オークとスギ 使われ続けるには違いがある
大人のもうちょっと、は長いからなぁ、、、、昔は自分が言っていたようなことを、こどもに言われる年齢になってきたのが若干ショックですが、もうちょっと続くんです、はい。
この前から続けてきているお酒とオークから始まったお話ですが、折角お酒のお話が出てきたんですから、今回はもう少しお酒にまつわる木材のお話を入れていきたいと思います。
とはいえ、木材というよりも材質とその木取りのお話になるのですが、気にしなければわからない、しかしとっても重要な木材の用途であり、しかも木材の性質をうまく利用しているという点が、とっても興味深く面白いのですよ。
前々回に、ウィスキーオークフローリングはオーク樽を作る際に使われた「柾目材」を再利用して作られたフローリングだ、とお伝えしました。
では何故、柾目材なのかということを考えたことがありますか?!
以前にも、ワインのお話やホワイトオークとレッドオークのお話の中で書いた事があると思いますが、寸法安定性と液体の漏れが少ないという点(後のスギとは異なる理由で)が大きなところだと言われています。
もともとオーク材は、ワインやウィスキーなどのお酒に「バニラ香」または「樽香」といわれる、甘くうっとりとするような香り成分をもたらしてくれることもあり、味もオークのその甘さを感じさせる様な形になることも手伝って、醸造には古くから用いられてきています。
また、樽はまっすぐな板ではありません。
想像するとわかると思いますが、若干弧を描いています。
それは、曲げ木といって熱を加えながらまっすぐな板を曲げていき、あの曲線を作るわけですが、ブナ科のオーク類は曲げ木に特に適した材であることから、現在の様な加工技術が無い時代から、賞用されていたことが想像できます。
そう言う意味で言うと、日本の社寺建築に桧が使われていた時代から加工技術の進歩でケヤキなどの広葉樹が使われるようになったのと同じように、やはり木材を利用することと加工することの関係は非常に密接であることがわかります。
また、柾目は材木として使用する場合には安定的な性質を持つ製材方法ですし、とくにオークの様に板目という木目で製材すると、残念なほどにバリバリと乾燥による割れが出てくる樹種だと、必然的に柾目利用になっていったのでしょう。
それに加え、大切なのが水分(アルコール)を保存しておくという本来の意味を考えた時には、容器から漏れてはいけないわけです。
そう考えると、広葉樹では針葉樹にはほぼ見られない「道管(どうかん)」というストローの様な組織が発達しているので、水分が漏れやすいように思うのですが、オーク(ことホワイトオーク系)では道管に「チロース」という成分が充填されているので、液漏れしにくいという特徴を持っています。
それが最大の理由かもしれません。
それに比べて日本でのお酒というとやはり日本酒!
あの豊かな味わいと飲み過ぎてしまって困るくらいのすっきり感を醸し出す、優しい味わいをつくりだすのが「スギの樽。」
ウィスキーやワインとは違い、針葉樹であるスギを原料としている点が、洋の東西をよく現している面白い点で、やはり日本は針葉樹文化が先に立ち、諸外国は広葉樹文化を多くみてとれるところが、様々なところににじみ出ています。
更に大きな違いをいえば、スギの酒樽は「板目」にて作られます。
えぇ!?さっき寸法安定性も高くて液体を通しにくいから柾目や、といってたんとちゃうの?!
そう言われるのは嬉しいところ。
そうなんです。それを思ってもらいたいのです。
樹種の違いだけではなく、使い方も違うという点。
日本酒の樽は、スギを用い板目の材で作られます。
スギ材は繊細な味わいの日本酒に、優しくも余計に強すぎない香りづけをしてくれます。
しかし、板目材だと液体の漏れや寸法安定性が心配なんではないか?!
そう思われますよね?!あれだけオークで説明したんですもの。
実は、これを説明しようとするともう少し時間が必要なんです!
だから、大人のもうちょっと・・・もうちょっと付き合ってほしいんです。
次回に、樽と板目とスギの特徴を交えたお話をして完結させたいと思います。
もう少し、待ってくださいよ。