空を見上げて
トップページ » 昨年一番の話題は、もちろんこれ! 〜平湯大ネズコ〜

昨年一番の話題は、もちろんこれ! 〜平湯大ネズコ〜

既に昨年の話題となりましたが「今年の漢字」が12月に発表され、世相や流行を表すものとして毎年話題となります。
それに対して、私の中での「今年の名前」は?と聞かれると迷いなく「ねずこ」です。
いわずもがな、昨年も映画が超話題作となった「鬼滅の刃(きめつのやいば)」に登場する主要キャラクターの名前です。
そして「ねずこ」の名については、わざわざ今さらにストーリーを説明するのは野暮、というものですが巨樹巨木マニアの方の中にはご存じない方もいらっしゃることを考えて、敢えて!!


ねずこ

竹を噛んでいるいる少女が「ねずこ」。
この「鬼化した妹」を人間に戻すべく、主人公である兄と宿敵である鬼を倒しに行く物語。

今回取り上げる巨樹の樹種名が、昨年日本中を虜にした話題作に登場する彼女と名称と同じなのです。
その名は「ネズコ」。

一昨年の紅白○合戦にてすでにその作品の主題歌が取り上げられるほど、以前から話題作であるのですが、私もその作品の内容を知ったのはつい数か月前・・・
ですので、「今更」というのはもしかすると私自身への言葉なのかもしれませんが、一部では私と同じようにご存じない方もいらっしゃるかもしれませんから改めて・・・

話題作の少女と同じ名前の樹木「ネズコ」。
関西では、特に現在の材木屋さんの間では殆ど話題になることもなく知る人も少ないであろうと思われる樹種。

しかし、一部では有名な樹種であることも忘れてはなりません。
が、そのお話は少しずつ進めましょう。


平湯大ネズコ 1


ここは岐阜県の東北部。
地理的には、あの有名な上高地にもほど近い場所に位置する平湯地区。
観光地で有名な高山市から長野県方面に向かう道中にある、有名な温泉地ですがこの地の山に、みごとなネズコの巨樹が「いる」のです。

観光バスも行き交う山道。
そんな道すがらに位置するキャンプ場の奥地に、関西地方では決して認知度の高くないネズコの巨樹が存在することは、巨樹巡りをする身としても、また木が好きなものとしても、そして仕事の都合上岐阜県には頻繁に出入りする者としても以前から認識していました。
しかしながら、なかなか私の足がその場へ向かうことはありませんでした。
私がなかなか訪れることが出来ずにいた理由。それは熊!!
岐阜県、熊怖い。
山が美しく植生も豊かで生態系も素晴らしいものだと理解していますし、とっても好きな県ではあるのですが、その分、私が怖れる熊との遭遇リスクも上がる(汗)。

山道を車で走っていると、あちこちに目につく「熊、出没注意!」の黄色い看板。
基本的に可愛い絵になっていますが、現実はそんなに甘くない。
その恐怖から、出来る限り勇気を振り絞ることができる時でないと行動できないと思っていた場所。
それがこの平湯。(あくまでも、私のイメージ、、、ですよ。)


平湯大ネズコ 12


道路からはこのような登山道チックな道を登っていくことになることを事前情報としてキャッチしていたために、とても身構えていた私。
それでも、逢いたくてしかたなかったネズコへ向けて歩を進めたこの日。

キャンプ場がすぐそこ、というにもかかわらずこの写真の場所では「ホー!」とか「ハイっ!!」とか熊除けの奇声をあげながら歩いていることは、写真なので言わなければわからないこと。
結果的に熊には遭遇しないのですけれど、山中への道のりにおいての私にとってはいつものこと。
戻った際には喉がカラカラ。
ネズコだけに、熊ではなく鬼が出るかと思いきや日中だから大丈夫(汗)。


そうやってのぼってきた先に出逢うのは、期待値にそぐわぬ見事な姿。

平湯大ネズコ 3


雑木林の中をくぐってきて、いきなり現れる巨躯を誇る針葉樹。
これが平湯大ネズコ。

鮮やかな、と言いたくなるような美しい赤茶色の肌は、若々しさすら感じるような力漲るような感覚を与えます。
しかし、その伝承樹齢は1000年!!
その数値は、一本の幹がまっすぐに立ち上がると認識される針葉樹のイメージとは全く異なる、老齢の巨樹ならではの迫力のある佇まい。

ネズコという樹種についてをここで語るにはスペースが不足しますので割愛しますが、樹木の系統としては桧の仲間。
そのため、木の皮や葉っぱはそれらのイメージに似ています。


平湯大ネズコ 6


その特徴を理解していなければ、おそらくヒノキだと思ってしまいそうな、そんな雰囲気のネズコ。
木材好き、もしくは中部地方の木材関係者や里山にお住いの方以外は、樹種自体馴染みのない人も多いのではないかとおもいます。

その名の由来は、一般的には「材色が薄黒く鼠色に近いこと」だと言われていますが、樹齢や育った環境によっての差も大きいようで、薄黒というよりも深い赤茶がかった褐色からスギに薄墨を流したような印象の物までが見られます。
安直なネーミング、と思われるかもしれませんが色合いや木目から名付けられる情報はとても重要ですし、各地の方言その他でも、そういったものを読み取っていくと、もともとその地の人たちが感じていた感覚を追う事が出来る、という場面もありますから、私はこの名がとても好きです。
若干、「ネズコ=ねず子」みたいで女の子っぽいというか(笑)。
そう、冒頭のねずこの様に。


平湯大ネズコ 10


ネーミングからは女の子を想像させるところもあると思うネズコ。
しかしながら、この平湯大ネズコにはそのようなイメージはありません。
力強く太く突き出る大枝、天にあるものを全て絡み取ってしまうかの如くあらゆる方向へ向け自由に伸びる細枝、それらを支える武骨な主幹。

これが千年か。
人はもとより樹木においても、特殊な場合を除いて千年という時間を生き続けるものは多くありません。
自然の中で寿命を迎えるものもあれば、人の手によって伐採されていくものも多くあるでしょう。
しかし、この大ネズコは昭和初期の発見以来とても大切にされ、この地の宝として保護されてきた。
ここへ至る道のりが整備されていることも、周囲が木材でステージの様に組み上げられていることも全て、発見以来ずっと守られてきたからに他ならないと思います。

千年の巨樹に運動靴でいくらか歩けば逢えること。
その有難さと、目の前にある歴史を感じる姿に先人への敬意を感じずにはいられません。


平湯大ネズコ 9


大ネズコの周囲は柵で仕切られている為、当然寄り添うことはできません。
それに、写真では分かりにくいものの急斜面にあるために、下側に回り込むとかなり見上げるようなアングルになるので、まるで拝み見るような感覚。
周囲は若い雑木林の様な状態ですがもし、これが昭和初期の山であればどのような感じだったか。
道なきケモノ道を進んだ先に、雑木の中でこの姿を眺めたならば、自分も先人の様に宝として後世に伝えようと思っていたに違いない。そう思います。


平湯大ネズコ 8


根際に表れている幾つもの隆起物。
瘤、というのも一つかもしれませんが、これが大ネズコの生命力の一つではないかと思ってしまうのは私だけでしょうか。
まるで細胞分裂の瞬間を切り取ったような、見つめているまさに今、これらが爆発的に増殖し根を張っていく・・・
動き出すはずのないそのモノを、どれくらい見つめていたかは覚えていませんが、永遠に生き続ける命の源が可視化されている、そう思えてなりません。

厳しい環境がそうさせるのか、それとも数百年数千年という時間の流れこそが作り出す造形なのか、「素直」な印象が多い針葉樹であるにもかかわらず、この地から動くことのできない溜まった力を絞り出すように、鋭く突き上げる枝。


平湯大ネズコ 11


訪れたときは「巨大なクワガタの角」、そう感じた記憶があります。
しかし、この記事を書いている今であればやはりその姿は鬼。
鬼の角。
先の生命力を感じる瘤にしても、そしてこの角にしても永遠の命を持つ鬼の様。

私が訪れた日は、生憎の本降りの雨。
見あげるレンズ、構えるカメラに瞬時に雨粒が張り付き、焦点は合わず濡れるカメラが壊れるのではないかと思うようななかでの撮影で、折角の対面なのに・・・と思ったのですが、その雨がもたらした唯一の感心事は大ネズコを一層美しく彩ってくれたこと。

雨というヴェールをまとって、鮮やかに艶やかに、その赤茶けた巨躯を輝かせてくれたのです。


平湯大ネズコ 4


先に大ネズコを鬼に例えましたが、鬼があらわすものは決してマイナスのものごとだけではありません。
私の故郷、大阪府茨木市には「茨木童子」なる鬼の伝説が残っています。
茨木市から京都南西部方面において、様々な伝説の残る鬼ですが悪者として伝えられるものがある一方、鬼という姿(他者とは異なる)になりながらも内面や行為は善良な人間として描かれているものもあります。
受取り方や考え方、又は自分とは異なった考えや生き方を排除する人の心が生むもの。それが鬼なのかもしれない。
それを、伝説の中から教えられているのかもしれません。

鬼滅の刃の「ねずこ」も鬼になってしまっています。
しかし人を襲うことなく、人を守り兄を信じています。

言葉や風体、そして自分とは異なる考えなどを一方的に否定するだけではなく、認め合い間違いを許しあいながら生きていくこと。
大ネズコの鬼気迫るその姿が、人としての生き方をも説いているのかもしれない。


平湯大ネズコ 7


私もかなり流行の影響を受けている様です(笑)。
しっかりと「キメツ」にはまってしまっているようですが、コロナウィルスが蔓延し「分断化」された世界を目にすることとなった2020年でしたから、もしかするとこの平湯大ネズコを紹介するのも、分断ではなく協調協力し、様々なことを受け入れながら進んでいくことを考える2021年のはじまりだからなのかもしれません。



平湯大ネズコ所在地

岐阜県高山市奥飛騨温泉郷平湯

キャンプ場から登山道を20分ほど上がると逢える。
車はキャンプ場周辺、登山道脇に止められるが正式に駐車可能かは要確認。


・弊社へのお問い合わせはこちらから
・その他の無垢フローリング・羽目板ラインナップはこちらの記事下段から
・無垢フローリング・羽目板の一覧はホームページからどうぞ

*2019年以前のリンク表示をクリックしても過去リンク記事が見られない場合は、こちらの手順でお願いをいたします。
*消費税10%への改定前、2019年9月以前の記事の価格は旧税込み価格となっています。お手数ですが、ご連絡の上正式なお見積の依頼をいただけますようにお願い致します。(ホームページ価格も改定が間に合っていない物もありますのであしからずご留意ください。)


 木のビブリオが、それぞれの木が持つストーリーとともに、こだわりの木材をお届けするブログと、稀少木材・無垢フローリングのホームページです。

・樹種別無垢フローリングのブログ記事一覧 
http://muku-mokuzai.livedoor.biz/archives/1611916.html

・戸田材木店・セルバのホームページ
http://selva-mukumokuzai.jp




コメントを書く




情報を記憶: 評価:  顔   星