桐(きり) 〜女の子と繁栄と高貴な位の象徴〜
一番軽い!の日本一の称号を持つ桐。
世界一との差が大きいように思われますがその分、桐には木材としての有用性が大きく秀でているのです。
実用材にて軽さ世界一のバルサの場合は、木材というよりも本当に硬めのスポンジというか、発泡スチロールに木目がついているというか、子供ならば木だと思わないのではないかというくらいですが、桐はその木肌にかろうじて木質を感じることができます。
木目もケヤキのような環孔材の為、鑑賞するにも優美ですし軽い割には強いという木材本来の優位性をそのまま保持している良い例ですから、古くから軽さとともに、きちんと木材として利用される使い道が伝えられています。
桐の材は、辺材と芯材の色の差がほとんどなく吸湿量が少なく、腐れや虫害も材の軽さから想像するよりは比較的少ないものです。(キクイムシは入ります・・・)
また、広葉樹特有の美しい木目を持っていながらも色白で艶がでて、耐湿性・耐寒性に富み、断熱性に優れているのが特徴。
断熱性でいうと、金庫の内貼りにされていたり箪笥に使われるのは有名な話。
そう、主に江戸期以降だそうですが女の子が生まれると桐を植え、結婚の時にはタンスを作って嫁入り道具にする、というお話があるように成長が早いことと断熱防虫性があることを利用した、とっても有名な利用法がありますね。
また、古くは大切なものは桐箱に仕舞う、という習慣もあります。
先の金庫とともに、その類を見ない断熱性で万が一の火事にあっても、その中身は消失を免れるということも理由の一つで、今ほど重要なものを保管しておく方法がなかった時代、今のように量販店で誰でも着るものが買えるような状態ではない時代には、書類や着物は本当に大切だったでしょうから、桐は生活の中にある本当に「頼みの綱」だったのかもしれません。
もちろん、耐火性だけではありません。
昔は自然の水害もこわいもののひとつでした。
洪水にあったとしても、大切なものを入れた桐箪笥は浮くことによって中身を守ってくれるという話もあります。
もちろん、柔らかくて軽いという性質からバルサと同じように「浮きやブイ」としての用途ももちろんですが、男女問わず日本人に馴染みの用途といえばやはり「下駄」でしょう。
何よりその軽さは足の負担を軽くし疲れにくく、足が適度に引っかかるために滑りにくく足に馴染み、何よりあの軽快な「カラン、コロン」という下駄の音は何とも言えない心地よさを感じさせます。
今でも、一枚物の柾目の板で作られる下駄は高級品として流通しています。
また、下駄の歯に桐を使うことがあります。
普通に考えると、柔らかい材が傷だらけになってしまって使い物にならない、と杉のフローリングは傷がつくから・・・と同じような考え方をしてしまいがちですが、そうではなく、石が食い込むことによって反対に歯が減りにくいという特徴を持っています。
また、生活にかかわる部分では江戸川柳にも詠まれています。
「桐の木で二棹できる縁遠さ」
棹、と数えるのは御存じ箪笥。
先に書いたように、桐の若木が育つところには娘さんがいることがわかるのですが、その娘が生まれて植えた桐が、なかなか嫁にいかないと二棹できるくらいに成長してしまう、というもの。
暮らし方が多用になっている現在では、このような表現は適切ではないのかもしれませんが、そうやって詠まれるほど生活の中にあったという例えのひとつ。
桐はその特徴的な材の性質以外にも注目されるのが、その品格。
よく言われるものの一つに、桐は瑞祥の花があります。
中国においては、桐には鳳凰がとまる木と考えられ、おめでたいことの象徴とされています。
また、それは桐花紋と呼ばれる紋章にも見られ、鳳凰がとまる桐の木は神聖な木と考えられることから五七の桐と呼ばれる意匠に用いられ、天皇の衣装や天皇から授かった家紋などにも同じように用いられていることを見ても、格式の高さがうかがえます。
もちろん、桐の花は古くから高貴な色の象徴である薄紫であることも手伝ってか、格式高い樹種の象徴として扱われてきたといっても過言ではないでしょう。
ちなみに現在、南部桐で有名な岩手県の県花が桐です。
ただ、ここで誤解してはいけないのが中国と日本の違い。
「木材あるある」(?!)では、中国で用いられる漢字や読み、樹種と日本で用いられるそれらとは、まったく異なる場合が少なくないということが知られています(笑)。
そのため、上記の鳳凰のとまる中国でいうところの桐は、正確には前回も話に出たアオギリ科の梧桐(アオギリ)を指しているので、日本の桐とはことなるのです。
引用するには注意が必要です。
まぁ、そうやって良いことに結び付けて気持ち良く木材と触れ合うことは、望ましいことですから、話題にしてもらいたいですね。
どうであれ、桐といえば女の子と高貴な位の象徴として知られてきたことには変わりありません。
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