2012年01月13日
無垢の木材の動き
今までの記事で、「木は生き物です」、「木は動きます」ということを書いてきましたが、では、実際にどれくらい動くのか?!
動くというのは、正確には「木材の吸放湿による収縮と木のクセ」を形容したものです。
身近なものでいえば、無垢のフローリングの一枚ごとの隙間や反りなどですね。
ただ、動きはそれだけではありませんし、フローリングのような薄い板以外ではいったいどのようになるのか?!
一般的に、木が反る方向や性質は共通したところがあるのですが、今回はその説明ではなく、実際に木はどのようになるのかを見ていただこうと思います。
先ずは木造住宅を支える柱。
最近は薄い板を貼り合わせた集成材というものが普及していますが、やはり材木屋としては桧をお勧めしたいところです。が・・・・・

あれ?!柱と梁の間に隙間が・・・
違うのです、隙間ではなくこうなっているのです。

この角度から見ると、梁に対して柱が「ねじれて」いるのがわかると思います。
そう、柱のねじれです。
これも木のクセの一つです。
当然、この柱は乾燥材です。しかし、乾燥の経過でクセが出て、ねじれてきたのです。大工さんにより、壁などの納まりに影響する為、可能であれば一般的には削り落として使用するところですが、ねじれが大きかったことと、仕上がりには関係のないところだったため、あえてねじれを削らずそのまま使用しました。
そのことは、一般的な住宅ではNGです。
というのは、柱は壁の中に隠れ壁材を留めつけるものとして考えると、これだけねじれていると、壁材がまっすぐ留めつけられないことと、壁仕上げクロスなどがしっかり貼れない、または貼っても柱の動きによって破れてくる、ということが起こります。
その他、大きく動くとドアや引戸などの入口が正常に開閉できないといったようなことも起こることがあります。
しかしそれらは、現在の住宅建築の多くが洋風且つ柱を表に出さない工法であることと、工場出荷の製品を取り付けていくのみで、大工さんがいろいろなものを調整しながら建てていくものではない、取り付け建築になっているからだと感じます。(必ずしも悪い、という意味ではありません。)
木の持つ性質を許容できない、動きを許さない建築になり木が動くことを考えて建てるという余裕すらないことは、肌で感じるところです。
でも、これは失格でしょうか?!使えない木なのでしょうか?!
柱は本来、家の荷重を支えるもの。それがいまでは壁をとめつける部材の一つになっているのですから、柱の本来の目的が変わってきているのでしょうか・・・

柱だけではありません。
梁も無垢の木であれば動きます。
次は柱ではなく梁を見てみると、向かって左側が大きく隙間があるように見えます。

大きくしてみると、向かって上の方は隙間がないことが見えます。
これが「反り」です。
これも、丸太を板状に切り出すと「普通に」起こる現象です。
当然これも乾燥材ですが、それでもこれだけ反ります。最初からではありません。建築後のことです。
生活での湿気の放出と乾燥、そして木材自体のクセがでてきておこる自然の現象。
それでも、木が動くことを知らないでいれば「隙間ができている!」「寸法が異なっている!!」と言う声が出てくることでしょう。
木の性質としての動きやクセ、吸放湿が起こることを知らないと、理解できない現象です。
柱はねじれる、梁は反る。本当は自然な現象なのですが、その現象をしらないことにより無垢の木を受け入れられない場合が多く存在します。

また、無垢の一枚物天板・カウンターにおいても動きは同じこと。
これは、未乾燥材(といっても、製材後半年間は経過しています。)をカウンターに使用した写真ですが、どのような状態になっているかわかりますか?!
白い壁に接している部分との境に茶色い壁が見えます。
これは、カウンターを施工後に壁を白く塗装して仕上げた物ながら、カウンターが乾燥により縮み、塗装で仕上げた部分との隙間ができたところです。
およそ5mmほど縮んでいます。
これは、未乾燥材を使用すると必ず起こりますが、これが美観上問題があるとするのか、未乾燥材であり、無垢の木材による自然な現象として受け入れるのかでは、大きな違いがあります。
建築によっては、このような状態ではいけない場合も当然ありますが、自身が納得しその状態を受け入れることが出来れば、全く問題にはならないことですが、これも無垢の木材の性質として知っておいて頂かないといけないところです。

杉のフローリングにおいての傷や変色は、今更いうまでもありませんね。
柱や梁、カウンターの動きを知っていれば、無垢のフローリングがどのように動くのか、どういったことが起こりうるのかも少しは想像できるかと思います。
これらは、極端な例かもしれませんが、無垢の木をこわがらないでほしいのです。
無垢の木を採用するにあたって、傷のないピカピカの美観や変わらない外観を望むのは、求めるものが違っています。
木は、人と同じく時を重ねて変わっていくものです。
人が日に焼けるように、人が成長し大人になるように、老いていくように・・・
木も焼け、成長し老いていきます。
その過程をともに過ごせることが、無垢の木材を選ぶ理由であってほしいものです。
そのために知っておいていただきたいこと。たくさんあります。
お客様自身が木をもっと好きになれるように、気に入ってずっと使っていただけるように、是非知っておいてください。