屋外使用の木材の劣化から取り替えまで 〜セランガン・バツと日本のひばへ〜
前回の記事を見て、「うわぁ・・・やっぱり木材はあかんわぁ・・・」なんて決して思わないでくださいね。
世の中に、ほおっておいても半永久的に使い続けられるものはないのですから・・・というのも大袈裟ですが、いつもお伝えする様に、木材は私たちと同じ様に細胞を持った生き物です。
人間が日焼けする様に、日焼けすると皮膚がめくれてくる様に、同じ様に木材も変化をするということを理解していただきたいのです。
と、若干言い訳の様な事を並べてしまいましたが、木材は劣化するという以前に、「メンテナンスをしなければ!」という言葉をつけないといけないことも付け加えなければならないのです。
ウッドデッキや木製の外壁材などを採用されても、ほぼ95%位の確率でメンテナンスはされないでしょう(経験上の推察・・・)。
人間だって、日焼けや水に濡れた状態でいつまでもほおっておいていいはずが無いのと同じく、ずっとメンテナンスをしなければ、木材も劣化するのです。
しかしながら、綺麗に出来上がってから少しすると「シルバーグレー」に退色していくので、なかなかタイミングをみてメンテナンスするという行動に移しにくいのだと仮定しておきましょうか。
それで、どんどんとそのままになってしまうと・・・
そんな状態でも、できれば20年ほどは維持したい!
お客様からそんな声が出た時に、材木屋サンや工務店さんはまず「ハードウッド」を思い浮かべるはずです。
熱帯地方を主な産地とする広葉樹で、高耐朽木材としておよそ10数年前くらいから使われ始めています。
今回、中心となって使っていただいたのも、その仲間の一つである「セランガン・バツ」。
施工写真を撮影する日が生憎の雨模様。
木材の顔と色合いをしっかりと撮影するつもりが台無し・・・と思っていたのですが、工務店さんから「雨でぬれた方がえぇ色しとるでぇ」の声に乗せられて(というか、この日しかなかった・・・)撮影したのですがなるほど、なかなかいい濡れ色。
セランガン・バツのデッキ材は、材によって色合いの濃淡があったり若干の虫穴があったりという特徴があるものの、他の高耐朽木材のような濃い色調や木目などそんなに強い個性を持っているものではないので、雨にぬれたこの姿はなるほど、なかなかの美人ではないですか。
今回は実質の施工面積はそんなに大きくは無いのですが、斜め施工&ノコギリ型にでこぼこがあるので、カットする部分が多くて、(木材を担ぐことに)強肩を自負する私が90分もかかって運びこんだほどの量が使われているとは思えないのですが、やはり本物の木材のウッドデッキというのは良いもんです。
近頃は、冒頭の様にとにかくノーメンテナンスで数十年の耐久性を求められるので、ウッドデッキといいながらも実際の材料は「木のように見えるプラスチックやプラスチックと木片の合成材」だったりするので、この不規則な濃淡や雨に濡れた表情、そして一枚の中でも木目に変化のあるものなど、それぞれの個性が目に飛び込んできて、安らぎを感じます。
見てくださいよ!!
大工さんが仕上げ加工をするならば、絶対に嫌がるであろう逆目になった状態が、波の様な不規則な縞模様を見せているこの木目。
これですよ、これ。
単純な耐朽性だけではなく、こういうものがあらわれるからこその「木製」ウッドデッキ。
材木屋のウズウズする様な木目が見えた時は、うれしくてたまりませんね。
こういった一つ一つの違いと個性を楽しむことができるのが、本物の木材からできるウッドデッキですよね。
やっぱりウッドデッキは、木に見えるのではなく木の安らぎを感じられなければ意味が無い!と材木屋の立場として言っておきましょう。
そう言いたくなるのは、やはりこうした施工完成を見るからで、瞬間的な価格の安さや「塗装してしまえばわからない」といった逃げに走らない姿勢があるからです。
そして塗装してしまえばわからない、と言われるのはもっぱら針葉樹材をウッドデッキとして使用する場合です。
今回のような高耐朽木材をしようするのではなく、費用を抑えるために針葉樹で塗装して仕上げるケースです。
確かに、一見すれば木材ということを瞬時に感じさせてくれる大きな節や特徴的な木目が見えるので、「ウッドデッキ」の質感は高耐朽木材類よりも大きいといえますが、これこそ「塗ってしまえばわからない」で、腐れやすい木材を使おうが、針葉樹でも比較的腐れにくいものを使おうが、塗装仕上げをすれば同じようにしか見えないのがポイント。
だから、木はすぐに腐る!という安直な答えに結びつきやすくなるのです。
針葉樹でも、比較的耐朽性の高い木材を使ってメンテナンスをすれば、きちんと長く使うことができる。
今回はその理念に基づき、セランガン・バツの相棒に私の一押しである「日本のひば」をお勧めしました。
ひばに関しては、青森ひば無垢一枚物フローリングや能登あて無垢一枚物フローリング、幅広天板などなど紹介していますし、先日も風呂の枠や建具材を使ってもらったばかりの、お気に入りですが今回はちゃんとした理由もあっての登場です。
それは「階段」。
先にもあったように、地面から高さを上げて作られているデッキには当然上がるための階段が必要になるのですが、屋外で使用する階段は、室内よりも靴を履いている分、踏み板を幅広くしないといけません。
そのため、幅の広い板が必要になるのですが、高耐朽木材でも作ることはできるものの高価になりますし、なによりも硬くて加工がしづらい!
それなら、加工がしやすく大きな材がとりやすい針葉樹で、なおかつ耐朽性の高い赤身をつかえる高耐朽針葉樹である「ひば」の出番!!となるわけです。
早速その雄姿はこちら。
え?!これだけ?というべからず。
小さそうに見えますが踏み板と斜めの側板だけで、幅の広い材が2枚も必要なのです。
これならヒノキでいいじゃないの・・・
そう言われそうですが、これをヒノキで作ろうとすると普通は、中心がピンク色で端っこが白くてきれいな木材が入荷することでしょう。何も支持しなければ。
つまりは、辺材(へんざい)と言われる白太という部分が多い木材です。
普通に使うにはそれでもきれいな木材なら合格です。
しかし、今回の用途は屋外ウッドデッキ。
それではだめなのです。
きれいな木材も、腐ってしまっては意味がないのです。
だから、赤身(芯材)で幅広の材を供給でき、なおかつその材自体も耐朽性の高い木材である「ひば」を使うのです。
まぁ、自己満足・・・そう、そうかもしれません。
でも、少しでも長く劣化を少なくしたいですし、関西ではなじみの薄い有能な木材をもっと普及させていきたいのです。
もちろん、私がひばの香りが好きだから・・・という点は否定はしませんが・・・
なにはともあれ、今度は10年ではへこたれない美しいウッドデッキが完成したのです。
どうせまた作り替えないといけないから、ではなくどうにかして維持できるようにしよう、というスタートの違いで始まったウッドデッキの作り替え工事。
ご満足いただけているはず。
いや、その答えは早くても10年後か。
晴れた日に、こんなところでお茶する時間。
あぁ、いいだろうなぁ・・・・
ぜひ、20年後もここでお茶できるウッドデッキでありますように。
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コメントありがとうございます。
桧が持続しなかった後に、合成木材に走らなかったお客様と、高耐朽木材並びに私のおススメを採用してくださった工務店さんに感謝です!!!