空を見上げて
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2012年11月

琉球黒檀 〜日本産の唐木〜


いつもいつも前置きが長くなってしまうのは癖のもの。
話始めると、細かいところまで喋りたくて仕方ありません。ご勘弁を。

さて、前回の黒檀材の整理に引き続き本題に入って和製黒檀である「琉球黒檀」のお話。

私、個人的にもこの響き好きです。
すごく格式高く感じるのは私だけでしょうか?!
王朝の黒檀というイメージと、私の勝手な沖縄のイメージがリンクしてまた勝手な黒檀のイメージが膨らむわけです。
しかしそれにも理由があって、先に紹介した通常の黒檀類はある程度は現在でも入手し利用されることがありますが、この琉球黒檀ないし八重山黒檀と称される物に関しては、伐採されていないと聞きますしあるところにはあるけれども、夢の様なお値段で、とても手が出ません。
特に、利用価値の高いものとして三線の棹材としての用途がありますが、その道に精通していて価値が理解できてその音色を奏でることのできるような方ですと、購入の動機になるでしょうけれども、私の様にほぼ「コレクション」の様な人間には手が出ないわけです。
まぁ、香木の伽羅(きゃら)や沈香(じんこう)程ではないかもしれませんが、その貴重さは変わらないでしょう。

琉球黒檀 3
























といいつつも、沖縄にいくと結構生えてます。
正直びっくり。
え?!こんなに生えてんの?!もっと厳重に管理されてるものと思ってたのにー、と変な期待を裏切るかのように「琉球黒檀 カキノキ科」という看板がぶら下がっています。
もしかすると、沖縄の人にとっては、こんなコラムをつくること自体「へんなやっちゃなぁ」とおもわれているのでしょうか?!
そう思いたくなるくらいに、簡単に立木を発見できました。

琉球黒檀 2














葉は厚く少し光沢があり小ぶりですが、しっかりとしています。

琉球黒檀 1














幹はというと、その材の色を想像させるように黒っぽいもので、割裂した肌にも風合いを感じますね。
今すぐぶった切って材として確認したい悪魔の誘惑と、しっかり育てよと望む天使の心が、カメラを構える私の胸で競り合っています。
まぁ、もちろんぶった切ることはありませんが、それ位材として入手したかったことは間違いではありません。

材料としての琉球黒檀は、さきほどの様に三線の棹用材をはじめとする楽器類や家具、象嵌や細工物に使われるということで、おそらくずっと昔から大切にされてきたことでしょう。
重硬なことで共通する材、イスノキとともに三線の材料としては有名な様ですね。

因みに、この琉球黒檀(八重山黒檀)とイスノキ、そしてウバメガシにオノオレカンバを加えた4種が日本産材に置いて、最重量の木と言われています。
実物を持ってみるとわかりますが、さすがにどれもかなり重たい。
リグナムバイタといい勝負かと思ってしまうくらいのものもありますし、オノオレカンバにいたっては、明るい材色でなんでそんなに重たくなるの?と聞きたくなります。


琉球黒檀角 1



 私の琉球黒檀






因みに琉球黒檀、データ的には比重0.74〜1.21(!?)と少しバラつきがあり、重硬さのわりにはすこしもろいところがあるそうです。
学名をDiopyros ferra
八重山の方言ではクルキ、沖縄ではクルチというそうです。
んー、なんか南国の雰囲気です。

琉球黒檀角 2






 クロガキもそうですが、カキノキ科は不思議な模様を呈するものです。

 まるで墨を流した水墨画の様に。














これだけ綺麗な材で、しかも有用性も高いとなると貴重なのは当たり前ですね。
しかも黒檀の仲間、成長が極端に遅いはず。
成木になってから、黒檀材として使えるようになるにはそれなりの永い年月が必要になってくる事を考えれば、今大切にしていくのは当然のことですね。

稀少材を手にするといつも感じますが、私の次、また次の世代もこれらの材を手に取り感じ、感動できるように材を残していきたいものです。
黒き材に、明るい未来を信じて!!

琉球黒檀角 3













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琉球黒檀 〜黒檀材のおさらい〜


以前から想うことですが、なぜかしら同じ樹種に問い合わせや見積もり依頼が集中する事がよくあります。
それがある程度手配しやすい樹種ならいいのですが、結構段取りしにくい樹種でしかも寸法もとりづらいものだったりする場合が多いので、なかなかすぐにお返事、というわけにいかないのが歯がゆいところですが、反対に、そういった木材をご案内する事が出来る喜びが大きいので、実際に手配するまでの喜びというものがあるのも事実。

そういった状況が今回は貴重な唐木、黒檀(こくたん)で発生!!
んー、それもまとまった数量であったり、そんなん樹齢何百年?!なの、というようなものもあったりで、ワクワクドキドキ、考えるだけで楽しくなってくるのですが、それがお客様の手元に届けられるかはまた別の話ですが・・・・

さて、黒檀については金具不使用縞黒檀(しまこくたん)木製名刺ケース(おかげさまで数量完売。ありがとうございます。)のところで触れていますが、もう少しだけお伝えしておきましょう。

黒檀(こくたん) 英名をebony 学名をDiospyros ebenum(本来、黒檀材を指すもの) 中国名を烏木

カメルーンやナイジェリア、マダガスカル、アジア、西アフリカなどから産する美しい材。
成木の直径は50〜60cmほど、高さは20m程になるものもあるそうですが、そこまで成長するまでには、数百年単位の時間がかかる事もあるようです。
一般的に、比重が1.0を超え硬く重く黒色の材で肌目が精であり、磨くととても美しい光沢を出し、鏡の様な輝きと言われます。
また、乾燥してからは木口面・板目面・柾目面においての変動も少ないことも特徴の一つで、床材(とこざい。床の間の材料)やピアノの黒鍵、数珠やお箸などにも加工されてきました。

カキノキ科の中で400〜500種(!!)あるうちの黒色を帯びた芯材を有するDiospyros属の木材(10数種ほど)を指し、その材色や特徴によって縞黒檀、斑入り黒檀、青黒檀、真黒などと分けられています。

それぞれの特徴としては以下の様に定義されているようです。

・縞黒檀(しまこくたん) 灰色ないし、紅褐色の縞を有している物を指す。
英名:streaky ebony
                        単一にebonyと称する時はほぼこの縞黒檀を指している。
セレベス島産のmacassar ebonyもこれを指すそうです。

黒檀類 5










・青黒檀(あおこくたん) 黒い芯材の道管中に緑色の物質が満たされ緑色の筋として見えるも
                        の。但し、時間が経過すると青さが目立たなくなるので、ほとんど通常の黒檀材と同じ様に見える。
英名:green ebony
                        インド、ミャンマー、タイなどで産する。インド名をkosai

黒檀類 1










・斑入り黒檀       黒色と灰色の縞を有し、大理石やシマウマの様な縞をなすもの。
英名:marble wood又はzebra wood(但し、アフリカ産の
                              microberlinia brazzavillensisとは別物)
セイロン黒檀やフィリピン黒檀、アンダマン諸島、セイロン島産など

・真黒(まぐろ)      縞や灰色などの部分がなく、全て黒色の材であるもの。産地により、艶の出やすいものや光らずに黒いものがある。但し、光に照らすと黒色の中に赤茶色の木目の見えるもの(本黒檀系真黒)、部分的に灰色の筋が見えるもの(カメルーン産他)

みられるものを一覧にしてみました。

黒檀類 2










右から、カリマンタンエボニー・真黒・アフリカ黒檀(下記参照)・縞黒檀(名刺ケース共)・上部横向き上から、青黒檀・本黒檀虎杢です。

黒檀類 4

アフリカ黒檀はどこか黒色の中に濃い赤身が差している様にも見えます。

しかし、黒檀も虎杢が出ると一段と魅力的ですねぇ。



上記の黒檀の他に、フルート用材として使われたりするマメ科のブラックウッド (Grenadille)Dalergia melanoxylonも黒色の材色とその重さから黒檀(アフリカ黒檀など。上の写真にあり)と称されるのですが、Diospyros属の黒檀とはまた別のものです。
しかし、混同される中西部アフリカ産の黒檀(ガボンエボニーなど)もあるので、名称だけで判断することは難しいです。

紫檀(したん)・黒檀(こくたん)・鉄刀木(タガヤサン)と、なんとも小気味の良いリズムで口にされる三大唐木の一つで、その材色は木とは思えないくらいに魅力的で、その材面は鏡の様に美しいものです。
紫檀や黒檀などの「檀」という字は稀少で価値のあるものにつけられるものであることは、檀木のコラムにてお伝えした通りです。

一般的に黒檀として流通していますが、様々な分類がある事がわかりますが、おそらく、ここまで細分化し木を愛でるのはやはり昔からその輝きが人々を魅了してきたからでしょうね。
宝石の様でもあるといえますね。

この宝石の様な材、外国のものだと思いきや、実は日本にもあるんですね!
私も最初は意外で驚いたのですが、その道では有名で材木屋は知らなくても当然と言えば当然なんですが、「三線の棹材」として用いられています。
それが、沖縄に産する「琉球黒檀」です。

沖縄、んー、少し納得。
やはり向こうは本州とは少し植生なども違い、独特の植物も多いところですから黒檀があったとしてもおかしくはないなぁ・・・と自分に納得させた覚えがありますが、和製黒檀があるのです。

実は、現在は伐採されていないという噂の琉球黒檀材が、たまたま私のところに流れ着いたので、これは紹介しないとと思い黒檀材のおさらいをしたところです。
次回は、その琉球黒檀について触れてみたいと思います。

黒檀類 3












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銘建築、聴竹居を見学


全国に銘建築は多々あれど、遠方に出ることなく私が電車でふらりと行ける距離に何とも言えない銘建築があるのです。
昨日、その銘建築に行ってまいりました。

京都府、サントリーの山崎蒸留所(試飲に入りたぁーい!)近くにある「聴竹居」です。
大山崎という場所を聞くと、古くから車に乗っていらっしゃる方だと「名神高速下り、天王山トンネルを先頭に●○キロ渋滞」なんていう決まり文句を毎日聞いた事があるものと思います。
または、歴史上でも「天王山」というと言わずと知れた「秀吉と光秀」の天下分け目の決戦の地であることで、大抵のかたはご存じだろうと思います。

その天王山の麓に、今回訪れた聴竹居はあります。

聴竹居 1
































1928年(昭和3年)、建築家の藤井厚二によって建築された建物で、「実験住宅」と呼ばれている、彼の5つ目の邸宅です。
5つ目というのは、10年程で5回も自邸を建築したそうで、それらが「第○回住宅」と称されていてこの聴竹居が第5回住宅です。
5回の中で現存するものは、この聴竹居のみだそうですが、まぁ素晴らしい建築です。

こだわり満載にして、微に入り細を穿つディーテールや仕上げの心遣いが物凄く心に響きます。
感覚的には、以前に訪れた「志賀直哉旧居」と似た雰囲気ですが、それとはまた違った、やはり建築家であり、環境と住宅の共生とともにそこに住まう意味を考えた住宅だと感じます。
もちろん、広大な敷地に本格的に「伊勢神宮の宮大工さん」を呼び寄せ、その方の住まいと作業場をこしらえて、建築にあたったそうですから、現在の建築に活かす為の見学ではないですが、それでも、内部の仕上げの心意気や工夫、考え方や創意は建築に携わるものは当然のこと、木を知る物も建築を通して感じるべきところだと思っていますから、たいそう勉強になりました。

残念ながら、内部の撮影は原則禁止。届を出して撮影はできますが、記事へのアップロードは禁止されていますので、ご紹介できませんが、近畿にお住まいの方は一度は訪れていただきたい建築ですので、時間をつくってみてください。

ちょうど建物の近辺は紅葉の最中。
周りの建築もよいものが多い事と、それに降り注ぐ落葉達の色と落ちる音が都会とは思えず、なんとも言えない雰囲気を出しています。
現実とは関係ない、と割り切る事もあるでしょうけどもやはり「よいもの」を見るということは、自身の大きな糧になります。
若い方にも是非見学してもらいたい建て物でした。
充実した建築旅行!!

聴竹居 2













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木の耐震壁の施工事例がテレビ、「ビフォーアフター」で紹介されます。


なんということでしょう・・・

印籠か桜吹雪か、そのフレーズを待っている方もいらっしゃるのではなかろうか、様々な問題を抱える住宅を改装し、その問題点をクリアーしていくという新築お宅訪問系とは違った手法で住宅を見る番組、「大改造!!劇的 ビフォーアフター」11月25日(日)19:56〜放送(テーマ 太極拳のできない家)に(社)大阪府木材連合会が京都大学と共同で開発した、間伐材を使用した耐震壁「壁柱」が登場します。

番組ホームページにて予告動画が見られます。

http://asahi.co.jp/beforeafter/

耐震というと、金物補強やベニヤ補強その他ありますが、壁柱は純粋に木材を使って揺れに耐える壁面をつくる事が出来ますし、素材が丸ごと「無垢の木の角材」ですので、強いが硬く冷たい壁という物とは全く異なります。

間伐材を使っている、というのは副産物としても木材の持つ力で地震に耐える住宅をつくるというのは、新築はもとより既存の木造住宅にとってはとても意義のある事だと思います。
様々な耐震壁技術がありますが、木の耐震壁「壁柱」もその中の選択肢にあるということを覚えておいて頂ければと思います。
もちろん、特別な設計士さんなどではなく、街の材木屋さんで話を聞く事が出来ますから、耐震工事をお考えの方は是非、一度材木屋さんにも相談してみてくださいね。




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魅惑の杉ワールド外伝 〜日本第6位の杉 月瀬の大杉〜


さて、ずっと続いてきた杉のお話。
いろんな場面で杉の良さや、日本特有の木というキャッチフレーズで宣伝されている杉ですが、それだけではなく、結構掘り下げていきたくなる樹種だという面白さがわかっていただけたかと思います。

前回で一区切りの予定だったのですが、第二話で書いていた「古くから守られてきた木と地域の人たちとの深い絆」のお話を書ききれていませんでしたので、ここに外伝と称し、そのお話とともに「日本第6位の巨杉 月瀬の大杉」を紹介しておきたいと思います。

月瀬の大杉、もしかすると殆どの巨樹好きの方は訪れているかもしれません。色々な記事でも紹介されていますし、関西からも関東からも中部はなおさらのこと、「丁度いいところ」にあるために、訪れる人は多いのでしょう。
その巨杉が聳えているのは長野県と愛知県の南北の境位のところ、根羽村。
愛知側から巨木をたずねて山越えするもよし、長野側からスキーを(あえてスキーを!!)早く切り上げた道中で南下するもよし、どちらにせよ、高速道路からは少し離れた山あいのドライブコースのはずれに位置しています。


月瀬の大杉 7
























ドカーン。

思い描いていたのは、もう少し厳かでなんというか、「これかぁ・・・」という見つけた感があるのかと思っていましたが、意外や意外、本当に真横を車がすれ違うことのできる道路が通っています。当然ながら近くまで難なく車で行く事ができます。
こんなので大丈夫なの?!と心配になるくらいに身近にあるのです。
確かに山をかき分けて、草の根を踏みしめ「ホォーイホイ・・・ホーイ」なんて奇声を上げながらへっぴり腰で入っていかないといけない場所ではない事は有難いのですが、これは近すぎる。

と思っているとやはり解説板には、伐採の危機について書かれていました。

月瀬の大杉 1














江戸城本丸焼失による復興材として、また村内神社統合の後の伐採決議などを全住民の力を結集して保存されたとあります。

確かに、ものごっつい割には幹もまっすぐに近く、枝も上部にしかないので、用材としては魅力的だったのでしょう・・・
巨木に異型や枝分かれのものが多いのは、伐採する価値が無い(材料としての判断で)為に残ったもの達だからというのも理由の一つですから、住民の方々はよく守ってくださったことだと思います。

月瀬の大杉 5
























また、昔から虫歯に病むものが祈願すると霊験が著しく、大事変の起きる時は前兆として大枝が折れる、と語り継がれているそうです。
とても神秘的なお話。
大枝の折れるような大事変があっては困りますし、大杉自体も枝ぶりを維持してもらいたいので、このお話はいつまでも語り継がれるままであってほしいものです。

月瀬の大杉 3














それにしても、このサイズの写真では伝えきる事ができない(私の技術もない・・・)のですが、近くで見るとまるで一枚岩。
ごつごつしているというわけではないですが、生きている樹木というよりも、数万年、数億年前に隆起した岩石の様な肌です。

月瀬の大杉 2























幹の下方で二つに分かれていますが、分かれた片方がまるでちからコブを誇っているかのように道路側に伸びています。
男っぽい杉、といったら叱られるでしょうか?
でも、とても雄大で、なにか守ってくれそうなイメージを持つのは私だけかな・・・

月瀬の大杉 6














広場の裏側からのアングル。
こちらは杉らしいうねりというか、隆起したコブの様な部分もあり、巨木らしさを残していると言えますね。
それに、こちらから見ると前方の空が開けているために逆行の様な状態になり、光を背に受けた月瀬の大杉は更に頼もしく見えます。

それにしても周りが開けていて道路があり(確か、御手洗いも完備されていたと思う。)、静かでありながら村の生活も感じられるホンワカした雰囲気の中に包まれている月瀬の大杉。
人里の巨人、というよりもその存在自体が村の一部の様に違和感なく思えてきます。
昔から地元の人とともにあった巨杉。
これからも地元の人とともにあり続けてほしいものです。

最後に一緒に記念撮影を一枚。

月瀬の大杉 8














このカメラの位置からあそこまで、かなりダッシュです。
ギリギリの距離。
2回失敗。
カメラが少しこけているのはご勘弁。
それでも、月瀬の大杉の迫力が少しは伝わったかな?!

なかなか離れる事ができないのは巨樹に会うといつもの事ですが、先にも言ったホンワカした雰囲気が、なおさら夕焼けをうけて輝く青葉とともに私の足をひきとめた為に、帰路につく決断が出来なかった事が印象深い対面でした。

月瀬の大杉 4
























冬場の面会のため、長野方面に戻る道中のスキー場の連続する誘惑に駐車場へ吸い込まれそうになりながらも、分かれを惜しみながら帰路についた私でした。


月瀬の大杉所在地

長野県下伊那郡根羽村5814あたり

駐車場あり

153号線飯田街道からそれて民家を抜けるとすぐに気が付きます。街道からの看板もしっかりと目印になります。
また、更に南下すると愛知県寄りに並ぶ巨樹古木をたくさん見る事が出来ます。
愛知県側に抜ける方や、脚を伸ばせる方はここを最初の目的地として南下していく事もお勧めします。
(何があるかを説明しだしたら、外伝二話とか三話とか終わらなくなってきますので、とりあえず、今回はここまでに。)


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魅惑の杉ワールド 第三話〜レッドウッド・セコイア〜


さぁ、魅惑の杉ワールドも第3話。
前回の杉巨木編にて、日本の杉巨樹巨木の一例をご紹介しましたが、今回は世界のスギ属のお話。

皆さんは、巨樹の樹高ってどれくらいを想像されます?
んー、マンションくらいはあるかなぁ・・・30mくらいかなぁ・・・と思った方はまぁまぁでしょうか。
日本の場合はそれでもいいといえばいいのですが、これが世界の、、となると全く正解は異なります。
正解は、115.55m!!!(文献により124mの記述もあり)
ひょえーーーー。巨樹をいろいろと見てきた私も想像できません。
どんなんや、としかいえません。
この高さまで、根から水を運んでいるのです。
どんな優秀な揚水機でもあがるのだろうか、この高さ。それも音も立てずに粛々と・・・やっぱり生物は神秘的!!

因みに現在までに存在した記録のあるもので最高のものはオーストラリアのユーカリで132m、日本で最高なものは、前回に紹介した石川県の栢野の大杉54.8m(実は後から知った)ですが、これでも相当なものです。

栢野の大杉 2




 栢野の大杉









今回は、そんな世界一ノッポな木を仲間に持つ「セコイア類」をメインに話を進めましょう。

さて、いきなりセコイア類といわれてもなんのこっちゃわかりませんよね。
それでも第一話でもお伝えした通り、1億6000万年前の化石がカナダ、ヨーロッパ、アジアなどの各国から出ている事を考えても、昔はかなり身近な存在だったセコイア。
まるでシーラカンスやイチョウの様ですね。
しかし、意外といろいろなところにあるものなんですよ。
公園や街路などにポツポツと見られます。
それが世界一の樹高を持つ樹種とは普通はおもわないでしょうが・・・

セコイア
その名は北米先住民の指導者の名「セクオヤ=sequoyah(1770〜1843)」にちなみつけられたもの。
セクオヤはチェロキー族の酋長の孫にあたり、チェロキー族の文化の記録のためにチェロキー文字を発明したとされる歴史的人物。
先住民たちはセコイアの木を崇拝しているため、決して傷つけることはないそうで倒木のみを有効に活用しているそうです。

そのセコイアには2属、「カリフォルニアレッドウッド sequoia sempervirens(常緑を意味する) 和名:セコイアメスギ(世界爺雌杉)」と「ジャイアントセコイア sequoiadendron giganteum(巨人の意) 和名:セコイアオスギ(世界爺雄杉)」があり、ともに一種だけしかないといいます。
この2種は現在は別属とされているそうで、葉っぱや球果も異なっているそうです。

先ずカリフォルニアレッドウッド(以下レッドウッド)ですが、これは日本でもよく外部用木材として使用されるレッドシダーや構造用集成材として用いられる欧州赤松とは別のものですが、日本語は混同しやすいですね。
こちらの「レッド」は樹皮と材の色から付いたと言われています。(レッドシダーも確かに赤いけれど・・・)
その赤い樹皮は燃えにくい繊維で出来ている上に、厚みが30cmもあるため弾力性があり余計に燃えにくい構造になっているようです。因みに次のジャイアントセコイアは50〜80cm程あるといいますから、これだけでもう巨木といえそうな位です。

雌雄同株の常緑樹で、樹齢2000年を超えるものも稀ではないといいます。
最も古いものは1934年に倒れた2200年だったそうです。
レッドウッドは現在、カリフォルニア州レッドウッド国立・州立公園で見る事ができますから、写真などでみるととても雄大な印象を受けるのですが、実は以前の森の4%程の面積になってしまっているそうです。
物凄い減り方ですね・・・しかし、やはり人間が入ってしまうとこうなる事もあるという事実かもしれません。それだけ木々の恩恵を受けている証拠ともいえるでしょうか。

変わってジャイアントセコイアはというと、ジャイアントという名と学名の巨人という言葉から連想する通り「デカイ!!」というイメージが先に立つと思うのですが、実は先にあげた樹高世界一の木ハイペリオン(Hyperion tree ギリシャ神話の神に由来。2006年発見だとか)はレッドウッドの方で、名前から想像する「大きさ一番!」という言葉通りとはいかないようです。
ただ、その幹回りはすさまじく「シャーマン将軍」と称される巨木は幹回り31.1m、それに高さも84m(各文献により、幹回り25.3m、高さ95mなどの誤差あり)の推定樹齢2700年という巨大なものです。想像もできません。
知らずに写真をみると、その木の足元に人がいることなど気がつかないほどの巨大さです。
これは、世界最大の生き物とも言われています。
植物も生き物です。生き物で最大というと生みに暮らすクジラが一番大きい!と思いそうなものですが、実は木だったのですねぇ!!

わかりやすく言うと、将軍の体積は1487立方メートル程になるそうで、これを住宅に例えるとアメリカの5LDKの住宅40戸分に相当するそうです。
日本の住宅ではないですよ、アメリカのあのビッグサイズが40戸です。
わかりにくいですね・・・

まぁ、物凄いということですね。
なにせ重さは推定1200t、根っこも入れると2500tにもなるといいますからこちらも想像もできません。中には根を含まずに2000tになるものもあるそうですが、もうその辺の違いはわかりませんね・・・
根っこで言うと、直径12m程あるそうですがこの12mの根っこが見えているとどれだけすごいかわかりますか?!

これをご覧ください。
杉ではないですが、巨大な根を見られる珍しい巨木「寺野の大クス」です。

寺野の大クス










これは、見えている根の部分の直径が約10m。
これで10mです。
更にこれより2m広いんです。
どんだけぇー。

とはいえ、実は彼らは樹高の割には根が浅く倒れやすいといいますので、数字ではわからない、それぞれの個性があるのですね。

それにもう一点、ジャイアントセコイアの方が、レッドウッドよりも寿命は永いようです。
前者は最高3200年、後者は先にあげたように2200年。
メスギよりもオスギの方が永生きで、その代わりメスギの方が背が高いということですね。人間社会とは逆の様です(笑)。

セコイアはその大きさなどのスケールが紹介される事が多い木ですが、その理由はもしかすると文化の違いがあったのかも知れません。
これほど巨大な木はたくさんの利用価値がありそうなものですが、一説によるとレッドウッドは裂けやすく建材には不向きだとされていましたが、それは日本でならば野根板には最適でしょうし、鋸を使わずに割れるということは木の繊維に与えるダメージが少ないですから、健全な材を得られるということでもあります。
そのあたりは木の利用方法の文化の違いなのかもしれませんが、現在ではタンニンを多く含みシロアリに強いといわれ、利用されているようです。

また、ジャイアントセコイアの種子は2年かけて成熟するそうですが、20年も鱗片といわれる部分を閉じたままのこともあるといい、その理由は不明だそうですが、もしかすると生息のバランスや森林のバランスなどを調整しながら種子をまく能力があるのかも知れません。
レッドウッドはバランスのシンボルと言われています。
人も同じ。やはり何事もバランスが大切です。
そしてそれらが種をまくのは焼かれてこそ初めて、だそうです。
レッドウッドは切り株や倒木から芽吹く旺盛さがあるそうですが、ジャイアントセコイアは土や下草が焼かれて初めて自分たちが育つ事が出来るスペースができたと感じるのでしょうか・・・
いずれにしても不思議で神秘的です。

最後にセコイアの有用性のお話。
若葉を温めた湿布は耳の痛みをとり、樹液を水で飲む事で強壮材にし、内皮を煎じて黄疸の治療と血液の浄化に用いると伝えられているそうです。
現代医学とは違う世界ですが、生き物である木には、こういった一面もあり、木材だけが利用方法ではないという一例ですね。

どうでしょう、世界一の杉の仲間セコイア。
私も是非一度会いに行きたいと夢に見ています。
記録ホルダーのようですが、実際に会ってみるとおそらくそんな事関係無い感動が待っているのだと思います。
その日を夢見て。

今回の魅惑の杉ワールド、次回にもう少し続きます。



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魅惑の杉ワールド 第二話〜巨樹・巨木〜


さぁ、シリーズ第二話はお待ちかね(私が・・)の、日本の杉の巨樹・巨木を紹介します。
杉の圧倒的な存在感、近寄りがたいほどの様相、そして古くから守られてきた杉と地域の人との深い絆などなど。
「桧舞台」といった言葉がありますが、桧に比べて少し陰の薄い感のある杉ですが、巨樹巨木に会うとそんなこと吹っ飛んでしまうくらいに、木々の命と神々しさにただ立ち尽くすのみです。

杉の巨樹はこれまでにも「杉の大杉」「高井の千本杉」「ひぜんや大杉」、「大杵社の大杉」などを紹介してきました。
今回はそんな中で、私が今まで会ってきたその他の存在感あふれる巨樹達をいくつかご紹介します。(記事の都合上、各杉の謂れなどは割愛しています。申し訳ありません。)

まず一番手はうっすらと暗く静かな境内にその存在感をあふれさせている朝倉神社の大杉です。

朝倉神社 1
























ここ、実はあんまり「ひいて」写真が撮れません。
正面から写そうにも逆行と社殿がかぶさり、さらに他の樹木の葉があるためにどうも全景が撮りづらい。
にしても、上のアングルでわかる様に背が高い。
太さも当然のことながら真っ二つに裂けた幹を並列で天へと押し出すその様はまさしく杉なのですが、それにしても枝ぶりなどは出方や伸び方などが少し日本海側の杉に近い様な印象を受けるところがあり、もしかすると、このあたりの地域がウラスギとオモテスギの中間地点か?!などと邪推をしてしまいます。

朝倉神社 2
























大きさがわかりにくいかもしれませんが、それでも太平洋側にお住まいの皆さんの想像する杉とは少し趣が異なっているのではないでしょうか?!
社殿をひっくり返しそうなほどに聳えるその姿は、まさしく見上げるしかない様な、そんな気分になる杉の巨木です。

所在地:京都府南丹市園部町千妻岡崎7

京都府指定天然記念物
駐車場なし


さて、次は異形といってもいいでしょう。
近寄りがたい雰囲気満点の八つ房杉です。

八つ房杉 1














拝んでいる私を見てもらえば、根元の太さがわかるでしょう。
しかし、この八つ房杉は単純な幹の太さというよりも四方八方に幹を伸ばしている様が、今にも襲いかかってきそうな様相なのです。
どうすればこのような姿になるのかと思いますが、これも自然のなす姿。

八つ房杉 2














幹の中心部を見るともう、一本の木であるというよりも上に伸びずに横に枝を張る事で、自身の場所を確保したといったところでしょうか。
枝張りが大きすぎて、八つ房杉の周りにはワイヤーがいたるところに張りめぐらされています。
そりゃ、これだけの垂れた大きさの枝(?!)を支えることはできないでしょう。
この異様なくらいに枝を伸ばしているのがこの八つ房杉です。

所在地:奈良県宇陀市菟田野佐倉76

国指定天然記念物
駐車場あり

さぁ、次もまさしく「正統派杉」と呼びたくなるくらいに見事に伸びた杉。
それも2本並んでいるのは杉の大杉かと思いたくなるのは私だけではないはずです。

栢野の大杉 1
























境内にかけられた歩道を挟んで林立する巨木。
栢野の大杉です。
ここは周りに大きな植栽もなく、鳥居をくぐるまでもなく巨大に聳える杉を眺める事が出来ます。

栢野の大杉 3
























二股に分かれている部分がありますが八つ房杉の様に、異様な枝ぶりや幹の状態はなく、通直に育つ針葉樹のイメージを保持しているといったところでしょう。
幹に触れると、厚い杉皮がとても温かく弾力性がある事がわかります。
住宅の屋根を見ていただければわかるとおり、私のいつも通りのパターンで冬の巨樹めぐりですので雪がありますが、雪の降る地域にも関わらずに枝があまり垂れていないのも、なにか親近感を感じたところなのかもしれません。

栢野の大杉 2














当然、柵を乗り越えて抱きつきに行きたい!ところですがグッと我慢し、ギリギリのところでその背丈を眺めます。
こう見るとしだれていますね・・・(汗)
こうやって見上げるというのは、やはり偉大な先輩の大きさを感じる瞬間でもあります。
まだまだ元気そうな幹ですから、これからもその雄姿を拝ませてくれることでしょう。
蛇足ながら、何かのツアーバスも停まっていました。
パワースポットツアーだったのか、若い女の子たちが「すごーーーいぃ」とかいいながら記念撮影していました。

所在地:石川県加賀市山中温泉栢野町ト49

国指定天然記念物
駐車スペースあり

さて、最後はこれまた怖ろしい杉の巨樹。

西光寺 1
























うひゃー、でたぁー・・・
こわいこわい。
膝上まで雪に埋もれながら、誰も踏みしめていない雪の参道を通り抜けてたどり着いた先には、接近を拒むかのような異形の巨躯が待ち構えていました。
西光寺白山神社の杉です。

これが山中だったら、もしかすると近寄ることはできなかったかもしれません。
明るい日中の町はずれだったからこそたどり着いたような場所。
それ位の存在感であり、これこそがウラスギか!!?と思わせるような枝垂れ方をと枝ぶりを呈しています。

西光寺 2














もう、あっちゃこっちゃにグニャグニャと枝を伸ばし、今にも伸びてきて捉えられそうです。
ハ○ー・ポッ●ーに登場していれば、必ず動いていたことでしょう。
もう、この鞭の様な枝で一撃です。
いや、ご神木ですからそんな事は無いのですが、近寄るのに数分、もっとかかったのは私がビビりだったからなのと、やはり畏敬の念を抱かざるを得ない見事な巨杉だったからです。

西光寺 3














やっとお近づきになれました。
上を眺めると枝を広げた傘に包まれている様で、さっきまでとは反対に何か守ってくれているような気になります。
不思議なものです。
もちろん、考え方次第ではありますが、巨樹に会う人が悩んでいたり病んでいたり考えるところがあったり、迷っていたり、若しくは幸せな時であっても、やはり如何に異形の神でも拒むことなく受け入れてくれるということが、偉大な木々の前で人が心を開き、またパワースポットなどといわれる所以の一つなのではないかとも思います。

所在地:福井県勝山市鹿谷町西光寺5−17

市指定天然記念物
駐車スペースあり


以前の記事にも書きましたが、「身を美しくする」と書いて躾(しつけ)、「立木を見せる」と書いて親(おや)と読みます。
物があふれ、木の重要性や道具などとなり身近にある大切さをしみじみと感じ、時には親子で山に入り立木を眺めていた時代はとうの昔。
これは仕方のない時間の流れですが、今も現存する巨樹巨木達は、自身の存在を通じて、親子の意味やそこから生まれる躾られた人間性を説いているのかもしれません。

パワースポットと言われるのもよいかもしれませんが、パワーをもらうと同時に数百年数千年間動かずに生き続けているその姿に、違う何かを感じられるといいなぁ、と想っています。

さて、次回は世界に目を向けましょう。
世界で最ものっぽなスギ属のお話。



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魅惑の杉ワールド 第一話


ようこそ、本日からの魅惑の杉ワールドへ!!
少し胡散臭い名前になってしまいましたが、まぁ中身で勝負です。

前回、京都大学の杉山先生からの「杉はヒノキ科」という驚愕の(?!)お話を受けてスタートする杉に敬意をはらうこのコーナー、第一話は杉についてのおさらい。

「杉」 すぎ。現在のところ、学術本にも「スギ科スギ属」とありますが、先の様にもしかすると、将来ヒノキ科に編入されるかもしれません。(よく見てみると、現在でもヒノキ科と記されているものもあります。)

学名をcryptomeria japonica.

杉を雅に語る時、たびたびこの学名を持ちだして「日本の隠された財産」と言われる事がありますが、これは少し拡大解釈の様です。
しかし、確かに杉は日本には古くから自生し今でも樹齢数千年の巨樹巨木を各地に残しています。
巨樹については後日触れましょう。

杉といえば、立木を見ると花粉症、製材品では安いが傷がつく、などと散々な事を言われている時期が一時ありましたが、それらはどれも人間の勝手によるもの。
おそらく花粉症だってそのはず。日本にある植林された杉の数は相当なもの。そりゃ花粉も飛ぶでしょう。それに、花粉だけが悪さをするのではなく、他の粉塵やディーゼルエンジンの排気ガスに含まれる物質と混ざることで、アレルギー反応を起こす、という事も言われていますので、どちらにせよやはり私たち人間に原因があるということだと思います。
無垢の木を使っておいて(しかも杉なら安いから、という理由で・・)、傷が目立つとかへこむとか、好き勝手いわれていたことがありましたね。
それに加えて「黒芯」という黒っぽく着色した芯材を持つ杉は、含水率(水分量)が多く、乾燥が難しい事やそれによる品質のバラつきの原因として敬遠されたりする事もあり、やはりよいイメージは少なかったのかもしれません。
それからすると、現在は国を挙げての国産材利用促進が叫ばれていることと、それにともなった杉などの国産針葉樹材のPRの効果もあり、杉にとっては少しは良い環境になったのかもしれません。

現在は、日本を中心に、少数のその仲間が残るのみの杉ですが、元々6500万年前~163万年前には、北半球を中心にスギ科植物が点在し繁栄していたそうです。
それはセコイア類3種(後に詳しく紹介予定)やヌマスギ、コウヨウザン、ミナミスギ、ミズスギと日本の杉を含む9属です。
その中でも現存するものでは、メキシコのモクテスマスギというヌマスギの一種「トゥーレの樹 アウェウェテ(ahuehuete 水の古代人の意)」は「樹幅世界一*」といわれ、ピサの斜塔をも凌ぐ世界最大幅14.85m(根回り58m)で、写真からもそのとてつもない幅が見てとれますし、樹高世界一というセコイヤはサグラダファミリアよりも高い、樹高111m。

*南アフリカのバオバブ、幹回り45m(統一規格ではなくすみません。)が世界一とも言われる。

琥珀(アンバー)の元として有名なナンヨウスギ科のアガチス(カウリ) Agathis australis も、つい数十年前まではセコイアに匹敵するような巨樹が現存していたそうですし、その事を伝える博物館まであるくらいですから、これらをみてもスギ属の成長のすごさを物語るとともに、繁栄していた時代をしのばせる物を感じる事が出来ますね。

因みに日本でも、国指定天然記念物(樹木)の数一位はスギの49件だそうですし、樹高1位ももちろんスギです。
杉を県木としているところも多く、秋田・富山・京都・三重・奈良・高知と聞いただけでどれも納得できる地域が杉を採用しています。
巨樹をめぐっていてもやはりクスノキと並んでスギは本当に数多く見る事ができるとともに、地域によってはその異形に驚かされる事も少なくありません。
おっと先にも言った通り、巨樹の話は今は我慢、おいおいお話します。

それくらい反映していた杉の仲間。
現在においては、そこまでの勢力はないですが、こと日本においては植林などによってかなりの面積の杉が蓄積されています。
そのスギの蓄積面積ですが、日本の造林面積の約40%を占めその面積は450haにもなるということです。

多くの蓄積を持つ理由は、古くから日本人に関わってきた樹種だからにほかなりません。
もっとも古くは日本書紀において杉は「浮き宝=船」にすべしという言葉が出てくる他、構造材では影が薄いものの、内部の仕上げ材つまり「和室やその他の木味を活かす部分」には、多く用いられてきました。
その優美な木目を活かした天井板や、成長が早くまっすぐに伸びる事を活かした床の間の柱、建具材や装飾部材にいたるまで、本当に幅広い部分に用いられています。
中でも、「柾目」という使い方ですが弊社で取り扱っています「百年杉柾浮造りフローリング」にも見てとれるように、まっすぐに流れる木目の模様は古くから高級材の代名詞であり、木を愛し端正で上品な印象を与えるその柾目には日本人の感性を刺激する優しい心地よさがあるのでしょう。

小口仕上がり拡大







木の床の不思議シリーズの「視覚編」でも紹介していますが、人間はあまりにも規則的に並んだまっすぐな模様にはとても不快感を覚えます。
ところが、スギの柾目に代表される柾目模様というのは、自然のもの特有の「1/fゆらぎ」という性質を持っている為に、落ち着きを与え不快感を持ちにくい事がわかっています。(詳しくは、木の床の不思議 視覚編を参照してください。)

また、嗅覚編にもある様に、杉に含まれる香りは気持ちを落ち着かせる効果や安眠効果、二酸化窒素(No2)が実証されています。(精油を吸入することによる脈拍の変化をみた実験など。)
感じ方には人それぞれありますが、他の芳香持つ木材に比べてやはり柔らかな香りを感じます。
これらの効果は杉材に含まれる「セドロール」という成分によるもので、体内時計を整えるホルモンである「メラトニン」や鎮静効果をもたらす「セロトニン」の分泌を促し、気持ちを落ち着かせたり安眠効果をもたらしてくれるそうです。
もちろん、産地や樹齢や生育環境そして芯材と辺材の違いにも大きく左右されますので、一概に言えない事は言うまでもありませんが、人間の肺が吸い込む酸素のうちの20%を脳が消費すると言われています。
体は脳からの信号によって動かされますので、その脳が消費する酸素の状態が如何に重要かということですが、杉は人の生活する大切な空気環境をも整えてくれる効果があると言えます。


スギの産地も天然・人工含めて日本各地に有名な場所があり、秋田・屋久島・霧島・春日・魚梁瀬(やなせ)・吉野などなど、業界でなくともイメージのわく産地が多い事がわかります。
一時期、社寺建築において多く活用された台湾桧のある台湾でも、吉野杉の苗木による造林があるそうです。

そして、建築においては桧に譲るような印象を受けるところもありますが、近年の出土で注目を浴びた、平安中期~後期(980~1180年頃)の建設だと言われている出雲大社の言い伝えであった天空の大神殿を物語る宇豆柱、その柱の材は杉だったのです。
直径1.35mの杉の柱3本を束ねて一本の柱とし、巨大な空中神殿を支えていたということです。

出土当時






 出土当時の写真です。

















社寺建築には桧を用いる事がほとんどですが、出雲あたりに適当な桧が無かったからか、もしくは天空に伸びる神殿に届くような樹高のものが杉しかなかったのかとも想像できますが、年輪幅などを研究するとどうもその柱材は人工林によるものである可能性が高いそうで、樹齢は150年~180年程ということで、そんな時代から日本では杉の人工林を利用し、更には人工林においてもそれほどの巨樹が得られるほどの本当の意味での森林大国だったのだろうと想像することが出来ます。
日本の建築には、杉の皮までを利用した「杉皮」なるものまで存在し、杉の皮がもつ耐水性を知っていた古来の人の知恵ですが、やはり捨てるところの無いくらいに杉を利用してきた歴史が残っているのもこの樹種の特徴でしょうか・・・

さて、最後に杉の表と裏を紹介しておきましょう。
表と裏といっても、人間の様にずる賢く「オモテウラ」があるのではありません。
いや、考えようによってはある意味賢いからこそ表と裏の違いがあるといえるのかもしれませんが、日本の杉は太平洋側の杉「オモテスギ」と日本海側の杉「ウラスギ」の2種が存在します。
これらは、針葉の角度や更新の仕方が異なるといわれています。

確かに日本海側の杉、それも巨樹古木を見てみると針葉の角度云々というよりも、枝が垂れて地面に接し、その部分から更新する「伏状更新」を見てとる事が出来ます。
これはこれで、見慣れた杉の直立する姿を全く覆してくれるもので、木々の命というものを感じられるものと今でも思っています。

オモテスギとウラスギの両者を実際に見てみると上記の様な違いを感じる時もありますが、それは杉がそれぞれの環境に適するために取った進化の跡であるだろうし、別種とするほどの違いでは無いとされていることもありますので、巨樹や森を見る時の一つの見解として知っておけば、更に色々な事が見えてくるのではと思っています。

さて、長々と紹介してきた「杉」ですが、次回はその杉の偉大さを迫力をもって身に感じさせてくれる巨樹をいくつかご紹介したいと思います。
私自身、今まで杉に関しては杉の巨樹トップ10の内半分にあたる5本の巨木に会ってきました。
いずれもその存在感にはただただこうべを垂れるのみ。
私たちの9世代以上前を知る巨人達の姿、いつもより駆け足ではありますが、紹介していきたいと思います。



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京都大学オープンキャンパス探訪「木」


さて、前回はオープンキャンパスというよりもアリさんの話でしたが、今回は木のお話。

実はこのオープンキャンパス、毎年開催されている(はず・・)んですが、昨年までは諸事情あり参加できず、今年こそはと思っている時に直前に杉山先生の講義を受ける機会にめぐまれたことから、今年こそは何としても出席せよ!、ということかな?と思い、予定を立てて臨んだものです。

中でも私が参加したかったのは、キャンパスの中に生えている木々を観察するというもの。
しかも、キャンパスの案内役は杉山先生であり樹木の説明付き!というとても有難いものです。
キャンパスには朝からお目当てのブースに集まる人たちがたくさんいたのですが、それに負けないくらい、私の中では予想外な位に人気だったのが、この樹木観察会。
申し訳ないのですが、今日ばかりは写真撮影枚数が半端ではない事を予想した私、構内や周辺の様子などは一切撮影しておりませんので、様子をご覧いただけないのがとても残念。
結果的に、予想通りで夕方キャンパスで最後に撮影したい物の前で電池切れ。
節約しておいて正解だったわけですが・・・

さて、樹木観察の内容としては、キャンパスの中を歩きながら先生のお話とともに、目の前にある樹木を見て葉の特徴や幹の特徴を観察して樹種を推測し、そして樹種が材になった時の有用性や使い方など先生の蘊蓄を交えて教わるというものですが、やはり実物が目の前にあり、眺めながら生の授業を受けるというのは贅沢ですねぇ。スルスル頭に入ってきます。

京大探訪木 1










この木の実をみて、何の木かわかりますか?!
この実と葉っぱ、樹皮で見分けるポイントを直に教えていただけるのです。
さて、正解は鳥の名前にもある木ですよ・・・

京大探訪木 2










巷でも目にする樹種の表示板。
皆さん気にしていますか?!これがあるとないとでは大違いです。
表示されている樹種も、表記にない様な説明も聞きながら廻る事が出来ます。

こんなの、本や観察ガイドではなかなか覚えられないし、ただ木を見るだけでなく、見分け方や特徴などをつぶさに御教示いただけるので、本当に有難い。

しかも、さきほどの実の様に枝などを切り取って、手にとれるようにしてくださるので、高い木の上にある実を観察するための双眼鏡や、鋸歯を探しても判別できないくらいにユラユラと風に揺れる葉っぱを凝視する、なんて必要もありません。
まさに、至れり尽くせり。

京大探訪木 3










毎年取り合いになるそうです・・・(笑)


そうやって、あっという間に2時間も探訪してしまうのですから木の魅力はすごいですね。
参加者も多く、なんか急に仲間が増えた様で嬉しくもありました。

そんな道中、日本の中でも大切な樹種である「杉」についてのお話も当然でてきました。これは避けて通れぬところ。
皆さん、杉も念入りにチェックされていましたが、そこで一番驚きだったのは(私は直前の講習で聞いていましたが)「杉はスギ科ではなくヒノキ科の下にはいるのが正しいと思われる」ということでした。
近年のDNA解析で、スギ科として独立させるのではなくヒノキ科の中にある方が適しているという結果になっているそうで、いろいろな面で「日本固有の樹種」や「日本の宝」などと言われている杉が、独立した科目で無くなると思うと、認めたくない気持ちです。
当の杉山先生も、ご自身の姓に杉の字があることから、残念ですが、とおっしゃっていましたがもしかすると近々出版される辞典類には、杉の項目に「ヒノキ科(注釈・・・・・)」などと表記される日もくるかもしれません。

どちらにせよ、杉は優秀な樹木であるとともに巨樹でも日本有数の樹種です。
一言に杉といっても、オモテスギやウラスギなどと分類されたり、どこにでもあるかと思えば、これが杉か?!と驚くような異形のものまで存在します。
そういえば、杉の浮造りフローリングの記事などで紹介はしていますが、その奥深い杉ワールドまでは脚を踏み入れていませんでしたね・・・

こりゃいい機会です。

次回から杉特集、スタートしましょう。
紹介しきれていない巨樹も合わせていければいいなぁと思います。
本当の杉のお話?または美化されたお話?!どうなるかわかりませんが、皆さんと一緒に杉ワールドへ踏み込もうではありませんか!!




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シロアリ画像を追加!


私たちの様な木材業や建築業の方は、その存在と外観は認識しているのですが、いざお客様に尋ねられた時にすぐに「これです!!」と出せないのは、やはり憎き相手と捉えているからでしょうか・・・

彼らです。
木を食害する虫たち・・・・・

お食事中の方、体調のすぐれない方は、ここまででストップしてください。


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