2024年02月15日
今は願うことばかり・・・ 〜徳成谷内のスギ〜
原稿を仕上げたのは、年が改まった1月4日でした。
まさか、こんなことが起こるなんて・・・
自身も阪神淡路大震災を経験し、その後の大阪府北部地震でも倉庫や社屋に被害があった経験もあり、「もう起こらないでほしい」と思っている規模の地震被害が、年始早々に能登半島を襲った数日後のこと。
そこに訪れたのは、昨年です。
その時から、近いうちにブログとともに担当が寄稿している「材木屋の巨樹木甦」への記事候補としていたある巨樹は、その地震の震央に近い輪島市にありました。
業務でもお世話になっている製材所さんも、大きな被害を受けた今回の地震を忘れず、そして能登に思いを馳せるためにも、今日彼の地の巨樹を紹介したいと思います。
巨樹巡りをしていて、「遠い」と感じたのは北海道と、この能登半島。
単純な印象ですが、北海道はやはりでかかった!のです。
いつもの調子で下調べするも、縮尺がマヒするような広大さは、現地に訪れた時の移動距離と所要時間で実感しました。
能登半島も、サイズは違えど最初の印象は似た感覚でした。
金沢から遠いっ!、です。
里山街道
担当の巨樹訪問は時間との勝負。
二度と訪れることがないかもしれない巨樹を、一日で一筆書きよろしく廻るのですから、時間配分が大切。
なのですが、能登半島は意外と遠かったのです、金沢から。
それが最初の印象ですが、その半島の輪島市の内陸部にワクワクとして訪れたスギがあります。
日本海側の異形のスギ、というだけでワクワクしますよね。
それも、山中ではなく裏山程度の場所で逢えるらしい(訪問前)のですから、なおのことです。
そう思い訪れたものの・・・・
ない、どこにもない。
それらしいものが見当たらない。
そんなことはままあることなのですが、今回も事前情報ではお宅の裏山の様子。
誰かに聞けばいい、と思っていたものの問題発生!
誰も、その存在を知らない!!
え?!
異形の巨樹のはずなのに、裏山のはずなのに、それらしき家の方に尋ねてもご存知ないとの答え。
最後の手段として、「ここしかない!」と目星をつけていた裏山への細い通路への進入許可のみ承諾をいただき(そこは個人所有地ではなく集落の共有のものだそうですが、勝手なことは慎みたい)、いざ探索!
すると、上り始めてすぐ呆気ないほどに簡単にその姿を確認できました。

竹藪の向こうに見えるのが、徳成谷内のスギ。
燭台のように立ち上がる大枝が特徴の、スギの巨樹です。
スギという樹種単体でいえば、全国には多くの巨樹が存在し、その姿も驚くものが少なくありません。
その中で比較すると、当地のものは幹周り5.5m(公表)とされているので、全く比較にならないと思われるかもしれません。
そう、竹藪の奥に見た時には、一瞬そんな気もしました。
その上、事前情報にはなかった(事前情報は2018年のもの)竹藪の旺盛な繁茂により、背丈ほどの密林状態で通路がなく、見えているのに近づけない状況。
う〜ん、どうしよう・・・それほどの太さでもないしなぁ。ここを行くのは・・・
一瞬はそう思ったものの、意を決し藪をかき分け入っていった先には、逢えて納得の姿を見ることができました。

これが幹周り5.5mか。
そんな数値を忘れさせる、感心するその姿。
私が上った方向からは、スギを見上げるような形になるために、一層迫力を感じるのですがそれを差し引いても見事です。
単純な巨さならば、比較にならないほどのものが数多い中で、裏山にこの姿がずっと残ったことに驚きです。
スギのそばは墓地です。
このスギの持ち主の方のものと推察しますが、所有者さんが残されたスギなのか、それとも有用ではないとして伐らずに放置したものなのか。
ご神木、ではないだろうとおもいますから後者の可能性が考えられますが、今となっては立派な巨樹の仲間入りをするほどになっています。

林業地でも、皆伐をしていないところなどではまれに、このような「暴れ木」を残すところもあります。
もしかすると、この個体もそうなのか?と思われるのですが、聞く方もおられずその生い立ちはわかりません。
典型的なウラスギの部類なのでしょう。
水平に出た枝が垂直に伸びていく様や、幹から数本枯れ枝が残っているものも、雪による影響かと思われることろが野性味も感じます。

しかし、竹藪へ入る前に感じた「それほどの太さでもない」という感覚と、写真の迫力の違和感の理由は何のなのか?。
それは、スギが想像以上に扁平であること、です。
太い、というよりも幅がある、という印象。
壁みたいなもの?というのでしょうか。
木々は、真円のような形状だと思い込む傾向があるものですが、そうではなく、とくにこの徳成谷内のスギはものすごく扁平なのです。
そのため、墓地側からみると迫力十分な異形の巨樹ぶりなのですが、竹藪側から見るとほっそりとした暴れ木に見えるのです。
見た目のイメージってすごいものですね。
人間にとっての視覚の及ぼすイメージは、とっても大きい。
それを実感しました。

それともう一つ、ネット上の巨樹写真の多くが、異様なスケール感を持っていると感じ、実物以上の迫力は写真の効果によるものかと推察していたのですが、今回謎が解けたように思いました。
それは、三脚を立てて比較写真を撮影するアングルを探していた時のこと。
藪に阻まれ、あまりにもアングルがないうえに、近づくと全体像が全く分からない。
仕方なく、更新したスマホの機能である広角レンズを使用したとき、わかったのです(今頃ですけど・・・)。
皆さん、広角レンズを使っておられるから、樹高も高く幅も広く映る傾向で、巨樹感が増しているのだということを。
上の写真もその広角です。
一つ、勉強になりました(汗)。

アングルがない中で、なんとか撮影の一枚。
ちょっとずれていて、自身も完全に映ってはいないですけども・・・
(虫と蚊がきになり、じっとしていられないので・・・)
近づけるのが有難い、触れられる巨樹。
竹藪の茂り具合からいうと、墓地があるにもかかわらず、人が入っていないような雰囲気。
一部は、草のない土が通路のようになっているのですが、入り口らしきところがないのが不思議でした。
さぁ、そんなことを考えながら一通り撮影し、そろそろ戻ろうかと思って冷静に見てみると、このありさまでした。

難儀な奴です(汗)。
一つずつ取っていかないといけない、「ひっつきむし」が上半身から靴までびっしりとついているではありませんか。
よくあることながら、ここまでついているのは久しぶり。
人による種の移動を抑制するべく(?!)、入念に現地で落としていかねばなりません。
という、やる気を出そうとする理由をつけて、一つずつ外していく面倒なこと。
これも、虫さされとともに藪を敬遠したい理由の一つです。
そんな思い出も、何気ない日常だから感じられるもの。
今は、あの荒波押し寄せる海岸の道と、驚くほど穏やかな内海との対比の景色が変わってしまっている中での、被災された方の生活が心配でなりません。
住居やお仕事などの生活基盤は、簡単には戻らなないものだと思いますが、穏やかな能登の生活とおいしい魚介を産する港町が、一日も早く復興することを願い、記憶の保存記事として今回の輪島のスギをお届けしました。

(入口となる、裏山への小道)
徳成谷内のスギ所在地
石川県輪島市徳成谷内イ
緯度:37.39644809
経度:137.08993472
ほとんど車は来ないので、路上駐車可能ですが少し離れた広い場所に停めましょう。
本文中にもありますが、集落の裏山進入路であり、個人所有の巨樹のようですので、できればお声掛けして入りたいものです。
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まさか、こんなことが起こるなんて・・・
自身も阪神淡路大震災を経験し、その後の大阪府北部地震でも倉庫や社屋に被害があった経験もあり、「もう起こらないでほしい」と思っている規模の地震被害が、年始早々に能登半島を襲った数日後のこと。
そこに訪れたのは、昨年です。
その時から、近いうちにブログとともに担当が寄稿している「材木屋の巨樹木甦」への記事候補としていたある巨樹は、その地震の震央に近い輪島市にありました。
業務でもお世話になっている製材所さんも、大きな被害を受けた今回の地震を忘れず、そして能登に思いを馳せるためにも、今日彼の地の巨樹を紹介したいと思います。
巨樹巡りをしていて、「遠い」と感じたのは北海道と、この能登半島。
単純な印象ですが、北海道はやはりでかかった!のです。
いつもの調子で下調べするも、縮尺がマヒするような広大さは、現地に訪れた時の移動距離と所要時間で実感しました。
能登半島も、サイズは違えど最初の印象は似た感覚でした。
金沢から遠いっ!、です。
里山街道
担当の巨樹訪問は時間との勝負。
二度と訪れることがないかもしれない巨樹を、一日で一筆書きよろしく廻るのですから、時間配分が大切。
なのですが、能登半島は意外と遠かったのです、金沢から。
それが最初の印象ですが、その半島の輪島市の内陸部にワクワクとして訪れたスギがあります。
日本海側の異形のスギ、というだけでワクワクしますよね。
それも、山中ではなく裏山程度の場所で逢えるらしい(訪問前)のですから、なおのことです。
そう思い訪れたものの・・・・
ない、どこにもない。
それらしいものが見当たらない。
そんなことはままあることなのですが、今回も事前情報ではお宅の裏山の様子。
誰かに聞けばいい、と思っていたものの問題発生!
誰も、その存在を知らない!!
え?!
異形の巨樹のはずなのに、裏山のはずなのに、それらしき家の方に尋ねてもご存知ないとの答え。
最後の手段として、「ここしかない!」と目星をつけていた裏山への細い通路への進入許可のみ承諾をいただき(そこは個人所有地ではなく集落の共有のものだそうですが、勝手なことは慎みたい)、いざ探索!
すると、上り始めてすぐ呆気ないほどに簡単にその姿を確認できました。

竹藪の向こうに見えるのが、徳成谷内のスギ。
燭台のように立ち上がる大枝が特徴の、スギの巨樹です。
スギという樹種単体でいえば、全国には多くの巨樹が存在し、その姿も驚くものが少なくありません。
その中で比較すると、当地のものは幹周り5.5m(公表)とされているので、全く比較にならないと思われるかもしれません。
そう、竹藪の奥に見た時には、一瞬そんな気もしました。
その上、事前情報にはなかった(事前情報は2018年のもの)竹藪の旺盛な繁茂により、背丈ほどの密林状態で通路がなく、見えているのに近づけない状況。
う〜ん、どうしよう・・・それほどの太さでもないしなぁ。ここを行くのは・・・
一瞬はそう思ったものの、意を決し藪をかき分け入っていった先には、逢えて納得の姿を見ることができました。

これが幹周り5.5mか。
そんな数値を忘れさせる、感心するその姿。
私が上った方向からは、スギを見上げるような形になるために、一層迫力を感じるのですがそれを差し引いても見事です。
単純な巨さならば、比較にならないほどのものが数多い中で、裏山にこの姿がずっと残ったことに驚きです。
スギのそばは墓地です。
このスギの持ち主の方のものと推察しますが、所有者さんが残されたスギなのか、それとも有用ではないとして伐らずに放置したものなのか。
ご神木、ではないだろうとおもいますから後者の可能性が考えられますが、今となっては立派な巨樹の仲間入りをするほどになっています。

林業地でも、皆伐をしていないところなどではまれに、このような「暴れ木」を残すところもあります。
もしかすると、この個体もそうなのか?と思われるのですが、聞く方もおられずその生い立ちはわかりません。
典型的なウラスギの部類なのでしょう。
水平に出た枝が垂直に伸びていく様や、幹から数本枯れ枝が残っているものも、雪による影響かと思われることろが野性味も感じます。

しかし、竹藪へ入る前に感じた「それほどの太さでもない」という感覚と、写真の迫力の違和感の理由は何のなのか?。
それは、スギが想像以上に扁平であること、です。
太い、というよりも幅がある、という印象。
壁みたいなもの?というのでしょうか。
木々は、真円のような形状だと思い込む傾向があるものですが、そうではなく、とくにこの徳成谷内のスギはものすごく扁平なのです。
そのため、墓地側からみると迫力十分な異形の巨樹ぶりなのですが、竹藪側から見るとほっそりとした暴れ木に見えるのです。
見た目のイメージってすごいものですね。
人間にとっての視覚の及ぼすイメージは、とっても大きい。
それを実感しました。

それともう一つ、ネット上の巨樹写真の多くが、異様なスケール感を持っていると感じ、実物以上の迫力は写真の効果によるものかと推察していたのですが、今回謎が解けたように思いました。
それは、三脚を立てて比較写真を撮影するアングルを探していた時のこと。
藪に阻まれ、あまりにもアングルがないうえに、近づくと全体像が全く分からない。
仕方なく、更新したスマホの機能である広角レンズを使用したとき、わかったのです(今頃ですけど・・・)。
皆さん、広角レンズを使っておられるから、樹高も高く幅も広く映る傾向で、巨樹感が増しているのだということを。
上の写真もその広角です。
一つ、勉強になりました(汗)。

アングルがない中で、なんとか撮影の一枚。
ちょっとずれていて、自身も完全に映ってはいないですけども・・・
(虫と蚊がきになり、じっとしていられないので・・・)
近づけるのが有難い、触れられる巨樹。
竹藪の茂り具合からいうと、墓地があるにもかかわらず、人が入っていないような雰囲気。
一部は、草のない土が通路のようになっているのですが、入り口らしきところがないのが不思議でした。
さぁ、そんなことを考えながら一通り撮影し、そろそろ戻ろうかと思って冷静に見てみると、このありさまでした。

難儀な奴です(汗)。
一つずつ取っていかないといけない、「ひっつきむし」が上半身から靴までびっしりとついているではありませんか。
よくあることながら、ここまでついているのは久しぶり。
人による種の移動を抑制するべく(?!)、入念に現地で落としていかねばなりません。
という、やる気を出そうとする理由をつけて、一つずつ外していく面倒なこと。
これも、虫さされとともに藪を敬遠したい理由の一つです。
そんな思い出も、何気ない日常だから感じられるもの。
今は、あの荒波押し寄せる海岸の道と、驚くほど穏やかな内海との対比の景色が変わってしまっている中での、被災された方の生活が心配でなりません。
住居やお仕事などの生活基盤は、簡単には戻らなないものだと思いますが、穏やかな能登の生活とおいしい魚介を産する港町が、一日も早く復興することを願い、記憶の保存記事として今回の輪島のスギをお届けしました。

(入口となる、裏山への小道)
徳成谷内のスギ所在地
石川県輪島市徳成谷内イ
緯度:37.39644809
経度:137.08993472
ほとんど車は来ないので、路上駐車可能ですが少し離れた広い場所に停めましょう。
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