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巨木

そこにある記憶をつなぐ 〜佐狩の大椋〜

私が巨樹巨木を紹介する機会は、拙記事だけではなく材木屋さんの組合誌という場所も与えて頂いているのですが、双方において迷うというか、毎回決めかねるのがどんな樹木を紹介するか、ということ。
まだまだ訪問地には偏りがあり、巨樹サイトを運営されている方々に比しては貧弱なレパートリーではありますが、自身がその場で感じたことや空気感、そして二度と訪れることはないだろうと思いながら眺めるその景色は、他の方々の見たそれとは必ず異なるはずだと思い、自分なりの言葉でお伝えできるような訪問を心がけています。

それでも迷う、というのはやはり写真や言葉で伝えるためのインパクトを持った樹木を選びがちになるから。
単刀直入に、巨木感を感じやすいものばかりを取り上げたくなる、ということです。
巨樹巨木、というからには樹木としては驚くほどのスケールを持つものである、というイメージが浮かぶはず。
そのため、写真においてインパクトのあるものが思い浮かぶのです。

でも実際に巨樹巨木に訪れていると、スケール感だけではないストーリーを得る機会が多くあります。
それが地元の人や所有者さんとのお話し。


巨樹の所在地には、山中もあれば社寺仏閣もある。そして個人所有地内である場合も・・・
その場合はもちろん、所有者さんにお声かけをして見せて頂くわけですが、多くの場合非常にご丁寧に迎えてくださり、親切にお話をして下さるのです。
今回は、樹木のスケール感だけではない「お話」をお届けしたいと思います。

佐狩の大椋 2

緑豊かな山あいの集落。
道路から少し高台になったお宅の敷地内に、お目当てのムクノキがありました。
事前の情報で、大まかな位置(というか、近年はほぼドンピシャ)を把握していたものの、周囲の緑に紛れて確認できずご近所さんと思われる方にお声かけをして聞いてみると、所有者さんを呼んでいただけました。

出てきてくださったのは少し足腰が弱られたおばぁちゃん。
あぁ、朝早くからもうしわけないなぁ・・・、そう思っている私だったのですが、とても親切に迎えてくださいました。
そして、ムクノキの場所を尋ねたのですが「そこの畑の上ですよ、行ってください。私は足が悪くてもういけないんですよ。」とのこと。
そちらを見てみても、今一つピンとこない。

佐狩の大椋 1


周囲の草や竹が伸びているうえに、想像している巨木感と異なることで、見つけられない。
えぇっと・・・・・という雰囲気を出していると、歩行補助の車を押して一緒に行って下さる。
畑のぼこぼことした土の上を少しづつ一緒に進んでもらいながら、その場所への入り口へ。

後で聞いた話ですが、イノシシが非常に多いということで畑に入ってこない様に柵をされています。
「さぁ、柵を開けて行ってください」といってくださり、どこまで登ればいいんだろうと思いながらくぐっていきます。
おばぁちゃんは、もうこれ以上は登れません、ということでご案内はここまで。

佐狩の大椋 9


柵を開けて坂を上がると、小さなたてものの傍にその姿が見えてきます。
まったく距離はありませんでした。
近づいてなるほどのムクノキ。


佐狩の大椋 6


確かに大きいのですが、ムクノキに多い幹の根元がスカートの裾の様に広がっている樹形で、胸の高さ近辺では想像したほどの迫力を感じにくいこと。
そしてそれ以上に、大枝や古い枝が少なくどちらかというと非常に若い枝が勢いよくのびている為に、古木感も少ないというのが正直な印象。

そのために、いつもの巨樹を探す目には周囲の樹木とどうかして分かりづらかったのだと感じました。

それにしても、どうしてこんなに若い枝が旺盛に?!。
そう思っていた時でした。

上がってきた道から声が聞こえる・・・あ、おばぁちゃん!上がってきてくれてる(驚)。大丈夫・・・?!
上がられへんと言っておられたのに、少しづつ上がりながら「立派な木でしょう!?」と。
昔は年に一度、村で集まって収穫のお祭りをしていたそうです。確か、その時にムクノキの隣にある小屋を使っていたとおっしゃっておられました。

懐かしそうにお話をされるおばぁちゃん。

お話を聞いていると、さきほどの若い枝に関すると思われるお話を聞く事が出来ました。

ムクノキの幹には、地面に近い部分に大きな洞が見られます。
巨樹にある腐れかと思いながらも若干焦げたように黒くなっている。

佐狩の大椋 11


昔、この洞の部分に「テン」が住み着いたそうです。
そしてそのテンを追い払うために近所の男性が洞の部分で煙を焚いて燻したそうです。
ところが、その煙から出た火が幹に燃え移り、消す事が出来ないまま3日間燃え続けたそうです。
その間も、周囲に燃え広がらない様にムクノキの前で寝泊まりをして「守をした」とおっしゃっていました。

その時の名残で、幹が黒く焦げているのだそうです。

一体どれほどの火が出たのかは不明ですが、おそらくその時の影響で幹が相当弱ってしまったか、大きく伸ばしていた枝の大部分を損傷したのではないかと推察しました。
その影響で、樹木の防御反応として少しでも力を持った枝を早く形成しないといけないということか、もしくは怪我を治す新陳代謝の様な状況かで、新しい枝が多く出たのではないかと思うのです。


佐狩の大椋 4


こんなお話が聞けるのは、本当に現地で交流出来ることから生まれるもの。
単にその巨樹の写真を撮影するという行為だけでなく、その場所で起こったことやその時の状況や心情まで、当事者から話を聞く事が出来る。

巨樹にはたいてい案内板が掲示されていたりしますが、読んで知ることはできても生の声を聞くこととは大きな差があります。
そしてそのお話を聞きながら眺める木々には、その巨さ以上の魅力を感じます。

ムクノキの隣の小屋には、岡山市の天然記念物に指定されたときの指定書が飾られていました。
ここでみんな集まってね・・・・、と昔のお話をしてくれるおばぁちゃん。

いろんなお話を聞く事が出来ましたが、この大椋の隣にももう一本ムクノキがあり、集落の中には他にも曲がり大師のムクノキもあり、どうしてムクノキが多いのかを尋ねることを失念していました。

巨樹を尋ねる楽しみは、写真を撮る事や感動だけではありません。
こうしたお話を生で聞くこと。
そして巨樹を前にしてそのお話とともに当時の事を思うこと。
人の声だからこそ、人の心に伝えられること。
そんな、人から人へのつながりも少しづつ少なくなっていきます。
人口が減少し、集落から若者が都会へと出ていく。もちろん、悪いことではありません。
しかし、今おられる世代の方たちの次の世代はもうここにはおられないのです。
巨樹を訪ねても、目の前で言い伝えられることはなくなる。

おばぁちゃんが少し寂しそうに、合いに来てはくれるけれどもみんな出て行ってしまってね・・・とおっしゃっていたのが、非常に印象的でした。
木々の命は人間より数倍以上永いもの。
その存在で、伝承されるものもありますが、人と人とで伝わるものが少しづつ消えていく。
材木屋の伝統や無垢材の扱いのこと、そのほかの技術を持つ仕事などにも少し似たところがあるのかなぁ・・・そう思ってしまいます。

佐狩の大椋 7


おそらく、昔はもっと立派で周囲も整備されて、その姿を誇っていたのだろうと思われるムクノキ。
今はなかなか手を入れられない現状を物語るように、クモの巣が縦横に張り巡らされ、足元にも周囲にも他の木々が繁茂しています。
おばぁちゃんが維持していくには、非常に大変なことと邪推します。
その瞬間だけそこにいる私と、昔も今もこれからもムクノキと一緒にいるおばぁちゃん。
無責任には、ムクノキを大切にして、とは言いにくい状況ではありましたが往時のお話を聞く事が出来、大変有意義な訪問とする事が出来ました。
サイズだけでは語れない巨樹のお話。それが佐狩の大椋。

そして、御礼を述べて帰ろうとする私に「これしかないんよ・・・」と言いながら持ってきてくれたコーヒー。


佐狩の大椋 5


良く来てくれた、と迎えてくださり帰りの喉の渇きまで心配頂いた温かさに、日差しの暑さを忘れて感激。
来年も再来年もその次も、どうかお元気でムクノキへの訪問者を受け入れてね。
お話忘れないよ、おばぁちゃん。
ありがとう。


佐狩の大椋所在地
岡山県北区建部町鶴田(必ず、お声かけをしてください。)

コーヒーの後ろに見えるのが、敷地への進入路ですが他家の方も通行されるので、上がらずに下の道路に邪魔にならないよう駐車するようにしたいです。



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言い出したくて我慢できないこと・・・ライトアップの巨樹 〜菩提寺のイチョウ ライトアップ再訪!!〜

コロナウィルスの影響がやまない中、緊急事態宣言にて行動などの自粛が呼びかけられ続けています。
人と接することができないというのは、本当につらいものです。
普段の仕事や出張でも一人で行動することあ多い私ですから、休日の外出時間や外食などの折には楽しく会話し、人の話も聞きたいのですが、どこでもそのようにふるまえるのは、もう少し先になりそう。

でも、そんな時だからこそ緑映える自然の中で、適度な距離を保てる場所にいられると非常に心安らぎます。
私にとっての場所はやはり巨樹の所在地。
現在は移動自粛の為に訪れることは少ないものの、広い自然の中で巨樹に対峙するくらいは問題がないはずですから、こんな時ほど巨樹へ訪れたくなります。

そんな巨樹の魅力を感じるのは私だけではないことを実感したのはここ。


菩提寺のイチョウ 黄葉バージョン 12


朝焼けとはまた違う色合いに白んできた夕暮れ時。
大イチョウのライトアップの火が灯り始めました。
ここは過日に紹介した菩提寺のイチョウのある場所。
黄葉時期のわずかな期間にライトアップが行われることは、前回の訪問時にも知ってはいたものの、なかなかピンポイントでその時期に訪れることが叶わない為に、いつ行けるのかと思っていたところでした。

とそこへ、わずかなことで遠方へ外出しなければならない用事が出来、もうこの際にどうせ日帰りで夜になるのだから、仕事の後に寄ってみよう!と思い寄ってみると運よく開催中!!

仕事続きの毎日で紅葉シーズンを楽しめていなかっただけに、イチョウはもとより豊かな山の緑に赤や茶や黄色の色合いが眩しくて、ワクワクが止まりません。
しかも夜に向かうその薄暗さと、通路や木々を照らすライトの明かりが11月下旬の寒さを感じさせない温かさを演出してくれています。

菩提寺のイチョウ 黄葉バージョン 1


子供の時、新しいおもちゃや欲しかったものが手に入ると、とにかく自慢したくて仕方ありませんでした。
喜びが我慢できないというか、人に知ってもらいたいという承認欲求というのか?!
そんな感覚が、このイチョウのライトアップに訪れた際に感じた感覚です。

その理由は、夜の巨樹もいい!!からです。

既に太陽の姿は見えなくなっているものの、まだその残光に焼かれた余韻が空に残っている時刻。
ライトを浴びる大イチョウの姿が黄色に包まれていました。


菩提寺のイチョウ 黄葉バージョン 2


あぁ、もう少し早ければ黄色いシルクをまとったような姿に出逢えたのか・・・と思うように地面に散る黄葉の葉。
しかし、短いライトアップ期間を考えるとそうでもなく、また散った葉が下からも黄色味を演出している為に、黄色い絨毯が敷き詰められているようにも感じます。

いや、久しぶりに見てもこの「象の鼻」は健在ですね。

以前に訪問しているだけに、どのアングルで撮影しようか・・・と考え込まずともよく、じっくりとその姿を眺めて歩く事が出来ました。

少しづつ暗くなっていく周囲。
カメラのシャッターをきっていくものの、映る写真は意外と明るい。
少しはライトアップによる赤黄色い色味が出るころなんだけども・・・

菩提寺のイチョウ 黄葉バージョン 4


そう思いながら、移ろいゆく時間にカメラを構え続けていました。
じっくりとその美しさを鑑賞したい気持ちと、どうして目で見ている美しさがカメラで描写できないのか?!という気持ちとが交錯し、落ち着かない私。

それに引き換え、周囲におられる人たちはイチョウを眺めながらも、悠々とシャッターをきっている。
そうです、ライトアップが催されているので私だけではなく、驚くほどの人が来ているのです。
混んでいる、ということではなく前回は静かで広大な敷地の中で私一人。
それに対して今回は、駐車場にはひっきりなしに車が入っては出ていくし、点々と三脚を固定し撮影している人がいる。

菩提寺のイチョウ 黄葉バージョン 9


十数分で帰路につく人たちがいるのは、地元の住民の方。
中には、「やっぱり前の方がよかったなぁ・・・」という声もあり、毎年来られていることを想像させます。
風によって聞こえてくる中には、「昨日よりもちょっと進んだな!」とか言っておられる方もいて、数日のイベントにどれだけの人がおとずれているのか、また地元で愛されているのだということがよくわかりました。


菩提寺のイチョウ 黄葉バージョン 6


前の方がよかった、というのは台風で折損した部分の話の様で、以前はさらに迫力と貫禄があったということのようです。
2回目の訪問である(基本、数回訪れることはない)私にとっては今の姿でも十分に驚きなのですけどもね。

もともとがその巨大で特殊な様相を呈しているイチョウですが、その姿が美しさを伴い夜の帳に黄色い炎として浮かび上がるのはもうすぐでした。


菩提寺のイチョウ 黄葉バージョン 8


草原に菜の花が咲いているような地面に対して、まばゆい光を放つ黄葉。
日光による黄色ではなく、その黄葉の葉が内側から発光してまばゆい光を放っているような感覚。
あぁ、貴重な時間ここに居られてよかった。
そう思いながら、一瞬一瞬が過ぎていきます。

冬を迎えるその空気が、一層黄色みを強調しているようにも感じます。


菩提寺のイチョウ 黄葉バージョン 19

背景が完全に黒になり、橙の光に照らされて本来の葉緑素の緑色を感じるのか、黄色みが薄れると感じる一面もあるものの、周囲のスギ林から隔離され唯一の存在となったようにすら感じさせるイチョウ。
昼までは背景の明るさで見えづらい細かな凹凸が目立つようになります。

木枯らしが吹くたびに、黄色い吹雪が舞いライトアップの明かりによる幻想的な空間を、一層盛り上げてくれます。

そんな中、ふと空を見ると小さくお月さんが見える。
明るいライトでわかりづらかったものが、凝視するうちに輝いて見える。

月、そんなところに居たんだ。

菩提寺のイチョウ 黄葉バージョン 14

気が付いた時には、既に右側の枝葉に隠れる寸前。
慌ててイチョウを入れながらシャッターをきりました。
そうしたら、人工的なライトの明かりではなく、まるで月明かりに照らされている様で、そしてイチョウの存在だけが浮かび上がるような印象を受け、とっても美しかったのです。

これだけの迫力を持つ巨樹のライトアップに訪れたのはおそらく初めてでしたが、昼間とは全く異なる空気感と美しさに感激しました。
日中の明るさももちろんいいのですが、巨樹以外は見えずひたすら浮かび上がる巨樹に見とれる。

そんな時間を日没から3時間!堪能しました。
日中の撮影でも2時間いたんだから、そりゃそうだ!と自分では納得なんですが、周囲の人たちはすぐに入れ替わっていく。

子連れからカップル、または祖父母と孫など様々な人たちがおとずれます。
こんな幻想的な場所の近くに住めるっていいなぁ、豊かだなぁ・・・そんな気持ちになります。

そばで見るイチョウも素晴らしいのですが、通路にはカエデも燃えています。

菩提寺のイチョウ 黄葉バージョン 10

黄色、赤、緑が黒の中で彩色を競い合っている。
とても鮮やかな競演です。

本当に、この時期に訪れる事が出来て良かったと思いました。
設営し公開して下さっている方々に感謝の念が堪えません。
いつまでも、皆がこの美しい情景を眺める事が出来るよう願っています。

最後に、普段はその姿を詳しく伝えるために接写写真が多くなりがちな巨樹の写真とは反対に、ライトアップだからこそ美しい一枚で報告を終わりたいと思います。


菩提寺のイチョウライトアップ、ありがとうございます!!

菩提寺のイチョウ 黄葉バージョン 7



追伸:普通なら、夜にこの場所は恐怖以外の何物でもない山中。この賑やかさでは前回お伝えしたクマも姿を見せないことと思いますが、会場入口から少し外れた登山道入り口には、「これでもか!!、怖いぞ!!」とビビらせる気満々の注意喚起看板が立っています。

皆さんも前回の記事同様、油断することなく訪れることをお伝えしておきます。
この顔、見てくださいよ・・・・・・・

菩提寺のイチョウ 黄葉バージョン 11


菩提寺のイチョウ ライトアップ

黄葉の時期に不定期で開催されている模様。
岡山県勝田郡奈義町高円1532

広い駐車場有


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昨年一番の話題は、もちろんこれ! 〜平湯大ネズコ〜

既に昨年の話題となりましたが「今年の漢字」が12月に発表され、世相や流行を表すものとして毎年話題となります。
それに対して、私の中での「今年の名前」は?と聞かれると迷いなく「ねずこ」です。
いわずもがな、昨年も映画が超話題作となった「鬼滅の刃(きめつのやいば)」に登場する主要キャラクターの名前です。
そして「ねずこ」の名については、わざわざ今さらにストーリーを説明するのは野暮、というものですが巨樹巨木マニアの方の中にはご存じない方もいらっしゃることを考えて、敢えて!!


ねずこ

竹を噛んでいるいる少女が「ねずこ」。
この「鬼化した妹」を人間に戻すべく、主人公である兄と宿敵である鬼を倒しに行く物語。

今回取り上げる巨樹の樹種名が、昨年日本中を虜にした話題作に登場する彼女と名称と同じなのです。
その名は「ネズコ」。

一昨年の紅白○合戦にてすでにその作品の主題歌が取り上げられるほど、以前から話題作であるのですが、私もその作品の内容を知ったのはつい数か月前・・・
ですので、「今更」というのはもしかすると私自身への言葉なのかもしれませんが、一部では私と同じようにご存じない方もいらっしゃるかもしれませんから改めて・・・

話題作の少女と同じ名前の樹木「ネズコ」。
関西では、特に現在の材木屋さんの間では殆ど話題になることもなく知る人も少ないであろうと思われる樹種。

しかし、一部では有名な樹種であることも忘れてはなりません。
が、そのお話は少しずつ進めましょう。


平湯大ネズコ 1


ここは岐阜県の東北部。
地理的には、あの有名な上高地にもほど近い場所に位置する平湯地区。
観光地で有名な高山市から長野県方面に向かう道中にある、有名な温泉地ですがこの地の山に、みごとなネズコの巨樹が「いる」のです。

観光バスも行き交う山道。
そんな道すがらに位置するキャンプ場の奥地に、関西地方では決して認知度の高くないネズコの巨樹が存在することは、巨樹巡りをする身としても、また木が好きなものとしても、そして仕事の都合上岐阜県には頻繁に出入りする者としても以前から認識していました。
しかしながら、なかなか私の足がその場へ向かうことはありませんでした。
私がなかなか訪れることが出来ずにいた理由。それは熊!!
岐阜県、熊怖い。
山が美しく植生も豊かで生態系も素晴らしいものだと理解していますし、とっても好きな県ではあるのですが、その分、私が怖れる熊との遭遇リスクも上がる(汗)。

山道を車で走っていると、あちこちに目につく「熊、出没注意!」の黄色い看板。
基本的に可愛い絵になっていますが、現実はそんなに甘くない。
その恐怖から、出来る限り勇気を振り絞ることができる時でないと行動できないと思っていた場所。
それがこの平湯。(あくまでも、私のイメージ、、、ですよ。)


平湯大ネズコ 12


道路からはこのような登山道チックな道を登っていくことになることを事前情報としてキャッチしていたために、とても身構えていた私。
それでも、逢いたくてしかたなかったネズコへ向けて歩を進めたこの日。

キャンプ場がすぐそこ、というにもかかわらずこの写真の場所では「ホー!」とか「ハイっ!!」とか熊除けの奇声をあげながら歩いていることは、写真なので言わなければわからないこと。
結果的に熊には遭遇しないのですけれど、山中への道のりにおいての私にとってはいつものこと。
戻った際には喉がカラカラ。
ネズコだけに、熊ではなく鬼が出るかと思いきや日中だから大丈夫(汗)。


そうやってのぼってきた先に出逢うのは、期待値にそぐわぬ見事な姿。

平湯大ネズコ 3


雑木林の中をくぐってきて、いきなり現れる巨躯を誇る針葉樹。
これが平湯大ネズコ。

鮮やかな、と言いたくなるような美しい赤茶色の肌は、若々しさすら感じるような力漲るような感覚を与えます。
しかし、その伝承樹齢は1000年!!
その数値は、一本の幹がまっすぐに立ち上がると認識される針葉樹のイメージとは全く異なる、老齢の巨樹ならではの迫力のある佇まい。

ネズコという樹種についてをここで語るにはスペースが不足しますので割愛しますが、樹木の系統としては桧の仲間。
そのため、木の皮や葉っぱはそれらのイメージに似ています。


平湯大ネズコ 6


その特徴を理解していなければ、おそらくヒノキだと思ってしまいそうな、そんな雰囲気のネズコ。
木材好き、もしくは中部地方の木材関係者や里山にお住いの方以外は、樹種自体馴染みのない人も多いのではないかとおもいます。

その名の由来は、一般的には「材色が薄黒く鼠色に近いこと」だと言われていますが、樹齢や育った環境によっての差も大きいようで、薄黒というよりも深い赤茶がかった褐色からスギに薄墨を流したような印象の物までが見られます。
安直なネーミング、と思われるかもしれませんが色合いや木目から名付けられる情報はとても重要ですし、各地の方言その他でも、そういったものを読み取っていくと、もともとその地の人たちが感じていた感覚を追う事が出来る、という場面もありますから、私はこの名がとても好きです。
若干、「ネズコ=ねず子」みたいで女の子っぽいというか(笑)。
そう、冒頭のねずこの様に。


平湯大ネズコ 10


ネーミングからは女の子を想像させるところもあると思うネズコ。
しかしながら、この平湯大ネズコにはそのようなイメージはありません。
力強く太く突き出る大枝、天にあるものを全て絡み取ってしまうかの如くあらゆる方向へ向け自由に伸びる細枝、それらを支える武骨な主幹。

これが千年か。
人はもとより樹木においても、特殊な場合を除いて千年という時間を生き続けるものは多くありません。
自然の中で寿命を迎えるものもあれば、人の手によって伐採されていくものも多くあるでしょう。
しかし、この大ネズコは昭和初期の発見以来とても大切にされ、この地の宝として保護されてきた。
ここへ至る道のりが整備されていることも、周囲が木材でステージの様に組み上げられていることも全て、発見以来ずっと守られてきたからに他ならないと思います。

千年の巨樹に運動靴でいくらか歩けば逢えること。
その有難さと、目の前にある歴史を感じる姿に先人への敬意を感じずにはいられません。


平湯大ネズコ 9


大ネズコの周囲は柵で仕切られている為、当然寄り添うことはできません。
それに、写真では分かりにくいものの急斜面にあるために、下側に回り込むとかなり見上げるようなアングルになるので、まるで拝み見るような感覚。
周囲は若い雑木林の様な状態ですがもし、これが昭和初期の山であればどのような感じだったか。
道なきケモノ道を進んだ先に、雑木の中でこの姿を眺めたならば、自分も先人の様に宝として後世に伝えようと思っていたに違いない。そう思います。


平湯大ネズコ 8


根際に表れている幾つもの隆起物。
瘤、というのも一つかもしれませんが、これが大ネズコの生命力の一つではないかと思ってしまうのは私だけでしょうか。
まるで細胞分裂の瞬間を切り取ったような、見つめているまさに今、これらが爆発的に増殖し根を張っていく・・・
動き出すはずのないそのモノを、どれくらい見つめていたかは覚えていませんが、永遠に生き続ける命の源が可視化されている、そう思えてなりません。

厳しい環境がそうさせるのか、それとも数百年数千年という時間の流れこそが作り出す造形なのか、「素直」な印象が多い針葉樹であるにもかかわらず、この地から動くことのできない溜まった力を絞り出すように、鋭く突き上げる枝。


平湯大ネズコ 11


訪れたときは「巨大なクワガタの角」、そう感じた記憶があります。
しかし、この記事を書いている今であればやはりその姿は鬼。
鬼の角。
先の生命力を感じる瘤にしても、そしてこの角にしても永遠の命を持つ鬼の様。

私が訪れた日は、生憎の本降りの雨。
見あげるレンズ、構えるカメラに瞬時に雨粒が張り付き、焦点は合わず濡れるカメラが壊れるのではないかと思うようななかでの撮影で、折角の対面なのに・・・と思ったのですが、その雨がもたらした唯一の感心事は大ネズコを一層美しく彩ってくれたこと。

雨というヴェールをまとって、鮮やかに艶やかに、その赤茶けた巨躯を輝かせてくれたのです。


平湯大ネズコ 4


先に大ネズコを鬼に例えましたが、鬼があらわすものは決してマイナスのものごとだけではありません。
私の故郷、大阪府茨木市には「茨木童子」なる鬼の伝説が残っています。
茨木市から京都南西部方面において、様々な伝説の残る鬼ですが悪者として伝えられるものがある一方、鬼という姿(他者とは異なる)になりながらも内面や行為は善良な人間として描かれているものもあります。
受取り方や考え方、又は自分とは異なった考えや生き方を排除する人の心が生むもの。それが鬼なのかもしれない。
それを、伝説の中から教えられているのかもしれません。

鬼滅の刃の「ねずこ」も鬼になってしまっています。
しかし人を襲うことなく、人を守り兄を信じています。

言葉や風体、そして自分とは異なる考えなどを一方的に否定するだけではなく、認め合い間違いを許しあいながら生きていくこと。
大ネズコの鬼気迫るその姿が、人としての生き方をも説いているのかもしれない。


平湯大ネズコ 7


私もかなり流行の影響を受けている様です(笑)。
しっかりと「キメツ」にはまってしまっているようですが、コロナウィルスが蔓延し「分断化」された世界を目にすることとなった2020年でしたから、もしかするとこの平湯大ネズコを紹介するのも、分断ではなく協調協力し、様々なことを受け入れながら進んでいくことを考える2021年のはじまりだからなのかもしれません。



平湯大ネズコ所在地

岐阜県高山市奥飛騨温泉郷平湯

キャンプ場から登山道を20分ほど上がると逢える。
車はキャンプ場周辺、登山道脇に止められるが正式に駐車可能かは要確認。


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青、橙、黄、緑、、、 仕上げの黒で倒れるほどの美しさ 〜大石脇出のカツラ〜

早起きは三文の徳。

私は元来、朝方の人間ですので早起きは苦になりませんしそれ以上に、季節の香りを感じる早朝の空気や景色の色合いを感じられる事は、空気が澄んでいる中での音という情報の少ない朝だからこそと感じますから、早起きして行動することは、三文どころか三万円(少ないか・・・)以上の価値があります。

ということで、コロナウィルスの影響で今年はこのイベントシーズンに休日のイベント予定が無いことを利用して、早朝出発の巨樹巡りに行きました。
この時期に行く巨樹は決まっています。
カツライチョウ
この2種です。
今まではもっぱら真冬の巨樹巡りが定番だっただけに、紅葉(黄葉)目当てなのは言うまでもありません。
そして両者とも非常に見事な巨樹になることも理由の一つですが、特にカツラは1週間タイミングをずらすと美しい色合いを逃すことになるので、一か八か。

そんな思いで今回向かったのは滋賀県大津市。
京都・大阪方面から向かうと「湖国の玄関口」となる大津市です。私のイメージする大津市は言わずもがな「琵琶湖」。
もちろん、大津市以外にも接しているわけですが「三つ子の魂百まで」的に、私の子供のころのイメージがそのまま残っていることに由来するその考えとは反対で、今回訪れたカツラは琵琶湖とは反対方向。

琵琶湖の南端から南下すること、およそ40分。
幹線道路を少し逸れたところに、集落の裏山という表現がぴったりの場所があり、そこに一本のカツラが佇んでいます。


大石脇出のカツラ 1


滋賀県は木材生産を琵琶湖の水を守ることと結びつけていたり、地産地消の木材流通を模索し始めていますがそれでも、大津市に広葉樹のイメージはありません。
しかし、目的とするカツラへの道筋は、紅葉落ち葉のカーペットの如くに設えられていました。

ここまでに見事な黄葉を呈しているとは想像していなかっただけに、思わず「おぉ・・・!!」という声をあげてしまったのは、想像を超えていた大きな喜びから。

いつもの巨樹巡りであれば、早くその姿を拝みたい為にそそくさと近くに向かいたくなるのですが、この景色はずっと眺めていたくなるような、動きたくない美しさ。
いや、動きたくないというよりも、景色が動いてくれているような印象を受ける為に動かなくてもいいと言った方が正しいのかもしれません。


大石脇出のカツラ 2


この黄色というか橙というか、なんとも形容しがたい色彩の葉は陽の光を浴びて色目を変えるのです。
おとずれた時間は早朝。
昇りきった陽光が少しづつその光の強さを増し始める時間帯にかかっていたことで、数分ごとに葉の色合いを変えていくようで、そこに雲が差し掛かったりすると一段と複雑な色目を呈する為に、とにかく動く必要が無くずっと眺めていたい気分になるのです。

しかし、巨樹巡りですからしっかりとその幹の姿もカメラに収めねばなりません。
少しづつ、黄葉の色彩の変化を楽しみながらその樹体に近づいていきます。

大石脇出のカツラ 9


はっきりと対面できる位置に来ると、遠くから見ていた印象とは少し異なっていることに気が付きました。
一つは、もっとひこばえが立ち上がっているのだろうと思っていたこと。
遠目に見える姿では分かりにくかったこともありますが、カツラの巨樹であることで、条件反射的に主幹よりもひこばえでうっそうとしているような状態ではないかと思っていたのですが、意外にも主幹とおぼしき立派な幹が数本伸びているのです。


そしてもう一つは主幹もひこばえも直立するような状態だろう、と想像していたこと。
写真では伝わりにくいと思いますが、地面に近い高さの枝がひこばえから出ているのですが、地面と平行に出ている為に、とても広がりを感じさせるとともに遠目で見た時の勇壮さを増す一因になっていると見受けました。


大石脇出のカツラ 13


既に下部の水平枝の葉は殆ど落葉していましたが、緑葉の時期にはもっと雄大な景色が見られるのではないかと思う、カツラとしては少し珍しい形状です。

カツラの周囲の山は広葉樹の混じる人工林のようですが、人が整備したかのようにカツラの周囲には見事に他の樹木がありません。
もしかすると、本当に地域の方が整備されているんだろうか。
若しくは、その水平枝が周辺の樹木の生育を阻んでいるのか?!

そのおかげで、独立しているうえに広がりのある見事な姿を拝むことができるのですけどね!


それにここへたどり着くまでにも既に、私の鼻を通り肺の中までもカツラの甘いカラメルの様な満たされる幸せ。
黄葉時期のカツラの巨樹巡りの大きな楽しみの一つでもあるのですが、今回はその香りが一段と強く感じられます。
それも、もしかすると周囲が開けていて落ち葉が堆積しやすいからかもしれません。


大石脇出のカツラ 7


カツラの葉が甘く香ることは、樹木や山の好きな方はご存知ですが、一説にはこの香りは土にふれることで発散されやすくなる、というのです。
周囲に次々と落ちてくるその黄色みのある葉の堆積面積が広いために、一段と魅惑的な香りの空間となっているのかもしれない。
そう思ってしまいます。

この日は風が穏やかな日でしたがそれでも、役目を終えた葉っぱは本体である枝から容赦なく切り離され、ゆったりとした風の流れに乗るようにはらはらと、また突然カラカラという乾いた音をたてながら吹雪くように舞い降りてくる。


大石脇出のカツラ 6


動画でないことが悔やまれるほど次々と舞う枯葉。
甘い香りと乾いた音。
そして青い空に映える黄色と橙のコントラストが鮮やかに、五感の隙間を埋めていくようです。

もし、この環境に紅葉する樹木が多ければ受ける印象もまた異なったことと思いますが、空の青に周囲の樹木の緑が重なり、浮き出たようにカツラが映ることで非常に「ばえる」光景となっています。


とにかくその光景に見とれる時間が長すぎて、なかなかその樹幹にたどり着くことができません(汗)。

少しづつ距離を詰めながら撮影を続けてやっと、その巨体に近づいてきました。
すると目に映った第一印象は「犬のフグリ」。


大石脇出のカツラ 11


先に少し出てきましたが、カツラのイメージとしては根際から鬱蒼と茂るひこばえを連想します。
しかし、近づいてみて改めて異なることに気が付きます。

根際に見えるのはふっくらと膨らんだそれ。
犬ではなくタヌキのそれかも知れないと思うような瘤(?!)が垂れています。
垂れている、というのはイチョウの巨樹でよく用いる表現ですがまさかカツラで・・・

イチョウの場合は、その垂れている部分をさする(もしくは煎じる)と「とある御利益」を授かれるとされますが、このカツラの垂れている部分をさする(煎じる?!)とどのような御利益があるのか・・・
その辺の御想像はお任せ致します。

余りに見事な黄葉で、刻一刻とその色を変える姿に感心しすぎて悠々と90分を超える滞在となってしまったにもかかわらず、危うく大事なことを忘れるところでした。

はい、肝心の昌志スケール!


大石脇出のカツラ 15


ちょっと本当に考えないといけませんが、私の洋服のレパートリーは巨樹撮影には向かないようです。
今回も、うっそうと茂る山の黒に紛れてしまって今一つスケールの役割を果たせていません。

しかしながら、このカツラは単なる巨さだけではない存在感と特有の樹幹をもった、見事なものでした。

他に訪れたい巨樹があるものの、カツラは黄葉が早いうえに散るスピードも早く、そして他の樹木の黄葉に合わせると完全に時季外れになってしまうことから、この時期には優先して訪れているのですが、本当にドンピシャな訪問となったことに非常に満足。

いつにもまして、達成感の様なものが感じられる訪問となりました。


大石脇出のカツラ 14


さて、その満足感を胸に別れを告げようとしたその瞬間。
私の次の一歩を踏む場所で、「カサカサカサ・・・・・・・・」と連続する乾いた音・・・
私は動いていないのに、どうして足元で音が?!
そういえば、民家がすぐそこですが畑には獣害予防の柵のようなものがあったなぁ。
もしや熊?!
やめてぇ〜!!!


と思ってふと目をやるとそこには、久しぶりに見る黒く細長いものが・・・

同じ黒でも熊ではなく、それはヘビ。
あぁ、よかった・・・とはなりません。
わたし、熊もですけどヘビもダメ(涙)。
うひょ〜!!と言ったかどうかは覚えていませんが、カツラの目前の急な勾配の斜面に立っていた私は、驚いて飛び上がる手前のつま先立ちになり、そのまま前に倒れると同時に斜面に踏ん張れずにずり落ちる始末。

何とも情けない・・・



美しい色目ばかりに気を取られ、黒いそいつに気が付きませんでした。
色調に魅せられた最後の仕上げは黒の衝撃で、ある意味倒れるところでした。

まぁ、熊でなくてよかった。
とスケールは違うものの、黒にビビらせられたことで名残惜しいカツラへの未練が断たれ、車に戻った情けない姿は、動画も写真もありませんから、ここだけの秘密です・・・


大石脇出のカツラ 16


大石脇出のカツラ 所在地

滋賀県大津市大石富川3-5
離れた道路に広くはないですが駐車可能


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象の鼻から滴る氷柱 〜菩提寺のイチョウ〜

*菩提寺のイチョウのライトアップの記事を後日掲載しています。本記事の後にはこちらもぜひ!


日中は暑さが少し残るものの、例年に比べて劇的に季節の流れを感じる月初め。
9月半ばには早朝はかなり涼しくなり、もう先週などは出社時の気温が17℃。
ひんやりした空気が大好きな私にとっては、非常に心地よい季節です。

さぁ、涼しくなった今月も巨樹巨木の記事が始まりますよ!
私が毎月組合にて連載記事を担当しています「材木屋の巨樹木甦」も、月初に組合員さんのもとに届きますので、今頃は今月の巨樹「延命寺の夕照もみじ」の記事を見て頂いているはず。
美しい紅葉を鑑賞できるカエデの記事ですが、限られた紙面スペースのため、毎回写真は1枚になってしまうので、紅葉の様子や巨樹の魅力を伝えたいアングルをしっかりとお見せするには、どうしても難しい部分があります。
そう考えると、ブログには多くの写真を掲載できますし様々な情景をたっぷりの文章でお届けする事が出来ますので、有難いことです。

実は今回紹介する巨樹は、材木屋の巨樹木甦の次月掲載予定の巨樹です。
先取り!というか、ネタバレ?!ですが、組合員さんは殆どの方が同業である弊社のブログはご覧になってないでしょうし、拙記事をチェック頂いている皆さんは反対に組合誌掲載の巨樹木甦はご覧いただく機会がほぼありません。
ですので、ここで見せちゃいます(笑)


菩提寺のイチョウ 1


とってもきれいに整備された環境。
杉木立の中でぽっかりとスペースが空いた部分に鉄の支柱が見えます。
支柱の上に広がる枝ぶりを見ても分かるように、この奥の陰の部分にあるのが今回のお目当て。

これからの季節、三密を避けて訪れたいのが人の少ない黄葉スポット。
紅葉、と表記する場合が多いですが私は、色づきの違いによって意図的に使い分けるようにしていて、今回の様に黄色くなるものには黄葉の字を用いています。
そして、ここもできれば訪れたいと思う様な見事な黄葉を見せてくれると思われるのが、菩提寺のイチョウ。


菩提寺のイチョウ 3


本当は、このアングルを遠目で撮影したいのですが、このアングルを狙うには結構な勾配の傾斜であることと、美しく遊歩道が整備されている為むやみにその外へ出ることもできず(自重)、少し近づいてしまっていて全体が伝わりにくいのは仕方のないところ。

それでも巨樹名木を讃えるように、その周囲に立つ柵代わりの石柱が一層その存在感と稀少性を訴えかけてくると同時に、通常は円形であるはずの幹がいびつに感じるほどに張り出した凹凸。
「普通の樹木」という概念が一切通用しないかのようなその姿。

凹凸部分も含め随所にあらわれている特徴的な「乳」が見られるのが、菩提寺のイチョウです。

イチョウは巨樹ではなくとも多少の乳を見る事が出来ます。
各地のイチョウ巨樹のなかにも、特徴的な乳を持つものがありますが当地のイチョウは一層特徴的と言えます。
その乳の垂れ具合というと、もう地につきそうな勢い。


菩提寺のイチョウ 7


まるで地表面を意図的に目指しているというか、ゆっくりと巨大な指を伸ばして地面に触れようとする巨人の様にも思えてきます。
幹が円形に見えないほどに、樹幹からも多くの乳が出ているのももちろん驚きではあるのですが、さらに驚くのが、この地表面に触れそうな乳が垂れている枝の状態。


菩提寺のイチョウ 11


もう枝というよりも、水平に分岐した幹とでも言いたくなるような、ごつい枝が伸びています。
この枝の下部に、まるで氷柱のように多数の乳が垂れており、樹幹に近い部分がこの状態なのです。


菩提寺のイチョウ 16


先ほどは「巨人の指」と称しましたが、遠くから見た菩提寺のイチョウの姿はまるで象。
長い鼻を伸ばす巨象、いや、迫力からするとマンモスと言う方がいいのかもしれません。

現地にて菩提寺のイチョウに対峙した時には非常に立派で巨く感じるのですが、現地に掲示されている解説板によると幹回り数値は13m。
岡山県下では1,2を争うとされる幹回り。
たしかに、幹回り10mを超えると巨樹としてふさわしい体躯であるという印象を受けるのですが、樹高40mという数値以上に高く感じる「蓋いかぶさってくる」ように緑をたたえる無数の枝葉と、驚くほどに伸びているこの水平枝によって、数値以上に巨大な印象を受けるのです。


菩提寺のイチョウ 14


しかしこの圧倒されるような特異な枝ぶり、どこかで見た風景、、、、と思ったら以前に雪の山中を不安になってのぼった常瀧寺の大公孫樹の時。
あちらは人の気配のない山中であったことと、伏条更新をも遂げていることからマンモスというよりも未知の生物的な雰囲気を放っていましたが、こちらは見事に伸びた枝に頬杖を入れてもらって、まだ伸びていきそうな印象。

推定樹齢は900年ということですが、若木のころに周囲が遮蔽されていたのか、それとも陽光の獲得競争にさらされる状況に陥っていたのでしょうか。
唯一開けていた方向へ必死に腕を伸ばした・・・
そう思えてなりません。

菩提寺のイチョウ 13


さて、その乳と腕(鼻?!いや、枝!)ぶりの凄さを一通り堪能して、お決まりの並んでの記念撮影をと撮影場所を探し始めたのですが、美しく整備された遊歩道のおかげで撮影場所が限られるのです。
もちろん、撮影場所よりも巨樹の環境が大切なので当然なのですが、三脚にて一人でタイマー撮影することを考えるとなかなかイチョウの迫力が伝えられる場所がなく、迷う・・・

この遊歩道が整備されているのはおそらく、黄葉の季節にはイチョウがライトアップされるからだと推察します。
ライトに照らされたイチョウの迫力を想像すると、どんなに幻想的かつ魅惑的なのかと思いますが、イチョウに至るまでが丘の様になっている為に若干傾斜がきついので、夜に転倒されたりすることを考えれば、遊歩道はあってしかるべきなのかもしれません。

ということで、本当は全体像とともに象の鼻から滴る?!氷柱のような乳と一緒に収まりたいのですが断念し、このアングルで巨さ比較です。


菩提寺のイチョウ 18


こうやってみると、半ば飲み込まれてしまっているような形ですが、そこにいる私も幹の一部に取り込まれそうな雰囲気になっています。
長寿の乳に英気を分けてもらうように撫で、手を合わせて訪問終了!
とても見事なイチョウ巨樹だったと満足しながら現地を後に・・・・

とはいきません。
イチョウに至るまでの駐車場入り口の看板を見ると、コウヨウザンとサルナシがあるとされています。
夕刻日暮れ間近で次の予定があるものの、これを逃すまじ!!と思い、丁度出てこられた(おそらく住職さんのご家族)ご婦人に「解説板のサルナシはどれでしょう?」と尋ね、教えてもらった道路面に向かうとありました。


サルナシ 3


私が今日来るのを待っていてくれたのか!!と思いたくなるほどに、よく見るとほんの数個だけ枝に実が残っています。
どんな味だろう・・・と思いながら撮影をしていると先ほどのご婦人が、見つけられたか気にして降りてきてくれました。
そして、実が残っていました!と答える私に、不必要(!?)な情報をくれるのです。

「ほとんど無いでしょう?!
この前道を歩いとった人が、木の上が黒いなぁと思うてみてみたら小熊が上って実を食べとったとゆうとりましたわ!」

と。
なぬ?!熊?!
クマ?!ここにもか・・・・勘弁して〜。

市中から山道へ入るとはいえ、そう遠くない距離のここ。
さっきまでなんの警戒もなしに撮影していたのに、一気に背後が気になってくる・・・
そしていつの間にか、クマの話題を残してご婦人もいなくなって・・・(汗)

適度な都会具合と豊かな山々、そして海にも面しているという全てを兼ね備えると言っていいような、晴れの国岡山県。
そりゃ、果物も豊富ですからクマもいるのでしょうね。
今度から気をつけます。

皆さんも、巨象イチョウに逢うまえにはクマ対策もしっかりとした方がいいかもしれませんよ。(自戒も込めて・・・)


菩提寺のイチョウ 12


菩提寺のイチョウ 所在地

岡山県勝田郡奈義町高円1532
駐車場、かなり広いです。


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茂みかきわけ袂まで 〜沢田の大杉〜


自分でも意外なほどに、超々長期掲載となってしまった「樺(カバ)を知る!」シリーズ。
書き出すと止まらない樺への想い・・・
カバザクラとの誤解解消も含めて、ため込んできた想いが爆発したシリーズとなりました。
その影響?!で、ずっと掲載できていなかった巨樹の記事を久しぶりに更新したいと思います!

私が巨樹をめぐる時には、巨樹の書籍やネット記事を参考に予習をしていくのですが、情報があるからこそ助かるメリットと、知っているつもりで油断してしまうデメリットを感じることがあります。
今回でいうと、油断。

今から紹介する場所もそうですが、同日に廻った場所でことごとく油断によるちょっとした後悔をしてしまいます。
例えば、社寺の境内にある巨樹と認識して向かうと「裏山」に位置している為、10分ほどの間を暗い林間を進まなければならず、挙句到着すると「熊!出没注意!!」と、ご丁寧に熊が襲い掛かろうとする実写写真を付けた看板があってチビリそうになり、護身用ストックの不携帯をくやむこと。
又は、道路からすぐの位置にあると確認し向かった現地では、今年の長雨の影響もあってか雑草が生い茂り、足を踏み入れ難い状態になっているものの、巨樹はもうその目の前。登山靴でも履いていればまだ向かうつもりになるものの、普通の靴では当日降っていた雨の影響でズブズブになってしまう上、あちこちに「マムシ注意!!」の看板も・・・
もう、えぇ加減にしてくれよ・・・とげんなりするのですが、自然の生き物の中に入るのは私の方なので、上記の状況を確認するべきなのです。

さて、そんな油断とともに訪れたのは島根県吉賀町指定の天然記念物である、「沢田の大杉」。


沢田の大杉 1


大杉手前の道路にある解説板。
樹齢800年とありますが、胸高周囲が7.2m。
巨樹を目の当たりにして大きさに圧倒されるものの多くは、経験上では胸高周囲10m以上のもの。

それからすれば、そこそこだな・・・・
そんな考えが先入観となり、この大杉を目にした時の驚きをさらに大きくしたのかもしれません。

大杉までは道路から小道を少し歩き、視界が開けた先にあるのは墓地。
そして、その背後に驚く樹形を呈しているのが、沢田の大杉でした。


沢田の大杉 3


この日は、しとしとと降る雨で空はどんより、そしてその影響で大杉の背後の林は吸い込まれるように暗い状態。
その条件が、異形の杉の存在感を非常に高めていたのは言うまでもありません。
対面して先ず、先ほどの胸高周囲のデータのみで判断できないことを実感。
太さだけではない存在感。
それが巨樹を印象付ける大きな要因であることはわかっているつもりですが、数字に左右されるのは人の常・・・

離れた場所からその見事な樹形を眺めるのももちろん良いのですが、やはり近くでその姿をつぶさに観察したいと思うのも人の常・・・

しかしながら上の写真の様に、大杉の周囲には膝上に達しようかという高さの茂みがあり、近づくための道がない。
いや、もしかすると違う場所から入られるのかもしれないものの、ムシ暑さと雨で探す気力がない・・・

悶々としながらカメラのズーム機能を使って、撮影をする。


沢田の大杉 4


写せば写すほどに近くに行きたい。
けれども目の前にはグリーンの壁・・・

雑草の中がどうなっているか分からないこと、そしてなによりもここに来る前に訪れていた場所に「草むら、マムシいるぞ!」の看板があり、自然の生き物大嫌い(出会いたくない)な私にとっては、目の前の雑草がマムシの巣窟に見えて仕方ないことが、足踏みをさせる理由でもあるのです。

とはいえ、もう少し近づきたい・・・えぇーい、かき分けて行ってやる!!
そう決心し、手持ちの傘(こんな時に限って、よそ行きの傘・・・)をたたんで除草棒代わりにし、足で踏み固めながら草の中を進んでいくことにしました。
そしてやっとたどり着くことが出来たその姿は、遠くから眺めるのとはまた異なる印象的な姿でした。


沢田の大杉 7


年月を経た暴れ杉というのか、神秘的な異形というのか。
幹の上部で横方向へ張り出した後に天に枝先を向ける姿は以前紹介した、岩倉の乳房杉と重なります。
そしてその乳房杉も、離島ではあるものの島根県。
乳房杉には近づくことが出来ませんが、沢田の大杉はその傍まで来ることが出来ました。

見あげる枝は、自然というよりも野性的と形容したくなるような様相。
しかしながら、よく見ると枝が剪定された跡があります。
折れたのではなく、人為的に切られています。
先端が枯れたのか、理由はわかりませんが管理の手が入れられているようです。

ということは、私が訪問した時がタイミングが悪かっただけで、普段はきちんと整備されているのかもしれません。
草むらも刈りこんであるのかもしれません。
そう信じよう。

沢田の大杉 10


大杉の周囲は完全に開けていて、空を見ても空間の占有率は100%と言っていいくらい。
周囲の竹に取り囲まれているのか、もしくは竹が入り込めないのか、見事なほどに独立した占有空間なのです。
そんな状況なので、天に伸びる枝の外側に向かって小枝が伸びて、そしてその小枝からまた枝が伸びる形で広がっていることが、異形を増幅させているとも感じます。

大杉に手が入れられているのは、墓地から見た大杉の奥に回れば分かります。


沢田の大杉 11


巨木を振興している状態でわかりやすいのは注連縄ですが、ここでは祭祀の跡でしょうか、写真の様な御幣様の飾り物がありました。
この手前には、竹と縄で造られた手製の簡易鳥居のようなものも・・・
先の様に、大杉の周囲は開けていてちょっとした「広場」の様になっているのですが、もしかすると祭礼というか地域の祀りごとがこの場所で行われているのかもしれません。

そういった事情は地域の方に聞くことが一番なのですが、この日は雨の中草むらをかき分けたことと、蒸し暑い上にマムシの恐怖。
そして写真からは決して伝えることのできないもう一つの原因によって、撮影後は一刻も早く車に戻りたい心境でしたので、情報収集する気にはなれませんでした。


沢田の大杉 14


左に立つ私と比べると、大杉のサイズが分かってもらいやすいですね。
幹の太さもさることながら、上部の分岐した大枝の広がりと太さの迫力は圧巻。
扁平であるとはいえ、大枝の一本ずつが通常の幹一本に相当するような太さなので、重力に反して頭上にあることが恐ろしくもなるほどです。


沢田の大杉 8


さて、サイズ感はこの比較で伝わると思われるものの、伝えることのできない早く戻りたい原因。
それは、この状況から想像に難くない「蚊と虻の襲来」です。

どこか余裕で大杉に持たれているように見せていますが、カメラをタイマーセットする時には顔周辺から足元まで、ブンブン・プ〜ンプ〜ンと寄ってくるのです。
大杉の隣に来ても、動くことをやめるといつの間にか吸血されている始末で、一秒たりとも動きを止めたくない状態。
しかし、動いていると雨に濡れているのか汗なのかわからないくらいにびっしょりと濡れてくる自分の汗でべたつく為、写真のアングルや明るさに集中できない。
普段であれば、刻々と変化する状況によって表情の変わる巨樹を前にすると、帰りたくなくなるものですがこの時ばかりは一刻も早く撮影を終えて戻りたい気分。

例えるなら、ラピュタの中心部に到達したムスカが飛行石を手にラピュタを手中にしようとしたとき、彼の周囲に虫が群がってきていたような状態・・・
もう、一心不乱に周囲を払いのけているような、そんな感じです(汗)。

それでも、戻り始めると別れが惜しいもの。


沢田の大杉 13


草むらにカメラをセットし、近づきながら上る時に見上げるようなアングルで一緒にカメラに収まりました。
想像以上に見事な姿と、撮影できた写真のアングルにちょっと自己満足を感じた沢田の大杉。

実際の私は、マムシへの警戒と虫たちの襲来に神経をすり減らしヘトヘト、服は汗でビショビショで満足と同等以上の疲れを感じていました。
その上、時刻は午後5時半。
今からの帰宅には5時間以上の高速道路走行が待っているのです。
事前情報との違いは油断でしたが、帰りの移動時間は巨樹を堪能する為の代償。

双方に疲れを感じながら、それでも心動かされる巨樹との邂逅を止めることはできない。
改めてそう思う、雨の夕暮れとなりました。


沢田の大杉 5


沢田の大杉所在地

島根県鹿足郡吉賀町沢田 指月神社東側
(もしかしたら、神社側から到達できるのかもしれないが検証していません。)

道路広い場所に駐車可能


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今願うなら、早期収束を・・・ 〜那智大社参道大門坂の巨樹と、那智の樟 胎内くぐり ◆

美しい参道をくぐりぬける那智大社への道。

夫婦杉5

この道を一人占め出来る瞬間は、この先にはきっと神仏がおられるのであろうと確信する気持ちになるほど、見事なものです。
私もまだまだ世間知らずですので、全国にある有名な参詣道や杉並木、古道などを見ずして語るべからずなのですが、これだけの木々に囲まれていると、そんな気になってしまうのです。


さぁ、その美しい参道である大門坂をぬけ、いよいよ境内へ。
大門坂から境内までも見ごたえはあるのですが、そこは巨樹のために申し訳なくも割愛・・・
そして到着、お目当ての那智の樟です!
神格化された別名は、樟霊社。

那智の樟1


むむ?!
迫力が今一つ・・・というか有難さが少し薄いような・・・

そうなんですね。
私が訪れた時はちょうど工事中で、クスのすぐそばには足場と工事用の無機質なシートが・・・
これだけは仕方ありません。

とりあえずは一通り写真をと思いながらカメラを手にするのですが、撮影当時はなかなかな人出で足場があるために、どうしてもみなさんクスの前で立ち止まるために、なかなかいい写真が撮れない。
仕方なく先に近景を撮ることに。

正面に人が多いなら、ぐるっと回ってすこしづつ・・・と思っていると・・・

那智の樟3


おぉ、ぽっかりと幹に穴が・・・
まぁ、巨樹にはよくあること。
前回の大門坂の樟にもあったように、内部が空洞になっているんだろうな。
そう思いますね。
しかし、幹回り8m少々という樟の巨樹としては驚くほどではないその姿以外に、那智の樟が特別に神聖視されているのは、実はこのぽっかりとあいた空洞の中に入られる・・・いや、その空洞の内部をくぐり抜けられる!からです。

わかるでしょうか。
くぐり抜け、です。入るというのとは違う、くぐり抜ける。入口とは異なる出口があるということ。

この那智の樟の大きな特徴は、この空洞を願い事を記載した護摩木を携えてくぐり抜け、出口にて初穂料とともにそれを納める「胎内くぐり」(体内ではない・・・)なのです。

くぐり抜け、というその事実を自身で確かめる以前に外国人の観光客の皆さんと、初老の観光客の皆さんが出口らしきところから少しずつ出てくる・・・

その様子を見ていると、少しありがたみが減少する(失礼・・・)様に感じたので、私も早速に胎内へ入らせていただくことにしました!!

那智の樟18


入口となる部分には石の鳥居があります。
有難く護摩木を携えて早速内部へ・・・・・

那智の樟4


鳥居をくぐった後、すぐに目に入るのは急に下る階段。
そうか、内部は根の方か・・・

イメージとしては、地上面がそのまま続いていて入口と水平に入っていくのだと思ってしまいますが、そうではないんです。
朽ちていったのだろう木質部分が退色し、まるで岩場の様。
崖を洞窟の中へ降りていくような感覚です。


那智の樟16

この感覚では、内部は相当狭いんだろうなぁ・・・そんな想像をしていました。
特別深いわけではないのですが、明るい場所から入るからなのか視覚の順応がすぐには行われず、一瞬の間どれほどの広さがあるのかわからない状態に・・・

普段の生活では、視覚がさえぎられるような闇というのを経験することは滅多にありませんが、闇のなかで視覚という感覚が立たれると、意外と人間の感覚は研ぎ澄まされるものだと感じます。
それは以前に、かの有名な善光寺での経験から。
奇しくもその善光寺での経験も「胎内巡り」!
本堂の下、真っ暗闇の中を進んでいく経験をしたわけですが、当初は本当に光の無い世界というものにおびえる自分がいるのですが、そのうちに少しづつ意識が先鋭化してくるというか、そんな感覚になったことをふと、思い出しました。

那智の樟7

もちろん、そこまで大げさな闇ではないのですが、岩場の中に取り込まれてしまったような世界の中で頭上から光が差し込む。
少し暗い部分に慣れた目に、一瞬にして光が。

それも、胎内深くに潜り込んでいる為に頭上から差し込む天上からの有難い道標の様に感じるのです。

那智の樟6

もちろんそれは、地上へ出る出口の明かりなのですが、、、、って、階段がまた(勾配)きつっ!!

しかし、この位置から外の光と空を見上げると、そこに見える緑の枝が空に浮かんでいる様で、そしてまさしく那智の樟の胎内に抱かれて、人としてではなく別のなにかとして外の世界を眺めているような錯覚に陥りそうです。

内部へ進む前は、どこか吸い込まれるような印象でしたが、内部から眺めていると差し込む光に導き出されるような、そんな感覚になります。
不思議なものです。

誘われているような心もちで階段を上がると眼下には、樟の視線で世界が広がるようです。

那智の樟14

あぁ、そうか。

こうやっておよそ800年、見続けるうちに神格化されていったんだなぁ。
この景色が変わりゆくのはどのようなスピードだったんだろうか・・・そんなことを思います。

そして、出口となる階段をおりて護摩木を納めました。
どんな願いをしたかって?!
もちろんそれは、世界の巨樹に逢えますように!、ではありませんよ。

もう少し、いやもっと現実的でした。
現在の様にウィルスが蔓延するとは思っていない頃の訪問ですが、もし今願うとするならばもちろん、一刻も早いウィルス流行の収束です。

胎内に携えたその願いや祈りは、差し込む光と一緒に外に導かれ神仏のもとに届けられる。
そう信じたい気持ちです。

那智の樟15

やっと人通りが落ち着き、那智の樟とのツーショット・・・ではなく、私のカメラのセルフタイマーがピコピコいっててもお兄さんが・・・
まあ、それも一つですけども、世の皆さんはやはり様々なお願いを携えてこられるようです。

もちろん、胎内くぐりではなく本堂を熱心に拝んでおられる方が多いのですが、みなさんどのような願いをもっておられるのか。

樟を眺め終え、奥の社殿へ向かうと目前には滝が・・・

皆さん、熱心にカメラを向けておられる。
記念撮影のカメラマンさんもいらっしゃる。
で、私もパシャッと・・・

皆さんは社殿とともに、この景色が楽しみなようですが私はすでに一仕事も二仕事も終えた後(笑)。

余裕で眺めていると、数組の方にシャッターを押してもらうように頼まれる。
そういえば昔から、観光地ではシャッター押す係よろしく、見知らぬ人にしょっちゅう頼まれていたなぁ・・・と、仕事でしか出歩くことのなくなった今を思いながら、「はい、もう一枚いきますね〜!!」とか言ってシャッターを押すのでした。


この時のお願い、今叶っているのであろうか・・・
こうやってなんとか仕事が出来ているということは聞いていただいたということか。
もう一度お礼に「くぐりたい」、那智の樟です。

那智の滝


那智の樟 樟霊社胎内くぐり所在地

和歌山県東牟婁郡那智勝浦町大字那智山 那智大社拝殿前
 


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今願うなら、早期収束を・・・ 〜那智大社参道大門坂の巨樹と、那智の樟 胎内くぐり  

最初にお伝えしておきます。
今月の巨樹の記事は、2回?3回?!シリーズになります。
というのは、それくらい見どころが多い上に多くの巨樹が立ち並ぶ並木道を通るから。

私の長々とした文章の変わりに、先に解説板をご覧頂いておきましょう。

夫婦杉6

石畳のことや、大門坂と呼ばれる旧参道の由来などの詳細が書かれています。


この参道の先に目指すのは、日本一の落差を誇る那智の滝を望む那智大社。

その名瀑布を有する那智山にも、当然のごとく巨樹は存在します。
多くの参詣者が訪れる那智大社。現在では大社のすぐそばまでバスで上がることもできるものの、その参道となる大門坂は巨樹好きではなくとも、石畳のグレーと木々の緑が非常にすがすがしく、大社までのみそぎ登りの様な雰囲気。
大門坂手前に駐車場が整備されているので、是非歩いて上ることをお勧めします。

そして登り始めていきなり現れる巨樹。
それが通称、大門坂の夫婦杉。

夫婦杉4


各地に夫婦杉というものは多く存在しますが、こんなに均整がとれたというか仲良し夫婦というか、良い環境にある夫婦も珍しいのではないかと思います。(私の背後が入り口側)
太さも立派、葉の青さもとっても気持ちが良いものです。
樹齢はおよそ800年。
威厳があるはずです。
これから神聖な場所に立ち入る、という心持ちにさせてくれる存在の様な気がします。


夫婦杉2

大門坂、といいますがまさしくこの夫婦杉が門であるような雰囲気。
登り口から見ると、下り枝などがあり大きさを少し覆い隠してしまうようですが、反対からみるとはっきりとその大きさを視認することが出来ます。
通常であれば、これで立派な一か所の巨樹訪問となることろですが、ここでは盛大なプロローグに過ぎないのです!!!
この立派な大杉の門をくぐると、少しづつ登り始めることになるのですが、とにかく参道が美しい。
そう思って登り始めると、遊園地のアトラクションの様にすぐに次の巨樹が目前に迫ります。

これもまた見事な存在感を示す、クスノキ。
通称、大門坂のクスノキ。


大門坂の樟2


こちらも、推定樹齢800年ということですが、こちらの方がより一層古老感があるというか、まさしく巨樹古木というお手本のような姿の様に見受けられます。
もちろんそれは先入観なんですが、人間が決して体験することのない数百年間という時間の流れを、視覚的に体感させてくれるかのような、ある種くたびれた感がたまりません。

大門坂の樟3


名木としてや単純な巨樹としてみると、過日の加茂のクスなどには到底かなわないのですが、大門坂参道に並ぶ荘厳な杉並木の中において、広葉樹の存在感は大きく、常緑広葉樹の緑が杉の緑と交わっている様子が非常に印象的に映りました。
それでも、巨さでいうとこんな感じ。

大門坂の樟8


地際で幹内部まで欠損している部分が、どこか蒲生の大クスを思わせますし、もしかするとこの先は巨樹の世界に通ずるトンネルになっているのでは?!と思わせるような「入口感」も、たまらなく興味をそそられてしまいます。
世界の巨樹のスケールに比べると、決して大きな部類ではないと思うものの、参道を登って参詣される方には外国の方も多くいらっしゃって、我々と同じように巨樹の迫力を愛でるような視線を感じました。

大門坂の樟5


本来ならば、一つ一つを丁寧にみていきたいのはやまやまで、記事文章も羅列したい気持ちがあるのですが、一向に進めないこと必至ですので、写真紹介が多くなることをご了承ください。
といっても、私がこの参道を登り切る迄にかけた時間はおよそ2時間強。
これでも結構急いで撮影をし、止まりたくなる気持ちを抑えて(もちろん、この日も他の予定掛け持ち・・・)の道中ですから、2回シリーズで納められるのかどうか・・・・


巨樹や木、そして山や森が好きな人にとってのこの大門坂は、のぼることもそうですがその空間にいること自体がとても特別で、道を急ぐことが非常にもったいなく、横にそれたり振り向いたり、時には日差しが変わった部分に戻ってみたり、もちろん立ち止まることもあり。
その一瞬一瞬がとても特別に感じるのです。

参道の杉並木3


それが大門坂であり、参道の杉並木全体として県の指定を受けている「大門坂のスギ」となるのです。
鬱蒼としているように見えて、当日も晴れてはいるものの時折パラッと雨が落ちるような曇天入り混じる天気でしたが、全く暗さは感じられず、どちらかというと少し湿気た荘厳な感じが心地よい位でした。

ところどころで、朽ちた枝が伐られているものがあったりするんです。
切り口をみても、内部が空洞になっていて普通は興味を持たないようなもんですが、そんな枝(といってもそこそこ太い)ですら感激するほど年輪が細かいんですよね・・・!

参道の杉並木4


こんなのを見ていると、本当に前に進めない・・・
でも、急いでいくのは勿体ないので、次の予定の時間を推し量りながら少しづつ進み、なんとか次回で本題の那智大社での巨樹対面となるのですが、これがまた珍しい「胎内くぐり」なるものがあるのです。

その様子は次回にお伝えしますね。


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言い伝えか現実か?! 〜滑り落ちた巨樹 臥雲の三本杉〜

先月紹介した、日下野のスギは覚えていらっしゃるでしょうか。
天使の咆哮の如く、集落のある谷に向かって構える姿に圧倒されてしまうのです。

その記事の最後に、「数百メートルの距離にある」と書いたもう一つの巨樹。
それを今回紹介したいと思います。
連続して近くにある巨樹を紹介する意味は一つしかなくて、近くにあるのであれば一度で訪れたいから、です。
私も実はおかげさまで暇な人間ではないので、巨樹巡りをするといっても毎回貴重な時間(早朝5時に現地着とか・・・)を使って廻っている為、近くにあるのであればできるだけ「一筆書き」で廻りたいのです。

どうしても、拙記事は巨樹のページではないために多くの巨樹を掲載できず、近くに存在するものでも紹介していないものが数多くあります。
しかし今回は、前回の最後で対比させたように「人里と神域」の双方のスギという形で紹介したく、「臥雲の三本杉」をとりあげることにしたのです。

長野市街地から西、私の毎年恋焦がれてやまない白馬八方尾根方面へのみちすがらの山あいの、臥雲院という古刹が舞台。


臥雲の三本杉 11

巨木巡りに慣れている私にとっては良いドライブコースである山道も、街中ばかりを走る一般の方にとっては少々距離を感じてしまうかもしれませんが、道も細いわけでもなく時間さえあればゆっくりと到達できる長野市中条日下野地区。
目的地近くになると、斜面が開けた場所に写真の石碑とともに現れるのが、臥雲の三本杉です。

上の写真で左側に写っているものがまさしくそれなのですが、このアングルからはどのような性質の巨樹なのかを想像することはできないと思います。

杉の巨樹は様々なパターンで私を驚かしてくれますが、今回はその歴史に驚く巨樹なのであります。

あってほしくはないものではありますが、いつ起きるかわからない自然災害。
この山あいの地にも、およそ170年前に大地震があったそうです。
その時の史実を物語る存在として残っているのが、この三本杉だというのです。

臥雲の三本杉 8


近づいてみてもものすごく扁平で、ゴツゴツとした木肌と歴史を感じさせる痛みを受けた幹の状態などが、風格を思わせるものの、太さや存在感という観点でいうと、驚くほどのスケールではありません。

しかし、史実にある災害を伝える存在としての驚きは、単にそのものの大きさだけでは知ることができないのです。だからこそ、大切に、そして貴重な存在として人が語り継ぐことのできない永い歴史を称する存在として、そこにあるのだと思います。

この三本杉の驚くべき事実というのは案内板によると、180m上方から「滑り落ちてきた」ということです!


臥雲の三本杉 6


1847年の大地震の際、現在の地に滑り落ちてきたのがこの三本杉だというのです。
そして滑り落ちてきたために、斜面に不自然に傾いて立っている。
幹が扁平なのもその影響があるのかもしれませんね。

臥雲の三本杉 7


正面?!からみると、幹が襞のように割裂しているような印象を受けます。
そして、傷ついた幹を修復する樹木の特性として「巻き込み」をすることで、傷の部分を覆い隠すことがありますが、滑落と共に避けてしまった部分を包み込むべくしてこのような形状になったのではないだろうかと、推察しますが真相はわかりません。

むしろ、180mも滑落してこの状態で立っているものだと感心してしまいますが、それよりも、こんな巨樹を滑落させる大地震というのは、集落にとっての影響も相当なものだったと拝察します。
そしてこの状態を維持していることで「生き証人」として、史実を後世に残す存在でいてくれるありがたさを感じます。

臥雲の三本杉 1


もちろん、スギという樹種の性質を考えれば納得もできます。
幹が割裂しようとも、光合成し根を張ることができるのであれば残された主幹から成長をすることができるでしょうし、切山の大杉で顕著に見られるように伏条更新するほどの生命力ですので、根付くことができるのであれば生き残ることができたのかもしれません。

一部分からみると、600年ほどと推定される樹齢の割にはかなり老いている様にみえるものの、反対方向からみると印象は一気に変わります。


臥雲の三本杉 2


初めからこの傾斜に対応してきたかの様に、太く強く大きく見える幹。
そして羽をたたんで佇む孔雀の如く、細かく美しくみどり鮮やかに斜面下部へと延びる枝は、若々しくすら感じてしまいます。

人は見かけによらぬもの、といいますが巨樹もそうです。
この三本杉のように、一方向からみると太い幹でありながらも裏側は殆どが洞の様な状態になっているものも、各地で見られます。

長生きをして、これからも史実を伝えていってほしいと感じるも物の、生命力を感じるその美しい枝は、精一杯光合成のために斜面へ伸び、もし地面へ着いたのならば、そこから伏条更新で後世へ自分のうつし身を残そうとしているようにも見えるのは私だけでしょうか。


臥雲の三本杉 3


今の人里に自然災害の史実を伝え続けてくれる臥雲の三本杉。
私の様に訪れる人間をどれだけ迎えたのでしょうか。

そのたびに、どのような目で眺められているのかを感じながら、少しでも史実を感じてもらえるようにとその姿を保持してきたんだと思います。
巨樹は人間よりもはるかに長い時間軸の存在です。

だからこそ、貴重な存在に感じ大きさに圧倒され、どこか力を秘めているようにすら感じる。
その存在は様々な影響を与えます。
どれだけ人間が叡智を極めても、植物程の時間を生きることはできません。
人間が経験することのできない時間というものを、その存在で感じさせてくれる存在。それが巨樹なのかもしれません。


臥雲の三本杉 15


樹下に立っているつもりでも、その傾斜角でのけぞってしまうほどに傾いている幹。
直立していたであろう時代を想います。

しかし今は、この傾斜した姿こそがこの杉の存在そのものであり、知るべき史実。
時代は変わり災害も変化し環境も変わる。
三本杉が教えてくれる史実に対して、自分たちがどのように向き合っていくべきなのか。
訪れる人一人ひとりが考えるきっかけを持つことに、意味があるのかもしれません。


里にあり、人々に伝え続けてくれる存在、臥雲の三本杉でした。


臥雲の三本杉 14



臥雲の三本杉所在地

長野県長野市中条日下野3374 臥雲院の下にあり

邪魔にならない様、道路端に駐車できます。


 
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人里木霊す天使の咆哮 〜日下野のスギ〜

大阪の木材業界の方には少し知っていただいているかもしれませんが、担当は毎月発行される大阪中心の木材組合誌の紙面において、巨樹巨木のコラム記事を担当させていただいています。
ちょっとだけ、以前に紹介したことがありますが、そちらのほうも先月で連載三十回を超えました。
まだ三十回か・・・と思うくらいですが、もう四年になるほど続けさせていただいている(途中、紙面の都合で掲載されていない号もある)のは、非常にありがたいこと。

仲買たより

そして、ご覧いただいているブログ内の巨樹巨木の記事はなんと、今回で120回目!!
本当にそんなに投稿しているのかと、自分でも驚きますが、若干数回に分けての掲載などもありますので、単純に120本紹介しているわけではないのですが、そこまで巨樹の記事を掲載していることに、自分で少し誇らしく思ったりします。

というのは、単に巨木の写真と所在地などを掲載するページは多くあります(それはそれでいい。巨樹の存在や情報を伝えることが大事だから)が、私がしたいことは、いろいろな角度で、しかも材木屋が見る視点も加えての巨樹の紹介です。
巨樹巨木を前にして、材木屋目線でというのも非常に不謹慎なところではある(以前にも何度か、違法伐採未遂扱いされた経験あり・・・)のですが、枝の出方や周辺環境、木材を扱う上での木としての存在など、普通の方とは異なることを考えていることを、この記事や組合誌にて掲載をさせていただいています。


前置きが長くなりましたが、もう自分が何百本の巨樹に出逢ったのかわからなくなるほどの中で、出逢ったその瞬間に「これは・・・・」と口をつく形容詞を途中で失うような印象を受ける巨樹があります。
相対的に巨樹の数の多い杉の中にも、言葉を失い、その存在を受け入れる時間を大切にしたい!と思うような巨樹は多く存在します。


巨樹はもちろん、良質な木材を多く輩出し見事な山々を擁する長野県。
その中心地である長野市の西の山間に、山の神様を感じる杉の巨木が存在します。
その杉は神社の境内に存在するのですが、普通の神社ではありませんでした。

市内から山道をぬけ、集落が点在する中の山上に位置する大内山神社。
その境内に、日下野のスギという巨樹が存在します。

杉の木立を抜ける参道。

日下野のスギ 12


この石段を上ると境内、と思いながら歩を進めるのですが、登り切ったそこは自然の世界。
いや、神域という言葉よりももっと人に近い。
近いというよりも人の世界ではなく、人が存在する世界ではない、木々の世界とでも言いたくなるような、林立する杉各々が闊歩しているような、「根の階段」を上る道が続くのです。


日下野のスギ 13


杉並木らしく、足元は杉の葉でフカフカとしているのですが、地表はその葉で赤黒く頭上も写真よりもうっそうとしているので、杉だけが生きる世界に人が迷い込んでしまったかのような印象を受けてしまいます。

もちろん、現実的に階段状の歩道が設けられてはいるのですが、この状況で用意された道を歩むのは普通の人たち。
私のような変人は、あえてこの木々の用意した根の階段を上り、足でその地を感じ巨樹への礼拝の瞬間までの禊を行うのです。


登り始めてすぐ、その瞬間は訪れます。
目の前に現れる巨躯。
日下野のスギです。

日下野のスギ 14



第一印象は、立派!!

様々な巨樹に出逢っていると、自分なりにその巨さだけではない視点ができると思うのですが、この日下野のスギは山間部の杉巨樹として、期待以上のお立派な姿を見せてくれるものとして、納得のできる姿でした。

日下野のスギ 15

案内板には「樹形の整った杉の巨木」とありますが、ある意味見事に整っています。
巨樹としての威厳をもち、高く聳え他を寄せ付けない存在感を見せつけています。

目通り幹回りは11.4mとあるように、県内では国の天然記念物である「月瀬の大スギ」に次ぐ巨樹であるらしいです。
確かに、単純な大きさでいうならばそうでしょうが、その存在感は山の神。
パワースポットと称され、その存在感に神様の存在を感じるような「岩倉の乳房杉」に似ているようにも思います。
そちらは近くへ足を向けることはできませんが、こちらはすぐ近くでその存在を感じることができます。


日下野のスギ 2


少し枯れたような、それでいて力強く太い幹を誇示し猛々しく聳える姿は、山の神が宿るであろうと推察するにふさわしい姿。
もし、社殿がなくすぐ近くに道がなく、もちろん民家がないような山中であるとすると、もうその姿は合掌するしかないような、そんな存在であると感じます。

日下野のスギ 9


樹齢は千数百年以上という伝承のようですが、雪深い当地の気候に耐え幾度も枝を失ったのではないかと思しき幹。
苔の緑と赤茶けた杉の皮の色合いが、若さと歴史を共存させているように感じます。

社殿の隣に位置し、しっかりとその根を下ろしているように見えますが、実はこの幹のすぐそばは結構な斜度の傾斜になっています。
すぐ下には、まだまだ若い杉の木立が広がるのですが、眼下に彼ら若木を従え下界を見下ろす大天使の様だ、と神様というよりも若干キリスト教的(?!)な神聖さを感じます。

余談ながら、天使にも階級があるようでいろいろな呼称が使われますが、日下野のスギを例えるのならまさしく「大天使長」。
すこし偶像的になりますが、私の中では大天使長のルシファー(ルシフェル)なのです。

日下野のスギ 3


天使や悪魔といったお話は、いろいろなところに見られますが、一般的には堕天使として語られる場面の多いルシファー(ルシフェル)。
そのルシファーの姿(といっても拝謁したことはない・・・もちろん)と重ねてしまうのは、神聖な姿だけではないのです。
先の乳房杉に神聖さを感じるのは、記事にも書いたように「風穴」の存在が非常に大きいのです。

自分のいる世界が一瞬にして変わる。
そう感じさせるような風穴の力がある上に、近寄ることのできない神聖さが相まってのパワースポット感なのです。

それとは異なり、日下野のスギは「天使の咆哮」としか思えなような形相が、私に「大天使長・堕天使」である姿を想像させるのです。

それは斜面側に身を移すと鮮明になります。


日下野のスギ 4


幹の下部。
真円で高くそびえるはずの杉の一部に、突き出た・・・いや意図があってその内部より出でたような突出部。

天使が叫びをあげ、秘めていた思いを吐き出しているような、そんな「塊」を見ている感覚。

日下野のスギ 5


近くにいると、そんな意識に囚われます。
それが、神を感じるようなその姿から、どこか身近な存在であるような、禁断の果実を口にしてしまった人間の、少しの良心に寄り添って神に叫びをあげる天使の咆哮のように感じてしまうのは、無論私だけでしょう。

しかし、巨樹との出遭いで感じる印象というのは人それぞれですし、そうだからこそ巨樹は人々の心をつかむのだと思います。
クスの巨樹には「トトロ」のような妖精がいるのかもしれません。

しかし、異形の姿を見せるスギには神聖さではなく、どこか人間と同じような迷いをもった姿に見えて仕方がないのです。
近寄りがたくもあり、それでもどこか人の傍にあるような、不思議な感覚。


日下野のスギ 8


樹木や木材としての目線を向けるのは全く意味がないと思うのですが、あえて言えば幾度となく雪の影響などを受け、これほどの姿に成長するまでには過酷な時間を過ごしてきたことと思います。
幾本もの幹が空を刺す姿であり、暴れ狂うように枝を出す様は天使というようりも、やはり悩みぬく堕天使。

もしかすると、日下野のスギは神様ではなく煩悩うごめく人間世界を知る堕天使の姿かもしれません。


まったく話は変わりますが、実はこの場所は長野県のマリッジサポート課(そんなのあるんだ。すごい長野県!)がお勧めするデートコースにも掲載されているんです。
調べていて少し驚きました。
この姿をどのようにカップルが眺めるのか。
静かで少し暗くも感じる杉木立に、カップルの熱が冷めないのか。
やはり巨木をパワースポットとして合掌するのか・・・(頼むから根際に立ったり皮をはいだりしないでね・・・)
 
いや、その前に山道のドライブで彼女が車酔いしないのか?!と心配したり・・・

邪推を重ねる余地は多いものの、私にとっては見事な天使だった杉巨樹の一つ。
数百メートルの距離にあるもう一つの杉の巨樹、「臥雲の三本杉」が非常に人里感を抱かせるのと対極的な存在に、人の世と神の世の狭間を感じたのは、あくまでも私見の域を超えません。

奇しくも、この巨樹が神代に続く「神代杉」と称されていることを除いては・・・・・・


日下野のスギ 18


日下野のスギ所在地

長野県中条日下野(大内山神社境内)

わずかですが駐車可能(ほぼ人は来ないと思われる。)


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初めての遠征で初めての感激 〜加茂の大クス〜

さて、皆さん。
本日1月7日より、弊社の令和2年の通常営業を開始いたしますので、本年も一年よろしくお願い致します。

毎年年始の営業初日の記事は、巨樹巨木の日本一を紹介してきているのですが、さすがに日本一ばかりを追うこともできませんし、今年はこの後に紹介する記事の都合もあって、「日本一だと思っていた」巨樹を紹介することにします。


現在、各地方からもいろいろとお問い合わせをいただくほどに、全国の木材を扱うようになり各地を訪問する機会も増え、木のことも一般の材木屋さんよりはある程度分かるようになったと自負してはいますが、正直つい20年ほど前までは、恥ずかしいくらいに無知なものでした。
もちろん、ある程度業務に差し支えない知識は持っていましたし、それなりの事は知ってはいましたが、インターネット検索も普及しておらず、知識を得るソースが少なかった時代ですから、求められることも少なかったこともあり、自身の周りのことしか見えておらず他の地域の事は殆ど知らないも同然でした。

そんな時期、初めて遠方にでる機会があり、無知だった私でもその名を聞いていた木に逢いたい、と思った一本の巨樹がありました。
それが今回紹介する、加茂の大クスです。

加茂の大クス 2
(右に移っているのは外国人旅行者。老夫婦がクスを目当てに来られたらしい・・・)


淡路島を経由し鳴門方面から東西に走る徳島自動車道を西へ向かい、北も南も険しい山に囲まれた徳島県三好郡へ。

当時は初めて、と言ってもいいほどに自身で企画をして山や製材を回るということを行動に移したその時に、日本一の巨樹に逢ってみたい、と思ったのはある意味当然でした。
外の世界を知らないカエルが、ぴょんと外へ飛び出すと未知の世界が大きく広がり、想像してもしきれない巨樹という存在にあこがれていた時期。

特別巨樹ばかりを巡っていたわけでもなく、今の様にネット検索をするわけでもなかった当時、「かもうの大クス」なる巨樹があるようだ、ということしか知らず、しかもそれが訪れる予定の徳島県にあるらしい、ということで期待に胸を膨らませて向かったことを、今でも覚えています。

因みに紹介する写真は近年撮影のもの。
当時はデジカメの性能も良くない上に、写真になれていなかったもので、掲載できるようなものではありませんでしたので、あしからず。


徳島県での用事を済ませて、人づてに聞いた通りに向かった先にあったのが、開けた土地に孤高にたたずむその姿でした。

加茂の大クス 1


何とも雄大で美しい樹形。
解説板の「一樹、森を成す・・・」というのも大げさではなく、立派であることを森と例えたくなる気持ちも理解できます。
樹齢1000年以上、幹回り13m、枝張り東西46m。
日本一であるとの表記。

巨樹としての迫力では、様々な樹種の上でカツラが印象に残るものが多いのですが、カツラの巨樹の場合は「ひこばえ」が多く、1本の巨大な幹という印象ではなくて異様に大きな剣山という状態なので、単幹での幹周り13mは立派です。
また、その雄大な枝ぶりは、「この木何の木」のモンキーポッドを彷彿とさせます。

その大きさと見事な枝ぶりで、数少ない「国指定特別天然記念物」に指定されています。
以前にも杉の大杉でお伝えしたように、天然記念物の中でも「特別」がつくものは非常に珍しく如何にこのクスが貴重なものかということが分かります。

加茂の大クス 7


巨樹巨木にはつきものではありますが、一時期樹勢が弱った時期があったそうです。
広大な広さを確保されている当地も、昭和に入り農地や宅地の開発が進んだ時期があり、その時期に弱りが見えたそう。
しかし、周辺の農地を公園化し(それでこんなに広々としているんだ…)、治療も施して樹勢が回復。
驚くべきことに、東みよし町の産業課のホームページによると、樹勢回復後には解説版記載の幹周りからさらに太くなり、2007年には16.72mになったというのですから、なんとも素晴らしい回復力

幹回りの表記や計測にはいろいろな基準や計測がありますから、一概には何とも言いにくいところですが、数字に納得できる迫力と生命力は十二分に感じることが出来ます。

特別、という冠のつく巨樹は珍しいのですが、それは日本一なんだから当たり前!と当時の私は思っていました。
だって、「かもうの大クス」が日本一だと聞いていたんだから。

それは間違いではありません。たしかに「かもうのクス」は日本一なのです。
しかし、そのクスは当地のクスではありませんでした。
なんと!、「かもう」違いならぬ「かもう」と「かも」の勘違いで、当地のクスではなく正しい日本一は以前にも紹介している「蒲生のクス」だったのです!!


加茂の大クス 10


無知というのは恐ろしいもんですね。
解説版にも書いてあるものだからてっきり、これが日本最大の巨樹であるクスノキだと思い込んでいました。
情報をもたないということは、情けない話です。
しかし、双方ともに「特別」天然記念物にしていされていますから、当地のクスも数ある日本のクスの巨樹のなかでも非常に希少な存在として認知されているという証拠。

幹周りでは、当地よりも巨大なものは多く存在しています。
クスノキの場合は特にですが、我が大阪府の誇る「野間の大ケヤキ」と比較しても、幹回りは大きく変わらず。
それでも、筋肉質で武骨な太さを見せるくびれではなく、「女性特有の美しいくびれ」を想像させる加茂の大クスは、やはり特別天然記念物にたる姿を私たちに見せてくれるのです。

加茂の大クス 4


その美しくくびれた幹の上に、「傘を広げたように」と称される見事な枝ぶりをもっている加茂のクスは、近づいて見上げたりじっくりとその幹を観察したりという楽しみももちろんあります。
しかし、それ以上に贅沢な接し方は遠くから、その全体の姿を眺める事だと思います。

先に書いたように、加茂の大クスの周辺は公園化されていて、広場の様な状態です。
そのため、近くにいることで巨樹に圧倒されるような雰囲気も感じられるのと同時に、ほぼ 360° どの角度からでもその見事な姿を一望できる場所になっています。

大クスの為の周辺整備をしていただいていることが、結果的にその美しい姿を十二分に味わうことのできる空間を作ってくれているみたいです。

加茂の大クス 13


私が加茂の大クスに最初に出逢ったときからすると、ある程度は様々な木を見てきましたし、製材所を回ることも普通になり今では、片道数百kmの道のりも日帰りでこなすほどの出張族になりました。
その間、巨樹にも多く出逢ってきましたがやはり、これほど訪れる人にとっての好条件がそろっていて、なおかつ立派な巨樹というのはなかなかあるものではありません。

だからこそ、最近になってもう一度訪ねたい!という思いになったのでしょう。
本来の目的地は、ここからさらに険しい山を越えていかなければならないところにも関わらず、20年ぶりの再会を果たしにやってきたというわけです。

そんな気持ちをもっての訪問は、「また、逢いに来てくれたんだね」と大クスが迎え入れてくれているような、だれもいない広い空間での公然の逢瀬。


加茂の大クス 14


誤解から始まった加茂の大クスとの出逢いは、後の私の巨樹巡りの出発点と言ってもいいのかもしれません。
そこから少しづつ樹木や木々に関する知識を付けて、今回戻ってくることが出来ました。
今眺めても、最初に出逢った感激を忘れることはありません。


激しく変わろうとする木材の業界の波にさらされることになった現在に、まだ若かった自分の記憶をよみがえらせもう一度フレッシュに送り出してくれるような、そんな気持ちになりました。

次の予定には十分すぎる滞在時間を見込んでいたものの、時間の経過をすっかりと忘れてしまっていました。
去るに惜しい気持ちで振り返った時に見せる大クスの姿は、別れる涙の雨の中で傘をさす恋人の様な姿に見え、人生の限りある時間の中でここに2度も来ることが出来た幸せを、再度感じさせるのでした。

地域のみなさんと、いつまでもその美しい姿を維持してほしい。
そう願って、私はまなざしを目的地である山向こうにうつすのでした。



加茂の大クス 15


加茂の大クス所在地

徳島県三好郡東みよし町加茂1482

駐車場あり、トイレあり


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仰げば恐ろし・・・ 〜島根県浜田市 常盤山の杉〜


私は夏が苦手である。
暑いから?いや、そうではないのです。
暑さには比較的強い(むしろ寒さの方が強いけど・・・)方なのですが、夏に山に入るのが苦手です。

すがすがしくてとても良い、と思うのですがそれだけではなく、人間が心地いい季節は他の生き物にも心地いいわけで、蜂やヒルなどのお友達になりたくないものがたくさんでてきますから、苦手です。
しかし、もっとも苦手・・・いや、会いたくないものがいるであろうことも、非常に大きな苦手ポイント・・・


冬に巨樹を訪れる苦労は、今までの雪にまみれる記事を見て頂ければご理解いただけるでしょう。
何気なしに雪化粧に佇む私と巨樹、という構図になっているものの、その場に立つまでは携帯電話の電波の届かない山道をひたすら登る、つづら折れの山道を四輪ドリフト状態(FF車ですけど〜)の横滑りで駆け上がったりなどしながら辿りついているわけです。
寒そうに見えるダウンジャケットの下が汗だく、ということも珍しくありません(汗)。

それからすれば、夏に訪れる巨樹など心地の良いもの・・・と思うなかれ。
今回訪れたのは日本海側に細長く続く島根県。
高速道路がつながっていないために、東西に長い県の両端への行き来に数時間かかってしまうという、侮りがたい県なのですが、県民性はとってもフレンドリー且つ嘘偽りのない人たちばかりで、私の中での「癒し県」の一つでもあります
(笑)。

そんな島根県の西部、山間の金城(かなぎ)町に常盤山の八幡宮があります。
金城は、地元の水を販売するほどに自然の豊かなところ。
好き嫌いはあるものの、少し甘さと柔らかさのある「金城町の水」はお気に入りです。

巨樹巨木の事前情報によると、幹回り8mを超える杉が存在し、他にも杉の巨木があるとのこと。
幹回り10mを超えると相当なスケールですので、その姿に期待が高まります。

到着後の社殿迄にはすでに一本の太い杉がお出迎え。

常盤山のスギ 3

なかなか立派な杉!!とここで時間をとられてはいけません。
なにせ、この社殿の奥にはさらに大きな杉がいるのです。
早々にお参りを済ませて、どの「奥」にお目当てがあるのかを確かめます。

常盤山のスギ 10

もしや、あの社殿右後ろの??
いや、たぶんそうだ。
針葉樹の濃い緑の新緑!
あそこにめがけていくぞ!!、の前にありがたい事前情報。
これがないと、背が低いものは結構探すことになる場合もあるんですね〜。
ありがたや。


常盤山のスギ 2

掲示によると、社殿前を含む5本の杉巨樹があるとのこと。
巨樹や樹木に明るい方は、表記の「アシオスギ」に注目されることと思いますが、ここではその表記については、掲示板に倣うことにします。

もちろん、目指すはA株。

案内図通りに進むと、境内左奥に裏山へと昇るけものみちらしきものが・・・

常盤山のスギ 9

まぁ、道なんだろうけど普通に竹やら雑木やらで通れない・・・

うぅ〜・・・どれくらい進むのか。見る限り近いけど・・・と思いながらも進み始めると早速Cの杉に。
なかなか立派ではあるものの、意外と傾斜のきついけものみちで、しかも三脚を立てるにも良いアングルが取りにくい・・・ということで、写真なしで通過。
後で気が付くのですが、ここでもし「その痕跡」に気が付いていれば、もしかするとここで引き返していたかもしれません。


歩を進めると、気負う心とは全く異なり意外とあっさりとお目当ての杉に到着。

常盤山のスギ 4

手前と奥。
2本が適度なスペースを維持しながら立っています。
広葉樹の若木もちょろちょろと芽を見せる中、「一時代」を主張するような2本の杉。

ご丁寧に足元には「アシオスギ」の表記。

確かに、西日本とはいえ島根県の山間部は非常に豪雪。
数メートルの積雪も珍しくありません。
その地で生き抜くには、やはりアシオスギでないといけないのでしょう。

常盤山のスギ 1

アシオスギの例に倣って、異様な樹形か?!と思いきや意外とスラッとしていて礼儀正しい(笑)。
素直に伸びた、という印象を受けるそのままに、とても優等生的なアシオスギと感じます。

常盤山のスギ 6

人工林施業の上で、まず淘汰するべき対象として「暴れ木」があげられます。
詳細は割愛しますが、まっすぐ伸びているとはいえ、枝のつき方や成長度合いを見ると、巨木の多くは暴れ木であることが多いです。
失礼な話、巨木を木材にするならば樹齢を重ねているために、成長による癖は非常にマイルドではあると思いますが、林業で言うところの優等生ではありません。

しかし、その個性がまた、人を引き付けるのかもしれません。

この常盤山の杉も、想像よりもやはりスケール感はないものの、その立地であったりその姿のみせる雰囲気は、巨樹そのものです。

常盤山のスギ 5


写真映りを考えると、開けた場所にドカーンと構えているのが望ましいものの、「裏山に主」よろしく仲間とともにひっそりとたたずんでいるその姿は、応援したくなるような気持にさせます。

期待より大きくない、といっても実はこれくらいはありますよ。

常盤山のスギ 7


はい、十分大きい。太い(笑)。
足元の「アシウスギ」ではない「アシオスギ」看板がほんと、妙に気になる(笑)。

杉の巨樹、と考えるとまだまだその称号を得るには若造である、と言えるかもしれません。
それでも、ある程度まとまって生えていることや鎮守の森であることなどを考えると、非常に価値があると思います。

いつもなら、いろんな角度から撮影するものを、雑木と竹に阻まれて、一定のアングルしかありません。
ちょっと物足りなさを感じつつも、別れの挨拶を済ませ杉を後にします。

先程来た道を戻りながら、もう一度巨木たちの写真をとっていると、先程の杉への曲がり道に立っている看板表記Cの杉の幹に、なにやらキズが付いている。

常盤山のスギ 12

むむー!
なかなか人が入っていないのかと思いきや、こんな傷をつける人間がきてるのかしら?!
鎮守の森の樹木を傷つけるとは何事か!!っと、思いながらもう一度Cの大木を眺めました。

そしてそのまま無事帰路についたわけですが、その後にこのキズについて聞いてみると「あぁ、クマでしょうね。クマ。上にいませんでしたかね?!」との返事・・・
ん?クマ?!
熊?!

よく聞いてみると、クマは木のぼりし「クマ棚」を作るとのこと。
その際に登った跡であろうというお話で、聞いてすぐビックリ!
山の野生動物苦手な身にとっては、クマやイノシシは本当に会いたくないものたち。
それも、もしかすると頭上いたかもしれないとは・・・・・

ひえぇ〜。
思い出すだけでも恐ろしい。
見上げる恐ろしさを覚えた杉探訪。忘れられない場所になりました。


常盤山の杉所在地

島根県浜田市金城町波佐545付近 常盤山八幡宮の裏山内

駐車可能



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令和彩る紫の蝶 〜藤(フジ) 第六話 壮麗極まる九尺ふじ〜

意外にも第六話までつづくことととなったフジの物語。

最後を飾るのは、壮大なスケール、とでも形容したくなるようなフジをご紹介しておきましょう。
数々の巨樹を擁する丹波市。以前に紹介した木の根橋もここ丹波市です。
最近話題になった、お隣の丹波篠山市とは異なるので、近畿圏以外の方は要注意。

街を形成している部分もあれば山間部もあり、そして大阪や神戸から程よく山間部な為に、移住してくる方や古い物件を探しておられる方も多くあると聞きます。
確かに、とってもいいところ。
ドライブコースとしても、私はよく走らせてもらっています。

そんな丹波市に見事に咲くフジを見ることができます。

九尺ふじ 6

どうです!!
この見事な枝垂れ具合。

これが有名な白毫寺の九尺フジ!
開基は慶雲2年(705年!)という歴史ある寺で、石仏やお堂、太鼓橋など見どころも多く、このフジの花の季節には混雑するそうですが、いつものごとく、私は早朝一番訪れています。

九尺ふじ 5

それにしても、もちろんこんな見事に咲き誇るフジを見るのは初めて。
藤棚というものも各地で見ることはあるのですが、ここはスケールが違うのです。
それもそのはず、この藤棚の総延長距離(笑)はなんと120m!!
なんということでしょう!!

なので、全体を撮影しようとするとあまりにも遠景になりすぎて、紫一色の写真になってしまうのがもったいない。
これは、やはり人間の目で見るべき光景であると感じます。

九尺ふじ 2

これはL寺になった藤棚を奥側から撮影したアングルですが、一番奥はまだ後ろ。
あんまり離れると、本当に迫力がなくなる・・・
そのため、早朝にもかかわらず訪れる人も完全に2パターンに分かれていて、仰々しいカメラの重装備で固めておられる人は結構離れたアングルから・・・そしてご夫婦やコンパクトデジカメを片手の方は花に近づいたり、藤棚の下に入ったりして撮影をしています。

やっぱり、こういった圧倒的な迫力を撮影するには、きちんとしたカメラとウデが必要ですね。実感。

で、ちょっと悔しいのでスマホのパノラマ機能で対抗(?!)するとこんな感じ。

九尺ふじ 7


ちょっとおかしな感じですが、写真中央少し右の飛び出ているような部分が私の立っているところに一番近い藤棚。
こんなに長い距離で、どの部分も途切れることなく咲いているこのスケール、やはりパノラマでも伝えきれません。

寺のホームページによると、正式名称は「野田長ふじ」。
この枝垂れが今までで最長のものは、その長さが180cm!にもなったそうです。
完全に藤棚の暖簾をくぐる、的な長さだと思います(笑)。
しかし、実は私が期待していたのは180cmではありません。
このフジの通称はなんでしたっけ?

そう、「九尺フジ」です。
九尺、です。
つまり、簡単にいうと270cmです。
えぇ?!そんなに長く枝垂れてるの?!と期待してきたものの、上記の180cmもないような長さ。
仮に180cmだとしても六尺フジ、です。
これには訪れた老夫婦も、「こりゃ九尺は大袈裟やな・・・」とおっしゃってました。私だけではなかったのね。


九尺ふじ 4


いや、しかしそれでも十分な迫力であることには変わりありません。
嬉し恥ずかし、オッサンが一人早朝からカメラを抱えてフジの下にいる・・・私の事ですが、こんな年になって巨樹ではなく花に萌えるなんてちょっと意外。
このフジの下に入って見上げてみると、大瀑布の内側に潜り込んだような、フジのパープルシャワーを浴びているような感覚。
滝の豊かな水量の様に、多くの花を枝垂れ咲かせる九尺フジ。
本当に見事です。

九尺ふじ 1

昼間ならば、後ろに見える人工林との対比が何ともいえずいい感じ。
針葉樹の幹の通直さとフジのまっすぐな枝垂れ。
何とも言えない縦ラインです。

夜はライトアップもあるようなので、できることならナイトドライブででも訪れたいものです。

白毫寺自体は、ここともう一つ有名なのが奈良県。
そちらも名木「五色椿」を有する白毫寺。
同じ名前ですが、白毫自体が仏さまの眉間の上に渦を巻くように生えている白い毛を意味すると聞いていますから、お寺の名前にあってもおかしくないですものね。


山門脇には、毒蛇をも食べることから仏教の守り神とされているクジャクが参拝者を出迎えてくれます。

白毫寺の九尺フジ 15

その美しい羽根をみていると、何かの暗示にかかったかのように吸い込まれそうな感じがしますが、これも仏教の世界のうちの一つ?なのかもしれません。


ある部分では疎まれるフジをお伝えしてきたシリーズですが、このように人の目を楽しませてくれる存在でもある。
前回に提案した「森の藤棚」も悪い案ではないと思います。
山に人を呼び、関心を持ってもらう。
美しい景色も両立する。雇用も生まれる、満足感もある・・・
そんなこと実現できないでしょうか・・・・



令和の時代には、あらゆる動植物や環境が共生し発展する時代であってほしい、新紙幣のデザイン案にそんな思いを持って、フジを見つめなおしたシリーズになりました。


九尺ふじ 8


白毫寺の九尺ふじ所在地

兵庫県丹波市市島町白毫寺709

駐車場有


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千年の命の具現化?! 〜堂庭(山)のスギ(千年杉)〜


ここのところ出張で、とても真摯に取り組んでおられる山に行かせてもらう機会が多く、いろいろな山と木材を見せて頂いていましたが、それとともにいろいろなセミナーや講義にも出席していると、こと私のいる木材業界は「木をどんどん使うべき!」というイメージが先行で、とにかく山の木を伐る事が大切、というところがクローズアップされがちで少し疑問を抱くことが多い。(植林もセットで語られるものの、ただ植えればいいという単純なことでもないでしょうし・・・・)

植林をされた山の中でも杉が話題にあがることも多いうえ、60年ほどで成熟して収穫期!というようなお話を聞くことがあるので、うぅ〜ん・・・と考えさせられたりもします。
いつも巨樹巨木を巡っているからなのか、1000年を超える樹齢のものや、まざまざと生き様を見せつけるようなものと対峙すると、利用ばかりではなく考えることってないのかなぁ・・・と思うこともあり・・・・

そんなことを考えていて、久しぶりに思い出したのが「千年杉」ともいわれる「堂庭(山)のスギ」です。

堂庭のスギ(千年杉) 7


複雑に絡み合っているような根。
そしてその傍に並ぶ石仏。
この巨杉自体が信仰対象だったのでしょうか、どのような経緯か定かではありませんが、どちらにせよ拝みたくなるような見事な杉です。

愛知県の豊田市中心部からくると、国道420号を東に進み足助町あたりで脇道へ。
ちょうどのその分岐あたりに、「千年杉」という大きな文字が目に入る。(下の写真とは異なります。)
実は、私がこの巨杉に訪れた時の目的地は別にあり、たまたま通りかかった分岐の「千年杉」が目に入ったことでの訪問でした。
最初に看板を見た時には、「なぬ?!千年杉?!千年?!」と、もし後続車が来ていれば追突でもされそうなほどに驚いて進路を変更したのです。

堂庭のスギ(千年杉) 1

もしや、千年も生き続けているということはよほどの山中にあるのか?!・・・と気にしながら進んでいった先には、急傾斜に前のめりになるように立っている「堂庭(山)のスギ」の姿がありました。
あ、早くも私登場。

堂庭のスギ(千年杉) 9

少し様子を見ている雰囲気。

枯れて折れたのか、途中でなくなってしまったような枝や、枯れているのかそれとも触手であるために葉が無いのか(そんなことはないけれど・・・)、異様な伸び方の枝を伸ばしています。
樹高はおよそ34mほどなので、それほど大きくはないものの、まるで荒れ狂う波をまとっているかのようだ、とでも形容すればいいのか、荒々しさを発揮しています。
露出気味の根、大きな割れ目のある幹、大きく枝垂れながら伸ばす枝、そのどれもが迫力十分。

堂庭のスギ(千年杉) 13


この瘤にまみれた姿の理由は一体?!
日本海側に多くみられるスギには、これに近い異形のものが少なからずありますが、どう考えても太平洋側である豊田市の山中で、この形容しづらいような姿を呈しているのは、やはり1000年の樹齢のなせるものなのでしょうか。
実は千年杉というのは推定樹齢か伝承樹齢かのようで、はっきりとはしていないようです。
それに、豊田市の「名木」には指定されているものの、希少なものの代名詞である「天然記念物」の指定がないのが不思議なくらい。

堂庭のスギ(千年杉) 2


もしかすると、意外と若いのかもしれません。

堂庭のスギ(千年杉) 3

このように、「房」といった印象をうける葉の茂り具合は若さを象徴している、と思ってしまいます。
樹木は、若いときにも多くの葉を茂らせるものでしょうが、反対に老齢になっても茂らせることがあると聞いたことがあります。
自身の最後の力を振り絞るために光合成をする、もしくは多くの種子を残すために葉を出す、といったものだったように記憶しています。
そうすると、あながち推定1000年もあり得るのかもしれないその姿。

しかし、しかしです。
正面から眺めて圧倒されながらも、後姿を拝見してみると、なんとまぁ・・・
とってもすっきり。

堂庭のスギ(千年杉) 5


え?さっきまでの荒ぶる形相はどこへ行ったの?!
もしかして、数歩歩いただけで他の樹についてしまったのか?!
少し襞のような縮模様があるものの、すらっとしたその姿は本当に同一樹種とは思えない!

まさか正面からはこんなことするような気にならないけども、後ろ姿ならば・・・

堂庭のスギ(千年杉) 4

といっても、私と比べるとそのしっかりとした大きさがわかっていただけるでしょう。
スケール感としては十分に巨木であるのですが、まるで阿修羅の面のように表情を変える堂庭のスギ。
一粒で二度美味しい、ともいう?!

いや、失礼。
表面(?!)に戻りましょう。
この巨象の膝、と申しましょうか・・・年老いた生き物の、ひび割れたその皮膚のように思わせる幹の下部。

堂庭のスギ(千年杉) 12


実際にこの場に訪れてまじまじと、この「足」の部分を観察すればするほど、「本当に足だ・・・」と納得されることでしょう。
となれば、胴体がこうなってこの辺が腕で・・・
といった感じに見えてくる、その理由は実際に正面に立ってもらうと分かると思います。
もし、スギに雌雄があるのであれば十中八九、この個体は雄株であるはず。間違いないです。

雄ならではの猛々しさと、その後ろ姿にはさわやかさすら感じさせる堂庭(山)のスギ。


堂庭のスギ(千年杉) 14


電動機械や重機で山も樹木も簡単に伐りだすことができる時代。
植林木の存在とは比することはできないものの、伐って使うだけが山の役割でもなく木々の存在理由ではありません。
伐るために植えられたものであったとしても、山の為や周辺環境のため、他の動植物の為、そして今から100年後や1000年後の山の事を考える時、チップや燃やすために伐りだすこともないし、単に量を求めて価格競争に入っていく必要もないとも思います。

一度の施業で量を確保できるからこそ業として続けられる材木屋でありながらも、とっても複雑ではありますが、使わせてもらうものもあるけれども残す場合もある。
植林地でも積極的に残す選択肢もあるかも知れない。
それを実行されている山があるのは、少し前の出張で目の当たりにした山でお伝えした通り。

最初から人がかかわった山はそのまま放置できないのかもしれない。
なら、関わりを最小限にしてもいいかもしれない。

伐る事だけが林業でもないし、施業でもないんじゃないかな・・・
そんな自分の商売とは矛盾するようなことを考えている時、この千年杉である堂庭(山)のスギを思いました。


しかし威風堂々、「前のめり」にすら思えるその姿は、悩んでも悔やむことがあっても、進むことが大切で行動することが答えを見つける一つの方法である、と言ってくれているようです。
これからも山にかかわり続ける材木屋として、1000年先を見据える力(笑)つくといいなぁ・・・・・・・
もちろん、商売の行き先も・・・・・・・・



堂庭のスギ(千年杉) 8


堂庭(山)のスギ(千年杉)所在地
(豊田市の名木としては、スギとしか登録されていない模様。地名は堂庭山のようですが、一般的には山は付けずに呼ばれている模様です。)

愛知県豊田市葛沢町中本郷66-1

周囲の邪魔にならないように駐車しましょう。
近くには、有洞のサワラなど巨木が数カ所存在します。


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穏やかな一年をその樹に祈る 航海安全の日本一 〜熊野速玉大社のナギ〜

恒例記事として続けてきた、年始の巨木日本一の記事ですが、そろそろ今年でひと段落になりそうです。
いろいろと結び付けて語りたいものもあれば、すでにお正月以外で紹介しているものもあり、次はもう少しネタをためてから再開したいと思います。

さて、そんな区切りの日本一紹介ですが、今年はこれしかないでしょう!というタイミングでの紹介になりました。
というのも昨年は、私の周りでは大阪府北部地震、そして2つの大型台風が猛威をふるい、現在でも被害は収束していないこと。全国的には西日本豪雨と北海道での地震被害など、大きな自然災害が続きすぎたこと。
毎日が当たり前のように過ぎていくことに違和感なく過ごしていることの大切さを、痛感した出来事でした。

本年はそのような災害が起きないように、この樹種の日本一を拝むことにしたいのです。
その樹種は「ナギ・梛」。」
ナギについての詳しくは5年ほど前の記事にて書いていますので、そちらに譲ることにしますが、その名が、穏やかで波のない海の「凪」に例えられることから、漁師さんや航海に出る人の安全や海難除けの木として、古くから大切にされてきた樹です。
また、難を逃れると同時にその葉を断ち切ることが容易ではないために、縁が切れないということで縁起物とされています。

そんな縁起物の日本一で始める2019年。安全な一年になるはずです。そう信じていきましょう。

那智速玉大社のナギ(梛) 3


正面に見えるのが、日本一のナギ・梛である「熊野速玉大社のナギ」です。
ナギという樹種をご存じなければ、巨樹で紹介するにはスケールが足りないのでは?!と思われるかもしれませんが、ナギ自体は成長が遅いため必要以上に大きく太くはならない樹種なので、このようなアングルで撮影して「一本の太い樹」として映っていること自体が珍しいのです。

那智速玉大社のナギ(梛) 2

周辺には柵があるために近づくことはできませんが、それでもナギという樹種特有のキハダの感じや枝の姿、そして葉っぱは確認することができます。
なにより、こう見えても樹齢1000年!!、そして幹周り5m。
ナギ自身は幹周り3mで樹齢400年というお話もありますし、他に存在するナギの巨樹のほとんどが幹周り3m台から4m前半であることを考えれば、堂々たる日本一!なのであります。

樹高は17mほどなので、スギの巨樹のように見上げる迫力はないものの、樹齢を見せつけるような幹の様子や枝ぶりが、巨樹としての風格を十分に感じさせます。
葉っぱは小さいので、離れているところからは認識しづらいですが、周辺に多くの枯れ葉が落ちているので手に取ることができます。

那智速玉大社のナギ(梛) 7

ナギの葉は、同一方向に多くの繊維が並んでいるために、非常に切れづらいことから夫婦円満にもたとえられ、嫁入り道具にも入れられていたとか・・・
もちろん、私の財布にはナギの葉が入っています(笑)。言わずもがな、金縁をいただくために・・・
まぁ、私の場合は話のタネですが、縁起のよいものというのはもっていたいものではありますよね。

那智速玉大社のナギ(梛) 9


那智速玉大社のナギ(梛) 5

案内板にも、ナギの葉は霊威ある熊野詣でのお守りである、とあります。

巨樹、という言葉で印象を与えるのはやはり特徴的な姿や、その幹の太さだと思いますが、ナギに限ってはその「ありがたい縁起」、そしてスギの一部にみられるような乱れ伸びる枝でしょうか。
小さな葉が密生しているような樹形なので、正面からは少し見えにくいものの、裏に回ってみれば1000年の命と風雪が過ぎてきた風格を感じる幹と枝を見ることができます。

那智速玉大社のナギ(梛) 1

スギはスギでも、日本海側や多雪地域に多い「ウラスギ」と称される枝垂れるスギのように、触手を伸ばしているかのよう・・・
これは、1000年の昔から単独で生きてきたからなのか、それとも周辺に競争相手が育つことができなかったのか。
ナギが動物を寄せ付けない「ナギラクトン」(すごく危険な爆薬みたいですが・・・)を分泌しているからなのか・・・

どちらにせよ、唯一存在する幹周り5m超えの巨樹として、単独で存在する姿を印象付けるように見えます。

那智速玉大社のナギ(梛) 6

樹皮があるのかないのか、いや永い年月で樹皮がはがれたのでは、と思わせるような姿。
この特徴的な樹皮がナギの特徴ではありますが、すでにそこも風格に感じます。

どうか本年は、このナギの風格をもって災害なく「凪」の一年になりますように。
そして、木が好きな皆様との縁がつながり一層途切れることのない、無垢の木材の活動が続けられますように。

そう祈りたいものです。

祈りの私に、ナギが縁深い枝を差し伸べてくれているようです!
今年も一年、木にまみれていきますよ!!

那智速玉大社のナギ(梛) 8


熊野速玉大社のナギ(梛)所在地

和歌山県新宮市新宮1丁目1

境内にはオガタマノキもあり。駐車場有。

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