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志多備神社 日本一のスダジイ


巨樹シリーズをお伝えしている中で、昨年に引き続きお正月の1本目は日本一をお届けします。

昨年は文句なしの日本一、鹿児島県の蒲生の大クスでそのスケールが私のつたない文章と写真でつたわるかどうか心配でしたが、今年の日本一であるこれも、さすがの迫力でした。

志多備神社日本一のスダジイ 10

島根県に存在する志多備神社のスダジイです。

最初にお伝えしておかないといけないのは、スダジイという樹種については実は現在は、このスダジイを更に上回る巨樹が見つかっているらしい(離島に存在するそうで、正確な所在地は明かされていないとか・・・御蔵島との噂が・・)のですが、それでも、一般で確認出来る範囲では文句なく一番です。

スダジイのようなシイという樹種は、巨樹の多さではスギ・ケヤキ・クス・イチョウについで5番目に数えられるといいますが、関西地方ではあまりなじみのない樹種だと思います。
特に我らが大阪に限って言えば、やはり薫蓋樟に代表されるクスノキが身近です。
大阪市内にも巨樹がみられるクスノキは堺市に入ると更に多く、堺市では巨樹と言えばクスノキと言うくらい(嘘。私のイメージです。)の多さです。
もちろん、その樹種に適した生息地があるからということが大きな理由でしょうから、大阪からの私にはとても珍しい樹木のように感じてしまいます。

そんなスダジイですが、みなさんご存じないでしょうが実はドングリのなる木です。
ドングリがなる木は、一般的には「ドングリの木」と言う風にいわれるのですが、ドングリは広い意味での「実」のことで、ブナ科の木材であるナラやカシ、そしてこのスダジイの実もドングリです。
もちろん、食べることもできますよ。

話を巨樹に戻しますと、スダジイでは2本が国指定の天然記念物に指定されています。
迫力からいくと、この志多備神社のスダジイがトップかと思うのですが、そうではなく、他のまだ私の会ったことがないスダジイが国指定になっているのです。

志多備神社日本一のスダジイ 4

訪れて先ずはじめに感じることは、やはりおそろしい・・・ということ。
「こわい」というよりもおそろしい。
自分の中の勝手な表現ですが、動かぬ話さぬとはいえ生物で、しかもこの様相とサイズです。
大きさは後で「昌志スケール」で見てもらいたいのですが、永い年月を経たその様相はやはり見るものを圧倒する雰囲気があります。
それに私が訪れた時刻はちょうど雲がかかっていたこともあり、少し薄暗かった為、その巨躯を直視したとき、近づくのをためらいました。
上の写真は程なくして陽がさし始めた時に撮ったものなので雰囲気はでていませんが、期待通りの驚きを与えてくれました。

幹廻り11.4mとされていますが、腰に巻いた藁の注連縄(本によると蛇を表しているものだそう。さすがは神話の地出雲。)が、横綱の化粧まわしを想像させるのか、余計に太くたくましく感じました。

志多備神社日本一のスダジイ 3

後先になりますが、この志多備神社のスダジイ。これだけの巨樹なのに車でのアクセスで簡単に訪れることが出来ます。
最寄り駅からは少し離れてはいるものの、車だと駐車場もお手洗すらも完備されていて、私のような「探して廻る」人間にはとてもありがたい設備(!?)が整っています。
いや、これだけの巨樹だからアクセスしやすいのかも。蒲生の大クスもそうですが神社などはやはり御神木として残っている為に、山中に赴くことなく拝むことが出来るのは幸せですね。

志多備神社日本一のスダジイ 1

さて、恒例の解説板ですがよく見ると「スダジイ(二本)」という表記になっています。
え?!二本もあるの?巨樹が?!と思ってしまいますが、最後にあるように参道の脇にもスダジイがあるのです。だから、何も知らないでいると、参道のスダジイを見て「え?もしかして、これが日本一のスダジイ?」と勘違いして帰られるかもしれません。
そりゃ、木の大きさというものがわからないと、スダジイというものは日本一でもこのくらいだと思うのも無理はないはずです。
参道のスダジイはこちら。

志多備神社参道のスダジイ

もちろん、小さいというわけではありません。
樹木としては大きい方ですが、このスダジイを超え境内に入り、向かって右奥の少し暗くなった辺りにお目当てのスダジイが鎮座していますからお間違いなく。

志多備神社日本一のスダジイ 8

巨樹、特に広葉樹ではまっすぐに上に伸びる樹幹というものはあまりありませんね。
それは針葉樹と広葉樹の外見の違いをそのまま表していますが、やはり巨樹のそれは異様なものです。
四方八方に伸びているというか、よくもこんな太い枝を伸ばせるもんだと驚くくらいに伸ばしています。
上から多いかぶさられるようなイメージがある分、その空間が暗く異様な雰囲気に感じられ、「おそろしく」なるのかもしれないなぁ、と感じます。

志多備神社日本一のスダジイ 9

もちろん、数百年の樹齢でこんな太い腕を支え続けるのは難しいでしょうね。支えが作られています。
もしかしたら、これがなかったら西光寺のスギのように伏条更新するのかな?!と寒冷地のスギ独特の進化を思わせるような思いにかられます。

志多備神社日本一のスダジイ 5

まぁ、それにしても立派です。
見上げると言うよりも、そこに存在する迫力を感じる、と言った方がいいくらいにどっしりと構えています。
それは周囲が林と一段下がった田んぼに囲まれていて、遠くから眺めることが出来ない、ある意味閉鎖された空間に巨樹と同時に存在しているからかもしれません。

周囲が開けていると、巨樹のそばを離れた瞬間にどこか客観的に見えると言うか、本の中の一部分のように、「眺める」感覚にとらわれるものですが、ここではこの空間は巨樹だけのスペースのようで、そこに立ち入らせてもらうようなイメージです。

志多備神社日本一のスダジイ 2

離れて撮影する余裕がないこともあるのですが、近づくとどこを写そうか迷ってしまうのはやはり素人。
この大きさを伝えたいと思う心と、もっと詳細に伝えたいと思う気持ちが空回りです。
そう考えると人間の目は素晴らしいですね。
一度に遠近双方を理解して、いいバランスで融合してくれます。
巨樹を撮るようになってつくづく感じることの一つです。
上の写真も、撮影した時はもっと詳細に幹を伝えるつもりが、今見ると一部分を写しているのみというような、なんかはっきりしないものになってしまっています。
巨樹の撮影は、本当にそのものを表現する難しさを痛感することの一つです。

志多備神社日本一のスダジイ 7

他の巨樹にも見られるものですが、こういう「苦悶の表情」のようなどうすればこのような姿になるのかと訊ねたくなる部分があるのもやはり時が生み出す妙。
本当に苦しかったのか、外的な影響かはわかりませんが、素直に伸びる幹もあれば、主幹がこの様に凹凸まみれのものもあり、これこそが生きているというものかと改めて感じるのです。

一通りスダジイの周りを一周すればお待ちかねの昌志スケールです。

志多備神社日本一のスダジイ 12

どうだぁ!!
ちょうど光のシャワーが降り注いでいるような、そんな瞬間です。
スダジイが作り出した巨樹の世界に足を踏み入れた人間に、下界へ戻る道が開けた瞬間のような・・・

苔むした土に囲まれたスダジイは、湿り気のある空気の中で独特の雰囲気を放ちながら私を迎えてくれていました。
近づいてみては離れ、離れては近づいてみたのですがこのスダジイは日光の当たる角度やその明るさ、そして見る位置によって様々な表情を見せてくれているように感じます。
たぶん、だからこそついては離れて何周もぐるぐると周りを廻りたくなるのかもしれません。
さっき見た表情とは違う、さっきの写真ではこれが撮れていたか?!
そんな想いがなかなか離れず、この光のシャワーに乗り遅れてしまいました。
いつもながら、このままずっと眺めていたい様な気持ちだったのは言うまでもありません。

スダジイという、大阪ではなじみの薄い樹種の日本一。
しかと目に焼き付けて、神々の国から帰阪してきました。
時間が許せばまた会いに行きたい、そんな巨樹でありました。

志多備神社日本一のスダジイ 11


志多備神社のスダジイ所在地

島根県松江市八雲町西岩坂1617辺り

川沿いの道路傍に駐車場とお手洗あり。案内板も設置されています。



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