2014年02月12日
過去の遺物?! 残すべき遺産?!
みなさん、古いものって好きですか?!
最近も、スキー板を約20年ぶりにやっと買い替えたお話をしましたが、私は古いもの大好きです。
ただ古いというか、やっぱりいまでもどこか輝きを持っていて、尚且つ自分がそこに魅力をみいだすものは古いものでもいいものです。
一言でかたずけると、価値観の違いとなってしまいますが・・・
先日それこそ古い、というか今は使われていないお宝を見せたもらうことが出来ました。
それはこれです。

なぁーんや、鋸か・・・
また、変なものに興味もちよるなぁ・・・どこにでもあるがな。電気のこぎりの方が効率えぇやん。と思ってもらえるとめちゃくちゃ嬉しいです。
そう、のこぎりです。
しかしながら、これはただののこぎりに非ず。
ちょっと見た目も違うでしょ。持ち手の部分が少し角度がついている。
普通は葉に対してまっすぐですものね。
実はこれは、「大鋸(おが)」といいます。

機械で製材する製材所というものが無い頃は、この大鋸で丸太から何から切り出しをしていました。
木挽きさん(こびきさん)という、製材の技術を持った職人さんが使っていた道具がこの大鋸です。
私の指と比べても、その歯の大きさがわかると思います。

今では木挽きさんが挽く仕事というのは殆ど無いですが、機械式の帯鋸で製材するのと木挽きさんが挽くのとでは、能率は全く異なりますが、材にとっては大きな違いがあるそうです。
宮大工棟梁の故西岡棟梁がおっしゃっていますが、機械切削のプレナー機で削るのと、大工さんが鉋をかけるのでは木肌はまったく異なるそうです。
木の繊維をむしり取るのと、丁寧に切り取っていくのとでは大違いだと。
製材も同じだそうで、高速回転する帯鋸で挽くと木の細胞は焼け傷つくといいます。
それに比べ大鋸は、木の繊維を傷つけることなく切りだすことが出来る技術だと。
そこまでの違いはわからない、必要無い、そんな時代かもしれませんが、木が好きなものからすれば、絶えてほしくない技術と道具の一つです。

こちらは先よりも更に大きな大鋸。
歯の形状から見ると縦挽き(木の繊維に平行に挽く)のようです。
鋸の背中の様に見える曲線がとても美しい位ですが、持ちあげてみると何とも重たい。
それもそのはず。
ある程度の重さが無いと挽けませんし、それ以前に鍛えられた鋼の塊です。
薄い見た目以上に重量を感じます。

鋼の腰入れの部分でしょうか。
鍛えられた跡のようなものが見えます。
溶けた鉄を流し込んで成型するのとは違い、熱した鋼を温度管理し何度もたたいて圧縮し、強くする鋼。
おそらくその工程で出来たものでしょうね。
これもすごく魅力的です。

鋸の成も広い広い。
大木になるともっと大きな大鋸になるでしょうから、木挽きさんは体力と忍耐を求められたのだろうと想像します。
実際、これを使っているところをみたかったなぁ・・・とつくづく思います。
大木が帯鋸に吸い込まれていくのではなく、木挽きさんが少しづつポロポロと挽き粉を出しながら挽いていく姿。
周りには機械の油の匂いではなく、杉や桧や松などの香りが充満していたことでしょう。

触れることもままならなく思うくらいに硬く鋭そうなその歯ですが、どこかその奥に、木に2度目の命を吹き込む精錬さをかんじる鋼の鋭さでした。
いやぁ、僕も木挽きさんに頼むような仕事、してみたいなぁ・・・
これは本当に残しておくべき遺産ですよ。