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鳥居は神域への門なのか?!  岩倉の乳房杉(ちちすぎ)

わたくしごとながら、先月より不定期で木材組合の紙面をお借りして、巨樹巨木に関するコラムを持たせていただいています。
木材や樹種についてもそうですが、いつかは「紙の媒体」で、インターネットの画面からは見ることができない様々な人の目に、私の訪れた巨樹の存在が知られる機会を持つことが、夢の一つであったのですが小さな一歩を踏み出した、という感じです。
もう、このブログの中での巨樹巨木の記事は、完全に業務ではなくただ皆さんに、私が訪れた木々達から受けた印象をお届したいという想いだけで続いていますので、仕事の事を話のタネにしなくてもいい分、自由に書かせてもらっています。

さて、今回登場の巨樹は日本の代表的な樹種である「杉」なのですが、およそ杉とは思えない様な姿であるそれをお届します。


日本の杉巨木の中でもっとも有名なのはなんでしょう?!
おそらく縄文杉でしょうね。
屋久島の事を語る時には、必ずと言っていいほど登場する縄文杉ですが、実は当記事には未だ登場していません。
皆さんご存じだから、とか私がしょうかいしなくても、とか色々と理由はあるのですが、太さや大きさでは譲るものの、ある意味縄文杉よりも「パワースポット」めいているのがこの、「乳房杉(ちちすぎ)」です。

乳房杉5


茂る下草、他の追従を許さないかの如くの異形、開けた空の輝きを受けて後光のさしているかのような存在感、そして天を射抜いてしまうかの如くの枝々。
様々な巨樹巨木を目にしてきましたが、驚くものや圧倒されるもの、または絵になるようなものなど特徴を持ったものの中で、「神々しい空気をまとったもの」というのはなかなかありません。
その「神々しい空気」を感じることができるのが、この岩倉の乳房杉です。

隠岐の島の中心よりやや西、大満寺山を横断する林道の途中に位置するこの杉は、「隠岐の三大杉」といわれる「八百杉、かぶら杉、乳房杉」の一つです。
島を紹介するガイドブックや情報誌にも必ず登場する(と感じる)ほど、島を代表する存在でもあります。
気になる人のためにお伝えしておきますが、ほかの2本の巨杉のうちの八百杉は「伝承と人との身近さ」を感じる境内にそびえる杉。
かぶら杉は、以前に私を大いにビビらせた「高井の千本杉」と同じように、根元で別れた太い枝が天に伸びる「沢沿いの杉」。
もちろん、それらも見ごたえがあるのですが、一線を画すのが乳房杉。

乳房杉1

私が訪れたときは日光の加減で空は明るいものの、山肌が薄暗く感じ幽玄さを感じるような佇まいでした。
観光ガイドの写真などには、霧のかかった様子や雪を抱いた姿などが紹介されていますが、それが違和感なく認められてしまうのは俗にいう「パワースポット」だからでしょう。

人それぞれの感じ方ではあるものの、近年のパワースポットブームもあり、なにか特別なものを感じることができる場所。
それは巨木であったり、伝説の地であったりするわけですが、私自身はそこで何かが得られるから、という理由ではなく自分の中の何かが目覚めるきっかけにできるかどうか、自分次第だと考えているので、正直場所にこだわったり巨樹からパワーをもらうというようなことは考えていません。
しかし、この乳房杉をパワースポットと紹介したくなるのには理由があり、その理由こそ、ここを「神域」に感じさせる理由でもあるのですが、とりあえず乳房杉の詳細をまず・・・


乳房杉10


乳房杉の樹齢はおよそ800年。大満寺山の崩落岩に根を下ろす異形は、日本の杉を大きく3グループに分けたうちの一つ「ウラスギ」に入ると解説されていますが、納得のその姿。
横に張り出す枝は力こぶのようでもあり、銛(もり)の鋭さのようでもある。
そして乳房杉の大きな特徴の一つであるのがその名の通りの「乳房」。

乳房杉8


当ページの記事では「常瀧寺の大イチョウ」などに代表されるような大きな「乳」が垂れているのがそれです。
通常であれば、樹木の枝などは上空に向かって伸びるもの。
それが正反対の地上に向かって垂れるように伸びている。
銀杏(イチョウ)のそれを含め一般的には「気根」と呼ばれています。乳房杉の解説板にもあるように、空気中の水分を取り込む役目を果たしたり、樹木の幹の支持を助けたりするものといわれていますが、この乳房杉もこの「乳」をつかって空気中の水分を得ているといわれます。

しかし実際、この気根と呼ばれる下垂状の乳は「根」ではなく、葉っぱのない「枝」だと言われています。
下方向に伸び、根を出して新しい枝を形成するためのものだという定義がされています。
ストーリーとしては、「乳の出をよくするために煎じて飲んだ」というお話や、「空気中の水分を補給する」といったほうが夢があるものの、実際の植物たちの事情はもっとシンプルで、生き抜くためのまっすぐな理由だけなのかもしれません。
興味深い世界です。


乳房杉6


どうしても今回の写真はこのアングルに固定されてしまうのが、少し見どころを欠くところかもしれませんが、それには理由があって、近頃の巨樹所在地と同じく、乳房杉には近づくことができません。
縄がはってあり、また入り込んでいけないからこそ下草も繁茂し幻想的な空間を維持しています。
そのため、もう正面のこのアングルしかないのです。
もちろん、現地にいれば光の具合や感じる風、鳥のさえずりや木々の揺れる音などで無限にその世界は広がりを感じるのですが、写真下手の私にはそれを伝えることもできないのが未熟なところ・・・

しかし、このアングルしかないからこそそこにおのずと人が集まるのですが、ここに立つからこそ、乳房杉を訪れた人々はこの場所が世で言われるところの「パワースポット」であることを「確信する」ことになるのです。

そのパワースポットたる場所はこの鳥居をくぐることで、「神域」への到達を感じさせるのです。

乳房杉9


決してたいそうな鳥居ではないものの、登山することなく自家用車の窓からも眺めることのできるこの乳房杉を特別なものとせしめているのが、この鳥居とその先の「神域」なのです。
ここを訪れた観光客はまず、目に慣れない大きさとその姿にまずは驚かされます。
しかし、本当に驚くのは鳥居をくぐったその瞬間。


「え?何?!!なんかすごい涼しい・・・というか冷気が・・・!!」
「うわぁ!!!パワースポット!マジで!!」

私が滞在していた間にも、7組ほどのカップルや家族が来られましたがすべての皆さんがその得体のしれぬ「神の気」にさらされた驚きを口にします。
本当にここは神の世界、神域。その神の依り代があの乳房杉か・・・・


そう信じたくなるほど、鳥居の先は別世界なのです。
しかし、そこにあるのは不思議な世界や霊の力ではないのです。
皆が感じる冷気(霊気?)の正体は実は「風穴」です。
最初の解説板を見ていただくと表記がありますが、実はここは岩石が崩れてできた場所。

乳房杉4

そしてその岩石の間を、年中大気よりも冷たい空気が噴き出していることにより、真夏であれば驚くほどの「冷気」を感じるのですが、風穴と言われる仕組みをしらなければ、スポットクーラーの強烈な冷気に似た風が自分の足元近辺に流れてくるのを感じた瞬間、目の前の巨躯に畏敬の念と神の存在を感じずにはいられない空間になります。

乳房杉6


神の冷気を感じた後に眺める乳房杉は、鳥居をくぐる前の数倍のありがたみを帯び、より一層大きく感じるのです。
言わずもがな、島の宝。


全国に巨樹の杉かずあれど、数少ない「神域」を想わせる岩倉の乳房杉。
ここで感じるのはパワースポットではなく、紛れもない命の宿る世界と自然の仕組み。


乳房杉7


岩倉の乳房杉所在地

島根県隠岐郡隠岐の島町布施

各地図にも観光案内にも場所が記載されています。山道ですが十分に道幅があり、乳房杉前には大きな退避場(駐車場?!)があり、数台駐車可能です。道路沿いから眺めることができます。


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志多備神社 日本一のスダジイ


巨樹シリーズをお伝えしている中で、昨年に引き続きお正月の1本目は日本一をお届けします。

昨年は文句なしの日本一、鹿児島県の蒲生の大クスでそのスケールが私のつたない文章と写真でつたわるかどうか心配でしたが、今年の日本一であるこれも、さすがの迫力でした。

志多備神社日本一のスダジイ 10

島根県に存在する志多備神社のスダジイです。

最初にお伝えしておかないといけないのは、スダジイという樹種については実は現在は、このスダジイを更に上回る巨樹が見つかっているらしい(離島に存在するそうで、正確な所在地は明かされていないとか・・・御蔵島との噂が・・)のですが、それでも、一般で確認出来る範囲では文句なく一番です。

スダジイのようなシイという樹種は、巨樹の多さではスギ・ケヤキ・クス・イチョウについで5番目に数えられるといいますが、関西地方ではあまりなじみのない樹種だと思います。
特に我らが大阪に限って言えば、やはり薫蓋樟に代表されるクスノキが身近です。
大阪市内にも巨樹がみられるクスノキは堺市に入ると更に多く、堺市では巨樹と言えばクスノキと言うくらい(嘘。私のイメージです。)の多さです。
もちろん、その樹種に適した生息地があるからということが大きな理由でしょうから、大阪からの私にはとても珍しい樹木のように感じてしまいます。

そんなスダジイですが、みなさんご存じないでしょうが実はドングリのなる木です。
ドングリがなる木は、一般的には「ドングリの木」と言う風にいわれるのですが、ドングリは広い意味での「実」のことで、ブナ科の木材であるナラやカシ、そしてこのスダジイの実もドングリです。
もちろん、食べることもできますよ。

話を巨樹に戻しますと、スダジイでは2本が国指定の天然記念物に指定されています。
迫力からいくと、この志多備神社のスダジイがトップかと思うのですが、そうではなく、他のまだ私の会ったことがないスダジイが国指定になっているのです。

志多備神社日本一のスダジイ 4

訪れて先ずはじめに感じることは、やはりおそろしい・・・ということ。
「こわい」というよりもおそろしい。
自分の中の勝手な表現ですが、動かぬ話さぬとはいえ生物で、しかもこの様相とサイズです。
大きさは後で「昌志スケール」で見てもらいたいのですが、永い年月を経たその様相はやはり見るものを圧倒する雰囲気があります。
それに私が訪れた時刻はちょうど雲がかかっていたこともあり、少し薄暗かった為、その巨躯を直視したとき、近づくのをためらいました。
上の写真は程なくして陽がさし始めた時に撮ったものなので雰囲気はでていませんが、期待通りの驚きを与えてくれました。

幹廻り11.4mとされていますが、腰に巻いた藁の注連縄(本によると蛇を表しているものだそう。さすがは神話の地出雲。)が、横綱の化粧まわしを想像させるのか、余計に太くたくましく感じました。

志多備神社日本一のスダジイ 3

後先になりますが、この志多備神社のスダジイ。これだけの巨樹なのに車でのアクセスで簡単に訪れることが出来ます。
最寄り駅からは少し離れてはいるものの、車だと駐車場もお手洗すらも完備されていて、私のような「探して廻る」人間にはとてもありがたい設備(!?)が整っています。
いや、これだけの巨樹だからアクセスしやすいのかも。蒲生の大クスもそうですが神社などはやはり御神木として残っている為に、山中に赴くことなく拝むことが出来るのは幸せですね。

志多備神社日本一のスダジイ 1

さて、恒例の解説板ですがよく見ると「スダジイ(二本)」という表記になっています。
え?!二本もあるの?巨樹が?!と思ってしまいますが、最後にあるように参道の脇にもスダジイがあるのです。だから、何も知らないでいると、参道のスダジイを見て「え?もしかして、これが日本一のスダジイ?」と勘違いして帰られるかもしれません。
そりゃ、木の大きさというものがわからないと、スダジイというものは日本一でもこのくらいだと思うのも無理はないはずです。
参道のスダジイはこちら。

志多備神社参道のスダジイ

もちろん、小さいというわけではありません。
樹木としては大きい方ですが、このスダジイを超え境内に入り、向かって右奥の少し暗くなった辺りにお目当てのスダジイが鎮座していますからお間違いなく。

志多備神社日本一のスダジイ 8

巨樹、特に広葉樹ではまっすぐに上に伸びる樹幹というものはあまりありませんね。
それは針葉樹と広葉樹の外見の違いをそのまま表していますが、やはり巨樹のそれは異様なものです。
四方八方に伸びているというか、よくもこんな太い枝を伸ばせるもんだと驚くくらいに伸ばしています。
上から多いかぶさられるようなイメージがある分、その空間が暗く異様な雰囲気に感じられ、「おそろしく」なるのかもしれないなぁ、と感じます。

志多備神社日本一のスダジイ 9

もちろん、数百年の樹齢でこんな太い腕を支え続けるのは難しいでしょうね。支えが作られています。
もしかしたら、これがなかったら西光寺のスギのように伏条更新するのかな?!と寒冷地のスギ独特の進化を思わせるような思いにかられます。

志多備神社日本一のスダジイ 5

まぁ、それにしても立派です。
見上げると言うよりも、そこに存在する迫力を感じる、と言った方がいいくらいにどっしりと構えています。
それは周囲が林と一段下がった田んぼに囲まれていて、遠くから眺めることが出来ない、ある意味閉鎖された空間に巨樹と同時に存在しているからかもしれません。

周囲が開けていると、巨樹のそばを離れた瞬間にどこか客観的に見えると言うか、本の中の一部分のように、「眺める」感覚にとらわれるものですが、ここではこの空間は巨樹だけのスペースのようで、そこに立ち入らせてもらうようなイメージです。

志多備神社日本一のスダジイ 2

離れて撮影する余裕がないこともあるのですが、近づくとどこを写そうか迷ってしまうのはやはり素人。
この大きさを伝えたいと思う心と、もっと詳細に伝えたいと思う気持ちが空回りです。
そう考えると人間の目は素晴らしいですね。
一度に遠近双方を理解して、いいバランスで融合してくれます。
巨樹を撮るようになってつくづく感じることの一つです。
上の写真も、撮影した時はもっと詳細に幹を伝えるつもりが、今見ると一部分を写しているのみというような、なんかはっきりしないものになってしまっています。
巨樹の撮影は、本当にそのものを表現する難しさを痛感することの一つです。

志多備神社日本一のスダジイ 7

他の巨樹にも見られるものですが、こういう「苦悶の表情」のようなどうすればこのような姿になるのかと訊ねたくなる部分があるのもやはり時が生み出す妙。
本当に苦しかったのか、外的な影響かはわかりませんが、素直に伸びる幹もあれば、主幹がこの様に凹凸まみれのものもあり、これこそが生きているというものかと改めて感じるのです。

一通りスダジイの周りを一周すればお待ちかねの昌志スケールです。

志多備神社日本一のスダジイ 12

どうだぁ!!
ちょうど光のシャワーが降り注いでいるような、そんな瞬間です。
スダジイが作り出した巨樹の世界に足を踏み入れた人間に、下界へ戻る道が開けた瞬間のような・・・

苔むした土に囲まれたスダジイは、湿り気のある空気の中で独特の雰囲気を放ちながら私を迎えてくれていました。
近づいてみては離れ、離れては近づいてみたのですがこのスダジイは日光の当たる角度やその明るさ、そして見る位置によって様々な表情を見せてくれているように感じます。
たぶん、だからこそついては離れて何周もぐるぐると周りを廻りたくなるのかもしれません。
さっき見た表情とは違う、さっきの写真ではこれが撮れていたか?!
そんな想いがなかなか離れず、この光のシャワーに乗り遅れてしまいました。
いつもながら、このままずっと眺めていたい様な気持ちだったのは言うまでもありません。

スダジイという、大阪ではなじみの薄い樹種の日本一。
しかと目に焼き付けて、神々の国から帰阪してきました。
時間が許せばまた会いに行きたい、そんな巨樹でありました。

志多備神社日本一のスダジイ 11


志多備神社のスダジイ所在地

島根県松江市八雲町西岩坂1617辺り

川沿いの道路傍に駐車場とお手洗あり。案内板も設置されています。



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ゆらゆら揺られてなに想う 浄善寺のイチョウ


私が住む大阪府の街中にある樹木で一番目につくもの、といえばやっぱりイチョウでしょうね。
堺市の方まで行くとクスノキの巨樹が街中にポツポツあって驚きますが、こと街路樹ということでいくと、大阪のメインストリートである御堂筋にならぶイチョウ並木は見事なもので、某大阪の信用金庫のシンボルマークに採用されるのも頷けるほどの認知度だと思います。

しかしながら、イチョウが注目されるといえばやっぱりこの季節から・・・
綺麗な黄葉を見せる姿はとても心地がいいものですし、見慣れた風景が全く違った印象に変わる瞬間で、時間に追われながらも季節感を感じさせてくれる、ほっこりとした風景です。
また、季節の料理に活かされる銀杏も日本ならではの様に思います。

しかし、そんなイチョウもところ変われば巨樹巨木がわんさかあるもんです。
といいましょうか、一時は絶滅したとまで言われていたこの樹種が、こんなに日本で巨木になっているなんて、と驚く事がある位にいろんなイチョウの巨樹がいます。
今まで紹介した中では河内の流谷八幡宮のイチョウ小国の下城の大イチョウ一言主神社の乳イチョウ亀山市宗英寺のイチョウなどがありますが、どれも個性的であり立派です。

イチョウの巨樹の見どころは「乳」と呼ばれるものです。
一言主神社のイチョウは乳イチョウと言われる位たれているのですが、これは気根という内部にでんぷんのたまっている部分です。
そしてそこには必ず、この乳を削り取って煎じて飲むと、乳の出が良くなった・・・という言い伝えが残っているのです。
事の真偽はともかく、そういった言い伝えが残るほど、人々に愛されてきた木である証拠ですよね。
だからこそ、街中に巨樹が残るのかもしれません。
因みに、イチョウのあれこれについては今までのイチョウの記事や一言主神社や下城の大イチョウを紹介した「イチョウ サイド(再度)ストーリーシリーズ」を参照ください。

さて、今回は本当はイチョウの見どころである、綺麗な黄葉をお伝えするはずだったのですが、残念ながら、今回も(!)葉っぱ無しです。あしからず・・・
訪れたのはシーズンオフでして・・・
それでも紹介したくなったのは、その場の雰囲気がすごくのんびりとしていたことが忘れられないから、です。

浄善寺の銀杏 2


巨樹巨木によくあるような、うねるような幹や先に挙げた目立った「乳」はないのですが、天にむかってまっすぐに伸びている幹がとても印象的なこのイチョウは浄善寺のイチョウ。

浄善寺の銀杏 1

とりたてて非常に大きい、というわけではないのですが境内にニョキッと立っているそのそばに、昔ながらのプラスチックのベンチ(それも結構きれい・・・)があったりして、なんか和みます。
保存の観点からいえば、厳重に近寄れないように柵をするなどの措置が見られるところもありますが、そんないかめしい雰囲気は一切なく、ちょっとベンチに腰掛けて先輩イチョウに人生相談でも始めたくなってきます。

浄善寺の銀杏 4


案内板にある様に、このイチョウは少し独特な遺伝子を持っているようです。
それも福岡県と韓国にあるイチョウそれぞれと同じ遺伝子をもっている、というのです。
福岡はまだ日本ですから理解できる?けれども韓国のイチョウとの関係は?!
なぞですねー。
どちらかが持ち込まれたものなのか、それとも同じ一つから分かれたものなのか?!!
やはり歴史あるものは興味深い点も多いです。

浄善寺の銀杏 5


それにしても、上の写真の様に、太い幹が出てくる地面の近くから大きく花が咲くように幹分かれし、それでいてまっすぐ上に向かって伸びるその樹形はやはり独特なものがあります。
それに乳が垂れていない事から余計にその樹形の美しさに目がとまるのでしょう。

浄善寺の銀杏 6

先程、イチョウの近くにイスが置いてあるといいましたが、そのイスの近くにブランコがあります。
あれ?!どこにも金属のステーのようなものがないけれど・・・
もちろんですね、イチョウの大きな幹からロープを下げられたブランコです。

これがなんとも心温まるというか、ほんわかします。
ベンチに腰かける男の子に、ブランコをゆらゆら揺らす女の子が話しかける・・・
う〜ん、ロマンチック!
訪れた時間が黄昏時だったこともあり、一人そんなことを想像し、自分の青春時代を振り返ってひと時目をつぶるのでした。

そうやって一人のほほんとしていたのですが、気がつけば近くに奥さまが・・・
どうもお寺の奥さまのよう。
挨拶をして少しイチョウの話をしました。
大阪から来ていますというと、ニコニコとして笑顔を返していただきました。
これも巨樹探訪で心温まる瞬間。
基本、人との触れ合いというのはいいものです。


浄善寺の銀杏 7


そんな事を考えられる位、どこかいい雰囲気の浄善寺。
もちろん、巨樹にも惹かれるものがありますが、その周りの環境も含めて印象に残ったのがこの浄善寺のイチョウです。
葉っぱはなくとも、黄葉していなくてもそんなこと関係無い、と思わせてくれる存在感でした。
もちろん、旺盛に葉を茂らせているところも見てみたい気もするのですが・・・

そうこう考えていると日も傾いてきました。
離れるのが心残りなのはいつも同じですが、やり残したことが一つ。

浄善寺の銀杏 3

女の子でもなく、つれあいもいませんが先程のブランコに腰掛けてイチョウと記念撮影です。
何を話したかは・・・内緒です。
青春の思い出話でも・・・・・


浄善寺のイチョウ所在地


島根県大田市三瓶町池田2132

境内に駐車可



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荒波を耐えてしのんで珪化木(けいかぼく)


海といえば、穏やかで生き物を育む優しい場所の様なところもあれば、荒れ狂う大波が押し寄せる力強くも人間を凌駕する勢いを感じることもありますが、そんな波のなかを何千万年耐え続けてきたのだろう。

巨樹を追いかけたりしているとたまに、巨(おお)きくはないけれどもたしかに稀少な木であるものに出くわしたりします。
埋没林施設(魚津小豆原)や展示されている埋没材などもその一つですが、それらと同じように数千年、数万年いや数千万年というもういつの時代かわからないくらいの年代の木が出てくることがあります。
神代木をも超える、はるかかなたの時代から存在する木。
それは珪化木や木化石

火山活動の土石流に流されて形成される、というようなところは神代木と同じものですが、はっきりとした違いは両者木であるけれども、珪化木は「木の組織が石にかわったもの」であるというところでしょうか・・・
琥珀(こはく)という、木々の樹液が化石になったものが宝石と同じように扱われますが、どちらかというとそれにちかいのかもしれません。
木質部を失う代わりに石化していく・・・
そんな珪化木も神代木と同じ様に日本の様々な場所で発見されています。
なかでも岩手県の根反の大珪化木が有名な様です。(ほん近くまで行ったのですが、大雪で寸前にてあきらめたところ・・・もう一度行きたい。)

さて、そんな珪化木は海辺や川底から見つかる事が少なくありません。
押し流された影響でしょうか?
こんな形で残っていたりするものです。

島根県波根西の珪化木 10
























こんな海岸の、それもおそらく波が打ちつけるだろう所にまさしく「突き刺さる」かの如く海中から岩場に向けて聳え立っています。
これが島根県波根西の珪化木です。

島根県波根西の珪化木 4














このように根元(?!)は水中で、どこまで伸びているのか定かではなく、もう片方はどうしてこんなところに上手く残っているもんだと思わせる位置にはまっています。

島根県波根西の珪化木 7














覗きこんで一瞬、嘘やろぉ?!といいたくなるくらいにすっぽりはまっているんですが、人為的にすら感じるくらいに見事です。

この波根西の珪化木は、1800万年から2000万年前の火山活動の土石流により押し流されたものだそうで、長さは目視できる部分だけでも5m、埋没部も含めると10m以上といわれていますが、実はこのあたりにはこの一本だけではなく、海底には波にあらわれた珪化木がゴロゴロとしているそうで、大昔の豊かな森とそれを取り巻く自然活動のすさまじさを感じるというものです。

島根県波根西の珪化木 12














水中に近い部分はなんとなく木のものという感じを残している様に想いますが、なにせ周りがいわばだけに、石にも見えてきます。

この波根西の珪化木、島根県大田市の海岸にあるのですが何せ海岸だけに事前に正確な位置がわからず、迷うのでは?!と心配しましたが途中からは看板もあり、少し歩く事になりますが、間違うことなくたどり着きました。

島根県波根西の珪化木 1














海岸線沿いの集落にこのような看板があり、この裏手か?!と思わせるのですが、これよりももう少し奥まで車で進みそこからは徒歩です。

小さな案内板の通りに進むと墓地を横目にして綺麗な遊歩道が見えます。
それを行くと海岸にたどり着く事が出来ます。

島根県波根西の珪化木 2





 この下に珪化木ちゃんが・・








この景色を見て一瞬、もしかして足を海に突っ込んでいかないと行けないところ?!と少し心配になったのですが、満潮でなかったこともあってか、近くまでたどり着く事が出来ました。

階段途中には珪化木の案内石碑があります。

島根県波根西の珪化木 3














こんなんがあると、この近くにあるのか?ときょろきょろとしてしまいますが、お目当ての本体はこれよりもまだ下。階段を降り切った、水辺にあります。

島根県波根西の珪化木 14














洞窟の様に穿たれた部分の上部にもたれかかり、中央部が少し細くなってはいますが、その太さはなかなかのもの。
資料によると、この珪化木はブナの木らしく、日本海が形成されたころの火山活動によって運ばれたものだそうです。

島根県波根西の珪化木 9














島根県波根西の珪化木 7














所によっては木を感じさせ、その他はやはり木の形をした石ですね。
こういった部分が出てきたのも海の波による浸食で、少しづつ岩が削られるなかで、周囲の岩石よりも珪化木の方が硬かった為にこのような形で出現したとも言われています。

どちらにせよ、想像もつかない時間の流れの中での産物。
こうやって数千年前の木に対面できるだけで幸せです。

島根県波根西の珪化木 6














因みに、大きさを比較するとこんな感じ。
念の為、私ではありません。地元のおっちゃんです。
先の石碑のまわりを一所懸命探している私に、まだ下やで、と教えてくれたのでついでに人間スケールになってもらいまひょ。

島根県波根西の珪化木 11














上の写真は決死の覚悟(結構水際にビビってしまう私・・・)で腕を伸ばして珪化木の近くから撮ったもの。
水面の近くからのアングルです。

全てが同じ様な写真になってしまっているのは、撮影場所が限られることによるものです。
遊歩道を下りてくると珪化木の隣にでますが、反対に行くには遊歩道を乗り越えて崖地を降りるか海の岩場を移動するかですが、こんなところで万が一があって迷惑をかけてはいけません。
訪れる皆さんは無茶をしないようにしてくださいね。

ここ以外にも近くに仁摩の珪化木もあるのですが、そちらはなかなかの難所の様で、この時は行くことをあきらめました。
もし訪れる事が出来れば、そちらと小豆原埋没林公園を合わせてまわれば、ロマンあふれる樹木の世界を知ることが出来るのではないかと思います。

島根県波根西の珪化木 8















波根西の珪化木所在地:島根県大田市久手町波根西2137近辺の海岸
駐車場、基本的になし。路上駐車になるので、邪魔にならない場所を探しましょう。



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