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2024年09月25日

再利用のむつかしさ？！じゃないでしょう・・・～万博リングの工法の不思議 ①～

世の中、いろいろと問題がありますが一つ一つに憤怒していられない現実。
本当は声をあげるべきことが沢山あるものの、それならば森に関わる時間を増やすとか、次の世代に伝えるか伝える時間を取りたくなる。

でも、これにはひと声あげたくなる。
木造に関する事ですからね！

様々な意見が交錯しながら開幕が迫る大阪万博。
そしてその目玉となる、木造リング！

歴史に残る、巨大木造建築物として完成が近づいています。
しかも、それが日本の木の文化を象徴する「伝統工法」である「貫工法」を用いているとされています。

うーむ。

以降は、担当の個人的意見です。
建設されている方などを批判するものではありません。
しかし、その構造物自体は、伝統工法でもなければ貫工法でもない、見た目のみ似せた構造物だと認識しています。

そこに危機感を覚えるのは、今までの一般建築でも「似せたもの」が増えることで、本来のものがもつ機能や性質を見失っているものが多く存在すると思うからです。
特に、伝統工法という言葉は聞こえ良いかもしれませんが、本来の伝統工法とは全く異なるものだと思うからです。

ひとつには、伝統工法は木組み。
木組みは、木を組み合わせると書きますが単純に交差させているように見せるということではなく、嚙合わせること、組み合わせることが大切。
力を組織で受け止め流すことが必要だと理解しています。
前回の施工記事で見える通りの仕事がそれ。

しかし、構造を見て不思議なものの一つは上の写真の「貫」部分。

金物を挟み込んでボルトで金属を突っ張っているという。

現在の木造軸組み（伝統ではない！）工法でも金物は仕様しますので、金物自体が悪いのではなくその役割と、貫工法というメリットを活かす形になっていないように感じるからです。

賢い人たちが試験を重ねて強度を保てるようにしているのだと思いますが、貫工法ではないと見えるのですが、どうでしょう・・・

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タグ：: 大阪万博; 万博リング; 伝統工法; 貫工法

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材木屋の独り言 | 本物の無垢木材

2024年09月22日

作業ではなく、手仕事ができる大工さんが建てる終の棲家 ④

さぁ、やっとのことで2階に到達（笑）。

見どころが多すぎて、写真撮影も既に2時間を経過・・・
そんな時間を掛けながら撮影するのは、へたくそであることが一番なのですけど、それ以上に細かな部分を見たいことと時間により見え方の変わる無垢材の魅力があるから、なんですよ。

木曽桧の階段を上がると見えてくるのは、大和桧の無垢フローリング。

こちらも、階段と同じく節有ですが先日の通り、ヒノキの節有材は補修なしには成立しませんので、抜けてしまった節には別の節で埋め木をするという補修方法を取っています。

また、大和桧は標準で150mm幅という幅広サイズ！
十分にヒノキの木目を楽しめるところが、階段部分からのつながりを自然に演出しています。

各部屋に入るドアももちろんすべて木材で製作されているのですが、ドアはもちろん節なしですので良いバランスです。

また、弊社が数あるヒノキのフローリングの中で大和桧をおすすめする理由は、その仕上げです。

一般的に、ヒノキやスギの無垢フローリングはサンダー仕上げという、サンドぺ―パーで仕上げられます。
コスト、そして塗装の下地としてちょうどよいという理由もあります。

しかし、そこをわざわざモルダー仕上としています。
モルダーとは刃物のある機械ですが、一般的には形状加工で使用される機会です。
それを表演仕上にも用いているのは、サンドペーパーでは得られない質感のため。

実物でなければわかりませんが、その違いは歴然。
石山赤松程ではありませんが、表面の艶と輝き、そしてヒノキ樹脂の質感はこの仕上のもたらすもの。

それは、先日の「加工の差は、見えない価格の差」の記事でもお伝えしたように、経年変化後の風合いにも非常に大きな影響を与えるものなのです。

写真の下方、少し艶っぽく光っているのがわかるでしょうか・・・

現地ではしっかりと視認できるのですが、担当のこだわる素材の差はこの仕上の差です。
言われなければわからない。

でも、ずっと住み続けるならばいいものをお届けしたい。
知っている限りの良いものを。価格の範囲内でのベストと、それ以外の選択肢も含め。

だから、弊社は大和桧をおすすめします。

そこを理解してくれるのも、大工さんの懐の深さ。
今回は本当にその理解もあり、提案材が採用され綺麗に納めてくださいました。

本当に感謝。

また、手を抜かない気を抜かないのは、殆ど気にされないであろう高い天井にも。

一部の天井は吹抜け化粧天井となり、素材がそのまま現しになっています。
そこにも、同じくモルダー仕上をされた高樹齢杉の野地板があります。

節有ですが、定番の埋め節フローリングや古希杉の原板のうちで、節の大きすぎるものや色合いの不釣り合いなものなど、フローリングには適さないものを使用しているのですが、それでも加工は妥協していません。

きちんと埋め節補修され、その上フローリングと同じく丁寧なモルダー加工で、スギの艶がピカピカと。

大工さんの仕事を活かすのも素材、素材を活かすのも大工さん。
その関係のなかで、材木屋ができるベストを提案する。

色々とご相談いただき、考える余地があり楽しめるからこそできる提案のおうち。

手間のかかることが多くなり、本来であればそこまでする必要のないことまでをやり遂げ、細部まで美しく仕上げる大工仕事。
自身の時間を惜しむことなく注ぎ込み、お施主様の終の棲家にかける想い。

建築に関わっていると、続く仕事のうちの一つに埋もれてしまいがちな日々の仕事。
そこに陥らずに、全力を尽くしていく大工さんを応援したい。

そして、少しでもその時間の価値を、お施主様にも共有してもらい時間の対価となる価値を大工さんにお支払いいただく。

普通は嫌がりますよ、こんな仕事。

端っこで節が欠ける。

使えないとされるところを、丁寧に補修されています。
これにかける時間が多数ある。
それだけでも、手間と時間分の費用が掛かるのです。

決して高価なものではありません。
いや、本来は高価な大工さんの時間ですから、それを費やしてくれる大工さんには多大でなくてもいいので、本来の価値を一緒に理解し契約金額＋その価値に値する何かを届けてほしいと思うのです。

もちろん、エクストラの費用なのかもしれませんし、もしかすると感謝の気持ちのしるしや言葉かもしれません。

それらが、次の手仕事に繋がりそして、次の木々を活かす仕事につながるのです。
大工さんと材木屋だけが主役ではなく、施主さんと一緒になって森林も巻き込んでこその木造住宅であり、自然素材の家。

そんな家づくりのできる大工さんが頑張れる業界であるように。
今日もそんな想いを伝えるべく、この施工記事をしたためていたのです・・・・・・・

・高樹齢杉！純白無節浮造り（うづくり）羽目板の記事はこちらから
・高樹齢杉！純白無節浮造り（うづくり）羽目板、板屋楓セレクショングレードとの白の競演の記事はこちらから
・高樹齢杉！純白無節浮造り（うづくり）羽目板、石山赤松と和室改修の施工記事はこちらから
・高樹齢杉！純白無節浮造り（うづくり）羽目板の、石場建て古民家の改修工事施工の記事はこちらから
・高樹齢杉！純白無節白波羽目板、埋め節フローリングとの高樹齢杉共演はこちらから
・伝統工法に使用した、丸太の伐採と馬搬の様子はこちらから

＊今回、大工さんの技術継承と若い職人さんを育てる活動を惜しまず、素材を活かす手仕事の家を建築された、大阪市の仮谷工務店さんのホームページはこちらから！

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タグ：: 無垢フローリング; 無垢フローリング選び; 一枚物; 馬搬; 丸太; ゴロンボ; 伐採; 戸田先生と愉快な仲間たちの伐採授業; 大和桧フローリング; 施工写真

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施工後のお宅にお邪魔しました | 国産材　無垢フローリング

2024年09月19日

作業ではなく、手仕事ができる大工さんが建てる終の棲家 ③

まだまだ階段をみていたいのですが、いっこうに進まないので強制的に次へ（汗）。

リビングの天井は、玄関ホールから続く純白浮造り！

間接照明に、純白が映えますね！

無垢材、特に広葉樹では稀な羽目板用途となると、どうしてもスギ材で赤白があり、しかもコストからも節有が多用されるところですが、弊社では天井には節有はおすすめしていません。

頭上の印象が一気に重くなるうえに、少し木質感が強く出すぎるからです。

特に、スギやヒノキではあからさまにログハウス感が出てしまいがちなので、そうならないように他の素材を邪魔しない、純白の無節材をおすすめしているというわけです。

そのうえ、単なる純白ではなくさりげないポイントは浮造り。
丁寧に浮造りされた純白材は、ブラシ跡が目立たないために美しくたなびく雲のような木目を見せてくれるので、空が抜けるような天井の印象を持たせてくれます。

勿論、その艶も見どころの一つ。

実際の現場を見ると分かりますが、本当にすっきりとしているんですよ。
それくらいに違う、純白無節が作る空間。

おすすめの天井材です。

さて、さりげない天井をぬけ次は和室に向かいます。
でも、単なる和室ではありません。
お施主様は、茶道を嗜まれるかた。

そのため、茶道の炉がきられている本格的な和室なんです。
そこで目に留まるのは、床柱。

これも、材木屋のエゴ？提案です。

茶室にふさわしいのかどうかのご意見はあるかも知れませんが、サイズとしては非常に細い70mmの角材。
しかし、そこには得も言われぬ木目が存在するのです。

波紋のようでもあり、揺らぎでもある。
流れる所作を見守るように、ゆらゆらと揺れる木目。

丸太ではなく、敢えて細い角材を用いたうえ、もうこのような材は狙ってはつくられないであろう杢を持ったものを提案しました。
客人の視線が安定する場所にもなるのでは？！と、茶道も知らない半端な材木屋の提案ですが、受け止め活かしてくださった大工さんに感謝。

その素材はというと、驚くなかれの地栂です。

日本のツガの、蟹杢を製材したものです。
蟹杢、とは蟹の甲羅のような木目になる珍しい状態で、マツやツガの高齢木、そして一部の環境で育った広葉樹でも見られる（きのむしラジオのサムネイルがそれ！）稀少な木目です。

弊社の秘蔵っ子で、どのタイミングで使ってもらえるだろうと考えていたところに、今回の茶道のお客様のお話。
その上、木を活かせる大工さんの施工ということで、もうサービス！位の勢いでの提案に喜んでいただけたようです。

もちろん、床柱以外にも造作材は高級な赤杉を用い、竿縁の無垢天井板を配し傾斜天井仕上げとしている凝った造り。

この赤杉の天井無目鴨居のソバ柾目の通りをみても、どのような素材で作られているかがわかるはずです。
気を抜くところがないどころか、全てに全力投球で挑み、想像を超えたモノづくりをする大工さんのおうち。
素材も仕事も見事です。

それでも、やはり和室も重い木質感が無いのは、美しい仕事ぶりからでしょうかね。

建物の外観は、純和風ではありませんので茶道の気配はあまり感じられません。
しかし、建物奥にはこのような和室があり、きっちりと木の素材感が空間に感じられる。

本当は、客人として来られれば一部から覗く外壁に、都会の一室とは違う空間であることを認識する仕掛けがあることは、容易には気が付きません。

それはこの焼杉。

過度にアピールするのではなく、和室からのみ覗く一部の壁のみに使用されたこの焼杉。
一般的に流通する焼杉とは異なります。

これは、三角焼きともいわれる方法で焼かれた、本物の焼杉。
バーナーで工場加工されたものではなく、炎で炭化している焼杉です。

その違いは表面の炭化層。
その炭化層は、防火性や耐朽性に大きく関係しますが、一般流通品に比べて格段に分厚い炭化層を持つこの焼杉は、焼杉本来に性質を有しているもの。

一般品は、コストとその似た見た目を重視します（中には黒色塗装品もある）が、これは本物の焼杉。
質感とともに、家の外壁を永く守る頼れる素材なのです。

もちろん、その質感は非常に奥ゆかしい和室とぴったりです。

外に覗く竹垣と瓦も相まって、大阪市内の住宅地とは思えない雰囲気。

これであれば、落ち着いた茶事になる事ことでしょう。
なんとも贅沢、とここでも口を突いて出てしまいます。

それだけ、素材にもこだわり抜いている証拠。
材木屋の提案する素材を活かし、空間を彩る大工さん。

魅せるだけではない、仕事を隠しながらも確実な仕事を進めていく現場に嬉しさが溢れます。
木を活かす木の家。

木造で自然素材をつかっただけの家ではない、大工さんと材木屋が活きる家。
お施主様のライフスタイルを考えたおうちに活きる個性。

その協業は、2階にも続くんです。

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施工後のお宅にお邪魔しました | 国産材　無垢フローリング

2024年09月16日

作業ではなく、手仕事ができる大工さんが建てる終の棲家 ②

いざ、玄関をはいるとこれまたさりげない木目が。

これだけ見ると、さりげないとは言えないでしょうか（汗）。

弊社人気の純白浮造り羽目板です。
高樹齢のスギの、貴重な辺材部分のみを厳選し、全て白色のみの羽目板。

それに浮造り仕上げを施しているので、木目が浮き立つとともに木目部分が光るように見えるので、色差が無い落ち着きと木目による鮮やかさを一挙両得！なのです。

その純白浮造りは、この後のリビングにも採用して頂いているのですが、玄関を上がって見えるのは驚きの階段！

何だ、この階段は！

階段も無垢材です、というおうちはたくさんあります。
その中には、建材メーカーさんが出している規格商品を使う場合もあれば、スギの無垢材でつくられているものも多く目にします。

しかし！！！！

今回、大工さんから依頼があったのは「ヒノキの生き節階段」でした。

これ、非常に難しいことがわかる方は、林業か木材に精通されている方ですね。

ヒノキなんて植林材が沢山あるじゃないか！
節なんて、普通にあるしその方が安くできるじゃないか！

そう思っているでしょう？！
全てを覆します（笑）。

先ず、ヒノキの節は抜けたり掛けたり穴になったりしやすく、化粧なうえ靴下などが引っかかる恐れのある床面には、埋め節などの補修をしなければ使うことができないものです。
それは、のちほどのフローリングで分かります。

ですが、今回は大きな節が堂々としているこのヒノキ材を贅沢に用いていることに驚いてください。

赤く燃えるような節。
割れはありますが、その部分には丁寧に割れ補修がされています。
もちろん、大工さんの仕事ですがその前にこのおおきく見事に赤い節は、植林材ではありません。

天然実生の、樹齢250年を数える木曽桧材です！！

現在「伐期をむかえた」といわれる森林は、樹齢何年でしたっけ？！
比較にならない、自然の中で淘汰されながら生きてきた、天然のヒノキ。
その代表格である木曽桧の500mm幅材一枚板から、贅沢に切りだした階段材。

階段は、総木曽桧なんです！
なんとも贅沢ですが、そこまでの指定は無かったんです。
しかし、そこは大工さん応援の材木屋の意地！

他では絶対に出来ない、ヒノキ生き節階段を作ってやる！という気持ちでトライ。
なぜなら、きちんと生き節材の難しさを理解し、仕事をして下さるという安心感があるから、全力でトライできるのです。
贅沢な木取りも無駄にならないと分かるから。

お施主様には、そこまでのこだわりは必要なく、材木屋のエゴかもしれません。
でも、全力を尽くそうとする大工さんに材木屋が全力でサポートしないわけにはいきません。

精一杯の材料で後方支援するのが材木屋の仕事であり、楽しみでもあります。
そう楽しみ。

材料の選別から、難しい木取り。
そしてロスなく仕上がる喜びと、何より木を見ながら製材したりできる楽しさ。

現在の材木屋さんが忘れかけている、材木屋の特権。
十分に味わいました。

その階段には、手摺が必要。
見ましたか、手摺。

ここにも、めちゃいい仕事が・・・

何とも細かな細工。
そして、繊細な部材の寸法を活かす木組み仕事。

美しいです。

木曽桧の清楚なイメージにぴったりの、非常にスリムな手摺。
しかし、実際に触ってみるとかなり細いもののしっかりとしていることに驚き。

素材は、枠材と同じくセンですので硬質感がある事と、しっかりと木組みされていることにより、最小限の部材で成り立っている手摺に安心感を持たせていることには、感心！

流石です。

そしてもちろん、ここにも手仕事の技がありました。

これは、地獄ほぞですねぇ！
がっちりとかみ合っています。

縦の柱を貫通するホゾ。
そのホゾに、色の異なる材が打ち込まれていますよね。

その小さな部材がホゾを押し広げることで、材同士を密着させ圧縮力を持たせて引き抜けないようにする。
手摺がゆすられても、抜けないようにする工夫。
いいですよねぇ！

無駄に、階段を昇降して手摺を撫でたくなるのは、馬鹿な材木屋だからでしょうか・・・・

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施工後のお宅にお邪魔しました | 国産材　無垢フローリング

2024年09月13日

作業ではなく、手仕事ができる大工さんが建てる終の棲家 ①

材木屋にとって大事なのは、木を活かしてくれる大工さんと仕事をすること。
そして、楽しくワクワクしながら期待以上のものづくりをすること。

それが、後世に繋がったり残ったりするものであればなおさら頑張れる。
消費ではなく、活かしていく建築を一緒にしていくことが材木屋さんの仕事の一つであり、弊社の目指すところ。

今回ご紹介するのは、本当にそのつないでいくことや活かすことを、そのまま見える化したようなおうちです。
諸事情で、完全に完成する前でしたので完成後がさらに楽しみではあるものの、見切り発車します（笑）
その見切り発車の一番駅は、いきなり伝統工法の屋外スペースから始まります！

まだ完成していなかったため、全貌はお届けできませんが木組みで建てられた屋外スペース用の屋根。
しかも片持ち！

片側にしか柱が無いため、屋根を支える工夫に木組みが活かされています。

そして、なによりその柱は我々が授業も兼ねて山に入り続けている伐採企画の中で伐採した、曲がりヒノキ丸太です。
大径の直材木ではなく、曲がりがあり枝の多いヒノキ。

それでも、平均樹齢が90年以上で年輪密度が細かなヒノキは、活かし方でいかようにもなる非常に良い森のもの。
曲がり木を間伐し活用することで、周囲の大径木を目指す将来木化や広葉樹の生長を促進し、森の遷移を促す。
さらに、この丸太は馬搬実践をしたものです。

馬が運んできてくれた、特別な丸太。
外構が完成すると、ほとんど目立たなくなってしまいますし、木の建物に馴染んでいくのですが今だけは、その特別な存在が光っています。

見た目は分からずとも、きちんと生えていた場所や恰好、そして伐採の様子までがわかる木が街で活かされるというのは、大阪ではほとんどないでしょう。
自分たちが選木し伐採に立ち会い、運び刻み建てる。

これから何十年、ヒノキの樹齢よりも長い年月を生きる建築物として大切にされるはず。

土壁仕様でもちろん、込栓打ち！
工法にこだわりが無ければ関係ないかもしれません。

しかし、この建て方ができる大工さんがこの家を建てたのだ、という安心感が一目で伝わります。
こういった工法ができるということは、手仕事ができるということ。

そして、手仕事が出来るということは構造の力の流れや木の性質を理解し、木を扱えるということ。
工場でつくられたものを組み立てるだけの作業とは、全く異なる仕事ができるということ。

丸太を使うことや込栓にすることが大事ではなく、この仕事が出来るという事実が大事なのです。
先の万博リングの様に、見た目の真似事は意味を成しません。
手仕事ができるからこそ、簡易な仕事も考慮しながら出来る。

その違いが大きく見える、目立たないポイントがここです。

もう、外構スペースからして萌えます。
さて、玄関はと言うと・・・

嫌味の無い木質感。
木が見えているのにすっきりとしている。

そこにあるのは、玄関枠のセン（栓）。

先ほどの木栓ではなくセンという樹種です。
タモのような木目ですが、更に繊細なイメージで、その色調もライトなグレー系を想起します。
木目がはっきりとしているのに、決してバーン！！と主張しないさりげなさ。

以前から担当の一押しだったのですが、どうしてもナラ（オーク）のイメージやタモの手堅さに負けてしまい、なかなか出荷が無かったのですが、今回の大工さんはよろこんで採用して下さいます。

そのイメージを活かせるように。

そう、素材を活かすのはやはり大工さんです。
そのイメージを提供し、材料の特徴を伝えるのは材木屋ですが、その両輪で活かす事ができた時の喜びは、最高です。

そして、玄関口で待っているのはメープル。

針葉樹のフローリングの場合、框に何を使うか迷う方がおられます。
同一樹種であるスギやヒノキを検討される場合もありますが、弊社では針葉樹のフローリングにはメープルやブラックチェリーなどを、イメージによっておすすめしています。

カリンだったり、「奏でる家」のアフリカンマホガニーの様に赤系の樹種も意外とおすすめ。

ヨーロピアンメープルなどを含む多様なメープルは、広葉樹ながらもヒノキなどの白木に良くマッチングし、その上しっかりと硬質な為摩耗を抑制！
框としての役目を十分に果たしてくれます。

もちろん、足触りにおいても針葉樹との違いがあるために、視覚的にはしっくりとくるものの触覚的には違いが判るというものです。

室内がさらに楽しみですが、次回に続きます（笑）。

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施工後のお宅にお邪魔しました | 国産材　無垢フローリング

2024年09月10日

必然なのか、思慮不足か？！話題の木材利用を考える

ネットに出てからテレビでも取り上げられ、瞬く間に業界を含めて話題になっている、建築物。
超大御所建築家、隈研吾氏が携わった栃木県那珂川町の馬頭広重美術館です。

不勉強で、竣工当時の状況を詳しく見ていなかったのですが、屋外の屋根や外壁にふんだんに、意匠的に木材を、地元の木材を使用して建てられたものだそうですね。
その屋外使用の木材が、経年で朽ちて交換が必要なものの、費用が3億円に上るということで物議をかもしている。

そもそも、屋外に木材を使うからだとか、スギではもたないのは当然とか、メンテナンスをしていなかったからだとか、部材の寸法が小さいとか、意匠的すぎるとか・・・
もちろん、材木屋的にも言いたいことはいっぱいあって、しかも批判をする人の中にも論点はいろいろとあると思うのですが、ひとつ、ニュースで気になったのは「当時の塗料の性能は現在ほど高いものではなく」というような趣旨の言葉でした。

ん？！

塗料のせい？！
塗料で耐久性を担保しようとしていたの？！
と安易に考えてしまうようなコメント。

つい最近も、「きのむしラジオ」の屋外使用の木材シリーズで様々お話したところで、塗装の大切さはお伝えしたものの、それでも塗装だけで飛躍的に木材の耐朽性が向上するものではありません。
しかし、先のコメントでは塗料の耐朽性の問題と思えるような言葉。

そもそもの材料の寸法が30×60という、材木屋からすれば小さすぎる（腐朽スピードに抵抗する断面が少なすぎる）ことが明白です。
しかし、デザインのうえでは「細さ＝繊細さ」ということで、無垢材にもとにかく「細く、薄く」を追及されるのは担当の経験上も、非常によくわかります。

しかし、木材という生物材料を扱うのに、使用（デザイン）する側の配慮が不足しているのはもちろんのことながら、デザインと「先生」が設計した建物が街の観光資源になるという、レガシー的な考えでの発注に（ではないかと思われる）してしまったのが原因になっているのではないかと思ってしまいます。

材木屋だったら、必ず注意喚起するようなところ。
それが、建築から24年後のいま、問題になる。

もちろん、メディアとして話題になるから取り上げているわけですが、担当が所属する木材業界はこのニュースで多くの事を学ぶべきだと思います。

そりゃ木は腐るとか、スギじゃなくてヒノキじゃないと、とか防腐注入木材を使わないと、ということじゃない、もっと本質的な意見交換や情報交換や基本的な使い方などを、もっと建築に入り込みながら話ができる環境を作るべきだと思います。
といっても、「🐻先生」の物件で意見を出来るようなことはないと思いますが、その風潮がいけませんよね。

裸の王様のような状況?!
建築で昔からつづく、「先生が言ってるんだからそのとおりに」という風潮。
いや、今回は燃えない腐らない木をつくることができた、ということでの採用だったようですが・・・

今でもみますよ、ききますよ。
先生が言うから、その通りにというお話。
そのうち取り上げますが、最近でも意味が分からない設計者からのJAS材指定をもらっている弊社が思うこと。

木材は、生物資源でありその使用方法も樹種による特性も、そして使い方も非常に繊細です。
それを間違えなければ、そして適切にメンテナンスをすれば非常に長寿命なマテリアルです。
今回は、そのすべてがかみ合わなかったということの様に思います。

いや、もしかして材木屋さんのプロパガンダ（嘘）を信じ込んで、法隆寺の様に1300年維持できると信じちゃったのかな？！

細く小さな材料が、いかに防腐処理をされていてもメンテナンスもなく、放置された状態でここまで来たことに驚きますが、本当に様々な立場でしっかりと考えて建築されなかった物件。
カッコイイけども、経年で見るも無残な状況になり、お客様としては「やはり木材はダメだ」という結論に至る。

材木屋はそれを減らしたい。

今回も、スギではなくクリなどの高耐朽な材を使えばという声もあるでしょうし、弊社としても在庫しているクリはおすすめするところではありますが、あんなに灰汁が出るものを大量に屋根や外壁に採用するのは、ためらわれるでしょうから一番の候補にはあげづらい。

それこそ、前回のお話の様に鉋仕上げにすれば、少しは耐久性が向上したのではないか、など・・・
材料や施工方法や寸法や、そもそものデザインについても様々な考え方ができるはず。

しかし、やはり耐朽性と耐久性を考慮するのであれえば、材質を考慮して「赤身は腐らない」とか「スギは水に強い」という、神話的かつ地産地消にこだわりすぎる使い方を、方向転換したいものです。
今あるものを批判するのは簡単ですから、現状に対して「こうしておけば」とは言えませんが、やはり木材を使うこととのその樹種選定に対しての考え方の軽薄さは、発注側も受注側も否めないところかと推察します。

自然素材はいつまでも、同じ姿ではいられません。

百歩譲って、朽ちれば交換し何度でもやり直しができる資産家の個人宅ならかまわないでしょう。
しかし、公共施設で税金が投入されている。
それでは、この状況は批判されることだろうと思います。

木材が悪いのではありません。
無知と意思疎通の無さが悪いのだと思います。

今後の中大規模木造や、シンボリックな建築に対する木材使用について一石を投じる機会になるかどうか・・・
いずれにせよ、考える機会であることは確かですね。

それにしても、ある意味24年もすれば木材は腐朽する可能性が高いため、当然ともいえますしメンテナンスするにせよ、防腐不燃処理されているであろう材料に塗料が浸透するのか？！という疑問もあり、また木材は朽ちて自然に還る素材であり、塗料がどうのという問題だけではないことは確かだと思うのです。
あるサイトでの隈さんのコメントでは、自然素材は弱いが、弱い自然素材を使いたい、旨の内容を見ました。そのためには少し強くしなければならないと・・・

その時点で、もう自然素材ではなく人工素材になってしまっているのでは？！とか、そこまでして人為的改変で使用しなくてもいいのでは？！と思ったりもします。

様々な見方がある事と思いますが、もっと誰もが建築とその素材について真摯に向き合う機会となることを望む、巷で話題の記事でした。

タグ：: 屋外使用の木材; 木まぐれコラム

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屋外用木製デッキ材 | 木まぐれコラム

2024年09月07日

加工の差は、見えない価格の差！

世の中にある、すべての商品に価格が設定されています。
購入の指標になる価格ですが、そこには様々な理由があることは日ごろあまり意識されていないように思います。

それは、無垢フローリングでも同じ。

原木の価格の差、製材賃、輸送費、乾燥方法の差、製品検品、養生、などなど。
様々な行程が、価格決定に影響があるわけですが、そのなかでもあまり関係ないと思われがちなのが、乾燥と加工かもしれません。

木材利用にとって、乾燥が非常に重要なのは当然なので、弊社ではそこにこだわった製品を紹介しているわけで、見えない違いは価格に反映されるということを、お伝えし続けてきました。

今回は、そのもう一方の加工です。

ヒノキの節有フローリングですが、殆ど節が見られない美しい材。
手入れされじっくりと育てられたのがよくわかります。

抜け節部分も丁寧に埋め木処理され、文句なし！
のはずなのですが、遠目では分からない部分が気になってしまいます。

表面仕上げの具合を確認しようとしたとき、それが目に付きました。
大きく拡大しないと分からないかもしれませんが、表面の状態に注目。

写真に写っている部分、毛羽立っているのがわかるでしょうか。
毛羽、というより木質部分が逆立っているような感じ。

いや、もったいない。
凄く良いヒノキなのに活かせていません。
加工で台無しです。

単にヒノキという樹種の指定であれば問題ありません。
しかし、無垢フローリングという用途に加工されているのですから、表面の仕上がり具合は非常に重要です。（もちろん、実加工もですが・・・）

お施主様は気が付かないかもしれない。
いや、これが無垢材、ヒノキであると思われるかもしれません。

でも、そうではないことが分かっている以上、指摘せずにはいられません。

いくら良質な木材も、とりあえず削っておけばいいのだろう、機械に通せば完成というのではなく、その仕上がりをチェックし不具合を確認するのが検品。

今回は、加工後のチェックがされていないことと、そもそもの加工の基準が甘い様な印象を受けました。
樹木から木材となったものを活かすのが、材木屋と大工さん。

その手前の木材とするところで、一歩踏み込めないと活かしきる事ができません。
全てを完璧には出来ません。
しかし、今回のケースもこの粗い面にならない方法もあったはず。
それを見過ごして出荷されるところに、加工場の限界を感じました。

この「加工と検品とグレーディングの差」がどれくらいの手間で価格に反映せねばならないことかを、本当は分かっていただきたいのですが、選択による優先順位は必ずしも高くないうえに、安いならばこれくらいはＯＫ、というお客様だけにしかお届けできなくなる。

いや、そもそも不特定のお客様へとどけるものは、それでは困る。

ということで、弊社の大和ヒノキ無垢フローリング（そういえばまだブログ紹介していません・・・）と高樹齢杉シリーズ（百年杉柾、古希杉、埋め節、純白）、そして石山赤松は全て刃物仕上げにより美しく仕上げられていますので、一般的な普及品とは異なります。

安いものは心配、と少しでも感じるところがあるならば、一度ショールームにお越しください。
その違いを、体験して頂ける準備をしてお待ちしております！

・弊社へのお問い合わせはこちらから
・その他の無垢フローリング・羽目板ラインナップはこちらの記事下段から
・無垢フローリング・羽目板の一覧はホームページからどうぞ

＊2019年以前のリンク表示をクリックしても過去リンク記事が見られない場合は、こちらの手順でお願いをいたします。
＊消費税10％への改定前、2019年9月以前の記事の価格は旧税込み価格となっています。お手数ですが、ご連絡の上正式なお見積の依頼をいただけますようにお願い致します。（ホームページ価格も改定が間に合っていない物もありますのであしからずご留意ください。）

木のビブリオが、それぞれの木が持つストーリーとともに、こだわりの木材をお届けするブログと、稀少木材・無垢フローリングのホームページです。

・樹種別無垢フローリングのブログ記事一覧　
http://muku-mokuzai.livedoor.biz/archives/1611916.html

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タグ：: 無垢フローリング; 無垢フローリング選び; ヒノキ

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無垢フローリング | 国産材　無垢フローリング

2024年09月04日

所詮下地、と見くびるなかれ～貴重な南洋材、ラワン合板の家～

全く宣伝もせず、課金（SEO対策？笑）することもなく続けてきた拙ブログ。

それでも、いつも必ず見てくれている人が居て、そしてたまに「ブログを拝見したんですけれど・・・」とご連絡を頂く。
有難い話です。

そして、そこそこな時間をかけている拙記事をネットサーフィンよろしく見て頂いて、きちんとご自身の目指すこととの整合性を取っていらっしゃる施主様に出逢うことは、非常にうれしいことです。
今回も、過去の記事をご覧になってのお問い合わせだったのですが、ご自宅リノベの仕様に弊社の商品をピックアップして下さっていました。

その商品は、ラワンベニヤ。

ん？！ラワンベニヤ？
そんなものどの住宅でも必ず使うわ！、と思われるでしょう。
そうです、必ず使う。

でも、大事に使っているところはないですよね。
意図的に使わない限り。
以前の記事で、縮み杢仕上げの家や奏でる家などのラワンベニヤ仕上げの記事をご覧いただいてのお問い合わせの施主様が、今回のお客様。

色々と情報収集の上、弊社の施工記事をご覧いただいてご依頼いただき、そして完成の写真を頂戴いたしましたので、ご紹介します。

余談ですが、写真は施主様のご友人が撮影されたそうです。
建築専門ではないとのことなのに、このアングルと色遣いはセンスとしか言いようがないですね。

担当とは大違いです・・・

気を取り直して、ラワンベニヤ仕上げのおうちです。
上の写真はリビングですが、テレビにバックボードがまさにそれです。

今回はフローリングは弊社からではないのですけれど、フローリングの貼り方もどこか「奏でる家」のクルミやヨーロピアンメープルのフローリングをお思わせるではありませんか？！

お洒落な仕上がりですよね？

そしてキッチン。

ビニールクロスや塗装などの下地で使う、ラワンベニヤ。
それを仕上にそのまま見せている、とは思えない仕上がりだと思いませんか？

納品した弊社でも感心するくらい、綺麗に納めてもらっています。
施工の工務店さんにも感謝です。

やはり、素材を活かすのは施工者さんですから、こうやってきれいに納めてもらえてうれしい限り。

板ごとに色違いがあるのは当然ですが、自然な色差と木目が完全に合わないところもいい感じ。
揃えなければ、と思うのも仕上げの場面では大切ですが、今回は敢えて下地用の材料を仕上げに使用しているチャレンジですからね。

でも、一般的な下地用のラワンベニヤ（というか一般の）とは、表面が違います。
特段のことはないのですが、それは厳密にいうと樹種の違い。

これを見て、ラワンじゃない！という声が聞こえてきそう。
分かります。

一般的なラワンのイメージじゃない、魅惑的な木目（笑）。
もちろん、全てがこれではなくもちろん選別品なのですが、それでも表情は一般的に想像されるものとは異なると思います。

それは、ラワンと言う樹種が無いから！です。

無い、というよりもラワンというのは多くの樹種の総称、という扱いなのでかなり広範囲な木々が様々なところで混ざっているのが現実。

SPF（スプルース・パイン・ファー）どころではありません（笑）。

だから、これも広義のラワンベニヤ。

以前は、まるでカバの木目みたいだね、と言われたこともありますが、稀に出るこのテリの表情はやはり下地に使うには惜しいもの。
ということで、弊社では選別品を扱っている為に、お問い合わせからお尋ねを頂いた次第。

某有名ゼネコンにお勤めの一級建築士さんのおうちに、無垢材の材木屋がラワンベニヤを納品する、という面白い現場でした。

いろんなところの仕上げに使われているベニヤ。

なかなかこんな仕上げばかりというわけにはいきませんが、これでブログ公開だけでも3棟目。
在庫のある時に近しいみなさん位にしかお届けできませんが、無垢材だけではない街の材木屋の本領発揮の施工事例！でした。

M様、よくぞ弊社を見つけて頂きました。
お声かけありがとうございました！

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タグ：: ラワンベニヤ仕上げ

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施工後のお宅にお邪魔しました | 本物の無垢木材

2024年09月01日

畏怖と恐怖と美しさと・・・～君尾山の大トチと小トチと、大カツラ行脚　大カツラ、小トチ編　②～

今回の君尾山巨樹シリーズ。

以前からやろうやろうと考えていたのです。
でも、巨樹ブログではない会社ページで、巨樹ばかり連投というのもいかがなものか？！とリミッターがかかっていたのですが、大トチが倒壊するようなことになってしまってから、懐かしむ記事にはしたくない、と思い今回の三部作になったのですが、巨樹ファンではない愛読者の皆さんには、今日で最後ですので、もう少しお付き合いを・・・

大カツラをはなれ、今度は標識もなく迷うこと間違いなし、と覚悟して歩き出したトレッキングコース。
事前調査での位置関係は、先の大カツラを下った方向に小トチ。
地図は2Dですが現地は3D。
そこでまた思い込みです。

位置関係が地図で下方なのだから、下るはず・・・
そう考えて、先の方へ進もうとするもどうもそうではない。

行けば行くほど、トレッキングコースで山中から離れてしまうように感じるのです。
これはダメだ、いったん戻ろう。
そう考え、上部の道路に戻ろうと方向転換して進んだところ、意表を突くところに標識が現れました。

出た！40m看板（汗）。

また、その距離でだまそうとしているな！（失礼）、なんて警戒していたのですが、今度は拍子抜け。
今まで歩いてきた広葉樹林とは違い、目の前は整然と植林された針葉樹人工林。

それも、伐採による手が入れられているので明るく見通しがききます。
紅葉の山々、というイメージは一変しますが、この中にトチの巨樹があるとすれば、その樹形からもすぐに見つかるはず！

そう考えていた矢先。

標識の先に目を移した瞬間に見つけちゃいました（笑）。

大トチと同じように、急斜面にたつ小トチ。

ヒノキも当然のように根曲がりの出る、きつい斜度。
その傾斜に体を預けるように傾き、その上部で空に枝を伸ばしています。

稜線は異なるとはいえ、ここがほんの先ほどまでと同じ山かと信じられない光景ですが、完全にこの小トチを優先されているのであろうと思われる植林。

巨樹好きとしては有難いのですが、何度も言うように人工的な雰囲気の中にある巨樹に、担当は違和感を感じてしまいました。
とはいえ、人がかかわるのが人工林ですから、それを否定するのではなくあくまでの先ほどまでとのギャップや勝手なイメージからくる連想ですので、悪い意図はありませんよ！

ヒノキの林を抜け近づこうにも、斜度のために足元を取られてしまいます。
スキーならば滑り降りるのに、と思ってしまう踏ん張りが必要な足元。

その斜度の為、いつも撮影する見上げるアングルは、広角カメラを使っているわけではないのに、大げさに感じるほどになってしまいます。
しかし、広角カメラで迫力を出す写真が性に合わない気質の為、広角ではないことを考慮してみていただきたいのがこちら。

奥の方の林の角度、分かるでしょうか。

写真の端が歪んでいないことからも、広角ではないとわかっていただけると思いますが、とにかく大トチでも踏ん張りましたが踏ん張る角度なのです。
そんな角度に倒れこむような小トチは、よく折れないものだと思うものの、それをいうなら大トチの方が、という話。

もちろん、それには張り巡らされた根やアテの形成など、樹木としての生育が大きく関係してくるのでしょうけども。

下部からの写真では、倒れこんでくるようにみえるのですが、上部に移動すると光景が変わります。

この写真を見れば、何かが連想されませんか？

担当が感じたのは、手のひらを空に向けているさま。
ちょうど5本の指に見えるように思います。

そして、手のひら部分の中心がくぼんでいることからも、一層それが斜面から突き出た手のように見えてくるのです。

今回の小トチは、大カツラとともに期待のサイズとは若干異なるものでした。
印象的ではあるものの、サイズ感はもう一息。

しかし、人が入りつつも様々な景色と巨樹を一度に見ることのできる山が近畿にあることは、非常に貴重です。
また、ネット記事には青葉の茂る写真が多いものの、紅葉の時期に山を楽しみながら歩くことができたのは、とても心地よい時間でした。

そして、大トチの検索では紹介されていない小トチや大カツラに逢えたことも、大トチだけにこだわらずに調べておいた結果。
そういうこともあり、必ず一緒に紹介したかった今回の三部作。

いかがでしたか？！
京都北部で時間が取れる日があればぜひ、君尾山トレッキングに出かけてみてくださいね。

君尾山の小トチ所在地

京都府綾部市五津合町不毛

緯度：35.3914520
経度：135.4392969

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タグ：: 巨樹; 巨木; 所在地; 京都府; トチ; 大トチ; 栃; 小トチ; 大カツラ; カツラ

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巨樹・古木をたずねる

2024年08月29日

畏怖と恐怖と美しさと・・・～君尾山の大トチと小トチと、大カツラ行脚　大カツラ、小トチ編　①～

幻の大トチはいかがでしたでしょうか。

日本第三位ともいわれるトチ。
その迫力は、やはり現地でなければ伝わりませんが、大トチとともにあるために注目されないかもしれないカツラを通り、さらに離れた場所にある大カツラと小トチを目指します。

これが大トチのそばにあるカツラですが、立派なものです。
普通に出逢うならば、このサイズでも大きいと感じるかもしれませんが、今から目指すのは大カツラ！
その名称と、この山中という立地にも期待が大きく膨らむのです。

各地の大カツラの、ひこばえが林立する林のようないでたちを連想しますが、今日はどんな姿に逢えるのか。
事前に入手していた案内地図（ネットにて公開されている）を手に、捜索開始！

車で上がってこられる道路の出発点まで戻り、位置関係を確認。
大トチへの入り口の少し下方に、標識がありましたので見落とさなければ問題なく到達できます、と言いたいところですが、勘違いをしそうなので順を追ってお話しましょう。

車道にも降り積もる落ち葉に気を取られていると、見過ごしてしまうような看板。
写真左に、表示が見えると思います。

ここが車道からの入り口。
山中であるために、どのようにしてその位置へたどり着けばよいのだろうかと考えていたところ、拍子抜けなほどにご親切な看板を見て安心してしまったのが、この後の間違いを生むのです・・・

トレッキングコースに指定されている山だけあり、踏み分け道のように進むべき道があり、安心して歩を進めていたところ、また親切な看板にであいます。

まだ道路から下り始めてすぐなのに、もうあと40mなの？
クマさんの恐怖が濃い秋。
その上、カツラの巨樹への到達にはいつも勇気を振り絞らねばいけない経験が多いことから、この40mというには、嬉しさ以外の感情はないのです。

もちろん、看板通りに分岐を右折し大カツラのもとへ一目散！

のつもりだったのですが、ここで落とし穴（汗）にはまらないように気をつけねばなりません。
視覚とそれによる思い込みは恐ろしいものです。

40mの思い込みが目的地を見誤る数字になるかもしれません。
それはすぐにわかります。
分岐を下り、目の前に姿を見せるカツラ！

大きなカツラです。
看板からすぐ、容易に到達できる距離は、40mを疑いません。

もう着いたのか。
早々に撮影をして、小トチを捜索せねば・・・
そう考えていたのですが、少し心配になり事前資料を確認すると、どうも大カツラとされるものとは樹形が異なる。

大カツラを紹介している写真も、上のようにカツラの樹幹に人がいるものなのですが、どうも違う。
アングルか？！と思っていたのですが納得できず、小トチ捜索とともにもう少し先へ進むこととしました。

するとどうでしょう。
やっぱりです。

谷のような地形に現れた、こちらが本物の大カツラ。

巨さは、先のものと写真での判別はしづらいかもしれませんが、納得のスケールです。
本当は、想像していたのはもっと「ひこばえ」が林立する近寄りがたい雰囲気のカツラだったのですが、それでも立派なことに変わりありません。

そのうえ、大トチに続きカツラの巨樹（サイズは小ぶりなものも含め）3本もの巨樹に逢えるのですから満足しないわけはありません。
それに前回冒頭でお伝えした通り、季節は最高でしたので心地よいことこの上なし。

そして、事前情報通りの位置へと進ませていただきました。

手前のカツラとの違いが分かってもらえるでしょうか。

驚くほどの違いが見えないかもしれませんが、現地では「こっちが本物！」と納得するはずです。
詳細なサイズの記載や、案内看板は見当たりませんでしたし、カツラの巨樹として全国区になるにはまだ時間が必要かもしれませんが、とにかくたどり着けたことに安堵したのです。

道路沿いであれば探すことは比較的容易ですが、目印のない山中ということでかなり時間を要してたどり着けないということも想定していたものの、看板のおかげで？！、いや看板を信じ切らずにたどり着くことができました。

志多備神社のシイにしてもそうですが、樹種名だけで容易に発見できたと勘違いする場面は多くあります。
同一樹種の、そこそこ立派なサイズのものが、目的の巨樹の手前に存在するとき。
今までに何度も経験があるために、今回も先に進んでたどり着きました。

さて、安心したのもつかの間。
もう一つの目的地、小トチの捜索が残っています。
次も「看板トラップがあるのではないか？！」、という疑心暗鬼の中、大カツラを離れる前の「カツラの中」からの黄葉は、クマさんをすっかり忘れる美しさ。

もう少しだけ、あと一回続く君尾山巨樹シリーズ。
次回は最終、小トチに向かいます！

君尾山の大カツラ所在地

京都府綾部市五津合町不毛

緯度：35.3923556
経度：135.4393482

道路に駐車して下山方向になります。

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巨樹・古木をたずねる

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