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いつまでも変わらぬ誤解 〜ナラとカシ アカガシ編〜

最近、ちょっとばかし古い歌を聴くのがストレス発散になっていて、「いつまでも変わらぬ愛を」という曲を聴いていました。
いい歌です。曲調も歌詞もとっても好きです。それとともに、想い出もよみがえってきます。
音楽というのは、そういった面からも心のよりどころとして必要だと感じています。

前回からつづくカシのお話し。今回は音楽の話ではなく、「いつまでも変わらずに気になっている」どんぐりのお話しなのです。

まず、一口にみなさんが「どんぐりの木」と称しているのはブナ科の木材、こと球形で帽子のような「殻斗(かくと)」と呼ばれるものをかぶっているものができる木の総称のように用いられています。
どんぐり拾いの時、気にしていないかもしれませんが大小さまざまで、殻斗という帽子にもいろいろな模様があるのですよ。
それは、同じ場所でも様々なブナ科のどんぐりの木があるという証拠で、実際私の家の裏でも4種ほどのどんぐりを採取することができます。

ブナ科の仲間には大きくわけて、ナラ類とカシ類、そしてシイ類と栗があります。
それぞれがそれぞれの形のどんぐりを作ります。
ふつうはそれらの違いも気にすることではないのかもしれないですが、どんぐりの違いよりもその材の違いは大きく気になるのです。
それは、ワインをちょっと詳しく語る場合に切っても切れない関係にある樽のお話に関係する、オークのこと。

今までも幾度か、「オークという英名は、カシを意味するものではない」ことを取り上げてきました。覚えてらっしゃるでしょうか?
そう、オークは樫の木(カシ)ではないのです。
どのワイン誌をみても、またワイン売り場に行っても、ワインにこだわった広告を見ても、「樫(かし)樽熟成」とか「樫(カシ)の樽にこだわって・・・」などと表記されています。
これ、ものすご〜く気になります。
正確には、オーク=ナラですので、ナラの樽のはずなんです。
だからなんやねん、と言われればそれまでですが、木にこだわるワイン好きな人間としては、どうしても気になるのです。

カシ17

ワインの専門ページにも、樽の材質に関する記述がありますが、ほらね・・・

先にもあったように、両者は同じ科に属する樹木で木材を見た場合にも非常によく似ていますから、混同されることも納得はできるのですが、ワイン樽としての材質は全く異なると推察します。
楢(ナラ)がワインの樽に使われるには理由がありますが、まずカシとの大きな違いはその香り!
いや、これが最大の違いだと言いたくなるほどに違います。

ナラの香りをじっくりと意識をして嗅いだことのある人は少ないでしょう。
しかし、高級白ワインに出るとされる「樽香(たるこう)」や、熟成した赤ワインの渋みを伴うまろやかな甘さは、まさしくナラの木材の香りから連想できる味わいだと感じています。
カシは、そのような香りは感じられません。
オークという中にも、大きく分けてホワイトオークとレッドオークがありますが、それらにしてもホワイトオークでなければならないのですから、やはりカシではだめなのです(いや、ダメなはず・・・)。

蛇足ながら、今まで私が出会ったレッドオークには、ワイン好きの期待するような樽香を感じたことがないので、それもホワイトオークでなければいけない理由の一つかもしれません。
そして、レッドオーク=赤樫(あかがし)ではありませんよ、念のため・・・

いつまでも変わらないこの誤解を、できるだけ早い時期に、ワイン誌だけではなくワインメーカーの方も、オーク=カシの神話を崩して現実を見てもらいたいと思います。
ほんと、材の香りをかぐとすぐわかるんだけどなぁ・・・

カシ18


蛇足ながら、ワイン好きのかたは機会があれば「カリン」という赤っぽい木材の香りをかいでみてください。
果樹のカリンではありません、木材のカリンです。
そうすれば、熟成赤ワインの持つ甘い香りを想像できるはず。
私なんかワインが飲みたくなると、いつも倉庫でカリンの木材の香りを・・・否、それくらい似ているということです。
植物も、それからできる産物も自然のものはすごいなぁ、と思ってしまうのです。

アカガシ、もちょっと続きます。

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