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日本一に出会う 蒲生の大クス


2012年最初の記事(厳密には違いますが)は日本一からスタートです。

日本一というものはたくさんあれど、本記事で取り上げるからには勿論樹木です。
さて、日本一の樹木というとどの樹種を思い浮かべるでしょう?
やはり日本で一番有名な?!杉でしょうか?縄文スギをはじめとする屋久杉やご紹介したことのある杉の大杉、最近の記事では高井の千本杉などがありますね。
たしかに、杉も日本一です。杉の日本一はその樹高です。
木の高さが一番高い樹種は杉なのです。日本には以前に書いたことがありますが、落雷や台風などの影響で巨樹であれども樹高の高いものは、そうありません。
世界に目を向けると、100mをゆうに超える巨樹が存在しますが、日本にはそこまでの樹高を誇るものは存在しません。
いつかは私も世界の巨樹を訪ねて歩きたいと思ってはいるので、ほんと、いつの日か、記事にできることを夢に見ています。

話がそれましたが、樹高で一番は杉。
では、幹の太さ「樹幹」で一番はといえば、それは「樟・クス」です。
日本以外に台湾などにも分布する、暖かい地方を好む木ですが、一億年前の化石が出るほどに古くから存在していたのもクスノキで、そう考えると、神代クスとなり巨樹が出土することも納得が出来ます。
紀州の有田川四国の那賀川神代樟は本当に立派でした。

くすのきの学術的和名は「クス」とカタカナ表記だそうです。反対にそれと区別する為に、ひらがな表記にするところもあるそうですが、「樟と楠」の違いについては大阪府下一番のくす「薫蓋樟(くんがいしょう)」のところで書いていますので、そちらを参照してください。
今回については、国指定の天然記念物の表記に従い、クスを用いたいと思います。

また、クスは国指定天然記念物の巨樹の樹種においては数では第3位です。
意外に多いと感じるか、少ないと感じるかはわかりませんが、それでも我が大阪府には薫蓋樟をはじめとするクスの大木が多いので、実感としては少なく感じてしまいます。

さてそれではご紹介しましょう。
日本で最大のクス、それは鹿児島県は姶良市蒲生町にある「蒲生のクス」です。

蒲生の大クス 3














今までに出会ってきた異形の巨樹とは又違う、本当に大きく立派な巨樹ぶりです。
昔々、スサノオノミコトが眉毛を抜いて散らすとクスノキがはえ、スギとクスは浮宝(舟)にすべしという言葉を残されたという話が有名ですね。
そのクスノキですが、実は巨樹についていえば関西以西、特に九州に多く見られるのが特徴です。
反対にケヤキの巨樹は殆どが関東にあり、以前に紹介した野間の大ケヤキが一人、西の横綱として構えてはいるのですが、その巨躯もケヤキとしては日本第4位ですから、その土地においての樹木の成長に寄与するものの違いというものが見て取れるような気がします。

蒲生の大クス 2














大きな字の解説版です。
その最後に樹根空洞とありますね。
そう、実はこの蒲生のクス、根の部分に大きな空洞があるのです。
そこにはしっかりと扉までつけられているのです。

蒲生の大クス 11


 写真では小さな扉のようにみえますが、木が大きすぎるのです。

 かがんで入れるくらいの大きさがある、異次元への入口になっているかのような扉です。




タクシーの運転手さんの話では、タイミングがよければ中に入ることができると聞いていたのですが、あいにく私が訪れたのは早朝でしたので、どなたにもうかがうことができず、その真意を知ることはできませんでした。

蒲生の大クス 1














どうしても写真では大きさが伝えきれません。
近くには当然行くことができないのですが、ギリギリまで寄ってみましょう。

蒲生の大クス 4














悔やまれる点ですが、逆光です。夕刻だからではありません、その逆です。
それでも、一番寄れると思われるところがこのあたりです。
どれくらい離れているか・・・全く近くではないので比較はできませんが、とにかく大きいのです(笑)。

蒲生の大クス8
























これでどうだ!!
全景です。
私がどこにいるかわからないでしょう、ハハハ・・・


蒲生の大クス7
























近くで見るとこういった感じです。
本当に立派な幹廻りです。このまま抱きついてやりたい勢いです。

蒲生の大クス 6














少し顔がこわばっていますが、めちゃ寒いんです。ホントに抱きつきたいくらいです。

蒲生の大クス9
























近くで見ると、幹にはたくさんのコケのような植物が茂っていますが、とても元気そうな幹です。
当然、巨樹らしく瘤のようなところが多くありますが、きちんとした展望ステージが設置されていることもあり、根や幹に大きな損傷は見られません。

蒲生の大クス10

























幹周りが太すぎるせいか、上を見上げてもそんなに枝が張っているような印象は受けません。
木によっては、枝が異様に張り出しているものもあるのですが、蒲生の大クスにおいては幹にその目が集中してしまうこともあり、覆われている感はそんなにありません。

大阪近辺の方は、一度は訪れていただきたい「薫蓋樟」。
その薫蓋樟の約2倍に近い幹廻りですから、薫蓋樟に出合ったことのある方であれば、写真からでもその太さが想像できるかと思います。
どうしても、日本一!という言葉で幹ばかりに気がいってしまいがちですが、単純なクスノキという樹種の素晴らしさを感じさせてくれる一本であると思います。

巨樹を廻られている方は、一度は「日本一」という言葉とともに訪れるであろうこの蒲生の大クス。
この樟を眺めながら、日本にある巨樹やその昔にクスをはじめとする樹木が覆っていたであろう世界を想像してみるのもいいものです。

蒲生の大クス 5














この巨樹の様に、皆から眺望を受ける日本一の風格ある材木屋になりたいものです。
その日を目指して、2012年のスタートです。


蒲生のクス所在地

鹿児島県姶良市蒲生町上九徳2284 蒲生八幡神社内

最寄り駅から少し距離があるため、タクシーか車での参拝をお勧めします。
しかし、姶良町には2011年現在、ホテルが一つしかないように見受けられました。なんとか予約できたものの、電車から海を望むことのできる長閑でありながら、心の優しい方に出会える街。
これからも、蒲生のクスをはじめ観光などで訪れる方が宿泊できる施設を維持していただけることを願っています。



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