桐と竹 木であるのは?! 材木屋なりの結論
さて、久しぶりに少しかたいお話をしないといけないようです。
といっても、私も学者ではないので、そんなに深く学問に入り込むことはないですが、ちょっとおかたい言葉を使わないといけません。
前回の記事、「桐は草?!竹は木?!!さてどっち?」という問いに対してですが、皆さんはそれなりに答えが出たでしょうか?
これ、結構難しい話の様に思うんですけど、私にこの話題を投げかけてくださった東のお客様は、以下の私の持論にすんなり入ってきていただきましたので、皆さんにも届くかな?!
できるだけわかりやすくいきたいと思います。
先の表題について普通、最初に考える事。
ちょっと詳しい方なら、「桐は広葉樹(雑木・ぞうき。一般的に大きめな葉、広い樹形を持つ植物。対して細長い葉、樹形針葉樹・しんようじゅ。)だよね?竹は何科の何属なのかな?」といったような植物学的な分類が浮かぶのではないでしょうか。
まったくもって間違ってはいないですね。
また同じように理科に詳しい方なら、「植物なら被子植物・裸子植物」の区分で考えて・・・ということがでてくるでしょうか?
それもとても素晴らしい答えではないでしょうか。
では、前回お伝えした通り「理科の苦手な、木が好きなだけの」私なりの答えです。
「樹木とは、多年生の木質の幹で自らを支える事のできる植物の事。さして背丈は関係なし。」
です。
多年生とは、字の如く一年で終わることなく生命活動を続ける植物の事ですね。
そして、「木質の幹」というのはまさしく「木材になりえるであろう部分」である年輪などをもつ木の部分ですね。
そして、それによって自分の体を支えて生えている植物の事。
このことは、正確に当てはまるかどうかはわかりませんが、「木本植物(もくほんしょくぶつ)が木である」という事ではないかと思います。
木≒木本植物。
木本(もくほん)植物は、正確な定義までは及びませんが、先に書いた様に木質の幹を持ち、多年生で上長(背が伸びる)成長、肥大(幹が太くなる)成長するものである場合がほとんどです。(ほとんど、というのは、この言葉だけでは説明不足だからです。)
木本の対として草本(そうほん)植物があります。
これも字のごとく、草です。
草は成長はしますが、肥大成長を続けることはほぼ無く、樹齢(草齢?!)数百年というのは、私の知る限りでは聞いた事がありませんし、木質の幹を持つものもない様に思います。
つまり、詳しい植物学上の分類は文献に譲るとして、材木屋なりの答えとしては、「桐は木であり、竹は草の成長したもの」としています。
桐は導管(どうかん)という組織を年輪様に重ねる、楢(なら・オーク)や欅(けやき)などと同じ「環孔材(かんこうざい)」で、はっきりと木質部を持っています。
オーク(なら)の木口です。
プツプツと穴のあいているのが見えますか?
これが導管で、その穴が年輪の様に規則的に並んでいますね。
それが「環孔材」です。
確かに幹の真ん中は空洞になっていたりしますが、あれは髄芯と呼ばれるところで、導管ではないと思いますがそこが植物の茎の様といえばそう見えなくもない?!ですが、やはり木です。
桐の木口。確かに結構大きな穴があるけど・・・
では竹は。
竹は多年生の植物ですが、年々成長して年輪を作っていく形成層(けいせいそう)という部分が組織内にないそうですし、一定の大きさまでくると太くならず、その太くなった部分も、木質とは異なります。
また、木は年々上長成長を続ける(だいたい寿命の三分の一位の年数までといわれています。)ことと、肥大成長を続けますが、竹は茎の先端部だけでなく節と節の間でも新しい細胞が出来、それが成長するため節と節の間隔が広がっていくのです。
竹は1〜2年で成竹となり、その後は稈(かん)=茎は太くならない。
多年生であるが、10数年で枯れてしまう。
つまり、茎の部分が一定期間太くなっている「草」だと私は考えています。
因みに、つる植物も木ではなく、バナナの幹も葉柄という部分の集合体であるため木ではなく、そして、上記の竹も草が硬くなっただけ・・・であるということです。
そして面白い例を一つ。
樹木の説明でよく言う「●○は、●科の植物だから・・」。
私もよく使いますが・・・
これだけでも、少し迷子になります。
熱帯に多く存在し、立派な大木を多く抱える「マメ科」の植物などは、同じマメ科でも中には「樹高数十メートル、樹幹数メートル」という大きさになる木もあれば、草というにふさわしい、木ではないものも含まれています。
材木屋さんで少し知識がついてくると、「マメ科」なら結構大きな材木がとれる!と思いがちですが、全てが万事そうではないという事ですね。
樹木を考える上で、「針葉樹や広葉樹」また「●○科」というのはとても重要な手掛かりです。
が、それだけでは判断できませんし、今回の私の言葉ももしかすると日々進歩する学問には追い付いていない結論かもしれません。
どうしても、木と草に対して白黒付けたい場合は大学にて植物学を専攻してください(笑)。
全ての物に対してそうあるのではなく、もう少し余裕を持って自分の興味のある物の本質的な価値について考える事が大事です。
知れば知るほど学問的になりがちで、また、学問の用語を借りないと説明しにくいところもある木材ですが、今後もできうる限りわかりやすく、皆さんにお伝えしていけるように精進したいと思います。
今回のかたさはどうかご勘弁を・・・(汗)
桐板。草であれ木であれ良いものは良い。
それでいいのだ。