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木の春は桜に非ず 椿(つばき)物語 古木の章 〜白毫寺の五色椿〜


丁度先にツバキの話が出たところで思い出しました。
いつもお届けしている巨樹巨木の記事のなかで、さすがに大きさでは他の樹種の様なものを見ることはできないものの、美しさでいうと緑に覆われたクスノキの巨樹にはない魅力を見せるツバキを紹介していなかったことに気がつきました。
そこでこの機会に更にツバキへの愛着(!?)を深めるために、珍しい五色の花を咲かせるという「五色椿」を紹介します。

場所は奈良県。
春日大社の南の高台の、ちょっと細い路地の住宅街を上がっていくと、「白毫寺」に到着します。

五色椿1

道路に面した階段を上がり、更に「この先は有料です」の看板のある山門をくぐったところを振り返って撮った写真です。
「こんなに上がってきたか?!」と思うほどの景色が広がっているのも、この白毫寺の特徴の一つかな。
結構いい景色です。
場所は何せ地名自体が白毫寺町なんだからすぐわかるというもの、と決めつけるなかれ。
実はここと同じく、花で有名な同名の寺が存在します。
その名は白毫寺!(当たり前・・・)ですが、そちらは九尺藤で有名な兵庫県の白毫寺ですので、同じ花目当てでもお間違いなき様に・・・

その白毫寺にあるのが先に出た「五色椿」なるツバキの古木。
前回までに写真を出していたツバキの紅い花や、TSUBAKIシャンプーなどの紅色や白のボトルを見ても、その花の色は綺麗な紅白どちらかの一色かと思ってしまいますが、五色椿はそうじゃないんですねー。

五色椿3

見よ、この色とりどりの花を・・・
一本の木から、紅や白、そしてそれらの混ざったまだらな花が咲いているではないですか。
どこかで別の木と癒合しているのでは?!とでも思ってしまう様な色の多彩さですが、これが有名な五色椿。

五色椿2


木としての太さは特筆するほどではない、というより普通ですが、それでもその珍しい花の様子は県の天然記念物に指定されています。
白毫寺には、階段を上がってすぐにもツバキがあり、その他にも「白毫寺の大椿」(こちらも驚くサイズではないが・・・)があって、花のお寺というにふさわしい出で立ち。

五色椿8


脱線すると、仏像を多く納められているのも白毫寺の大きな特徴。
写真を残すことができないので軽く流しますが、普段は巨樹を撮影するとそそくさと現地を後にする私でも、納められている数々の像は引きつけられるに十分なものばかりで、薄暗いお堂の中に一人で入るには少し迫力があり過ぎるくらいに見事なものが多かったため、ゆっくりと時間をかけて、花の時期以外にも訪れたいと思いました。

基、巨樹ではないという五色椿。

五色椿4


太くはないものの、それなりの貫録を出しています。
それに、満開を少し過ぎていた為に花の絨毯を見る事が出来、近景も遠景も楽しめるのも、ツバキの美しさであり、その中に多様な色合いが入るところが更に人を惹きつけるところですね。

しかしながら、私の中ではもっと大輪の八重が「ドカッ」っと咲き乱れているイメージだっただけに、これはこれでいいものの、ちょっと物足りない様な・・・

というのも、皆さんご存知の通り、いつもいつも「黄葉していないイチョウ」や「花びらの無い桜の巨樹」など、季節感の無い巨樹巡りばかりしている私ですから、なんとか花の時期に!とめがけて訪れるだけの満開の花を想像し、やってきたんです。
それも、車で訪問した為に駐車場の無い白毫寺のすぐ近くの、一般の方が提供されている有料駐車場に停めて向かったのですが、前もって開花時期を調べていた上に、そこの駐車場のおばちゃんに「どうかな、ツバキ咲いてるかな?!」とわざわざ確認し「えぇ時にきはったなぁ・・・・満開でっせぇ」の言葉に胸を膨らませていた期待感のやり場に困ったことはちょっとわかっていただけるでしょうか・・・・

五色椿6

ツバキの花がもっと控え目であれば、暑めでしっかりした光沢のある葉っぱの緑が映えるだけかもしれませんが、やはり花の魅力というのは大きいですね。
色々な角度から写真を撮りたくなりますし、なかなか離れられないもの。
やはり春の代名詞である桜とは違った味わいがあります。

材木屋としての観点では、ツバキと聞くと床の間やお茶室の材料に、丸太そのままで使ったりすることが頭に浮かぶ人がいることでしょう。
しかし、私にとってのツバキという樹種はそうではありませんでした。
私の家では昔から、決まった時期に「印鑑をツバキ油で手入れする」習慣があります。
ですので、ツバキ油は私の身近にいつもあり使い続けてきた物でした。
このシリーズの初めに、身の回りや用材としての用途を見つけにくい樹種という様な書き方をしましたが、すくなくとも私にはとても身近な樹種だったのです。
だからこそ、花のあるうちに訪れたいと思ったのも一つの理由。
やっぱりちゃんと一緒に写真撮っとこう。

五色椿7


冒頭で白毫寺を間違えないように、といいましたが、そもそも同じ名前を真似したのではない事は確かである様です。
というのは、「白毫」というのは浄土宗のお経の中にも出てくる言葉で「仏様の眉間にあるちょぼ」のことで、私も最近まで知らなかったのですが、それは毛の丸まったもので「白毫相」ともいい、そこから光を発し世界を照らしたと言われる有難いものを指している言葉なのです。
だから、仏様に関わる上で白毫というものは珍しい言葉ではなく、反対に一般に知られていないだけなのだということがわかりました。
私もここに訪れるまで知りませんでしたし・・・・

前回までにツバキと仏教のお話をしましたが、やはり宗教的な側面も持っているのがツバキ。
そしてツバキの木語は長寿と縁結び。つまり吉祥の証。
そして物によると受胎安産の象徴とも言います。

華やかな花に気をとられるツバキですが、その美しさはやはり縁起の兆しなのかもしれません。

さて来週に備えて、この前から花とともに思いだした焼酎とともに、今日はもう少しツバキの余韻にひたってみようかな・・・

紅椿 酒


白毫寺の五色椿所在地

奈良県奈良市白毫寺町392

専用の駐車場なし。ただし、周辺に一般の方の持ち物の駐車スペースあり。駐車可能台数が少ないために、花の時期や休日は混雑が予想されます。
下の方から歩いては少し厳しい…



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