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森に包まれる感覚を・・・ 〜アカクボ沢の大栃〜

当たり前のことですが、拙記事は巨樹訪問記がメインではありません。

ほぼ月一回ほどのペースで投稿はしているものの、業務や木材に関することがメインのページですので、巨樹専門の写真家さんや訪問記ページを主催されている方には、内容は到底及びません。

個人それぞれ、訪問記も異なり感じ方も異なるので、並ぶつもりもないのですが、それでもネット記事に詳細の記述がないものや新しく発見されたものなどには、非常に興味をそそられてしまうのは、仕方のないところ(^^;)・・・

今回訪問の場所も、近年までは知られていなかったようで、それも森の中に佇んでいるということで、心躍らせ行ってまいりました。


場所は、急峻な山道が続く静岡県の山間部。
九十九折れ道の運転が好きなタイプの方には爽快ですが、助手席での同行者がある場合や運転に苦労を感じる方にはおススメできない場所。

都市部からどれくらい走ったか、低速で長時間運転しているので距離はそうでもないはずなのですが、とにかくハードなヒルクライムドライブ。


アカクボ沢の大トチ12


目的地が森の中、ということで進入する目印を見落とさないように運転していましたが、意外と目立つ場所に看板がありました。

見落とさないうえ車も駐車できるいい環境。整備、ありがとうございます。

車を止め、森の中へと「降りて」行きます。
車で登ってきた道とは違う山の中を歩いて降りるのですが、これまたきれいに整備された木階段があるので、運動靴であれば楽勝で行けます!
本当に感謝。


アカクボ沢の大トチ1


明るく整備されたスギの木立の中を、帰りののぼりの体力が心配になるくらいの勾配を下っていくと、川のせせらぎが聞こえてきます。

下り勾配が終わり、平坦になりつつある踏み分け道のようなところを、少しづつ右手にすすんでいくイメージで歩みを進めると、視界の開ける場所に出ます。
そこが目的地。

下りきる手前にも、トチの大木があるのでお間違いのないように・・・

下りきって開けた場所で出逢えました。
アカクボ沢の大栃。


アカクボ沢の大トチ3


先ず、この石垣は一体何の為に積まれているのだろう。
炭焼き?窯があったのか?

森の中には人の生活と次代を映すものが多々みかけられますが、特に巨木のそばにそういった痕跡が見られると、その歴史について知りたくなってしまうものですね。

といいつつも、実は現地では意識は石垣よりもやはり、大栃。

期待通りの立派な出で立ち。

アカクボ沢の大トチ4


沢沿いの谷地のような場所に、すっぴりと納まっているかのように大栃が鎮座。
周辺のスギ林の勢いも、まるでトチに遠慮をしているかのように、空間を明け渡しているかのようです。

もちろん、林業のみなさんにより、大栃の周囲も整備されているのだろうことを想像するのですけれど、それを差し引いても際立つ存在感に、かなりの間、近づかずに遠目に眺めたくなりました。

人間の眼は、カメラとは違いかなり広い範囲を全体的に視野にいれつつも、見たいポイントを無意識と有意識と双方で選別しながら、断片情報を組み立てて脳裏に映す事ができる為、森の中の全体の雰囲気とその巨躯の双方を感じられる、遠目に眺めるスタイルを無意識に選択したのだろうと感じます。


アカクボ沢の大トチ6


少しして近づいてみると、遠景とはまた異なる表情を感じます。

遠目にはあまり意識しなかった、うっすらとトチを覆うコケ類。
そして、幹のくぼみに着生する別の広葉樹たち。

森の生態系を受け止めているかのような雄大な大栃の姿に、街からの訪問者である自身も受け入れてもらっている様で、心地よいのです。

その上、担当が訪れた時期が新緑溢れるタイミングの良さで、とにかく気持ちいい。
気持ちいいのは、見上げる景色がこの緑だから。


アカクボ沢の大トチ16


単なる緑ではなく、この日も汗ばむほどの日光の強さだったものの、日本産広葉樹の中でも最大級クラスともいわれるその葉が、日光を適度に遮りながらも透過させ、同じ色の緑ではなく、様々な色合いに感じさせる不規則なリズムが、気持ちよさに通じるようです。

それに、そばを流れる川のせせらぎが、清々しさを増すのです。

それらは、1/f ゆらぎであったりフィトンチッドであったりするのだと思いますが、巨樹に抱かれているような感覚と、誰もいない森の中で巨樹と対峙している幸せが、心を高揚させるとともに体の落ち着きをもたらしてくれているのだろうと思います。


また、今でこそ普通は知られていないかもしれない、これも見られます。


アカクボ沢の大トチ18


クリ、じゃないですよ。
いや、海外ではほぼクリ扱い?!の話題は木まぐれコラムにて紹介していますが、なんせ Horse Chestnut なんだから、クリでもいいのかもしれませんが、これは栃の実です。

あちこちに、この大きな栃の実の殻が落ちています。
人間にとっては今では、まったく重要ではないかもしれませんが、お土産などでは目にする栃餅のもとがこの実。

巨樹そのものだけではなく、このような実や葉っぱ、そして皮の具合や枝張りなどを観察することも、地域と樹種との関係を知る手掛かりにもなります。


アカクボ沢の大トチ8


雲が移動し、見る角度によってはかなり強い日差しが差し込む日中。

裏側?!からの姿をカメラに収めようとするも、強烈な逆光に閉口(汗)。
しかし、巨樹にはアルアルですが見る位置により印象が変わるのは、大栃も同じでした。

正面からよりもねじれたような印象と、生長の途中で背面が開けたのか、その方向へ大枝をのばそうとするような印象を受けました。

樹木は、環境による影響を大きく受けます。
歴史を物語る、とでもいうのでしょうか。

単なる個人的な想像の域を出ませんが、そんなことを現地で考えながら居ることも、巨樹との対話の様で楽しみの一つです。


アカクボ沢の大トチ7


そして、こちらも巨樹にはつきものである洞。

大枝を枯損したのでしょうか。
ぽっかりと空いた空洞部分は、おそらく樹芯近くまで伸びていると思われるので、時間とともに中心部が空洞化していくのだろうと考えます。

もし枯損していたのであれば、幹そのものに大きな損傷が無かったことが救いではないかと思いますね。
稀に、樹皮や幹そのものが、枝の重さで一緒に引きちぎられるような場面もありますので、洞の周囲が巻き込んでいることを考えても、損傷は少なそうです。


アカクボ沢の大トチ15


強すぎる日光を避け、心地よい大栃の木陰に入っている写真、のはずだったのですが意外と暗いですね・・・
現地ではこれくらいでちょうどよいほどの日差しだったのですが、写真難しい・・・・・

それでも、大栃の右側に居る担当との巨さ比べは感じて頂けるかと思います。

堂々とした太さ。
そして、この姿がまだそれほど有名ではなかったという事実。
地域の皆さんに大切にされてきたことは、非常にうれしく思います。

そして、このような訪れる人にとって快適な環境を整備してもらっている事にも感謝。
自然そのままが良いのかもしれませんが、スギ林は手入れをされていますし、森の中ですが人間の関わる森。

大栃を大切にする気持ちをもって森にも関わることは、自然を荒らすということにはならない、と思います。
もちろん、訪問の節度は大切ですので、感謝の気持ちをもって訪れたいものです。


心地よすぎる環境と、太陽により刻一刻と表情を変える大栃に魅了され、気がつけば訪問から3時間が経過!(笑)
どれほど心地よかったのか、想像して下さい(^^♪

名残惜しくも、この後の帰阪の時間を考慮し大栃に別れを告げました。


アカクボ沢の大トチ11


そうそう、どれほどトチの葉が大きいのか。
わかるでしょう?!
担当の顔など覆い隠し余りあるほどの大きさ。

ホオとともに、森でこの大きな葉っぱを見ると自身の存在をアピールしているかのようで、ほっこりとします。
この葉は、大栃のものではなく駐車スペースにある一般的なトチのもの。
本当に大きい・・・

こういうことも、経験すれば森を考えるきっかけにもなると思いますから、やはり経験してもらいたいことの一つ。


本当は、こんなに素晴らしい大栃で締めくくりたいものの、奥が深すぎるのが静岡県。
実は、ここからさらにヒルクライムした後の山住神社に、スギの巨樹があるのです。

ここまで来たならば、必ず訪れたいものですからもし訪問されるのであれば、時間配分をお間違いのないように(笑)。

それにしても、とにかく心地よい新緑の季節の大栃でした。


アカクボ沢の大トチ5


アカクボ沢の大栃所在地

静岡県浜松市天竜区水窪町山住

緯度:35.14833333
経度:137.90444444

駐車スペースあり(山道の途中です。通行の妨げにならないように。)

詳細な案内は、水窪 山に生きる会さんのページに公開されています。


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