2012年08月27日
とても助かるリリーフエース? アユース
気がつくと時間の経つのは早いもので(当たり前!)、紹介しておきたいことは山ほどあるのですが、もう頭も体もパンクして久しい様な状態ですので、どんどん後追いの様な状態になっていますが、少し勘弁いただいて今日は久しぶりに出荷の木材のお話です。
木材には様々な種類があることは当然ご存知だろうとは思いますが、その中でもやはり樹種によって個性があったり、逆に「おんなじちゃうの?!」というくらい似ていたり、こんなんあるの!というのがあったりで、これだからやめられない(笑)のですが、そんな状況だから扱う種類も半端なく、仕入れた木材が必ず売れる保証がないばかりか、いつから寝てんのかな?というような状態の物がでることもしばしば・・・
まぁ、それらが超お宝だったりするのも楽しみの内の一つですが、そんなことばかりでは会社がもちません(汗)。
そのあたりのバランス加減は、私のお勧め具合にもよってくるわけですが、そんな中で今回は久しぶりにこの樹種に登場してもらう事にしました。
軽軟で扱いやすく、黄白色の淡い色合いと幅広材がとれることがとても大きな特徴でしょうか。
見た目はラワン、中身は桐(少し違うか・・・)、その名はアユース。

某木材加工メーカーさんによると、複雑な模様を型押しで成型できるようで、様々な複雑な模様をかたどった商品を扱っておられます。
それくらい、加工が容易だということですね。
アユース。
英表記でayous、別名をオベチェ obecheといい、これも熱帯系の樹種の仲間にもれず、産出された地域ごとに名前の違う樹種です。
昔、初めてこのアユースを扱った時、なかなか名前を覚えられない人が「あ、アイウス・・・アユース。アイ=私、はウス=薄い、ていうことか!なるほど!!」と感心してやっと覚えていらっしゃいましたが、なんのこっちゃ分かりませんね。
その理由は、その方が薄毛だった・・・というオチです。ご自身のジョーク混じりの覚え方でした(笑)。
さて、細かくいくとアオギリ科というところに属するアユース。
学名をTriplochiton scleroxylon。
名前でいうと、地域によってはアフリカンホワイトウッドとか、アフリカンメープル(ナイジェリア)というそうですが、これは扱うものにとっても利用される方にとっても混同しやすい名前ですね。
なんちゃらオークや、なんとか桜、アフリカンなんちゃら、という呼び方はかなり氾濫していますから、これも知らないと、「アフリカ産のメープルか!」となってしまうわけで、注意が必要です。
さて、名前を覚えたところでこのアユース。実はアフリカ近辺にて産出される一級大高木です。
つまり太くて大きくなるということです。
枝下で20〜25m位あるそうですから、それだけの長く太く節の少ないものがとれるということです。
そのため、アユースの大きな特徴の一つは幅広材が取りやすいこと、です。
板取りした梱包の中には、50cm以上の幅のものが普通に入っています。幅の狭そうなものでも30cm位です。

広げた私の手がだいたい20cm強。その2.5倍くらいの幅がゴロゴロと・・・
つまり、ほとんどが50cm以上ということです。
板取りなどにおいて普通30cmといえば尺上(しゃっかみ)といって、かなりの幅広品に相当するものですが、やはりアフリカ材、スケールが違います。
他の樹種もそうですが、アフリカ材は長大なものが多く、その寸法が必要な日本に様々な樹種が輸入されています。
アユースの特徴はそれだけではありません。
湿気に対する寸法収縮率が小さい事や、軽軟で加工がし易く鋸やカンナとの相性も良いという事も忘れてはなりません。
これが、冒頭の型押し成型されるメーカーさんの商品に使われる理由の一つでしょう。
また、黄白色の材面は日焼けしやすく肌目は粗いものの、赤身と白太の色の差がはっきりとしていない為、塗装による仕上げがしやすいのも、内装用装飾部材に用いられる特徴の一つです。

ただ、軽軟であるが故に摩耗がはやかったり、基本白っぽい材ですので耐腐朽性に優れているとはいえませんが、しなやかであり衝撃に耐えるという一面も持っていますから、ただ軽軟な材料であるだけではありません。
意外なところでは、欧州のハイヒールの踵には、アユース材が使われているらしいですが、これももしかすると細い部分に荷重がかかる事に耐えるしなやかさと、歩行の衝撃に耐える為に使われているとすると、さすが!!というところですが、さて、実際はどうでしょう。
このように、様々な個性を持っているアユースですが、お気づきでしょうが材面にはこれといった特徴はありません。
杢や木目を好む日本人にしては、こんなにあっさりとした木材を輸入しているのは意外かもしれません。
やはり、オークやバーチ、ウォールナットというどこか華のある見せどころのある木材が注目されるものですが、杢もなく木目も淡泊、色は白っぽいアユースがどうして輸入されているのか?!
それは、やはり上記の特徴が、「個性」として光っているからでしょうね。
そう、それでいいんだ。強く大きくなくとも、小さな個性でも必要とされるところは多くあるはず。
頑張れ、アユース!!

大径木だから出来るこの美しい柾目をみれば、特徴がない、なんて言わせない?!
そんな優秀なアユース。まるで、どこで出てきてもピンチの芽をつんで後続すらも押さえてくれるリリーフエースのようです!
ですが、ラワンに似ているその組織には、あの注意が必要になってきます。
そう、キクイムシです。
ケヤキやタモなどの環孔材(組織が環の様に並んでいる樹種)の他にも、ラワン類などの木材にも食害の及ぶ木を喰う虫です。
キクイムシも白アリもそうですが、硬い軟らかいに関係なく食害しますので、近年とても多く使われている「ゴムの木」のようなとても硬い樹種も喰われてしまいます。

ゴムの集成材。階段やカウンター、その他様々に利用されています。
そうなると、アユースなどは綿菓子のようなもの?!
気をつけないといけません。
さて今回はアユースの幅を活かした木取りというよりも、お客様のご要望に最も容易に対応できそうな物がアユースでした。
お客様の要望により、適材を出荷する。
なかなか難しいことですが、それも木材を扱う楽しみ。
世界の木材を求められる個所に、そしてその仕上がりに喜んで頂いて、木も喜んでくれるように。
今回は久しぶりに活躍のアユース君の紹介でした。
もう少し、アユース君の在庫が残っているようです。彼らも早く巣立っていく日がきますように。