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神話受け継ぐ奇し姿 〜クスノキ・樟 その伍〜

クスノキの葉は、除草や他の植物を寄せ付けない力があると書きましたが、そんなクスノキの葉を食べるのがアオスジアゲハ。
クスノキの新葉に産卵し、幼虫はその葉を食べて成長するそうです。

前回後半でお話したように、樟脳成分を持つクスノキは昆虫や他の植物への影響があるにもかかわらず、その葉を食べるなんて何故なのか?!
不思議な感じがしますが、動物の体は不思議がいっぱい。
葉っぱを食べるものといえば、小さいところではテグス蚕の飼料として、かわいい動物ではパンダやコアラも、毒性や精油を多く含む葉を食べているにも関わらず、元気に生きている。
コアラは長い盲腸をもっているために、普通では脂分に負けてしまうユーカリの葉を消化することが出来るのだそうです。
かわいい顔してたくましいもんです。

クスノキ 9


さて、葉っぱにもその香りが強く残る樟脳。
香りは目で見ることが出来ませんが、違った形で樟脳をみることができるのが「セルロイド」。
高価で希少な象牙の代用品などとして、アメリカでニトロセルロースとの合成で商用化されたそうですが、私にとっては若干不気味にさえ見える「セルロイド人形」のイメージになるのは歳のせいでしょうか?
といってもそんな歳でもないんですけども、成形しやすい為に広く普及流通し需要を伸ばした歴史を持っています。


クスノキ9


ただ、燃えやすいことなどが影響し、のちの石油系合成樹脂に代替えされるようになっていくのです。
いつの時代も、木材製品は代替え材料との比較競争の歴史がつきもの。
クスノキはその影響が大きかった樹種の一つかもしれません。

世界的に、そんな一大需要を作り上げていたクスノキ。
日本でも比較的温暖な地域の広い範囲でみかける上、前回までの様に神話にも登場し巨木も多く残るために、当然日本の自生種だと思ってしまいますが、どうもはっきりとはしていないようです。

ご覧いただいている私の記事では、以前からクスノキの漢字表記を樟と表記することとしてきましたが、それに詳しく触れる時がやって来ました!
シリーズの第一回でも書いたように、樟脳を感じる今回話題にしているクスノキを含むニッケイ属を、中国では樟属と分類し、クスノキと似てはいるものの樟脳の香りを発しないタブノキを中国では潤楠属に、そして一般的に日本で用いられている楠という漢字を充てる楠属の樹種は、日本には存在せず中国では Phoebe 属に分類されている(一部にタブノキの仲間を含むこともあったらしい)ので、表記を混同されやすいのです。

漢字表記の違いは、日本と中国で様々ありますが最後に出た Phoebe 属はクスノキ科の中でも別格扱いをされてきたそうです。
中国の大工棟梁のお話では、その樹種は大木も存在していたらしく、高貴な人物の利用する建物や宮殿建築、墳墓の材として非常に大切にされていたということで、耐久性も高いといいますから日本で言うところのヒノキの様な扱いに思います。

私が今まで聞いてきた話と重ね合わせると、日本には存在しないその樹種名はおそらく「楠木(なんぎ)」。
四川省にはその楠木の巨木があったそうですが、海南島などにも分布していたとも聞いています。
そしてそれらは香楠や金糸楠などと呼ばれ一般には使うことが出来なかったといいます。
香りも非常に特徴的で、樟脳の香りとは全く異なるもの。
やはり高貴な樹木なのでしょう。

クスノキ11


それらを含むクスノキの仲間はやはり中国の方が豊富なことも踏まえると、もしかすると日本のクスノキのルーツは中国を含む大陸なのかもしれない、と思う理由が他にも存在するのです。
果たしてクスノキの正体とは・・・・


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