杉と松の梁の強度差は?!
多分、無垢の家に関心が出始めて内装材や外装材、フローリングを含む建材類を無垢の木で考えていくと、家の骨格である構造材の樹種にも関心が出てくるもの。
そこで思うのは、梁(はり)や桁(けた)という部材にも杉を使いたい、ということ。
フローリングや羽目板などに杉板を使って節や木目を楽しむ時や、構造材まで日本の木で、と考えられる場合に多いお話ですが、一般的に構造材には「ベイマツ」が使われています。
そこに持ってきて、杉の梁桁材はどうして少ないのか?!と思われるでしょう。
もしかすると色々と調べているうちに、杉は柔らかくて弱いから使われていないんだ、という結論に至ることもあるかもしれません。
実際、そう聞かれることもしばしばあります。
では、比べてみるとどうなのか。
こちらは一般的に使われている米松の梁材。
これを試験機にで荷重をかけていくと・・・・
約7tくらいの力がかかったところで梁としての役目を終えました。
次に杉の梁です。
こちらは、一般的によく行われる手法で米松よりも梁成を30mmアップさせていることが違いです。
こちらもじわじわと荷重をかけていくと・・・
先ほどと同じように、破壊されてしまいますがなんと、その荷重は約7.5t!
30mm大きいとはいえ、強度的に劣ると言われることの多い杉の梁が、米松の値を上回っています。
それに写真ではわかりづらいですが、杉は物凄く初期からたわむものの、結果的に米松以上の荷重に耐えました。
単純に比較はできないとしても、そのしなやかさと粘りは目視する事が出来ました。
そして、荷重のかかった部分をみてみるとこんなにめり込んでいます。
このめり込みも木材のすごいところ。
こうやってめり込むことで力を逃がし、突然の破断を防ぎ粘り強く耐えるのです。
杉も米松も、木材すごい!!
映像の力はとても強いので注記しておきますが、無垢ベイマツと杉の木材は必ずしも全てがこの結果であるわけではありません。
また、単純な強度比較でもありません。壊れ方の試験です。
現在構造材でも集成材が重宝されるわけは、この様な実験をしてもほぼ結果が均一にでることが優れているからで、無垢の木材の場合は材質によれば結果が逆転することもあるでしょうし、包括的な強度とくくるとベイマツは優秀ですし、「どちらが強い」の比較ではなく、「どれくらい差が出るか」の試験画像ですから誤解無き用に!
ただ、弱い・柔らかい・脆い、といった杉のイメージとは違う結果になっている、というメッセージの一つです。
前提として無垢の木材での構造は、この様な壊れ方をする使い方をしないようにするのが第一です。
もちろん絶対はありえませんから、性能が数値で表示される集成材を使いたくなるのですが、それでも無垢を考える場合は当初の想定サイズよりもワンサイズアップさせる方法が一般的ですし、構造設計される場合は各県などが出しているスパン表というものを使うのも一つの判断材料だと思います。
無垢の木をつかうのであれば、無理に同等性能を意識して選ぶのではなく、差があるものをどの様に考えて使うのか、と思ってもらう方がいいでしょう。
一時は「傷つきやすい」と敬遠されていた杉の無垢フローリングも多く受け入れられるようになりました。
フローリングに求めるものが、傷つきにくさだけではなくなったからだと思います。
もちろん、構造材にも単純にどちらが強いではなく、長所を活かす考え方を持って選定しましょうね。