま残り、本当にエイリアンの襲来かと思うようなおそろしく感じる程の存在感を見せつけてくれますが、殆どの土埋木はここまで見事な根を持っていないはずです。

紀ノ川神代樟 4


しかしながら、樹齢は約350年と推測されたそうですが、クスがいくら大きく成長する樹木だとはいえ、このスケールからいくと優に500年オーバーかと思っていた想像程ではなく、もちろん確定ではないにしろ大きさと樹齢とのギャップを感じるほどの大きさ、と言えるでしょう。

その巨躯は大きさのあまり、移動させる道路事情を考慮して3分割されて運ばれてきたといいます。
その為に、3つの胴体は展示の為にボルトで固定されています。
いっそのこと、ヘリコプターでそのままの状態で運んで欲しかったなぁ・・・と思ったりしたのですが、平成24年の7月に川から引き上げる折、25tクレーンで失敗し70tクレーンでもワイヤーが切れ、3度目の正直の70tと50tの2台による連携でようやく川岸に引き上げる事ができたという話を聞くと、おそらくヘリも飛べないのかもしれません。
というか、街中に落ちたりしても大変ですし、現実は無理ですけれど・・・

紀ノ川神代樟 1



クスノキは紀伊風土記の丘という施設の入り口前に展示?!されているので、その大きさの為すぐに目につくのですが、普通は大きさばかりに気をとられがちです。
が、この株はクスノキ。
クスノキと言えば、昔は虫よけ等の為に材から「樟脳」を採取していたという位に独特の香りを持っています。
それは幾千年を経て土中・海中・川中にあったとしても絶えることはありません(今まで見た中では・・・)。
だから、施設の風向きによっては「神代樟特有の香り」が漂ってきます。
予備知識がないと、近くの花か何かの匂いがえらくキツイ日だなぁ、と感じるかもしれませんが、通常のクスノキの様な「メン○レー○ム」を彷彿とさせる香りではなく、もう少し柔らかい涼しげな香りがします。
この香りがとても好きで、自宅のお手洗いはクスノキのカウンターと神代樟の敷き板の香りで満たされています。

いつも自宅でその香りに慣れている同行した子供達はすぐに、「めっちゃ匂いするぅーー!」と言っていました。
是非その香りを体感してもらいたいものです。
どこかの角度からは香るはずですから、廻りを一周してみてくださいね。

紀ノ川神代樟 7


もう期間が迫ってきていますが、このクスノキの発見から展示までの足跡を追った写真展が、同施設で5月6日まで開かれています。
傍には移動の時に切り落された樟の枝の部分が展示されています。
原則触ったりすることはできません(でも普通に触れる・・・)が、匂いをかいだり
することが出来ますので、期間中にお出かけの方は施設内部も見学してみてください。
入館料も驚きの大人190円!!しかも子供無料。
安すぎます。ありがたや・・・

紀ノ川神代樟 2


もし、入館まではいかなくとも、このクスノキが展示された時に配布されたと思われる資料を受付傍の資料販売棚で見る事が出来ます。
300円で購入できますから、それだけでも購入したいものです。
写真展に出ている写真も、掲載されています。

パンフレット

そして、その写真展を通り過ぎると別の展示になるのですが、ちょっとストップ!
木に興味のある方ならば素通りはされないでしょうが、別の展示に移る入り口の両端にこれまた興味深い丸太が2本。
どう見てもクスと同じく神代丸太。
(写真撮影禁止の為写真ありません。残念。)

綺麗に年輪を見る事が出来る事からクスノキとは異なる針葉樹である事が想像できますが、では一体何なのか?!
最初に思い浮かぶのはスギ。
神代といえばスギ、と思う位に神代木でも多くを占める樹種ですが、念の為に香りの確認を・・・・・・・・

おぉ!!この香りは・・・
息子達曰く、「コーラの匂いがする!!コーラや!」

流石は我が息子・・・正解!!!

私も同じく「コーラ、若しくは似た炭酸飲料のサイダーの様な香り」と表現しているその神代は、「神代桧」です。
神代の樹種の中でも珍しい神代桧が、何の説明もなく2本もゴロっと立ててあるのは何かわけでもあるのか?!
どこから来たものか?!
興味が尽きません。

我慢できず、ご存じかどうかわからずも受付のおねぇさんに聞いてみました。

そうしたら、以前に「熊野地方の展示」を行った時に、その地方の方から「不要だから持って帰ってもいいよ」といって頂いてこられたものらしく、これと言って謂れもなく、また、どうして熊野の方が持っておられたのか、保存はどうされていたのか、などは謎のままでした。
当時を知る学芸員さんも岩手に転勤されたということで、それ以上は知ることができませんでしたが、稀少な神代桧を素通りするのは勿体ない!
また、万が一処分されたりすることのないように、おねぇさんには「珍しい神代桧ですから、大切に保管展示してください」とお願いをして帰りました。

おねぇさんは「僕たち、木が好きなん?!」と聞かれていましたが、一応「木が好きなのはお父さんです・・・」と言っておきました。
もっと、木が好きな人に見てほしいもんですね。

紀ノ川神代樟 9


またこの施設は、館内だけではなく敷地内を散策できるようになっていて、樹木や花を見たり、少し時間をかけた散策コースなども設定されていますので、これからの季節緑の中を爽快に歩く事が出来ますから、今回は時間の都合でそこまではいくことが出来なかった私も、次回また訪れてみたいと思っています。

蛇足ながら、この施設の近くには木の神様とされる「五十猛命(いたけるのみこと)」をお祀りする「伊太祁曽神社」があります。
五十猛命は、日本に木を植えられた神様として知られていますから、神代(かみよ)のクスと対面した後は、木の神様を拝んでいかれると良いのではないでしょうか。

しかし、今回の様なクスノキが現在も生きていれば、本当にそれその物が神様の様に感じます。
巨樹に会うといつも感じることです。
発見から移設のニュースを聞くまでは、どこかの市場に製材されて出てくるのではなかろうか?!と気が気ではなかったのですが、材にならず保存されることになって良かったと思います。
施設を訪れる木に興味のなかった方も、このクスノキを見て縄文飛鳥の歴史とともに樹木にも関心を持ってもらえるといいなぁ、というのが感想です。

キリスト教のイエス様ではないですが、時代を超えてよみがえった神様の様なクスノキ。
現代の私たちに何を伝えてくれるのか・・・
それは受け取る人次第・・・

紀ノ川神代樟8



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なんでそこに木が?!・・・ 


先日、じっくり読めていなかった新聞をとりだしてきて眺めていると、「公園100選」木々伐採も、という見出しがありました。
小さな表題には、根が遺構一部破損、となっています。

気になって読み進めると、大阪府枚方市が計画する国特別史跡・百済寺跡の再整備を巡り、約1700本ある木々のうちで遺構に関係するものを伐採する必要があり、景観が変わってしまう、という市民の声に直面しているとのこと。

問題の跡地は、1967年に史跡公園第一号として整備された際に、府教委があらかし2200本などを植栽した後に、市が松や桜なども植えていて、約1760本が現存しているそうです。
2006年に「日本の歴史公園100選」にも選ばれていて、市民の方の憩いの場になっているという話。
それが、今年度再整備の為の市教委の調査の際に、西塔跡に植えた直径約1mに育っているクスノキ2本の根が、塔の土台(基壇)を壊していることがわかったらしく、他講堂跡にも直径50cmに育った松が遺構に影響しているということもあるそう。

市教委文化財課は、「整備当初は、樹木が遺跡に悪影響を与える認識が薄かった。保存に影響する樹木は伐採するしかない」として、「処分」する樹木の選定を進めているそうな。
文化庁記念物課は、「遺跡の重要性を考慮すれば、やむを得ない」としているそうですが、いかがなものでしょうか・・・

現在は、花見を楽しめる桜はできうる限り残す方針だそうですが、その他殆どは伐採になる見込みだそう。

ん〜、納得できんなぁ・・・・
が正直な感想。

確かに、遺跡遺構と樹木の天秤ならば、一般的には前者を優先する方が歴史的重要性は保存されるかもしれない。
けれど、市教委のおっしゃるように「認識が甘かった」のか、いや明らかに樹木の事を考えていなかったか、邪魔になれば伐採すればいい、という事で植えられたのではないかと邪推したくなってしまう。

話は大きく膨らんでしまうけれども、巨樹巨木を巡っていると「寿命でもなく立派なのに伐採されている」物を多く見かけるようになります。

長沼神社のケヤキ伐根

それらの殆どは、「枝が落ちてくるから」や「根が本堂の基礎を割って侵入し、建物が持ち上がってしまっている」とか「基壇をこわしてしまった」と言ったものが殆どです。
もちろん、寿命を全うし倒れることを予期し伐採されることもありますが、殆どが今回のお話と同じように、社殿や境内石段などの近くの巨木が人間の建てた物に干渉するという事で伐採されます。

四ツ屋伊勢社の伐採ケヤキ1


四ツ屋伊勢社の伐採ケヤキ2


極論、木を伐採するのが悪いというわけではないのです。
建て物の近くにある巨樹は、木の方が先か、若しくは実生ではなく何らかの目的(神木として、門の代わりとして等)で植えられたもののはず。
それが邪魔になって伐採するというのは、聞くたびに辛いです。


特に、今回の場合は何百年の巨樹というわけではないので、「想像以上に大きくなった」わけでもないはずですから、明らかに樹木と自然の成長を考えていなかったものだと思ってしまいます。

もちろん、人間目測を誤ることがありますので責めるようなことはできませんが、これからはどこであれ、植えた樹木が百年単位以上で寿命を全うできるような植生計画にしてもらいたいものです。

伐採してしまうならば、1m程の直径の材となるクスノキ・・・
第二の生を受けて活躍できる場所をさがしたいですね。
他の樹木もできる限り次の生を受けることを祈る事にしましょう。




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ゴールデンウィークのご案内



もう皆さんは予定ばっちりでしょうか、ゴールデンウィーク。
ニュースでは、消費税アップの影響で、消費は少し控えられる連休になるのではないかと報道されていたりしますが、ここぞとばかりに使われるかたもおおいのでは?!

さて、本年の弊社通常営業がお休みになる日はカレンダーの赤い部分です。

黄金週間


ショールームは期間中も別途ご予約の上お越しいただく事になりますが、倉庫は閉まっていますので、別途サンプルや木材をご覧いただくことはできませんので、ご注意ください。
3月まであっという間だったと思ったら、今度は5月。そんなこんなで多分6月で半年もあっという間、となってしまいがち・・・

今年こそは時間を有効に使えますように・・・

ショールームにお越しの際はご予約を、また木材利用ポイントの申請にお越しの際には営業日と時間を必ずご確認の上お越しいただきますように、よろしくお願いいたします。



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重要なのは、年月か大きさか?


近頃、一時期に比べて弊社に来店頂くお客様の割合が、ご近所の方と弊社記事を見てから来ていただいた方と半々位になってきました。

どちらにせよ有難いことなのですが、やっぱり記事を見ていただいて来て下さる方とは話がスムーズに進むことが多く、決して手抜きをしているわけではないのですが、とてもすすめやすいのが事実です。

たまに、年配の方でパソコンを触らない方や、調べることなしにふらっと入ってこられる(とはいえ木を探している目的はある)方の場合は、用途から樹種から寸法、要望、数量、材の程度などなど、様々な事をたずねながらの進行になるので、少々時間がかかったりします。
それはそれで全く問題ないのですが、そういう時に限ってある程度材を絞り込んでいってお値段をお話すると、「えぇー、そんなにするの?コレ?!」となる場合が少なからず存在します。
お客様にとっては希望を伝えているだけなのですが、希望に近づけていくと、やはりその辺に転がっているような木切れ、というわけにはいかず色々と提案するわけですが、彫刻にしろ趣味の製作にしろ、「これくらいの大きさなら安いものだ」という先入観もあるのかもしれません。

「端材でいいんで」
こうおっしゃる方は少なくなりましたが、どんな材でも端材=廃棄するもの=無料若しくは安い、という関係の上に物を見ていると、物の価値ではなく大きさだけが価格を判断する材料になってしまいがちです。
彫刻用や細工物用と聞いて木目の良いものを、と思うのですが「大きさの割に・・・」という価格に感じてしまうと受け入れられない事があります。
それは人それぞれで、自分の予算というものがありきですので仕方がないのですが、100年や200年以上かけて育った木は例え端切れであっても小さくても捨てるようなものではありません。

切り残し

その時間の流れを考えてもらうと、大きさではない尺度で材料を選んでもらえるんではないかと考えています。

そういう意味では、私が木に対して考えている事を綴っている弊社の記事をご覧いただいてから来店してもらえる方は、例え小さくても木曽桧であれば「ヒノキなのにそんなにするんですか?!」と驚かれることはないですし、大切に使っていただけるように無駄なく材料を考えてくださっているので、材をお届けする側としてもとても安心できます。

もちろん、誰でも購入予算というものがあります。
できれば、こんな樹種のこんな寸法でこれくらいの予算で出来ますか?!ということをお尋ねください。
できる限りの回答をさせていただきますし、その方が私も大切にしまっておいた材が「そんなに高いの?!」と言われてしょぼくれる事が少なくなります(笑)。

求められている材は「端材」なのか「木材」なのか・・・
良いものを製作されるのであれば、やはり相談していただいて「木材」を探して頂く方がいいと思います。
その中で、もしかすると丁度切り残しなどのサイズがあるかもしれません。
木材への入り口の角度を少し変えてもらって、先ず大きさありきではなく、希望の材質である大きさに如何に製作物を近づけられるか、ということも考えてもらえれば、無駄も少なく良い材が入手できることと思います。

上手に想いを伝えてもらって良い材を探していきましょう。
探しているのは材の大きさだけですか?それとも良い材で希望寸法があるか?ですか?!・・・考えてくださいね。




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ひと足お先に 待ってましたの「WOOD JOB!」試写会


つい昨日行ってきましたよ、ご案内していた「木で、未来をつくろうin大阪府」。

今回は「大阪府」と題してあるのですが、大阪は一大都市であるがため?!か近畿圏においても一番林業というものがピンとこない場所ではないかと思います。
囲まれている兵庫や京都、奈良や和歌山ははっきりと林業というものが成り立っているのですが、大阪府は山が無いわけではないんですが、林業として多く語られる場面は少ないです。
その為に、大阪における木材の利用促進と地域産材の利活用の活発化を含めた討論は、私たち業界の人間もさることながら、一般の方たちには是非聞いていただきたいと思いましたし、今後の木材利用につながればと思いました。
一概に「木は良いものだ!!」とだけ宣伝するのは建築の中においては、流石に少し抵抗があるのですが、それを差し引いてもところどころで笑いの起こる、和やかな雰囲気でした。

いつもならば、木材業界人が多くを占める木材のシンポジウムや講演会ですが、今回は新聞社主催ということがあってか、一般の方の方がはるかに多く、またパネルトークなどもそれに合わせたような内容で、一般の方には参考になったのではないでしょうか?!
おまけにトークゲストの真鍋かをりさんも流石に綺麗な方でした。

会場


と、綺麗な感想はここまでで、シンポジウムとならんで楽しみにしていたものの感想に移りましょう。
そう、シンポジウムの後に行われた、5月10日(土)から公開の映画「WOOD JOB! 〜神去なあなあ日常〜」の試写会です。

WOOD JOB!

ウォーターボーイズやハッピーフライトなどの名作をとってきた矢口監督の、しかも林業を取り上げた作品というだけあって、期待満点。
公開まで待ち切れず、どこかで見られないかとムズムズしていたところでしたから、シンポジウムに行ったのか試写会にいったのかわからないというのが本音・・・

基、都会育ちの高卒したての男子が、ちょっとしたことから「森」で働くことになって、様々な経験をし成長していく物語、と一言で言うと簡単ですが、笑いはもちろんのこと、こだわりの撮影あり、キャストの妙ありの見どころ満載の映画です。
しかもそれが、主人公が木に抱きつくポスターが笑える林業を背景にした映画だからほっとけないじゃないですか!!
喜び勇んでシンポジウムの終わりを楽しみに・・・いや、しっかりと拝聴した後はその試写会を拝見しました。

いやぁ、スケールといい映像といい臨場感といいとても満足。
都会からドライブで訪れる山の緑とは違い、実際にそこで仕事として生きていくシーンを描いているこの作品は、森や林業を直接知る機会のない人々にとっては、面白さの中にも自然とその仕事の内容が伝わったのではないかと思います。
もちろん、笑いも満点ですから、真剣に笑ってくださいよ。
そう、真面目な中に笑いがあるから本当に面白いんですよね。

あんまり内容は言えませんが、映画の中で木の柱のある家での共通項を一つ見つけました。!!
やっぱりやるんや、子どもは!!とおそらくその場で一人納得していたであろう映像は、柱に登り抱きついてその柱の廻りをくるくると回ること。
うちの子もやってる・・・・
なぁーんか、妙に映画にリアリティーを感じました。(林業にリアリティー感じなアカンのに・・・・)

これは大人とは言わず、子どもさんも連れて是非映画館に行っていただきたいですね。
ハッピーフライトファンのうちの子供達も早々に連れていかなきゃ。
あ、ちょっと大人っぽいネタも入っていますから、目隠しも必要?!(大袈裟)

そんなわけで今回は、今までで一番楽しませてもらったシンポジウム報告(試写会感想報告?!)、でした。


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どうしようもない木材の状態 胴折れ 追記


先日何気なしに在庫確認のために倉庫に入った時のこと・・・

バラバラっと立ててある木材に、「こんなとこになんやかんや立ててるから、ごちゃごちゃになっていくんや・・・」と心の中でぼやきながら片付けようと近づいてみると、なんとも見事な標本木であることが判明!!

これは! 1

何だかわかります?!
よく見てみると、木材の表面にうっすらと波型にクモの巣の様に筋が入っているのが見えるでしょうか?
4mの木材のあちこちにこんなのが見られます。
平面だけではなく、両サイドにも同じ様な模様が・・・

これは! 4

それも上の写真はまだ良い方。

こんなところもちらほらと・・・

これは! 2



ここまでくると、異常な事がわかると思います。
これ、前にも一度書いた事のある業界では「胴折れ」とか「胴打ち」とか「もめ」とかいろいろ言うんですが、雪や風、その他伐り倒された時の衝撃などによってもできる事があると言われる木材の繊維の破断した状態のものです。
破断しているといっても、上の写真の様に、木材が完全に折れているわけではありません。
完全に木部が破壊されると折れていたり裂けたりするものですが、そこまで極端に荷重がかかったわけではない場合や、ジワジワと長い時間かかって荷重のかかった時や、木のたわんで風や振動をいなす性質を超えてたわんだり揺れたりした時に起こるもの。
枝に降り積もった雪の重みや、山に吹きすさぶ台風の風など。

これは! 5

今回の材では節のまわりに集中していたことから、この材の産地である北欧特有の雪の影響ではないかと想像します。
大きな枝は何とか持ちこたえたのかもしれませんが、それでも枝の組織の結合が無くなったからか、死節になってしまっています。

先程の写真を拡大で見ると、小さな枝周辺部はやはりひどくてクモの糸の様な筋意外に、明らかに木の繊維!という縦方向の配列がほどけているのがみてとれます。
もう折れる寸前だったんでしょう。
結合していてこその木部ですが、その結合がほどけている状態と言ったらいいのか。


これは! 3


このような状態になると普通に見る限り、折れてはいないのですが、実際は破断されている状態か元々は結びついている(から木材は強い!)繊維がほどけている状態ですから、残念ながら「木材」としての用途は果たし得ない場合が多いです。
もちろん、工作や短く切って破断していない部分を使うのであれば問題はないので、通常はそういった使い道を模索するのですが、ここまで見事に「状態把握」できると、これはもう「良いサンプル」になります。
お客様に難しい言葉で「細胞組織が破断していて云々・・・・」といっても全くイメージできませんが、これを見てもらうと一目瞭然言葉の如し!
理解していただけると思いますので、貴重なサンプルとして「博物館行き」(笑)です。

これは! 6

これなんかはもう木部が裂けていく様がそのままわかりますよね。
見たいと言ってもいつでも見られるわけではない自然の産物。
木材の特徴を知る一つの手掛かりとして、活躍してもらおうと思います。


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巡りゆく往来の記憶 〜塩生のエドヒガン(巡礼桜)〜


いかん、前回の桜シリーズ更新からあまりの過密スケジュールとちょっとした問題があったので、すっかり更新できず本日になってしまいました・・・・・
木材、建築業界は仕事が一時期や同日に集中することが多い業種だと思いますが、やはり限られた人数でやりくりする会社にとっては集中されると正直辛い。有難いことだけれども、待ってもらわないといけない心苦しさがつのるばかり・・・・
この記事を待って下さっていた方にも、申し訳ないです。

さて、それでは本題の桜の巨樹古木です。

最初にお伝えしておくと、今回はクスノキやスギのあのとてつもないスケールで迫るような巨樹巨木ではなく、どちらかというと古木名木の範囲なのではないかと思います。

今回私が訪れた桜の巨樹古木はここです。

塩生のエドヒガン 2

長野県信越本線川中島から車で山道を登った先にある、「塩生のエドヒガン」です。

この桜の所在地である塩生は、古くは小市渡から小野平、下峠を経て戸隠方面への古道だったということです。
それが、この桜の別名「巡礼桜」という名のもとになったといいます。

なるほどそのためか、この地は少し山の上に位置し十分車ではいきつく事が出来ますが、道路の傍にこんな立派な桜があるのも頷けます。
もしかすると、その「巡礼」の頃には近くにお茶屋さんでもあって、道行く人に桜の美しさと憩いを提供していたりしたのでしょうか・・・

塩生のエドヒガン 5

現在は車は通るものの私の滞在した30分程の間に1台だけでしたから、基本、静かに佇んでいるようです。

塩生のエドヒガン 1

解説板によると、傍に枯株があり、現在の幹はその枯株からでた新芽が大きく育ったものだろうということで、現存する幹の推定樹齢700年に、存在したであろう枯株まで遡ると実に1500年という樹齢になるということ!

1500年前って古墳時代?弥生時代?!
歴史で習った風景を想像すると、如何に昔か想像できます。
そんな時代に若木だったのか、君は・・・
少なくとも700年前は鎌倉時代位?ですから、既に多くの人が往来していたことでしょう。
もしや、かの有名な川中島の合戦の状況も俯瞰していたんだろうか?!
そんな時代を想像するだけでもワクワクしてきます。
この山の上からどんな景色を見ていたのか・・・
巨樹老木に会うといつも感じます。

塩生のエドヒガン 4

とはいえ、私が訪れた時には道路から奥の大枝が途中から切り落とされていました。
大雪のせいなのか、それとも何か外的要因でもあったのか、この太さの枝が伸びているといないでは、また迫力に差があったと思うのですが、それよりもキズに繊細であろうエドヒガンの今後の成長の方が少し心配です。

塩生のエドヒガン 7

枯れたり、空洞化したりする部分も出てくるのでしょう。
大枝以外の部分も明らかに人為的に切られているところが散見されます。
巨樹や古木には必ずついて廻ることですが、雪の重みで枝が折れたり、また社寺の境内の巨木では、その折れた枝によって参拝者が怪我をすることを防ぐために早々に伐り払ってしまうこともしばしば・・・
樹勢が旺盛な巨樹だと社殿の屋根を損傷したり、根を社殿などの建物の下にまで伸ばしたことで、建物が傾いてしまいそれが原因で伐採されるものもあったりします。
難しい問題です。

塩生のエドヒガン 3

こちらも空洞化か、それとも樹皮の剥がれか、根元付近ですが痛々しいものです。
これらを見ていると、やっぱり古木なのかなぁ・・・という印象。

塩生のエドヒガン 8


もちろん、これに花がついていると印象は全く異なり、とても明るく活き活きとした印象になっていたものと思いますが、なにせ毎度のことで雪景色での巨木訪問なので、花はお預けということで・・・(後ろの草地に白くつもってますでしょ・・・)
実際は淡紫紅色の花が咲くそうです。
どんなに美しいんでしょうか。
ソメイヨシノの薄紅色も大好きですが、そこに紫がかった色合いが入るとなると、やはり平安時代などでは高貴な色、位の高い者のみが許されたという色である紫ですから、風格漂う落ち着いた景色になるんでしょうね。
あぁ、見たかった・・・

塩生のエドヒガン 6


桜の巨樹は、枝垂れまで含むと殆どがエドヒガン種だそうです。
元々はそんなに生命力の強い方ではない樹種だから、怪我や病気、災害などに会わなかったものが運よく巨樹として現在に残っているようです。
花の色もそれぞれで、今回の淡紫紅色の他にも様々な色を見る事ができるというのがエドヒガンの巨樹の楽しみ。
やはり、葉のある黄葉のイチョウとともに、花のある頃に訪れるべきですね・・・

塩生のエドヒガン 9

最後に記念撮影。
山に私の服の色が同化してしまっていますが、こうやって見るとやはり大きく、幹自体は分かれているために太くはありませんが、いい枝ぶりだと思います。
今となっては巡礼という人の往来は影をひそめているのかもしれませんが、それでもこれからも眼下に広がる長野市を見守っていてほしいものです。

また花のある時期に会えることを期待して・・・・


塩生のエドヒガン(巡礼桜)所在地

長野県長野市塩生甲

国道19号から県道(?)406号を登り、小田切郵便局に達する下手 地図上南側で、道路が分岐します。丁度その分岐点にあります。
広いので、駐車可能です。


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木で、未来をつくろう!フォーラムがあります


緊急告知です!(大袈裟か・・・)

サクラの記事を楽しみにしてくださった方すみません。
そんな方も是非参加してもらいたいイベントがあります。

最近は木や木材に関するイベントや勉強会などが多く開催されるようになり、少しは木が身近になってきたのかなぁ、と感じることも多いですが、来る4月16日(水)に「木で、未来をつくろう!」と題したフォーラムが大阪で開かれます。

講演2部構成とパネルディスカッション、それに真鍋かをりさんのトークショーも予定されています。
受講は無料ですが、定員300名で多数の場合は抽選になる予定で、受講申し込みが必要ですので(4月9日締め切り)、ご注意の上お早めに申し込みください。

そして一番楽しみ、といってしまってはシンポジウムの意味がありませんが、本音で楽しみなのが、フォーラムの最後に私が注目している林業映画の「WOOD JOB!」の試写会が予定されているのです。
絶対行きたいです。
私、申し込み済みです。

ご興味のある方急いでください。
夕方から木と林業の映画に浸って、晩御飯でも召し上がって帰られてはいかがですか?!

詳しくはシンポジウム事務局 (産経新聞開発内) 06−6633−6804まで(平日 10時〜5時)


木で未来をつくろう!


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お花見と桜のそれぞれ 



ついこの間まではつぼみに少し色がついてきたかなぁ…位だったと思っていたのに20℃近い気温が続けば、あっという間に咲くものですね。

シンボルツリー


サクラは日本の国花でもあります。
英名は flowering cherry .
会社のシンボルツリーのソメイヨシノもグングンと枝を伸ばしながら綺麗な花を咲かせています。
しかしながら弊社のソメイヨシノは少し変り者で、何故か幹の下側、つまり根に近い部分から順に昇る様に咲いていくのです。
毎年のことですが、公園や通りの桜は一斉に開花し、美しいピンクに染まるのですが、うちのは毎年見ているもののやはり今年も下から順に、でした。

元々植えたのは一株だった(植えた本人の会長夫人の言葉による)のが、現在はまるで3株植えたかのように横に広がりを見せ、枝ぶりも立派になってきました。
通りを歩く方の中には、通勤や通学途中に弊社の桜を眺めるのを楽しみにしていただいている方もいらっしゃるという話を耳にしますと、今年も頑張って綺麗に咲いてくれよー、と力が入ってしまいます。

さて、一言に「桜・さくら」といっても、バラ科サクラ属の中には「アンズ、アーモンド、ウメ」等も含まれています。
そういえば、ソメイヨシノよりも先に似たような花を咲かせるはずです。
因みに一般的に食されているサクランボ(sweet cheryy)は西アジア原産で明治時代にセイヨウミザクラが日本に入ってきた物で、日本のサクラと称されている種はあまり食用の実はつけないと言われます。

そして巷のお花見の主役であるソメイヨシノの他にも多くの種類があります。
桜餅や柏餅に使われる葉を持つオオシマザクラやヤマザクラ、開花時期の早い寒緋桜などです。

ソメイヨシノは元々はエドヒガンとオオシマザクラの交配種と言われています。
あおい葉の出る前に一斉にピンクの花を咲かせる美しさが見事な品種ですが、変異体や雑種というものは、通常の交配では増えていくことができないので、全てが挿し木や接ぎ木から生まれたものということになるため、ソメイヨシノは「クローン桜」である、といえるかもしれません。
その為に、一斉に開花する美しさを楽しめるともいえますが、同じ時期に植えられたソメイヨシノの並木は、一斉に寿命がきてしまうことも懸念されています。
もともとそんなに寿命の長くないソメイヨシノですが、一斉に枯れてしまう恐れもあるという事で、ソメイヨシノ並木のあるとことでは景観上も気にかけておられるようです。
標準的な桜だと思っているソメイヨシノの意外な一面、というところでしょうか・・・

ソメイヨシノの片親ともいえるオオシマザクラは、生の新鮮な葉には香りがないが、塩漬けしているうちにクマリンと呼ばれる芳香成分が醸成されます。オオシマザクラは葉が大きくクマリンの香りが強いので餅を包む葉に重用されているのです。

他にも人の口に入るものと言えば、サクラ茶やサクラ湯。
おめでたい席で見かけるお茶は、「お茶をにごす」ことを嫌ってオオシマザクラ系の八重桜である「関山」の花を梅酢と塩で漬けたものを目にします。

住宅資材として少量ながら出てくるのは「ヤマザクラ」。
材面はソメイヨシノの花の色とは程遠い、少し暗い色合いを含んだ部分があり、「これが桜ですか?!」と言われますのでこちらから先に「イメージとは違うと思いますよ」と言っておくほどです。
そういう点でいえば、高級家具やフローリングで人気のアメリカクロミザクラ「ブラックチェリー」の方が薄紅のイメージに近く、人気の高さがわかる気がします。

ブラックチェリー


フローリングでも「桜」の言葉の持つイメージというのは大きい様で、中国などから輸入するフローリングには「●○桜」とか「桜○○」というものもあり、樺(カバ・バーチ)に着色したものがあったり、「黒桜桃」や「桜桃」という、桜か桃もかどっちやねん?!というかそもそも桜か?!というものもあり、やはり木材の表記の難しさには少し閉口します。
(中国名「黒桜桃」=ミヤマザクラ、「桜桃」=シナミザクラを指す場合が一般的な様です。)

そして最後に忘れてはならないサクラ、「エドヒガン」。
普段あまり意識して見かけることはないですが、実は意外と市の指定樹木になっていたり、大木があったりします。
といいますか、サクラの巨樹古木の殆どがこのエドヒガン種です。
花や樹木の好きな方は、ソメイヨシノの様に画一的ではない花や幹の表情に魅力を感じる方が多くいらっしゃるそうですが、やはりあまり目にしないようにおもいますね。

さて、それでは次回はこんな花の時期に紹介するには「いつも通りの」オフシーズンの為見ていただく花が無く気がひけますが、そのエドヒガンの巨樹(老木・古木?!)を一つ紹介する事にしましょう。
お花見のできない写真で恐縮ですが、サクラ巨樹古木の記事続きます。





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