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メープル・シカモア・プラタナス・・・ふうぅ〜、、、、、


今回の樹種シリーズは、前回から始まった「シカモア」のお話。

シカモアという名前を聞いて、ピクピクとした人は結構いるのではなかろうかと思います。
特に楽器や無垢フローリングについてご覧になったことのある方は、一度は興味をもたれたのではないかと想像します。
私もその一人です。

その興味の最大のポイントは白く美しい木目と、響きは良いが紛らわしいその名称に尽きるのではなかろうか・・・
シカモアという名称のイメージは、白くてトチの様な縮み杢の美しい木目を持った木の名前。見るものは異なるかもしれませんが、そんな印象ではないかと思います。
そして大抵の解説では、美しい材はヴァイオリンなどの楽器の裏板に賞用され、とても高価な材料である、とされています。

ここが木の名称の難しいところであり、ハマりこむ最大のポイントです。
弊社にも一時期、御社の無垢フローリングにシカモアはありますか?!、といった問い合わせを多く頂いたものです。
その際に聞かれる「シカモア」という名前で語られるものの多くは「セイヨウカジカエデの仲間のメープル」を意図していることが殆ど、いや全てです。
それでは、シカモアはメープルなのか?!前回の厚板もメープルか?!ということになりますが、これが不思議な世界への入り口なのです。

ここからは、よく陥りがちな何が本物なのか?という考え方ではなく、あくまでも人間の分類した名称における「通称名と流通名、学名から見る樹種の違い」に観点を移しましょう。
もうかれこれ5年前になります。先に書いたように「シカモア」に関する問い合わせが集中していて、そのたびに説明するには話が永くなりすぎて困っていた為、この記事にて一度まとめておかなければいけないと思い、書きかけたのですが、その当時にはまとめきれずに中途半端になってしまっていた位に私にもややこしい樹種名なのですが、その理由を一つずつたどっていくことにしましょう。

結論から言いましょう。
前回の割れが出たものは、シカモアとも呼ばれている「プラタナス」という樹種です。
板材の写真を思い出してください。
私が遠目でビーチ(ブナ)かと思ってしまった位に、白っぽいというよりは淡紅色が混ざった印象の木目は、さきほどからの「白っぽく縮み杢のでるシカモア」とは違うと理解していただけるでしょう。
事を複雑にしているのはここです。

今まで多くの木材を見てきたであろう先輩材木屋さんも市場でこの材の表記を見たとき、「シカモア?!!?これ、シカモアかぁ?こんなんかぁ?!ちゃうやろ〜」とおっしゃっていました。その続きを聞いてみると、「昔はプラタナスゆぅてなかったかぁ?!」とかなんとか・・・

そう、それが真相です!!

流通しているヨーロピアンメープルの類もシカモア、そしてプラタナスもシカモアと呼ばれていて、しかも双方葉っぱの形まで似ているもんだから、同じ仲間同じ樹木と勘違いされやすいのだと感じます。
少し難しくなりますが、樹種の区分を明確にしてくれる一助は「学名」です。
「シカモア」という通称名や流通名ではなく、植物学上の科目や種で区分されている学名をみれば、何がどう違うのかがはっきりと見えてきます。

先ず第一にカエデ=メープル。

コハウチハカエデ


板屋楓ロックメープルに代表される強固で摩耗に強い優れた材であるとともに、紅葉(黄葉)を楽しむことが出来る樹種として親しまれています。
学名はカエデを意味する Acer で始まります。 ロックメープルの Acer sacchrum などです。
ここでも小さな問題があって、カエデとモミジは違うものか?!という疑問が出てくるのですが、わかる方いらっしゃいますか?!


広義でいうと同じもの。カエデの中に「○●モミジ」と名前のつくものが存在しますから。
それは、山の木が紅葉(黄葉)することを、古くは「紅葉づ=もみづ(または黄葉づ)」と言った為に、紅葉の代表格となる「高雄カエデ=イロハモミジ」(葉の切れ込みを数えると、いろはにほへと・・・から)と付けられたというところからの様です。

要は、紅葉(黄葉)するものの総称だったのが、いつしかその代表格に名称を独り占めされたようなもの?!かな。
ただ、区別するとなると、園芸上はカエデの仲間でも、より葉の切れ込みが深いものを「モミジ」といっているという区分もある様です。


とうかえで


そして次に本題のシカモア=sycamore

これは木材のややこしい流通・通称名の例にもれず、話がこじれます。
なにせ専門書を紐解いても、写真や解説がその本毎に若干違っていたりするのです。
解説文はほぼ同じなのに学名が異なる=全く違う樹種のこと、だったり学名は同じでも写真と解説が異なるもの=ミスプリントか情報の錯綜か、と言った感じです。
それ位難しいものですから、ここからは私の経験も含めてのお話になることを了承くださいね。

一般的にシカモアと言う名前で想像されるのは先にも書いたとおり、メープルの仲間のグレートメープルやオオカエデ、ニセスズカケノキなどと呼ばれる Acer pseudoplatanus で、流通名をホワイトシカモア(または単にシカモア)、シカモアメープルといい、和名をセイヨウカジカエデのこと。そして広義にはその仲間の波状杢(縮み杢)のあるもの、とされているようです。

学名は、「プラタナスに似たカエデ」といったところでしょうか。これは、次に紹介するプラタナス(orientalis)の葉に似ているカエデだからこう呼ばれるようになったと言われます。

ただ、sycamore の名は本来はクワ科のエジプトイチジク Ficus sycomorus に使われていたものだそうですが、やはり葉の形が似ているということでカエデに転用されたのではと推測されているようです。

次に、板材を紹介した方のシカモア(ややこしいですが・・・)は、スズカケノキという樹種で、一般的には「プラタナス」という名前で知られていて、学名の英語読みがそのまま樹種名になっている木です。

プラタナスの中で北米東部原産のものをアメリカスズカケノキといい、学名を Platanus occidentalis 、西アジアや南東ヨーロッパ原産のものを Platanus orientalis といいます。

前者の種の後に位置する学名は「西」を、後者は「東」を表していて、ヨーロッパから見ればアメリカ大陸が西側に位置するからだそうです。この学名は分類学の権威であるカール・フォン・リンネによってつけられているのですが、彼の命名にはこの「東西」が比較的多くみられるのはやはりその性格や思考(嗜好)の現れでしょうか…

そしてこの2種の雑種が日本で最もよく目にする「モミジバスズカケノキ」で、学名を Platanus acerifolia といいます。

これは先に出てきたカエデの意の acer と似た葉の folia から来ているもので、まさしくこれがカエデとシカモアとプラタナスの紛らわしい名称のトライアングルの原因ではないかと推測するのです。

プラタナス 4

葉を見れば、予備知識のない人はカエデの仲間だと思うでしょうし、「モミジバ」ということはモミジ=カエデという思考が働いたのかどうかは邪推の域を超えませんが、そう考えたくなってきませんか?!

蛇足ながら、さらに事をややこしくする奴がいるんです。

マンサク科のその名は「モミジバフウ」。漢字を楓香樹。

学名を Liquidamber styraciflua といい、これは「琥珀色の液体」と「樹脂を含む」という意味で、独特の香りの高い樹脂を含むモミジの葉っぱに似た植物という意味になります。その通りで、この葉は5裂の掌状で、秋には紅葉することがまるでモミジです。

フウ 1

単なるフウ L.formosana (後者は台湾を表している)のほうはカエデに似た葉をもっていて、3裂の爬虫類の足跡のような形をしています。双方似ているのはモミジやカエデだけではなく、プラタナスとも似ているところがあり、その果実はフウはとげとげしいがプラタナスはとげに感じない丸みのある形であることが違いであるけれど、とてもよく似ています。

フウ 2

フウの仲間とモミジを含むカエデとの区別点は葉っぱの付き方。

対生といわれる同列でつくものがカエデ、ひるがえって互生というつき方をするものがフウだと考えれば見分けやすいです。

そして更に追い打ちをかけるように紛らわしいのがその漢字。

カエデが日本で一般的に「楓」とされているのに対し、中国ではそれはフウを表し、カエデには「槭」を当てています。

まぁ、元々は漢字が日本にやってきたときにはフウが無く、葉の形や色がそっくりなカエデにその漢字を当てたことが始まりのようですが、最初にもっと整理できなかったものかと、いまだに考えさせられてしまいます・・・・とはいえ、そういうことを知るのも樹木の大きな楽しみであることは、もう今更いうまでもないことですよね!


因みに、「サテンシカモア」という流通名を持っている樹種はシルバーハートという木で、こちらは熱帯材で、まったく違う種であることを付け加えておきましょう。

もうここまで来た皆さんには今更の上塗りですが、無垢のフローリングでたまにみかける「カエデカバ」なる思わず「どっちかはっきりせぇ!!」とつっこみたくなるほど不思議な樹種名(いや商品名)が存在しますが、これはあくまでも販売しやすいように意図された名前で、カエデに似た白いカバを集めたものである場合もありますし、赤白混合の色合いのものである場合もありますから、木が好きで無垢材を求めるのならやはり、無垢フローリングは同じように木が好きな材木屋さんに相談することをお勧めします。

さて、横文字やらカタカナが多くて分かりにくかったかもわかりませんが、極端にいうとその横文字の意味さえ理解できればややこしい木材の樹種名の海も、すいすいとわたっていけるようになるということですので、是非、この機会に日本語の樹種名以外に英名と学名も覚えてみることにチャレンジしてください。

きっと木材だけではなく、樹木観察や屋外散歩が楽しくなること間違いなしですよ!

ということで、次回「樹種シリーズ シカモア(プラタナス)」の最終回はもう少し焦点を絞ってプラタナスのほうを掘り下げていきたいと思います。





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