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全てにおいてヒノキなら間違いない?! 〜木材腐朽について〜


さて、前回前々回と続く木材腐朽について掘り下げる第3回になります。
今回は、たまに、、どころか耐腐朽性についてのお話の時によく聞かれる(確認される、という方が正しい・・・)質問を考えてみたいと思います。

これまでのお話で、木材は腐朽するがメンテナンスや計画性無しに全てが劣化してしまうケースを防げば、耐久年数を延ばすことができることと、腐朽に関係する環境や原因となるものをお伝えしましたが、大抵の場合はこれらの話を詳しくする前に、決まった質問(確認)を頂きます。

ヒノキを使っておけばいいですよね?!

先に申し上げておきましょう。
思いだしてください、前々回で取り替えた柱材はヒノキです。
それを念頭に置いて考えていくことにします。

木材を使用する場合には、やはり「木は腐る」というイメージのもとで、できる限り腐りにくい樹種を選定するという意味で、色々と迷うことと思いますが、しらべていると、熱帯産などの硬木にたどり着くか、防腐や防虫などの薬剤処理や薬品、保護塗料を探し当てることでしょう。
そしてさらに色々とみているうちに、木材は樹種が多くて「腐りにくい、水に強い」とされているものもあるけれども、見たことも聞いた事も無い木材、実際はどれくらいのものなの?!という疑問が出てくるはず。
そのとき俎上に載るのが「ヒノキ」です。

わからなくはありません。
日本人はヒノキの神話の数々や社寺の多くがヒノキで出来ていること、そして住宅の土台や柱にはヒノキが多く使われて来たことをよく知っています。
他の樹種に比べた場合のヒノキの優位性や、事あれば材木屋ですら「ヒノキは耐朽性抜群、あの○●寺もヒノキで出来ているから数百年も現存しているのです。」といいたくなるくらいに、お客様に威力抜群の樹種は他にないものです。

それに、ヒノキの抽出成分であるセスキテルペンアルコールやフェノール類テルペンという物質の持つ殺蟻性が大きな効果を示すために、耐腐朽性とともに、木材の保存性に大きく寄与しているからでもあります。

実際、木材樹種ごとの耐朽性に言及されている中でも下記の様に、ヒノキは「耐朽性 大」に区分されます。

芯材の耐朽性区分(一部省略)

・極大 イペやチークなど

・大   ヒノキ、クリ、ひば、ベイヒバ、ベイスギ、ケヤキ他

・中   カラマツ、スギ、ナラ、カシ、ベイマツ他

・小   トウヒ、モミ、ブナ、ツガ、ベイツガ、アカマツ、クロマツ

・極小  エゾマツ、クス、トチ、マカバ、スプルース、ベイモミ、ラジアータパイン他

しかしながら、この表の題名をしかと確認してください。なんと書いてありますか?!
「芯材の!!耐朽性区分」となっていますよね?!
少し木材を知っている方なら、表を見て、スギが「中」に入っていることをおかしいと思われたのではないでしょうか?!
それも同じことです。つまりはその樹種の芯材を比較しているから、であって、芯材を比較しないと意味が無いから、でもあるのです。
そして、このような表だけを見て、「ヒノキは耐朽性が高い、スギはヒノキより耐朽性に劣る」と言ってしまうのはいささか早計だということです。

思い出してください。
木材のお話で幾度か出てきていますが、木材には芯材と辺材がありその性質は全く異なるものである、ということ。
そして大事なのは、耐朽性を考えるときはどの樹種でも芯材で考えないといけない、ということです。
芯材と辺材の詳しくは別に譲るとして、つまりは木材の耐朽性は芯材の成分が担っている部分が大きく、辺材は栄養価の高い部分がある為に虫害も受けやすいのです。
キクイムシシロアリを考えてください。
キクイムシは辺材しか食害しません(芯材に穿孔することはある)し、シロアリも特殊な場合を除いて辺材と年輪の柔らかい部分を食害します。
美味しいからです。

それは、神話的な樹種であるヒノキであっても例外ではありません。
というよりも、先の表の中のヒノキやケヤキは白太は要注意と注記されていますから、ヒノキを使っているからと言って必ずしも耐朽性が高いわけではないのです。

そして、皆さんが「一般的に入手するヒノキ」は、木の芯の部分を含んではいるものの、表面は芯材と辺材が半々位?!というものか、板材では殆どが辺材というものになるはずです。

桧赤白


それは木材の供給上の理由とコスト面も含め、芯材のみで製材できるような大きさの丸太ではないから、ということと、板材は木の皮に近い部分、つまり辺材の部分で製材するので、自ずと辺材の割合が高くなるから、です。
ヒノキの場合は、芯材の着色不良で芯材でもピンク色に色づいていない場合が見られるのですが、それでも、白い部分=辺材が多いはずです。
昔の社寺ではヒノキの白太を削って使っていたそうです。

芯材と辺材の関係は、ヒノキだけではなく一般的な樹種にほぼ当てはまりますが、「極小」表示の樹種は赤身でも耐朽性が低い為に注意が必要なものです。

ここまでくれば、ヒノキなら大丈夫、とはなかなか言えないですよね?!
私もヒノキは素晴らしい樹種だと思いますし、重要文化財や社寺の数々、そして古くからの身の回りの用品にもとけこんでいる優秀で身近な材であることには変りないのですが、一口に「ヒノキ」と言っても様々あるということを知っておかなければなりません。
有名社寺建築に使われるヒノキ、高樹齢なヒノキ、造林によって計画的に生産されているヒノキ、様々です。
天然の産物ですから、それらの中にもさらにばらつきが存在し、樹齢や土壌なども作用し、含まれる有効な成分の量やその生成に大きく差が出ているものもあるでしょう。


木曽


ですから、冒頭の「ヒノキを使っていれば大丈夫」は決して当てはまりません。
弊社が針葉樹デッキ材に杉赤身デッキ材をすすめている理由もわかっていただけるはずです。
屋外デッキや浴室などの湿気のある場所など、耐朽性の求められる部分はたくさんあると思いますが、用途と費用に合わせた耐久年数を設定して樹種を選ぶことと、木材の耐朽性は芯材を基本として考えるということを覚えておいてもらいたいと思います。(もちろん、芯材だからすべて良いともいえず、辺材利用も様々あり・・・それもおつたえしないといけないですが・・・)

デッキ材


木材製品を少しでも長持ちさせるために、メンテナンスと使用環境の整備、それに高耐朽且つ辺材よりは「芯材が多く含まれる木材」を使用するということを念頭に置いて、チョイスをしていきましょう。

木は腐る、ではなく仕組みを知って「木を腐らせない」をすすめていきましょう。





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