皮は付けているとダメで、皮を使うと良い？！　②

少し前に、缶ワインが売れる理由の中の一つに、「ワイン選びが分かりにくい」という点をあげました。
木材も同じなのです。
規格にしても強度にしても在庫にしても、そしてそこに樹種が加わるととにかく分かりにくい。
いや、乾燥の事や割れ、狂いも含めて一概に考えられない。
なんとも不親切な材料なのです。

缶ワインは、消費者がとっつきにくいと思っている部分を解消しているようですが、木材はどうでしょうか・・・

木材を保存するときに皮を付けておくといけない理由は虫が付くから。
そして、その虫が付く理由は木材であるまえに樹木であることが非常に大きなポイントです。
樹木の栄養分を求めてやってくる虫たちは、皮を食べているのではありません。
皮の内部やその下の木部を食べているのです。

だから、皮があるとその栄養分のある部分が木材に残るために、はずしておかねばならないということ。

樹皮の下

では、最初の疑問である皮を屋根などに使うのはなぜか？！
腐ったり虫が付いたりしないのか！？

それも、木材としてではなく樹木として考えた方が理解しやすいと思います。
腐らないわけではないものの、木質部分よりもそのスピードは遅いでしょうし、虫が付かないというよりも虫が好きな栄養素の部分や木質部分が付いていないので、わざわざ寄ってはきづらいでしょう。
そしてなによりも、現在のような優れた代用材料がない時代には、もっともバランスがとれ優れた素材だったのが、皮だったからでしょう。

軽く、入手しやすく、比較的耐久性があり交換することができ、管理されていれば交換サイクルを作りながら使い続ける事ができる素材。
それが樹皮。

（檜皮をはいだヒノキ）

そのうえ、樹種によっては樹皮のほうが木部よりもいろいろな意味で耐久性を発揮するものもあります。
そして、木は腐るという概念では樹皮を使う意味を理解できませんが、樹木の防御反応のひとつである樹脂の事を知っていれば、樹皮の持つ性質から屋根材に向いていることに理解が出来ると思います。
そこが樹皮を使う大きな理由の一つ、木部ではなく樹皮に樹脂を備えているから。

木材だけを見ていると気が付きにくいことですが、山に入ると見えることがあります。

伐採直後の切株の樹皮の下にあふれ出る樹脂や、樹皮が剥がれたり傷がついた部分に流れ出る樹脂。
その仕組みはわからなくても、その様子をみれば「脂分があること」を実感すると思います。

そしてその樹皮近辺（又は樹皮）に樹脂分を持っているため、屋根に使う場合にも水から建物を守り腐朽を遠ざける事ができる、ということ。
もちろん、先の通り軽くて建物にも施工的にも優しいこともあるでしょう。
樹木と木材として考えると、おそらくそのような事情が複合的に評価されているからこそ、屋根に用いられてきたのだと思います。

当初の質問の「皮」が、木材を考える場合には樹皮の内側であり、屋根を考える場合には樹皮そのもの（樹木として外側の樹皮）であるという、微妙な違いを理解するとすぐに納得できること。

木を知ることは樹木を知る事でもある。
最近、特に思います。
材木屋も樹木の事を・・・

素朴な疑問からわかること。
樹皮も木材の一部。
気にしていない部分からこそ分かることがある。
素朴な疑問から見る、木材コラムでした。

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