空を見上げて
トップページ » 神秘の姿はイザナギとイザナミ 〜大地主神社の夫婦杉〜

神秘の姿はイザナギとイザナミ 〜大地主神社の夫婦杉〜

巨樹巡りをしていると、慣れてきたころにミスをすることがあります。
いや、その可能性は少し前の時代のことかもしれません。


私が巨樹巡りを始めた時は、現在の様にインターネットのサイトも充実していなかったですから、もっぱら書籍の情報をもとにしていました。
書籍には住所の地番が無い場合や、簡単な地図すぎて分からないときも多くあって、意気込んで向かっても幾つもの巨樹にたどり着けないことがよくありました。

また、比較的容易につくことが出来た場合も注意が必要でした。
それは、目的地に同じ樹種の巨樹が複数本ある場合です。

確かに目的地で間違いないものの、神社(など)の入り口にある標識つきの巨樹の姿を、目的の巨樹と思い込んでしまい、本来の目的とする社殿奥の巨樹を拝せずに帰ってしまうというケースです。
以前に紹介している日本一のシイノキ、志多備神社のシイノキがまさにそれ。

今回も同じようなケース?!、ではないものの同じスギの巨樹があり、私にとっては社殿奥にあるスギに逢わずに帰るのはもったいないとおもうような、そんな場所なのです。


高倉神社のスギとシラカシ1


朝霧が立ち込める、静謐な雰囲気満載の高倉神社。

こちらでの目的は「スギとシラカシ」。
巨樹としては、シラカシの方が貴重なのでスギは相当太くない限りは驚かないもんね〜、なんて思いながら社殿鳥居をくぐります。

するともう、いきなり目的のスギ登場。


高倉神社のスギとシラカシ2


生き生きとし、武骨に伸びあがる太い幹を誇っているかのようなスギ。
幹周り5.7m、樹高33mという綾部の古木・名木100選に選ばれたスギです。

確かに、大木で立派。
今後も更に元気に育つだろうと思う姿ですが、スギで幹周り6m弱というのはここ綾部市のある兵庫県でみても、決して太いわけではありません。

写真では結構太いと思うのですけど、現地では「うん、これくらいだろうな・・・」というのが正直なところ。
もう一つの目的は、シラカシ!
広葉樹の巨木で、ケヤキやクスとは異なりなかなか珍しいカシ。

それも、このスギのすぐそばにあります。


高倉神社のスギとシラカシ3


後ろにスギが見えるこの位置。
参道から少しそれた場所に立っているシラカシ。

カシのイメージから期待する剛健な幹とは異なり、既に幹の内部、というかほとんどが朽ちている状態。
もちろん、樹木としては周囲の形成層が健全であれば、人間が思うほど弱っているということではないのかもしれませんが、見た感じはやはりちょっと残念に感じるものですね。

見あげる、というよりもそっと手をあてて話しを聞きたい。
そんな印象でした。

さて、ここまで終わり普通であれば、次の目的地を目指すところなのですが事前情報において、社殿の奥にも手前のスギほどの大きさではないものの、スギの大木があるということ。

冒頭、入り口の巨樹だけを見て奥の巨樹に気付かないケースがある、としましたが今回は手前の巨樹ほどではない、との情報。
それに、昔はその巨樹の情報も写真をみることがなかったので、目的の巨樹を勘違いすることがあったものの、ネット記事に写真が出ている時代。
そんなこともありません。

目的は先のスギとシラカシ。
わざわざスケールの小さいスギを探しに行くべきか・・・他へ回る時間を優先すべき(一日で10か所を周ることは日常だから・・・)かと考えたものの、予定の所要時間よりも早く目的を終えていることもあり、少し時間をとって見に行くことにしました。
でも、後からしみじみと「行ってよかった・・・」と思うんですけどね。


高倉神社内 大地主神社の夫婦スギ1


高倉神社の社殿向かって右の、笹が繁茂した小径をすすんでいくとまた小さな鳥居があります。
さっき、大きな社殿を通ってきたところなのに、またこんなはずれに鳥居?!と思いながらも、小径が続いている通りに鳥居をくぐり、更に奥へと歩を進めようと思ったとき。

鳥居にかかるその文字に、「伊邪那伎神社 伊邪那美神社」と見えます。

ん?!この奥に、神話で有名なあの二柱の神様が祀られているということなんだろうか。

そんなことを考えながら少し進んで目に入ったのはまさしく、その二柱・・・
否、その拠りどころと思しき巨樹の姿。


高倉神社内 大地主神社の夫婦スギ2


おぉ・・・

なんと神々しい!
鳥居を従え、朝霧にかすむ空に並び立つ二本のスギ。
これを夫婦スギとせずなにを夫婦スギとするのか・・・

先の鳥居の二柱が、このスギを依代に我らの世界に降り立つ。
あの鳥居のすぐ後ろに。

周囲には神聖な場所であると言わんばかりに他の樹種もなく、空からすっぽりと、いや天空からの神の梯子がかかる場所であるということを暗示しているかのようです。


鳥居の奥のお社は、大地主神社とされています。
解説板には、隣接する夫婦スギがパワースポットである、とも。


高倉神社内 大地主神社の夫婦スギ3



もちろん、そんなことを言われなくとも注連縄で結ばれたこのスギたちと、高倉神社の鳥居をくぐった時よりも一層静謐な空気に感じるこの場所からは、パワースポットという言葉が今一つ馴染めない私でも、神のお力を感じる心持になるのです。


少し現実的な話に戻ると、二本のスギは幹周りそれぞれ4.9mと4.7m。
先の入り口のスギの幹周りが5.7mであったことを考慮すると、まったくの迫力不足、と思いませんか?
先ほど、6m弱の幹周りでは驚かない、などとのたまう場面があったところですよね。

前言撤回(汗)。

何と美しいのか。
伊邪那伎と伊邪那美という、日本人の多くがその御名のみは知っているであろう神。
その御名がある上に、夫婦神であった二柱になぞらえるように天に伸びるスギ巨樹をみて、その神秘性を感じない方がおかしいというものですよね?


高倉神社内 大地主神社の夫婦スギ6


とくに暴れるようなそぶりも無く、枝も巨樹の生命力というよりは「あるべくして最低限のものがそこにある」かのように、競うでもなく自然にそこにあるのです。

普通ならばここで、夫婦神に肖って「夫婦円満」とお願いをするところなのかもしれません。

でも、ウチは十分に夫婦円満。
これ以上仲良くなってしまうと、家内にうっとおしがられかねない(汗)のでそれは無し。

というか、古事記などに造詣が深い方は夫婦神がどのような物語を辿るかを御存じでしょうし、ここにきて夫婦円満と素直に思わない私の心中もお察しの事と思います。


とはいえ、この二柱は日本の歴史や神話にとって非常に重要な存在ですから、やはり有難い存在と感じます。


高倉神社内 大地主神社の夫婦スギ5


周囲に木々が無い、といっても夫婦スギを含めて自身も画角に納まろうと思うとぜんぜんアングルがありません。

結局、参道のこの位置。
実際に人間がそこにいると、巨さはもちろん神聖な場所に人一人・・・という感じに見えませんか?
余計なもの、のように自分でも見えてしまいます。

巨さ比較で入っているだけなんですけど、まったく余計。
少し離れて眺めていると、このスギが指す先は高天原で今こうしているときにも、天の浮橋から伊弉諾と伊邪那美の夫婦神が私たちを見下ろしておられるのかもしれない、という気分にも感じます。


事前情報では、その数値から侮っていた夫婦スギ。
しかし、朝霧に包まれるその姿は、神々しくも美しく存在感にあふれるものでした。

入口のスギでは淡々としていた私も、思わず「おぉ・・・」と声を発した夫婦スギ。


高倉神社内 大地主神社の夫婦スギ7


神秘の姿はやはり、先を急ぐ心ではなく気持ちの余裕がどこからかの誘いを受けて、この場所へと足を運ばせたのかもしれません。

巨樹を事前情報とその幹周り数値だけで判断するべからず。

もう、いい加減理解しているつもりなのですが、このような意外な出逢いがあるからこそ、思い込みも楽しくそして、思い込みで出逢いを逃すことが無いように訪問の時間をしっかりと満喫できるように心がけているつもりです。

是非皆さんもゆっくりと、できれば朝霧が出る時間に夫婦スギに逢いに出かけてください。

きっと神秘的な空間を感じる事ができると思いますよ。


高倉神社内 大地主神社の夫婦スギ4


高倉神社内 大地主神社の夫婦スギ 所在地

京都府綾部市高倉町奥路6 高倉神社本殿奥大地主神社

駐車スペースあり

・弊社へのお問い合わせはこちらから
・その他の無垢フローリング・羽目板ラインナップはこちらの記事下段から
・無垢フローリング・羽目板の一覧はホームページからどうぞ

*2019年以前のリンク表示をクリックしても過去リンク記事が見られない場合は、こちらの手順でお願いをいたします。
*消費税10%への改定前、2019年9月以前の記事の価格は旧税込み価格となっています。お手数ですが、ご連絡の上正式なお見積の依頼をいただけますようにお願い致します。(ホームページ価格も改定が間に合っていない物もありますのであしからずご留意ください。)


 木のビブリオが、それぞれの木が持つストーリーとともに、こだわりの木材をお届けするブログと、稀少木材・無垢フローリングのホームページです。

・樹種別無垢フローリングのブログ記事一覧 
http://muku-mokuzai.livedoor.biz/archives/1611916.html

・戸田材木店・セルバのホームページ
http://selva-mukumokuzai.jp

・戸田材木店・セルバのフェイスブックページ:無垢の木材を愛し語る「木のビブリオ」がいる材木屋、合資会社戸田材木店 から!
・同じく、、、       インスタグラムページ: toda.zaimokuten も随時更新中!



コメントを書く




情報を記憶: 評価:  顔   星