巨樹の林 「阿麻美許曽(あまみこそ)神社」 −ホーム編−
さて、昨日の神社編に続きお伝えします今日は「ホーム編」です。
昨日の阿麻美許曽神社の境内の3本の木は立派だったですね。
その記事の中で、「神社周辺には5本の(元は6本だった)・・・」と書いていた通り、あと2本の木が存在するのです。
それがあるのが実は、この「ホームさん」の敷地内なのです。
この一本は、前回ご紹介したものですが、この後ろの建物が、驚きのホームさんです。
だって、この一本も敷地に隣接していますが、これ以外にもまだ3本あるという、贅沢?!な立地だからです。
では、一本ずつご紹介。
先ずは、上の写真の木を撮影し終わったところです。
改めて周囲を眺めると、「あれ?さっきは見ていなかった方向に枝が・・・」と思い、目を向けるとそれはホームさんのエントランス前に堂々と立っていました。
はっきりと門があり、入口となっているので、念のため、ホームさんの職員さんにお尋ねしてから控えめに撮影です。
といっても、いきなり声かけられて、「写真とってもいいですか?」と聞くんだから、怪しまれるわなぁ。
それでもめげず、しっかりと撮影です。
しっかりとした幹ですが、他の3本と比べると、少し旋回していますね。
それでも枝分かれのない、大きな幹です。
巨木というほどではないにしろ、ほんと立派なものですねぇ。
なんじゃ、この地は!!・・・とこの出会いにワクワクとしながら撮影していたのですが、このエントランスを去ろうとしていた時、ホームさんの入口をふと見ると中庭があり、その中央にシンボルっぽい、それも円筒形のものがある。しかもちょっと大きい・・・
もしかすると、切り株?!!!と推測したのですが、さすがに施設の中にはいってまでは・・・と躊躇しつつ、ココまで来て(ココまで見て?)そのまま帰れない!!と変な気合が入り(ご迷惑ながら・・)、意を決して入り口から中へ歩みを進めました。
す、すみませぇーん・・・・
返事がない。が、中央右のガラス越しに見えるのが気になる・・・
えぇーい突入!!
勇気を出して受付に向かい、事情を話し撮影の許可を(半ば怪しまれながら・・・)頂きました。
そして近づき始めると、まさしく切り株。(といっても、ガラス越しなのでまさかオブジェじゃないよね・・・)
これだけ、大木の集まっているところです。
建築でやむなく伐採したのか、地盤から3mくらいのところで伐られています。
これが、「元は6本だっただろう」と記した理由です。
綺麗に整備された歩廊が続いている中にたたずむ一本の切り株。
どんないわれがあったんだろうなぁ・・・
結構無造作にきりとられたのかなぁ。
気になる。
主幹を伐られても、しっかりと根を張っています。
緑の時期には芽をだしているのでしょうか?!
株から上に目を移すと、空が開けている、開放感のある施設です。
と、気持ちのいい空を眺めると、なにやら屋上の向こうに緑が・・・
やや、これはもしや・・・
お礼を言って施設を後にし、早速、中庭から見えた緑を確認しにその方向に向かいます。
するとそこには・・・
まだあったのか・・・・
最後の(6本だったであろう)5本目の木です。
実はこちらも施設内にあり、裏手の駐車場内なのです。
こちらは幹を囲むように建物が建てられていますが、基礎の工事では、根に当たらなかったのか、心配です。
緑が映えているということは、大きな影響はなかったのでしょうが、広葉樹の根は、枝を張っている面積と同じかそれ以上張っているものです。
もう少しスペースが欲しいなぁ・・・と勝手に考えていました。
それにしても、コレだけの数がまとまってある神社、地域も珍しいものではないでしょうか。
この施設自体も、これだけ大きな木に囲まれていると、力をもらえそう気がするのですが、そんなことを考えているのはわたしだけでしょうか・・・
さて、撮影を終わりワクワク感をひきずったまま駐車場にもどると、神社境内で遊んでいた子供たちがうつむいているではありませんか。
そこには、大人が一人。
なにやら注意されている様子。
迷惑になるとか、ボールはいかんとか・・・
2人で仲良く野球やキャッチボールをしていたのですが、注意されたようです。
ボールがとんでいったからなのか、単純に境内だからなのか?はわかりませんが、どちらにせよ、街中で子供たちの遊ぶスペースがなくなる昨今。
危険なところもあったのかもしれませんが、なんとか遊ばせてやれないものかと、気をもんでしまいました。
特に、こんな大樹のそばで遊べる環境なんて、なかなかないですし願ってもないものだと思うのですが、どうでしょう。
だって、私もこんなところで遊びたいですもん。
そんな環境をこれからも維持しながら、数十年、数百年後にも、「阿麻美許曽の巨樹群」としてその名を残せる地となってもらいたいと思い、名残惜しく境内を後にしたのでした。
所在地
大阪府大阪市東住吉区矢田7丁目11
参詣用駐車場あり
巨樹の林 「阿麻美許曽(あまみこそ)神社」 −神社編−
仕事柄、どうしても車での移動が多くなってしまうのは仕方のないところなんですが、一番の難点!?は「弥栄のくす」の時に書いていますが、「重要なものを見落とすこと、見逃すこと」でしょうか。
私にとっては、大きな欠点です。
徒歩であれば小さなものでも、本当にいろんなものを見つける事が出来ます。
まぁ、それと比べてはいけないのですが、今回の様なものを見落とすと、やはりがっかりするものですが、この時だけはラッキーだったというか、本能的にみえたというか(笑)、車中から発見することができました。
それは何かというと、この写真でわかりますか?私が発見したものが・・・
車中からではないですが、同じようなアングルからの写真がこれです。
緑です。
が、普通の緑とは違うんですねぇ。
見えづらいですが、奥の方の緑は明らかに樟の巨樹だろうと思わせる、あおあおとしたもので、高さからしてもかなりのもの、しかも群生していそう・・・・というイメージでした。
そして、それらしい場所に近づいてみると・・・・現れた!!!!!怪獣・・ではなく想像通りの巨樹!!
それはコレ。
コレ、というか、本当はこれら(彼らといった方がよいですね。先輩ですから。)、なんですが・・・・
鳥居の後ろに広がる青葉。
その大きく広がった葉のあおさ。
巨樹の予感がするでしょ。
なんか近頃巨樹ブログの様になってきていますが、偶然ながら見つけたこの感動を、少しでも早くお伝えしたいため、木材記事をお待ちの方には申し訳ないですが、しばし趣味?に付き合っていただきたく思います。
基、ここは大阪府大阪市は東住吉区にある、阿麻美許曽(あまみこそ)神社という神社の境内。
先に「これら」とありますが、何故かというと、普通は「ご神木が一本、ありがたや・・・」というイメージなんですが、散策後にわかった事ですがなんと、この神社周辺には合計5本の(元は6本だった)樟の巨樹が存在するからです。
まさに巨樹の林です。
遊んでいる子供と、弊社トラックをスケール代わりにご覧ください。
結構、立派!!
2本をみると、杉の大杉を思い出しますね。
敷地のスペースから言っても、現在にこんなに巨樹がまとまって存在している場所をしりません。
当然、屋久島の森などは別ですし、街中での話。
それも、まだまだ無知な私の知る限りの事ですが。
まさしく、「おおぉ〜〜!!」と、感動の嵐です。
疲れた業務の帰り際の夕刻でしたから、巨樹達との偶然の邂逅はまさしく会うべくして会ったのだ!!と、今までの疲れを吹き飛ばし勝手に意気上がるにふさわしい物でした。
それでは一本づつ見ていきましょう!!
まず鳥居をくぐるとすぐに2本の樟が見えます。
というより、駐車場からあけっぴろげなので、すぐにわかります。
その2本のうちの一本、向かって右側がこちら。
しっかりとした根。
まずはいつもの儀式を執り行ってから・・・
石碑に囲まれて、まっすぐに幹を伸ばしています。
細そうに見えるでしょうが、立派な太さですよ。
背後がバスの車庫なので、その大きさがわかるでしょうか?!
樟は街路樹にも植えられるくらいですので、空気の汚染にはそんなにへこたれる事はない(常緑だからというのも理由の一つですが)のかもしれませんが、できれば、樟に向かって後方駐車出ない方がいいのになぁ・・・と思って見ていました。
車庫にも当然都合があってのことですけれども・・・
そして、鳥居の後方の巨樹。
子供たちが元気に遊んでいます。(後に一悶着起こる事は、この時はわかりませんでした。)
大きさ比較に出演してもらいましょう。
こちらも根から分岐することなく、まっすぐに伸びています。
まだ若い?からでしょうか。
こちらはすぐ近くまでよる事も可能ですが、土に悪いですし、根を守るためできる限り離れて観察です。
といいながら、少しだけ失礼して・・・
後ろに見えるのが右側の樟。
葉もあおあおと茂って、緑のかさになっています。
本当に気持ちいいです。
しかしながら本当に2本とも立派です。
さて、2本の撮影を終え本殿にお参り(順序が逆か・・・失礼。)を、と思い、奥に歩みを進めると、なんじゃ!?!(←本当に出た言葉です。)またごっつい(おおきい、太いという意味)のがいてるではないですか。
駐車場右奥の、古い門から入るとすぐのところに鎮座しています。
写真の右後ろです。
おおぉ!これも立派な。
曇りの天気の上に夕方為光がなくわかりづらいですが横の建て物を押さんと言わんばかりの迫力です。
ほぼ全景です。
細く見えていますが、実際は立派な樟ですよ。
建物のベランダにかかりそうな位に枝をはっています。
すごいなぁ、3本も立派な木があるなんて・・・
と感動しているところだったのですが、実は先に書いたとおり、この先にまだあと3本も出会う事になるのです。
なんと贅沢な一日でしょう!!
満足し空を見上げると・・・・
3本それぞれが枝を伸ばし、大きな空で話をしているかの様です。
3本を一つの枠に納める事の出来るのも、この神社の凄いところ。
さて、あと3本との出会いはまた明日、続きをお伝えしたいと思います。
神社編はここまで。
明日はホーム編です。
お楽しみに。
間違いやすい木の名前
昨日、ちょっとした用事でインターネットを見ていたのですが、やはり凄い情報量ですね。
調べようと思うキーワードや単語もきちんと入力しないと、えらく膨大な量の検索結果の中から一つづつ見ていかないといけません。
といっても、日々進歩しているでしょうし、数年前に比べると格段に検索しやすくなっていると思いますが。
そんな中で、たまたま見つけたページに「木材の名称」についてのことがのっていて、興味深く読ませてもらいました。
私も材木屋として、少しでも分かりやすく、また疑問の解決になるような記事を心がけているつもりですが、木材・建築などの業界の方でも知らない様なことや、一般名と通称名などが混在すること、また、雅名などがあるものもあり、依然、木材のわかりにくさについての検索は多いようで、そのページの管理者の方も丁寧に説明を記述されていました。
国産材でも、各地方の方言によっての呼び名の違いがある様に、輸入材は原産国によっても違い、また経由港によっても呼び名が変わったりするため、もう何が何やらわからなくなります。
弊社のページをご覧いただいている方の中にも、こんな疑問を持っていらっしゃったり、以前に調べていたりした方もたくさんいらっしゃると思います。
今回は、詳しくは述べませんが(書きだすとキリがないので、大きくとらえてご紹介します。)、よく間違われる一例をあげてみたいと思います。
1.日本人にはなじみの深い桧
これも、以前に取り上げた事がありますが、外国産の桧では米桧(べいひ。)、台桧(たいひ。たいわんひのき)、などがあります。
他に、ラオス桧がありますがこれは広義にはヒノキ科ですが、正確には少し外れるようですし、チベット桧というものもありますが、これもおそらく狭義では、別種のように思います。
そして百貨店にて一時期よく見かけた「アラスカ桧」。
これは良い命名だと感心しますが、正確にはスプルースです。
因みに、神代桧というものは、きちんと存在しますので、お間違いなく。
濃く色付けしたりして、こんな名称にしている桧などもあるかもしれませんが、神代木になった桧も出土していますので、これは正解です。
弊社の人気アイテム、金具不使用神代桧木製名刺ケース(名刺入れ)を見ていただくとわかると思います。
神代桧木製名刺ケース(名刺入れ)
あしからず完売です・・・
他には南洋桧といっているものは、アガチスという南洋材としては珍しい針葉樹材の事を指していますし、このアガチスは別名南洋桂ともいわれ、コンパクトな将棋盤などにも用いられています。
南洋材の話をすると、「ラワン」とは?!という、深い沼に入っていかないといけないため、その辺はまたの機会にさせてください。
2.それからもうひとつ、日本を代表する樹種「杉」
文献によっては、「杉は日本固有の樹種」とあるのですが、中国にも存在しているようです。
といっても、材木屋サンで見かける「中国杉」その他の名称の物は、正確には杉ではなく、「コウヨウザン(広葉杉・行者樅)」と呼ばれる、樹種である場合が多いです。
そして「米杉(べいすぎ)」。
これも、一見アメリカ産の杉かと思いきや、正確にはヒノキ科の樹種である日本で言うところの「ネズコ」という木です。
日本人は、自分の知っている名称を聞く方が安心するためでしょう、「アメリカネズコ」ではなく、「米杉」になったようです。
3.米桧や米杉などの「米の字」がでたところで、あと二つ、ややこしい針葉樹をあげておきましょう。
まずは日本の建築に無くてはならない構造材、「米松(べいまつ)」。
これも、当然アメリカの松だと思いきや、日本で言う「栂椹・トガサワラ(別名、吉野松)」(とが・さわらと分けずに発音してください。分けると別々の二つの樹種になっちゃいます。)という樹種にあたります。
ご覧になる機会があれば、じっくり見てください。
以前のクイズにも出した様に、日本の松とは少し違っているはずですよ。
とはいえ、米松は大径木のとれる優良な木であることには変わりありません。
そしてもう一つは「米ヒバ(べいひば)」。
とても芳香が強く、好き嫌いの分かれる樹種ですが、日本のひばに色はよく似ています。
が、香りがまったく違いますし、米ヒバと名前は付いていますがこれは前記の米杉と同じような理由の名付けだと思われますから、ひばではなく、どちらかというと桧に属します。
そして、針葉樹以上に手ごわいのがケヤキやナラなどの属する広葉樹です。
広葉樹は、針葉樹以上に日本の中でも名称が混乱しやすいのと、よく似た樹種を用いて希少種を代用している事が多いのが困ったところです。
一つづつ見ていきましょう。
4.まずもっともポピュラーな?!ややこしさである、「さくら・桜」
これも何度もお話しているのですが、未だに材木屋サンでも違いを知らない人が多く存在するワースト1の樹種だと思います。
なにがややこしいのか・・・・
桜という樹種をお求めになられた経験がある方なら、「これが桜?!」か「あそこの桜材と、こちらの桜材がまったく違う」、というどちらかの経験はないでしょうか。
それらの問題は、樹種の混用によるものです。
ブラックチェリー無垢フローリングのところでも詳しくお伝えしていますが、一般的に材木屋サンや家具屋さん(無垢フローリング屋さんも含め)が「さくら」といっているのはほぼ全て「樺・かば」です。
樹皮も、用途も桜と良く似ていますし、まとまって材がとれること、材質も美しいことなどがその理由でしょう。
しかし樺といっても、また種類がいろいろとあることもあり、外観の差は生じますので、各店によって違いが出たりします。
また、本物の桜(広義の真桜・まざくら)と比べると、お客様が桜材といって想像する「桜の花の様なピンク色」に近いために、本物のさくらを見てもらうと必ず「これが桜ですか?!」と訝しげなまなざしを受けるのです。
本物の桜を見せているのに、「この材木屋大丈夫か?!」というような感じで。
もう慣れてますが・・・
5.そして、塗装されると見分けのつきにくい「欅(けやき)」
塗装されると、と注釈したのは無塗装であれば判別できる場合もあるからです。
欅調や、欅柄というのは、当然欅を使っているのではなく、似た樹種である「楡(にれ)」や「栓(せん)」という木を着色塗装した物です。
楡の場合は、欅自体ニレ科ですから、無塗装でも判別しにくいですが、栓の場合は無塗装だと欅のような茶色を帯びた色ではなく、淡い灰褐色系ですので見分けがつくと思います。
色ばかり言うということは、それだけ木目も似ているということですね。
また、材質についてですが「イヌケヤキ」などという場合があります。
これは、材質的に劣っていたり、良材ではないものに充てられる事が多い名称のようですが、他の樹種では、「イヌ」とついても「イヌマキ」や「イヌガヤ」のように亜種や同属の別の樹種を表す場合もあるので注意が必要です。
6.また、これも有用な環孔材(導管といわれる組織が年輪の環のように並んでいる樹種)広葉樹ですが、「黄蘗・キハダ」という樹種があります。
これは、珍重される桑ほど濃い色合いではないですが、渋い色合いで硬すぎず柔らかすぎずの良材です。
そのため、桑の代用材として使われるので、「女桑(めぐわ)」と呼ばれる事があります。
私は美しい雅名だとおもうのですが、ややこしいだけでしょうか?!
さてさて、もう言いだしたらキリがなく、他にも以前書いている「オークと樫の木」や、ブラックウォールナットに似せた材、その他鉄刀木(タガヤサン)や「●○紫檀」という名称と、仲間については、各記事を参照していただきたく思います。
いずれにせよ、これらを「偽物・代用品」と位置付けているのは人間の都合からです。
それぞれの材にはそれぞれの個性があり、同じものはないのです。
ですから、樹種について本物か偽物かと考えるよりは、その樹種の特徴と良さをどれだけ理解できるかに気持ちを向けてもらいたいものです。
これは、人と接する時も同じですよね。
訝しがって眺めるのではなく、歩み寄っていくこと。
それが木材に対しても違和感なくできるように、疑問やややこしい用語の話題にも触れていきたいと思います。
では、またの機会に。
薫蓋樟(くんがいしょう)追記 稗島のくす
この前に、大阪府が誇る巨樹「薫蓋樟(くんがいしょう)」という、我が茨木市からも近い門真市に鎮座する大クスノキをご紹介しました。
如何だったでしょうか。
両手を広げた私よりもはるかに大きかったでしょ。
立派な巨樹でした。
しかし、実は薫蓋樟に訪れた時には勉強不足でした。
「近くには、100年生ほどの樟が云々・・・」と書いていますが、なんと、ほんと近くに100年どころではない、隠れた(といっても、結構有名なのですが・・)大木があるのです。
それを、今回、薫蓋樟番外編?!として追記したいと思います。
その木の名前は「稗島のくす」。
樹高10m、周囲7m、推定樹齢400年。
灯台もと暗しとはまさにこの事。
薫蓋樟をお目当てに行動していた私は、まったくこの存在に気づいていませんでした。
薫蓋樟にご挨拶した帰り際、車中での信号待ちの時です。
ふとそばを流れる古川を眺めると、川沿いの少し先に何やら緑が川に張り出している。
よくよく見ると、一本の木の様。
「この距離であの大きさ。こりゃ結構大きいぞ。」
と、薫蓋樟の興奮冷めやらぬ私の心を揺さぶったのですが、その日は予定があり、目の前の巨樹らしき存在に近づく事ができませんでした。
因みに私が大急ぎで車中から納めた写真がコレ。
そこで帰社後、薫蓋樟についての事を調べていると、ちゃんと出ているではありませんか・・・
結構有名だったみたいだけど、ホント、材木屋だけに「木を見て森を見ず」ならぬ、「森の様な巨樹を見て、木を見れず」というような状況で、歯がゆい思いをしていました。
その後、都合をつけて(これは巨木が近くにあるからできる事。ありがたや。)再度、改めて稗島のくすに対面に行きました。
実はこの稗島のくす、ご覧の通り、敷地内に生えています。
敷地内というのは、「民家」ということです。
なんと、一個人のご自宅にこんなに大きな木が聳えているのです。
府の天然記念物にも指定されているそうです。
よく保存してこられたなぁ、と有難く拝聴させていただきました。
といっても、敷地の中まで入っていくわけにはいかないので、半ば怪しいカメラマンの様に、あらゆる角度からできるだけの写真を撮る事にしました。
横の空き地からの撮影。
クスノキの特徴、下部から太い幹が枝分かれしています。
これは稗島のくすの南側の橋の上からのアングルですが、枝ぶりをしならせて川べりに大きく伸ばしている姿はとても雄大で美しく感じます。
稗島のくすは大きさからすると、薫蓋樟には全く及びませんが、個人邸に生きてきた事や、枝ぶりの美しさ、川沿いという立地などもあり大木というだけではない雰囲気を見せてくれる立派な樟でした。
もし、薫蓋樟に会いにお出かけのことがあれば、この稗島のくすにも会いに行ってみてください。
ただし、個人邸内ですので、くれぐれもご迷惑のかかることのない様に注意の上ですが。
また、駐車場は当然ながらありませんので、徒歩かタクシーかでの散策をお勧めいたします。
薫蓋樟から徒歩で約15分ほどと思います。
稗島のくす所在地
大阪府門真市稗島510 長谷川邸内
駐車場無し
黄金週間 ゴールデンウィークの休業のご案内
年末年始やお盆、そしてこの4月になると意識するゴールデンウィークの休業日のご案内をする記事になると、「あぁ、時間がたつのは早いなぁ」と感じてしまいます。
一所懸命頑張っている証拠!!という事にしておいてください。
それだけ年をとってきているともいえるのですが・・・・
さて、本年のゴールデンウィーク近辺の休業案内をさせていただきます。
弊社の休業日は昭和の日である4月29日(金)、日曜日の5月1日(日)、そして5月の3日〜5日なんですが、気をつけていただきたいのはその後の5月7日(土)は第一土曜日の休業日にあたっています。また、次の日は日曜日ですので、実質7日〜8日が連休となります。
3回ほど飛び石になっていますので、ご予約ご連絡いただく場合はお手数ですが、日程ご確認いただきますようによろしくお願いいたします。
休業日をご希望の場合はご相談お受けいたしますが、倉庫が閉まっていたりする都合、ご希望の物をご覧いただけない事もありますので、都度お問い合わせいただきますようにお願いいたします。
30日は通常営業です。
真っ赤っかですね・・・
中日、2日と6日は営業しております。
なお、連休中にいただきましたお問い合わせやご予約については、順次回答させていただきますので、よろしくお願いいたします。
永年の積み重ね −感謝−
本当に有難いと感じます。
ご紹介をいただいたり、前回お世話になった方々からのリピート注文です。
今年になり、以前に木材を購入していただいた方が数名、「またもらいにきました!」とご来店いただいたり、ずっとお付き合いさせていただいている方からの工事依頼のご紹介を頂いたり。
そんなこんなの話を頂き、今年は弊社による新築、増築、改装などのお仕事をさせていただく機会が多くなりそうです。
これらの中には、「この地域でずっとご商売をされているし・・・」というお言葉を頂く事もあります。
有難いお言葉です。
一時期に売り上げをあげる事は、もちろん困難もあるでしょうが何とかなるのかもしれません。
が、60年以上も継続していく事、またその地域で選ばれる事は、一時の隆盛だけでは決してできない事だと感じます。
こんな時代から頑張ってきた積み重ねです。
大きく派手にはできないですし、中にはご要望にお応えできないものもあるかもしれませんが、できうる限り対応させていただきたいと思います。
これからも、安心していただける業務を心がけますので、厳しい時代ですが継続していけるように、ご注文を頂けますようによろしくお願いをいたします。
ご注文、ご紹介を頂いたお客さま方、いつもありがとうございます。
トイカメラなるもの
いつも記事を綴る時、拙い文章での説明を補助してくれる頼もしい存在である写真。
前にも書きましたが、正直私は写真撮影は得意ではありません。
自分が「これを残したい!!」と思って撮るのですが、遠近や、光の加減がなかなかうまくいきません。
記事中でも、うまくご覧いただけていないところが多々あり、改善の余地ありだと日々思います。
そんな私ですので、カメラにこだわりを持つ人ほど詳しくはわからないのですが、個人的には利便性は抜きとして、やはりフィルムカメラの写り方の方が好みの様に感じます。
未だに愛車のオーディオがテープデッキであったり、テレビの録画もビデオテープだったりするアナログ人間だから、贔屓目に見ているところもあるのかもしれませんが、そう感じます。
そんな私の気をひきつけた昔のカメラが出てきた記事は以前に書いていますが、昔のカメラではなく、「昔風」なカメラが近頃話題になっているという話を聞きました。
その名も「トイカメラ」。
英語として考えると、おもちゃカメラ?!なんでしょうか。
いや、どおもしっかりとしたカメラの様です。
数社が販売しているようなのですが、昔のカメラらしい風貌の彼らは、フィルムタイプもあれば、デジタル版もあるそうで、何やら面白そうです。
しかも価格も数千円単位からの実勢価格の様で、かなりお手頃ではないかと感じます。
当然、なんでもオートの近年のデジカメとは違い、フィルムタイプではピンボケや露光ミスといった現象が起こりやすいですが、それも現在のミスなく素早く仕上がりを確認できる事に慣れている事からすると、逆に新鮮で楽しいという意見もあるそうです。
冒頭の様に、私はカメラには精通していませんが、私だけではなく、みんながどこかで欲しているものが「トイカメラ」にはあるんでしょうね。
いくら高性能でも、いくら素早くても、いくら簡単でも、それだけでは何か足りないのかもしれません。
カメラの被写体を撮影するということ一つをとると、単純には高性能なモデルがあればよいのかもしれません。
が、やはり、押し入れの片づけをしていた時に、奥の方から出てくる昔の色あせた写真のあの何とも言えない雰囲気や、それから感じ取れるいろいろな想いは、色あせているからこそ出てくるものでもあると思います。
いつまでも綺麗なままも良いでしょう。
しかし、人間にも寿命がある様に、やはり写真やカメラも古くなり、色あせても良い様に感じます。
それが時間の中で「生きている」という事なのではないかとも思います。
私の扱う木材もそうですよ。
幾年月を生きてきた樹木が、伐採された後もまた材木として人間とともに時間を過ごすわけです。
当然色あせますし、年もとります。
油気がなくなる事もあるだろうし、人間の怪我同様、傷もたくさん付きます。
ですが、やはり、それらこそが同じ時間の中で過ごしていける木の良さであり、ピカピカの傷のつかない木目柄の「商品」との決定的な違いであり、いつの時代も生活の中にある理由だと思います。
アンティークやレトロといったものを好む日本人なのに、木や住宅に使う木材には、古びていく良さを見出しにくくなっている様に思います。
カメラでもそうですが、無垢の木材だからこそ、時間とともに古びていく良さを知ることができますし、それを眺める楽しみができます。
古びていくことのない、石油由来の建材製品だけでは感じる事の出来ないもの。
無駄、手間がかかる、時間がかかる、といって今までそぎ落としすぎていませんか?!
そぎ落としすぎると、無味乾燥な人生になるのではないかと危惧します。
少なくとも、今の「普通の」住宅にはそんな感じがします。
一般の方にも、カメラだけではなくもっと木材と過ごす味わいをお届けしたい。
アンティークやレトロな雰囲気だけではない、自分とともに過ごしてきた時間を見てとれるのは、木材の素晴らしいところです。
私の様な、自称アナログ人間だけではなく、もっと多くの皆さんに古びていく良さを伝えたいなぁ・・・
トイカメラなるものを眺めながら、そう思う今日一日でした。
これは、本物の40年前のカメラ。
子供が喜ぶような物を残していきたいですね。
床(フローリング)にもっとも適した木材とは・・・ 〜まとめ〜
これまで数回に分けて木の床・無垢フローリングの選び方についていろいろとお話してきましたが、今回はまとめと、前回までにあげていなかったポイントをお話したいと思います。
初めにお話した、床に求められる条件のうちの「足触り」についてですが、これは前回の杉のフローリングの話に通じるものがあります。
以前の記事で、「木の床がどうしてあたたかいのか?」という事をお伝えした事がありましたが、温かさと足触りはとても近い関係にあります。
物体が熱をどれくらい伝えるかという事を知るために、熱伝導率(ねつでんどうりつ)という数字を用いる事があります。
この数値が小さいほど、その物質の表面を触った時に冷たく感じにくいのですが、木材はどのくらいでしょうか・・・
各材の目安数値です。(温度等にも影響されるので、コンクリートは常温、ステンレスは0℃、木材は20℃とした場合。)
・ステンレス 21.1
・鉄筋コンクリート 0.86
・ポリスチレン 0.068〜0.103
・楢(ナラ) 0.14
・桧(ヒノキ) 0.11
・杉(スギ) 0.08
注)木材は含水率(木材中に含まれる水分)にもかなり左右されます。
という数値です。
ポリスチレンなどは断熱材に使われるほど、熱の逃げにくい素材ですので、数値は低いです。
が、木はどうです?
優秀ですよね?
ポリスチレンほどではないにせよ、杉などはかなり小さい数値にあります。
この事が、足裏からの熱が逃げる事を防ぎ、そのおかげで温かく感じるのです。
実際、物体を触って冷たい!と感じるのは、その物が冷えているのではなく、その物に自分の温度を急速に奪われていくからだそうです。
熱伝導率の大きい金属板などが冷たいのはそのせいで、反対に木が温かいと感じるのも、このおかげです。
また、熱伝導率が大きいと、どんどん熱が奪われますので、ずっと冷たく感じるのですが、木材などは、樹種により触れた最初は冷たく感じるものでも、徐々に熱が蓄えられ冷たさは和らぐはずです。
もちろん、触れた反対側が以上に温度が低い場合などは、いくら木材でも冷たく感じますので、床の場合も断熱施工は欠かせませんが・・・
これが木の温かさにつながるもので、ただ単にイメージとして「あたたかい」というだけではないことの理由です。
ですが、熱伝導率の小さい木は自ずと軽軟な樹種が多くなるため、杉の様に表面の硬度は低くなります。
そのため、表面の傷は大きくなります。
また、こういった具合に経年変化もします。
木の年輪の硬い部分がのこって、軟らかい部分が摩擦により少しずつ削られた証拠です。
このような状態になりにくいものを、耐摩耗性の高い樹種といいます。
といっても、これらの傷の付く樹種はアイロンなどを用いる事により、傷を戻すことができたりしますので、あまり傷に神経質になる事はないとも思います。
これも初めお伝えした条件の中にありましたね。
つまり、歩行などの影響を受けて少しずつすり減るのは当然のことです。
ですので、歩行頻度の大きいところなどには、耐摩耗性の高い樹種を選定する必要があります。
耐摩耗性の高い樹種とは、比重(ひじゅう。物質の重さを同体積の水と比べた場合の割合)が高い物の方が重硬な性質になるため、硬い樹種に目が向くのですが、あまりにも重硬なものになると今度は硬すぎることと、先に書いた様に熱伝導率が大きくなる傾向にあるので、冷たく感じる為にだいたいは比重0.6〜0.7位の物が当てはまります。(因みに日本産材でもっとも重たいもので1.0位。世界では1.3近辺位です。)
桧や杉などの針葉樹はほぼ0.4近辺から0.6未満ですので、この条件には広葉樹である樺(かば・バーチ)、楢(なら・オーク)、メープル(楓)、などの樹種が向いているといえます。
樺(樺・バーチ)幅広無垢フローリング
また、広葉樹の場合は木の表情も針葉樹に比べ様々な為に、意匠性(外観も含めた)の為に選ばれる事が多いのも一つです。
板屋楓幅広無垢一枚物フローリングです。
そして木の床の持つ特徴として語られることのある、「木の床にするとダニ防止になる」といったもの。
これらも、ある意味で木の床・無垢のフローリングを選定するにあたってのポイントになるのかもしれません。
ダニというのは、餌があり湿度・温度の高いところを好むそうですね。
人間の生活上で出るものが餌になるようですが、木のフローリングの場合は表面が平滑であるためそれらを貯め込みにくく、しかも自身が吸放湿しながら湿度を調節するので、過剰に湿度が高くなりにくい。
また、ある種の木材には、ダニの動きや繁殖を抑制する「精油成分」が含まれています。
桧やひば、杉などです。外国産のものでも台湾桧や米杉(べいすぎ。あめりかねずこ)、米ヒバ(日本のひばとはちがう。)などがそれにあたります。
そのため、フローリングの溝などに入ったものでも、精油成分の忌避・抑制効果で繁殖を防いでくれるといわれています。
ただ、注意していただきたいのは、これらの精油成分は人間には全く無害とは限りません。
木は天然素材だから安全、という安直な考えが通用しないのです。
木に対する良いイメージであるのは私も嬉しいのですが、一方で精油成分によりアレルギーを起こす方もいらっしゃいますし、加工粉塵を吸い込むと有害なものや、湿疹などを誘発するものもあります。
それらは、木にとっては自己防衛の手段であったりしますから、使わせてもらっている人間の方が注意するべき事項だと私は思うのですが、イメージのみで木を使う場合、特にアレルギーや疾患を持っていらっしゃる方は選定に注意が必要な場合もある事を知っておいてください。
といっても、木のフローリングだけに限らず、1番の予防法はいつも綺麗にしておくことだと思います。
精油成分も殺虫薬物ではないので、万能ではありませんしね。
そして勿論、摩耗性の高い床といえども摩耗はすることと、軟らかくてへこみやすくても、ある程度削られると変化のスピードは抑制されるので、兎に角柔らかいものはダメ!という決めつけにはならない様にしてくださいね。
いかがでしょう。
木の性質も含めていろいろとご紹介しましたが、木の床・無垢フローリングを選ぶ場合の指標は少しはできたでしょうか?
自分は木の床・無垢フローリングに何を必要とするのか?
何を見ればよいのか。
少しは手助けできているとよいのですが。
そして、考えた後は是非、弊社ショールームにお越しいただき、実物を見て、じっくりと木についてのお話を聞いていただければと思いますので、ご予約いただける事をお待ちしております。
弊社取扱の無垢フローリング・羽目板ラインナップはこちらの記事下段からご覧ください。
床(フローリング)にもっとも適した木材とは・・・ 〜杉は柔らかくて床材には向いていないの?!〜
このコラムの書き出しで、「杉はフローリング材に適していない?!」という質問を受ける事があります、と書きましたが、それについて少しお話しましょう。
前回、床に求められる条件の中で弾力性というものを忘れた硬さのみが追及されている、といったような事を書きました。
硬さと一口にいってもいろいろな意味がありますが、前回に示したものはフローロング材の化粧表面の硬度を表しています。
だから、表面につくすり傷やへこみに対して硬いか否かというような話になります。
それでは、別の意味での硬さとは一体何でしょう。
無垢のフローリングの場合は、弾力性から来る衝撃吸収性や「しなり」といったことが、単純な意味での「表面硬度」以上の本当の硬さといったものを示してくれます。
では、その「弾力性」や「しなり」というのはなぜ生まれるのか?
皆さん、「木は生きている」と普通に表現しますね。
少なくとも、建築屋さんや、材木屋さんはそう表現します。
大抵はその後に「だから反る、曲がる」といった説明を始めるのですが、この表現のあやふやなところは以前の記事でもお伝えしました。
が、その生きているという表現通りの部分が今言う「弾力性やしなり」に寄与しているのです。
左が角材、右にその顕微鏡拡大・・と仮定して見てください。
へたくそな絵ですみません・・・
木というのは、生きている植物からなるものです。
そのため、細胞組織を持っています。
丁度、絵のストローの様な部分と考えてください。
このストローの様な細胞の一つ一つが、衝撃を受けた際のクッション材となり、衝撃をうけたときの力を和らげてくれたり、タワミではなく「しなる」ことで衝撃を吸収しながらも形状を維持できるのです。
因みに、高さ90cmから人が飛び降りたとすると、着地の時には400kgの力が作用するそうです。
ごっついお相撲さんがのっかったような重量ですね・・・
人はこの衝撃を、自らの足腰でにがしながら受け止めているのです。
凄い力がかかっている事になりますね。
足腰にかかるのは相当な負担だということです。
ですが、衝撃の受け方というのは、衝撃の加わる相手材によるのです。
例えば、陶器の器を落としたとしましょう。
コンクリートや金属の上に落とせば割れてしまうでしょう。
しかし布団では?!
おそらく割れないですね。
衝撃吸収力が違うからです。
それと同じように、木の場合は先程あげた様に細胞を持っているため、ストローの様な細胞組織の一層一層が少しずつ変形し、何層にもわたり衝撃を吸収していく作用があるのです。
だからこそ、木の床の上で跳んだり跳ねたりした場合にも、足腰にかかる負担を軽減してくれるため、木の床・無垢フローリングは疲れが少ないといわれるのです。
ボーリング場の床はボコボコへこんでいますか?
持つのも重たいボーリングのボールの衝撃を受けても割れない、すぐにへこまないのは、単純な表面の硬さではなく、衝撃を吸収しながらそれに耐えるという「耐衝撃性」をもっているからです。
もし、レーンがコンクリートなら、一投しただけで、玉か床のどちらかが割れているでしょう。
合板の場合は言うまでもなく、字のごとく、ベニヤ板同士を何層も接着剤でこってりとひっつけていますし、表面のわずか「0.数mm」の単板(うすぅ〜くスライスされた木材の板)の上にはコッテリと着色塗装と硬化剤入りのクリヤー塗装が施されていますので、見た目は木の様ですが、塗装の層や接着層に阻まれて弾力性を発揮できないと思われます。
さて、今までの事をふまえると、冒頭の杉のフローリングは床に向いているのでしょうか?
答えは??
確かに表面の硬度でいえば柔らかく、へこみや傷はつくでしょう。
ですが、杉材が柔らかいということは、それだけ弾力性が大きいということです。
ですから、歩行にしても、転んだ時にしてもその衝撃を緩和してくれるのが杉のフローリングの良いところです。
表面に傷がついたって、足腰の負担が大きいよりはよっぽど良いですよね?!
だから、杉の無垢フローリングを床に使うことをお勧めします。
ただし、今まで言ってきたような表面の一時の美観を気になさるならば、すぐに合板を検討した方がいいでしょう。
ここまでで少しは疑問は解決できたでしょうか?!
少なくとも、杉がダメだという風評?!は覆せたのではないかと思います。
次はまとめとして、木の床・無垢のフローリングの持つ性質を取り上げていきたいと思います。
床(フローリング)にもっとも適した木材とは・・・ 〜住宅の床に求められるものとは〜
木の床(いわゆる無垢フローリング)に適した材料とは何なのか?!
このテーマについての、今回は住宅の床に求められるものは何か?を見ていきたいと思います。
まず、床に対して求められるものとはなんでしょう?
次に挙げていくと、
・荷重(荷物や人の重さなど)に耐えられる事
・滑りにくい事
・弾力性
・耐衝撃性
・耐摩耗性
・堅牢さ=硬さ
・足触り
・保温性
などです。
一概に、一言では現しにくい表現も含まれていますが、おおよそこういったところです。
これらにあげた要素は、ほぼ木の床でカバーできるものだと思います。
だからこそ、木の床が使われるわけですが、今の住宅はどうでしょうか?!
ほとんどの場合、「木の様な」床である事が多いです。
合板である場合がほとんどですが、中には木の柄(がら)をプリントしたものまで床に使う様になってきています。
その方が、耐摩耗性、耐衝撃性がよく、更にワックスをかけなくてもよく、均一な仕上がりが期待できるということです。
さてさて、これらは床に対する必須条件でしょうか?!
耐摩耗性や耐衝撃性というのは上記の条件に含まれていますが、ワックスがけしなくてもよいとか、均一な仕上がりというのは含まれていませんね。
これらの、均一であるとかワックスをかけなくてもよいという美観上の点を重視しすぎて、肝心な事を忘れてしまっているようです。
いや、現実として合板メーカーも美観を優先的に選びましょう、というようなフローリング選定法を提唱されていますので、重視してしまうのは仕方ないと思います。
ですが、最初が一番美しく、年を重ねるごとに美観を損ねる可能性があるから、とにかく硬くとにかく均一に仕上げておかないといけないのでしょう。
私が今まで改修工事を見てきたお宅で、たくさんの「美観どころか機能まで失った」フローリングをたくさん見てきました。
とにかく硬く、とにかく均一な物が剥がれてしまうと床としての機能まで失ってしまいます。
どれもこれもバリバリとめくれてくる表面は、床として使えない物ばかりでした。
確かに初めは美しく均一で傷が付きにくいので、印象は良いでしょう。
でも、印象だけで床材が決まって嬉しいのは販売業者さんだけです。
なぜなら、わざわざ今回のコラムの様に時間を割いてお客様に「床材とは?!」、「求められる性質とは?!」というような事を説明しなくてもよいからです。
いつ、誰が頼んでも同じものが施工できるのですからそれはそれでメリットかもしれませんが、住まいの床としての機能性や本来の必要性は全く無視されています。
ただ「床として使っている」だけの状態です。
この状態を基に「フローリングを選ぶ」といっても、迷うのは当然です。
床にとって他に必要なものの情報が無いのですから。
ましてや、無垢の木のフローリングとなると一枚一枚違う色、木目、そして樹種によっても異なる柔らかさや香りなど、様々な要素が入ってきます。
それらの情報はあまりにも少なく、未だに無垢の木のフローリングでも名前から来る印象や、木に関する乏しい情報のみで選定しないといけない様な状態です。
特に、木の持つ弾力性や本当の意味での求められる硬さについて説明してもらえる機会は少ないと思います。
そして、それらこそが本当に知ってもらわないといけない選定法と関係している、と私は思っています。
では、木のフローリングの樹種選定をどうやっていけばいいのか?!
次回に少し難しく?!お話しする事にしましょう。
床(フローリング)にもっとも適した木材とは・・・ 〜書き出し〜
弊社でもいろいろとご紹介していますが、住宅においての木材の利用用途の中で割合の多い部分にあたるのが「無垢のフローリング」です。
がしかし、木材の種類が多様であるのと同じように、フローリングに使われる木にはその種類毎に様々な特徴や特性をもっていますので、いったいどういった基準で床材をえらべば良いのかと、迷われる方も多いと思います。
たまに質問を受けます。
「無垢のフローリングにしようと思うのですが、杉はフローリングには向いていないんでしょうか?!」
んん!?一体どこから誰から、杉はダメ、みたいな話が出ているんでしょうか・・・
おそらく、伝言ゲームのようになって、誤解が生んだ噂?!となっているんでしょうね。杉も立派なフローリング材となります。
現に、弊社の人気アイテム「浮造りフローリング」があるんですから・・・
さて、木の床の不思議シリーズで、木材の特性などを紹介していますが、実際のところ何が床に適した材なのかということははっきりとはしていませんでした。
そもそも、木の床にする必要性とは一体何でしょう。
オシャレだから?!温かみがあるから?!他と同じ物ではない方がいいから?!健康的だから?!
一般的に住宅建築材として考えると、こんなところでしょうか?!
しかし、実際その木の特性を活かし、木を使う必要性があって使う場合は適材というものが存在します。
たとえば、ボーリング場の床は主に「板屋楓(いたやかえで)などのメープル」を使います。
衝撃に強いうえに適度な弾力性があるために、ボーリングの玉の衝撃にも耐えるためです。
そして現在はどうか定かではありませんが、紡績工場の床板は埃の付着を防ぐために「アサダ」という木材の赤身部分で誂えないといけない、という話です。
他には、剣道での踏み込みによる足から体への衝撃の緩和に杉のフローリングが使われていたり、かなり特殊なものでは能舞台には必ず木裏(きうら。木材を板に加工した時に木の中心に近い方の面)を表面にしないといけないとか・・・・能舞台は、舞台を踏みならした時の響きが、木裏の方が反りなどの影響もあるのでしょう、響きが良いということと木裏の方が木目がたち滑りにくいので、わざわざ木裏を使うそうです。
また、床とは関係ありませんが、能において木の板に描かれた絵松といものがありますが、それも木裏使いだそうです。
木表は艶が出て篝火を反射するため、見えづらくなるそうですが、木裏ではそれがないそうです。
それらの事情から、通常フローリングや板材の利用には木表(きおもて。板にした場合に樹皮に近い方の面。)を表面にしますが、その通常が能舞台では「通常でない」わけです。
特殊かもしれませんが、用途がはっきりしているとこういった樹種の特性や木の性質による違いを巧みに利用したフローリング樹種選びがされています。
では、一般住宅ではどうなんだろう。
やはり健康的であることが一番でしょうか。
いやいや、それだけではないんです。木の詳しいところまで知っていただくと、少しは納得した選定がしやすいと思いますので、次回からその理由や床に要求される性質などを交えてお話していきたいと思います。
お楽しみに。
素晴らしい巨木 高知県大豊町の「杉の大杉」
私は材木屋として仕事をしてからこの数年前までは、恥ずかしながら「巨樹は山深くにひっそりと立つもの」というイメージを持っていました。
当然、街中にも大きな木で府や県、あるいは市の保存樹に指定されている物を目にしますので、必ずしも・・・というわけではないとは思っていましたが、それらとは明らかにスケールの違う、本当に「巨樹(きょじゅ)・巨木(きょぼく)」といわれるもの達まで、意外にも人里の近くに存在している事を改めて知りました。
いや、人里の近くにあったのではなく、人が山を街に変えてしまったからなのかもしれませんし、あるいは人がいたからこそ、畏敬の念を持って保存されてきたのかもしれませんから、一概にはいえませんが・・・
少なくとも、今回出会った巨樹は、一番後者の類に属するものだと確信しています。
高知県は大豊町(おおとよちょう)の八坂神社境内に聳え立つ「杉の大杉」です。
「特別天然記念物」の文字が大きく掲げられています。
「特別」とつくところが、通常の天然記念物とは一線を画すところ。
天然記念物の中でも、国家的、世界的に価値が特に高いものをさして「特別天然記念物」とするそうで、如何に貴重重要な大杉かがわかるというものですね。
出会ってみると、樹齢3000年以上といわれている風格たっぷりの本物の巨樹古木です。
写真では、あの天を突きさすかの如く聳える2本の巨樹の姿の大きさを伝えきることは困難です。
この杉の大杉、高知県の高知自動車道の大豊インターを下車し、南へ5分程も車を走らせれば会うことのできる巨樹です。
すぐ近くにはこの巨樹に因む大杉小学校という学校があるくらい、人々の生活に近い巨樹です。
畏敬の念を込めて、いつもの儀式中・・・
さて、この杉の大杉。先にも書きましたが、実は根のところで2本がつながっているそうです。
このあたりかな?
その為、別名「夫婦杉」とも呼ばれているとか・・・
樹木などが根や幹で融合することは稀に見られます。
屋久島の屋久杉にも、両の木々が幹を伸ばしあい、まるで手をつないでいるかのように見えるものがあり、やはりそれらも「夫婦杉」と称されていました。
彼らも生きているのです。
もしかすると、本当にお互いに惹かれあって融合しているのかもしれません。
杉の大杉の場合は、両者各「北の杉」と「南の杉」と呼ばれています。
かたや北の大杉は、樹高56m、根と幹の境部16.5m。
こなた南の大杉は、樹高60m、根と幹の境部20mだそうです。
一本でも相当な巨樹なのに、大きさの違いはあれど、二本も林立しているとまるでそれだけで字の如く「林の様な」様相です。
また彼らの近くには、もしや彼らの子孫か?!結構な大きさの杉が背を伸ばしています。
屋久島でいうならまだ「小杉」という樹齢にも届いていないでしょうが、それでも小杉候補、ひいては1000年後(?!)には杉の大杉に並びかける巨樹に成長しているやもしれません。
それらのお陰で神社境内は、昼間で太陽があるにも関わらず影の部分が多く、より杉の大杉に迫力を与えているような気がします。
しかし、巨樹に会いにいっているわけですから、当然凄く大きな木である事は頭に入っていますし、本では見た事があったにもかかわらず、いつもながら・・・いや、今回はいつも以上にびっくりしました。
何にって、大杉の大きさといいその迫力に、です。
無意識のうちに「うわっっ!!」と声が出て、若干後ずさりしてしまいました。
私は普通の人よりは、巨樹に対する想いがあるためか、やはり彼らには畏れをぬぐう事ができません。
だからこそ、正直に向き合えるのだとも思っていますが、本当に恐ろしいほどの大きさです。
南の杉の巨樹ならではの異様な幹の張り出しにも驚くところです。
日本一の巨樹といわれる、「蒲生の大クス」(いずれご紹介します。)にあった時も、最初は怖くて近寄るまでに少し時間がかかりましたが、さすがに「杉日本一」と案内される(計測基準により一般的には縄文杉が一番だともされていますが・・・)だけあって、杉の大杉もかなりの迫力でした。
彼らについては、いろいろと解説されている巨樹の本や、資料があると思いますが、実際今回私が訪ねてこそ知り得た事は「杉の大杉は宮崎県の飫肥杉(おびすぎ)に由来する」ということです。
境内に入ると自動的に(と思う)流れるアナウンスで知りました。
一説には、スサノオノミコトが植えられたとも伝えられているそうです。
伝説や日本書紀の「杉と樟は浮宝(船)にすべし」というとおり、このあたりの海に囲まれた地域には「船用材」とする杉や樟が必要だったためかもしれませんね。
北の杉の側面からのアングル。
すっきりとした体つきです。
南の杉。
巨樹にはよく見られる樹皮に現れたゆらゆらと波のような模様。
幾度も台風や地震、雷や雨に耐えてきた証拠でしょう。
3000年の命のゆらぎかもしれません。
さて、冒頭に街の中にも巨樹が存在するのは、人々の畏敬の念を持って保存されてきたからかもしれない、と記しましたが、この杉の大杉は、おそらくこれからも大豊町の人々と共にあるのだろうと、強く思いました。
それは、これを見たからです。
大豊町立大杉小学校の平成22年度4年生の山の学習記念制作とあります。
杉の大杉についての資料や現状を、大豊町の小学生たちが冊子にしているのです。
実は、この大杉に会うにはお金がかかります。
料金所があるのです。
一般200円。
安いか高いかは別として、料金所でお金を払います。
その料金所のカウンターにこの冊子は置かれています。
すぐさま「これ、もらっていいですか?!」と声をかけ、一部頂いたのですがその内容にとても心が動かされました。
詳しい中身は、是非現地に訪れて手にとって見ていただきたいのですが、巨樹の現状や、その保存のための活動などが丁寧に書かれています。
特に、私も大阪府の誇る巨樹「薫蓋樟」や「野間の大ケヤキ」の記事で書いた様に、大抵の巨樹には展望デッキや柵が設けられていますので、その樹に近寄る事が出来ないものが多いのですが、その理由もしっかりと記されています。
通常、こういった巨樹などはパワースポットであるとか、地域観光の一つとしてしか目立つ事はありませんし、それだから訪れる人たちも「うわぁー、大きいね」という声のみで、その巨樹の歴史や現状、保存はされているのかなどは知る事もないですし、知らされることがなければ関心を持つ事すらないと思います。
私は木が好きですし、上記した様に巨樹に対しては特別な畏敬の想いがありますから、子供や家族にも「根を踏まない事」や、「むやみに枝や皮をはがさない事」を教えていますが、それが何故だか知らなければ、そんなことは気にならないものです。
それらを知らないことで、その木を傷め弱らせ、最悪は枯死させてしまうかもしれない場合がある事を知ってもらい、関心を持ち皆で大切にしていかなければ、数百年・数千年と生きながらえてきた巨樹たちが絶えてしまうかもしれません。
大袈裟かも知れませんが、物言うことのできない木に接するとき、私たちができる事をしっかりと守り、貴重な財産を子供たちやそのまた次の世代までずっと残していけるようにしたいと思っています。
このあたたかい手作り冊子の裏には直筆の文章や、中面に水彩画を添えてあり手作り感のある冊子に仕上がっています。
とても内容の伝わりやすいものに仕上がっていますね。
子どものうちに、地元の、いや日本の誇るべき財産である「杉の大杉」について学び、その保存について勉強した大杉小学校の4年生達。
大人になっても、今回の製作を忘れず、日本の誇るべき財産を後世に残していく活動をし続けてもらえる事を願います。
立派な大杉と、それらを守ってきた人たちに感謝!!
・杉の大杉
所在地:高知県大豊町杉92(小学校住所です)近辺
道の駅がありますので、そちらを目印に向かうとよいと思います。