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木がどっちに曲がるかわかるのか?


先日あった驚いた出来事をドキュメンタリーとしてお届けします。
「こんなのでいいのか、日本の大工!、日本の建築!」です。
(口語そのままでお伝えするため、不適切な表現や言語があり一方的な表現で意見が偏って聞こえるところもあるかと思いますが、ご勘弁いただいて
ご覧くださいますようお願いいたします。)

私が木材の配送の為に現場で荷降ろしをし、荷物の確認をしていた時のことです。
監督様よりお声がかかりまして、材料をおろさせてもらったところへいきましたら、納品させていただいた商品(このときは建築用語で根太と称される床組みの下地に使われる角材でした。)の寸法や加工の品質にバラつきがあるので、どうしたものか・・・というお話でした。

商品を再度見せていただきましたら、確かに一部加工機による削り加工のかかりが甘いところがあったり、節(枝部分です)が集中していたりするものが含まれていました。


削り加工の甘かった原因は、機械乾燥機での人工乾燥材ですので、まず製品規格寸法よりも大きいサイズで製材(オーバーサイズといいます)し、釜から出てきて木材の癖や部分部分による収縮の違いによるデコボコや寸法違いを削り加工機にて平滑に近い状態にし寸法をそろえるのですが、ご指摘を受けた部分は、乾燥の後に痩せが大きくなり、削り加工の基準値よりも小さくて加工の刃があたらなかったものです。

これは、たとえ端のほうであっても規格としては通してはいけないものなので、加工チェックが行きとどいていないことによるもので、品質の問題点ですとお伝えし、注意するように努める旨をご説明させていただきました。
まだまだ品質チェックが甘いところがあり、反省点です。

もうひとつは節の集中ですが、こちらは確かに大きいものや小さいものが点在してはいるんですが、どうしても問題な点があるというような状態ではないような感じを受けるものでした。
監督さんには
「確かに少し節の多いものもありますが、下地材であるのと木の芯材近くからも無駄なく製材しますので、どうしても節の多い部分が入ってしまいます。」
と伝えました。

その時です。

現場内にいらっしゃった大工さんが出てこられました。


    大工さん   「おい、おまえとここれなんや?根太ちゃうんか?!」
(以下大工。) 
          私  「はい、根太を納品させてもらいました。」

    大 工 「これ根太か?こんなんどうやって使うねん。」      

       私 「すみません、節の件は今うかがいました。確かに少し 
                集中していますが、どうしても木の芯近くからも木取り
                するため、全部ではないですが、若干は入ってしまい
                ます。」   

    大 工 「はぁ??!木の中心でなんで節出んねん、そんなわ
                けないやろ。こんなんあかんで。」

       私 「節が集中していることは確かです。が、施工上完全
                に使用できない状態ではないように思うのです。先ほ
                ど申し上げたように木の中心部は成長の加減で節が
                多くなってしまいます。」

    大 工 「よその材木屋でこんなん見たことないわ。」

       私 「申し訳ありません。弊社の材料のグレード基準が甘い
                のかもしれませんし、他社さんがいつも良いグレードの
                ものをご提供されているのでしょう。至らぬところがあり
                すみません。」

    大 工 「ちゃうわ。よそのが普通や。こんな悪いのあるわけない
                やろ。(ほぼ節のない木の皮に近い部分である辺材分か
                らの木取りのものを示しながら)普通根太いうたらこんな
               んのことや!」

          私  「すみません、正直申し上げて弊社の根太材の基準では、
                一束のうち全てがそういった辺材挽きというものは別に仕
               上げ材としての化粧材で注文しなければいけませんが、単
               価もまったく違い、根太として供給するのは難しい状況です。」

      大 工 「なんでやねん。よそのはなぁ、こんな材料(辺材挽きの節
         のない四方柾-角材の四面の木目がまっすぐに通っている
         物のこと-を示しながら)やからどっちに反るかわかるけどな、
         こんなアテ(陽疾。木の成長による癖のある部分。)ばっかり
         の材料、どっちに曲がるかおまえわかんのんか!?」

      私 「これらアテですか・・・え?!反る方向ですか・・・」

    大 工 「そうや、アテやろ。反ってきたら床鳴りするからあかんやろ。
         その方向がわからんかったら使えるわけないやろ!」

      私 「・・・・・・すみません。ですが、弊社の根太としてはおっしゃって
         おられるような木取りばかりではとることはできないと思います。」

    大 工 「ほぉぉ、おまえのとこはえらい強気やんけ!こんなもんか、
         もうええわ!!」



これが一部始終です。

この後、監督さんには別に下記をお伝えしました。

・加工機のあたりの甘さは改善しないといけないところです。ご迷惑をおかけします。
・節の集中については、確かに多いと思いますが、木の裏側(木裏)や、芯材に近い部分は木が大きくなるために必ず節のある部分ですので、根太で節のないものは難しい状態です。
・木材ですので、鉄やアルミのような均一な品質を節などが含まれる一般材(下地用材)に求めるには、難しい面があります。

ということです。


ここからが本題。

今回、私が怒られながら(決して叱られたのではないと解釈しています。違いわかります?)驚いたのは、大工さんなのに
1.木の中心である芯材部に節がないと思っている
2.木の目や、製材された部分によっての反りの出方、動き方の基本を知らない
3.アテの意味を知らない。
4.木裏、木表での違いもわからない
という点です。


ここで皆さんにもお伝えします。

まず、「木の中心である芯材部には必ず!!!!!節があります。」


DSCF0641

 胡桃の芯材部よりの無垢フローリング
 芯材部はコレくらいで普通です。
 黒い筋、「髄」も入ります。




どうしてか。
みなさん、木はどういう風に成長し伸びていっているかわかりますか?
木の中、中心部から太っていっていると思いがちですが、実は違います。

木は、帽子をかぶるように外から外から、一枚ずつ皮をかぶるような格好で成長しています。
木の先端から根元に向けて、皮をかぶっていくというイメージでしょうか。
ですので、最初の小さい木の時は成長する光合成の為に、たくさん枝をはり伸ばす必要があります。
細い径に、多くの枝がついた状態です。それが生長するにつれ、枝部分が木の上の方に上がり、小さい枝などは皮がかぶっていきます。
こういったサイクルの為、当然木材にした場合木の中心部分は幼樹のころの部分の為、最初に茂っていた枝の後が集中して残る形になります。
これが一つ。


そして次に、木の目や、製材された部分によっての反りの出方、動き方の基本を知らないこと。(木表と木裏の使い方も含め)

昔の大工さんは、木の目や持っている癖を見て加工や施工をなさっていました。
それは成長の加減で「こう曲がる」とか、「ここに節が出そうだ」とか・・・
それが基本でした。
そらそうです。木の加工をするのに、木の事がわからないと加工なんかできないですから。
だから、中途半端な材木屋よりも木を知っている方がほとんどでした。
当然、こちらも木を見て考えて出荷するわけで、昔は「これはここでは使えんけどこっちなら使える」とか、「こっち方向の反りなら使える、使えない」などで
大工さんと話をしながら木材を売っていたものです。
が、近年は現場の要望やコスト面での急速なプレカット技術の普及と加工済み仕上げ材の採用などで、木を見る必要がなく「組み立てればよい」状態の
「木質部材」といった方がよいような物ばかりが流通するような時代になりました。
時間と手間をかけて加工をしないので、木の癖はおろか、木の目についてや基本的な性質まで知ることができない方が増えています。

今回の大工さんのように、木の反りの方向が分からないということで、鉄のような超直材を木材に求める方が少なくありません。
というか、鉄も熱などで曲がりますし、変形しますが・・・

基本、木は木表に反ります。(次講のアテは除く)
詳しくはこちらのコラムに譲りますが、同じ木材でも裏と表の収縮の違いや、赤身(木の中心部)と白太(木の辺材部)でも収縮はちがいますが、基本は木表に反ります。
ですので、基本的な反りの方向は予測できます。
それに、木の目を知らないと、柾目(木の目がまっすぐと通っている材)と板目(木の目がタケノコ状の模様にでているもの)の違いがわからず、特に根太の施工の場合などは曲がり方向に気を取られ、柾目面にくぎ打ちをして施工したりする場合がありますが、これは完全な知識不足です。
というのは、柾目面は幅方向は収縮しにくい性質がありますが、厚み方向には板目面よりも収縮が大きいという性質があります。

柾目と板目 釘打ちしたら・・・

 へたくそですみません。
 柾目と板目での釘打ちした場合の違いです。





ですので、いくら柾目面がまっすぐでもそこに釘を打てば、何年後か(いや、もっと早く)に収縮して釘が浮いてしまう場合があるのです。
こんなこと、知らないのかなぁ・・・今の大工さん。



次にアテです。

漢字で書くと「陽疾」。太陽に疾く(はやく)です。
つまり、太陽に早くあたりたい幼樹が一生懸命伸びるときの成長による癖であったり、山の斜面に対して垂直に伸びようとする時に、斜面の傾斜に踏ん張る力が生じ、その踏ん張る力の固まった部分だったりするところです。
アテの部分は、製材しても立木の時の踏ん張りや伸びていく力が残っているため、かなり曲がりや反りが多く出ますし、強度的にも劣ります。
が、アテ材も反りの方向や癖を見て使うのが通常ですし、そもそも今回の大工さんのおっしゃっていたのは、木材の通常の曲がりの部分であり、とにかく「まっすぐ以外の板目の物ははすべてアテ」といっておけばいい、というような論理でしたので、木も可哀想ですし本来の意味を知らないでその言葉を使っている方の技量も知れるところだと思うんですが・・・・


今回は、こちらの材料のグレードやレベルの問題もあり、一方的にいうことはできませんが敢えて言います。


「ほんとに大丈夫か?日本の大工、日本の建築」


鉄骨造などならまだしも、木造建築を木を知らない大工さんが建てているんです。
建築基準法上の用語でいえば「建築物の建築」が、そのままの意味である建築工事。
ですが、そこに人が入るんです。
家が建ってりゃいい、ってなもんではいけません。

最低限の知識をもって家を建ててもらわないと、お施主様は人生一度(たいていはそうですね・・)の大切な財産にお金を支払うわけです。
何十年も住み続ける住宅を建てるのです。
もっと、しっかりとしていかないといけないんじゃなかろうか・・・

こんなことでは、木材を使った住宅が普及するのは当然時間がかかりますし、技術もいずれは絶えるかも知れません。
ですが、私は最後まで木が語れる材木屋であるために努力したいと思っています。

そんなことを新たに思った今回の出来事でした。



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